JP6485044B2 - 分離膜エレメント - Google Patents

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Description

本発明は、液体および気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜エレメントに関するものである。
海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大してきている。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の観点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜および正浸透膜に分類される。これらの膜は、例えば、海水、かん水および有害物を含んだ水などからの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに排水処理および有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分および分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントとしては様々な形態があるが、分離膜の一方の面に処理される被処理水(原水)を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えることにより、1個の分離膜エレメントあたりの膜面積が大きくなるように、すなわち1個の分離膜エレメントあたりに得られる透過流体の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型および平膜集積型などの各種の形状の分離膜エレメントが提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型の分離膜エレメントが広く用いられている。スパイラル型の分離膜エレメントは、中心管と、その中心管の周囲に巻き付けられた積層体とを備えている。積層体は、原水(すなわち被処理水)を分離膜表面に供給する供給側流路材、原水に含まれる成分を分離する分離膜、および分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成されている。スパイラル型の分離膜エレメントは、原水に圧力を付与することができるので、透過流体を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
スパイラル型の分離膜エレメントでは、一般的に、供給側流体の流路を形成させるために、供給側流路材として、主に高分子化合物製のネットが使用されている。また、分離膜として、積層型の分離膜が用いられている。積層型の分離膜は、供給側から透過側に積層された、ポリアミドなどの架橋高分子化合物から形成される分離機能層(多孔性支持層)、ポリスルホンなどの高分子化合物から形成される多孔性樹脂層、およびポリエチレンテレフタレートなどの高分子化合物から形成される不織布の基材を備えている。また、透過側流路材としては、分離膜の落ち込みを防き、かつ透過側の流路を形成させる目的で、供給側流路材よりも間隔の細かいトリコットと呼ばれる編み物部材が使用されている。
また、近年、造水コストの低減への要求の高まりから、分離膜エレメントの高性能化が求められている。例えば、分離膜エレメントの分離性能の向上および単位時間あたりの透過流体量の増大のために、各流路部材等の分離膜エレメント部材の性能向上が提案されている。
具体的には、透過側流路材として、凹凸賦形されたシートを備えた分離膜エレメントが提案されている(特許文献1参照。)。また、ベーンと称されるエラストマーから構成される流路材を分離膜に配置することにより、ネットなどの供給側流路材やトリコットなどの透過側流路材を必要としない分離膜エレメントが提案されている(特許文献2参照。)。さらに、糸条を不織布上に配置した流路材を備えた分離膜エレメントが提案されている(特許文献3参照。)。
日本国特開2006−247453号公報 日本国特表2012−518538号公報 米国特許出願公開第2012−0261333号明細書
しかしながら、上述した種々の提案にもかかわらず、従来の分離膜エレメントは、分離性能、特に高い圧力をかけて長期間にわたり運転を行った際の安定性能の点では、十分とはいえずさらなる改善の余地があった。
そこで、本発明の目的は、高い圧力をかけて分離膜エレメントを長時間運転したときの分離除去性能を安定化させることのできる分離膜エレメントを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成せんとするものであり、本発明の分離膜エレメントは、以下の構成をとる。
(1)集水管と、複数枚重ねられて前記集水管の周囲に巻囲された分離膜リーフとを有する分離膜エレメントであって、前記分離膜リーフは、供給側の面および透過側の面を備えた分離膜を前記供給側の面を対向させて構成され、重なり合う前記分離膜リーフの前記透過側の面の間に、複数の突起物が固着されたシートを備え、前記突起物高さについて、最大高さと最小高さの比が1.10以上1.50以下、変動係数が0.02以上0.15以下であり、かつ前記突起物の前記シートへの含浸率が10%以上100%以下である分離膜エレメント。
(2)前記突起物が固着されたシートの長さ方向への引張強度が50N/5cm以上800N/5cm以下である前記(1)に記載の分離膜エレメント。
(3)重なり合う前記分離膜リーフの透過側の面の間に複数のシートを有し、前記シートの少なくとも一枚に前記複数の突起物が固着されていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の分離膜エレメント。
(4)前記突起物は、前記シートに固着している側の下底長さが、上底長さよりも大きく、前記シートの前記複数の突起を備えていない面と、前記分離膜リーフの透過側の面とが接触するように配置された前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の分離膜エレメント。
(5)前記シートの長さ方向への引張強度が40N/5cm以上600N/5cm以下、幅方向への引張強度が15N/5cm以上500N/5cm以下であり、かつ前記シートの長さ方向への引張伸度が5%以上50%以下、幅方向への引張伸度が3%以上40%以下である前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分離膜エレメント。
本発明によって、高効率かつ安定した透過側流路を形成することができ、分離成分の除去性能と高い透過性能を有する高性能、高効率の分離膜エレメントを得ることができる。
この分離膜エレメントを水処理装置に用いることで、かん水や海水の淡水化にあたり、高圧運転条件下でも長期間にわたって安定な運転の継続が期待される。
また、本発明によれば、分離膜の透過側流路への落ち込み低減により、透過側の流動抵抗が低減し、高効率かつ安定した透過側流路を形成することができ、分離成分の除去性能と高い透過性能を有する高性能で高効率の分離膜エレメントを得ることができる。
この分離膜エレメントを水処理装置に用いることにより、かん水や海水の淡水化にあたり、高圧運転条件下において、分離膜の流路材間への落ち込みが抑制され、長期間にわたって安定な運転の継続が期待される。
図1は、本発明で用いられる分離膜リーフの一形態を示す概略構成図である。 図2は、本発明で用いられるシートの長さ方向(第2方向)において連続的に設けられた突起物を備える透過側流路材を示す平面図である。 図3は、本発明で用いられるシートの長さ方向(第2方向)において不連続的に設けられた突起物を備える透過側流路材を示す平面図である。 図4(a)及び図4(b)は、透過側流路材を備えた本発明で用いられる分離膜を示す断面図である。 図5は、図2の分離膜長さ方向の断面図である。 図6は、シートと突起物を備える透過側流路材の断面図である。 図7は、透過側流路材を備えた分離膜を示す断面図であり、分離膜エレメントを発停試験した後の模式図である。 図8(a)及び図8(b)は、本発明の分離膜エレメントの一形態を示す展開斜視図である。 図9は、本発明で用いられる透過側流路材の断面模式図である。 図10は、本発明で用いられる分離膜本体の概略構成を示す断面図である。
次に、本発明の分離膜エレメントの実施の形態について、詳細に説明する。
なお、図1〜図9において、図中に、x軸、y軸およびz軸の方向軸を示す。x軸を第1方向と称し、y軸を第2方向と称することがある。また、第1方向を横方向または幅方向と称し、第2方向を縦方向または長さ方向と称することがある。また、図1、図8及び図9中、第1方向(横方向)をCDの矢印で表わし、第2方向(縦方向)をMDの矢印で表わす。
また、本明細書において、「質量」は「重量」のことを意味するものとする。
本発明の分離膜エレメントは、集水管と、複数枚重ねられて前記集水管の周囲に巻囲された分離膜リーフとを有する分離膜エレメントであって、前記分離膜リーフは、供給側の面および透過側の面を備えた分離膜を前記供給側の面を対向させて構成され、重なり合う前記分離膜リーフの前記透過側の面の間に、突起物が固着されたシートを備えるものである。
〔1.分離膜〕
(1−1)分離膜の概要
分離膜とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得ることができる膜である。本発明で言う分離膜とは、流路を形成するようにエンボス加工されたものや樹脂などが配置されたものも含むことができる。また、従来のように、流路を形成することができず、分離機能のみを発現するものを分離膜本体と呼ぶことがある。
このような分離膜の例として、本発明で用いられる分離膜の実施形態の一例を含む分離膜リーフの分解斜視図を図1に示す。図1において、分離膜2は、複数の分離膜2a、2b、2cを含む。第1の分離膜2aは、供給側の面21aと透過側の面22aを有し、第2の分離膜2bは、供給側の面21bと透過側の面22bを有し、第3の分離膜2cは、供給側の面21cと透過側の面22cを有している。重ねられた第1の分離膜2aと第2の分離膜2bは、第1の分離膜2aの供給側の面21aと、第2の分離膜2bの供給側の面21bとが対向するように配置されている。また、さらに、その上に重ねられた第3の分離膜2cは、その透過側の面22cが、第2の分離膜2bの透過側の面22bに対向するように配置されている。第3の分離膜2cの供給側の面21cは、分離膜2の供給側の面である。
本発明において、分離膜の「供給側の面」とは、分離膜の2つの面のうち、原水が供給される側の表面を意味する。また、「透過側の面」とは、その逆側で、分離膜を透過した透過流体が排出される側の表面を意味する。後述するように、分離膜2が、図10に示されるように、基材201、多孔性支持層202および分離機能層203を備える場合は、一般的に、分離機能層203側の面が供給側の面21であり、基材201側の面が透過側の面22である。
図10において、分離膜2は、基材201、多孔性支持層202および分離機能層203の積層体として記載されている。上述したとおり、分離機能層203の外に開放された面が供給側の面21であり、基材201の外に開放された面が透過側の面22である。
また、図1等に示されるように、分離膜2は長方形であり、第1方向(CD)および第2方向(MD)は、分離膜2の外縁に平行である。
(1−2)分離膜
<概要>
分離膜としては、使用方法および目的等に応じた分離性能を有する膜が用いられる。分離膜は、単一層によって形成されていてもよいし、分離機能層と基材とを備える複合膜であってもよい。また、図10に示すように、複合膜においては、分離機能層203と基材201との間に、多孔性支持層202が形成されていてもよい。
<分離機能層>
分離機能層の厚さは、分離性能と透過性能の点で5nm以上3,000nm以下であることが好ましい態様である。特に、逆浸透膜、正浸透膜およびナノろ過膜では、5nm以上300nm以下であることが好ましい態様である。
分離機能層の厚さの測定は、通常の分離膜の膜厚測定法に準ずることができる。例えば、分離膜を樹脂により包埋し、それを切断することにより超薄切片を作製し、得られた切片に染色などの処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡により厚さを観察することで、厚さの測定が可能である。また、分離機能層がひだ構造を有する場合は、多孔性支持層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定しその平均から求めることができる。
