本発明に係る移動体は、工場や公共施設の施設内、或いはそれらの施設や駐車場等の敷地内で移動させる移動体や、公道を走行する自動車や自動二輪車等の移動体などである。特に、敷地内や施設内で移動させる移動体は、自律走行型の制御機構を有している。自動車等の運転者による運転を基本とする移動体も自律走行型の制御を搭載することで、自律走行、或いは運転者の運転補助としての自律走行が可能になる。また、本発明に係る移動体は、人や物を運搬する運搬目的だけでなく、移動しながら周囲を監視するためにも用いることができ、その場合の移動体は監視ロボットとも呼べる。
また、本発明に係る監視サーバ装置は、このような移動体を複数台監視するためのサーバ装置であり、これらの移動体と共に監視システムを構築していると言える。
以下、図面を参照しながら、本発明の様々な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1A〜図4Cを参照しながら説明する。まず、図1Aのブロック図、図1Bの外観図を参照しながら、本実施形態に係る移動体の一構成例について説明する。
移動体1は、移動を行うための移動機構を備えたマシンであり、移動装置とも呼べる。図1A,図1Bの例では、この移動機構は、駆動制御部11と、駆動制御部11により制御される車輪12aを含む駆動部12で構成される。駆動部12は、例えば図示しないエンジン及び/又はモータなどを備えている。
さらに、移動体1は、障害物検知用のアクティブセンサ(以下、障害物検知センサ)13、位置情報取得部14、及び無線通信部15を備えると共に、この例では移動体1を制御する主制御部10も備える。
なお、主制御部10は、駆動制御部11、障害物検知センサ13、無線通信部15の制御を行い、位置情報取得部14での取得の制御も行うように構成することもできる。例えばこの主制御部10は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)、作業領域としてのRAM(Random Access Memory)、及び記憶装置などの制御デバイスで構成され、その一部又は全部を集積回路/ICチップセットとして搭載することもできる。この記憶装置には、制御プログラム(情報交換部10a及び処理部10bでの後述の処理を実行するためのプログラムを含む)をはじめ、各種設定内容などが記憶される。この記憶装置としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)など様々な装置が適用できる。
障害物検知センサ13は、他の移動体や障害物との衝突を避けるためにそれらを事前に検知するためのセンサであり、光や赤外線や他の電磁波や超音波などを能動的に発信し、その発信波の反射波を受信して障害物を検知するアクティブセンサである。
障害物検知センサ13としては、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)、レーザレンジファインダ、電波レーダ(ミリ波レーダ等)、超音波センサなど、様々な種類のセンサが適用できる。また、障害物検知センサ13は、必要に応じて、モータによって左右に動かすメカニカルスキャン方式、或いは、複数のチャンネルを使って受信を行い、受信チャンネル間に発生する位相差を利用して検知角度を算出する電子スキャン方式を採用して、障害物の検知を行えばよい。なお、レーザレンジファインダは光飛行時間測距方式(TOF:Time of Flight)を採用した測距センサであり、走査軸を1軸、2軸もたせることで、それぞれ2次元平面の計測、3次元的な計測が可能となる。また、LIDARはレーザレンジファインダの一種であるとも言える。
移動体1は、移動体1で想定される走行速度や走行範囲(例えば公道なのか、どの程度の広さの敷地内や室内なのかなどによる範囲)に応じて、それに合った性能(耐天候性なども含む)や種類の障害物検知センサ13を適宜選択して搭載しておけばよい。無論、センサはそのコストにより性能が変わるものであるため、コストも考慮して障害物検知センサ13を選択すればよい。
