JP6492793B2 - 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6492793B2
JP6492793B2 JP2015046031A JP2015046031A JP6492793B2 JP 6492793 B2 JP6492793 B2 JP 6492793B2 JP 2015046031 A JP2015046031 A JP 2015046031A JP 2015046031 A JP2015046031 A JP 2015046031A JP 6492793 B2 JP6492793 B2 JP 6492793B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scale
steel material
content
steel
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015046031A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016166388A (ja
Inventor
清信 菅江
清信 菅江
教史 土井
教史 土井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2015046031A priority Critical patent/JP6492793B2/ja
Publication of JP2016166388A publication Critical patent/JP2016166388A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6492793B2 publication Critical patent/JP6492793B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、腐食性の高い土壌環境で用いられる耐食性に優れた鋼材、およびこの鋼材を用いた土中埋設用鋼構造物、ならびにこの鋼材の製造方法に関する。
近年、東南アジアおよび亜熱帯地域では、インフラの整備に伴い、土木建築用の鋼材の需要が旺盛である。土木建築用鋼材の一例として、土木建築の基礎として一部を土壌中に埋設して使用される鋼矢板および鋼管杭が挙げられる。これらの地域に分布する土壌は、鋼材の腐食性が高いとされる酸性硫酸塩を含む粘土質の土壌である。
一方、我が国の一般的な土壌中における鋼の平均腐食速度は、0.01mm/yと小さい(平均腐食速度の単位「mm/y」は、365日当たり、すなわち8760h当たりの腐食深さ(mm)を意味する。以下同様。)。そのため、我が国では、土壌で使用される土木建築用の鋼材として、JIS G 3101で規定される一般構造用圧延鋼材(SS材)、JIS G 3106で規定される溶接構造用圧延鋼材(SM材)等の一般的な鋼材が使用されている。
しかし、我が国で用いられている土木建築用の鋼材と同様の鋼材を、東南アジアおよび亜熱帯地域の土壌で使用した場合、鋼材の腐食が急速に進行し、この鋼材を使用した構造物の安全性および信頼性が低下するおそれがある。そのため、腐食性の高い土壌で使用される鋼材には防食対策が必要である。
腐食性の高い土壌環境で使用される鋼材の防食対策として、例えば特許文献1および2が開示されている。
特許文献1には、鋼材の表面が水溶性ブチラール樹脂で被覆されており、樹脂中にバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、ニオブ酸ナトリウムおよびタンタル酸カリウムの1種以上を含有させた樹脂層を設け、また母材中にV、Mo,W,Nb、Taの1種以上を含有させた、土中埋設環境において耐食性に優れる土中埋設用鋼材が開示されている。
特許文献2には、Cr:0.5〜2.0%を含有する地中埋設用鋼構造物が示され、また強度や溶接性を重視する場合には、さらにMo、Cu、Niを含有させることが開示されている。この構造物をpHが9以上となる土壌で埋め戻すことで0.02mm/yの耐食性が得られるとしている。
特開2010−144210号公報 特開2001−011569号公報
鹿島和幸、外4名、「塩化物飛来大気腐食環境における鋼の耐候性に及ぼすCr添加の影響」、日本金属学会誌、公益社団法人日本金属学会、2013年3月1日、第77巻、第3号、p.107−113
特許文献1に開示された鋼材は、樹脂層が形成され、またはV、Mo等を含有しているものの、溶接を施した際に形成される溶接部において耐食性が劣る。また、樹脂層の形成にはコストがかかる。
また、非特許文献1によれば、特許文献2に開示されている鋼材のようにCrを含有する鋼は、酸性の土壌環境では腐食が促進される場合がある。
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、樹脂層を必要とせず、溶接部の耐食性に優れ、かつ酸性土壌環境における耐食性にも優れた土中埋設用構造物およびその素材として好適な鋼材、ならびにその鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、下記(a)および(b)の知見を得るに至った。
(a)Cr、SiおよびSnを含む鋼材の表面に形成されるスケールは、スケールを構成する酸化物の組成比を適正な範囲に調整することで鋼材との密着性が高まる。
その理由は次のように考えられる。
上記鋼材の表面に形成されるスケールは、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトから構成される。マグネタイト、ファイアライトおよびウスタイトは、鋼材とスケールとの密着性を向上させる。一方、ヘマタイトはスケールの表層で生じやすく、鋼材との密着性に及ぼす影響が少ない。下記(i)式で表される酸化物の組成比の値Fn1が、特定の条件(0.15<Fn1<0.35)である場合、鋼材表面に形成されるスケールの密着性が高まる。この場合、スケールは、鋼材側からマグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトが積層または一部混合した構造となる。
Fn1=(Mm+Mf)/(Mw+Mh) ・・・(i)
ただし、上記(i)式中の各記号の意味は以下の通りである。
Mm:前記スケール中のマグネタイト含有量(質量%)
Mf:前記スケール中のファイアライト含有量(質量%)
Mw:前記スケール中のウスタイト含有量(質量%)
Mh:前記スケール中のヘマタイト含有量(質量%)
(b)スケール中のCr、SnおよびSiの含有量を適正な範囲に調整することで、土壌中における鋼材の耐食性を維持することができる。