分離機能層は、分離機能および支持機能の両方を有する層であってもよいし、分離機能のみを備えていてもよい。ここで、「分離機能層」とは、少なくとも分離機能を備える層を指す。
分離機能層が分離機能および支持機能の両方を有する場合、分離機能層としては、セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、またはポリスルホンを主成分として含有する層が好ましく適用される。
また、本発明において、「XがYを主成分として含有する」とは、XにおけるYの含有率が、50質量%以上である場合を意味し、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。また、Yに該当する複数の成分が存在する場合は、それら複数の成分の合計量が、上述の範囲を満たせばよい。
一方、多孔性支持層で支持される分離機能層としては、孔径制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという観点で、架橋高分子化合物が好ましく使用される。特に、原水中の成分の分離性能に優れるという観点では、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて得られるポリアミド分離機能層や有機無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成することが可能である。
例えば、分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することにより形成される。例えば、多孔性支持層に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することにより、ポリアミド分離機能層が得られる。
また、分離機能層は、Si元素などを有する有機−無機ハイブリッド構造を有することができる。有機−無機ハイブリッド構造を有する分離機能層は、例えば、次の化合物(A)および(B)を含有することができる:
(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物、ならびに
(B)前記の化合物(A)以外の化合物であって、エチレン性不飽和基を有する化合物。
具体的には、分離機能層は、化合物(A)の加水分解性基の縮合物ならびに化合物(A)および/または化合物(B)のエチレン性不飽和基の重合物を含有することができる。すなわち、分離機能層は、
・化合物(A)のみが縮合および/または重合することで形成された重合物、
・化合物(B)のみが重合して形成された重合物、ならびに
・化合物(A)と化合物(B)との共重合物、
のうちの少なくとも1種の重合物を含有することができる。ここで、重合物には縮合物が含まれる。また、化合物(A)と化合物(B)との共重合物中で、化合物(A)は加水分解性基を介して縮合していてもよい。
ハイブリッド構造は、公知の方法で形成することが可能である。ハイブリッド構造の形成方法の一例は、次のとおりである。化合物(A)および化合物(B)を含有する反応液を多孔性支持層に塗布する。余分な反応液を除去した後、加水分解性基を縮合させるためには、加熱処理すればよい。化合物(A)および化合物(B)のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射およびプラズマ照射を行うことができる。また、重合速度を速める目的で、分離機能層形成の際に重合開始剤や重合促進剤等を添加することができる。
いずれの分離機能層についても、使用前に、例えばアルコール含有水溶液やアルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることができる。
<多孔性支持層>
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、多孔性樹脂層とも言い換えられる。
多孔性支持層に使用される材料やその形状については、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成されたものが挙げられる。多孔性支持層としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合し、または積層したものが使用され、中でも化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい態様である。
多孔性支持層は、分離膜に機械的強度を与え、かつイオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離機能層のような分離性能を有さない。多孔性支持層の有する孔のサイズおよび孔の分布は、例えば、多孔性支持層は、均一で微細な孔を有してもよく、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面にかけて径が徐々に大きくなるような孔径の分布を有してもよい。また、いずれの場合でも、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて測定された細孔の投影面積円相当径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。特に、界面重合反応性および分離機能層の保持性の点で、多孔性支持層において分離機能層が形成される側の表面における孔は、3nm以上50nm以下の投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚さは、分離膜に強度を与えるため等の理由から、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下の範囲である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡により観察することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で観察する場合は、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに、白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして、3kV〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製S−900型電子顕微鏡などを使用することができる。得られた電子顕微鏡写真に基づいて、多孔性支持層の膜厚と表面の投影面積円相当径を測定することができる。
多孔性支持層の厚さおよび孔径は、平均値であり、多孔性支持層の厚さは、断面観察で厚さ方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、200個の孔について測定された、各投影面積円相当径の平均値である。
次に、多孔性支持層の形成方法について説明する。多孔性支持層は、例えば、上記のポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載することがある。)溶液を、後述する基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって製造することができる。
多孔性支持層は、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成することができる。所望の形態を得るために、ポリマー濃度、溶媒の温度および貧溶媒は調整可能である。
例えば、所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって多孔性支持層を得ることができる。
<基材>
分離膜の強度および寸法安定性等の観点から、分離膜は基材を有することができる。基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の観点から、繊維状基材を用いることが好ましい。
繊維状基材としては、長繊維不織布および短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、およびピンホール等の欠点が生じること等を抑制することができる。また、繊維状基材が熱可塑性連続フィラメントから構成される長繊維不織布から形成されることにより、短繊維不織布と比べて、高分子化合物溶液の流延時に繊維の毛羽立ちによって起きる膜の不均一化および膜欠点の発生を抑制することができる。さらに、分離膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるので、寸法安定性に優れた長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
長繊維不織布から形成された基材は、成形性と強度の点で、多孔性支持層とは反対側に位置する表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造にすることにより、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、分離膜に凹凸を付与する際の、多孔性支持層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、分離膜表面の凹凸形状が安定する。
より具体的には、長繊維不織布から形成された基材の、多孔性支持層とは反対側に位置する表層における繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましく、また、基材の多孔性支持層側の表層における繊維配向度との配向度差が10°以上90°以下であることが好ましい態様である。
分離膜の製造工程や分離膜エレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きることがある。特に、連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。分離膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。多孔性支持層とは反対側に位置する基材の表層における繊維配向度と基材の多孔性支持層側の表層における繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい態様である。
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、連続製膜を行う際の製膜方向、すなわち不織布基材の長手方向と、不織布基材を構成する繊維の長手方向との間の角度の平均値である。すなわち、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が製膜方向に直角であれば、すなわち不織布基材の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、次のように測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を、走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり10本の繊維を選び、不織布の長手方向を0°としたときの、繊維の長手方向の角度を測定する。ここで、不織布の長手方向とは、不織布製造時の“Machine direction”を指す。また、不織布の長手方向は、多孔性支持層の製膜方向および図1と図8のMD方向に一致する。図1と図8のCD方向は、不織布製造時の“Cross direction”に一致する。
このようして、1枚の不織布あたり計100本の繊維について、角度の測定が行われる。このようして測定された100本の繊維について、長手方向の角度から平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
また、基材の厚さについては、基材と多孔性支持層との厚さの合計が、好ましくは30μm以上300μm以下の範囲内、またはより好ましくは50μm以上250μm以下の範囲内にあるように、基材の厚さが選択されることが好ましい。
〔2.透過側流路材〕
<概要>
透過側流路材は、シートと、前記シートに固着した複数の突起物とを有する。複数の突起物は、シートと一体的に形成されている。透過側流路材がこのような構成を有することで、透過側の流動抵抗を低減することができ、かつ高い耐圧性を両立させることができる。
