JP6495113B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
この芯折れ防止構造は、筆記具のなかでも細くて柔軟性が低く折れ易い芯を繰り出すシャープペンシルにおいて、特に求められる構造である。
この特許文献1に記載されているシャープペンシルでは、芯を狭持するチャックの後方に固定した芯パイプに緩衝スプリングを嵌着しており、芯とチャックに対して軸心方向に過大な筆圧が掛かると緩衝スプリングが収縮してチャックと芯を後退させる構造となっている。そこで、シャープペンシルを筆記面に対して垂直に立てて筆記した場合、筆圧はそのまま芯を介して緩衝スプリングに伝えられるが、シャープペンシルを筆記面に対して傾けて筆記した場合、芯に掛かる筆圧は、芯の軸心方向に掛かる力が減少し、軸径方向に働く力が大きくなる。このため、シャープペンシルを筆記面に対して傾けて筆記すると、緩衝スプリングが収縮することなく、芯が筆圧に耐えることができずに折れてしまう虞があり、芯が折れないようにするにはシャープペンシルの筆記角度に気を配りながら筆記する必要があった。
この特許文献2に記載されているシャープペンシルでは、筆記面に対して傾けて筆記した場合でも筆記部が傾動することで芯折れを防止できるが、筆記部が傾動した状態から更に筆圧を上げると芯に負荷が掛かって芯が折れる虞があり、筆圧に気を配りながら筆記する必要があった。
「1.軸筒内に芯繰出機構を配設し、前記芯繰出機構を作動させることで前記軸筒内の芯を該軸筒の前方に設けた先口の先端部より繰り出す構造の筆記具において、前記先口の後方に、前端部が該先口の後方部と連設し且つ後端部が前記軸筒の内方に設けた連結部または前記芯繰出機構の前方部と連設する弾性変形部を設け、前記弾性変形部に外方へ膨出する膨出部を形成し、芯に筆圧が掛かった際、前記弾性変形部の膨出部が前記軸筒の内面に圧接されて弾性変形することで該弾性変形部の前端部と後端部との距離が軸心に沿った方向へ広がると共に、前記弾性変形部に連設した前記先口が前記芯繰出機構に対して前方へ移動し、前記芯の前端部が前記先口の先端部で保護されることを特徴とした筆記具。
2.前記軸筒の内面に内方へ突出した係止部を形成し、前記軸筒の係止部と前記連結部の外面に設けた被係止部とを係止し、前記軸筒の係止部を支点にして前記連結部材を軸心と直交方向に傾動可能に構成したことを特徴とする前記1項に記載の筆記具。
3.前記芯繰出機構の前方に、側面が前記先口の内面と摺接するガイド部を連設したことを特徴とする前記1項または2項に記載の筆記具。
4.前記弾性変形部の膨出部の少なくとも一部が前記軸筒の内面と常に当接するよう構成したことを特徴とする前記1項ないし3項のいずれか1項に記載の筆記具。
5.前記弾性変形部の膨出部が複数の可撓片からなることを特徴とする前記1項ないし4項のいずれか1項に記載の筆記具。
6.前記連結部材の前方部と前記芯繰出機構に設けた段部との間に弾発部材を配し、前記弾発部材により前記芯繰出機構を前方へ弾発したことを特徴とする前記1項ないし5項のいずれか1項に記載の筆記具。」である。
前記シャープペンシルにおける芯繰出機構としては、公知のシャープペンシルの芯繰出構造を用いることができ、その操作方法は芯繰出機構の後部をノックすることで芯が繰り出される後端ノック式でもよく、芯繰出機構を側部からのノックすることで芯を繰り出すサイドノック式でもよい。
また、前記弾性変形部は先口の後方部に該先口と一体で形成してもよく、前記連結部の前方部または芯繰出機構の前方部に該連結部または該芯繰出機構と一体に形成してもよく、先口と連結部または芯繰出機構と弾性変形部とを各々別体で形成してそれぞれを連結させて構成してもよい。