その理由は次のように考えられる。
例えば、鋼材を鋼管に加工する際に溶接を行うと、溶接部では鋼材表面に形成されたスケールが除去され鋼材の母材が露出する。また、上述のスケールは密着性に優れているものの、表面にこのスケールが形成された鋼材を素材として用いた鋼矢板および鋼管杭を土壌中に打ち込む際には、土壌と鋼矢板および鋼管杭の表面との間にせん断力が働き、スケールが一部剥離して母材が露出することがある。鋼材表面に形成されたスケールから鋼材の母材が露出した場合、土壌中においてスケールと露出した母材との間に電位差が発生するため、鋼材の局所的な腐食が生じやすい。
しかし、CrおよびSnを適正量含有させた鋼材を、特定の条件で加熱、加工することより、CrおよびSnが濃化したスケールが鋼材表面に形成される。この鋼材表面に形成されたスケール中のCr、SnおよびSiの含有量が、下記(ii)式で表されるFn2について、9.0<Fn2<23.0を満たす場合、スケールと母材との間に発生する電位差が小さくなる。そのため、鋼材表面に形成されたスケールから鋼材の母材が露出しても、鋼材の腐食が抑制され、土壌中における鋼材の耐食性を維持することができる。また、このスケールは、CrおよびSnが濃化しているため高い密着性を有する。
Fn2=([Cr]+[Sn])/[Si] ・・・(ii)
ただし、上記(ii)式中の各記号の意味は以下の通りである。
[Cr]:前記スケール中のCr含有量(質量%)
[Sn]:前記スケール中のSn含有量(質量%)
[Si]:前記スケール中のSi含有量(質量%)
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、下記(1)に示す鋼材、下記(2)に示す土中埋設用鋼構造物、および下記(3)に示す鋼材の製造方法を要旨とする。
(1)表面にスケールが形成された鋼材であって、
前記鋼材の化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.3〜2.5%、
P:0.01%以下、
S:0.01%以下、
Cr:3.0〜5.0%、
Sn:0.01〜0.30%、
Al:0.005〜0.05%、
N:0.0005〜0.01%、
Mo:0〜0.5%、
W:0〜0.5%、
Ti:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物であり、
前記スケールが、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトが積層または一部混合した構造であり、
前記スケールの厚さが5〜50μmであり、
下記(i)式および(ii)式で表されるFn1およびFn2が、それぞれ、0.15<Fn1<0.35、および9.0<Fn2<23.0である鋼材。
Fn1=(Mm+Mf)/(Mw+Mh) ・・・(i)
Fn2=([Cr]+[Sn])/[Si] ・・・(ii)
ただし、上記(i)式および(ii)式中の各記号の意味は以下の通りである。
Mm:前記スケール中のマグネタイト含有量(質量%)
Mf:前記スケール中のファイアライト含有量(質量%)
Mw:前記スケール中のウスタイト含有量(質量%)
Mh:前記スケール中のヘマタイト含有量(質量%)
[Cr]:前記スケール中のCr含有量(質量%)
[Sn]:前記スケール中のSn含有量(質量%)
[Si]:前記スケール中のSi含有量(質量%)
(2)上記(1)に記載の鋼材を用いた土中埋設用鋼構造物。
(3)下記工程(P1)〜(P6)を含む、鋼材の製造方法。
(P1)上記(1)に記載の化学組成を有するスラブを1100〜1300℃に加熱する工程、
(P2)前記加熱したスラブの表面に形成されたスケールを除去する工程、
(P3)前記スラブを、少なくとも粗圧延機および仕上圧延機を備える圧延機群によって、粗圧延開始温度1000℃以上、仕上圧延完了温度950〜800℃で熱間圧延するに際し、前記粗圧延機の出側および前記仕上圧延機での圧延の初期段階において、水圧が10MPa以上、かつ、噴射流量が20〜300L/minの水を噴射することによって圧延中の鋼材の表面に形成されたスケールを除去する工程、
(P4)仕上圧延完了後5s以内に、得られた熱延鋼材の冷却を開始し、注水ゾーンにおいて25℃/s以上の平均冷却速度で650〜500℃の温度範囲の温度T1まで冷却する工程、
(P5)前記冷却した熱延鋼材を650〜500℃の温度範囲の温度T2でコイル状に巻き取る工程、
(P6)前記コイル状の熱延鋼材を、650〜500℃の温度範囲の温度T3から300〜150℃の温度範囲の温度T4まで、0.005〜0.1℃/sの平均冷却速度で10h以上かけて放冷する工程。
本発明の鋼材は、表面に形成されるスケールが密着性を有しているため土壌腐食環境下(特に酸性土壌環境下)での耐食性に優れている。また、万が一スケールが剥離して鋼材の母材が露出しても、スケールと母材との間に発生する電位差が小さいため、優れた耐食性を維持することができる。本発明の鋼材は、例えば鋼矢板、鋼管杭等の土中埋設用鋼構造物に好適に用いることができる。また、本発明の鋼材の製造方法によれば、本発明の鋼材を効率よく製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成
本発明の鋼材の化学組成の限定理由は次のとおりである。以下の説明において各元素の含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01〜0.20%
Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素であり、0.01%以上含有させる必要がある。しかし、C含有量が0.20%を超えると溶接性が著しく低下する。また、C含有量の増大とともにセメンタイトの生成量が増大する。セメンタイトは、pHが低下する環境においてカソードとなって鋼材の腐食を促進するため、酸性硫酸塩を含む土壌で使用した場合の鋼材の耐食性が低下する。このため、C含有量は、0.01〜0.20%とする。C含有量は、0.05%以上が好ましい。また、C含有量は、0.18%以下が好ましく、0.16%以下がより好ましい。
Si:0.01〜1.0%
Siは、鋼材の強度確保およびファイアライトの形成に必要な元素である。Si含有量が0.01%未満であると、鋼材の強度が低下するとともに、ファイアライトが形成され難い。一方、Si含有量が1.0%を超えると、加熱炉で鋼材を加熱する際に形成される1次スケールおよび加熱後の熱間圧延中に形成される2次スケール中でのファイアライト(FeSiO)量が過剰となる。1次スケールおよび2次スケールは、スケール除去工程(以下「デスケーリング」ともいうことがある。)により大部分が除去されるものの、鋼材表面に密着したスケールは除去されず残存するので、ファイアライトの形成量が過剰であると、後述のFn2の値が本発明の規定を満足しなくなる。また、Si含有量が1.0%を超えると、スケールと鋼材との界面にSiが濃化して、スケールの密着性が低下する。このため、Si含有量は、0.01〜1.0%とする。Si含有量は、0.05%以上が好ましく、0.35%以下が好ましい。