本発明の透過側流路材は、特に逆浸透膜エレメントなどに用いられる場合には、高圧に耐え得る高い剛性と強靭性を有することが好ましい。ここで、好ましい剛性とは、高い運転圧力で変形しないための剛性のことである。また強靭性とは、圧力変動など瞬間的にかかる力で破損しないための強靭性のことである。これらの剛性と強靭性の両方の特性を得るために、透過側流路材の引張強度と引張伸度に着目した。本発明者らは鋭意検討の結果、引張強度と引張伸度の一方のみ高くしても、透過側流路材として適した剛性と強靭性は向上しないことから、透過側流路材の引張強度および引張伸度の両方を高めることにより剛性および強靭性の両方が向上することを見出した。
透過側流路材、つまり突起物が固着されたシートは、縦方向(長さ方向)への引張強度が50N/5cm以上800N/5cm以下、引張伸度が5%以上30%以下であることが好ましい。透過側流路材の引張強度および引張伸度が大きいと、高圧負荷運転時に透過側流路材にかかる応力に対する剛性が向上する。また、エレメント巻囲時に巻き取り圧力が集中し、流路材が変形することによる造水量や塩阻止性能の低下を抑制することができる。しかし、引張強度が高すぎると、風合いが硬くなり圧力に対する強靭性が低下してしまう。一方で、引張伸度が高すぎると、透過側流路材の変形量が増大、更に残留歪みが残るなどの問題が発生する。流路材の変形量が小さくなると、透過側流路が安定し、圧力に対する性能変化を抑制できる。また流路材の変形により生じる膜の変形や欠点の発生を抑制でき、高圧負荷運転時にも透過流束と溶質除去性能が安定化される。
引張強度は、以下のように測定される。ISO9073−3:1989に基づいて、5cm×30cmのサンプルについて、テンシロン万能材料試験器(RTF−2430)(エー・アンド・デイ社製)を用いて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の測定を実施し、得られた強伸度曲線から読み取り、少数点以下第1位を四捨五入して得られる値が、本書での引張強度である。
本発明において、隣り合う分離膜リーフの透過側の面の間に複数のシートを有し、該シートの少なくとも一枚に複数の突起物が固着されていることが好ましい。
高圧負荷運転時、分離膜はシートに固着された隣り合う突起物と突起物の間に落ち込み、透過側流路体積が減少するため、分離膜エレメントの造水量が減少する。
図4(a)および図4(b)に示されるように、隣り合う分離膜303A1,303B1の透過側の面の間に複数のシート302を有していると、分離膜にかかる応力に対する剛性が向上する。分離膜にかかる応力に対する剛性が向上すると、分離膜の圧力に対する変形を抑制することができ、分離膜の落ち込みを低減し、透過側流路体積の減少を抑制することができる。
また、突起物は、シートとの固着部(突起物下底側)の幅が、突起物の先端部(突起物上底側)の幅よりも大きく、複数の突起物が固着されたシートは、突起物を備えていない面と、分離膜の透過側の面とが接触するように配置されていることが好ましい態様である。
具体的には、図4(a)に示されるように、シート302に固着している突起物301の固着部(突起物下底側)の幅mが突起物の先端部(突起物上底側)の幅gよりも大きい台形状や半円状などのとき、突起物301の下底側(分離膜303B1側)の突起物間の距離nよりも突起物301の上底側(分離膜303A1側)の突起物間の距離hが大きいため、突起物301の上底側に位置する分離膜303A1は下底側に位置する分離膜303B1よりも落ち込みやすい。シート302の突起物301を備えていない面と、分離膜の透過側の面とが接触するように配置されることにより、突起物の上底側に位置する分離膜303A1の落ち込みを低減させ、透過側流路体積の減少を抑制することができる。
さらに、複数のシートの少なくとも二枚に複数の突起物が固着されていることがさらに好ましい態様である。シート302に突起物301が固着されていると、シート強度が向上する。すなわち、シート302にかかる応力に対する剛性が向上する。シートにかかる応力に対する剛性が向上すると、シートの圧力に対する変形を抑制でき、透過側流路を安定化できる。
また、図4(b)に示されるように、複数の突起物301が固着されたシート302が、突起物301を備えていない面と分離膜301A1,302B1の透過側の面とが接触するように配置され、隣接する分離膜303A1,303B1の間kに複数のシート302の少なくとも二枚に複数の突起物301が固着されていると、分離膜303A1側に位置する突起物301間の距離hが小さくなり、高圧負荷運転時にも分離膜の落ち込みを低減し、流動抵抗を低減することができる。透過側流路体積iを減少させることなく、分離膜の落ち込みを低減させることができるため、高い初期性能と耐圧性を両立させることができる。
透過側流路材を構成するシートの縦方向(長さ方向)への引張強度は、40N/5cm以上600N/5cm以下であり、かつ横方向(幅方向)への引張強度が15N/5cm以上500N/5cm以下であることが好ましい。シートの引張強度が上記範囲にあることで、高圧負荷運転時にも変形や欠陥の発生が抑制され、透過流束と溶質除去性能が安定化される。
シートの引張強度が大きいと、シートにかかる応力に対する剛性が向上する。シートにかかる応力に対する剛性が向上すると、シートの圧力に対する変形を抑制でき、透過側流路を安定化できる。また、エレメント巻囲時に巻取り圧力が流路材に集中し、流路材が変形することによる造水量や塩阻止性能の低下を抑制することができる。さらに、シート上への突起物形成過程において、張力や熱によるシートの変形を抑制し、突起物形成を安定化できる。特に、高弾性の突起物形成の際には、突起物固化による変形から起こるシート変形を抑制するため、巻取張力を増大させることがある。シートの引張強度を上記範囲にすることで、巻取張力によるシート変形を抑制できる。その結果、透過側流路材の突起物形状、高さが安定化し、エレメントにしたときに高い透過水量および溶質除去性能を有する。しかし、引張強度が高すぎると、柔軟性が低下するので、圧力に対する靭性が低下してしまう。
透過側流路材を構成するシートの縦方向(長さ方向)への引張伸度は5%以上50%以下であり、かつ横方向(幅方向)への引張伸度は3%以上40%以下であることが好ましい。シートの引張伸度が上記範囲にあることで、シートの靱性が向上する。シートの靱性が向上すると、エレメント巻囲時の巻取り圧力集中時や高圧運転時にもシートは破壊せず、透過水量および溶質除去性能が安定化される。特に、高弾性の突起物形成の際には、突起物固化による変形から起こるシート変形を抑制するため、巻取張力を増大させることがある。シートの引張伸度を上記範囲にすることで、シートを安定に巻き取ることができる。一方で、引張伸度が高すぎると、エレメントへの圧力負荷時や、シート上への突起物形成過程において、シートの変形量が増大、更に残留歪みが残るなどの問題が発生する。
透過側流路材を構成するシート厚さが10μm以上300μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは20μm以上100μm以下の範囲である。シート厚さが300μm以下であることで、透過側流路の流動抵抗が小さくなり、エレメントの造水量が向上する。また、シートが薄いことで、1つのエレメントあたりに多くの膜を充填することが可能となるので、エレメントの造水量を増大させることができる。また、シート厚さが10μm以上であることで、シートにかかる応力に対する剛性が向上するので、シートの圧力に対する変形を抑制できる。よって、透過側流路を安定化できる。
また、透過側流路材を構成するシートは、空隙を有する。透過側流路材を構成するシートの通気度は、0.1ml/cm/s以上10.0ml/cm/s以下であることが好ましく、より好ましくは0.1ml/cm/s以上5.0ml/cm/s以下である。
通気度が上記範囲内であると、シートの流動抵抗が小さく、高い造水量の分離膜エレメントを得ることができる。また、シート上への突起物形成時に、突起物がシートへの含浸により裏抜けしてシートの厚みが不均一化するのを防ぐことができる。
透過側流路材を構成する突起物301は、シートに含浸している。突起物301のシートの厚さに対する含浸率が10%以上で100%以下である。含有率は、好ましくは、20%以上100%以下である。分離膜エレメントに、高圧負荷をかけると透過側流路材を構成するシートは圧縮される。突起物301のシートの厚さに対する含浸率が20%以上であることで、シートの空隙が小さくなるため、高圧負荷運転時にもシートが圧縮変形しにくくなり、透過側流路が安定化される。また、含浸率が上記範囲にあることで、シートと突起物の接着が強固になり、高圧運転時にもシートから突起物が剥離しにくくなり分離膜エレメントの性能が安定化される。
突起物301のシートの厚さに対する含浸率が小さいとシートの空隙が大きいため、シートの圧縮割合が大きくなる。シートの圧縮割合が大きくなると、分離膜と透過側流路の間に空隙が生じ、分離膜エレメントを構成する分離膜が不安定になるため、流体が通過する際に分離膜がエレメントの幅方向にずれて、分離膜エレメントの性能が低下する。一方、突起物301のシートへの裏抜けが生じると、シート厚さが不均一化するため、透過側流路が不安定化し、分離膜エレメントの膜ずれや性能低下が生じる。
突起物のシートへの含浸率は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡により、突起物が存在する分離膜の断面を観察して突起物含浸厚さとシート厚さを算出することができる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば流路材を突起物と共に深さ方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡で観察して、突起物含浸厚さと基材厚さを測定する。そして、シート中の突起物が最も含浸している突起物最大含浸厚さとシート厚さの比から算出できる。なお、含浸深さを算出する場合の「シート厚さ」とは、最大含浸厚さを測定した部分(D1)と同一箇所におけるシートの厚さ(D2)である(図6参照)。図6では、説明の便宜上、シート厚さを示す矢印と最大含浸厚さを示す矢印とは、ずれるように描かれている。
突起物の含浸率は、透過側流路材を構成するシートの樹脂や目付、また突起物を構成する樹脂やその含有量を変更することで、調整可能である。また、突起物をホットメルト法によって設ける場合には、処理温度等を変更することによっても、含浸率を調整することができる。
<透過側流路材の構成成分>
透過側流路材を構成する材料、すなわちシートおよび突起物を構成する成分としては、樹脂が好ましく用いられる。具体的には、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやポリオレフィン共重合体などが好ましく用いられる。また、透過側流路材の材料としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、メタクリル−スチレン共重合体、酢酸セルロール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレートやフッ素樹脂(三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合、および四フッ化エチレン−エチレン共重合など)などのポリマーを選択することができる。
さらに、使用後に分離膜支持体を廃棄する際、廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから、生分解性樹脂も原料として好ましく用いられる。本発明で用いられる生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂およびポリヒドロキシブチレート系樹脂等が挙げられる。これらの材料は、単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いられる。特に、熱可塑性樹脂は成形が容易であるため、均一な形状の透過側流路材を形成することができる。シートと突起物は、同素材であっても異素材であってもよい。
透過側流路材の材料として、複合材も適用可能である。複合材の材料としては、母材として上述の樹脂を含有し、さらに充てん材を含有する材料が挙げられる。透過側流路材の圧縮弾性率は、母材に多孔質無機物などの充てん材を添加することで高めることができる。具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属のケイ酸塩、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、純硅石、硅石粉、ケイソー土、ワラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、カオリン、クレー、ベントナイト、石膏およびタルク等などを充てん材として用いることができる。充てん材の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
