JP6629539B2 - 防食塗料組成物、防食塗膜、防食塗膜付き基材及びその製造方法 - Google Patents

防食塗料組成物、防食塗膜、防食塗膜付き基材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、劣化塗膜表面、特にタールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等から選ばれる塗料により形成された劣化塗膜の劣化層を除去することなく、さらに該劣化塗膜の表面に遊離した水分が付着している湿潤面であっても、防食性に優れるとともに、該劣化塗膜との付着性に優れた塗膜を形成することができる防食塗料組成物、該防食塗料組成物より形成された防食塗膜、該防食塗膜にて被覆されてなる防食塗膜付き基材及び該防食塗膜付き基材の製造方法に関する。
船舶、陸上構造物、橋梁等の大型の鉄鋼構造物には、腐食防止のため、タールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等の防食塗料による防食塗膜で被覆されている。しかし、その防食塗膜の表面は、経年、屋外での曝露、没水等によって劣化するため、定期的な補修を必要とする。その劣化塗膜に対して、前処理を行うことなく一般的な防食塗料で補修塗装すると、上記劣化塗膜と補修塗装した防食塗膜との間で、十分な付着性が得られないため、割れや剥離等を生じるといった問題がある。
従来、前述の問題への対策として、前記劣化塗膜表面に補修用塗料を塗装する際、劣化塗膜の劣化層をブラスト処理や電動工具、手工具、ウォータージェット等で除去した後、補修用塗料が塗装されている。しかし、この劣化層の除去には多大な労力と費用を要するため、係る除去処理を必要としない水洗浄のみの簡易な前処理で塗装可能な補修用塗料が望まれている。さらに、水洗浄した劣化塗膜の乾燥工程を削減するため、上記劣化塗膜の湿潤面に補修塗装を行っても、割れや剥離等の問題を生じない防食性に優れた塗膜を形成できる防食塗料組成物を開発できれば、特にバラストタンクのような劣化塗膜表面を完全に乾燥させることが困難な構造物や、水洗浄後に被塗物の十分な乾燥時間を取ることが難しい補修施工、また天候に左右される屋外での補修用途に適しており、係る補修の労力、費用の削減に有効である。
特許文献1には、1分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を樹脂成分として含有する有機溶剤型又は無溶剤型の塗料固形分100重量部あたり1〜30重量部の水分を含有することを特徴とする塗料組成物、及びタールエポキシ樹脂塗料などの高防食塗料から形成された 塗膜の劣化塗膜表面に、上記塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法が開示されている。
特許文献2には、タールエポキシ樹脂塗膜、タールウレタン樹脂塗膜、変性エポキシ樹脂塗膜、変性ウレタン樹脂塗膜、エポキシ−ポリアミン樹脂塗膜及びエポキシウレタン樹脂塗膜から選ばれ且つ塗膜中の水分含有量が0.3〜5重量%である劣化塗膜の上に、1分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を樹脂成分として含有するエポキシ−ポリアミン樹脂系塗料を塗装することを特徴とする補修塗装方法が開示されている。
特許文献3には、有機硅酸エステルを含まない二液反応硬化型エポキシ樹脂配合物に於いて、エポキシ化合物側及びその硬化剤側の少なくとも一方に水を含む事により、混合時にチキソトロピーを持つ目止め剤が開示されている。
特許文献1では、劣化塗膜付き基材への塗装が検討されており、ここで開示されている組成物は、劣化塗膜に対する初期付着性に優れていることが明らかにされている。しかしながら、一般的に、塗膜の付着性は、塩水、高温高湿環境に晒されることにより低下することが知られており、特許文献1で開示されている組成物により形成された塗膜では、上記環境に晒されることが多い防食用途の劣化塗膜に対する付着性は不十分である。 また、ここで開示されている組成物は、湿潤面を有する劣化塗膜付き基材への塗装を検討されていないが、湿潤面を有する劣化塗膜付き基材に対する付着性も不十分である。
特許文献2では、塗膜中に所定の水分含有量を有する劣化塗膜に対する補修塗装方法について検討されており、[0016]段落には、塗膜表面に水分が結露していてもよいが、目視で塗膜表面に遊離した水分がない状態であることが望ましいことが記載されている。また、特許文献2の実施例において、劣化塗膜の各種水分含有量はカールフィッシャー法で測定されているが、[0017]段落には、測定すべき塗膜の表面に遊離した水分が存在する場合には、除去した後、水分含有量をカールフィッシャー法により測定することが記載されている。したがって、湿潤面を有する劣化塗膜付き基材への塗装については検討されていない。また、この特許文献2で開示されているエポキシ−ポリアミン樹脂系塗料には、塗料組成物中に水を積極的に含有させるとの技術的思想がなく、湿潤面を有する劣化塗膜付き基材に対する付着性は不十分である。
特許文献3では、劣化塗膜付き基材あるいはその湿潤面への塗装を検討されていないが、ここで開示されている組成物では、いずれの基材に対する付着性も不十分である。
特開2001−2986号公報 特開2001−300417号公報 特開平6−172697号公報
本発明は、前述した従来技術における課題を解決しようとするものであって、劣化塗膜表面、特にタールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等から選ばれる塗料により形成された劣化塗膜表面に対して、その劣化層を除去することなく、さらに該劣化塗膜が湿潤面を有している状態であっても、防食性に優れるとともに、付着性 に優れた塗膜を形成することができる防食塗料組成物、防食塗膜、防食塗膜付き基材及びその塗膜付き基材の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂系防食塗料に対し、水との親和性を有するアミン硬化剤を選択し、且つ防食塗料中に所定量の水、扁平状顔料を含有させることにより、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成は以下の通りである。
劣化塗膜で被覆された基材の湿潤面に塗装可能な塗料組成物であって、
エポキシ樹脂(A)と、
ポリオキシアルキレンポリアミン、マンニッヒ変性アミン類及びケチミン類から選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤(B)と、
上記塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して1〜15重量部の水(C)と、
扁平状顔料(D)と、
を含むことを特徴とする防食塗料組成物。
前記劣化塗膜は、タールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等から選ばれる1種の塗料により形成された塗膜であることが好ましい。
前記アミン硬化剤(B)として、ポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類及びケチミン類の内で、少なくともポリオキシアルキレンポリアミン類を含むことが好ましい。
