以下、添付図面を参照して、本願の開示するマトリクスコンバータ、発電システム、制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
また、以下の実施形態では、三相交流発電機(ACG)である回転電機の発電電力をマトリクスコンバータにより変換して交流電源へ供給する例を説明するが、回転電機は交流発電機に限らず、例えば、交流電動機としてもよい。また、交流電源として三相交流の電力系統(Grid)を例に挙げて説明するが、交流電源はこれに限られず、例えば、発電源と送電線等を含み、負荷が接続される交流電源であってもよい。また、以下においては、発電システムの一例として、風力発電システムを一例に挙げるが、かかる例に限定されるものではなく、例えば、水車の回転と同期して回転軸が回転する回転電機を有する水力発電システムにも適用できる。
[1.風力発電システム]
図1は、実施形態にかかる風力発電システムの構成例を示す図である。図1に示すように、実施形態にかかる風力発電システム1は、発電部2と、マトリクスコンバータ3とを備える。マトリクスコンバータ3は、発電部2と電力系統4との間に接続され、発電部2により発電された電力を変換して電力系統4へ出力する。
発電部2は、複数のブレード5と、ロータ6と、シャフト7と、回転電機8と、位置検出部9とを備える。複数のブレード5は、シャフト7の先端に設けられたロータ6に取り付けられ、風力を受けてロータ6およびシャフト7を回転させる。シャフト7は、回転電機8に取り付けられており、回転電機8はロータ6およびシャフト7の回転力に応じた電力を発生することができる。
回転電機8は、交流発電機であり、例えば、永久磁石タイプの回転電機である。位置検出部9は、例えば、シャフト7の回転位置を検出することによって回転電機8の回転位置θGを検出する。かかる回転位置θGは、例えば、回転電機8の電気角であるが、回転電機8の機械角であってもよい。回転位置θGが機械角である場合、制御部20は、回転電機8の機械角と回転電機8の極数に基づいて回転電機8の電気角を求めることができる。
[2.マトリクスコンバータ3]
図1に示すように、マトリクスコンバータ3は、系統側端子Tr、Ts、Ttと、発電機側端子Tu、Tv、Twと、電力変換部10と、LCフィルタ11と、電流検出部12、14と、電圧検出部13と、ブレーキ回路15と、低電圧検出部16(低電圧判定部の一例)と、制御部20(制御装置の一例)とを備える。電力系統4のR相、S相およびT相が系統側端子Tr、Ts、Ttに接続され、回転電機8のU相、V相およびW相が発電機側端子Tu、Tv、Twに接続される。
[2.1.電力変換部10]
電力変換部10は、電力系統4のR相、S相およびT相の各相と回転電機8のU相、V相およびW相の各相とを接続する複数の双方向スイッチSw1〜Sw9を備える。双方向スイッチSw1〜Sw3は、電力系統4のR相、S相、T相と回転電機8のU相とをそれぞれ接続する双方向スイッチである。
双方向スイッチSw4〜Sw6は、電力系統4のR相、S相およびT相と回転電機8のV相とをそれぞれ接続する双方向スイッチである。双方向スイッチSw7〜Sw9は、電力系統4のR相、S相およびT相と回転電機8のW相とをそれぞれ接続する双方向スイッチである。
双方向スイッチSw1〜Sw9は、例えば、図2に示すような構成を有する。図2は、各双方向スイッチSw1〜Sw9の構成例を示す図である。図2に示すように、各双方向スイッチSw1〜Sw9は、片方向スイッチング素子24とダイオード26とによる直列接続体と、片方向スイッチング素子25とダイオード27とによる直列接続体とが、逆方向に並列に接続されて構成される。
片方向スイッチング素子24、25は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子である。また、片方向スイッチング素子24、25は、次世代半導体スイッチング素子のSiC、GaNであってもよい。
なお、双方向スイッチSw1〜Sw9は、図2に示す構成に限られない。例えば、図2に示す例では、ダイオード26、27のカソード同士が接続されていないが、双方向スイッチSw1〜Sw9は、ダイオード26、27のカソード同士が接続された構成でもよい。また、片方向スイッチング素子24、25が逆素子IGBTの場合、ダイオード26、27を設けなくてもよい。
[2.2.LCフィルタ11、電流検出部12、14および電圧検出部13]
LCフィルタ11は、電力系統4のR相、S相およびT相と電力変換部10との間に設けられる。かかるLCフィルタ11は、3つのリアクトルと3つのコンデンサを含み、例えば、電力変換部10を構成する双方向スイッチSw1〜Sw9のスイッチングに起因するスイッチングノイズを除去する。なお、LCフィルタ11は、図1に示す構成に限定されず、他の構成であってもよい。
電流検出部12は、電力系統4とLCフィルタ11との間に設けられ、マトリクスコンバータ3と電力系統4のR相、S相、T相の各相との間に流れる電流の瞬時値Ir、Is、It(以下、系統相電流Ir、Is、Itと記載する)を検出する。なお、電流検出部12は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用して電流を検出する。
電圧検出部13は、電力系統4と電力変換部10との間に設けられ、電力系統4からマトリクスコンバータ3へ供給される電力系統4のR相、S相、T相の各相の電圧の瞬時値Vr、Vs、Vt(以下、系統相電圧Vr、Vs、Vtと記載する)を検出する。
電流検出部14は、回転電機8と電力変換部10およびブレーキ回路15との間に設けられ、回転電機8のU相、V相、W相の各相に流れる電流の瞬時値Iu、Iv、Iw(以下、回転電機電流Iu、Iv、Iwと記載する)を検出する。なお、電流検出部14は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用して電流を検出する。
[2.3.ブレーキ回路15]
ブレーキ回路15は、回転電機8のU相、V相およびW相に接続されて電力を消費する回路である。図3は、ブレーキ回路15の構成例を示す図である。図3に示すように、ブレーキ回路15は、3相整流回路30(整流回路の一例)と、直流電圧源31とを備える。
3相整流回路30は、3相ブリッジ接続されたダイオード32〜37を備え、回転電機8のU相、V相およびW相の各相の電圧Vu、Vv、Vwを整流する。直流電圧源31は、3相整流回路30の整流出力側に接続され、例えば、電力系統4の低電圧時に3相整流回路30による整流後の電圧が直流電圧源31の電圧Vbrk(以下、ブレーキ電圧Vbrkと記載する)を超える部分をクランプして電力を消費する。
直流電圧源31は、コンデンサ38と、抵抗39と、スイッチング素子40と、ダイオード41とを備える。コンデンサ38は、3相整流回路30で整流された電圧を平滑する。抵抗39およびスイッチング素子40は、直列に接続され、コンデンサ38の端子間に並列に接続される。
