JP2003253339A - 材質均一性、穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法および鋼板 - Google Patents
材質均一性、穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法および鋼板Info
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Abstract
強度レベルと70%以上の穴拡げ率を両立した熱延鋼板を
提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.06〜0.13%,Si:0.5
〜1.0%,Mn:2.1〜3.0%,P:0.030%以下,S:0.0
03%以下,Al:0.02〜0.06%,N:0.002〜0.006%,
O:0.0030%以下であり、必要に応じてB:0.0050%以
下、Ca:0.0050%以下のうち1種以上を含み、残部Fe
および不可避的不純物からなる鋼を熱間圧延してコイル
にする際、仕上熱延前に衝突圧2.0kgf/cm2以上の水でデ
スケールし、800〜950℃の最終パス温度T1からT2ま
での平均冷却速度を80℃/sec以上とし、T2から250〜4
50℃の巻取温度T3までの平均冷却速度を40℃/sec以下
とする。ただしT2(℃)=673×C−37×Si+52×Mn
−4284×S+442である。
Description
等の構造部材に用いられる高強度熱延鋼板であって、特
に材質均一性,穴拡げ性に優れた鋼板の製造方法、およ
びその鋼板に関するものである。
車体の軽量化が進められている。足回り部品等の構造部
材においては、材料を薄肉化することによる軽量化効果
が大きく、そのためには素材鋼板に一層の高強度化が望
まれる。しかし、鋼板の高強度化は往々にして加工性の
低下を招く。高強度化した熱延鋼板において良好な加工
性を維持することは必ずしも容易ではない。自動車の構
造部材用途においては、加工性の中でも特に「穴拡げ
性」の改善要求が高まっている。
法に関して数多くの提案があり、例えば特開平10−4625
8号公報には、TiCによる析出強化を利用した熱延鋼板
の製造において熱延時の加熱温度・時間をTi含有量と
の関係で制御することにより、鋼板間の強度のばらつき
を低減する手法が開示されている。また、特開平7−252
592号公報には、残留オーステナイトを利用したTRIP鋼
板として、強度−延性バランス(引張強さ×全伸び)が
20000MPa・%以上と非常に高いものが開示されている。
最近では、Ti,Nb、あるいはCrを添加した高強度鋼
を用いて熱延鋼板の穴拡げ性を向上させる研究も行われ
ている。
構造部材に用いる熱延鋼板には、引張強さ700N/mm2以上
の高強度と、少なくとも15%以上の伸び、さらに70%以
上の高い穴拡げ率〔(試験後穴径d−初期穴径d0)/d0
×100〕が要求されるようになってきている。
用した熱延鋼板ではTiの多量添加のため高強度を得や
すい反面、降伏点が高く、穴拡げ性が十分とは言えな
い。また、残留オーステナイトを利用した熱延鋼板では
強度−延性バランスは優れるが、穴拡げ率は40%程度と
低い。
おいては上記特性を満たすものも出現している。しか
し、これらの特殊元素の助けを借りずに上記特性を付与
する技術は未だ確立されていない。また、得られた熱延
鋼板は、鋼帯幅方向の硬度分布ができるだけ小さいこ
と、すなわち、材質均一性に優れることが望ましい。本
発明は、このような状況に鑑み、Ti,Nb,Crを添加
することなく、上記のような高強度と優れた穴拡げ性を
有し、かつ材質均一性に優れた熱延鋼板を工業的に安定
的に提供することを目的とする。
Crといった特殊元素を添加することなく、高強度熱延
鋼帯の穴拡げ性を改善する手法について種々研究を重ね
た。その結果、以下の2点を実現することが、穴拡げ性
改善に非常に有効であることがわかった。 熱延鋼板の金属組織を微細な「ベイナイティックフェ
ライト+ベイナイトの複相組織」または「ベイナイト単
相組織」とし、ポリゴナルフェライトやマルテンサイト
を生成させないこと。 熱延鋼板の表面凹凸をできるだけ平滑化すること。そ
して、これらは、熱間圧延工程において、デスケー
ルを適切に行い、かつ、仕上熱延から巻取までの冷却パ
ターンを成分組成に応じて適切にコントロールすること
によって実現可能であることがわかった。本発明はこの
ような知見に基づいて完成したものである。
〜0.13%,Si:0.5〜1.0%,Mn:2.1〜3.0%,P:0.