前記防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、前記アミン硬化剤(B)として、少なくともポリオキシアルキレンポリアミン類を0.01〜20重量部(不揮発分)の量で含むことが好ましい。
前記防食塗料組成物に、さらにエポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)と変性エポキシ樹脂(E2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明に係る防食塗膜は、前記防食塗料組成物から形成される。
本発明に係る防食塗膜付き基材は、前記防食塗料組成物より形成された防食塗膜にて、前記劣化塗膜付き基材の表面が被覆されてなる。
本発明に係る防食塗膜付き基材の製造方法は、前記劣化塗膜付き基材の表面を、前記防食塗料組成物を塗装する工程、及び塗装された前記防食塗料組成物を硬化させて防食塗膜を形成する工程を有する。
本発明に係る防食塗料組成物は、タールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等から選ばれる防食塗料により形成された劣化塗膜の劣化層を除去することなく、表面に遊離した水分が付着していない該劣化塗膜(以下、乾燥した劣化塗膜という。)表面はもとより、該劣化塗膜の湿潤面に塗装しても、防食性に優れるとともに、付着性に優れた防食塗膜を形成することができる。
図1は、防食塗膜の上塗り付着性試験の一例を示す概略図である。
以下、本発明の防食塗料組成物、防食塗膜、防食塗膜付き基材及びその製造方法について、好適な態様を含めて詳細に説明する。
<防食塗料組成物(防食塗料ともいう。)>
本発明に係る防食塗料組成物は、エポキシ樹脂(A)と、ポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類及びケチミン類から選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤(B)と、上記塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して1〜15重量部の水(C)と、扁平状顔料(D)とを含むことを特徴とする。
本発明に係る防食塗料組成物は、さらに、任意でエポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)と変性エポキシ樹脂(E2)からなる群から選ばれる少なくとも1 種をそれぞれ含むことが好ましい。
<劣化塗膜付き基材>
本発明に係る劣化塗膜付き基材は、例えば、金属、木材、プラスチック、石材、スレート、コンクリート、モルタル等の基材表面が一般的な防食塗料組成物等により形成された劣化塗膜で被覆されている。特に、基材表面を、タールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料、無機ジンク塗料等から選ばれる1種の塗料により形成された劣化塗膜で被覆されていることが好ましく、タールエポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、エポキシジンク塗料等のエポキシ樹脂系の防食塗料から選ばれる1種の塗料により形成された劣化塗膜で被覆されていることがより好ましい。
<湿潤面 >
本発明における湿潤面の水分量は、乾燥した劣化塗膜の表面に対して、霧吹きで水を吹き付けて均一に付着させ、吹き付けた水分の重量(単位:g)を測定することで、劣化塗膜表面の水分付着量(単位:g/m)を調べた。なお、鋼板や劣化塗膜の表面に既に水が付着して湿潤面となっている場合、その湿潤面の水分量(単位:g/m)は、例えば、湿潤面を乾燥させることによる重量減少(単位:g)を求めること等により測定できる。
本発明に係る防食塗料組成物が塗装される劣化塗膜の湿潤面は、その好ましい態様において、非吸水性の基材である鋼板等の表面が劣化塗膜で被覆されている場合、該劣化塗膜表面に5〜45g/mの水分が付着しており、通常、目視で遊離した水分を確認できることが多い。例えば、大型の鉄鋼構造物の劣化塗膜表面に、降雨、水洗浄又は高湿度下での結露等によって、水分が付着している状態が湿潤面として想定される。特に、バラストタンクのような閉鎖された空間では、劣化塗膜の洗浄に使用した水やバラスト水の残水の影響によって高湿度になりやすく、その劣化塗膜表面に結露することで、湿潤面を生じていることが多い。
<エポキシ樹脂(A)>
本発明に係る防食塗料組成物において、前記エポキシ樹脂(A)は、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーあるいはオリゴマー、及びそのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーあるいはオリゴマー等であり、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、劣化塗膜 に対する付着性に優れた防食塗膜を形成することができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールA型及びビスフェノールF型のビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、上記エポキシ樹脂(A)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類の縮重合物等が挙げられ、この縮重合物を形成するビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキシドジグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂(A)は、 劣化塗膜に対して優れた付着性を示す防食塗膜を形成できる等の点から、前記アミン硬化剤(B)等と反応硬化前の状態では、常温で液状または半固形状のものが好ましい。
前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、防食性等の点から、好ましくは150〜1000、より好ましくは150〜800、特に好ましくは180〜700である。なお、エポキシ当量は、JIS K 7236に基づいて算出される。
前記エポキシ樹脂(A)は、従来公知の方法で合成して得たものでもよく、市販品であってもよい。本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)の内、常温(15〜25℃の温度、以下同様。)で液状のものとして、「E028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180〜190、不揮発分100%)、「jER 807」(三菱化学(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160〜175、不揮発分100%)、「E−028−90X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(828タイプエポキシ樹脂溶液、エポキシ当量200〜210、不揮発分90%)等が挙げられ、常温で半固形状のものとして、「jER 834」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270、不揮発分100%)、「E−834−85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液、エポキシ当量270〜320、不揮発分85%)等が挙げられ、常温で固形状のものとして、「jER 1001」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500、不揮発分100%)、「E−001−75」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量600〜660、不揮発分75%)等が挙げられる。
