実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、画像形成出力による出力結果を正反射光により読み取った正反射光読取画像について、同じく正反射光による読み取り結果の基準となる画像との比較により光沢の変化を検査する検査装置を含む画像検査システムにおいて、元の画像の明るさに応じた光沢変化の視覚への影響を考慮するための機能について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システムは、DFE(Digital Front End)1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3、検査装置4及びインタフェース端末5を含む。DFE1は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷出力するべき画像データ、即ち出力対象画像であるビットマップデータを生成し、生成したビットマップデータをエンジンコントローラ2に出力する画像処理装置である。
エンジンコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータに基づいてプリントエンジン3を制御して画像形成出力を実行させる。また、エンジンコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータを、プリントエンジン3による画像形成出力の結果を検査装置4が検査する際に参照するための検査用画像の元となる情報として検査装置4に送信する。
プリントエンジン3は、エンジンコントローラ2の制御に従い、ビットマップデータに基づいて記録媒体である用紙に対して画像形成出力を実行する画像形成装置である。尚、記録媒体としては、上述した用紙の他、フィルム、プラスチック等のシート状の材料で、画像形成出力の対象物となるものであれば採用可能である。
検査装置4は、エンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータに基づいてマスター画像を生成する。そして、検査装置4は、プリントエンジン3が出力した用紙を読取装置で読み取って生成した読取画像を上記生成したマスター画像と比較することにより、出力結果の検査を行う画像検査装置である。検査装置4は、出力結果に欠陥があると判断した場合、欠陥として判定されたページを示す情報をエンジンコントローラ2に通知する。これにより、エンジンコントローラ2によって欠陥ページの再印刷制御が実行される。
また、本実施形態に係る検査装置4は、プリントエンジン3が出力した用紙を正反射光で読み取った正反射読取画像に基づき、用紙上に形成された画像の部分に応じた光沢の変化を対象として検査を行う。この際に、マスター画像に基づいて元の画像の明るさを考慮した検査を行うことが本実施形態に係る要旨の1つである。
インタフェース端末5は、検査装置4による欠陥判定結果を確認するためのGUI(Graphical User Interface)や、検査におけるパラメータを設定するためのGUIを表示するための情報処理端末であり、PC(Personal Computer)等の一般的な情報処理端末によって実現される。
ここで、本実施形態に係るDFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3、検査装置4及びインタフェース端末5を構成するハードウェアについて、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る検査装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。図2においては、検査装置4のハードウェア構成を示すが、他の装置についても同様である。
図2に示すように、本実施形態に係る検査装置4は、一般的なPC(Personal Computer)やサーバ等の情報処理装置と同様の構成を有する。即ち、本実施形態に係る検査装置4は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス90を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60、操作部70及び専用デバイス80が接続されている。
CPU10は演算手段であり、検査装置4全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。
I/F50は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザが検査装置4の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザが検査装置4に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