金属や硬質樹脂で膨出部を形成する場合には、その断面形状を軸筒内面への当接箇所を基点に前方と後方とが互いに漸次拡開する形状、例えば外方が先窄むように形成した三角形状、台形形状、円弧形状などを採用できる。いうまでもなく、膨出部が変形できるように、三角形状、台形形状に成形する場合には底辺部は設けず、円形形状に成形する場合には弦を設けず、膨出部の前方と後方とが自由に軸心に沿った方向に広がるようにする必要がある。
ゴムや発泡樹脂で膨出部を形成する場合には、その断面形状を外方が先窄み且つ中身がゴムや発泡樹脂で充填された三角形状、台形形状、円弧形状に形成し、軸筒内面への当接箇所を基点に膨出部全体が圧接され、内方へ潰れることで膨出部の前方と後方とが軸心に沿った方向に伸びるようにする必要がある。
尚、連結部は、軸筒と一体あるいは別体で形成することができるが、芯繰出機構を軸筒の軸心に配置させるため、少なくとも連結部の一部を軸筒に対して動かないようにすることが肝要である。
また、連結部を傾動させる方法としては、連結部を合成樹脂などの軟質材で形成し、連結部が撓むことで傾動させる構成や、連結部を金属などの硬質材で形成し、軸筒の係止部を支点にして該連結部全体が傾くことができるように係止する構成でもよい。
更に、支点となる軸筒の係止部を軸筒の軸心方向における中央部の後方に形成することで、支点から連結部先端までの長さを長くすることができる。そうすることで、支点に対して連結部を撓ませた場合及び連結部全体を傾けた場合のどちらでも傾動させることが容易となるため好ましい。
尚、ガイド部は芯繰出機構と一体的に形成してもよく、別体で形成してもよいが、先口と芯繰出機構との間で芯折れが発生した場合に折れた芯を取り除けるように、芯繰出機構とガイド部とを別体で形成し、且つ螺合等によりガイド部材と芯繰出機構または該芯繰出機構を内包した連結部とを着脱可能に構成することが好ましい。
また、複数の可撓片を膨出部の外周に均等に配設した場合には、芯に筆圧が掛かった際、筆記具の円周方向のどの位置を把持して筆記しても複数の可撓片の一つが軸筒内面に圧接されて弾性変形をはじめ、続けて隣設した他の可撓片が次々と弾性変形をはじめ、可撓片全体が軸心に沿って伸びることで先口を前方へ移動させることができ、筆記具を把持する位置に関係なく芯折れを防止することができる。
ここで、筆記具を垂直に立てて筆記した場合、芯に掛かる筆圧はほぼ全て芯の軸心方向に掛かり、芯の軸径方向に掛かる力は限りなく小さくなるため、前記緩衝スプリングのみが作用して芯及び芯繰出機構を後退させて先口の先端部で芯を保護することができる。
また、筆記具の筆記角度を傾けるほど、芯の軸心方向に掛かる力が減少し、その分、芯の軸径方向に働く力が大きくなるため、先口を介して連結部及び芯繰出機構が傾動し、弾性変形部の膨出部が軸筒の内面に圧接されることで弾性変形し、先口が前方に移動することで芯を先口の先端部で保護するものとなる。したがって、筆記面に対して筆記具を傾けるほど筆圧は弾性変形部に伝わり易く、筆記面に対して筆記具を垂直に近づけるほど筆圧は緩衝スプリングに伝わり易くなる。
尚、本実施例におけるシャープペンシルでは、筆記する前の状態において軸筒の軸心と軸筒以外の部品の軸心とが一致した状態で構成する。
本実施例においては、連結部材12及び芯繰出機構4の芯タンク9を軟質材である合成樹脂で形成することで、連結部材12及び連結部材12内に内包した芯繰出機構4の芯タンク9が撓み、係止部2cを支点にして連結部材12と芯繰出機構4とが傾動するように構成される。
本実施例において弾性変形部材16は、金属材料を用いてプレス加工により成形し、可撓片16eに300g程度の力が掛かったときに弾性変形が始まるようにした。