スイッチング素子40には、保護用のダイオード41が逆並列接続される。かかるスイッチング素子40がONになった場合、抵抗39がコンデンサ38と並列に接続された状態になる。これにより、直流電圧源31は、例えば、電力系統4の低電圧時に3相整流回路30による整流後の電圧がブレーキ電圧Vbrkを超える部分の電力を抵抗39によって消費することができる。
なお、スイッチング素子40は、例えば、MOSFETやIGBTなどの半導体スイッチング素子であり、次世代半導体スイッチング素子のSiC、GaNであってもよい。また、マトリクスコンバータ3には、図3に示すように、ブレーキ電圧検出部17が設けられる。かかるブレーキ電圧検出部17は、コンデンサ38の両端電圧の瞬時値であるブレーキ電圧Vbrkを制御部20へ出力する。
また、スナバ回路にブレーキ回路15を形成することができる。図4は、ブレーキ回路15の他の構成例を示す図である。図4に示すように、スナバ回路18に、抵抗39、スイッチング素子40およびダイオード41を形成することによって、ブレーキ回路15を形成することができる。なお、スナバ回路18は、電力変換部10の回転電機8側に接続される整流回路30と、電力変換部10の電力系統4側に接続される整流回路19と、コンデンサ38と、抵抗42とを備える。スナバ回路18は、電力変換部10の動作時に生じるサージ電圧を吸収して蓄積する回路である。
抵抗39、スイッチング素子40およびダイオード41は、例えば、スナバ回路18に蓄積された電荷を放電する回路として機能することができる。このように、ブレーキ回路15をスナバ回路18と一部または全部を共用することができ、これにより、ブレーキ回路15によるコストアップや大型化を抑制できる。
なお、ブレーキ回路15は、上述した構成に限定されない。すなわち、ブレーキ回路15は、後述する第1の動作モードにおいて、回転電機8と導通して回転電機8からの電力を消費することができる構成であればよく、例えば、ツェナーダイオードと抵抗とによって構成されてもよい。
[2.4.低電圧検出部16]
図1に示す低電圧検出部16は、系統電圧の電圧値Va(以下、系統電圧Vaと記載する)が電圧値Vth以下であるか否かを判定する。系統電圧が低下するのは、例えば、電力系統4の送電網が故障した場合(例えば、送電線が切断された場合)や発電装置が停止や故障をした場合などである。
低電圧検出部16は、系統電圧Vaが電圧値Vth以下である場合には、電力系統4が低電圧になったと判定してHighレベルの低電圧検出信号Sdを出力する。一方、低電圧検出部16は、系統電圧Vaが電圧値Vthを超える場合には、電力系統4が低電圧になっていないと判定してLowレベルの低電圧検出信号Sdを出力する。
低電圧検出部16は、例えば、系統相電圧Vr、Vs、Vtを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の系統電圧Vinαとβ軸方向の系統電圧Vinβとを求める。そして、低電圧検出部16は、系統電圧Vinα、Vinβの2乗和平方根(=√(Vinα2+Vinβ2))を演算し、演算結果を系統電圧Vaとすることができる。
なお、低電圧検出部16は、例えば、系統相電圧Vr、Vs、Vtのいずれかの振幅が所定値以下になった場合に、電力系統4が低電圧になったと判定してHighレベルの低電圧検出信号Sdを出力することができる。
[2.5.制御部20]
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、切替部21と、第1の駆動制御部22と、第2の駆動制御部23(電流制御部の一例)の機能を実現する。なお、切替部21、第1の駆動制御部22および第2の駆動制御部23の少なくともいずれかまたは全部をハードウェアのみで構成することもできる。
切替部21は、低電圧検出部16から出力される低電圧検出信号Sdに基づいて、電力変換部10へ出力するスイッチ駆動信号S1〜S18を選択して出力する。例えば、切替部21は、低電圧検出信号SdがLowレベルである場合、第1の駆動制御部22によって生成されるスイッチ駆動信号Sa1〜Sa18をスイッチ駆動信号S1〜S18として出力する。また、切替部21は、低電圧検出信号SdがHighレベルである場合、第2の駆動制御部23によって生成されるスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18をスイッチ駆動信号S1〜S18として出力する。
第1の駆動制御部22は、電圧指令を生成する。かかる電圧指令は、例えば、回転電機8が発生すべきトルクを規定するトルク指令に基づいて公知の同期発電機のベクトル制御則によって生成される。第1の駆動制御部22は、公知のマトリクスコンバータのPWM(Pulse Width Modulation)制御方法によって電圧指令に応じた電圧を回転電機8に出力するためのスイッチ駆動信号Sa1〜Sa18を生成して電力変換部10へ出力する。
電力変換部10の双方向スイッチSw1〜Sw9はスイッチ駆動信号Sa1〜Sa18によりPWM制御される。これにより、電力変換部10は、回転電機8の発電電力を電力系統4の電圧および周波数に対応する有効電力に変換して電力系統4へ出力することができる。
第2の駆動制御部23は、系統相電圧Vr、Vs、Vt、系統相電流Ir、Is、It、回転電機電流Iu、Iv、Iwおよび回転位置θGなどに基づいて、スイッチ駆動信号Sb1〜Sb18を生成する。
かかる第2の駆動制御部23は、スイッチ駆動信号Sb1〜Sb18により、複数の双方向スイッチSw1〜Sw9を構成する複数の片方向スイッチング素子24、25を個別にON/OFFして系統無効電流制御とトルク制御とを行う。系統無効電流制御は、無効電力を電力系統4へ供給する制御であり、トルク制御は、回転電機8のトルクの制御である。
第2の駆動制御部23は、第1〜第3の動作モードを所定期間Ta(例えば、10kHz)内で所定の順番にしたがって切り替えて実行する一連の処理を所定期間Ta毎に実行することで、無効電力を電力系統4へ供給しつつ、回転電機8のトルク制御を行うスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18を生成する。
図5は、第1の動作モードにおける簡易的な等価回路を示す図であり、第1の動作モードで生成されたスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18によって形成される。第1の動作モードでは、電力変換部10によって回転電機8と電力系統4との間の接続が遮断され、図5に示すように、回転電機8はブレーキ回路15と導通する。