専用デバイス80は、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4において、専用の機能を実現するためのハードウェアであり、プリントエンジン3の場合は、画像形成出力対象の用紙を搬送する搬送機構や、紙面上に画像形成出力を実行するプロッタ装置である。また、エンジンコントローラ2、検査装置4の場合は、高速に画像処理を行うための専用の演算装置である。このような演算装置は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成される。また、紙面上に出力された画像を読み取る読取装置も、専用デバイス80によって実現される。
このようなハードウェア構成において、ROM30に格納されているプログラムや、HDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体からRAM20に読み出されたプログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るDFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3、検査装置4及びインタフェース端末5の機能を実現する機能ブロックが構成される。
図3は、本実施形態に係るDFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能構成を示すブロック図である。図3においては、データの送受信を実線で、用紙の流れを破線で示している。図3に示すように、本実施形態に係るDFE1は、ジョブ情報処理部101及びRIP処理部102を含む。また、エンジンコントローラ2は、データ取得部201、エンジン制御部202、ビットマップ送信部203を含む。また、プリントエンジン3は、印刷処理部301を含む。また、検査装置4は、読取装置400、読取画像取得部401、マスター画像処理部402、検査制御部403及び比較検査部404を含む。
ジョブ情報処理部101は、DFE1外部からネットワークを介して入力される印刷ジョブや、オペレータの操作によりDFE1内部に格納された画像データに基づいて生成される印刷ジョブに基づき、画像形成出力の実行を制御する。画像形成出力の実行に際して、ジョブ情報処理部101は、印刷ジョブに含まれる画像データに基づき、RIP処理部102にビットマップデータを生成させる。
RIP処理部102は、ジョブ情報処理部101の制御に従い、印刷ジョブに含まれる画像データに基づいてプリントエンジン3が画像形成出力を実行するためのビットマップデータを生成する。ビットマップデータは、画像形成出力するべき画像を構成する各画素の情報である。
本実施形態に係るプリントエンジン3は、CMYK(Cyan,Magenta,Yellow,blacK)各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する。これに対して、一般的に、印刷ジョブに含まれる画像のデータは、一画素が256階調等の多階調で表現された多値画像である。そのため、RIP処理部102は、印刷ジョブに含まれる画像データを多値画像から少値画像に変換して、CMYK各色二値のビットマップデータを生成し、エンジンコントローラ2に送信する。
データ取得部201は、DFE1から入力されるビットマップデータを取得し、エンジン制御部202及びビットマップ送信部203夫々を動作させる。エンジン制御部202は、データ取得部201から転送されたビットマップデータに基づき、プリントエンジン3に画像形成出力を実行させる。ビットマップ送信部203は、データ取得部201が取得したビットマップデータを、マスター画像生成の為に検査装置4に送信する。
印刷処理部301は、エンジンコントローラ2から入力されるビットマップデータを取得し、印刷用紙に対して画像形成出力を実行し、印刷済みの用紙を出力する画像形成部である。本実施形態に係る印刷処理部301は、電子写真方式の一般的な画像形成機構によって実現されるが、インクジェット方式等の他の画像形成機構を用いることも可能である。
読取装置400は、印刷処理部301によって印刷が実行されて出力された印刷用紙の紙面上に形成された画像を読み取り、読取画像を出力する画像読取部である。読取装置400は、例えば印刷処理部301によって出力された印刷用紙の、検査装置4内部における搬送経路に設置されたラインスキャナであり、搬送される印刷用紙の紙面上を走査することによって紙面上に形成された画像を読み取る。
読取装置400によって生成された読取画像が検査装置4による検査の対象となる。読取画像は、画像形成出力によって出力された用紙の紙面を読み取って生成された画像であるため、出力結果を示す画像となる。また、本実施形態に係る読取装置400は、印刷用紙の紙面上に照射された光の正反射光を受光して正反射光による読み取りデータである正反射読取画像を生成する機能を有する。
読取画像取得部401は、印刷用紙の紙面が読取装置400によって読み取られて生成された読取画像の情報を取得する。読取画像取得部401が取得した読取画像の情報は、比較検査のために比較検査部404に入力される。尚、比較検査部404への読取画像の入力は検査制御部403の制御によって実行される。その際、検査制御部403が読取画像を取得してから比較検査部404に入力する。