障害物検知センサ13として適用できる一部の種類のセンサについて、現状での一般的な性能を記す。無論、ここで記す性能はコストや時代の進歩により変わる上に、検出精度を考慮して性能より低めの検出距離や検出範囲で使用されることが多い。
超音波センサは、至近〜中距離(100mm〜10m)のような広範囲での検知ができず、特定レンジでのみ検知可能であり、また検知範囲(角度)も30°程度であり、例えば5m以内の距離を検出するのに用いられることもある。レーザレンジファインダは、30m程度までの測距が可能で、単素子では検知範囲が狭いが、複数素子や回転制御などにより検知範囲を360°まで向上した、Velodyne(登録商標) LiDARユニットがある。一般的なLIDARも中距離(20m〜50m)程度の検出は可能であるが、5m以内の距離を検出するのに用いられることもある。ミリ波レーダ(アクティブ型)は、天候や明るさに影響を受けにくく、検知範囲は90°程度であり、大きく77GHz帯と24GHz帯に分かれる。中距離以下であれば24GHz帯の方が、検知範囲が広い分だけ適しており、77GHz帯では中距離や長距離(50m〜200m以上)での検出が可能である。
障害物検知センサ13としては、例えば、LIDARで5m以内の進行方向の障害物を検知し、超音波センサで5m以内の移動体サイドの障害物を検知するために用いるなど、移動体1において各種センサの併設が可能である。但し、併設した場合にも、後述するように、他の移動体のセンサの発信波を誤検知する可能性があるのはそのセンサと同種のセンサの発信波のみとなる。
位置情報取得部14は、GPSなどを用い、移動体1の位置を示す位置情報を取得する。位置情報としてはGPS座標のような座標情報であることが好ましいが、敷地内や屋内などごく限られた範囲でのみ移動体を走らせる際には、単に直交座標や極座標などを採用することもできる。また、移動体1について地上での移動機能(地形が凸凹していても平面上の処理で済む)を想定して説明しているが、飛行機能を有している場合(つまり飛行体である場合)には、位置情報に高さの情報も含めておけばよい。なお、後述する無線通信部15の無線通信方式にもよるが、アクセスポイント等の無線基地局を必要とする無線通信方式の場合、無線基地局の位置との相対位置や距離などに基づき、位置情報取得部14で取得した位置情報を補正するようにしてもよい。
無線通信部15は、無線LAN(Local Area Network)規格などに則って、他の移動体に搭載された無線通信部と無線通信する部位である。無線LAN機器としてはWiFi(登録商標)による認証がなされたものが汎用性の点から好ましい。また、無線LANには標準的なインフラストラクチャーモードの他に、機器同士が1対1で通信できるアドホックモードがあり、そのうち接続設定を容易にしたWiFiダイレクトも利用できる。無線通信部同士が例えばWiFiダイレクトなどのアドフォックネットワークを構成することで、移動体1と他の移動体との直接通信を可能にできる。なお、アドフォック型ネットワークの構築は、例えば全ての移動体に同じESS−ID(Extended Service Set Identifier)を設定したアダプタを搭載しておくなどすればよい。
本実施形態では、移動体1と他の移動体とが直接通信可能なように構成しておくことが好ましいが、アクセスポイントや無線LANルータなどの無線基地局を介した無線通信を採用してもよい。現状、アドホックモードの場合、約50m程度までの距離は十分通信ができる。なお、別途設けたサーバ装置(第3,4の実施形態で後述するサーバ装置とは異なる)に各移動体から無線通信で識別情報と位置情報を送信し、そのサーバ装置から各移動体に他の移動体の識別情報と位置情報を無線通信でプッシュ送信してもよい。また、プッシュ送信の代わりに移動体からサーバ装置に取得しに行ってもよい。
また、障害物検知センサ13、位置情報取得部14、及び無線通信部15は、図1Bで例示するように移動体1の本体16の適所に配置しておけばよい。但し、例示する配置に限らず、いずれの部位も、その感度が良くなるような位置にその送受信部やアンテナが設けられていればよい。