030%以下,S:0.003%以下,Al:0.02〜0.06%,
N:0.002〜0.006%,O:0.0030%以下であり、必要に
応じてさらにB:0.0050%以下、Ca:0.0050%以下の
うち1種または2種を含み、残部がFeおよび不可避的
不純物からなる鋼を熱間圧延してコイルにする際、加熱
後〜仕上熱延前の段階で少なくとも1回以上スラブまた
は鋼板表面に衝突圧2.0kgf/cm2以上で水を吹き付けてデ
スケールを行い、最終パス温度T1が800〜950℃の範囲
のオーステナイト単相域となるように仕上熱延を行い、
仕上熱延後〜巻取り前に、T1から下記(1)式で定義さ
れる温度T2までの平均冷却速度が80℃/sec以上とな
り、T2から巻取温度T3までの平均冷却速度が40℃/s
ec以下となり、かつT3が250〜450℃の範囲となるよう
に冷却制御を行うことを特徴とする材質均一性、穴拡げ
性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法によって達成され
る。 T2(℃)=673×C−37×Si+52×Mn−4284×S+442 ・・・(1)
延機出側において測定される鋼板表面温度をいう。(1)
式におけるC,Si,Mn,Sの箇所には、それぞれの元
素の含有量(質量%)の値が代入される。
て、ベイナイティックフェライト+ベイナイトの複相組
織またはベイナイト単相組織を呈し、引張強さが700N/m
m2以上、伸びが15%以上、穴拡げ率が70%以上である高
強度熱延鋼板を提供する。これらの複相組織または単相
組織においては、微量(0.040体積%以下)の析出物や
介在物の含有は許容される。
ら50mm位置と中央位置の硬さ(Hv)の差ΔHvの絶対値が
15以下である、材質均一性に優れた鋼板を提供する。こ
こで、ΔHvの絶対値は、両側のエッジそれぞれについ
て「そのエッジから50mm位置と中央位置の硬さの差」を
求めた場合の、大きい方の値を意味する。
いて説明する。 〔成分元素〕C,Mnは、熱延鋼板の強度を確保するた
めの重要元素である。Cが0.06質量%未満またはMnが
2.1質量%未満ではポリゴナルフェライトが生成し易く
なる。本発明に係る鋼板はベイナイティックフェライト
+ベイナイトの複相組織またはベイナイト単相組織を基
調とするものであるが、このような組織においてポリゴ
ナルフェライトが生成すると、強度向上が不十分となる
ばかりでなく、穴拡げ性が低下する(後述)。一方、C
が0.13質量%を超えるか、またはMnが3.0質量%を超え
ると溶接性が劣化するとともに、ベイナイトの強度が増
加して穴拡げ性が劣化する。このため、C含有量は0.06
〜0.13質量%、Mn含有量は2.1〜3.0質量%とした。
Si含有量が1.0質量%を超えるとポリゴナルフェライト
が生成し易くなり、強度向上および穴拡げ性を阻害する
要因となる。また、Si含有量が1.0質量%を超えるとス
ラブ加熱時にファイアライトが生成し易くなり、熱間圧
延工程でのデスケール性が低下するため、熱延鋼板の表
面性状を劣化させる場合がある。一方、Siは固溶強化
型の元素でもあり、熱延鋼板の強度を確保するためには
少なくとも0.5質量%以上の含有が必要である。このた
め、Si含有量は0.5〜1.0質量%とした。
とポリゴナルフェライトが生成し易くなるとともに、粒
界にPが偏析し、強度向上および穴拡げ性を阻害する要
因となる。このため、P含有量は0.030質量%以下に制
限する必要がある。より好ましいP含有量の範囲は0.02
0質量%以下である。
鋼板の中に伸びた形態で存在するので、穴拡げ性を劣化
させる。特に高強度熱延鋼板の場合、S含有量が0.003
質量%を超えると穴拡げ性の劣化が顕著になる。このた
め、S含有量は0.003質量%以下に制限する必要があ