マスター画像処理部402は、上述したようにエンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータを取得し、上記検査対象の画像と比較するための検査用画像であるマスター画像を生成する。即ち、マスター画像処理部402が、読取画像の検査を行うための検査用画像であるマスター画像を出力対象画像に基づいて生成する検査用画像生成部として機能する。マスター画像処理部402によるマスター画像の生成処理については後に詳述する。
検査制御部403は、検査装置4全体の動作を制御する制御部であり、検査装置4に含まれる各構成は検査制御部403の制御に従って動作する。比較検査部404は、読取画像取得部401から入力される読取画像とマスター画像処理部402が生成したマスター画像とを比較し、意図した通りの画像形成出力が実行されているか否かを判断する。比較検査部404は、膨大な計算量を迅速に処理するために上述したASICによって構成される。
比較検査部404においては、上述したようにRGB各色8bitで表現された300dpiの読取画像及びマスター画像を対応する画素毎に比較し、夫々の画素毎に上述したRGB各色8bitの画素値の差分値を算出する。そのようにして算出した差分値と閾値との大小関係に基づき、検査制御部403は、読取画像における欠陥の有無を判断する。即ち、検査制御部403が検査装置4に含まれる各部を制御することにより画像検査部として機能する。
尚、読取画像とマスター画像との比較に際して、比較検査部404は、図4に示すように、所定範囲毎に分割されたマスター画像を、分割された範囲に対応する読取画像に重ね合わせて各画素の画素値、即ち濃度の差分算出を行う。このような処理は、検査制御部403が、重ね合わせる範囲の画像をマスター画像及び読取画像夫々から取得し、比較検査部404に入力することによって実現される。
更に、検査制御部403は、分割された範囲を読取画像に重ね合わせる位置を縦横にずらしながら、即ち、読取画像から取得する画像の範囲を縦横にずらしながら、算出される差分値の合計値が最も小さくなる位置を正確な重ね合わせの位置として決定すると共に、その際に算出された各画素の差分値を比較結果として採用する。そのため、比較検査部404は、各画素の差分値と共に、位置合わせの位置として決定した際の縦横のずれ量を出力することが可能である。
図4に示すように方眼上に区切られている夫々のマスが、上述した各画素の差分値を合計する所定範囲である。また、図4に示す夫々の分割範囲のサイズは、例えば、上述したようにASICによって構成される比較検査部404が一度に画素値の比較を行うことが可能な範囲に基づいて決定される。
このような処理により、読取画像とマスター画像とが位置合わせされた上で差分値が算出される。このように算出された差分値が所定の閾値と比較されることにより、画像の欠陥が判定される。また、例えば、読取画像全体とマスター画像全体とで縮尺に差異があったとしても、図4に示すように範囲毎に分割して位置合わせを行うことにより、縮尺の際による影響を低減することが可能となる。
また、図4に示すように分割された夫々の範囲において、隣接する範囲の位置ずれ量は比較的近いことが予測される。従って、分割された夫々の範囲についての比較検査を行う際、隣接する領域の比較検査によって決定された位置ずれ量を中心として上述した縦横にずらしながらの計算を行うことにより、縦横にずらしながら計算を行う回数を少なくしても、正確な重ね合わせ位置による計算が実行される可能性が高く、全体として計算量を減らすことが出来る。
また、本実施形態に係る検査制御部403は、読取装置400によって生成された正反射読取画像に基づいて用紙上に形成された画像の部分に応じた光沢の変化を検知する機能を有する。この機能については後に詳述する。
次に、プリントエンジン3及び検査装置4の機械的な構成及び用紙の搬送経路について、図5を参照して説明する。図5に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン3に含まれる印刷処理部301は、無端状移動手段である搬送ベルト11に沿って各色の感光体ドラム12Y、12M、12C、12K(以降、総じて感光体ドラム12とする)が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ13から給紙される用紙(記録媒体の一例)に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト11に沿って、この搬送ベルト11の搬送方向の上流側から順に、感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kが配列されている。
各色の感光体ドラム12の表面においてトナーにより現像された各色の画像が、搬送ベルト11に重ね合わせられて転写されることによりフルカラーの画像が形成される。そのようにして搬送ベルト11上に形成されたフルカラー画像は、図中に破線で示す用紙の搬送経路と最も接近する位置において、転写ローラ14の機能により、経路上を搬送されてきた用紙の紙面上に転写される。