そのため、回転電機8の3相巻線の各インダクタLgにエネルギーが蓄積されている場合、ブレーキ回路15へ回転電機8の3相巻線から電流が流れる。そして、第1の動作モードを実行する期間の長さを調整することで、回転電機8からマトリクスコンバータ3へ流す電流を調整して回転電機8のトルク制御を行うことができる。なお、制御部20は、低電圧検出信号SdがHighレベルである場合に、スイッチング素子40を継続してONにすることができる。また、直流電圧源31は、低電圧検出部16から出力される低電圧検出信号Sdを増幅してスイッチング素子40へ入力することもでき、この場合も、低電圧検出信号SdがHighレベルである場合にスイッチング素子40を継続してONにすることができる。
図6は、第2の動作モードにおける簡易的な等価回路を示す図であり、第2の動作モードで生成されたスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18によって形成される。第2の動作モードでは、回転電機8側へ非ゼロベクトルが出力され、かつ、電力系統4側の力率がゼロになるように電力変換部10がスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18によって制御される。これにより、電力変換部10から電力系統4へ無効電流が供給される。
図7は、第3の動作モードにおける簡易的な等価回路を示す図であり、第3の動作モードで生成されたスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18によって形成される。第3の動作モードでは、電力変換部10によって回転電機8のU相、V相およびW相が短絡される。これにより、回転電機8の各インダクタLgにエネルギーが蓄積される。このように各インダクタLgに蓄積されたエネルギーは、第1の動作モードにおいて、ブレーキ回路15へ放出される。
図8は、制御部20の制御例を示すフローチャートである。かかる処理は、例えば、所定期間Ta毎に繰り返し実行される処理である。
図8に示すように、制御部20は、低電圧検出信号SdがHighレベルか否かを判定する(ステップS100)。低電圧検出信号SdがHighレベルであると判定すると(ステップS100;Yes)、制御部20の第2の駆動制御部23は、ブレーキ導通率dbrk*と仮想直流リンク導通率dlink*とを決定する(ステップS101)。
ブレーキ導通率dbrk*は、所定期間Taにおける第1の動作モードの実行期間の比率であり、仮想直流リンク導通率dlink*は、所定期間Taにおける第2の動作モードの実行期間の比率である。
次に、制御部20の第2の駆動制御部23は、ブレーキ導通率dbrk*と仮想直流リンク導通率dlink*に基づき、第1〜第3の動作モードを切り替えながら実行して電力変換部10を制御する(ステップS102)。制御部20は、ブレーキ導通率dbrk*に応じた期間で第1の動作モードを実行して電力変換部10を制御し、また、仮想直流リンク導通率dlink*に応じた期間で第2の動作モードを実行して電力変換部10を制御する。また、制御部20は、所定期間Taの残りの期間で第3の動作モードを実行して電力変換部10を制御する。
かかる第1および第3の動作モードによって、電力変換部10とブレーキ回路15とが単方向の3相昇圧コンバータとして機能する。そのため、回転電機8のトルク制御を行うことができ、また、回転電機8の各相の電流を正弦波状にすることができる。
一方、低電圧検出信号SdがHighレベルではないと判定すると(ステップS100;No)、制御部20の第1の駆動制御部22は、電力変換部10を制御して、回転電機8の発電電力を電力系統4へ供給する(ステップS103)。かかる処理において、制御部20は、例えば、回転電機8の発電電力を電力系統4の電圧および周波数に対応する電力に変換して電力系統4へ出力するように電力変換部10を制御する。
このように、マトリクスコンバータ3は、電力系統4が低電圧になった場合に、第2の動作モードを実行して電力系統4への無効電流供給制御を行い、第1および第3の動作モードを実行して回転電機8のトルク制御を行う。
これにより、マトリクスコンバータ3は、電力系統4が低電圧になった場合でも、例えば、回転電機8の回転速度ωGを抑制することができる。その結果、例えば、回転電機8の回転速度ωGが発電部2の定格を超え、発電部2が故障するような事態を回避することができる。以下、第2の駆動制御部23の構成についてさらに詳細に説明する。
[3.第2の駆動制御部23]
図9は、第2の駆動制御部23の構成例を示す図である。図9に示すように、第2の駆動制御部23は、系統パルスパターン生成部51と、回転電機パルスパターン生成部52と、スイッチ駆動信号生成部53とを備える。
かかる第2の駆動制御部23は、図10に示す仮想的な電力変換モデルを利用してスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18を生成する。図10は、電力変換モデルを示す図である。電力変換モデル200を用いることによりマトリクスコンバータ3を仮想的に電圧形インバータ・電流形コンバータとみなすことができる。
電力変換モデル200は、図10に示すように、仮想的な電圧形インバータのモデル201(以下、仮想VSI201と記載する)と仮想的な電流形コンバータのモデル202(以下、仮想CSR202と記載する)を備えるモデルである。仮想VSI201は、回転電機8のU相、V相、W相に仮想的に接続された複数のスイッチング素子Swup、Swvp、Swwp、Swun、Swvn、Swwn(以下、スイッチング素子Swup〜Swwnと記載する場合がある)から構成される。
かかるスイッチング素子Swup〜Swwnは、スイッチ駆動信号Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swn(以下、スイッチ駆動信号Sup〜Swnと記載する場合がある)によって駆動される。なお、以下において、スイッチング素子Swup、Swvp、Swwpを上アームと呼び、スイッチング素子Swun、Swvn、Swwnを下アームと呼ぶ場合がある。また、スイッチング素子Swup〜Swwnは、「1(例えば、Highレベル)」でONになり、「0(例えば、Lowレベル)」でOFFになるとする。
仮想CSR202は、電力系統4のR相、S相、T相に仮想的に接続された複数のスイッチング素子Swrp、Swsp、Swtp、Swrn、Swsn、Swtn(以下、スイッチング素子Swrp〜Swtnと記載する場合がある)から構成される。
かかるスイッチング素子Swrp〜Swtnは、スイッチ駆動信号Srp、Ssp、Stp、Srn、Ssn、Stn(以下、スイッチ駆動信号Srp〜Stnと記載する場合がある)によって駆動される。なお、スイッチング素子Swrp〜Swtnは、「1(例えば、Highレベル)」でONになり、「0(例えば、Lowレベル)」でOFFになるとする。