Mn:0.3〜2.5%
Mnは、鋼材の強度上昇に必要な元素である。Mn含有量が0.3%未満であると、十分な強度を確保することが困難となる。一方、Mn含有量が2.5%を超えると、鋼材の加工性を維持することが困難となる。このため、Mn含有量は0.3〜2.5%とする。Mn含有量は、0.4%以上が好ましく、2.0%以下が好ましい。
P:0.01%以下
Pは、鋼材の強度上昇に有効であり、かつ耐食性向上に有益な元素である。そのため、従来からPは耐食性鋼材において活用されていた。しかし、酸性土壌のように、pHが低下する環境においては、Pを単独で鋼に含有させると逆に耐食性の低下を招く。また、Pは、鋼材製造時にスラブを脆化させ、割れを生じさせる原因となるため、極力含有させない元素ともされている。しかしながら、Pは、Snと共存させることにより、酸性土壌環境でも鋼材の耐食性を向上させる。これは、Snを含有することにより、Feの溶出が抑制される結果、Pがさび層に保護性を付与するためと考えられる。ただし、P含有量が0.01%を超えると脆化が顕著となるため、P含有量は0.01%以下とする。P含有量は、0.008%以下が好ましい。一方、さび層に保護性を付与する効果を得る場合には、P含有量を0.001%以上とするのが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、Mnと結合して硫化物であるMnSを形成する。MnSは変形しやすく、鋼材を圧延した場合には、鋼材中において伸張した状態で存在し、鋼材の曲げ性、加工性を劣化させる。特に高強度鋼材において、Sは割れ感受性を高めるため、できる限り低減することが好ましい。このため、S含有量は0.01%以下とする。S含有量は、0.005%以下が好ましい。
Cr:3.0〜5.0%
Crは、大気環境等の中性環境における鋼材の耐食性を向上させる元素である。しかし、上述のように、非特許文献1によれば、酸性硫酸塩を含む酸性土壌環境では、Crが鉄の溶解反応を促進するため、Crを含有する鋼材は腐食が促進される場合がある。なお、高温環境では、Crを含有する鋼材の表面に形成されるスケールは、Crが濃化して鋼材との密着性が高いため、デスケーリングを行った後で、スケールとして鋼材の表面に残存する。このスケールは中性環境では耐食性が高い。また、鋼材表面のスケールが一部剥離して母材が露出した場合に、スケールと露出した母材との間に生じる電位差は、鋼中のCr含有量が高いほど小さくなる。そのため、Crを含有させることにより、鋼材の局所的な腐食の発生を抑制することができる。以下では、スケールとスケールが一部剥離して露出した母材との間の電位差に起因する鋼材の局所的な腐食を「局所腐食」といい、このスケールと母材との間の電位差を「腐食電位差」という。
Cr含有量が3.0%未満であると、デスケーリング後の鋼材表面に残存するスケールでCrが濃化せず、スケールの密着性が低下する。また、Cr含有量が3.0%未満であると、局所腐食が進行しやすくなる。一方、Cr含有量が5.0%を超えると、加熱炉での鋼材の加熱中および加熱後の圧延中において、鋼材の表面に強固に密着しデスケーリングの困難なスケールが形成される。デスケーリングの困難なスケールの形成を抑制するには、圧延中の鋼材の送り速度を低くする必要があり、生産効率が低下する。このため、Cr含有量は、3.0〜5.0%とする。Cr含有量は、3.5%以上が好ましく、4.5%以下が好ましい。
Sn:0.01〜0.30%
Snは、塩化物を含む大気環境、および酸性環境における鋼材の耐食性を向上させる元素である。Sn含有量が0.01%未満であると、酸性環境における局所腐食の発生を抑制することができない。一方、Sn含有量が0.30%を超えると、高温環境において鋼材表面にSnを含むスケールが形成されやすくなる。また、この場合、スケールに含まれるSnは、スケールと鋼材の母材表面との界面に過剰に濃化し、後述するFn1が0.35以上となるため、スケールと母材表面との密着性を低下させる。このため、Sn含有量は、0.01〜0.30%とする。Sn含有量は、0.05%以上が好ましく、0.20%以下が好ましい。
Al:0.005〜0.05%
Alは、鋼の耐食性を向上させる元素であり、その効果を得るにはAl含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、Al含有量が0.05%を超えると、上記の効果は飽和する。このため、Al含有量は、0.005〜0.05%とする。なお、Alを多量に含有させると鋼材が脆化しやすくなるため、Al含有量は0.03%以下とするのが好ましい。また、Al含有量は、0.01%以上が好ましい。本発明のAl含有量とは、酸可溶Al(所謂「sol.Al」)を指す。
N:0.0005〜0.01%
鋼材に含有されるNは、アンモニアとなって鋼材に接する水分に溶解し、飛来塩分量が多い環境において、Fe3+の加水分解によるpH低下を抑制する。そのため、Nは、塩分環境における鋼材の耐食性を向上させる効果を有する。この効果を得るには、N含有量を0.0005%以上とする必要がある。一方、N含有量が0.01%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼材の靱性を劣化させる。このため、N含有量は、0.0005〜0.01%とする。
Mo:0〜0.5%
W:0〜0.5%
Ti:0〜0.5%
これらの元素は、いずれも鋼材の耐食性を向上させるため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、それぞれの元素の含有量が0.5%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが増大する。このため、それぞれの元素の含有量は0.5%以下とする。一方、耐食性を向上させる効果を得るには、それぞれの元素の含有量を0.01%以上とすることが好ましい。なお、これらの元素のうち2種以上を複合して含有させる場合には、その合計含有量は1.0%以下とするのが好ましい。
本発明の鋼材の化学組成の残部は、Feおよび不純物からなる。なお、「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(B)スケール