紙面上に画像が形成された用紙は更に搬送され、定着ローラ15にて画像を定着された後、検査装置4に搬送される。また、両面印刷の場合、片面上に画像が形成されて定着された用紙は反転パス16に搬送され、反転された上で再度転写ローラ14の転写位置に搬送される。
読取装置400は、検査装置4内部における用紙の搬送経路において、印刷処理部301から搬送された用紙の夫々の面を読み取り、読取画像を生成して検査装置4内部の情報処理装置によって構成される読取画像取得部401に出力する。また、読取装置400によって紙面が読み取られた用紙は検査装置4内部を更に搬送され、排紙トレイ410に排出される。尚、図5においては、検査装置4における用紙の搬送経路において、用紙の片面側にのみ読取装置400が設けられている場合を例としているが、用紙の両面の検査を可能とするため、用紙の両面側に夫々読取装置400を配置しても良い。
次に、本実施形態に係る読取装置400における正反射光の撮像機能について説明する。図6は、本実施形態に係る読取装置400における正反射光の撮像機能を示す図である。図6に示すように、本実施形態に係る読取装置400は、照明装置400a及び正反射撮像素子400bを含む。照明装置400aと正反射撮像素子400bとは、搬送経路を搬送される用紙の紙面を正反射条件で計測可能なように配置されている。
具体的に、本実施形態に係る照明装置400aの光軸と用紙の紙面に対して垂直な方向とが成す角度αが、正反射撮像素子400bの光軸と用紙の紙面に対して垂直な方向とが成す角度βと同一であると共に、図6に示す角度α及び角度βが同一の平面上に属する。正反射撮像素子400bによって正反射光が受光可能な状態であれば、図6に示す角度α、角度βに対する制約は特にないが、光軸と紙面とが成す角度が直角に近い程、全反射条件に近づくため、本実施形態に係る角度α、角度βは共に30°である。
次に、本実施形態に係るマスター画像処理部402の機能構成について説明する。図7は、マスター画像処理部402内部の構成を示すブロック図である。図7に示すように、マスター画像処理部402は、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422、色変換処理部423及び画像出力処理部424を含む。尚、本実施形態に係るマスター画像処理部402は、図2において説明した専用デバイス80、即ち、ASICとして構成されたハードウェアが、ソフトウェアの制御に従って動作することにより実現される。
少値多値変換処理部421は、有色/無色で表現された二値画像に対して少値/多値変換処理を実行して多値画像を生成する。本実施形態に係るビットマップデータは、プリントエンジン3に入力するための情報であり、プリントエンジンはCMYK(Cyan,Magenta,Yellow,blacK)各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する。これに対して検査対象の画像である読取画像は、基本三原色であるRGB(Red,Green,Blue)各色多階調の多値画像であるため、少値多値変換処理部421により先ず二値画像が多値画像に変換される。多値画像としては、例えばCMYK各8bitで表現された画像を用いることができる。
少値多値変換処理部421は、少値/多値変換処理として、8bit拡張処理、平滑化処理を行う。8bit拡張処理は、0/1の1bitであるデータを8bit化し、「0」は「0」のまま、「1」は「255」に変換する処理である。平滑処理は、8bit化されたデータに対して平滑化フィルタを適用し、画像を平滑化する処理である。
尚、本実施形態においては、プリントエンジン3がCMYK各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する場合を例とし、マスター画像処理部402に少値多値変換処理部421が含まれる場合を例とするが、これは一例である。即ち、プリントエンジン3が多値画像に基づいて画像形成出力を実行する場合は、少値多値変換処理部421は省略可能である。
また、プリントエンジン3が1bitではなく2bit等の少値の画像に基づいて画像形成出力を行う機能を有する場合もあり得る。その場合、8bit拡張処理の機能を変更することにより対応することができる。即ち、2bitの場合、階調値は0、1、2、3の4値である。従って、8bit拡張に際しては、「0」は「0」、「1」は「85」、「2」は「170」、「3」は「255」に変換する。
解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を、検査対象の画像である読取画像の解像度に合わせるように解像度変換を行う。本実施形態においては、読取装置400は300dpiの読取画像を生成するため、解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を300dpiに変換する。また、本実施形態に係る解像度変換処理部422は、解像度変換に際して、印刷処理部301によって出力される用紙の収縮等を考慮して予め定められた倍率に基づいて解像度変換後の画像のサイズを調整する。