<流路材形状および配置>
<<概要>>
従来広く用いられているトリコットは、編み物であり立体的に交差した糸で構成されている。すなわち、トリコットは、二次元的に連続した構造を有している。このようなトリコットが透過側流路材として適用された場合、流路の高さはトリコットの厚さよりも小さくなる。すなわち、溝とならない割合が多い構造である。
これに対して、本発明の構成の例として、図4等に示す突起物301が、空隙を有するシート302に配置されている。よって、この実施形態の突起物301の高さ(すなわち厚さ)が流路の溝の高さとして活用され、さらにシート302が空隙を有するため流路として活用することができる。また、透過側流路材の形成プロセスの都合上、突起物の配置精度が不十分で溝が閉塞するような形状になった場合においても、シートの空隙が流路となり透過水はシートを介して別の溝へ移動させることができる。よって、この実施形態の流路材と同じ厚さを有するトリコットが適用された場合よりも、流路(突起物301の間の溝やシート302中の空隙)が広く存在するため、流動抵抗はより小さくなる。
また、各図に示した形態では、不連続な複数の突起物301が、1つのシート302上に固着されている。「不連続」とは、複数の透過側流路材が、間隔を置いて設けられている状態である。すなわち、1枚の突起物301をシート302から剥離すると、互いに分かれた複数の突起物301が得られる。これに対して、ネット、トリコットおよびフィルム等の部材は、流路がシート302から分離されても、連続した一体の形状を示す。
不連続な複数の突起物301が設けられていることにより、分離膜は、後述する分離膜エレメントに組み込まれたときに、圧力損失を低く抑えることができる。このような構成の一例として、図2では、突起物301は第1方向(シート302の幅方向)においてのみ不連続に形成されおり、図3では第1方向(シート302の幅方向)および第2方向(シートの長さ方向)のいずれにおいても不連続に形成されている。
図2および図3において、隣接する突起物301の間の空間に、透過側流路5が形成される。
分離膜は、分離膜エレメントにおいて、第2方向が巻回方向と一致するように配置されることが好ましい態様である。すなわち、分離膜エレメントにおいて、分離膜は、第1方向(分離膜の幅方向)が集水管の長手方向に平行であり、第2方向(分離膜の長さ方向)が集水管の長手方向に直交するように配置されることが好ましい。
透過側流路材31は、図2に示される形態では、第1方向において不連続に設けられると共に、第2方向において、シート302の一端から他端まで連続するように設けられている。すなわち、図8(a)に示すように、分離膜エレメント100に分離膜2が組み込まれたときに、突起物301は、巻回方向におけるシート302の内側端部から外側端部まで連続するように配置される。巻回方向の内側とは、分離膜において集水管6に近い側であり、巻回方向の外側とは、分離膜において集水管6から遠い側である。
図8(a)および図8(b)は、集水管6の周囲に分離膜リーフ4を巻回した分離膜エレメント100を模式的に示す説明図である。図8(a)において分離膜2は、分離膜リーフ4の片側の面として記載されている。図中、CDで示す矢印は、集水管6の長手方向および分離膜の幅方向を示す。また、MDで示す矢印は、分離膜の長さ方向および集水管6へ巻回する方向を示す。
流路材が「第2方向において連続する」とは、図2のように流路材が途切れることなく設けられている場合と、図3のように、流路材が途切れる箇所はあるが、流路材が実質的に連続している場合の両方を包含する。「実質的に連続する」形態とは、好ましくは、図3に示すように、第2方向における流路材の間隔e(すなわち、流路材において途切れている部分の長さ)が5mm以下であることを満たす。特に、間隔eは、1mm以下を満たすことがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい態様である。また、第2方向において並ぶ一列の流路材の先頭から最後尾までに含まれる間隔eの合計値は、100mm以下であることが好ましく、より好ましくは30mm以下であり、さらに好ましく3mm以下である。図2の形態では、間隔eは0(ゼロ)である。
図2のように、突起物301が第2方向に途切れずに設けられている場合、加圧ろ過時に膜落ち込みが抑制される。膜落ち込みとは、膜が流路に落ち込んで流路を狭めることである。
また、図3では、突起物301は、第1方向だけでなく第2方向においても不連続に設けられている。すなわち、突起物301は、長さ方向において間隔をおいて設けられている。ただし、上述したように、突起物301が第2方向において実質的に連続していることで、膜落ち込みが抑制される。しかしながら、このように、2つの方向において不連続な突起物301が設けられることにより、流路材と流体との接触面積が小さくなるので圧力損失が小さくなる。この形態は、流路5が分岐点を備える構成であるとも言い換えられる。すなわち、図3の構成において、透過流体は、流路5を流れながら突起物301やシート302によって分けられ、さらに下流で合流することができる。
上述したように、図2では、突起物301が、第2方向においてシート302の一端から他端まで連続するように設けられている。また、図3では、第2方向において突起物301は複数の部分に分割されているが、これらの複数の部分がシート302の一端から他端まで並ぶように設けられている。
流路材が「シートの一端から他端まで設けられている」とは、突起物301がシート302の縁まで設けられている形態と、縁近傍において突起物301が設けられていない領域がある形態との両方を包含する。すなわち、突起物301は、透過側の流路を形成できる程度に、第2方向に渡って分布していればよく、シート302において、突起物301が設けられない部分があることも許容される。例えば、透過側の面において、分離膜との接着された部分(接触部分と言い換えられる。)には、必ずしも突起物301が設けられる必要はない。また、その他の仕様上または製造上の理由により、分離膜の端部などの一部の箇所に、突起物301が配置されない領域が設けられることも許容される。
第1方向においても、突起物301は、シート302の全体にわたってほぼ均等に分布させることができる。ただし、第2方向における分布と同様に、透過側の面における分離膜との接着部分には、突起物301が設けられる必要はない。また、その他の仕様上または製造上の理由により、シート302の端部などの一部の箇所に、突起物301が配置されない領域が設けられることも許容される。
<<分離膜本体および流路材の寸法>>
図2〜図4、図7において、符号a〜nはそれぞれ下記の値を指す。
a:分離膜2の長さ
b:分離膜2の幅方向における突起物301の間隔
c:突起物301の高さ
d:突起物301の幅
e:分離膜2の長さ方向における突起物301の間隔
f:突起物301の長さ
g:突起物301の幅(突起物上底側)
h:分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物上底側)
i:1本あたりの透過側流路断面積
j:膜落ち込み深さ(隣接する突起物間における分離膜z方向位置の最大距離)
k:隣接する分離膜303A1と303B1間の距離
l:隣接する分離膜303A1と303B1間の距離(発停試験後)
m:突起物301の幅(突起物下底側)
n:分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物下底側)
上記の値a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、mおよびnの測定には、例えば、市販の形状測定システムまたはマイクロスコープなどを用いることができる。各値は、1枚の分離膜において30箇所以上で測定を行い、それらの値を総和した値を測定総箇所の数で割って平均値を算出することによって求められる。このように、少なくとも30箇所における測定の結果得られる各値が、次に記載する範囲を満たすことが好ましい態様である。
(分離膜の長さa)
分離膜の長さaは、第2方向(分離膜の長さ方向)における分離膜2の一端から他端までの距離である。この距離が一定でない場合、1枚の分離膜2において30箇所以上の位置でこの距離を測定し、平均値を求めることにより長さaを得ることができる。
(分離膜の幅方向における突起物301の間隔b)
第1方向(分離膜の幅方向)において隣接する突起物301の間隔bは、流路5の幅に相当する。1つの断面において1つの流路5の幅が一定でない場合、すなわち隣り合う2つの突起物301の側面が平行でない場合は、1つの断面内で、1つの流路5の幅の最大値と最小値の平均値を測定し、その平均値を算出する。
図4(a)に示されるように、第2方向に垂直な断面において、隣接する2つの突起物301は上が細く下が太い台形状を示す場合、まず、隣接する2つの突起物301の上部間の距離と下部間の距離を測定して、その平均値を算出する。任意の30箇所以上の断面において、突起物301の間隔を測定して、それぞれの断面において平均値を算出する。そして、このようして得られた平均値の相加平均値をさらに算出することにより、間隔bが算出される。
間隔bは、この値が小さくなるにつれて、膜落ち込みが生じにくくなる。特に、高圧負荷運転時に膜落ち込みを抑制するために、間隔bは2.0mm以下であることが好ましい。一方、間隔bは、その値が大きいほど膜圧力損失が小さくなる。これらを考慮すると、間隔bは0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2mm以上0.6mm以下である。
(突起物の高さc)
突起物高さcとは、突起物とシート表面との高低差である。図4(a)に示すように、高さcは、第2方向に垂直な断面における、突起物の最も高い部分とシートとの高さの差である。すなわち、高さにおいては、シートに含浸している部分の厚みは考慮しない。
高さcが大きい方が流動抵抗は小さくなる。よって、高さcは0.01mm以上であることが好ましい。その一方で、高さcが小さい方が、1つのエレメント当たりに充填される膜の数が多くなる。よって、高さcは、0.6mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下である。
図5は、突起物が第2方向に連続している分離膜長さ方向断面の模式図を示す。1つの突起物における「突起物最大高さ」/「突起物最小高さ」は1.10以上1.50以下である。「突起物最大高さ」/「突起物最小高さ」が上記範囲内にあることで、透過側流路材巻取り時に、突起物に対向するシート表面と突起物との接触面積が低下し、突起物とシート表面間の巻取り時の摩擦を低減させることができる。摩擦低減によって、突起物のはがれや破壊、ずれを抑制しながら安定に実施することができる。一方で、「突起物最大高さ」/「突起物最小高さ」が1.50以上であると、加圧ろ過時に分離膜の歪みが生じるので、分離膜に欠陥が発生することがある。突起物高さの最大高さと最小高さの比は、1.10以上1.20以下であることが好ましい。
突起物高さは、構成する樹脂や量を変更することで、調整可能である。また、突起物をホットメルト法によって設ける場合には、処理温度や樹脂の吐出圧力を変更することによっても、高さを調整することができる。
突起物高さの変動係数は0.02以上0.15以下である。突起物高さの変動係数が上記範囲内にあることで、突起物とシート表面間の巻取り時の摩擦を低減させ、突起物のはがれや破壊、ずれを抑制しながら安定に実施することができる。また、透過側流路材の巻取りや、巻取り後保管による突起物の変形を抑制できる。突起物高さの変動係数が0.15以上であると、加圧ろ過時に分離膜の歪みが生じるので、分離膜に欠陥が発生することがある。突起物高さの変動係数は、0.02以上0.10以下であることが好ましい。
高さcの変動係数は、同一平面内100箇所の透過側流路材31について突起物の高さを測定し算出する。その平均値と標準偏差を算出して、標準偏差/平均値とした値を突起物高さの変動係数とした。
また、隣り合う2つの突起物の高さの差は、その値が小さいことが好ましい。高さの差が大きくなると、加圧ろ過時に分離膜の歪みが生じるので、分離膜に欠陥が発生することがある。隣接する2つの突起物の高低差は、0.1mm以下(100μm以下)であることが好ましく、より好ましく0.06mm以下であり、さらに好ましくは0.04mm以下である。