ここで、図2A〜図3Cを参照しながら、障害物検知センサ13による障害物の検知について説明する。図2Aは、図1Aの移動体のセンサ検知範囲を説明するための模式図、図2Bは、図2Aの移動体において障害物の位置を認識する様子を説明するための図である。また、図3Aは、図2Aの移動体に対し他の移動体が近づいてきたときの様子を説明するための模式図、図3Bは、図3Aの移動体において他の移動体の位置を認識する様子を説明するための図、図3Cは、図3Aの移動体の位置を他の移動体が認識する様子を説明するための図である。
移動体1は、図2Aで例示するように、センサ検知範囲18内(例えば半径5mの半円内など)に障害物Dが存在した場合、障害物検知センサ13の送信部13bから発信した発信波が障害物Dで反射し、その反射波を障害物検知センサ13の受信部13aが受信することで、障害物Dが検知できる。また、移動体1は、位置情報取得部14において例えばGPS衛星41から受信した位置情報を地図上に割り当てて、自律走行の制御又は運転者へのナビケーションに用いている。
その際、移動体1は、図2Bで例示するように地図情報17を保持し、地図情報17上に自身の位置17aを割り当てているが、障害物Dが検知された場合にはその位置17bも地図情報17上に割り当てる(マッピングする)ことで、自律走行の制御又は運転者へのナビゲーションに用いることができる。
図3Aで例示するように、移動体1と他の移動体2は、他の移動体2が移動体1におけるセンサ検知範囲18内には侵入していないものの、他の移動体2に搭載された障害物検知センサの送信部23bから発信された発信波を受信部13aが受信してしまうような位置関係になることがある。
その場合、移動体1は、図3Bで例示するように、地図情報17上において、移動体2の実際の位置17cに対し、障害物としての移動体2の位置17dが移動体1の位置17aの傍(センサ検知範囲18内)にあるかのように認識される。同様に、移動体2は、図3Cで例示するように、地図情報27上において、移動体1の実際の位置27cに対し、障害物としての移動体1の位置27dが移動体2の位置27aの傍(受信部23aの検知範囲内)にあるかように認識される。このような誤検知は、反射波を用いたアクティブセンサでは、一般的に発信波がセンサ検知範囲18の2倍以上の距離まで到達することから発生する。
このような誤検知を防止するために、本実施形態に係る移動体1は、その主たる特徴として、情報交換部10a及び処理部10bを備える。図1Aではこれらを主制御部10に設けた例を挙げているが、これに限ったものではない。
情報交換部10aは、無線通信部15を介して、障害物検知センサ13と同種のセンサを搭載した他の移動体との間で、位置情報取得部で主とした位置情報及び移動体識別用の識別情報をやり取りする。つまり、情報交換部10aは、移動体1の識別情報及び位置情報を他の移動体に送信すると共に、上記他の移動体の識別情報及び位置情報を上記他の移動体から受信する。ここで情報のやり取りを行う他の移動体は、無線通信部15での無線通信範囲内(例えばアドホックモードの場合、半径50m以内の範囲など)に侵入しているものであり、当然、複数台となることもある。
ここで、上記同種のセンサとは、障害物検知センサ13の受信部13aで検知可能な発信波(送信波、発振波)、つまり障害物検知センサ13と同じ周波数帯域の発信波を送信する障害物検知センサを指す。以下、より好ましい例として、いずれの移動体も同じ障害物検知センサ13を搭載する例を挙げて説明する。
処理部10bは、情報交換部10aでやり取りされた位置情報及び識別情報に基づき、障害物検知センサ13による誤検知を防止するための防止処理を行う。上記防止処理は、上記他の移動体が障害物検知センサ13による検知範囲より広い所定範囲内に侵入した際に、識別情報又は位置情報に基づき移動体1が処理主体になるか否かを決定する処理を含む。
ここで、移動体1が処理主体にならない場合にも処理主体を決定しておくことが好ましい。これにより、後述の所定の動作の指示をどの移動体から受信するかが予め分かるため、もし、所定時間以内に指示が来なければ、指示を要求することもできる。