る。より好ましいS含有量の範囲は0.001質量%以下で
ある。
粗大化を抑制する効果がある。この効果を十分に得るた
めには少なくとも0.002質量%以上のN含有が必要であ
る。しかし、鋼中のN含有量が0.006質量%を超えると
固溶N量が増加する場合があり、そうなると時効硬化に
よって加工性が劣化する。このため、N含有量は0.002
〜0.006質量%とした。
素であるが、本発明ではAlNの析出により結晶粒を微
細化するためにも重要な元素である。結晶粒微細化とと
もに、AlN析出物を核として冷却制御によりベイナイ
ティックフェライトを微細に生成させ、均一分散させる
効果もある。これらの効果は0.02質量%以上のAl含有
により発揮される。ただし、0.06質量%を超える過剰な
Al添加はアルミナ系非金属介在物の増加を招き、穴拡
げ性を劣化させるだけでなく、表面疵の原因ともなるた
め好ましくない。このため、Al含有量は0.02〜0.6質量
%とした。
ると酸化物の生成が顕著になり、この非金属介在物が加
工時の破壊の起点となって穴拡げ性を劣化させる。ま
た、巨大な酸化物は鋼板表面の疵の原因となり易い。こ
のため、O含有量は0.0030質量%以下に制限する必要が
ある。
ネルギーを低下させ、加工性や靱性を改善する。また、
ポリゴナルフェライトの生成を抑制する効果があるた
め、オーステナイトからベイナイト変態を促進させるの
に有利に働く。ただし、0.0050質量%を超えてBを添加
してもその効果が飽和するとともにコスト上昇を招く。
このため、Bを添加する場合には0.0050質量%以下の含
有量範囲で行うことが望ましい。
球状化する効果があり、それにより局部伸びが向上す
る。このため、穴拡げ性を改善する上でCa添加は有利
に作用する。ただし、0.0050質量%を超えるCa含有
は、非金属介在物清浄度を低下させるとともに、溶接性
を劣化させる要因にもなる。したがって、Caを添加す
る場合には0.0050質量%以下の含有量範囲で行うことが
望ましい。
および後述の製造法により、熱延鋼板の金属組織を「ベ
イナイティックフェライト+ベイナイトの複相組織」ま
たは「ベイナイト単相組織」とし、これによって高強度
と優れた穴拡げ性を両立させる。この金属組織は、ポリ
ゴナルフェライトやマルテンサイトが基本的に存在しな
いもの(すなわち、光学顕微鏡観察でポリゴナルフェラ
イトやマルテンサイトが確認できないもの)を意味す
る。
ナイトからAr1変態点で生じたフェライト相であって、
恒温変態による組織変化を受けておらず、C濃度が低く
軟質なものである。これに対し、ベイナイティックフェ
ライトは、Ar1点より低温で未変態オーステナイトから
冷却途中に生じたものであり、ベイナイトとフェライト
の中間的な組織であるが、セメンタイトがほとんど観察
されない点はベイナイトと相違する。ポリゴナルフェラ
イトおよびマルテンサイトは、光学顕微鏡観察によりベ
イナイティックフェライトやベイナイトとは異なる形態
として識別できる。
フェライトが生成すると、残りの未変態オーステナイト
にCが濃化し、その後の冷却過程で生成するベイナイト
の強度を増大させる。そうなるとポリゴナルフェライト
とベイナイトの強度差が大きくなり、穴拡げ加工時にポ
リゴナルフェライト/ベイナイト界面で亀裂が生じ易く
なる。その結果、穴拡げ性は劣化する。また、ポリゴナ
ルフェライトは軟質であるため、強度レベルも低下す
る。また、マルテンサイトが生成すると、その部分は著
しく硬化するため、延性が低下するとともに穴拡げ性も
劣化する。
延鋼板表面の凹凸を平滑化することが穴拡げ性向上に非
常の有効であることが確認された。Ti,Nb,Crを添
加しない本発明においては、「鋼板表面の平滑化」と
「金属組織の調整」とを組み合わせることが、工業的に