同様の理由から、シート302に設けられた全ての突起物301の最大高低差は0.25mm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1mm以下であり、さらに好ましくは0.03mm以下である。
(突起物の幅d)
突起物301の幅dは、次のようにして測定される。まず、第1方向(分離膜の幅方向)に垂直な1つの断面において、1つの突起物301の最大幅と最小幅の平均値を算出する。すなわち、図4(a)に示されるような上部が細く下部が太い突起物301においては、流路材下部の幅と上部の幅を測定し、その平均値を算出する。このような平均値を少なくとも30箇所の断面において算出し、その相加平均を算出することにより、1枚の膜当たりの突起物の幅dを算出することができる。
突起物301の幅dは、好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上である。突起物の幅dを0.2mm以上とすることにより、分離膜エレメントの運転時に突起物301やシート302に圧力がかかっても、流路材の形状を保持することができ、透過側流路が安定的に形成される。突起物の幅dは、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。突起物の幅dを2mm以下とすることにより、透過側の流路を十分に確保することができる。
突起物301の幅dを第2方向での突起物301の間隔bよりも広くすることにより、流路材にかかる圧力を分散させることができる。
突起物301は、その長さがその幅よりも大きくなるように形成されている。このように長い突起物301は「壁状物」とも称される。
(分離膜の長さ方向における突起物の間隔e)
第2方向における突起物301の間隔eは、第2方向(分離膜の長さ方向)において隣り合う突起物301間の最短距離である。図2に示されるように、突起物301が第2方向において分離膜本体2の一端から他端まで(分離膜エレメント内では、巻回方向の内側端部から外側端部まで)連続して設けられている場合、突起物の間隔eは0mmである。また、図3に示されるように、突起物301が第2方向において途切れている場合、突起物の間隔eは、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは1mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下である。間隔eを上記範囲内とすることにより、膜落ち込みが生じても膜への機械的負荷が小さく、流路閉塞による圧力損失を比較的小さくすることができる。間隔eの下限は、0mmである。
(突起物の長さf)
突起物301の長さfは、分離膜2の長さ方向(すなわち第2方向)における突起物301の長さである。突起物の長さfは、1枚の分離膜2内で、30個以上の突起物301の長さを測定し、その平均値を算出することにより求められる。突起物301の長さfは、分離膜の長さa以下にすることが好ましい。突起物301の長さfが分離膜の長さaと同等のときは、突起物301が分離膜2の巻回方向内側端部から外側端部へ連続的に設けられていることを指す。突起物の長さfは、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは20mm以上である。長さfを10mm以上とすることにより、圧力下でも流路が確保される。
(突起物301の幅(突起物上底側)g)
図4(a)に示されるように、第1方向に垂直な断面において、突起物上部の幅gを測定する。少なくとも30箇所の断面において算出し、その相加平均を算出することにより、1枚の膜当たりの突起物の幅(突起物上底側)gを算出することができる。なお、突起物の幅(突起物上底側)とは、第1方向に垂直な断面において、突起物高さ90%の位置の第1方向における突起物の幅を示す。
(分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物上底側)h)
図4(a)に示されるように、第1方向に垂直な断面において、隣接する2つの突起物301の上部間の距離を測定して、任意の30箇所以上の断面において、突起物301の間隔を測定して得られた相加平均値を算出することにより、分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物上底側)hが算出される。なお、隣接する2つの突起物301の上部間の距離とは、第1方向に垂直な断面において、突起物高さ90%の位置の第1方向における隣接する2つの突起物301の上部間の距離を示す。
(1本あたりの透過側流路断面積i)
図4(b)に示されるように、第1方向に垂直な断面において、隣接する2つの突起物301とシートに囲まれた部分の面積を1本あたりの透過側流路断面積iとする。
(突起物301の幅(突起物下底側)m)
図4(a)および図4(b)に示されるように、第1方向に垂直な断面において、突起物下部の幅mを測定する。少なくとも30箇所の断面において算出し、その相加平均を算出することにより、1枚の膜当たりの突起物の幅(突起物下底側)mを算出することができる。なお、突起物上部の幅とは、第1方向に垂直な断面において、突起物高さ10%の位置の第1方向における突起物幅を示す。
(分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物下底側)n)
図4(a)に示されるように、第1方向に垂直な断面において、隣接する2つの突起物301の下部間の距離を測定して、任意の30箇所以上の断面において、突起物301の間隔を測定して得られた相加平均値を算出することにより、分離膜2の幅方向における突起物301の間隔(突起物下底側)nが算出される。なお、隣接する2つの突起物301の下部間の距離とは、第1方向に垂直な断面において、突起物高さ10%の位置の第1方向における隣接する2つの突起物301の下部間の距離を示す。
(突起物の形状)
突起物301の形状は、流路の流動抵抗を少なくし、透過させた際の流路を安定化させるような形状が選択され得る。これらの点で、分離膜の面方向に垂直ないずれかの断面において、突起物301の形状は、半円状や台形状、直柱状、曲柱状、あるいはそれらの組み合わせを採用することができるが、半円状や楕円状であることが好ましい。特に突起物断面の扁平率が0.1以上0.8以下であることがより好ましい。突起物断面の扁平率が上記範囲内にある半円状や楕円状であることで、透過側流路材巻取り時に、突起物に対向するシート表面と突起物との接触面積が低下し、突起物とシート表面間の巻取り時の摩擦を低減させ、突起物のはがれや破壊、ずれを抑制しながら安定に実施することができる。一方で、扁平率が0.1よりも小さいと、加圧ろ過時に膜落ち込みが発生しやすくなり、0.8を超えると、透過側流路が減少し、エレメント造水量が低下する恐れがある。扁平率は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡により、突起物が存在する分離膜の断面を観察して突起物幅と突起物高さから算出することができる。
扁平率=(突起物301の幅(突起物下底側)m−突起物の高さc)/(突起物301の幅(突起物下底側)m)
また、隣り合う分離膜リーフの透過側の面の間に存在する複数のシートのうち、突起物が固着されたシートが、シート側の面と、分離膜の透過側の面とが接触するように配置されるとき、突起物断面の突起物の幅(突起物下底側)mが突起物の幅(突起物上底側)gよりも大きい半円状、または台形状であることが好ましい。このような構造をとることにより、透過側流路体積iを減少させることなく、分離膜落ち込みを低減させることができるため、高い初期性能と耐圧性を両立させることができる。
また、隣り合う分離膜リーフの透過側の面の間に存在する複数のシートのうち二枚以上に突起物が固着されているとき、分離膜303A1側に位置する突起物と分離膜303B1側に位置する隣接する突起物とが形成する角度が、1°以上30°以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、透過側流路体積iを減少させることなく、分離膜落ち込みを低減させることができるため、高い初期性能と耐圧性を両立させることができる。また、分離膜303A1側に位置する突起物と分離膜303B1側に位置する突起物は、x軸方向にずれていることも許容される。ただし、透過側流路体積iが0(ゼロ)にならないことが好ましい。
突起物301は、熱可塑性樹脂で形成することが可能である。突起物301が熱可塑性樹脂であれば、処理温度および選択する熱可塑性樹脂の種類を変更することにより、要求される分離特性や透過性能の条件を満足できるように、自由に流路材の形状を調整することができる。
また、突起物301の分離膜の平面方向における形状は、図2および図3に示されるように、全体として直線状であってもよく、その他の形状として、例えば曲線状、鋸歯状および波線状にすることもできる。また、これらの形状において、突起物301を破線状やドット状とすることができる。流動抵抗を低減する観点からドット状や破線状が好ましいが、流路材が途切れるために加圧ろ過時の膜落ち込みが発生する箇所が多くなるため、形状は用途に応じて適宜設定することができる。
また、突起物301のシート302の平面方向における形状が直線状である場合、隣り合う流路材を、互いに略平行に配置することができる。「略平行に配置する」とは、例えば、流路材が分離膜上で交差しないこと、隣り合う2つの流路材の長手方向のなす角度が0°以上30°以下であること、上記角度が0°以上15°以下であること、および上記角度が0°以上5°以下であること等を包含する。
また、突起物301の長手方向と集水管の長手方向との成す角度は、60°以上120°以下であることが好ましく、より好ましくは75°以上105°以下であり、さらに好ましくは85°以上95°以下である。流路材の長手方向と集水管の長手方向との成す角度を上記範囲とすることにより、透過水を効率良く集水管に集めることができる。
流路を安定して形成するには、分離膜エレメントにおいて分離膜本体が加圧されたときの分離膜本体の落ち込みを抑制できることが好ましい。そのためには、分離膜と流路材との接触面積が大きいこと、すなわち分離膜の面積に対する流路材の面積(分離膜の膜面に対する流路材の投影面積)が大きいことが好ましい。一方で、圧力損失を低減させるには、流路の断面積が広いことが好ましい。流路の断面としては、流路の長手方向に対して垂直な分離膜本体と流路材との接触面積を大きく確保しつつ、かつ流路の断面積を広く確保するには、流路の断面形状は凹レンズ状であることが好ましい。また、突起物301は、巻回方向に垂直な方向での断面形状において、幅に変化のない直柱状にすることができる。また、分離膜性能に影響を与えない範囲内であれば、突起物301は、巻回方向に垂直な方向での断面形状において、幅に変化があるような台形状の壁状物、楕円柱、楕円錐、四角錐あるいは半球のような形状とすることができる。
突起物301の形状は、図3〜図7に示される形状に限定されない。シート302に、例えばホットメルト法のように、溶融した材料を固着させることにより流路材を配置する場合は、処理温度や選択するホットメルト用樹脂の種類を変更することにより、要求される分離特性および透過性能の条件を満足できるように、突起物301の形状を自由に調整することができる。
図2では、突起物301の平面形状は、長さ方向において直線状である。ただし、突起物301は、分離膜本体2の表面に対して凸であり、かつ分離膜エレメントとしての所望の効果が損なわれない範囲であれば、他の形状に変更は可能である。すなわち、流路材(突起物)の平面方向における形状は、曲線状および波線状等にすることができる。また、1つの分離膜に含まれる複数の流路材(突起物)が、幅および長さの少なくとも一方が互いに異なるように形成させることもできる。
(投影面積比)
分離膜の透過側の面に対する突起物301の投影面積比は、特に透過側流路の流動抵抗を低減し、流路を安定に形成させるという観点では、0.03以上0.90以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.90以下であり、さらに好ましくは0.20以上0.75以下であり、特に好ましくは0.30以上0.80以下である。投影面積比とは、分離膜と透過側流路材を5cm×5cmで切り出し、透過側流路材を分離膜の面方向に平行な平面に投影したときに得られる流路材の投影面積を、切り出し面積(25cm)で割った値である。
(欠点率)