また、上記の侵入事象の発生は、情報交換部10aでやり取りした位置情報及び識別情報に基づき判定すればよい。また、所定範囲内とは、移動体を中心とした所定範囲内を指し、例えば検知範囲の2倍より直線距離が長く且つ無線通信範囲内で任意の範囲を予め決めておけばよい。例えば障害物検知センサ13の検知可能範囲(センサ検知範囲)を5mの半円内とし、無線通信部15での無線通信可能範囲を50mとすると、所定範囲内とはその間の例えば移動体1を中心とした半径30mの範囲内を指す。また、検知範囲や所定範囲は移動体の移動により移動するため、当然、侵入の検知は相対位置に基づき実行される。
そして、上記防止処理では、移動体1を処理主体に決定した場合に、無線通信部15を介して、所定の動作を行うように上記他の移動体に指示する処理を含む。上記他の移動体は、この指示に従い、上記所定の動作を実行することになる。なお、処理主体はホストと呼ぶこともできる。
上記所定の動作としては、他の移動体2に搭載されたアクティブセンサ(送信部23b及び受信部23a)における発信波の波長を変更する動作を含むことが好ましい。移動体2側で発信波の波長を変更することで、移動体1側の受信部13aでこの発信波を受信することが無くなる。なお、侵入した他の移動体が複数台存在した場合、波長の変更に際しては、予め定めた側(北側、同じ北側なら東側など)の移動体が波長の設定を短くし、逆側の移動体が波長の設定を長くするなどすればよい。
この例に限らず、上記所定の動作は誤検知がなされなくなるような動作であればよい。また、侵入した他の移動体が複数台存在した場合、誤検知がなされないようになれば、それぞれの他の移動体に対して、共通の所定の動作を指示してもよいし、異なる所定の動作を指示してもよい。
次に、図4A〜図4Cのフロー図を参照しながら、図1Aの移動体1の処理部10bにおける処理例を説明する。図4Aで例示するように、移動体1は、位置情報取得部14が自己の位置情報(例えばGPS座標値)を取得し(ステップS11)、その位置情報を自己の識別情報と共にブロードキャスト処理で無線配信する(ステップS12)。ここでは、識別情報としてIP(Internet Protocol)アドレスを用いた例を挙げるが、これに限らず、MAC(Media Access Control)アドレス、車体番号、ユーザIDなど様々な識別情報が利用できる。ステップS12に続き、情報交換部10aが別の移動体の位置情報を取得する(ステップS13)。ステップS12,S13の順序は問わない。
このブロードキャスト処理は、図4Cで例示するように、移動体1と無線通信可能な範囲内に移動体2,3が存在する場合を例に挙げると、移動体2に対する自己位置通知処理(ステップS41)と移動体3に対する自己位置通知処理(ステップS42)とを含むことになる。なお、ステップS41,S42の順序は特にない。
ステップS13に関し、同様に、移動体2からは移動体1,3に対する自己位置通知処理(それぞれステップS43,S44)がなされ、移動体3からは移動体2,1に対する自己位置通知処理(それぞれステップS45,S46)がなされる。これにより、情報交換部10aが移動体2,3の位置情報(それぞれ移動体2,3の識別情報に関連づけられている)を取得することができる。各移動体1,2,3における自己位置ブロードキャスト処理のタイミングは問わない。
図4Aの説明に戻る。ステップS13の処理の後、処理部10bは、やり取りした位置情報及び識別情報に基づき、他の移動体(別移動体)の接近を検知したか否かを判定し(ステップS14)、検知しなかった場合にはステップS11に戻る。
ステップS14でYESの場合、処理部10bは、処理主体を決定するために、無線通信範囲内の別移動体のうち接近した別移動体(例えば他の移動体2)とそのIPアドレスを比較し(ステップS15)、自己のIPアドレスが一番小さいか否かを判定する(ステップS16)。
なお、IPアドレス以外の識別情報を用いた場合でも識別情報の比較により、処理主体を決定することができる。また、処理主体は識別情報が一番小さい移動体に決定するに限らず、中央の移動体、一番大きい移動体など任意に決定方法を決めておけばよい。さらに、識別情報の比較に限らず、位置情報の比較によって例えば一番北側の移動体を処理主体に決定するなど、位置情報の比較で処理主体を決定してもよい。