前記エポキシ樹脂(A)は、本発明の防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、好ましくは5〜40重量部(不揮発分)、より好ましくは10〜30重量部(不揮発分)の量で含まれることが望ましい。
また、本発明の防食塗料組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の塗料組成物である場合、前記エポキシ樹脂(A)は主剤成分に含まれ、該主剤成分100重量部(不揮発分)中に、好ましくは5〜80重量部(不揮発分)、より好ましくは5〜50重量部(不揮発分)の量で含まれることが望ましい。
なお、不揮発分とは、反応性成分(例:エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)等)を含有する本発明に係る防食塗料組成物において、該防食塗料組成物に対する十分に反応硬化した該塗料からなる塗膜の重量百分率を意味する。上記不揮発分は、JIS K5601−1−2に準拠して、上記防食塗料組成物を1±0.1g採取した試料を加熱温度125℃で1時間(常圧下)加熱し、加熱残分を得、該塗料組成物に対するその加熱残分の重量百分率として算出される。
同様に、本発明に係る防食塗料組成物の各成分の不揮発分は、JIS K5601−1−2に準拠して算出することができる。
<アミン硬化剤(B)>
本発明に係る防食塗料組成物において、前記アミン硬化剤(B)として、水との親和性を有するポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類、ケチミン類から選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤を含有する。
また、本発明に係る防食塗料組成物の硬化剤成分には、アミン硬化剤(B)であるポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類、ケチミン類に加えて、通常のエポキシ樹脂系防食塗料に使用されるアミン硬化剤(B)以外の任意のアミン硬化剤(例:ポリアミドアミン、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、脂肪族アミンアダクト等)を含むことができる。
特に、前記硬化剤成分に、前記アミン硬化剤(B)としてポリオキシアルキレンポリアミン類を単独で、あるいはポリオキシアルキレンポリアミン類とその他のアミン硬化剤(B)を含有し、必要に応じて アミン硬化剤(B)以外の任意のアミン硬化剤を組み合わせて用いても良く、形成される防食塗膜は、乾燥した劣化塗膜はもとより、湿潤面を有する劣化塗膜、特に劣化塗膜表面の水分付着量が5〜45g/mである劣化塗膜に対して優れた付着性を示す傾向があるため好ましい。
つまり、前記アミン硬化剤(B)の態様として、(i)ポリオキシアルキレンポリアミン類のみ、(ii)ポリオキシアルキレンポリアミン類と、マンニッヒ変性アミン類、(iii)ポリオキシアルキレンポリアミン類と、ケチミン類、(iv)ポリオキシアルキレンポリアミン類と、マンニッヒ変性アミン類及びケチミン類の4態様が、乾燥した劣化塗膜への付着性はもとより、湿潤面を有する劣化塗膜への付着性にも優れる点で好ましい。さらに、前記硬化剤成分としては、上記(i)〜(iv)に加えて、アミン硬化剤(B)以外の任意のアミン硬化剤を含むことができる。
前記硬化剤成分にポリオキシアルキレンポリアミン類を、その他のアミン硬化剤(B)や アミン硬化剤(B)以外の任意のアミン硬化剤と組み合わせて用いる場合、防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、前記アミン硬化剤(B)としてポリオキシアルキレンポリアミン類を、好ましくは0.01〜20重量部(不揮発分)、より好ましくは1〜10重量部(不揮発分)、特に好ましくは2〜8重量部(不揮発分)の量で含むことが望ましい。
本発明に係る防食塗料組成物において、前記アミン硬化剤(B)と前記エポキシ樹脂(A)とは、その当量比(活性水素当量/エポキシ当量)が、好ましくは0.3〜1.5、より好ましくは0.4〜1.0となるような量で用いることが、硬化速度、防食性等の点より望ましい。
本発明で用いられるポリオキシアルキレンポリアミン類としては、「Jeffamine D−230」(ハンツマン・ジャパン(株)製、ポリオキシプロピレンジアミン、活性水素当量60、不揮発分100%)、「Jeffamine D−400」(ハンツマン・ジャパン(株)製、ポリオキシプロピレンジアミン、活性水素当量115)、「Jeffamine D−2000」(ハンツマン・ジャパン(株)製、ポリオキシプロピレンジアミン、活性水素当量514)や「Jeffamine T−403」(ハンツマン・ジャパン(株)製、ポリオキシプロピレントリアミン、活性水素当量81)等が挙げられる。
本発明で用いられるマンニッヒ変性アミン類としては、「MAD−204(A)」(大竹明新化学(株)製、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、活性水素当量202、不揮発分65%)、「アデカハードナー EH−342W 3」((株)ADEKA製、マンニッヒ変性ポリアミドアミン、活性水素当量110)、「Sunmide CX−1154」(三和化学(株)製、マンニッヒ変性脂肪族ポリアミン、活性水素当量255)、「Cardolite NX−4918」(カードライト社製、カルダノールとアミンのマンニッヒ変性アミン類であるフェナルカミン、活性水素当量255、不揮発分80%)、「Cardolite NC556X80」(カードライト社製、フェナルカミンアダクト、活性水素当量135)、フェナルカミンとカルボン酸類との反応物であるフェナルカマイド等が挙げられる。
本発明で用いられるケチミン類としては、「Ancamine 2459」(エアプロダクツ(株)製、活性水素当量101、不揮発分80%)等が挙げられる。
前記アミン硬化剤(B)以外の任意のアミン硬化剤としては、「PA−290(A)」(大竹明新化学(株)製、ポリアミドアミン、活性水素当量277、不揮発分59%)、「Sunmide P−1003」(エアプロダクツ(株)製、脂肪族アミンアダクト、活性水素当量125、不揮発分60%)、「AD−200P」(大竹明新化学(株)製、脂肪族アミンアダクト(メタキシレンジアミンのエポキシアダクト物)、活性水素当量155、不揮発分90%)等が挙げられる。
<水(C)>
本発明に係る防食塗料組成物において、前記水(C)は、防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜7重量部の量で含まれることが望ましい。
前記防食塗料組成物中の前記水(C)が1重量部未満では、湿潤面を有する劣化塗膜上に塗装した際、該劣化塗膜と形成される防食塗膜との付着性が不十分となる。一方、15重量部を超えると該防食塗膜の防食性が低下する傾向にある。
<扁平状顔料(D)>