系統パルスパターン生成部51は、仮想CSR202を120度通電制御するスイッチ駆動信号Srp〜Stnのスイッチングパターンを有し、電力系統4の位相(以下、系統位相θrstと記載する)に応じたスイッチ駆動信号Srp〜Stnを生成する。
かかる系統パルスパターン生成部51は、例えば、系統相電圧Vr、Vs、Vtに基づき、電力系統4の電圧周波数(以下、系統周波数frstと記載する)を検出し、低電圧検出信号SdがLowレベルからHighレベルに変化する直前の系統周波数frstを保持する。系統パルスパターン生成部51は、保持した系統周波数frstを積分し、系統位相θrstを生成する。
図11は、系統位相θrstとスイッチ駆動信号Srp〜Stnとの関係を示す図である。系統パルスパターン生成部51によって生成されたスイッチ駆動信号Srp〜Stnによって、図11に示すように、例えば、系統位相θrstに対してπ/2進んだ電流が流れる。これにより、電力系統4にπ/2進みでかつ有効電流がゼロである無効電流を流すことができる。
図9に戻って第2の駆動制御部23の説明を続ける。回転電機パルスパターン生成部52は、仮想VSI201を制御するスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成する。
スイッチ駆動信号生成部53は、スイッチ駆動信号Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swn、Srp、Ssp、Stp、Srn、Ssn、Stnに基づき、下記式(1)を用いて、スイッチ駆動信号Sru、Ssu、Stu、Srv、Ssv、Stv、Srw、Ssw、Stwを生成する。
上記式(1)において、スイッチ駆動信号Sru、Ssu、Stu、Srv、Ssv、Stv、Srw、Ssw、Stwは、双方向スイッチSw1、Sw2、Sw3、Sw4、Sw5、Sw6、Sw7、Sw8、Sw9(図1参照)をそれぞれ駆動する信号である。
スイッチ駆動信号Sruは、双方向スイッチSw1の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb1、Sb2としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。スイッチ駆動信号Ssuは、双方向スイッチSw2の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb3、Sb4としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。スイッチ駆動信号Stuは、双方向スイッチSw3の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb5、Sb6としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。
スイッチ駆動信号Srvは、双方向スイッチSw4の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb7、Sb8としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。スイッチ駆動信号Ssvは、双方向スイッチSw5の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb9、Sb10としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。スイッチ駆動信号Stvは、双方向スイッチSw6の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb11、Sb12としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。
スイッチ駆動信号Srwは、双方向スイッチSw7の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb13、Sb14としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。スイッチ駆動信号Sswは、双方向スイッチSw8の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb15、Sb16としてスイッチ駆動信号生成部53から電力変換部10へ出力される。スイッチ駆動信号Stwは、双方向スイッチSw9の片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号Sb17、Sb18としてスイッチ駆動信号生成部53から出力される。
かかるスイッチ駆動信号Sb1〜Sb18(以下、スイッチ駆動信号Sowと総称する場合がある)によって、電力変換部10は、電力系統4へ無効電流を供給しつつ、回転電機8のトルク制御を行う。これにより、マトリクスコンバータ3は、電力系統4へ無効電流を供給しつつ、回転電機8のトルク制御を行うことができる。なお、スイッチ駆動信号Sowが「0(例えば、Lowレベル)」の場合に、対応する片方向スイッチング素子がOFFになり、スイッチ駆動信号Sowが「1(例えば、Highレベル)」の場合に、対応する片方向スイッチング素子がONになる。
[3.1.回転電機パルスパターン生成部52]
次に、回転電機パルスパターン生成部52の構成例について説明する。図12は、回転電機パルスパターン生成部52の構成例を示す図である。図12に示すように、回転電機パルスパターン生成部52は、第1のスイッチ制御部60と、第2のスイッチ制御部61と、第3のスイッチ制御部62と、比率演算部63と、マルチプレクサ(MUX)64とを備える。
第1のスイッチ制御部60は、第1の動作モードを実行するスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成する。かかる第1のスイッチ制御部60は、スイッチング素子Swup〜Swwn(図10参照)を全てOFFするように、スイッチ駆動信号Sup〜SwnをすべてLowレベルにし、かかるスイッチ駆動信号Sup〜Swnをマルチプレクサ64へ出力する。
図13は、第1の動作モードのスイッチ駆動信号Sup〜Swnによるスイッチング素子Swrp〜Swtnの状態を示す図である。図13に示すように、第1の動作モードのスイッチ駆動信号Sup〜Swnによって、スイッチング素子Swup〜Swwn(図10参照)がOFFになるように電力変換部10が制御される。スイッチ駆動信号Sup〜Swnがすべてゼロの場合、上記式(1)から分かるように、電力変換部10の双方向スイッチSw1〜Sw9がすべてOFFになり、電力系統4と回転電機8との間の接続が遮断される。