尚、弾性変形部材16は軸筒2内に挿入される際、可撓片16eの頂部16fが軸筒2の前部内面2dに当接し、少し変形した状態で取り付けられる。これにより、軸筒2や弾性変形部材16の寸法にばらつきが生じても可撓片16eと軸筒2の前部内面2dとを当接させることができ、軸筒2の軸心と弾性変形部材16及び弾性変形部材16に固着している先口3の軸心とが一致した状態に誘導される
芯繰り出し状態において、筆記を行い芯11が摩耗した場合には、ノック部材5を前方に押圧するノック操作を行うことで、芯タンク9と共にチャック7及び締具8が前進し、締具8が前進した距離だけ芯11が繰り出される。その後、ガイド部材14の内孔段部14cに締具8が当接して締具8の前進が止まり、チャック7の頭部7aが締具8から外れて拡開し、更にノックを続けるとチャック7の頭部7aが芯保持部材15に当接してチャック7の前進が停止する。
ノック部材5への押圧を緩めるとチャックスプリング10が伸びることでチャック7が後退し、チャック7の頭部7aが締具8に押圧され、チャック7が閉じられて再び芯11を狭持し、図2の芯11が先口3より繰り出された状態を維持して筆記を可能とする。
図6のように、シャープペンシル1を筆記面100に対して60°傾けて筆記を行うと、通常の筆記圧(200g〜300g程度)では把持している軸筒2の軸心と先口3の軸心の位置が一致した状態で筆記することができ、300gを超えた筆記圧が芯11に掛かると、軸筒2の係止部2c(図2参照)を支点にして連結部材12及び芯繰出機構4が撓むことで先口3が前部内面2dに近づくように傾動する。更に、弾性変形部材16における可撓片16eの頂部16fが軸筒2の前部内面2dに圧接されるため、可撓片16eが鉤状から直線状に軸心に沿った方向へ伸びるように弾性変形し、弾性変形部材16の前端部16aと後端部16bとの距離が広がる。このとき、弾性変形部16の後端部16bは連結部材12に螺着され、連結部材12は軸筒2に圧入固着していることから、使用者が把持している軸筒2に対して連結部材12が移動することはなく、弾性変形部材16の前端部16aと共に先口3がガイド部材14の前部外周部14dに沿って前方へ移動することで、図7に示すように、先口3の先端部3dにより筆記中の芯11が保護されて芯11が折れることを防止できる。
図7の状態から芯11に掛かる筆圧を解除すると、弾性変形することで直線状に伸びていた可撓片16eが元の鉤状に戻るため、弾性変形部材16に固定されている先口3も後退し芯11が露出すると共に、傾動していた連結部材12と芯繰出機構4の軸心が、軸筒2の軸心と一致するように移動し、図6の状態に戻る。
本実施例のシャープペンシル1は、筆記角度を傾けるほど芯に対する軸心方向へ力が減少し、芯の軸径方向に働く力が大きくなる。このため、シャープペンシル1を傾けるほど芯11に掛かる筆圧は先口3を介して弾性変形部材16に伝わり易くなり、弾性変形部材16が芯11の軸心方向に伸びるように弾性変形して先口3を前方に移動させ易くなる。
図8に示すように、シャープペンシル1を傾けずに筆記面100に対して垂直に立てた状態で筆記を行う場合、シャープペンシル1を傾けて筆記しているときのように芯11に掛かった筆圧は弾性変形部材16にはほとんど伝わらないため、先口3が前進することはない。そこで、芯11に350g以上の筆圧が掛かると、芯11を狭持している芯繰出機構4に力が伝わり、芯繰出機構4を前方に弾発している緩衝スプリング13が収縮することで芯繰出機構4が後退する。このとき先口3の中段部3eはガイド部材14の先端14eと当接しているため後退することはなく、図9に示すように、先口3に対して芯11と芯繰出機構4のみが後退し、先口3の先端部3dで芯11が保護される。