色変換処理部423は、解像度変換処理部422によって解像度が変換された画像を取得して階調変換及び色表現形式の変換を行う。階調変換処理は、印刷処理部301によって紙面上に形成される画像の色調及び読取装置400によって読み取られて生成される画像の色調に、マスター画像の色調を合わせるための色調の変換処理である。
このような処理は、例えば、様々な階調色のカラーパッチを含む画像が印刷処理部301によって紙面上に形成され、その用紙を読み取って生成された読取画像における各カラーパッチの階調値と、夫々のカラーパッチを形成するための元の画像における階調値とが関連付けられた階調変換テーブルを用いて行われる。即ち、色変換処理部423は、このような階調変換テーブルに基づき、解像度変換処理部422が出力した画像の各色の階調値を変換する。
色表現形式の変換処理は、CMYK形式の画像をRGB形式の画像に変換する処理である。上述したように、本実施形態に係る読取画像はRGB形式の画像であるため、色変換処理部423は、階調変換処理のされたCMYK形式の画像をRGB形式に変換する。これにより、画素毎にRGB各色8bit(合計24bit)で表現された300dpiの多値画像が生成される。即ち、本実施形態においては、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422及び色変換処理部423が、検査用画像生成部として機能する。
画像出力処理部424は、色変換処理部423までの処理によって生成されたマスター画像を出力する。これにより、検査制御部403が、マスター画像処理部402からマスター画像を取得する。
このような構成において、本実施形態に係る要旨は、上述したように、検査制御部403による、正反射読取画像の検査にある。以下、本実施形態に係る検査制御部403の、正反射読取画像の検査機能について説明する。図8は、本実施形態に係る検査制御部403の正反射読取画像の検査機能の構成を示すブロック図である。また、図9は、本実施形態に係る検査制御部403による正反射読取画像の検査動作を示すフローチャートである。図8に示すように、本実施形態に係る検査制御部403は、情報入力部431、差分画像取得部432、明度情報生成部433、重み付け処理部434、閾値判定部435、評価値判断部436及びコントローラ通信部437を含む。
本実施形態に係る検査制御部403においては、図9に示すように、まず情報入力部431が、読取画像取得部401から基準正反射画像を取得する(S901)。ここで、基準正反射画像とは、印刷用紙が正反射光によって読み取られた正反射読取画像のうち、異常が発生していないことが確認されている画像である。
S901において、情報入力部431は、まず読取画像取得部401から検査対象の画像の正反射読取画像を取得して記憶媒体に記憶する。検査装置4のオペレータは、その際に読み取られた印刷用紙を目視により確認して欠陥が発生していないこと、特に、画像の部分に応じた光沢の変化が発生していないことを確認して、インタフェース端末5や検査装置4の操作部を介して確認の操作を行う。
この確認の操作により、情報入力部431は、記憶媒体に記憶した正反射読取画像を基準正反射画像として取得する。この他、検査対象の画像を複数枚連続して出力させて夫々の正反射読取画像を取得し、夫々の正反射読取画像を平均化したデータを基準正反射画像として取得しても良い。この平均化処理において用いる正反射読取画像の枚数は、例えば10枚である。
尚、本実施形態に係る読取画像取得部401は、読取装置400において黒ガラス版等の基準となるサンプルを計測した基準計測結果を予め記憶しており、読取装置400から入力される正反射読取画像を構成する各画素の値を基準計測結果で除算することにより規格化する。従って、情報入力部431は、S901において、規格化された基準正反射画像を取得する。
次に、明度情報生成部433が、検査対象の画像のマスター画像をマスター画像処理部402から取得し、取得したマスター画像に基づいて明度情報を生成する(S902)。上述したように、マスター画像処理部402においては、RGB各色8bitで表現された300dpiの画像がマスター画像として生成される。本実施形態に係る明度情報生成部433は、RGBのGの値を各画素の値とする。
G、即ち三原色の緑の成分の波長帯域は、人間が視覚によって明るさを感じる分光感度と近い性質を有している。そのため、画像を構成する画素の値のうちGの値を用いることにより、簡易な処理によって画像の明度を示す明度情報を生成することが出来る。
また、明度情報生成部433は、上述したようにGの値によって取得した各画素の値を規格化する。上述したように、本実施形態に係る各画素の値は8bitであるため、明度情報生成部433は、上記Gの値を255で除算することにより最大値が1になるように規格化する。尚、仮に各画素の値が16bitである場合には、65535で除算する。