図12に戻って、回転電機パルスパターン生成部52の説明を続ける。第2のスイッチ制御部61は、位置検出部9によって検出された回転電機8の回転位置θGに基づいて、電力変換部10から回転電機8側へ非ゼロベクトルが出力されるようなスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成しマルチプレクサ64へ出力する。
図14は、第2の動作モードにおける回転電機8の回転位置θGと非ゼロベクトルとの関係を示す図である。図14に示すように、第2のスイッチ制御部61は、回転電機8の回転位置θGに応じて、出力される非ゼロベクトルが変化するようなスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成しマルチプレクサ64へ出力する。
かかるスイッチ駆動信号Sup〜Swnによって、U相、V相およびW相のうち絶対値が最も大きい電流を有する相が仮想VSI201と仮想CSR202との間の仮想直流リンクに接続される。これにより、かかる仮想直流リンクの電流Idc(以下、仮想直流リンク電流Idcと記載する)を取得することができ、かかる電流Idcに基づき、電力系統4への無効電流を制御することができる。なお、図14に示す例(後述する図16の例も同様)では、U相電流Iuが正の最大値のときに、回転位置θGがゼロである。すなわち、基準角度(θG=0[rad])において電流ベクトルがU相電流Iuに一致している。
例えば、−π/6≦θG<π/6である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV1とし、π/6≦θG<π/2である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV2とし、π/2≦θG<5π/6である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV3とする。また、5π/6≦θG<7π/6である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV4とし、7π/6≦θG<3π/2である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV5とし、3π/2≦θG<11π/6である場合、出力ベクトルを非ゼロベクトルV6とする。
なお、図14に示すV1の「100」は、U相に対応する上アームがONであり、V相およびW相の下アームがONであることを示す。その他の非ゼロベクトルV2〜V6についても同様に、左からU相、V相、W相の順に上下アームの状態を表し、上アームがONである相を「1」で表し、下アームがONである相を「0」で表している。
図15は、−π/6≦θG<π/6である場合に、第2の動作モードのスイッチ駆動信号Sup〜Swnによるスイッチング素子の状態を示す図である。図15に示す例では、スイッチング素子Swup、Swvn、SwwnがONであり、スイッチング素子Swrun、Swvp、SwwpがOFFである。そのため、電力変換部10から回転電機8のU相へ電流が流れ、回転電機8のV相およびW相を経由して電力変換部10へ電流が入力される。
このように、第2のスイッチ制御部61は、U相、V相およびW相のうち1相または2相の上アームをONにし、残りの相の下アームをONにするようなスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成しマルチプレクサ64へ出力する。そのため、第2の動作モードにおいて、回転電機8のU相、V相およびW相のすべてを導通状態とすることができる。
一方、電流形インバータの場合、U相、V相およびW相のうち1相が非導通状態になることから、ブレーキ回路15へ電流が流入し回転電機8のトルク制御が難しくなる。そこで、本実施形態では、電流形インバータではなく、電圧形インバータを採用している。
図12に戻って、回転電機パルスパターン生成部52の説明を続ける。第3のスイッチ制御部62は、位置検出部9によって検出された回転電機8の回転位置θGに基づいて、電力変換部10から回転電機8側へゼロベクトルが出力されるようなスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成しマルチプレクサ64へ出力する。
図16は、第3の動作モードにおける回転電機8の回転位置θGとゼロベクトルとの関係を示す図である。図16に示すように、第3のスイッチ制御部62は、回転電機8の回転位置θGに応じて、出力されるゼロベクトルが変化するようなスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成しマルチプレクサ64へ出力する。
図16に示すように、例えば、−π/6≦θG<π/6、π/2≦θG<5π/6、または、7π/6≦θG<3π/2である場合、出力ベクトルをゼロベクトルV0とし、π/6≦θG<π/2、5π/6≦θG<7π/6、または、3π/2≦θG<11π/6である場合、出力ベクトルをゼロベクトルV7とする。
なお、図16に示すV0の「000」は、U相、V相およびW相のすべての上アームがOFFであり、U相、V相およびW相のすべての下アームがONであることを示す。また、図16に示すV7の「111」は、U相、V相およびW相のすべての上アームがONであり、U相、V相およびW相のすべての下アームがOFFであることを示す。
図17は、第3の動作モードのスイッチ駆動信号Sup〜Swnによるスイッチング素子の状態を示す図であり、ゼロベクトルV0が出力される場合の例である。図17に示す例では、スイッチング素子Swup、Swvp、SwwpがOFFであり、スイッチング素子Swun、Swvn、SwwnがONである。そのため、回転電機8のU相、V相およびW相が互いに接続される。これにより、回転電機8の3相巻線の各インダクタLgにエネルギーが蓄積される。なお、ゼロベクトルV7が出力される場合も同様に、回転電機8のU相、V相およびW相が互いに接続され、回転電機8の3相巻線の各インダクタLgにエネルギーが蓄積される。
また、回転電機パルスパターン生成部52は、第2の動作モードと第3の動作モードとを切り替える場合に、U相、V相およびW相のうち1相のみの状態を変更する。例えば、−π/6≦θG<π/6の場合、第2の動作モードの出力ベクトルは非ゼロベクトルV1であり、第3の動作モードの出力ベクトルはゼロベクトルV0であることから、U相のみの状態を切り替えるだけでよい。そのため、切り替えるスイッチング素子の数が少なく、スイッチング素子のスイッチングによって発生する熱損失を抑制することができる。
図12に戻って、回転電機パルスパターン生成部52の説明を続ける。比率演算部63は、系統相電流Ir、Is、It、回転電機電流Iu、Iv、Iw、回転位置θGおよびブレーキ電圧Vbrkなどに基づいて、第1および第2の選択指令Sel1、Sel2を生成する。