本発明に係る防食塗料組成物において、前記扁平状顔料(D)は、メディアン径(D50)が30〜200μmであり、且つ平均アスペクト比(メディアン径/平均厚さ)が30〜100であることが、劣化塗膜との付着性を向上する点で望ましい。
メディアン径(D50)は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、例えば「XL−30」(フィリップス社製)を用いて扁平状顔料(D)の主面に対して水平方向から観察し、数十〜数百個の顔料粒子の厚さを測定することで、その平均値として算出できる。
前記扁平状顔料(D)として、例えば、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられ、安価で入手容易であり、前述の塗膜の内部応力を緩和することによる付着性向上効果をより得られ易い点からマイカが好ましい。上記マイカとしては、「スゾライトマイカ 200−HK」(西日本貿易(株)製、メディアン径(D50):65μm、平均アスペクト比:54) 等が挙げられる。
また、上記扁平状顔料(D)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記扁平状顔料(D)は、前記効果により優れた防食塗膜を形成することができる点から、本発明の防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜20重量部の量で含まれることが望ましい。
本発明に係る防食塗料組成物により形成された防食塗膜が、劣化塗膜表面に対して優れた付着性を有する理由として、本発明者らは、乾燥した劣化塗膜表面への付着性(理由1)、又は湿潤面を有する劣化塗膜表面への付着性(理由2)についてそれぞれ下記のように推定している。
(理由1)
前記劣化塗膜は、該劣化塗膜を形成している塗料中の樹脂の種類に依らず、海水への浸漬や太陽光に晒されることにより、表面が疎水性から親水性に変化していく傾向がある。劣化塗膜表面に塗装される防食塗料組成物に所定量の水を含有させることによって塗料の親水性が高くなり、上記劣化塗膜表面に対して濡れ易く(なじみ易く)なるため付着性が向上する。さらに、該防食塗料組成物に扁平状顔料を含有させることで、形成される防食塗膜の内部応力が緩和される。したがって、本発明に係る防食塗料組成物は、乾燥した劣化塗膜に対して優れた付着性を有する。
(理由2)
防食塗料組成物に、水との親和性を有する特定のアミン硬化剤を含有させることにより、該防食塗料組成物を前記劣化塗膜の湿潤面に塗装した際、付着を阻害する要因となる該劣化塗膜表面に付着している遊離した水分の一部あるいは全部を、弾くのではなく防食塗料中に取り込む効果を示す。ここで、水との親和性を有するアミン硬化剤とは、ポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類、ケチミン類から選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤である。上記ポリオキシアルキレンポリアミン類は分子中に極性の高いエーテル結合を有することにより、上記マンニッヒ変性アミン類は分子中に水酸基を有することにより、水との親和性を有するため、上述の遊離した水分を防食塗料中に取り込む効果を示す。また、上記ケチミン類は水分と反応し、アミン硬化剤とケトンを生成する過程で、上記遊離した水分を防食塗料中に取り込む効果を示す。さらに、上記防食塗料組成物に所定量の水を含有させることにより、塗料の親水性が高くなるため、(理由1)と同様に、上記劣化塗膜表面に対して濡れ易く(なじみ易く)なるだけでなく、上記遊離した水分を取り込む効果も向上させている。ただし、防食塗料組成物に、水との親和性を有する特定のアミン硬化剤、あるいは、所定量の水のいずれか一方のみを含有させるだけでは、上記遊離した水分を防食塗料中に取り込む効果は十分ではなく、湿潤面を有する劣化塗膜表面への付着性は得られない。
防食塗料組成物が、湿潤面を有する劣化塗膜表面に対して優れた付着性を示すには、前記遊離した水分を防食塗料中に取り込む効果だけでは不十分であり、特定のアミン硬化剤及び所定量の水に加えて、さらに扁平状顔料を含有させることによって、(理由1)と同様に、形成される防食塗膜の内部応力の緩和による付着性向上効果が得られる。したがって、本発明に係る防食塗料組成物は、上記遊離した水分を防食塗料中に取り込む効果、及び、上記内部応力の緩和による付着性向上効果の相乗効果によって、湿潤面を有する劣化塗膜表面に対して優れた付着性を有する。
<主剤成分に添加可能なその他の塗膜形成成分>
本発明に係る防食塗料組成物の主剤成分には、前記エポキシ樹脂(A)以外に、添加剤として、エポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)と変性エポキシ樹脂(E2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
前記エポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)として、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1〜15、好ましくは11〜15)、バーサティック酸(Versatic acid)、グリシジルエステル(RC−COO−Gly、R+R+R=C8〜C10のアルキル基、Gly:グリシジル基)、α−オレフィンエポキサイド(CH−(CH)n−Gly、n=11〜13、Gly:同上)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O−(CH −O−Gly、Gly:同上)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly−O−CH−C(CH−CH−O−Gly、Gly:同上)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(CH−CH−C(CH−O−Gly)、Gly:同上)、アルキルフェニルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1〜20、好ましくは1〜5、例:メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル)等が挙げられる。
これらのエポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)の内では、単官能のフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテルが低粘度であるため、希釈効果(塗料の低粘度化)に優れ、塗料のハイソリッド化(塗料組成物中に含まれる塗膜形成成分の含有率を高めることで、溶剤蒸発による塗膜の収縮を抑制できる。)に寄与することができ、結果として湿潤面を有する劣化塗膜との付着性を向上するため好ましい。
前記エポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなエポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)としては、「Epodil 759」(エアプロダクツ(株)製、アルキル(C12−C13)グリシジルエーテル、エポキシ当量285、不揮発分100%)、「Cardolite 2513HP」(カードライト社製、アルキルフェノールグリシジルエーテル、エポキシ当量400、不揮発分100%)が挙げられる。