ステップS16でYESの場合、処理部10bは、無線通信部15を介して、接近した別移動体(例えば他の移動体2)に所定動作要求を送信する(ステップS17)。この所定動作要求は、上述した所定の動作を実行させる要求であり、自身の識別情報と共に送信すればよい。ここでもブロードキャスト通信を行う場合には、その要求に、対象となる別移動体の識別情報も含めておけばよい。処理部10bは、その要求の送信から所定期間待った後、その要求の応答を無線通信部15経由で受信したか否かを判定し(ステップS18)、未受信の場合にはステップS17に戻り、再送信を行う。
ステップS18でYESとなった場合、処理部10bは、更新した位置情報及び識別情報に基づき、別移動体(例えば他の移動体2)の接近が解除(つまり接近と検知できない相対位置に移動)したか否かを判定する(ステップS19)。図示しないが、ステップS18とステップS19の間にも、ステップS11〜S13の処理を実行しておくことで、位置情報及び識別情報を更新しておく。このような繰り返しにより、定期的に無線通信範囲内の各移動体1〜3が自分の位置を別移動体に報告することになる。
処理部10bは、ステップS19でYESとなった時点で、無線通信部15を介して、上記別移動体に所定動作終了要求を送信する(ステップS20)。また、処理部10bは、その要求の応答を無線通信部15経由で受信したか否かを判定し(ステップS21)、未受信の場合にはステップS20に戻り、再送信を行う。そして、ステップS21でYESとなった段階で、処理部10bはその処理を終了する。このような処理を繰り返せばよい。
なお、ステップS18,S21での判定により、NOとなった場合、それぞれステップS17,S20で要求を再送信するが、2台以上の別移動体が存在する場合で且つ一部の別移動体のみ応答を受信していない場合には、応答を受信していない別移動体にのみ、要求を再送信すればよい。
一方で、ステップS16でNOの場合、つまり別移動体が処理主体になる場合には、図4Bに示すように、処理部10bが、接近した別移動体(例えば他の移動体2)から無線通信部15を介して所定動作要求を受信したか否かを判定し、受信した段階で、受信した所定動作要求に応じた動作(つまり所定動作)を実行する(ステップS32)。
その後、処理部10bは、無線通信部15を介してその要求に対する応答(所定動作を実行した旨の応答)を返信する(ステップS33)。この応答には自身の識別情報(この例ではIPアドレス)も含めておけばよく、必要に応じて返信先を指定するための上記別移動体の識別情報も含めておけばよい。
次いで、処理部10bは、処理主体となったその別移動体から無線通信部15経由で所定動作終了要求を受信したか否かを判定し(ステップS34)、受信した時点で、所定動作を実行する以前の動作に戻す(ステップS35)。最後に、処理部10bは、無線通信部15を介してその要求の応答を返信する(ステップS36)。
また、ステップS17での所定動作要求について、所定の動作として、予め複数種類の動作を用意しておき、その中から動作をパラメータで指定するようにしてもよい。また、ステップS20での所定動作終了要求も終了用のパラメータを用意しておけば、パラメータを変えるだけで終了要求も送信できる。
以上のように、本実施形態に係る移動体1によれば、他の移動体の障害物検知センサが発信した発信波(正射波)を、障害物検知センサ13が発信した発信波の反射波と誤検知してしまうことを防止できる。また、従来、自律走行型移動体では運転者がいないため、障害物検知センサ13の誤検知が余計な回避動作を招くことになり、安全に自律走行できるとは言えず、一方で運転者が運転する移動体ではこの誤検知により余計な警告音や警告表示がなされて煩わしくなる。しかし、本実施形態では、誤検知を防止できるため、このような余計な処理がなされずに済む。
また、ステップS20,S35等で例示したように、処理部10bは、上記所定範囲内(無論、移動体の移動により時間的に変化する)から上記他の移動体が外れた場合に、上記所定の動作を解除して上記所定の動作を行う前の動作に戻す(例えば波長を元に戻す)ように、上記他の移動体に指示することが好ましい。