マルチプレクサ64は、第1のスイッチ制御部60、第2のスイッチ制御部61および第3のスイッチ制御部62からそれぞれスイッチ駆動信号Sup〜Swnを取得し、第1および第2の選択指令Sel1、Sel2に基づいて、出力するスイッチ駆動信号Sup〜Swnを選択する。
第1の選択指令Sel1は、第1の動作モードを選択するための信号であり、かかる第1の選択指令Sel1がHighレベルである場合、マルチプレクサ64は、第1のスイッチ制御部60からのスイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。
また、第2の選択指令Sel2は、第2の動作モードを選択するための信号であり、かかる第2の選択指令Sel2がHighレベルである場合、マルチプレクサ64は、第2のスイッチ制御部61からのスイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。また、第1および第2の選択指令Sel2が共にLowレベルである場合、マルチプレクサ64は、第3のスイッチ制御部62からのスイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。
比率演算部63は、図12に示すように、第1の比率演算部66と、第2の比率演算部67と、加算部68と、キャリア波生成部69と、コンパレータ70、71と、論理積(AND)部72と、減算部73とを備える。
第1の比率演算部66は、ブレーキ導通率dbrk*を演算して出力する。第2の比率演算部67は、仮想直流リンク導通率dlink*を演算して出力する。加算部68は、仮想直流リンク導通率dlink*にブレーキ導通率dbrk*を加算する。キャリア波生成部69は、例えば、所定期間Taを1周期とするキャリア波Vcを生成して出力する。
コンパレータ70は、ブレーキ導通率dbrk*とキャリア波Vcとを比較し、ブレーキ導通率dbrk*がキャリア波Vcよりも高い場合に、第1の選択指令Sel1を「1」(例えば、Highレベルの信号)にして出力する。
また、コンパレータ71は、ブレーキ導通率dbrk*と仮想直流リンク導通率dlink*との加算値とキャリア波Vcとを比較し、かかる加算値がキャリア波Vcよりも高い場合に、「1」(例えば、Highレベルの信号)を出力する。論理積部72は、コンパレータ70の出力とコンパレータ71の出力との論理積を演算し、減算部73は、コンパレータ71の出力から論理積部72の出力を減算することによって、第2の選択指令Sel2を生成し出力する。
図18は、キャリア波Vc、ブレーキ導通率dbrk*、仮想直流リンク導通率dlink*、第1および第2の選択指令Sel1、Sel2、および、動作モードとの関係を示す図である。図18に示すように、比率演算部63は、キャリア波Vc、ブレーキ導通率dbrk*および仮想直流リンク導通率dlink*に基づき、第1および第2の選択指令Sel1、Sel2を生成する。
[3.2.第1の比率演算部66]
次に、第1の比率演算部66の構成例について説明する。図19は、第1の比率演算部66の構成例を示す図である。
図19に示すように、第1の比率演算部66は、座標変換部75と、振幅検出部76と、電流指令出力部77と、減算部78、81と、PI(比例積分)制御部79と、起電力演算部80と、除算部82と、リミッタ83を備える。
座標変換部75は、回転電機電流Iu、Iv、Iwを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の回転電機電流Ioαとβ軸方向の回転電機電流Ioβを求める。振幅検出部76は、αβ軸回転電機電流Ioα、Ioβの2乗和平方根(=√(Ioα2+Ioβ2))を演算し、演算結果を電流振幅IoMとする。
電流指令出力部77は、回転電機8の電流を制御するための電流指令Io*を生成する。減算部78は、電流指令Io*から電流振幅IoMを減算する。PI制御部79は、電流指令Io*と電流振幅IoMとの差をPI(比例積分)制御することによって、電流指令Io*と電流振幅IoMとの差がゼロになるように、電圧指令Vo*を生成する。
起電力演算部80は、回転電機8の回転位置θGに基づき、回転電機8の回転速度ωGを求める。例えば、起電力演算部80は、回転電機8の回転位置θGを微分することによって回転電機8の回転速度ωGを求める。起電力演算部80は、回転速度ωGに基づいて、回転電機8に生じる誘起電圧の振幅Eaを推定する。なお、位置検出部9が、回転速度ωGも検出することができる場合、起電力演算部80は、回転速度ωGは、位置検出部9などから取得することもできる。
減算部81は、誘起電圧の振幅Eaから電圧指令Vo*を減算する。除算部82は、減算部81の減算結果をブレーキ電圧検出部17によって検出されたブレーキ電圧Vbrkで除算することによって、ブレーキ導通率dbrk*(=(Ea−Vo*)/Vbrk)を生成する。
ブレーキ導通率dbrk*は、電力変換部10の出力線間(発電機側端子Tu、Tv、Tw間)の電圧Voを制御する。一方で、PI制御部79は、回転電機8のインダクタLgに印加する電圧(インダクタ電圧Vgと記載する)の目標値を電圧指令Vo*をとして出力する。パワーフローは回生であることから、電力変換部10の出力線間の電圧Voは、誘起電圧の振幅Eaからインダクタ電圧Vgを減じたものと等価である。そのため、減算部81によって誘起電圧の振幅Eaから電圧指令Vo*を減算するようにしている。また、減算部81の出力は電圧に対応する値である。そこで、除算部82は、導通率に対応する値に換算するために、減算部81の演算結果をブレーキ電圧Vbkで除算するようにしている。
リミッタ83は、ブレーキ導通率dbrk*が上限値dlimu(例えば、0.5)と下限値dlimd(例えば、0)の範囲(例えば、0〜0.5)を超えないように、ブレーキ導通率dbrk*を制限する。これにより、第2の動作モードの期間を確保することができる。
このように、第1の比率演算部66は、電流振幅IoMが電流指令Io*に一致するようにブレーキ導通率dbrk*を生成する。すなわち、第1の比率演算部66は、回転電機電流Iu、Iv、Iwが目標値になるようにブレーキ導通率dbrk*を生成することができる。
図20は、図19に示す電流指令出力部77の構成例を示す図である。図20に示すように、電流指令出力部77は、ブレーキ電圧指令生成部85と、減算部86と、PI制御部87とを備える。
ブレーキ電圧指令生成部85は、ブレーキ電圧指令Vbrk*を生成して出力する。減算部86は、ブレーキ電圧指令Vbrk*からブレーキ電圧検出部17によって検出されたブレーキ電圧Vbrkを減算する。