安定して高強度化と優れた穴拡げ性の両立を図る上で重
要である。熱延鋼板表面の問題となる凹凸は、主として
スラブ表面に生成した酸化スケールが圧延によって材料
表面に押し込まれることによって生じる。そこで、本発
明では加熱後〜仕上熱延前の段階で、スラブまたは鋼板
の表面に水を吹き付けることによりデスケールを行う。
なお、デスケールは広面の両面について行う必要があ
る。
0kgf/cm2以上となるようにする。それより低い衝突圧で
は材料表面にスケールが残存し易く、製品表面に表面疵
(凹部)を形成する原因となる。その場合、加工時に凹
部に応力集中が生じ、穴拡げ性は劣化する。連続熱延ラ
インの場合、デスケール用の水吹き付けノズルは、例え
ば、加熱炉の出口付近、粗圧延機(リバース圧延機)の
前後、仕上圧延機(タンデム圧延機)の入口付近等に設
置することができ、これらのうち少なくとも1つ以上を
稼働させて(すなわち1回以上のデスケールを行うこと
により)スラブまたは鋼板表面の酸化スケールを除去す
る。デスケール回数はスケールの生成程度により増減す
ることができるが、回数を増やすほど材料温度低下は大
きくなる。仕上熱延での最終パス温度T1を後述の適性
範囲に確保できるよう配慮する必要がある。
ス温度が800℃未満になると、オーステナイト→フェラ
イト変態が起こり易くなることに起因してポリゴナルフ
ェライトが生成し易くなる。一方、最終パス温度が950
℃を超えて高くなると、オーステナイト粒径が大きくな
ることに起因して、変態組織の結晶粒径が大きくなり穴
拡げ性が劣化する。したがって、本発明では最終パス温
度T1を800〜950℃にコントロールすることが重要であ
る。
は、C,Si,MnおよびSの含有量に応じて前記(1)式
により定まる温度であり、仕上熱延後における「強冷
却」を停止させる目標温度である。発明者らは多くの実
験により、C,Mnが高めの材料やSi,Sが少なめの材
料の場合、強冷却を停止させる温度を高めにすべきこと
を経験した。このT2は、その経験に基づき、成分組成
と強制冷却停止温度との関係を定量的に表したものであ
る。T1からT2までの平均冷却速度が80℃/sec未満で
は、ポリゴナルフェライトが生成し、高強度化と穴拡げ
性改善の両立が達成できない。また材質安定性も劣化し
易い。したがって、T1からT2までの平均冷却速度は
80℃/sec以上とする。
明では、T2から巻取温度T3までを「弱冷却」とし、
基本的にはこの間で恒温変態的にベイナイティックフェ
ライトやベイナイトを生成させる。T2からT3までの
平均冷却速度が40℃/secを超えると生成するベイナイト
の硬さが高くなり過ぎるため、伸びおよび穴拡げ性が低
下するとともに、鋼帯中の材質均一性が劣化する。した
がって、T2からT3までの平均冷却速度は40℃/sec以
下とする。設備のライン構成などによりT2からT3ま
での保持時間が非常に短い場合には、巻取り後にもベイ
ナイトの生成が起こる場合があるが、差し支えない。
超えると強度不足となり、250℃未満になると未変態オ
ーステナイトが残存する場合マルテンサイトとなり硬化
するので、延性および穴拡げ性が低下する。したがって
本発明では巻取温度T3が250〜450℃の範囲になるよう
に冷却制御を行う必要がある。仕上熱延後〜巻取り前に
おける冷却制御は、仕上熱延機と巻取装置の間のローラ
ーテーブル上において、強冷却から弱冷却に切り替える
位置、および強冷却を行う部分と弱冷却を行う部分の冷
却水量をコントロールすることにより実現できる。冷却
水量のコントロールは、例えばラインの特性として予め
採取してある圧延速度,板厚,冷却水量等の各パラメー
タと冷却曲線のデータに基づいて行うことができる。
本発明対象鋼、G〜K鋼は比較鋼である。各鋼の連続鋳
造スラブを連続熱延ラインを用いて熱間圧延し、板厚3.