図8(a)および図8(b)に示されように、分離膜2,7を透過した水は透過側流路5を通過して集水管6に集められる。分離膜2,7において、集水管6から遠い領域、すなわち巻回方向外側の端部近傍の領域(図8(a)における右側端部に近い領域)を透過した水は、集水管6に向かう間に、巻回方向においてより内側の領域を透過した水と合流し、集水管6へと向かう。よって、透過側流路5においては、集水管6から遠い方が存在する水量が少ない。
そのため、巻回方向外側の端部近傍の領域において、透過側流路材が存在せず、その領域での流動抵抗が高くなっても、分離膜エレメント全体の造水量に与える影響は軽微である。同様の理由で、巻回方向外側の端部近傍の領域において、流路材の形成精度が低く、流路材を形成する樹脂が第1方向(分離膜の幅方向)において連続して塗布されていても、分離膜エレメントとしての造水量に与える影響は小さい。この領域において、分離膜の面方向(x−y平面)において、流路材を形成する樹脂が隙間無く塗布されている場合も同様である。
よって、図9に示されるように、透過側流路材の巻回方向外側の端部から突起物301の巻回方向外側の端部までの距離、すなわち、分離膜2の巻回方向外側端部に設けられた領域であって、透過側流路が形成されていない領域である、領域R3の第2方向(分離膜の長さ方向)における長さL3が、透過側流路材の第2方向における長さL1(上述の“a”に相当する。)に対して占める割合は、0%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上10%以下であり、さらに好ましくは0%以上3%以下である。この割合を、欠点率と称する。領域R2は、透過側流路が形成されている領域である。
欠点率は、図9では、(L3/L1)×100で表される。図9では、説明の便宜上、領域R3に突起物301が設けられていない形態が示されている。ただし、領域R3は、幅方向に連続な突起物が設けられた領域とすることができる。
図9は、透過側流路材の巻回方向外側の端部を、突起物301の長さ方向に切断した断面図である。図9において、シート302に突起物301が固着し、透過側流路材の巻回方向外側端部の手前まで延在している。図9では、説明の便宜上、突起物301が長さ方向に連続に設けられている形態を示しているが、突起物301として上述の種々の形態が適用されることは、すでに述べたとおりである。
図9において、透過側流路材が設けられている領域をR2で示し、突起物301(透過側流路材)が設けられていない領域をR3で示している。また、分離膜2のMD方向の長さをL1、突起物301のMD方向の長さ(すなわち、領域R2の長さ)をL2で示し、突起物301が存在しない領域R3のMD方向の長さをL3で示している。ここでMD方向は、分離膜の長さ方向および分離膜の巻回方向を表す。
〔3.分離膜エレメント〕
(3−1)概要
図8(a)および図8(b)に示されるように、分離膜エレメント100は、集水管6と、上述したいずれかの構成を備え、集水管6の周囲に巻回された分離膜リーフ4を備える。
(3−2)分離膜
<概要>
図8(a)に示すように、分離膜2および透過側流路材31は、集水管6の周囲に巻回されており、分離膜2および透過側流路材31の幅方向が集水管6の長手方向に沿うように配置されている。その結果、分離膜2および透過側流路材31は、長さ方向が巻回方向に沿うように配置されている。
従って、図8(a)に示されるように、透過側流路材を構成する突起物301は、少なくとも集水管6の長手方向に対して不連続状に配置される。すなわち、透過側流路5は、巻回方向において分離膜の外側端部から内側端部まで連続するように形成される。その結果、透過水が中心の集水管6へ到達し易く、すなわち流動抵抗が小さくなるので、大きな造水量が得られる。
「巻回方向の内側」および「巻回方向の外側」は、図8(a)に示すとおりである。すなわち、「巻回方向の内側端部」および「巻回方向の外側端部」とはそれぞれ、分離膜2において集水管6に近い方の端部、および遠い方の端部に該当する。
<分離膜リーフおよび封筒状膜>
分離膜は、分離膜リーフ(本発明において、単に「リーフ」と称することがある。)を形成する。分離膜リーフにおいて分離膜は、供給側の面が、供給側流路材を挟んで他の分離膜の供給側の面と対向するように配置される。分離膜リーフにおいて、互いに向かい合う分離膜の供給側の面の間には供給側流路が形成される。
さらに、2枚の分離膜リーフが重ねられることにより、分離膜の透過側の面に他の分離膜リーフの分離膜の透過側の面とが対向するように配置されることにより、分離膜リーフは封筒状膜を形成する。封筒状膜は、向かい合う透過側の面が対向するように配置された2枚1組(例えば、図1に示すような分離膜2bと2cからなるもの)の分離膜である。封筒状膜は長方形状であり、透過水が集水管に流れるように、透過側の面の間が分離膜の長方形状において、巻回方向内側の一辺のみにおいて開放され、他の三辺においては封止される。透過水は、この封筒状膜によって原水から隔離される。
封止としては、接着剤またはホットメルトなどにより接着されている形態、加熱またはレーザなどにより融着されている形態、およびゴム製シートが挟みこまれている形態が挙げられる。接着による封止は、最も簡便で効果が高いために特に好ましく用いられる。
また、分離膜の供給側の面において、巻回方向における内側端部は、折りたたみまたは封止により閉じられている。分離膜の供給側の面が、折り畳まれているのではなく封止されていることにより、分離膜の端部における撓みが発生しにくい。折り目近傍での撓みの発生が抑制されることにより、巻囲したときに分離膜間での空隙の発生およびこの空隙によるリークの発生が抑制される。
このようしてリークの発生が抑制されることにより、封筒状膜の回収率が向上する。封筒状膜の回収率は、次のように求められる。すなわち、水中で分離膜エレメントのエアリークテスト(air leak test)を行って、リークが発生した封筒状膜数をカウントする。そのカウント結果に基づいて、(エアリークが発生した封筒状膜の数/評価に供した封筒状膜の数)の比率を、封筒状膜の回収率として算出する。
具体的なエアリークテストの方法は、次のとおりである。分離膜エレメントの中心パイプの端部を封止し、もう一方の端部から空気を注入する。注入された空気は、集水管の孔を通過して分離膜の透過側に到達するが、上記のように分離膜の折りたたみが不十分で折り目近傍で撓みが生じたりして空隙が存在すると、空気がその空隙を移動してしまう。その結果、分離膜の供給側へ空気が移動し、分離膜エレメントの端部(供給側)から水中に空気が到達する。このようにして、エアリークを気泡の発生として確認することができる。
折り畳みによって分離膜リーフを形成する場合、リーフが長いほど(すなわち、元の分離膜が長いほど)分離膜の折りたたみに要する時間は長い。しかしながら、分離膜の供給側の面を、折り畳みでなく封止することで、リーフが長くても製造時間の増大を抑制することができる。
分離膜リーフおよび封筒状膜において、互いに対向する分離膜(図1における分離膜2bおよび2c)は、同じ構成を備えてもよく、異なる構成を備えることもできる。すなわち、分離膜エレメントにおいて、向かい合う2枚の透過側の面のうち、少なくとも一方に上述の透過側流路材が設けられていればよいので、透過側流路材を備える分離膜と、透過側流路材を備えない分離膜とが交互に重ねられた構成とすることができる。ただし、説明の便宜上、分離膜エレメントおよびそれに関係する説明においては、「分離膜」は、透過側流路材を備えない分離膜(例えば、分離膜と同じ構成を備える膜)を含む。
透過側の面において、または供給側の面において、互いに対向する分離膜は、2枚の異なる分離膜であってもよく、1枚の膜が折りたたまれた構成とすることもできる。
(3−3)透過側流路
上述したように、透過側流路材は隣り合う2枚の膜の透過側の面の間に配置される。突起物301によって、封筒状膜の内側、すなわち向かい合う分離膜の透過側の面の間には、透過側流路が形成される。
(3−4)供給側流路
(流路材)
分離膜エレメント100は、向かい合う分離膜の供給側の面の間に、分離膜2に対する投影面積比が0を超えて1未満となる流路材を備える(図示せず)。供給側流路材の投影面積比は0.03以上0.50以下であることが好ましく、より好ましくは0.10以上0.40以下であり、特に好ましくは0.15以上0.35以下である。投影面積比を0.03以上0.50以下とすることにより、流動抵抗が比較的小さく抑えられる。投影面積比とは、分離膜と供給側流路材を5cm×5cmで切り出し、供給側流路材を分離膜の面方向に平行な平面に投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値である。
供給側流路材の高さは、後述するように、各性能のバランスや運転コストを考慮すると0.5mmを超えて2.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mm以上1.0mm以下である。
供給側流路材の形状は、連続形状を有していてもよく、不連続な形状を有することができる。連続形状を有する流路材としては、フィルムおよびネットのような部材が挙げられる。ここで、連続形状とは、実質的に流路材の全範囲において連続であることを意味する。連続形状には、造水量が低下するなどの不具合が生じない程度に、流路材の一部が不連続となる箇所が含まれていてもよい。また、「不連続」の定義については、透過側の流路材について説明したとおりである。供給側流路材の材料は、分離膜と同素材であっても異素材であってもよい。
(凹凸加工)
また、分離膜の供給側の面に供給側流路材を配置するに代わりに、エンボス成形、水圧成形およびカレンダ加工のような方法で分離膜の供給側に高低差を付与することができる。
エンボス成形法としては、例えば、ロールエンボス加工などが挙げられる。これを実施する際の圧力や処理温度は、分離膜の融点に応じて適宜決定することができる。例えば、分離膜がエポキシ樹脂を含む多孔性支持層を有する場合では、線圧は10kg/cm以上60kg/cm以下であることが好ましく、加熱温度は40℃以上150℃以下であることが好ましい。また、ポリスルホン等の耐熱性樹脂を含む多孔性支持層を有する場合、線圧は10kg/cm以上70kg/cm以下であることが好ましく、ロール加熱温度は70℃以上160℃以下であることが好ましい。ロールエンボス加工ならば、いずれの場合も巻き取り速度を1m/分以上20m/分以下にすることが好ましい。
エンボス加工を施す場合、ロールの柄の形状は、流路の流動抵抗を少なくし、かつ分離膜エレメントに流体を供給、透過させた際の流路を安定化させるように構成することが重要である。これらの点で、表面上部から観察した形では、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、および不定形があり、立体的には表面上部からの形をそのまま表面方向に賦形したもの、広がる形で賦形したもの、狭める形で賦形したものが用いられる。
エンボス加工によって付与することができる分離膜の供給側表面の高低差は、分離特性や水透過性能が要求される条件を満足するように加圧熱処理条件を変更することにより自由に調整することができる。しかしながら、分離膜の供給側表面の高低差が深すぎると流動抵抗が小さくなるが、エレメント化した場合にベッセルに充填できる膜リーフ数が少なくなる。高低差が小さいと流路の流動抵抗が大きくなり、分離特性や水透過性能が低下してしまう。そのため、エレメントの造水能力が低下し、造水量を増加させるための運転コストが高くなる。
従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、分離膜においては、分離膜の供給側表面の高低差は、好ましくは0.5mmを超えて2.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.6mm以上1.0mm以下である。分離膜の供給側表面の高低差は、上述した分離膜透過側の高低差の場合と同手法で求めることができる。
溝幅は、好ましくは0.2mm以上10mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上3mm以下である。ピッチは、溝幅の10分の1倍以上50倍以下の間で適宜設計することが好ましい。溝幅とは、高低差が存在する表面で沈下している部位のことであり、ピッチとは、高低差が存在する表面における高い箇所の最も高いところから近接する高い箇所の最も高い箇所までの水平距離のことである。