PI制御部87は、ブレーキ電圧指令Vbrk*とブレーキ電圧Vbrkとの差をPI制御することによってブレーキ電圧指令Vbrk*とブレーキ電圧Vbrkとの差がゼロになるように電流指令Io*を生成する。これにより、ブレーキ電圧Vbrkが、ブレーキ電圧指令Vbrk*と一致するように電流指令Io*を生成することができる。このように、ブレーキ電圧Vbrkのフィードバック制御を行って、抵抗39に印加される電圧を制御することによって、回転電機8のトルク制御を安定して行うことができる。
[3.3.第2の比率演算部67]
図21は、第2の比率演算部67の構成例を示す図である。図21に示すように、第2の比率演算部67は、座標変換部88と、振幅検出部89と、電流指令出力部90と、減算部91と、PI制御部92と、リミッタ93と、増幅部94と、絶対値変換部95と、最大値出力部96と、除算部97と、減算部98と、乗算部99とを備える。
座標変換部88は、系統相電流Ir、Is、Itを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の系統電流Iinαとβ軸方向の系統電流Iinβを求める。振幅検出部89は、αβ軸系統電流Iinα、Iinβの2乗和平方根(=√(Iinα2+Iinβ2))を演算し、演算結果を電流振幅IinMとする。
電流指令出力部90は、電力系統4側の電流を制御するための無効電流指令IinQ*を生成する。なお、無効電流指令IinQ*は、外部から取得することもできる。減算部91は、無効電流指令IinQ*から電流振幅IinMを減算する。PI制御部92は、無効電流指令IinQ*と電流振幅IinMの差をPI(比例積分)制御することによって、無効電流指令IinQ*と電流振幅IinMとの差がゼロになるように、仮想直流リンク導通率dlink****を生成する。
リミッタ93は、PI制御部92から出力される仮想直流リンク導通率dlink****の上下限を制限する。増幅部94は、リミッタ93の出力を√3/2倍(約0.866倍)に増幅して仮想直流リンク導通率dlink***を生成する。なお、第2の比率演算部67は、PI制御部92およびリミッタ93を設けない構成であってもよい。
リミッタ93の出力を√3/2倍にするのは、回転電機電流Iu、Iv、Iwの大小関係が切り替わるときの瞬時値がピーク時の瞬時値に対して√3/2倍になるためであり、仮想直流リンクの電流Idcを一定にするために、仮想直流リンク導通率dlink****を√3/2倍にして仮想直流リンク導通率dlink***を生成している。
絶対値変換部95は、回転電機電流Iu、Iv、Iwの絶対値|Iu|、|Iv|、|Iw|を演算する。最大値出力部96は、絶対値|Iu|、|Iv|、|Iw|のうち、最も大きな絶対値|Io_max|を選択して出力する。除算部97は、仮想直流リンク導通率dlink***を絶対値|Io_max|で除算して仮想直流リンク導通率dlink**(=dlink**/|Io_max|)を生成する。
このように、絶対値|Io_max|の大きさに応じて仮想直流リンク導通率dlink***を補正することができるため、例えば、回転電機電流Iu、Iv、Iwの周波数の6倍の交流成分が仮想直流リンクの電流Idcに生じることを抑制することができる。なお、絶対値変換部95は、回転電機電流Iu、Iv、Iwの絶対値|Iu|、|Iv|、|Iw|は、0〜2πまでの間で最も大きくなる場合の値を「1」としている。
減算部98は、1からブレーキ導通率dbrk*を減算する。乗算部99は、仮想直流リンク導通率dlink**に減算部98の減算結果を乗算して、仮想直流リンク導通率dlink*を生成する。
このように、第2の比率演算部67は、無効電流指令IinQ*に応じた無効電流が電力系統4に流れるように仮想直流リンク導通率dlink**を生成する。また、第2の比率演算部67は、ブレーキ導通率dbrk*が大きくなるほど仮想直流リンク導通率dlink*が小さくなる。これにより、回転電機8のトルク制御を優先することができる。
なお、第2の比率演算部67において、例えば、減算部98および乗算部99に代えて、リミッタを設けることもできる。これにより、仮想直流リンク導通率dlink*が大きくなり過ぎて、ブレーキ導通率dbrk*との加算値が所定値(例えば、0.8)を超えてしまうことを抑制することができ、第1〜第3の動作モードを実行することができる。また、ブレーキ導通率dbrk*による仮想直流リンク導通率dlink*への干渉を低減することができる。
以上のように、本実施形態にかかるマトリクスコンバータ3は、電力変換部10と、ブレーキ回路15と、制御部20とを備える。電力変換部10は、電力系統4(交流電源の一例)の各相と回転電機8の各相とを接続する複数の双方向スイッチSw1〜Sw9を含む。ブレーキ回路15は、回転電機8の各相に接続されて電力を消費する回路である。制御部20は、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、電力変換部10を制御して回転電機8からブレーキ回路15へ電流を流す。これにより、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、回転電機8のトルク制御を行うことができる。
また、制御部20は、電力変換部10から回転電機8側へのゼロベクトルの出力と電力系統4と回転電機8との接続の遮断とを繰り返すように電力変換部10を制御して回転電機8の電流をブレーキ回路15へ流す。これにより、回転電機8のトルクを精度よく制御することができる。
また、制御部20の第2の駆動制御部23は、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、さらに、電力変換部10から回転電機8側へ非ゼロベクトルを出力するように電力変換部10を制御する。これにより、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、回転電機8のトルク制御を行いしつつ、電力変換部10から電力系統4へ無効電力を供給することができる。
また、制御部20の第2の駆動制御部23は、電力変換部10を制御して、ゼロベクトルの出力(第3の動作モード)と、電力系統4と回転電機8との接続の遮断(第1の動作モード)と、非ゼロベクトルの出力(第2の動作モード)とを所定の順番で切り替えて実行する処理を所定期間Ta毎に行う。これにより、系統無効電流制御とトルク制御とを容易に行うことができる。