4mm,幅920mmの熱延コイルとした。表2に製造条件を示
してある。
以下の特性を調べた。 〔引張特性〕 鋼板からJIS 5号引張試験片(圧延方向
に直角)採取して行った。引張強さは700N/mm2以上を合
格とした。ただし、720N/mm2以上のものは特に良好であ
ると評価される。伸びは15%以上を合格とした。 〔穴拡げ性〕 鋼板から150mm角のサンプルを切り出
し、その中央に初期穴径d0=φ10mmの穴をクリアラン
ス12%にて打抜いた後、φ50mmの60°円錐ポンチにて打
抜きの穴のバリをダイス側として穴拡げを行い、穴周辺
に亀裂が生じ始めたときの穴径(試験後穴径d)を測定
した。試験はn=3で行った。下記(2)式にて穴拡げ率
を求め、n=3の平均値をその鋼板の穴拡げ率とした。 穴拡げ率(%)=(試験後穴径d−初期穴径d0)/d0×100 ・・・(2) 穴拡げ率70%以上を合格とした。 〔表面粗さ〕 鋼板表面の最大高さRy(JIS B 0601)
を測定した。 〔材質均一性〕 鋼帯の幅方向中央位置と、両エッジ側
についてエッジから幅方向50mm位置の硬さを測定した。
そして、一方のエッジ側50mm位置と中央位置の硬さ(H
v)の差の絶対値ΔHv1と、他方のエッジ側50mm位置と中
央位置の硬さ(Hv)の差の絶対値ΔHv2を求め、ΔHv1
とΔHv2のうち大きい方の値をΔHvとした。ΔHvは15
以下を合格とした。結果を表3に示す。
発明例である。これらはいずれも引張強さ720N/mm2以
上、穴拡げ率70%以上を有している。光学顕微鏡組織観
察の結果、これらの熱延鋼板にはポリゴナルフェライト
やマルテンサイトは観察されず、いずれもベイナイティ
ックフェライト+ベイナイトの複相組織またはベイナイ
ト単相組織を呈していた。鋼板表面の最大高さRyは10
μm以下であり、表面肌は良好であった。また、Bある
いはCaを添加したNo.5(E鋼),No.6(F鋼)は、同
強度レベルで比較して、さらに良好な穴拡げ率を示して
いる。
イトの硬さが高くなり、伸びが低下した。またSが高い
ため穴拡げ率が低かった。No.8は、Cが低いため、Mn
が高いにもかかわらず少量のポリゴナルフェライトが生
成した。Mnが高いことによりベイナイトが硬質化した
ため、ポリゴナルフェライトが少量であっても、ベイナ
イトとの界面にマクロクラックが発生し穴拡げ性は低下
した。No.9は、フェライト形成元素であるSiが高いた
め、ポリゴナルフェライトが生成し、穴拡げ加工中にベ
イナイトとの分離が起こって穴拡げ性は低下した。
イトが粒界に析出しており、強度、穴拡げ率がともに低
かった。No.11は、最終パス温度T1が高すぎたため結
晶粒が大きくなり、粒界にポリゴナルフェライトが析出
し、穴拡げ率が低下した。Siが低いためベイナイト量
が増加し、幅方向の冷却速度のばらつきにより硬さの変
動が大きくなった。No.12は、成分組成は本発明規定範
囲であるが、T1からT2までの平均冷却速度が80℃/s
ec未満であったためポリゴナルフェライトが増加し、強
度および穴拡げ性が低下した。材質均一性にも劣った。
No.13は、成分組成は本発明規定範囲であるが、T1か
らT2までの平均冷却速度が80℃/sec未満であったため
ポリゴナルフェライトが増加し、強度および穴拡げ性が
低下しするとともに材質均一性も劣化した。また、デス
ケールが不十分であったため表面粗さが大きくなり、鋼
板表面の凹凸起因による穴拡げ性の低下も認められた。
るが、T2からT3までの平均冷却速度が40℃/secを超
えたため部分的にマルテンサイトが生成し、穴拡げ率が