エンボス加工によって凸となる部分の投影面積比は、供給側流路材の場合と同様の理由から、0.03以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.10以上0.40以下であり、さらに好ましくは、0.15以上0.35以下である。
分離膜の面における「高低差」とは、分離膜本体の表面と流路材の頂点との高低差(つまり流路材の高さ)であり、分離膜本体が凹凸加工されている場合は、凹部と凸部との高低差である。
(3−5)集水管
集水管6は、その中を透過水が流れるように構成されており、材質、形状および大きさ等は特に限定されない。集水管6としては、例えば、複数の孔が設けられた側面を有する円筒状の部材が用いられる。
〔4.分離膜エレメントの製造方法〕
分離膜エレメントの製造方法は、分離膜を製造する工程を含む。また、分離膜を製造する工程は、少なくとも次の工程を含む。
・基材および分離機能層を有する分離膜本体を準備する工程、
・上記の分離膜本体とは異なる組成を有する材料を、熱によって軟化する工程、
・軟化した前記の材料を、上記の分離膜本体の基材側の面に配置することにより、透過側流路材を形成する工程、および
・上記の材料を固化することにより、上記の分離膜本体上に上記の透過側流路材を固着させる工程。
分離膜エレメントの製造方法における各工程について、次に説明する。
(4−1)分離膜の製造
分離膜の製造方法については上述したが、簡単にまとめると次のとおりである。
良溶媒に樹脂を溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストして純水中に浸漬して多孔性支持層と基材を複合させる。その後、上述したように、多孔性支持層上に分離機能層を形成する。さらに、必要に応じて分離性能と透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリおよび亜硝酸などの化学処理を施し、さらにモノマー等を洗浄し分離膜の連続シートを作製する。
化学処理の前または後で、エンボス等によって分離膜本体に凹凸を形成することもできる。
(4−2)透過側流路材の配置
分離膜の製造方法は、分離膜の透過側の面に、不連続な流路材を設ける工程を備える。この工程は、分離膜製造のどの時点でも行うことができる。例えば、流路材は、基材上に多孔性支持層が形成される前に設けられてもよく、多孔性支持層が設けられた後であって分離機能層が形成される前に設けられてもよく、および分離機能層が形成された後、上述の化学処理が施される前または後に行われることが含まれる。
流路材を配置する方法は、例えば、柔らかな材料を分離膜上に配置する工程と、それを硬化する工程とを備える。具体的には、流路材の配置には、紫外線硬化樹脂、化学重合、ホットメルトおよび乾燥等が利用される。特に、ホットメルトは好ましく用いられ、具体的には、熱により樹脂等の材料を軟化する(すなわち、熱溶融する)工程、軟化した材料を分離膜上に配置する工程、およびこの材料を冷却により硬化することで分離膜上に固着させる工程を含む。
流路材を配置する方法としては、例えば、塗布、印刷および噴霧等が挙げられる。また、使用される機材としては、ノズル型のホットメルトアプリケーター、スプレー型のホットメルトアプリケーター、フラットノズル型のホットメルトアプリケーター、ロール型コーター、押出型コーター、印刷機、および噴霧器等が挙げられる。
(4−3)供給側流路の形成
供給側流路材が、分離膜と異なる材料で形成された不連続な部材である場合、供給側流路材の形成には、透過側流路材の形成と同じ方法およびタイミングを適用することができる。
また、エンボス成形、水圧成形およびカレンダ加工等の方法で、分離膜の供給側に高低差を付与することもできる。エンボス成形法としては、例えば、ロールエンボス加工法等が挙げられ、これを実施する際の圧力や処理温度は、分離膜の融点に応じて適宜決定することができる。
例えば、分離膜がエポキシ樹脂を含む多孔性支持層を有する場合では、線圧は10kg/cm以上60kg/cm以下であることが好ましく、また加熱温度は40℃以上150℃以下であることが好ましい。また、ポリスルホン等の耐熱性樹脂を含む多孔性支持層を有する場合は、線圧は10kg/cm以上70kg/cm以下であることが好ましく、ロール加熱温度は70℃以上160℃以下であることが好ましい。ロールエンボス加工法ならば、いずれの場合も巻き取り速度は1m/分以上20m/分以下であることが好ましい。
エンボス加工を施す場合、ロールの柄の形状は、流路の圧力損失を少なくし、かつ分離膜エレメントに流体を供給、透過させた際の流路を安定化させることが重要である。これらの観点から、表面上部から観察した形では、楕円、円、長円、台形、三角形、長方形、正方形、平行四辺形、菱形、および不定形等が採用される。また、立体的には高さの高い箇所ほど幅が小さくなるように形成されていてもよく、逆に高い箇所ほど幅が広くなるように形成されていてもよく、また、高さによらず同じ幅で形成することもできる。
エンボス加工によって付与できる分離膜の供給側表面の高低差は、分離特性や水透過性能が要求される条件を満足するように加圧熱処理条件を変更することにより、自由に調整することができる。
以上に述べたように、供給側流路の形成が、供給側流路材を分離膜に固着することによって行われる場合、または膜を凹凸加工することによって行われる場合は、これら供給側流路の形成工程が分離膜の製造方法における一工程と見なすことができる。
供給側流路がネット等の連続的に形成された部材である場合は、分離膜本体に透過側流路材が配置されることによって分離膜が製造された後、この分離膜と供給側流路材とを重ね合わせることができる。
(4−4)分離膜リーフの形成
分離膜リーフは、上述したように、供給側の面が内側を向くように分離膜を折りたたむことで形成することされてもよく、別々の2枚の分離膜を、供給側の面が向かい合うように貼り合わせることにより形成することもできる。
分離膜エレメントの製造方法は、分離膜の巻回方向における内側端部を、供給側の面において封止する工程を備えることが好ましい。封止する工程においては、2枚の分離膜を、互いの供給側の面が向かい合うように重ねる。さらに、重ねられた分離膜の巻回方向における内側端部、すなわち図8(a)における左側端部を封止する。
「封止」する方法としては、接着剤またはホットメルトなどによる接着、加熱またはレーザなどによる融着、およびゴム製シートを挟みこむ方法が挙げられる。接着による封止は、最も簡便で効果が高いために特に好ましく用いられる。
このとき、重ねられた分離膜の内側に、分離膜とは別に形成された供給側流路材を配置することもできる。上述したように、エンボスまたは樹脂塗布等によって分離膜の供給側の面にあらかじめ高低差を設けることにより、供給側流路材の配置を省略することもできる。
供給側の面の封止と透過側の面の封止(封筒状膜の形成)とは、どちらかが先に行われてもよく、分離膜を重ねながら、供給側の面の封止と透過側の面の封止とを並行して行うこともできる。ただし、巻回時における分離膜でのシワの発生を抑制するためには、隣り合う分離膜が巻回によって長さ方向にずれることを許容するように、幅方向端部における接着剤またはホットメルトの固化等、すなわち封筒状膜を形成するための固化等を、巻回の終了後に完了させることが好ましい態様である。
(4−5)封筒状膜の形成
1枚の分離膜を透過側の面が内側を向くように折り畳んで貼り合わせることにより、または2枚の分離膜を透過側の面が内側を向くように重ねて貼り合わせることにより、封筒状膜を形成することができる。長方形状の封筒状膜においては、長さ方向の一端のみが開口するように、他の3辺を封止する。封止は、接着剤またはホットメルト等による接着や、熱またはレーザによる融着等により実行できる。
封筒状膜の形成に用いられる接着剤は、粘度が40P(Poise)以上150P以下の範囲内であることが好ましく、さらに50P以上120P以下の粘度の接着剤が好ましく用いられる。接着剤の粘度が高すぎる場合には、積層したリーフを集水管に巻囲するときに、しわが発生し易くなる。しわは、分離膜エレメントの性能を損なうことがある。逆に、接着剤の粘度が低すぎる場合には、リーフの端部から接着剤が流出して装置を汚すことがある。また、接着すべき部分以外に接着剤が付着すると、分離膜エレメントの性能が損なわれると共に、流出した接着剤の処理作業により作業効率が著しく低下する。
接着剤の塗布量は、リーフを集水管に巻囲した後に、接着剤が塗布される部分の幅が10mm以上100mm以下であるような量であることが好ましい。これによって、分離膜が確実に接着されるので、原水の透過側への流入が抑制され、また、分離膜エレメントの有効膜面積も比較的大きく確保することができる。
接着剤としては、ウレタン系接着剤が好まし用いられる。ウレタン系接着剤の粘度を40P以上150P以下の範囲とするには、好ましくは、主剤のイソシアネートと硬化剤のポリオールとを、イソシアネート/ポリオールの質量比率が1/5以上1以下となるように混合することにより達成される。接着剤の粘度は、予め主剤、硬化剤単体および配合割合を規定した混合物の粘度を、B型粘度計(ISO15605:2000)で測定することができる。
(4−6)分離膜の巻回
分離膜エレメントの製造には、従来のエレメント製作装置を用いることができる。また、エレメント作製方法としては、参考文献(日本国特公昭44−14216号公報、日本国特公平4−11928号公報、および日本国特開平11−226366号公報)に記載されている方法を用いることができる。詳細には、次のとおりである。
集水管の周囲に分離膜を巻回するときは、分離膜を、リーフの閉じられた端部、すなわち封筒状膜の閉口部分が集水管を向くように配置する。このような配置で集水管の周囲に分離膜を巻きつけることにより、分離膜をスパイラル状に巻回する。
集水管にトリコットや基材のようなスペーサーを巻回しておくと、エレメント巻囲時に集水管へ塗布した接着剤が流動し難く、リークの抑制につながり、さらには集水管周辺の流路が安定に確保される。スペーサーは、集水管の円周より長く巻回しておくことが好ましい。
(4−7)その他の工程
分離膜エレメントの製造方法においては、上述のように形成された分離膜の巻回体の外側に、フィルムおよびフィラメント等をさらに巻きつけることを含んでいてもよく、集水管の長手方向における分離膜の端を切りそろえるエッジカット、端板の取り付け等のさらなる工程を含むことができる。
〔5.分離膜エレメントの利用〕
分離膜エレメントは、さらに、直列または並列に接続して圧力容器に収納されることにより、分離膜モジュールとして使用される。
また、上記の分離膜エレメント、および分離膜モジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この流体分離装置を用いることにより、例えば、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、分離膜エレメントの供給流路と透過流路の保持性を考慮すると、分離膜モジュールに被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上10MPa以下であることが好ましい。原水温度が高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、原水温度は5℃以上45℃以下であることが好ましい。また、原水のpHが中性領域にある場合、原水が海水などの高塩濃度の液体であっても、マグネシウムなどのスケールの発生が抑制され、また、膜の劣化も抑制される。
分離膜エレメントによって処理される流体は、水処理に使用する場合、原水としては、海水、かん水、および排水等の500mg/L以上100g/L以下のTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」で表されるが、1Lを1kgと見なして「質量比」で表されることもある。定義によれば、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を39.5℃以上40.5℃以下の温度で蒸発させ残留物の質量から算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
次に、実施例によって本発明の分離膜エレメントについてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(突起物高さ)
株式会社キーエンス製高精度形状測定システム「KS−1100」(商品名)を用い、10μm以上の高低差のある100箇所を測定した。
突起物高さの変動係数は、同一平面内100箇所の透過側流路材について突起物高さを測定し、その平均値と標準偏差を算出して、標準偏差/平均値とした値を突起物高さの変動係数とした。
(巻回体の安定性)