また、上記防止処理は、移動体1を処理主体に決定した場合に、上記所定の動作と連携させた、他の所定の動作を移動体1で実行する処理を含むようにしてもよい。図4A,図4Bの例では、例えばステップS17の処理の直前又は直後などに自己動作を実行し、ステップS19でNOとなった場合に自己動作を終了し元の動作に戻せばよい。無論、上記他の所定の動作は、上記所定の動作と一部又は全部が同じものであってもよい。例えば、侵入した他の移動体が1又は複数台存在した場合、波長の変更に際しては、移動体1も含め、予め定めた側(北側、同じ北側なら東側など)の移動体が波長の設定を短くし、逆側の移動体が波長の設定を長くする(或いは波長の設定を維持する)などすればよい。
さらに、上記所定の動作は、移動を停止する動作を含むようにしてもよい。この移動を停止する動作は、発信波の波長の変更などと併用することができる。つまり、近接した移動体のうち、一方の移動体は、停止して他方が通り過ぎるのを待ってから、走行を再開するようにする。近接した他の移動体の移動を、近接が解除されるまで停止させることで、移動体1はより安全な走行が可能となる。但し、上記他の所定の動作と上記所定の動作の双方で移動を停止させてしまうと、両方の移動体が進めなくなるため、そのような双方の移動停止は指示しないようにする。好ましくは、移動の停止を指示する場合は非処理主体側に指示する。
また、近接した他の移動体(つまり障害物検知センサが干渉する他の移動体)が2台以上ある場合には、例えばそれら全てを停止させるようにしてもよいし、1台だけ波長変更させ、他の移動体を停止させるようにしてもよい。このように近接した他の移動体が何台存在しても処理主体が他の移動体を制御するため、誤検知を防ぎ、安全な走行が可能となる。
なお、本実施形態では、位置情報取得部14を備え、そこで取得した位置情報に基づき自律走行又はナビゲーション表示などを行うことを前提に説明したが、自律走行やナビゲーション表示は、別途、方位センサを設け、その方位センサから得た方角情報も参照しながら実行することが好ましい。
また、移動体1には、アクティブ型の障害物検知センサ13の他に、カメラをはじめとするパッシブ型の障害物検知用のセンサを併用することもでき、このパッシブ型のセンサの検知結果も考慮して、上記防止処理を実行するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
本実施形態における上記所定の動作は、波長変更動作の代わりに、上記他の移動体に搭載されたアクティブセンサにおける発信波の発信を停止(つまり検知を停止)する動作を含むようにしたものである。
本実施形態においては障害物検知センサでの検知を停止させるため、特に安全な走行を実現するためには、上記所定の動作は、移動を停止する動作を含むようにする。実際には、両者を併用することではじめて安全な走行ができると言える。また、本実施形態でも、処理部10bは、上記所定範囲内から上記他の移動体が外れた場合に、上記所定の動作を解除して上記所定の動作を行う前の動作に戻すように、上記他の移動体に指示することが好ましい。
所定の動作として用意するパラメータ例を挙げると、波長変更を指示するための「01」、移動停止及び波長変更を指示するための「02」、発信波停止を指示するための「03」、移動停止及び発信波停止を指示するための「04」、所定動作終了及び元の動作に戻すことを指示するための「FF」などが挙げられる。その他、所定の動作としては、一定距離移動した後に、発信波及び移動の停止を指示するための「05」などを用意しておいてもよい。
また、本実施形態でも、上記防止処理は、移動体1を処理主体に決定した場合に、上記所定の動作と連携させた、他の所定の動作を移動体1で実行する処理を含むようにしてもよい。但し、上記他の所定の動作と上記所定の動作の双方で移動を停止させてしまわないようにする。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、図5,図6を参照しながら説明する。まず、図5のブロック図を参照しながら、本実施形態に係る監視サーバ装置を備えた監視システムの一構成例について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部位には同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5で例示するように、本実施形態に係る監視サーバ装置5は、無線ネットワークを介して複数台の移動体1s,2s,3s,・・・を監視するためのサーバ装置であり、処理部50を備える。無論、無線ネットワークを介した通信のために、監視サーバ装置5は、無線通信部を内部又は外部に有する。