前記エポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)は、本発明に係る防食塗料組成物の主剤成分中に、前記エポキシ樹脂(A)100重量部(不揮発分)に対し、好ましくは0〜40重量部(不揮発分)、より好ましくは0〜20重量部(不揮発分)の量で含まれることが望ましい。
前記変性エポキシ樹脂(E2)として、脂肪酸変性エポキシ樹脂や水素化エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明で用いられる脂肪酸変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が好ましくは150〜1,000、より好ましくは170〜700、特に好ましくは400〜600の前記エポキシ樹脂(A)をダイマー酸変性したものが好ましい。エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が1,000を超える場合は、該脂肪酸変性エポキシ樹脂からなる硬化塗膜の架橋密度が低くなり、エポキシ樹脂が本来有する防食性を損なう傾向にある。
前記ダイマー酸とは、不飽和脂肪酸の二量体であり、通常少量の単量体または三量体を含んでいる。上記不飽和脂肪酸としては、炭素原子数(カルボキシル基の炭素原子も含む)が12〜24個、好ましくは16〜18個で、1分子中に不飽和結合を1個または2個以上有するカルボン酸化合物が用いられる。このような不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸等の不飽和結合を1個有する脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸等の不飽和結合を2個有する脂肪酸;リノレイン酸、アラキドン酸等の不飽和結合を3個以上有する脂肪酸が挙げられる。さらに、動植物から得られる脂肪酸も用いることができ、例えば大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸変性エポキシ樹脂おけるダイマー酸による変性量は、エポキシ樹脂(A)100重量部(不揮発分)に対し、4〜30重量部(不揮発分)、好ましくは5〜20重量部(不揮発分)であることが望ましい。この変性量が4重量部(不揮発分)未満では、得られた変性エポキシ樹脂の芳香族系溶剤への相溶性が低く、また可撓性も十分でない。一方、この変性量が30重量部(不揮発分)を超えると、エポキシ樹脂が本来有する防食性、付着性が損なわれる傾向にある。
前記脂肪酸変性エポキシ樹脂は、前述の好ましいエポキシ当量を有する前記エポキシ樹脂(A)とダイマー酸とを反応させて得られる。脂肪酸変性エポキシ樹脂に用いるエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が150未満である場合、ダイマー酸による変性量が4重量部(不揮発分)以上の脂肪酸変性エポキシ樹脂を合成することが困難となる傾向にある。
本発明で用いられる脂肪酸変性エポキシ樹脂の合成法は、特に限定されることなく公知の方法が用いられる。例えば、液状エポキシ樹脂とビスフェノールとの反応によって、あるいはエピクロロヒドリンとビスフェノールとの反応によって先ず常温で固形または半固形のエポキシ樹脂を合成し、次いで、脂肪酸を加え、反応させて得る方法(二段法)、液状エポキシ樹脂、ビスフェノール、脂肪酸を同時に反応させる方法(一段法)等がある。
前記二段法においては、通常のエポキシ化反応で用いられている触媒を用いて、50〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度でエポキシ樹脂を先ず合成する。この合成の際に用いられる触媒としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメチラート等のアルカリ金属アルコラート;塩化リチウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属塩;ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の三級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロラライド等の四級アンモニウム塩;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物;三フッ化ヒ素、塩化アルミニウム、四塩化錫、三フッ化ヒ素のジエチルエーテル錯体等のルイス酸類;沃化メチル付加物等が挙げられる。
次に、前述のようにして得られたエポキシ樹脂に、所定量の脂肪酸を加え、100〜200℃ にて三級アミン、四級アンモニウム塩、沃化メチル付加物等の触媒存在下で、エポキシ樹脂と脂肪酸とを反応させる。なお、前記液状エポキシ樹脂、ビスフェノール、脂肪酸を同時に反応させる一段法においても、これらの成分に、三級アミン、四級アンモニウム塩、沃化メチル付加物等の触媒を加え、100〜200℃にて反応させ、脂肪酸変性エポキシ樹脂を合成する。これらの反応に用いられる触媒量は、反応物の合計重量に対して、好ましくは0.01〜10,000ppm、より好ましくは0.1〜 1,000ppm程度である。
前記脂肪酸変性エポキシ樹脂としては、「KE−8174X90」(KOLONケミカル社製、キシレンカット品、エポキシ当量230〜270、不揮発分90%)、「DME−111」(大竹明新化学(株)製、キシレンカット品、エポキシ当量260、不揮発分90%)等が挙げられる。
本発明で用いられる水素化エポキシ樹脂は、エポキシ当量が好ましくは150〜1,000の芳香環を有するエポキシ樹脂を、触媒存在下の加圧下で選択的に水素化反応を行うことにより得られる常温で液状のものが好ましい。
前記芳香環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。
特に、これらの芳香環を有するエポキシ樹脂の内、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
前記水素化エポキシ樹脂は、従来の公知の水素化方法により製造することができる。例えば、原料である前記芳香環を有するエポキシ樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系の有機溶剤に溶解し、ロジウムまたはルテニウムをグラファイト(六方晶結晶の黒鉛)に担持した触媒の存在下で反応させることにより、芳香環を選択的に水素化することができる。上記グラファイトとして、表面積が10m/g以上、400m/g以下のものが用いられる。上記反応は、通常、圧力1〜30MPa、温度30〜150℃で1〜20時間かけて行われる。反応終了後、触媒を濾過により除去し、エーテル系有機溶剤が実質的に無くなるまで減圧留去することで、目的の水素化エポキシ樹脂が得られる。
前記水素化エポキシ樹脂としては、「リカレジンHBE−100」(新日本理化学(株)製、脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、エポキシ当量215、不揮発分100%)等が挙げられる。
前記変性エポキシ樹脂(E2)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記変性エポキシ樹脂(E2)は、本発明に係る防食塗料組成物の主剤成分中に、エポキシ樹脂(A)100重量部(不揮発分)に対して好ましくは0〜100重量部(不揮発分)、より好ましくは0〜50重量部(不揮発分)、特に好ましくは0〜30重量部(不揮発分)の量で含まれることが望ましい。