低下した。また、デスケールを実施しなかったので鋼板
表面の最大高さRyが大きくなり、鋼板表面の凹凸起因
による穴拡げ性の低下も認められた。さらに巻取温度T
3が低かったので材質均一性に劣った。No.15は、成分
組成は本発明規定範囲であるが、巻取温度が高すぎたた
め強度が不足した。材質均一性にも劣った。No.16は、
成分組成は本発明規定範囲であるが、T2からT3まで
の平均冷却速度が40℃/secを超え、巻取温度T3が低す
ぎたため、マルテンサイトが生成し、そのため伸びや穴
拡げ率が低かった。材質均一性にも劣った。
延工程でのデスケールおよび比較的簡単な冷却制御を組
み合わせることで、Ti,Nb,Cr等の高価な合金元素
を必要とせずに、720N/m2以上の強度レベルと、70%以
上の高い穴拡げ率を両立した熱延鋼板が工業的に安定し
て低コストで提供できるようになった。また、本発明が
提供する熱延鋼板はSi含有鋼の中でも表面性状が良好
であり、材質均一性にも優れる。したがって本発明は、
自動車足回り部品等の構造部材用途への高強度鋼の普及
を促進し、部材の薄肉化による自動車の軽量化に寄与す
るものである。
Claims (5)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.06〜0.13%,Si:0.5
〜1.0%,Mn:2.1〜3.0%,P:0.030%以下,S:0.0
03%以下,Al:0.02〜0.06%,N:0.002〜0.006%,
O:0.0030%以下であり、残部がFeおよび不可避的不
純物からなる鋼を熱間圧延してコイルにする際、加熱後
〜仕上熱延前の段階で少なくとも1回以上スラブまたは
鋼板表面に衝突圧2.0kgf/cm2以上で水を吹き付けてデス
ケールを行い、最終パス温度T1が800〜950℃の範囲の
オーステナイト単相域となるように仕上熱延を行い、仕
上熱延後〜巻取り前に、T1から下記(1)式で定義され
る温度T2までの平均冷却速度が80℃/sec以上となり、
T2から巻取温度T3までの平均冷却速度が40℃/sec以
下となり、かつT3が250〜450℃の範囲となるように冷
却制御を行うことを特徴とする材質均一性、穴拡げ性に
優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 T2(℃)=673×C−37×Si+52×Mn−4284×S+442 ・・・(1) - 【請求項2】 鋼がさらにB:0.0050%以下、Ca:0.0
050%以下のうち1種または2種を含むものである請求
項1に記載の製造方法。 - 【請求項3】 質量%で、C:0.06〜0.13%,Si:0.5
〜1.0%,Mn:2.1〜3.0%,P:0.030%以下,S:0.0
03%以下,Al:0.02〜0.06%,N:0.002〜0.006%,
O:0.0030%以下であり、残部がFeおよび不可避的不
純物からなり、ベイナイティックフェライト+ベイナイ
トの複相組織またはベイナイト単相組織を呈し、引張強
さが700N/mm2以上、伸びが15%以上、穴拡げ率が70%以
上である高強度熱延鋼板。 - 【請求項4】 さらにB:0.0050%以下、Ca:0.0050
%以下のうち1種または2種を含む請求項3に記載の鋼
板。 - 【請求項5】 鋼帯の幅方向においてエッジから50mm位
置と中央位置の硬さ(Hv)の差ΔHvの絶対値が15以下で
ある、請求項3または4に記載の鋼板。
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