なお、処理部50は、主に監視サーバ装置5の制御部(図示せず)に設けられる。この制御部は、プログラム保存領域に格納された制御プログラムを動作させ、各種制御を行う。例えばこの制御部は、CPU又はMPU、作業領域としてのRAM、及び記憶装置などの制御デバイスで構成され、その一部又は全部を集積回路/ICチップセットとして搭載することもできる。この記憶装置には、上記制御プログラム(処理部50での後述の処理を実行するためのプログラムを含む)をはじめ、各種設定内容などが記憶される。この記憶装置としては、HDD、SSDなど様々な装置が適用できる。
移動体1sは、障害物検知用のアクティブセンサである障害物検知センサ13と、監視サーバ装置5と上記無線ネットワーク上で通信するための無線通信部15と、移動体1sの位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部14と、を有し、無線通信部15を介して、上記位置情報及び移動体識別用の識別情報を監視サーバ装置5に送信する。移動体1sからプッシュ送信する例だけでなく、監視サーバ装置5側から取得するようにしてもよい。
なお、他の移動体2s,3s,・・・も移動体1sと同様の構成を有する。但し、移動体間において、無線通信部の通信方式は異なってもよいし、位置情報取得部14の詳細も異なってもよいし、障害物検知センサ13も同種のアクティブセンサであればよい。また、各移動体1s,2s,3s,・・・の無線通信部15は、監視サーバ装置5に内蔵又はネットワークを経由して接続された無線通信部と直接又はネットワークを経由して間接的に通信ができればよい。よって、各移動体の無線通信部15は、異なる無線基地局(アクセスポイント等)と通信してもよいし、また移動によって無線基地局を変更してもよい。
処理部50は、移動体群から受信した位置情報及び識別情報に基づき、アクティブセンサによる誤検知を防止するための防止処理を行う。つまり、上記監視には主に、移動体1s,2s,3s,・・・がもつアクティブセンサの誤検知防止のための監視が含まれる。
この防止処理は、ある移動体について、障害物検知センサ13による検知範囲より広い所定範囲内に他の移動体が侵入した際に、上記ある移動体及び上記他の移動体の中から、識別情報又は位置情報に基づき処理主体を決定し、所定の動作を行うように処理主体以外に指示する処理を含む。この指示は、上記無線ネットワークを介して行う。また、本実施形態における上記所定範囲は、侵入を監視サーバ装置5で判断するため、第1の実施形態と異なり、無線通信部15の通信可能範囲が直接関係してくるものではなく、上記検知範囲より広い予め定めた範囲であればよい。
本実施形態における上記所定の動作は、第1の実施形態と同様に、障害物検知センサ13における上記発信波の波長を変更する動作、移動体の移動を停止する動作などを含むようにすればよい。
また、上記ある移動体とは、例えばまず識別情報又は位置情報の最も若い移動体(移動体1sで例示)と決め、処理を行い、次の移動体(例えば移動体2s)を上記ある移動体と決め、処理を行うなどすればよい。このとき移動体2sの所定範囲には移動体1sも入っているが、重複部分は除外すればよい。これにより、監視対象となる移動体について全ての監視が可能となる。また、例えば移動体3sの所定範囲内にも移動体2sが侵入している場合には、移動体1sから移動体2sへの所定動作指示を考慮して、移動体2sへの所定動作指示を行えばよい。特に安全のためには、複数の移動体(例えば移動体1s,3s)の所定範囲内に侵入した移動体(例えば移動体2s)については、その動作及び発信を停止することが望ましい。
また、第1の実施形態と同様に、処理部50は、上記所定範囲内から上記他の移動体が外れた場合に、上記所定の動作を解除して上記所定の動作を行う前の動作に戻すように、無線ネットワークを介して処理主体以外に指示することが好ましい。