<硬化剤成分に添加可能なその他の成分>
本発明に係る防食塗料組成物の硬化剤成分には、前記アミン硬化剤(B)以外に、硬化速度の調整、特に促進に寄与できる硬化促進剤を任意で含むことができる。該硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類が挙げられる。
前記硬化促進剤としては、トリエタノールアミン(N(COH))、ジアルキルアミノメタノール({CH(CHNCHOH、n:繰返し数)、トリエチレンジアミン(1,4−ジアザシクロ(2,2,2)オクタン)、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(C−CHN(CH、具体的には、「バーサミン EH30」:ヘンケル白水(株)製、「Ancamine K−54」:エアプロダクツ(株)製)等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、本発明の防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、必要により、0.1〜2.0重量部(不揮発分)の量で含まれる。
<その他の成分>
本発明に係る防食塗料組成物には、これまでに述べた諸成分の他に、必要に応じて、前記扁平状顔料(D)以外の顔料、溶剤、シランカップリング剤、湿潤分散剤、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、無機脱水剤(安定剤)、防汚剤等を、本発明の目的を損なわない限りで含むことができる。
<扁平状顔料(D)以外の顔料>
前記顔料としては、扁平状顔料(D)以外であれば特に限定されず、一般的に塗料組成物に用いられているものを使用することができ、例えば、硫酸バリウム、カリ長石、バライト粉、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、チタン白、弁柄、黄色弁柄、カーボンブラック等の着色顔料が挙げられる。上記顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤>
前記溶剤は、エポキシ樹脂(A)を溶解可能なものであればその沸点によって特に限定されるものではなく、本発明に係る防食塗料組成物の塗装作業性に応じて適宜選択して用いることができる。前記溶剤として、例えば、キシレン、トルエン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、1−メトキシ−2−プロパノール、MEK(メチルエチルケトン)、酢酸ブチル、n−ブタノール、iso−ブタノール、IPA(イソプロピルアルコール)等が挙げられ、これらの溶剤を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、これら溶剤の配合量は通常、特に限定されないが、劣化塗膜の湿潤面との付着性の点から、キシレンやトルエン等の芳香族系の溶剤を用いる場合、本発明の防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、好ましくは0〜20重量部、より好ましくは0〜10重量部の量で含まれることが望ましい。
<シランカップリング剤>
前記シランカップリング剤としては、特に制限されず、従来公知のものを用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの加水分解性基を有し、基材に対する付着性の向上、塗料粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:X−SiMe3−n[nは0あるいは1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、またはこれらの基を含有する炭化水素基、ならびに上記炭化水素基の炭素原子間の結合がエーテル結合に置換してなる基等。)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基)を示す。] で表わされる化合物であることがより好ましい。このようなシランカップリング剤としては、「KBM403」(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
前記シランカップリング剤を用いる場合、本発明の防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、好ましくは0.1〜10重量部(不揮発分)、より好ましくは0.5〜5重量部(不揮発分)の量で含まれることが望ましい。本発明に係る防食塗料組成物にこのような量でシランカップリング剤を用いると、得られる防食塗膜の付着性等の塗膜性能が向上し、特にハイソリッド防食塗料組成物では塗料粘度を下げることで塗装作業性が向上する。
<湿潤分散剤>
前記湿潤分散剤としては、ポリアルキルエーテル構造を有するものが好ましく、例えば、「プライサーフ A208B」(第一工業製薬(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、不揮発分98%)、「プライサーフ A208F」(第一工業製薬(株)製、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いていることができる。
<可塑剤>
前記可塑剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができ、得られる防食塗膜の柔軟性及び耐侯性等を向上させることができる。特に、湿潤面を有する劣化塗膜との付着性が向上する点で、反応性基を有する可塑剤を用いることが望ましい。
前記可塑剤としては、常温で液状であるナフサを熱分解して得られる低沸点留分等の液状炭化水素樹脂や、常温で固形である石油系樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。例えば、特開2006−342360号公報に記載の液状炭化水素樹脂及び可撓性付与樹脂等が挙げられる。
前記液状炭化水素樹脂の市販品としては、「ネシレス EPX−L」、「ネシレス EPX−L2」(以上、NEVCIN社製、フェノール変性炭化水素樹脂)、「HILENOL PL−1000S」(KOLONケミカル社製、フェノール変性炭化水素樹脂)、石油系樹脂の市販品としては、「ネオポリマー E−100」、「ネオポリマー K−2」、「ネオポリマー K3」(以上、新日本石油化学(株)製、C9系炭化水素樹脂)、クマロンインデン樹脂の市販品としては、「NOVARES CA 100」(Rutgers Chemicals AG社製)、キシレン樹脂の市販品としては「ニカノール Y−51」(三菱ガス化学(株)製)等が挙げられる。
<本発明に係る防食塗料組成物の用途>
船舶、陸上構造物、橋梁等の大型の鉄鋼構造物は、腐食防止を目的とした防食塗膜で被覆されているが、該塗膜は経年、屋外への暴露、没水等により劣化するため、定期的な補修塗装を必要とする。本発明に係る防食塗料組成物は、該劣化塗膜表面に対し、劣化層を除去することなく、且つ、該劣化塗膜表面に遊離した水分が付着している湿潤面であっても、防食性、付着性に優れた塗膜を形成することができる。したがって特にバラストタンクのような劣化塗膜表面を完全に乾燥させることが困難な構造物や、水洗浄後に劣化塗膜表面の十分な乾燥時間を取ることが難しい補修施工、また天候に左右される屋外での補修用途等の湿潤面を有する劣化塗膜へ塗装する用途に適している。