図9の状態から芯11に掛かる筆圧を解除すると、緩衝スプリング13が伸びることで芯11と芯繰出機構4が前進し、先口3の先端部3dから芯11が突出して図8の状態に戻る。このとき、芯11と共に芯11を芯保持部材15で保持している先口3も前進しようとするが、芯保持部材15の芯保持力は10g程度と弱く設定しているため弾性変形部材16の可撓片16eを変形させることができず先口3が前方へ移動することはない。
つまり、本実施例における緩衝スプリング13と弾性変形部材16の関係性は、筆記角度を垂直に近づけるほど緩衝スプリング13が収縮し易くなり、芯11を後退させて芯11を保護し、筆記角度を傾けるほど弾性変形部材16に力が伝わり易くなり、弾性変形部材16の可撓片16eが伸びることで先口3を前進させ、芯11を保護するものである。
したがって、高い筆記圧で筆記する場合でも筆記角度に気をつけることなく筆記することが可能な筆記具を提供することが可能となった。
2…軸筒、2a…前部内孔、2b…後部内面、2c…係止部、2d…前部内面、
3…先口、3a…摺動部、3b…先段部、3c…後段部、3d…先端部、3e…中段部、4…芯繰出機構、
5…ノック部材、
6…筒状部材、6a…先端口、6b…内鍔、6c…外鍔、6d…段部、6e…前端部、
7…チャック、7a…頭部、
8…締具、
9…芯タンク、
10…チャックスプリング、
11…芯、
12…連結部材、12a…先端内孔、12b…段部、12c…第1の雄螺子部、
12d…被係止部、12e…第2の雄螺子部、
13…緩衝スプリング、
14…ガイド部材、14a…雌螺子部、14b…後段部、14c…内孔段部、
14d…前部外周部、14e…先端、
15…芯保持部材、
16…弾性変形部材、16a…前端部、16b…後端部、16c…雌螺子部、
16d…膨出部、16e…可撓片、16f…頂部、16g…溝部、16h…直線部、
100…筆記面。
Claims (6)
- 軸筒内に芯繰出機構を配設し、前記芯繰出機構を作動させることで前記軸筒内の芯を該軸筒の前方に設けた先口の先端部より繰り出す構造の筆記具において、前記先口の後方に、前端部が該先口の後方部と連設し且つ後端部が前記軸筒の内方に設けた連結部または前記芯繰出機構の前方部と連設する弾性変形部を設け、前記弾性変形部に外方へ膨出する膨出部を形成し、芯に筆圧が掛かった際、前記弾性変形部の膨出部が前記軸筒の内面に圧接されて弾性変形することで該弾性変形部の前端部と後端部との距離が軸心に沿った方向へ広がると共に、前記弾性変形部に連設した前記先口が前記芯繰出機構に対して前方へ移動し、前記芯の前端部が前記先口の先端部で保護されることを特徴とした筆記具
- 前記軸筒の内面に内方へ突出した係止部を形成し、前記軸筒の係止部と前記連結部の外面に設けた被係止部とを係止し、前記軸筒の係止部を支点にして前記連結部材を軸心と直交方向に傾動可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
- 前記芯繰出機構の前方に、側面が前記先口の内面と摺接するガイド部を連設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筆記具。
- 前記弾性変形部の膨出部の少なくとも一部が前記軸筒の内面と常に当接するよう構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の筆記具。
- 前記弾性変形部の膨出部が複数の可撓片からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の筆記具。
- 前記連結部材の前方部と前記芯繰出機構に設けた段部との間に弾発部材を配し、前記弾発部材により前記芯繰出機構を前方へ弾発したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の筆記具。
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