本発明の鋼材は、表面にスケールが形成されており、当該スケールは、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトが積層または一部混合した構造からなる。スケール中の各酸化物の組成は、下記(i)式で表されるFn1が0.15<Fn1<0.35を満足する。
Fn1=(Mm+Mf)/(Mw+Mh) ・・・(i)
ただし、上記(i)式中の各記号の意味は以下の通りである。
Mm:スケール中のマグネタイト含有量(質量%)
Mf:スケール中のファイアライト含有量(質量%)
Mw:スケール中のウスタイト含有量(質量%)
Mh:スケール中のヘマタイト含有量(質量%)
マグネタイト、ファイアライトおよびウスタイトは、鋼材とスケールの密着性を向上させる。なお、ウスタイトは、Cr含有量が多くなるにつれて、少なくなる。一方、ヘマタイトは、スケールの表層で生じやすく、また、鋼材とスケールとの密着性に及ぼす影響が少ない。Fn1が0.15<Fn1<0.35を満足する場合、スケールは、鋼材側から順にマグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトが積層した構造または一部混合した構造となり、このスケールは鋼材との高い密着性を有する。
Fn1が0.15以下である場合として、例えばヘマタイトの含有量が多い場合が挙げられる。この場合、スケールと鋼材との密着性が低下するため鋼材の製造過程でスケール剥離が生じやすく、剥離したスケールは、スケール押し込み疵の原因となる。一方、Fn1が0.35以上である場合として、例えばマグネタイトの含有量が多い場合が挙げられる。この場合、腐食電位差が大きくなり、局所腐食が促進される。このため、Fn1は、0.15<Fn1<0.35と規定した。Fn1は0.18以上が好ましく、0.32以下が好ましい。
スケール中の各酸化物の含有量は、例えば以下の手順により測定することができる。まず、鋼材表面のスケールをハンマーおよびカッターナイフで、母材が確認できる深さまで採取し、採取したスケールを粉砕して粉末試料とする。この粉末試料について、粉末X線回折法(内部標準法)を適用することにより、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトの含有量を測定することができる。
本発明の鋼材は、表面に形成されたスケール中のCr、SnおよびSiの含有量として、下記(ii)式で表されるFn2が9.0<Fn2<23.0を満足する。
Fn2=([Cr]+[Sn])/[Si] ・・・(ii)
ただし、上記(ii)式中の各記号の意味は以下の通りである。
[Cr]:スケール中のCr含有量(質量%)
[Sn]:スケール中のSn含有量(質量%)
[Si]:スケール中のSi含有量(質量%)
スケール中のCr、SnおよびSiの含有量の測定方法の一例として、ハンマー等を用いて剥離させた鋼材表面のスケールを王水で化学溶解してICPで分析する方法がある。
Fn2が9.0以下である場合、および23.0以上である場合には、腐食電位差が例えば40mVを超えて大きく、局所腐食が促進される。一方、Fn2が9.0<Fn2<23.0を満足する場合、腐食電位差が小さく、鋼材の耐食性が向上する。また、この場合、スケールにおいて適度にCrおよびSnが濃化しているため、このスケールは高い密着性を有する。そのため、Fn2は、9.0<Fn2<23.0と規定した。Fn2は10.0以上が好ましく、20.0以下が好ましい。
本発明の鋼材において、スケールの厚さは5〜50μmである。スケールの厚さが5μm未満であると、ショットブラスト等により物理的にスケールを剥離させる際に、鋼材の表面にスケールを押し込む可能性があり、その結果、鋼材の表面に過剰な凹凸を付与することになる。一方、スケールの厚さが50μmを超えると、鋼材を熱間圧延する際に、部分的なスケールの剥離が生じ、圧延ロールおよび鋼材に生じるスケール疵の原因となることがある。このため、スケールの厚さは5〜50μmとする。
(C)製造方法
本発明の鋼材の製造方法については特に制限を設けないが、上記で説明した化学組成を有する鋼を、例えば以下に示す工程(P1)〜(P6)を含むように、加熱、熱間圧延、および巻き取りを行うことによって製造することができる。この製造方法を以下に詳しく説明する。
上記の化学組成を有する溶鋼を転炉、電気炉等で製造する。必要に応じて、さらに真空脱ガス等の処理を溶鋼に施してもよい。その後、溶鋼を公知の方法、例えば、連続鋳造法で鋳片とした後に、または鋳型に鋳込んで鋼塊にした後に、分塊圧延する等の方法で鋼片(スラブ)とする。また、所謂ストリップキャスト等の方法により、溶鋼から直接スラブを製造してもよい。鋳片、鋼塊またはスラブに成分偏析が生じると、鋼中に生成する炭化物の粒径のばらつきが大きくなるため、電磁攪拌、未凝固域圧下等の方法を採用し、凝固時の成分偏析の発生を抑制することが好ましい。このスラブを以下の工程(P1)〜(P6)を含む方法で処理する。
〈工程(P1)〉
製造されたスラブを加熱する。加熱温度は1100〜1300℃とする。加熱温度が1100℃未満であると、十分にスラブを加熱することができないことがあり、また、工程(P2)のデスケーリングでスラブの表面が冷却され、工程(P3)の粗圧延開始温度を確保することができないことがある。また、加熱温度が1300℃を超えると、CrおよびSiを含有する密着性の高いスケールが形成されるが、このスケールは圧延時にロール疵の原因となり、鋼材の表面性状を劣化させる。均熱は、鋼板表面温度と鋼板内部の温度差が40℃以下となるまで行うのがよい。均熱時間は、設備仕様に従い、上記の条件を満足するのに十分な時間とすればよい。好ましくは1時間以上である。
〈工程(P2)〉
加熱したスラブ表面に形成された1次スケールを除去する。このデスケーリングは1回に限られず、必要に応じて複数回行ってもよい。また、水圧および噴射流量については、通常採用される範囲でよく、鋼材の材質などの条件により1次スケールを除去できる条件を適宜選択すればよい。デスケーリングには、例えば高圧水によるスケール除去装置をスケールブレーカーとして使用することができる。
〈工程(P3)〉
加熱後にデスケーリングを施したスラブは、少なくとも粗圧延機および仕上圧延機を備える圧延機群によって、粗圧延開始温度1000℃以上、仕上圧延完了温度950〜800℃で熱間圧延するに際し、粗圧延機の出側および仕上圧延機での圧延の初期段階において、水圧が10MPa以上、かつ、噴射流量が20〜300L/minの水を噴射することによって圧延中の鋼材の表面に形成されたスケールを除去する。このデスケーリングにより、粗圧延時にスラブの表面に形成された2次スケールのうち、密着性の高いスケール以外は除去される。