透過側流路材が固着した分離膜を巻出張力50N、巻取張力50Nで100m巻き取り、室温で100日間保管した。その後、分離膜を巻き出し、透過側流路材の対向する分離膜の透過側流路材の高さ変化を測定した。
透過側流路材の高さ変化=巻取り後保管後巻き出した分離膜の透過側流路材平均高さ/巻取り前の分離膜の透過側流路材平均高さ
(突起物の剥離性)
性能評価した分離膜エレメントについて、分離膜を巻き出し、透過側流路材の分離膜からの剥離を確認した。透過側流路材を株式会社キーエンス製マイクロスコープ「VHX−1000」(商品名)を用いて100点観察し、透過側流路材が分離膜から0.1mm以上剥離している箇所の数を測定した。
(シートの引張強度および引張伸度)
ISO9073−3:1989に基づいて、5cm×30cmのサンプルについて、テンシロン万能材料試験器「RTF−2430」(商品名、エー・アンド・デイ社製)を用いて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で、縦方向および横方向それぞれ5点の測定を実施し、得られた強伸度曲線から読み取り、少数点以下第1位を四捨五入した値とした。
(突起物の含浸率)
透過側流路材を突起物と共に深さ方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡「S−800」(商品名、株式会社日立製作所製)を用いて30個の任意の含浸部を100倍で写真撮影した。撮影された写真において最大含浸厚さ及びシート厚さを測定し、含浸率を、
含浸率(%)=(シート中の突起物の最大含浸厚さ/シート厚さ)×100
の式に基づいて算出した上で、1個の含浸部当たりの平均値を求めた。以下、得られた平均値を「含浸率」と表記する。
(シートの厚さ)
株式会社キーエンス製高精度形状測定システム「KS−1100」(商品名)を用い、5cm×5cmの透過側の測定結果から平均の高低差を解析した。10μm以上の高低差のある40箇所を測定し、各高さの値を総和した値を測定総箇所の数で割って求めた。
(発停試験)
作製した分離膜エレメントについて、温度25℃、pH6.5に調整した海水(TDS濃度約3.5%、ホウ素濃度約5ppm)を、操作圧力6.5MPaで1分間×2000回通水した。
(造水量)
発停試験を実施した分離膜エレメントについて、温度25℃、pH6.5に調整した海水(TDS濃度約3.5%、ホウ素濃度約5ppm)を、操作圧力5.5MPaで供給して膜ろ過処理を24時間行なった後に30分間のサンプリングを行い、1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。
(脱塩率(TDS除去率))
造水量の測定における10分間の運転で用いた原水およびサンプリングした透過水について、TDS濃度を伝導率測定により求め、下記式からTDS除去率を算出した。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}
(膜落ち込み量)
発停試験を実施した分離膜エレメントを、分離膜リーフ膜面に垂直かつ幅方向に平行な面に切断し、株式会社キーエンス社製マイクロスコープ「VHX−1000」(商品名)を用いて断面観察を行った。図7に示されるように、膜落ち込み深さj(μm)は隣接する突起物間における分離膜z方向位置の最大距離jを示す。分離膜303A1側の落ち込み深さと分離膜303B1側の落ち込み深さをそれぞれ50箇所について測定し、各値を総和した値を測定数で割って平均値を求めた。また、分離膜303A1と303B1の間の距離lについて100箇所について測定し、各値を総和した値を測定数で割って、次式で平均値を求めた。
膜落ち込み量(%)=膜落ち込み深さj(μm)/透過側の面間の距離l(μm)×100
(実施例1)
不織布(ポリエチレンテレフタレート、単繊維繊度:1デシテックス、厚さ:約0.08mm、目付1.0g/cm)上に、ポリスルホンの16.0質量%のDMF溶液を200μmの厚さで室温(25℃)においてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置し、80℃の温水で1分間浸漬することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる、厚さ0.12mmの多孔性支持層を作製した。
その後、上記のようにして作成された多孔性支持層ロールを巻き出し、ポリスルホン表面に、m−PDAの6.0質量%を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付けて支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.165質量%を含む25℃の温度のn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布し、分離膜を作成した。このように得られた分離膜を、分離膜エレメントでの有効面積が37.0mとなるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚さ:0.78mm、ピッチ:5mm×5mm、繊維径:0.39mm、投影面積比:0.12)を供給側流路材として、幅が900mmで、かつリーフ長が800mmの分離膜リーフを作製した。
一方で、突起物を、シート(ポリエチレンテレフタレート不織布、単繊維繊度:1デシテックス、厚さ:約30μm、通気度:2.5ml/cm/s)全体に渡って形成した。すなわち、バックアップロールを15℃に温度調節しながら、円周方向に溝高さの異なるグラビアロールを用いて、ポリプロピレン(温度230℃、荷重2.16kgf/cmでのMFR1000g/10分)75質量%と低結晶性α−オレフィン系ポリマー(出光興産株式会社製;低立体規則性ポリプロピレン「L−MODU・S400」(商品名))25質量%からなる樹脂組成物を、シートに塗布して、突起物が固着されたシートを作製した。樹脂温度は200℃であり、加工速度は5.0m/分であった。
グラビアロールの表面に彫刻されたパターンは、シートの長さ方向に連続した直線状であり、得られた突起物の形状は、流路材幅が0.4mmであり、隣接する流路材の間隔が0.4mmであり、ピッチが0.8mmであった。ここで、ピッチとは、透過側の面において、200箇所で計測された、分離膜の凸部の頂点から近接する凸部の頂点までの水平距離の平均値である。得られた突起物高さの最大値、最小値、最大値/最小値、変動係数を表1に示す。また、透過側流路材を構成するシートの縦方向および横方向の引張強度、引張伸度、突起物が固着したシートの縦方向の引張強度、を表1に示す。透過側流路材の高さ変化、透過側流路材剥離性、を評価したところ表2に示す値であった。
得られたリーフの透過側の面に、突起物が固着されたシートを積層し、ABS製集水管(幅:1,020mm、径:30mm、孔数40個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、外周にさらにフィルムを巻き付けた。テープで固定した後に、エッジカット、端板の取り付けおよびフィラメントワインディングを行うことにより、8インチの分離膜エレメントを作製した。得られた分離膜エレメントを圧力容器に入れて、発停試験を実施し、造水量、TDS除去率および膜落ち込み量を測定したところ、表2に示す値であった。
以下、特に言及しない条件については、実施例1と同様にして分離膜を作製した。
(実施例2〜7)
得られた突起物高さの最大値、最小値、最大値/最小値、変動係数、突起物が固着したシートの縦方向の引張強度、を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして分離膜を作製した。透過側流路材の高さ変化、透過側流路材剥離性、を評価したところ表2に示す値であった。また、8インチの分離膜エレメントの発停試験を実施し、造水量、TDS除去率および膜落ち込み量を測定したところ、表2に示す値であった。
(実施例8〜15)
得られた突起物高さの最大値、最小値、最大値/最小値、変動係数を表1に示す値に変更した。また、透過側流路材を構成するシートの厚さおよび通気度、縦方向および横方向の引張強度、引張伸度、突起物が固着したシートの縦方向の引張強度、を表1に示す値に変更した。透過側流路材の高さ変化、透過側流路材剥離性、を評価したところ表2に示す値であった。
得られたリーフの透過側の面に、突起物が固着されたシートと突起物が固着していないシートを積層し、ABS製集水管(幅:1,020mm、径:30mm、孔数40個×直線状1列)にスパイラル状に巻き付け、外周にさらにフィルムを巻き付けた。テープで固定した後に、エッジカット、端板の取り付けおよびフィラメントワインディングを行うことにより、8インチの分離膜エレメントを作製した。得られた分離膜エレメントを圧力容器に入れて、発停試験を実施し、造水量、TDS除去率および膜落ち込み量を測定したところ、表2に示す値であった。
Figure 0006485044
Figure 0006485044
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2013年10月31日出願の日本特許出願(特願2013−226340)、2013年12月26日出願の日本特許出願(特願2013−268548)および2014年6月26日出願の日本特許出願(特願2014−131409)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
100 分離膜エレメント
2 分離膜
2a 第1の分離膜
2b 第2の分離膜
2c 第3の分離膜
21 供給側の面
21a,21b,21c 供給側の面
22 透過側の面
22a,22b,22c 透過側の面
201 基材
202 多孔性支持層
203 分離機能層
31 透過側流路材
301 突起物
302 シート
D1 突起物のシートへの最大含浸厚さ
D2 シート厚さ
303A1 分離膜
303A2 分離膜(発停試験後)
303B1 分離膜
4 分離膜リーフ
5 透過側流路
6 集水管
7 分離膜
R2 分離膜において巻回方向内側から外側に並んだ透過側流路材の先頭から最後尾までを含む領域
R3 分離膜の巻回方向外側端部において透過側流路材が設けられていない領域
L1 分離膜全体の長さ(上記長さa)
L2 領域R2の長さ
L3 領域R3の長さ

Claims (6)

  1. 集水管と、複数枚重ねられて前記集水管の周囲に巻囲された分離膜リーフとを有する分離膜エレメントであって、
    前記分離膜リーフは、供給側の面および透過側の面を備えた分離膜を前記供給側の面を対向させて構成され、
    重なり合う前記分離膜リーフの前記透過側の面の間に、複数の突起物が固着されたシートを備え、
    前記複数の突起物は前記シートに含浸しており、前記突起物高さについて、最大高さと最小高さの比が1.10以上1.50以下、変動係数が0.02以上0.15以下であり、かつ前記突起物の前記シートへの含浸率が10%以上100%以下である分離膜エレメント。
  2. 前記突起物が固着されたシートの長さ方向への引張強度が50N/5cm以上800N/5cm以下である請求項1に記載の分離膜エレメント。
  3. 重なり合う前記分離膜リーフの透過側の面の間に複数のシートを有し、前記シートの少なくとも一枚に前記複数の突起物が固着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分離膜エレメント。
  4. 前記突起物は、前記シートに固着している側の下底長さが、上底長さよりも大きく、前記シートの前記複数の突起物を備えていない面と前記分離膜リーフの透過側の面とが接触するように配置された請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の分離膜エレメント。
  5. 前記シートの長さ方向への引張強度が40N/5cm以上600N/5cm以下、幅方向への引張強度が15N/5cm以上500N/5cm以下であり、かつ前記シートの長さ方向への引張伸度が5%以上50%以下、幅方向への引張伸度が3%以上40%以下である請求項1に記載の分離膜エレメント。
  6. 前記シートの幅方向への引張強度が15N/5cm以上500N/5cm以下であり、かつ前記シートの長さ方向への引張伸度が5%以上50%以下、幅方向への引張伸度が3%以上40%以下である請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の分離膜エレメント。
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