このような処理により、明度情報生成部433が明度情報L(x,y)を取得する。この“x”、“y”は夫々画素位置の座標を示し、“x”が水平方向、即ち主走査方向の位置、“y”は垂直方向、即ち副走査方向の位置を示す。S901の処理とS902の処理とは前後関係に制約はないため、逆の順序で実行されても良いし並列して実行されても良い。
尚、本実施形態においては、上述したようにRGBのGの値を用いることにより明度情報の取得処理を簡略化するが、この他、L*a*b*表色系のL*の値を明度の情報として用いることも可能である。その場合、明度情報生成部433が、RGB形式であるマスター画像に基づいてL*a*b*表色系の画像を生成する。RGB形式の画像からL*a*b*表色系の画像を得る方法としては公知の一般的な方法を用いることが可能であるが、RGBデータとL*a*b*値との関係性を示すLUT(Look Up Table)を用いて実現可能である。
基準正反射画像及び明度情報が取得されると、次に情報入力部431は、検査対象の画像の正反射読取画像を取得する(S903)。上述したように、読取画像取得部401による正反射読取画像の取得に際しては、上述した基準計測結果による規格が行われるため、S903においても、情報入力部431は、規格化されて最大値が1となった正反射読取画像を取得する。
検査対象の正反射読取画像を取得すると、情報入力部431は、図4において説明した処理と同様に、基準正反射画像及び正反射読取画像から夫々所定範囲の画像を抽出して比較検査部404に入力することにより、後段のモジュールに欠陥判定を実行させる(S904)。
図17は、S904における処理の詳細を示すフローチャートである。図17に示すように、S904においては、比較検査部404が入力された情報に基づいて差分値を生成して出力することにより、基準正反射画像を構成する各画素と正反射読取画像を構成する各画素との差分値を各画素として構成された正反射差分画像ΔS(x,y)を差分画像取得部432が取得する(S1701)。
検査対象の画像に光沢のムラが発生しておらず、欠陥の無い状態であれば、正反射差分画像を構成する各画素の値はゼロに近い値となる。他方、検査対象の画像に光沢のムラが発生している場合には、そのムラの程度に応じた値が正反射差分画像を構成する画素の値として算出される。差分画像取得部432は、取得した正反射差分画像を重み付け処理部434に入力する。
重み付け処理部434は、差分画像取得部432から正反射差分画像を取得すると共に、明度情報生成部433から、S902において生成された明度情報を取得し、以下の式(1)の計算により重み付け差分画像ΔS´(x,y)を求める(S1702)。
上記式(1)によれば、検査対象の画像において元々明るい部分、即ち、明度情報L(x,y)の値が大きい部分については、重み付け差分画像ΔS´(x,y)の値が小さく算出されることとなる。元の画像が明るい場合と、元の画像が暗い場合とで光沢の変化量が同一である場合、元の画像が暗い方がより視覚的影響が大きく、元の画像が明るい場合には視覚的影響が小さい。従って、上記式(1)のような計算を行うことにより、重み付け差分画像ΔS´(x,y)の算出に際して、元の画像の明るさに応じた人間の視覚への影響を加味することが出来る。即ち、重み付け処理部434が、正反射差分画像を補正する差分画像補正部として機能する。
尚、上記式(1)は一例である。即ち、上記式(1)のような単純な除算に限らず、元の画像が明るい程、重み付け差分画像ΔS´(x,y)が小さく算出されるような計算であれば同様の効果を得ることが可能である。また、明度情報L(x,y)の値がゼロに近くなる場合、重み付け差分画像ΔS´(x,y)が不当に大きな値になってしまう場合がある。従って、L(x,y)<0.1の場合には、L(x,y)=1として丸め込みを行うことが好ましい。
重み付け処理部434は、このようにして算出した重み付け差分画像ΔS´(x,y)を、閾値判定部435に入力する。閾値判定部435は、重み付け処理部434から入力された重み付け差分画像ΔS´(x,y)を閾値と比較することにより(S1703)、各画素についての欠陥判定を行う。閾値は閾値判定部435において予め設定された値を用いる。上述したように、本実施形態においては正反射読取画像及び基準正反射画像の値について最大値が1となるように規格化されているため、閾値の設定を容易に行うことが可能であり、例えばΔS´(x,y)>0.1で異常と判定する。
閾値判定部435は、重み付け差分画像ΔS´(x,y)の夫々の画素について、欠陥と判定された画素を“1”、それ以外の画素を“0”とする閾値判定結果画像を生成する(S1704)。図10は、閾値判定結果画像の例を示す図である。図10においては、欠陥と判定された部分を太線で囲って示している。図10において太線で囲まれている領域が光沢スジとして、視覚的に欠陥として認識される。閾値判定部435は、図10に示すように生成した閾値判定結果画像を評価値判断部436に入力する。