粗圧延の開始温度が1000℃を下回ると、圧延時のロール負荷が大きくなる。粗圧延は、開始温度を1050℃以上、また、1200℃以下とすることが好ましい。なお、粗圧延方法は、粗圧延機が1段のスタンドからなる場合の鋼材を往復移動させて複数回圧延するレバース圧延方法と、粗圧延機が複数段のスタンドからなるタンデム形式の場合の鋼材を一方向にのみ搬送する方法のいずれでもよい。
仕上圧延は、オーステナイト低温域で行うことが望ましいため、仕上圧延完了温度は950〜800℃の温度範囲とする。仕上圧延の条件は、仕上圧延完了温度以外は特に規定しない。仕上圧延完了温度が800℃未満の場合、オーステナイト粒が扁平化して、圧延方向と幅方向とで鋼材の機械的性質のばらつきが生じるため、鋼材の加工性が悪化するおそれがある。また、析出物が粗大となるおそれもある。一方、仕上圧延完了温度が950℃を超えると、結晶粒が粗大化すること、スケールが鋼材の冷却開始までに厚く成長しすぎること、スケール疵が発生しやすくなること等の問題が生じる。
熱間圧延は、粗圧延開始温度から仕上圧延完了温度までの温度範囲における累積圧下率を60%以上とすることが好ましい。この累積圧下率が60%未満であると、オーステナイト粒が十分に微細化せず、鋼材の靱性が劣化するおそれがある。
粗圧延機の出側とは、粗圧延機が1段のスタンドからなる場合はレバース圧延を終えた後のスタンドからの出側を意味し、粗圧延機が複数段のスタンドからなるタンデム形式の場合には最終スタンドの出側を意味する。仕上圧延機での圧延の初期段階とは、仕上圧延機で行う仕上圧延の1パス目から3パス目までのうち少なくとも1パスを意味する。仕上圧延は、製品(鋼材)寸法にもよるが、一般に5〜7パス程度行われる。なお、本発明の規定は、「粗圧延機の出側および仕上圧延機での圧延の初期段階」以外の時期に行うデスケーリングを排除するものではない。例えば、粗圧延機が1段のスタンドからなる場合においてレバース圧延の途中でデスケーリングを行ってもよく、複数段のスタンドからなるタンデム形式の場合において各スタンドで圧延する毎にデスケーリングを行ってもよい。
デスケーリングの際、スケールブレーカーの水圧は10MPa以上とする。水圧が10MPa未満であると、ファイアライト(FeSiO)の除去が困難なため、十分にデスケーリングを行うことができない。ただし、水圧が60MPaを超えると、スラブの加熱条件に厳しい操業規制が必要となる場合があり、また、設備が大型化して、コストが増加する場合がある。そのため、デスケーリングでの水圧は60MPa以下が好ましい。デスケーリングでの水圧の下限は5MPaが好ましく、上限は30MPaがより好ましい。
ノズル1本当たりの水の噴射流量は、20〜300L/minとする。20L/min未満では、熱衝撃力が小さいため、十分にデスケーリングできない。一方、ノズル1本当たりの噴射流量が300L/minを超えると、鋼材表面の温度が低下するとともに、鋼材表面に温度ムラが生じ、均一な圧延が困難となる。安定したデスケーリングと圧延とを両立させるには、ノズル1本当たりの水の噴射流量の下限は50L/minが好ましく、上限は200L/minが好ましい。スケールブレーカーのノズルは、スラブの形状、大きさに応じた本数、配置とすればよく、例えば、スラブの全周についてデスケーリング可能な本数、配置とすればよい。
〈工程(P4)〉
得られた熱延鋼材は、仕上圧延を完了した後5s以内に冷却を開始し、注水ゾーンにおいて25℃/s以上の平均冷却速度で650〜500℃の温度範囲の温度T1まで冷却する。冷却開始が仕上圧延完了後5sを超えると、熱間圧延により導入された転位の回復が起こり、フェライト変態の核が不足するため、結晶粒が粗大化し、鋼材の靱性が低下するおそれがあり、また、スケールが厚くなりすぎる。仕上圧延後の冷却速度が25℃/s未満であると、パーライト組織およびフェライト組織が生成し、硬質組織と軟質組織とが混在するため、鋼材の材質にばらつきが生じるおそれがある。また、スケールが厚くなりすぎるとともに、スケールが一部剥離した場合にはその剥離部に侵入した水分が蒸発し、スケールの膨れの要因となる。一方、仕上圧延後の冷却速度が100℃/sを超えると、マルテンサイト組織となりやすく、鋼材の靱性が劣化するおそれがあるため、冷却速度は100℃/s以下が好ましい。T1が650℃を超えるとスケールの変態が進行し、Fn1の値が0.15以下となり、スケールの密着性が低くなる。また、スケールの変態の進行によりFn2の値が23.0以上となり、腐食電位差が40mVを超え、局所腐食が促進される。一方、T1が500℃を下回ると、鋼材をコイル状に巻き取るのが難しくなること、スケールの変態温度域での鋼材の温度制御が難しくなること、さらには鋼材の巻き取り時に、鋼材の表面に形成されたスケールが剥離して表面性状が不均一となること等の問題が生じる。
〈工程(P5)〉
冷却した熱延鋼材は、650〜500℃の温度範囲の温度T2でコイル状に巻き取る。T2が650℃を超えると、低温変態層が十分に生成せず、鋼材の強度を十分に高めることができない。一方、T2が500℃未満であると、鋼材に形状不良が生じるおそれがある。また、T2が500℃未満である場合、鋼材を巻き取る前にスケールの変態が進行し、Fn1の値が0.35以上となるとともに、Fn2の値が23.0以上となり、スケールの密着性が低下する。
〈工程(P6)〉
コイル状に巻き取った熱延鋼材を、650〜500℃の温度範囲の温度T3から300〜150℃の温度範囲の温度T4まで、0.005〜0.1℃/sの平均冷却速度で10h以上かけて放冷する。上記平均冷却速度で10h以上かけてT3からT4まで放冷することにより、スケール中でSnを十分に拡散させることができる。T3が650℃を超えるとコイル中でスケールが成長し、鋼材の表面性状が不均一となる。一方、T3が500℃を下回ると変態温度域での鋼材の温度制御が難しくなるとともに、鋼材の表面性状が不均一となり、また、スケールの密着性が低くなる。
T3およびT4の温度条件を満たしても、平均冷却速度が0.005℃/s未満であると、変態が進行せず、スケール組成比が変化し、Fn1の値が0.35以上、Fn2の値が9.0以下となり、スケールの密着性が低下する。また、Fn1の値が0.35以上、Fn2の値が23.0以上となり、スケールの密着性が低下する。さらに、温度条件と冷却速度条件とを満たしても、放冷時間が10h未満では、変態が進行せず、スケール組成比が変化し、Fn1やFn2の値を満足しなくなり、密着性が低下する。
以上の工程(P1)〜(P6)を含む処理により、本発明の鋼材が完成する。なお、生産性向上、省エネルギー等の観点から、工程の途中で鋼材を加熱する必要のないT1≧T2≧T3であることが好ましい。また、T4からの冷却は、任意の方法で構わない。