本発明に係る防食塗料組成物を、劣化塗膜の湿潤面に塗装する際、劣化塗膜表面の水分付着量が5〜45g/mである場合、スプレー塗装が適しており、また、該劣化塗膜表面の水分付着量が45g/mより多い場合、刷毛、ローラー、ヘラ、コテによる塗装が適している。本発明に係る防食塗料組成物は、劣化塗膜表面の水分付着量によって、適切な塗装方法を選択することにより、例え水中であっても塗装可能であり、該防食塗料より形成される防食塗膜は、劣化塗膜の湿潤面に対して良好な付着性を有する。
前記スプレー塗装の条件は、形成したい防食塗膜の厚みに応じて適宜調整すればよいが、エアレススプレー時には、例えば、1次(空気)圧:0.4〜0.8MPa程度、2次(塗料)圧:10〜26MPa程度、ガン移動速度50〜120cm/秒程度が好ましい。
本発明に係る防食塗膜の膜厚は、所望の防食性を示す厚みであれば特に制限されないが、好ましくは100〜450μm、より好ましくは250〜400μmである。
このような膜厚の防食塗膜を形成する際、1回の塗装で、所望の厚みの防食塗膜を形成してもよいし、求められる防食性に応じ、2回(必要によりそれ以上)の塗装で、所望の厚みの防食塗膜を形成してもよい。より均質な塗膜を形成し易いため、2回塗り(必要によりそれ以上)で前記範囲の厚みの防食塗膜を形成することが好ましい。
本発明に係る防食塗料より形成される防食塗膜を硬化(乾燥)させる方法としては特に制限されず、硬化(乾燥)時間を短縮させるために50〜60℃程度に加熱することもできるが、通常は、常温、常圧で1〜14日程度放置することで硬化させる。
本発明に係る防食塗膜付き基材の製造方法は、劣化塗膜付き基材あるいはその湿潤面に対して、適切な塗装方法で前記防食塗料組成物を塗装する工程、及び塗装された該防食塗料組成物を前述の条件で硬化させて防食塗膜を形成する工程からなる。
さらに、所望の用途に応じて、前記防食塗膜付き基材の防食塗膜の上に、防汚塗料等の従来公知の上塗り塗料を塗布し、硬化させてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明の実施例に用いた主な材料を表1に示す。
Figure 0006629539
[実施例1]
下記表2に示すように、容器に、エポキシ樹脂「E−028」(注1)26重量部、反応性希釈剤「Epodil 759」(注3)5重量部、キシレン8.重量部、n−ブタノール3重量部、MIBK(メチルイソブチルケトン)2重量部、シランカップリング剤「KBM403」(注5)1重量部、タルク25重量部、マイカ「スゾライトマイカ 200−HK」(注6)5重量部、カリ長石16重量部、チタン白5重量部、タレ止め剤1.5重量部を入れ、そこにガラスビーズを加えてペイントシェーカーでこれらの配合成分を混合した。次いで、ガラスビーズを取り除き、水2重量部及び湿潤分散剤「プライサーフ A208B」(注7)0.重量部を入れ、ハイスピードディスパーを用いて室温(23℃)で均一になるまで分散し、その後56〜60℃に加温した後、30℃以下まで冷却し、防食塗料組成物を構成する主剤成分を調製した。
また、下記表2に示すように、ポリオキシアルキレンポリアミン「Jeffamine D−230」(注8)4重量部、フェナルカミン「Cardolite NX−4918」(注9)9重量部、三級アミン「Ancamine K−54」(注15)0.2重量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール0.8重量部を、ハイスピードディスパーを用いて(常温、常圧下で)混合することで、防食塗料組成物を構成する硬化剤成分を調製した。
得られた主剤成分と硬化剤成分を、塗装前に混合することで防食塗料組成物を調製した。
[実施例2〜13及び比較例1〜6]
実施例1の主剤成分及び硬化剤成分にそれぞれ含まれる成分及び配合量を、下記表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして各防食塗料組成物を調製した。
Figure 0006629539
劣化塗膜付き試験板の作成
タールエポキシ樹脂塗料(配合組成:「jER 834」2.9重量部、「jER 1001」6重量部、「PA−66」(大竹明新化学(株)製、ポリアミドアミン、活性水素当量226、不揮発分60%)3.5重量部、「ハイタロン TC−77」(エスジーケミカル(株)製、コールタールピッチ)31重量部、タルク36重量部、タレ止め剤1.3重量部、三級アミン「Ancamine K−54」(注15)0.6重量部、キシレン10.9重量部、トルエン2.8重量部、MIBK(メチルイソブチルケトン)2.7重量部、MEK(メチルエチルケトン)0.9重量部、IPA(イソプロピルアルコール)0.7重量部、n−ブタノール0.7重量部)を寸法が150mm×70mm×1.6mm(厚)のブラスト処理された鋼板(以下「試験板」ともいう。)上に、乾燥膜厚150μmとなるようにエアレススプレー(1次(空気)圧:0.6MPa、2次(空気)圧:18Mpa)で塗装し、温度23℃、湿度50%RHの室内で7日乾燥後、屋外に30日間曝露した屋外暴露試験板(A−a)と、40℃の海水中に1年間浸漬させた海中浸漬試験板(A−b)を作成した。
また、前記タールエポキシ樹脂塗料に替えて、変性エポキシ樹脂塗料(配合組成:「E−028−90X」16.5重量部、「MAD−204(A)」(注10)8.1重量部、「PA−290(A)」(注12)4.1重量部、「ネオポリマー E−100」8.7重量部、「HILENOL PL−1000S」3.5重量部、タルク20重量部、マイカ「スゾライトマイカ 200−HK」(注6)5.2重量部、カリ長石13重量部、チタン白5.2重量部、黄色弁柄1.3重量部、シランカップリング剤「KBM403」(注5)0.9重量部、タレ止め剤1.3重量部、三級アミン「Ancamine K−54」(注15)0.1重量部、キシレン8.8重量部、n−ブタノール1.7重量部、1−メトキシ−2−プロパノール1.6重量部)を塗装した以外は、上記と同様にして屋外暴露試験板(B−a)と、海中浸漬試験板(B−b)を作成した。
前記劣化塗膜付き試験板(A−a)、(A−b)、(B−a)、(B−b)を使用して、実施例1〜13及び比較例1〜6で得られた各防食塗料組成物より形成した防食塗膜について、下記(1)〜(6)の試験を行った。結果を下記表3に示す。
(1)基材鋼板面の防食性試験
試験板上に、表2に示す各防食塗料組成物を、乾燥膜厚が約250μmとなるようにそれぞれエアレススプレー(1次(空気)圧:0.6MPa、2次(空気)圧:18MPa) で塗装し、JIS K−5600 1−6に準拠して、23℃、50%RHの雰囲気で7日間乾燥することで、各防食塗膜付き試験板を作成し、下記耐塩水性試験、塩水噴霧試験、耐高温高湿性試験により防食性を評価した。
耐塩水性試験
前記(1)で作成した各防食塗膜付き試験板を、JIS K−5600 6−1に準拠し、40℃の塩水(塩分濃度3%)中に180日間浸漬した後の防食塗膜の外観を、下記基準に従って目視評価した。
塩水噴霧試験
前記(1)で作成した各防食塗膜付き試験板を、JIS K−5600 7−1に準拠し、35±2℃のスプレーキャビネット内に入れ、塩水(塩分濃度5%)を連続的に180日間噴霧した後の防食塗膜の外観を、下記基準に従って目視評価した。