評価値判断部436は、閾値判定部435から入力された閾値判定結果画像を構成する各画素の値を、副走査方向、即ち、図10の縦方向に合計して一次元化する(S1705)。換言すると、評価値判断部436は、閾値判定結果画像を構成する各画素の値、即ち、欠陥として判定された画素について“1”が設定された値を、副走査方向に直交する方向である主走査方向の位置を示す“x”毎に合計する。図11は、評価値判断部436による一次元化の結果をグラフ化した状態を示す図であり、横軸が画像の主走査方向の位置“x”、縦軸が夫々の合計値である。
画像形成出力された用紙に発生する光沢むらの欠陥は、用紙が図5に示すに装置内を搬送される際の機械的な影響によって発生する。具体的には、用紙を搬送するローラによる紙面への影響や、定着ローラ15から用紙を剥離する際の爪による影響などである。これらの影響は、紙面上においては紙面の搬送方向、即ち、図10においては、図中縦方向のスジ状の欠陥として発生する。
本実施形態においては、図11に示すように、閾値判定結果画像を構成する各画素の値を、主走査方向の位置を示す“x”毎に合計した一次元化結果を得る。このような一次元化結果の値は、上述したように用紙の搬送方向、即ち副走査方向に発生するスジを示す値となる。従って、本実施形態に係る一次元化の処理により、画像形成出力された画像に発生するスジ状の欠陥を効率的に検知することが可能である。
尚、このような一次元化の方法は一例である。画像形成出力された画像においては、主走査方向にスジ状の欠陥が発生する可能性もゼロではない。そのため、閾値判定結果画像を構成する各画素の値を、主走査方向の位置を示す“x”毎に合計した一次元化結果の他、副走査方向の位置を示す“y”毎に合計した一次元化結果を求めても良い。
また、本実施形態においては、図10に示すように、閾値判定部435が、異常として判定した画素を“1”、それ以外を“0”とする閾値判定結果画像を生成するため、各画素の値を合計することにより一次元化処理を行う。しかしながら、これは一例であり、一次元化処理の趣旨は、異常として判定された画素の数を一方向にカウントすることである。
評価値判断部436は、図11のグラフで示されるように求められた一次元化の結果に基づき、光沢スジの欠陥の程度を評価するための評価値を算出する(S1706)。図12(a)、(b)は、本実施形態に係る評価値の算出において参照されるパラメータを示す図である。図12(a)、(b)においては、図11に示すように一次元化された閾値判定結果画像に基づいて求められるパラメータ値を示している。
図12(a)に示すように、本実施形態に係る評価値判断部436は、以下の式(2)に示すように、閾値判定結果画像において異常と判定された画素の面積Aと、各“x”の位置毎の合計値の最大値Mをパラメータとして用いて、光沢スジの評価値Qを求める。
上記式(2)の意義は、光沢スジが人間の視覚において認識される度合いを計算することにある。即ち、光沢スジが人間の視覚において認識される度合いは、光沢スジの長さと、光沢スジの面積によって求められるため、本実施形態に係る評価値判断部436は、光沢スジの長さによる影響をMにより計算し、光沢スジの面積による影響をAにより計算することによって評価値Qを求める。ここで、図12(a)に示す面積Aは、“x”の位置毎の欠陥判定数の合計値を、“x”方向に更に合計した値である。
図12(a)においては、主走査方向の位置“x”において、異常として判断された画素のまとまりが1つである場合を例としているが、図12(b)に示すように、主走査方向の複数の位置において異常として判断された画素のまとまりが発生する場合もあり得る。そのような場合、図12(b)に示すように、夫々のまとまり毎に、面積A1、A2、最大値M1、M2を求め、夫々のまとまり毎に上記式(2)を用いて評価値Q1、Q2を算出することが出来る。また、夫々のまとまり毎に算出された評価値Q1、Q2を合計しても良い。
このようにして求めた評価値Qを、予め定められた閾値と比較することにより、評価値判断部436は、各ページにおいて光沢スジの欠陥が生じているか否かを判断する(S1707)。この際、上述したように複数の評価値Q1、Q2が求められた場合には、夫々の評価値について閾値との比較を行っても良いし、合計した値と閾値との比較を行っても良い。このような差分画像432から評価値判断部436の処理により、図9のS904における欠陥判定処理が完了する。即ち、閾値判定部435及び評価値判断部436が連動して、欠陥判定部として機能する。評価値判断部436は、欠陥判定の結果をコントローラ通信部437に入力する。
コントローラ通信部437は、欠陥判定の結果に応じて、再印刷要求等のエンジン制御を実行する(S905)。このような処理により、本実施形態に係る正反射読取画像の画像検査動作が完了する。
このように、本実施形態に係る検査装置4においては、正反射光によって読み取られた正反射読取画像の検査に際して、元々の画像の明るさに基づいて基準正反射画像との差分値を補正した上で欠陥判定を行う。そのため、画像の光沢の変化に基づく欠陥の検知において、元の画像の明るさに応じた視覚への影響を加味することが可能となる。
実施の形態2.