また、第1の実施形態と同様に、上記防止処理は、無線ネットワークを介して上記所定の動作と連携させた他の所定の動作を行うように、処理主体に指示する処理を含む。無論、上記他の所定の動作は、上記所定の動作と一部又は全部が同じものであってもよい。但し、上記他の所定の動作と上記所定の動作の双方で移動を停止させてしまわないようにする。
次に、図6のフロー図を参照しながら、図5の監視サーバ装置5の処理部50における処理例を説明する。まず、監視サーバ装置5の処理部50は、無線ネットワークを介し、各移動体1s等からの位置情報を識別情報と共に取得し(ステップS61)、近接する移動体同士を抽出する(ステップS62)。
処理部50は、抽出した移動体同士のIPアドレスを比較し(ステップS63)、一番小さいIPアドレスの移動体(例えば移動体1s)を処理主体に決定し(ステップS64)、無線ネットワークを介し、近接した移動体の中の非処理主体の移動体(例えば移動体2s,3s)に所定動作要求を送信する(ステップS65)。これを受けた移動体は所定動作を実行し、応答を送信する。
なお、本実施形態でも識別情報はIPアドレスに限らないし、また所定動作もパラメータにより指定するようにしておき、移動体側でパラメータを判定して動作を行うようにしておいてもよい。
次いで、処理部50は、それらの移動体からその要求に対する応答を受信したか否かを判定し(ステップS66)、応答が返信されていない移動体に対してはステップS65に戻り、再送信する。
ステップS66で、移動体1sに近接した全ての非処理主体の移動体2s,3sからの応答を受信した場合、処理部50は、更新した位置情報及び識別情報に基づき、非処理主体の接近が解除(つまり接近と検知できない相対位置に移動)したか否かを判定する(ステップS67)。図示しないが、ステップS66とステップS67の間にも、ステップS61,S62の処理を実行しておくことで、位置情報及び識別情報を更新しておく。
処理部50は、ステップS67でYESとなった時点で、非処理主体に所定動作終了要求を送信する(ステップS68)。これを受けた移動体は所定動作を停止して元の動作に戻し、応答を送信する。また、処理部50は、その要求の応答を受信したか否かを判定し(ステップS69)、未受信の非処理主体が存在する場合にはステップS68に戻り、未受信の非処理主体に対して再送信を行う。そして、ステップS69でYESとなった段階で、処理部50はその処理を終了する。このような処理を繰り返せばよい。
また、上記防止処理において、処理主体に指示する処理を含む場合には、処理部50が図6のステップS65の直前又は直後などに処理主体(例えば移動体1s)に対する他の所定動作要求を送信すればよく、ステップS68,S69の前後に処理主体に終了要求を行えばよい。また、処理主体の検知範囲に侵入した他の移動体が1又は複数台存在した場合、波長の変更に際しては、処理主体及び非処理主体について予め定めた側(北側、同じ北側なら東側など)の移動体が波長の設定を短くし、逆側の移動体が波長の設定を長くする(或いは波長の設定を維持する)などしてもよい。
以上のように、本実施形態に係る監視サーバ装置5でも、複数台の移動体における障害物検知センサの誤検知を防止することができる。
(第4の実施形態)
本実施形態における上記所定の動作は、障害物検知センサ13における発信波の波長を変更する動作の代わりに、発信波の発信を停止する動作を含むものとする。つまり、本実施形態は、第3の実施形態において、第2の実施形態を適用したものとなる。適用の方法については、第2の実施形態と同様であり、その説明を省略する。
また、本実施形態でも、所定の動作として移動体の移動を停止する動作を含めてもよいし、処理部50は、上記所定範囲内から上記他の移動体が外れた場合に、上記所定の動作を解除して上記所定の動作を行う前の動作に戻すように処理主体以外に指示することが好ましい。また、本実施形態においても、上記防止処理は、無線ネットワークを介して上記所定の動作と連携させた他の所定の動作を行うように、処理主体に指示する処理を含むようにしてもよい。但し、上記他の所定の動作と上記所定の動作の双方で移動を停止させてしまわないようにする。