本発明に係る鋼材の製造において、スケールブレーカーとして所謂「高圧水スケールブレーカー」を、粗圧延後の鋼材(以下「バー」という。)の加熱に所謂「バーヒーター」をそれぞれ活用してもよく、粗圧延後のバー接合材を圧延する熱延連続化を活用しても何ら問題ない。「高圧水スケールブレーカー」とは、噴射する水の水圧を5MPa以上としたスケールブレーカーをいう。これらの設備を用いることで、温度工程能力を向上させるとともに、スケール疵の発生防止および歩留まり向上を図ることができる。
本発明に係る鋼材については、形状に特に制限は設けないが、例えば鋼材が鋼板の場合、厚さを16mm以下とすることが好ましく、鋼板を鋼矢板に用いる場合、またはスパイラル鋼管とした後鋼管杭に用いる場合には、厚さを10mm以下とすることがより好ましい。
以下、鋼材の一例として鋼板を取り上げた実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す鋼1〜11の化学組成を有するスラブを素材とし、粗圧延機および仕上圧延機を備える圧延機を使用して表2に示す条件で熱間圧延を施すことにより、厚さ3.2mm、幅1000mmの熱延鋼板を作製した。なお、表2には示していないが、いずれの条件においても工程(P2)を実施し、一次スケールを除去した。工程(P3)の仕上圧延機での圧延の初期段階のデスケーリングはいずれも1〜3パス目に行い、粗圧延機出側および仕上圧延機圧延初期においてスケールブレーカーからの噴射条件は表2に併記した。スケールブレーカーのノズルの本数はスラブの全周についてデスケーリング可能な本数とし、スラブの周囲に等間隔に配置した。工程(P3)では、鋼1〜11のいずれもスラブの全周について十分にデスケーリングすることができた。また、T4を下回る温度域から常温までの冷却も、T4までの冷却と同じ放冷方法で行った。
Figure 0006492793
Figure 0006492793
表2に示す作製方法A〜Oのうち、A〜Cは、本発明の鋼材の製造方法の規定を満足していた。作製方法D〜Hについては、以下の理由で熱延鋼板の製造を中止した。
作製方法D:工程(P1)におけるスラブの加熱温度が1300℃を超え、加熱炉でCrおよびSiを含有する密着性の高いスケールが成長した。しかし、このスケールは圧延時にロール疵の原因となることが分かったため、以降の工程を中止した。
作製方法E:工程(P1)におけるスラブの加熱温度が1100℃未満であったため、所定の時間(2.5h)内に十分にスラブの加熱ができなかった。また、加熱後のデスケーリングによりスラブの表面が冷却され、粗圧延開始温度が1000℃未満となった。
作製方法F〜H:工程(P1)におけるスラブの加熱により、CrおよびSiを含有する密着性の高いスケールが成長した。このスケールは、工程(P2)で水圧10MPa以上、噴射水量40L/min以上としたデスケーリングを3回以上行わなければ十分に除去できなかった。作製方法F〜Hでは、水圧、噴射水量またはデスケーリング回数のいずれかがこれらの条件を満たしておらず、スラブ表面にスケールが残存し、このスケールは、その後の圧延でロール疵の原因となった。
作製方法I〜Oは、本発明の鋼材の製造方法の規定を以下の点で満足していなかった。
作製方法I:工程(P3)における仕上圧延完了温度が950℃を超えていた。
作製方法J:工程(P4)における熱延鋼板の冷却を開始するまでの時間が、仕上圧延完了後5sを超えていた。
作製方法K:工程(P4)における冷却停止温度T1までの冷却速度が25℃/s未満であった。
作製方法L:工程(P4)における冷却停止温度T1が650℃を超えていた。
作製方法M:工程(P5)における熱延鋼板の巻き取り温度T2が500℃未満であり、工程(P6)の温度T4が150℃未満であった。
作製方法N:工程(P6)における温度T3からT4までの平均冷却速度が0.1℃/sを超えており、放冷時間が10h未満であった。
作製方法O:工程(P6)における温度T3からT4平均冷却速度が0.005℃/s未満であった。
以上の作製方法で得られた熱延鋼板から、厚さ3.2mm、幅60mm、長さ100mmの板状の試験片を切り出して、各種試験を行った。なお、土壌埋設試験では、後述する別の寸法の試験片を使用した。
〈スケール中の酸化物含有量〉
試験片表面のスケールをハンマーおよびカッターナイフで、母材が確認できる深さまで採取し、採取したスケールを粉砕して粉末試料とした。この粉末試料について、粉末X線回折法(内部標準法)を適用することにより、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトの含有量(質量%)、すなわちMm、Mf、MwおよびMhを測定した。この測定結果を用いて下記(i)式で表されるFn1の値を算出した。
Fn1=(Mm+Mf)/(Mw+Mh) ・・・(i)
〈スケール中のCr、SnおよびSi含有量〉
試験片表面のスケールを、ハンマーを用いて剥離させ、剥離したスケールを王水で化学溶解してICPで分析することにより、スケール中のCr、SnおよびSi含有量(質量%)、すなわち[Cr]、[Sn]および[Si]を測定した。この測定結果を用いて下記(ii)式で表されるFn2の値を算出した。
Fn2=([Cr]+[Sn])/[Si] ・・・(ii)
〈スケール密着性試験〉
JIS K 5600:1999に規定されるデュポン式の衝撃試験により、スケールの密着性を調査した。具体的には、各試験片に対して、500gのおもりを200mmの高さから落下させ、スケールの破損状況を目視で判断した。スケールに割れまたは剥離がなければ「○」(スケールの密着性が良好である)と評価し、スケールに割れまたは剥離があれば「×」(スケールの密着性が不良である)と評価した。
〈局所腐食試験〉
直径3mmのドリルを用いて試験片の表面に、深さ1mmの穴を設けた。この試験片について、塩酸を用いてpHを2.0に調整した0.003%NaCl水溶液中で、走査型参照電極を用いてスケールと母材との間の電位差(腐食電位差)を測定した。これは、鋼材表面のスケールが一部剥離した部分における局所腐食を模したものである。
〈酸浸漬試験〉
硫酸でpHを1.0に調整した0.5MのNaSO水溶液に、試験片を24時間浸漬した。浸漬前後において試験片の質量を測定した。これらの質量の測定結果を用いて算出した、酸浸漬による質量の減少量を、1年間(365日)当たりの腐食量(単位:mm/y)に換算した。
〈土壌埋設試験〉
カオリン粘土(カオリン70質量%、水30質量%)に、酸性硫酸塩として、硫酸鉄(II)(FeSO)を含有させた試験粘土を作製した。含有させた硫酸鉄(II)は、カオリン粘土の質量の5%とした。試験粘土は、深さ30cmの試験槽内に詰め込み、1日間上部から荷重をかけて締め固めて試験土壌とした。