実施の形態1においては、図10及び図11に示すように、光沢スジが発生する場合には、用紙の搬送方向に対して連続して発生する場合を例として説明した。しかしながら、光沢スジが発生するか否かは、その部分におけるトナーの付着量にも左右される。従って、元々の画像の状態によっては、光沢スジが発生しているにも関わらず正確な検知が出来ない場合もあり得る。本実施形態においては、そのような場合に対応するための態様について説明する。
図13は、本実施形態に係る閾値判定結果画像の例を示す図である。図13においても、図10と同様に、欠陥と判定された部分を太線で囲って示している。また、図13においては、本来は欠陥として判定されるべき部分、即ち、何らかの機械的作用によって印刷用紙の紙面上に影響が発生しているが、その部分におけるトナー付着量の作用によって光沢ムラが発生していない部分を太い破線で囲って示している。
図13に示すような閾値判定結果画像に基づいて図11と同様の処理により一次元化を行う場合、その結果は図14に示すようなグラフによって示される。即ち、光沢ムラがスジ状に現れている部分と、トナー付着量の影響によりスジの途中が途切れた部分とで、本来であれば同一の評価値Qが算出されるべきところ、途中が途切れた部分については評価値Qの値が低く算出される。本実施形態に係る評価値判断部436は、欠陥として判定された画素を合計する方向における欠陥の長さを規格化することにより、このような問題を解決する。
そのため、本実施形態に係る評価値判断部436は、図13に示すような閾値判定結果画像を取得すると、“1”と判定されている画像の連結処理を行う。連結処理においては、一般的な画像処理における連結処理を用いることが可能であるが、例えば4連結若しくは8連結により行う。そのように連結処理を行った結果の搬送方向の連結数をカウントすることにより、図13に示す“L1”、“L2”、“L3”といった、夫々の連結部分の搬送方向の長さを求めることが出来る。
図13に示すように“L1”、“L2”、“L3”といった、夫々の連結部分の搬送方向の長さを求めた評価値判断部436は、同一の“x”の位置における連結部分の搬送方向の長さを合算し、その合計値により、図14に示すように夫々の“x”の位置毎に合計された一次元化結果を除算することにより、一次元化結果を規格化する。これにより、図15に示すような、搬送方向のスジの長さの影響を除外した一次元化結果を求めることができる。
このようにして求められた規格化された一次元化結果に基づいて上述した式(2)の計算により評価値Qを計算することにより、搬送方向のスジの長さの影響を除外した評価値Qを算出することが出来る。従って、上述したように、本来光沢スジが発生するはずであったにも関わらず、トナー付着量によって光沢スジが途切れてしまったような場合に、光沢スジが適切に検知されないような問題を解決することが出来る。
その他の実施形態.
尚、上記実施形態1においては、基準正反射画像の取得方法として、オペレータの目視により正常であることが確認された画像の正反射読取画像を取得する方法や、複数枚連続して出力された用紙の正反射読取画像を平均化して取得する方法を例として説明した。この他、例えばマスター画像に基づいて基準正反射画像を生成することにより、欠陥を含まないことが確実である基準正反射画像を取得することが可能であると共に、基準正反射画像の取得のために用紙やトナーを消費する必要がなくなる。
マスター画像に基づいて基準正反射画像を生成する方法としては、例えば、図16に示すように、“RGB値”と“正反射読取値”とが関連付けられた変換テーブルを用いることにより、実現可能である。RGB各色8bitの全階調値について、正反射光を読み取った読み取り結果の値を図16に示す“正反射読取値”としてRGBの階調値に関連付けることにより、図16に示すような変換テーブルを生成することが可能である。
そして、例えば明度情報生成部433が、マスター画像に基づいて明度情報を生成するのとは別に、図16に示すような変換テーブルに基づいてRGB各色8bitによって表現されたマスター画像の各画素の値を“正反射読取値”に変換する。この変換によって生成された画像を、基準正反射画像として用いることが可能である。この場合、明度情報生成部433が、基準正反射画像生成部としても機能する。基準正反射画像生成部として機能する明度情報生成部433は、生成した基準正反射画像を情報入力部431に入力する。
尚、図16に示す変換テーブルにおいて、例えばマスター画像の形式に合わせて各色8bitで表現される“RGB値”に対して、“正反射読取値”として、最大値が1になるように規格化された値を関連付けることにより、読取画像取得部401から入力される正反射読取画像との値のずれをなくすことが可能である。
尚、上記実施形態においては、マスター画像に基づいて基準正反射画像を生成する場合であるため、変換テーブルにおいては“RGB値”と“正反射読取値”とが関連付けられている。この他、例えば、エンジンコントローラ2から入力されるビットマップデータに基づいて基準正反射画像を生成する場合には、ビットマップデータを構成するCMYK値が“正反射読取値”に関連付けられる。但し、マスター画像であれば、既に読取画像の解像度に合わせられているため、以降の処理を簡略化することが可能である。