耐高温高湿性試験
前記(1)で作成した各防食塗膜付き試験板を、JIS K−5600 7−2に準拠し、温度50±1℃、湿度95%以上の高温高湿試験器内に180日間保持した後の防食塗膜の外観を、下記基準に従って目視評価した。
(評価基準)
○:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相のいずれも変化なし。
△:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相のいずれかに若干の欠陥(変化)が認められる。
×:フクレ、割れ、サビ、はがれ、色相のいずれかに明らかな欠陥(変化)が認められる。
(2)乾燥した劣化塗膜上の防食性試験
前記劣化塗膜付き試験板(A−b)の表面に 防食塗料組成物を塗装する前に、前記劣化塗膜付き試験板(A−b)の表面から、水洗浄にて塩や埃等の異物を除去し、温度23℃、湿度50%で1時間乾燥させ、劣化塗膜表面に遊離した水分が付着していないことを目視で確認した。続いて、表2に示す各防食塗料組成物を、前記(1)と同様にして塗装、乾燥することで各防食性試験板を作成し、前記(1)と同様に耐塩水性試験、塩水噴霧試験、耐高温高湿性試験により防食性を評価した。
(3)湿潤面を有する劣化塗膜上の防食性試験
前記劣化塗膜付き試験板(A−b)の表面に対して、防食塗料組成物を塗装する直前に、0.2g(19g/m)となるように霧吹きで水を吹き付けて均一に付着させ、劣化塗膜表面に遊離した水分が付着していることを目視で確認した。続いて、表2に示す各防食塗料組成物を、前記(1)と同様にして塗装、乾燥することで各防食性試験板を作成し、前記(1)と同様に耐塩水性試験、塩水噴霧試験、耐高温高湿性試験により防食性を評価した。
(4)乾燥した劣化塗膜表面への上塗り付着性試験
前記(A−a)、(A−b)、(B−a)、(B−b)の各劣化塗膜付き試験板は、上塗り塗装前に、水洗浄にて塩や埃等の異物を除去し、温度23℃、湿度50%で1時間乾燥させ、劣化塗膜表面に遊離した水分が付着していないことを目視で確認した。続いて、表2に示す各防食塗料組成物を、前記(1)と同様にして塗装、乾燥することで各上塗り付着性試験板を作成した。
その後、得られた各上塗り付着性試験板を40℃の塩水(塩分濃度3%)中に30日間浸漬した後の上塗り付着性を以下の方法で評価した。
前記各上塗り付着性試験板(試験板/劣化塗膜/防食塗膜の3層構成)の表面に、図1に示すように、該試験板表面(防食塗膜1)に4cmの切り込みが30°で交差するX字状の切り込み2を、少なくとも劣化塗膜の表面に届く深さまで入れた。次いで、該試験板上のX字状の切り込みを入れた部位3にセロハン粘着テープを貼り付け、テープの一端を防食塗膜面に対し90°に近い角度で引き剥がすことで、劣化塗膜/防食塗膜間の剥離状況(剥離率)を評価した。ここで、剥離率は、切り込みを入れた部位3に対する、劣化塗膜から剥離した防食塗膜の面積の割合を目視により概算し、劣化塗膜と防食塗膜間の上塗り付着性を評価した。
なお、本発明に係る防食塗料組成物は、劣化塗膜と防食塗膜間の上塗り付着性試験結果における剥離率が全体の20%以下であれば、実用上問題なく使用できる。
(評価基準)
○:全く剥離が認められない。
○△:全体の5%未満が剥離している。
△:全体の5〜20%が剥離している。
×:全体の20%を超える部分が剥離している。
(5)湿潤面を有する劣化塗膜表面(I)への上塗り付着性
前記(A−a)、(A−b)、(B−a)、(B−b)の各劣化塗膜付き試験板表面に対して、防食塗料組成物を塗装する直前に、0.1g(9.5g/m)となるように霧吹きで水を吹き付けて均一に付着させ、劣化塗膜表面に遊離した水分が付着していることを目視で確認した。ここで、この状態の劣化塗膜表面を『湿潤面を有する劣化塗膜表面(I)』とする。続いて直ちに(水分量を確認後3分以内)、表2に示す各防食塗料組成物を、前記(1)と同様にして塗装、乾燥することで各上塗り付着性試験板を得た。
その後、得られた各上塗り付着性試験板を40℃の塩水(塩分濃度3%)中に30日間浸漬した後、前記(4)と同様にして上塗り付着性を評価した。
(6)湿潤面を有する劣化塗膜表面(II)への上塗り付着性
前記(A−a)、(A−b)、(B−a)、(B−b)の各劣化塗膜付き試験板表面に対して、防食塗料組成物を塗装する直前に、0.2g(19g/m)となるように霧吹きで水を吹き付けて均一に付着させ、劣化塗膜表面に遊離した水分が付着していることを目視で確認した。ここで、この状態の劣化塗膜表面を『湿潤面を有する劣化塗膜表面(II)』とする。
その後、前記(5)と同様にして上塗り付着性を評価した。
Figure 0006629539
表3の試験結果から明らかなように、本発明で規定する諸条件を満たす塗料組成物を用いることにより、乾燥した劣化塗膜表面はもとより、湿潤面を有する劣化塗膜表面に対しても、防食性に優れるとともに、良好な付着性を有する塗膜を形成することができる。
1:防食塗膜
2:X字状の切り込み
3:切り込みを入れた部位

Claims (7)

  1. 劣化塗膜で被覆された基材の湿潤面に塗装可能な塗料組成物であって、
    エポキシ樹脂(A)と、
    ポリオキシアルキレンポリアミン類、マンニッヒ変性アミン類及びケチミン類から選ばれる少なくとも1種のアミン硬化剤(B)と、
    上記塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して1〜15重量部の水(C)と、
    扁平状顔料(D)と、
    を含み、
    前記アミン硬化剤(B)が、少なくともポリオキシアルキレンポリアミン類を含むことを特徴とする防食塗料組成物。
  2. 前記劣化塗膜が、タールエポキシ樹脂塗料、タールウレタン樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、変性ウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、有機ジンク塗料及び無機ジンク塗料から選ばれる1種の塗料により形成された塗膜であることを特徴とする請求項1に記載の防食塗料組成物。
  3. 前記防食塗料組成物100重量部(不揮発分)に対して、前記アミン硬化剤(B)として、少なくともポリオキシアルキレンポリアミン類を0.01〜20重量部(不揮発分)の量で含むことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の防食塗料組成物。
  4. さらにエポキシ基を有する反応性希釈剤(E1)と変性エポキシ樹脂(E2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の防食塗料組成物。
  5. 請求項1〜の何れか1項に記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
  6. 請求項1〜の何れか1項に記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜にて、劣化塗膜付き基材の表面が被覆されてなる防食塗膜付き基材。
  7. 劣化塗膜付き基材の表面に、請求項1〜の何れか1項に記載の防食塗料組成物を塗装する工程、及び塗装された前記防食塗料組成物を硬化させて防食塗膜を形成する工程を有する防食塗膜付き基材の製造方法。
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