また、制御部20の第2の駆動制御部23は、第1の比率演算部66と、第2の比率演算部67と、第1のスイッチ制御部60と、第2のスイッチ制御部61と、第3のスイッチ制御部62とを備える。第1の比率演算部66は、ブレーキ導通率dbrk*(所定期間Taにおいて電力系統4と回転電機8との接続を遮断する時比率の一例)を演算する。第2の比率演算部67は、仮想直流リンク導通率dlink*(所定期間Taにおいて非ゼロベクトルを出力する時比率の一例)を演算する。第1のスイッチ制御部60は、ブレーキ導通率dbrk*に基づき、所定期間Ta毎に電力変換部10を制御して電力系統4と回転電機8との接続を遮断する。第2のスイッチ制御部61は、仮想直流リンク導通率dlink*に基づき所定期間Ta毎に電力変換部10を制御して電力変換部10から非ゼロベクトルを出力する。第3のスイッチ制御部62は、第1のスイッチ制御部60および第2のスイッチ制御部61よる電力変換部10の制御期間以外の期間において所定期間Ta毎に電力変換部10を制御して電力変換部10からゼロベクトルを出力する。これにより、系統無効電流制御とトルク制御とを容易に行うことができる。
また、第2のスイッチ制御部61は、回転電機8の各相の電流のうち絶対値が最も大きい電流を有する相の電流が電力変換部10に流れるように電力変換部10を制御する。こにより、仮想直流リンク電流Idcを取得することができ、かかる仮想直流リンク電流Idcに基づき、電力系統4への無効電流を制御することができる。
また、ブレーキ回路15は、回転電機8の各相に接続された整流回路30と、整流回路30の整流出力側に接続された直流電圧源31とを備える。かかるブレーキ回路15により、回転電機8から適切に電流を取得することができる。
また、直流電圧源31は、コンデンサ38と、コンデンサ38に並列に接続された抵抗39とスイッチング素子40との直列回路とを備える。制御部20は、前記交流電源の電圧が所定値以下である場合に、スイッチング素子40をONにする。これにより、例えば、抵抗39で定格電力を消費しつつ回転電機8のトルク制御を安定して行うことができる。
また、マトリクスコンバータ3は、回転電機8の各相および電力系統4の各相に接続され、複数の整流回路19、30を備えるスナバ回路18を備える。そして、ブレーキ回路15の整流回路30をスナバ回路18の整流回路30と共用化している。これにより、ブレーキ回路15によるコストアップや大型化を抑制できる。
また、制御部20は、電流形コンバータのモデルに対するスイッチ駆動信号と電圧形インバータのモデルに対するスイッチ駆動信号を合成して、双方向スイッチSw1〜Sw9を構成する片方向スイッチング素子24、25を制御するスイッチ駆動信号を生成する。このように、電圧形インバータのモデルを用いることによって、双方向スイッチSw1〜Sw9を制御するスイッチ駆動信号を容易に生成することができる。
また、風力発電システム1は、マトリクスコンバータ3と、ブレード5と、ブレード5に接続されたロータ6と、ロータ6の回転による発電電力をマトリクスコンバータ3へ出力する回転電機8とを備える。これにより、風力発電システム1は、電力系統4が低電圧になった場合でも、電力系統4側に無効電流を流しながら電力変換動作を継続することができる。そのため、電力系統4が停電などにより低電圧になった場合に、電力系統4へ無効電力を供給することが要求される場合であっても、かかる要求に適切に対応することが可能となる。
また、第2の駆動制御部23は、電力変換モデル200をスイッチングモデルとして採用しているが、上述した第1〜第3の動作モードによる回転電機8の制御と同様の制御を行うものであれば、電力変換モデル200を用いなくてもよい。
また、上述した実施形態では、制御部20は、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、電力系統4側の力率がゼロになるように電力変換部10を制御したが、制御部20は、電力系統4の電圧の大きさに応じて有効電力と無効電力との割合を変更することもできる。
また、上述した実施形態では、仮想CSR202において120度通電のスイッチングパターンを用いて電力変換部10を駆動するようにしたが、制御方法は120度通電のスイッチングパターンに限られるものではない。すなわち、片方向スイッチング素子24、25を個別に制御する電流制御を行うことによって電力系統4側に無効電流を流しながら電力変換動作を継続するものであればよく、種々の変更が可能である。例えば、系統パルスパターン生成部51は、例えば、上述した120度通電の期間において、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うスイッチ駆動信号Srp〜Stnを生成することもできる。
また、図1に示す構成の電力変換部10について説明したが、例えば、図10に示すスイッチング素子を双方向スイッチに置き換えたインダイレクト型マトリクスコンバータについても上述した制御によって系統無効電流制御とトルク制御とを容易に行うことができる。
また、上述した実施形態では、回転電機8を同期発電機として説明したが、回転電機8を誘導発電機としてもよい。
また、上述した実施形態では、回転電機8として発電機を適用した例を説明したが回転電機8として電動機を適用することもでき、電力系統4の電圧が低電圧になった場合であっても、電動機の速度起電力によって運転を継続することができる。
すなわち、電力系統4の電圧が低電圧になった場合、電力系統4から電動機への電力供給が困難になるが、電動機の回転子は減速しつつも回転状態にある。そのため、かかる回転によって発生する起電力を、例えば、無効電力として電力系統4へ供給することで運転を継続することができる。
なお、上述したマトリクスコンバータ3は、電力変換部10から回転電機8側へのゼロベクトルの出力と電力系統4と回転電機8との接続の遮断とを繰り返すように電力変換部10を制御して回転電機8からブレーキ回路15へ電流を流すが、かかる構成に限定されない。すなわち、制御部20は、電力変換部10を制御して回転電機8からブレーキ回路15へ電流を流すことができれば、他の構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、系統無効電流制御とトルク制御とを行う例を説明したが、制御部20は、系統無効電流制御を行わないこともできる。この場合、制御部20は、例えば、第1の動作モードと第3の動作モードを交互に繰り返し実行することで、トルク制御を行うことができる。
このように、マトリクスコンバータ3は、電力系統4(交流電源の一例)の各相と回転電機8の各相とを接続する複数の双方向スイッチSwを含む電力変換部10と、回転電機8の各相に接続されて電力を消費するブレーキ回路15と、電力系統4の電圧が所定値以下である場合に、電力変換部10を制御して回転電機8からブレーキ回路15へ電流を流す制御部20とを備えており、これにより、電力系統4が低電圧になった場合でも、回転電機8のトルク制御を行うことができる。
なお、電力変換部10および制御部20は、「回転電機のリアクトルにエネルギーを蓄積させる手段」および「前記回転電機のリアクトルに蓄積された前記エネルギーを、ブレーキ回路に放出する手段」として機能する。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。