試験片は、厚さ3.2mmの熱延鋼板の厚さ方向中心部から採取した、厚さ3mm、幅30mm、長さ150mmの板状の試験片を使用した。試験片の表面と端面は、いずれも600番のエメリー研磨紙で湿式研磨した後、乾燥させた。試験片の一端から30mmの部分は、腐食の防止を目的として、エポキシ樹脂塗料を塗布した。
試験片は、試験槽の底面に対して垂直となるように試験土壌の上部から打ち込み、埋設した。試験片の塗料を塗布した部分は、試験土壌から露出するようにした。この状態で、試験槽周辺の雰囲気を30℃とし、3箇月間維持した。試験期間中においては、試験土壌の表面から1.5cmの深さまで地中伝導度計を刺して定期的に試験土壌の含水率を測定し、含水率が30%未満となった場合には、試験土壌の表面に霧状の水を供給し、試験土壌の含水率を維持した。
試験期間終了後、試験片を試験土壌から取り出し、最大腐食深さを測定した。腐食深さは、塗料を塗布した部分の腐食深さを0として測定した。
表3に、以上の各試験の結果を示す。
Figure 0006492793
実施例1〜6は、本発明例であり、いずれも本願の規定を満足した。いずれもスケールの密着性の評価は「○」であり、酸浸漬試験での腐食速度は0.01〜0.08mm/yであった。局所腐食試験で測定した腐食電位差は40mV以下であり、土壌埋設試験での最大腐食深さは40〜200μmであった。
比較例1〜12は、いずれもFn2の値が本発明の規定を満足しなかった。そのため、いずれも腐食電位差が45mV以上と大きい値であった。さらに、スケールの密着性、酸浸漬腐食速度および土壌埋設最大腐食深さのうち少なくとも1つの特性が劣っていた。
本発明の鋼材は、表面に形成されるスケールが密着性を有しているため土壌腐食環境下(特に酸性土壌環境下)耐食性に優れている。また、万が一スケールが剥離して鋼材の母材が露出しても、スケールと母材との間に発生する電位差が小さいため、優れた耐食性を維持することができる。本発明の鋼材は、例えば鋼矢板、鋼管杭等の土中埋設用鋼構造物に好適に用いることができる。また、本発明の鋼材の製造方法によれば、本発明の鋼材を効率よく製造することができる。

Claims (3)

  1. 表面にスケールが形成された鋼材であって、
    前記鋼材の化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.20%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.3〜2.5%、
    P:0.01%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:3.0〜5.0%、
    Sn:0.01〜0.30%、
    Al:0.005〜0.05%、
    N:0.0005〜0.01%、
    Mo:0〜0.5%、
    W:0〜0.5%、
    Ti:0〜0.5%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    前記スケールが、マグネタイト、ファイアライト、ウスタイトおよびヘマタイトが積層または一部混合した構造であり、
    前記スケールの厚さが5〜50μmであり、
    下記(i)式および(ii)式で表されるFn1およびFn2が、それぞれ、0.15<Fn1<0.35、および9.0<Fn2<23.0である鋼材。
    Fn1=(Mm+Mf)/(Mw+Mh) ・・・(i)
    Fn2=([Cr]+[Sn])/[Si] ・・・(ii)
    ただし、上記(i)式および(ii)式中の各記号の意味は以下の通りである。
    Mm:前記スケール中のマグネタイト含有量(質量%)
    Mf:前記スケール中のファイアライト含有量(質量%)
    Mw:前記スケール中のウスタイト含有量(質量%)
    Mh:前記スケール中のヘマタイト含有量(質量%)
    [Cr]:前記スケール中のCr含有量(質量%)
    [Sn]:前記スケール中のSn含有量(質量%)
    [Si]:前記スケール中のSi含有量(質量%)
  2. 請求項1に記載の鋼材を用いた土中埋設用鋼構造物。
  3. 下記工程(P1)〜(P6)を含む、請求項1に記載の鋼材の製造方法。
    (P1)請求項1に記載の化学組成を有するスラブを1100〜1300℃に加熱する工程、
    (P2)前記加熱したスラブの表面に形成されたスケールを除去する工程、
    (P3)前記スケール除去後のスラブを、少なくとも粗圧延機および仕上圧延機を備える圧延機群によって、粗圧延開始温度1000℃以上、仕上圧延完了温度950〜800℃で熱間圧延するに際し、前記粗圧延機の出側および前記仕上圧延機での圧延の初期段階において、水圧が10MPa以上、かつ、噴射流量が20〜300L/minの水を噴射することによって圧延中の鋼材の表面に形成されたスケールを除去する工程、
    (P4)仕上圧延完了後5s以内に、得られた熱延鋼材の冷却を開始し、注水ゾーンにおいて25℃/s以上の平均冷却速度で650〜500℃の温度範囲の温度T1まで冷却する工程、
    (P5)前記冷却した熱延鋼材を650〜500℃の温度範囲の温度T2でコイル状に巻き取る工程、
    (P6)前記コイル状の熱延鋼材を、650〜500℃の温度範囲の温度T3から300〜150℃の温度範囲の温度T4まで、0.005〜0.1℃/sの平均冷却速度で10h以上かけて放冷する工程。
JP2015046031A 2015-03-09 2015-03-09 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法 Active JP6492793B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015046031A JP6492793B2 (ja) 2015-03-09 2015-03-09 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015046031A JP6492793B2 (ja) 2015-03-09 2015-03-09 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016166388A JP2016166388A (ja) 2016-09-15
JP6492793B2 true JP6492793B2 (ja) 2019-04-03

Family

ID=56898119

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015046031A Active JP6492793B2 (ja) 2015-03-09 2015-03-09 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6492793B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101998952B1 (ko) * 2017-07-06 2019-07-11 주식회사 포스코 재질편차가 적고 표면품질이 우수한 초고강도 열연강판 및 그 제조방법
WO2020065372A1 (en) * 2018-09-25 2020-04-02 Arcelormittal High strength hot rolled steel having excellent scale adhesivness and a method of manufacturing the same
CN114080464B (zh) * 2019-07-10 2022-12-02 日本制铁株式会社 热轧钢板

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3445998B2 (ja) * 1996-11-26 2003-09-16 Jfeスチール株式会社 レーザ切断性に優れた熱間圧延鋼板およびその製造方法
JP3376842B2 (ja) * 1996-11-26 2003-02-10 日本鋼管株式会社 レーザ切断性に優れた鋼板及びその製造方法
JP2001011569A (ja) * 1999-06-25 2001-01-16 Nkk Corp 地中埋設用鋼構造物および埋設工法
JP3994582B2 (ja) * 1999-06-29 2007-10-24 住友金属工業株式会社 鋼板のデスケーリング方法
JP4692018B2 (ja) * 2004-03-22 2011-06-01 Jfeスチール株式会社 強度−延性バランスに優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法
KR101142620B1 (ko) * 2007-03-27 2012-05-03 신닛뽄세이테쯔 카부시키카이샤 박리의 발생이 없어 표면 성상 및 버링성이 우수한 고강도 열연 강판 및 그 제조 방법
CN102851582B (zh) * 2011-06-28 2016-01-20 鞍钢股份有限公司 一种酸性原油储运罐用耐腐蚀钢及其制造方法
JP5845951B2 (ja) * 2012-02-15 2016-01-20 新日鐵住金株式会社 耐食性に優れた鋼材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016166388A (ja) 2016-09-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5908936B2 (ja) フランジ用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法およびフランジ部品
CA2868593C (en) High strength steel plate having low yield ratio excellent in terms of strain ageing resistance, method for manufacturing the same and high strength welded steel pipe made of the same
JP4555694B2 (ja) 加工性に優れる焼付け硬化型熱延鋼板およびその製造方法
KR101492753B1 (ko) 내피로 특성이 우수한 고강도 열연 강판 및 그 제조 방법
CN111094610B (zh) 钢管和钢板
JP7060108B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管
TWI575082B (zh) Hot rolled steel sheet
JP6390818B2 (ja) 熱延鋼板、鋼材、及びコンテナ
JP6070642B2 (ja) 高強度でかつ低温靭性に優れた熱延鋼板およびその製造方法
JP5867444B2 (ja) 靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP4369415B2 (ja) 酸洗い性に優れたばね用鋼線材
JP6432720B1 (ja) フェライト系ステンレス熱延焼鈍鋼板およびその製造方法
JP6705484B2 (ja) 鋼材
JP6492793B2 (ja) 鋼材および土中埋設用鋼構造物ならびに鋼材の製造方法
JP4624904B2 (ja) コンクリート構造物中における耐久性に優れたステンレス異形棒鋼
JP6760530B1 (ja) 継目無鋼管
JP7060109B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管
JP6179604B2 (ja) 電気抵抗溶接鋼管用鋼帯および電気抵抗溶接鋼管ならびに電気抵抗溶接鋼管用鋼帯の製造方法
JP5534319B2 (ja) 酸洗性および加工性に優れた熱延鋼板の製造方法
CN105518172B (zh) 耐盐酸和硫酸的复合腐蚀、具有优异耐磨性和表面质量的钢材以及制造该钢材的方法
KR102630980B1 (ko) 라인 파이프용 전봉 강관
JP6024401B2 (ja) 表面品質に優れる厚鋼板の製造方法
JP2003253339A (ja) 材質均一性、穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法および鋼板
JP3489535B2 (ja) 耐候性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法
TWI601832B (zh) 熱軋鋼板、鋼材及容器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181127

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190123

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190205

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190218

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6492793

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350