JP6477015B2 - ラジアスエンドミル - Google Patents
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Description
切削加工時においてラジアスエンドミルは、エンドミル本体の軸線回りに沿う周方向のうち、工具回転方向に回転させられつつ、軸線に交差する方向に送りを与えられて被削材に切り込んでいく。
また、この種のラジアスエンドミルに対しては、より切削速度を高めて、加工効率を向上することが求められていた。
すなわち、本発明のラジアスエンドミルは、軸状をなし、セラミックからなるエンドミル本体と、前記エンドミル本体の外周に形成され、該エンドミル本体の軸線方向に沿う先端から基端側へ向かうに従い漸次前記軸線回りの周方向のうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、前記切屑排出溝における前記工具回転方向を向く壁面と、前記エンドミル本体の外周面との交差稜線に形成された外周刃と、前記切屑排出溝における前記壁面と、前記エンドミル本体の先端面との交差稜線に形成された底刃と、前記エンドミル本体の先端外周部に位置するとともに、前記底刃の外端と前記外周刃の先端を繋ぎ、前記エンドミル本体の先端外周側へ向けて凸となる凸曲線状をなすコーナ刃と、を備え、前記外周刃、前記底刃及び前記コーナ刃のうち、少なくとも前記外周刃のラジアルレーキ角が、負の角度に設定されており、前記外周刃のラジアルレーキ角は、−20°〜−10°であり、前記外周刃のねじれ角は、30°〜40°であることを特徴とする。
なお、特に図示していないが、ラジアルレーキ角が「+(プラス)」、つまり正(ポジティブ)の角度であるとは、エンドミル本体2の横断面視において、外周刃6のすくい面4aが、径方向の外側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって傾斜して延びているときの、角度αである。この場合、上記所定の径方向D(基準面)に対して、外周刃6のすくい面4aが、工具回転方向Tとは反対側に配置される。
これにより外周刃は、被削材を削り取る(掻き取る)ように、高速で切削することが可能になる。また、軟化した被削材に比べてラジアスエンドミルの硬度が相対的に高められるため、外周刃の摩耗(摩滅)が顕著に抑制されて、工具寿命が延長する。
つまり、本発明のラジアスエンドミルによる切削モード(加工形態)は、従来の一般的なラジアスエンドミルの切削モードとは、大きく異なっている。
しかも、本発明のラジアスエンドミルの外周刃は、ラジアルレーキ角が上記数値範囲とされていることにより、刃物角が十分に確保されて、刃先強度が向上している。従って、刃先のチッピング等も生じにくくなっている。
また、外周刃のラジアルレーキ角が、−10°を超える場合には、ラジアルレーキ角が正角側に近づき過ぎて、所期する切削熱が得られなくなる。つまり、切削熱が十分に高められないので被削材が軟化せず、本発明の上述した作用効果が得られなくなるばかりか、外周刃が早期に摩耗して工具寿命に達するおそれがある。
従って、本発明において外周刃のラジアルレーキ角は、−20°〜−10°である。
本発明によれば、外周刃のねじれ角が、30°〜40°に設定されている。
ここで、本明細書でいう「ねじれ角」とは、図2に示されるエンドミル本体2の側面視(エンドミル本体2を軸線Oに直交する径方向から見た側面視)において、軸線O(又は軸線Oに平行な直線)と、外周刃6(ねじれのつる巻き線)との間に形成される鋭角及び鈍角のうち、鋭角の角度βを指している。
一般に、例えば超硬合金からなるラジアスエンドミル(従来品)においては、外周刃のねじれ角は40°よりも大きく設定される。このように、ねじれ角が大きな正の角度に設定されることにより、外周刃が被削材に鋭く切り込んで、切れ味が高められるからである。
一方、本発明の上記構成においては、外周刃のねじれ角を30°〜40°と小さく設定して、被削材に対する外周刃の切削抵抗を意図的に高めている。これにより切削加工時には、被削材に対するラジアスエンドミルの外周刃の切削抵抗が大きくなって、切削熱(せん断領域での塑性変形による発熱や摩擦熱等)も高くなる。
切削熱が高くなると、セラミックからなり耐熱性の高いラジアスエンドミルの外周刃に比べて、被削材の切削面(被加工部)は軟化する。つまり、外周刃に対して、被加工部の硬度が著しく低下する。
これにより外周刃は、被削材を削り取る(掻き取る)ように、高速で切削することが可能になる。また、軟化した被削材に比べてラジアスエンドミルの硬度が相対的に高められるため、外周刃の摩耗(摩滅)が顕著に抑制されて、工具寿命が延長する。
つまり上記構成によれば、本発明の上述した作用効果を、さらに格別顕著なものとすることができる。
具体的には、外周刃のねじれ角が、30°よりも大きくされていることで、外周刃において、切削熱により軟化した被削材を削り取るのに十分な切れ味を確保することができる。
また、外周刃のねじれ角が、40°よりも小さくされていることで、被削材を軟化させるのに十分な切削熱を得ることが可能な程度に、外周刃の切削抵抗を高めることができる。
また、本発明のラジアスエンドミルにおいて、前記外周刃のねじれ角が、30°〜35°であることが好ましい。
図1〜図3に示されるように、本実施形態のラジアスエンドミル1は、軸状をなし、セラミックからなるエンドミル本体2を有している。具体的に、エンドミル本体2は、セラミック材料のサイアロン(SiAlON)からなる。
エンドミル本体2は概略円柱状をなしており、該エンドミル本体2の軸線O方向に沿う少なくとも先端部に刃部3aが形成され、該刃部3a以外の部位がシャンク部3bとされている。
なお、本実施形態のラジアスエンドミル1は、被削材として例えばINCONEL(登録商標)等の耐熱合金(難削材)の切削加工に、特に適している。
本明細書においては、エンドミル本体2の軸線O方向のうち、シャンク部3bから刃部3aへ向かう方向を先端側、刃部3aからシャンク部3bへ向かう方向を基端側という。
また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、軸線Oに接近する向きを径方向の内側といい、軸線Oから離間する向きを径方向の外側という。
また、軸線O回りに周回する方向を周方向といい、周方向のうち、切削加工時にエンドミル本体2が回転させられる方向を工具回転方向Tといい、これとは反対へ向かう方向を工具回転方向Tとは反対側という。
刃部3aの外周には、複数条の切屑排出溝4が周方向に間隔をあけて形成されている。切屑排出溝4は、エンドミル本体2の先端面に開口しており、該先端面から基端側へ向かうに従い漸次工具回転方向Tとは反対側へ向けてねじれて延びている。切屑排出溝4は、刃部3aの基端側の端部において、エンドミル本体2の外周に切り上がっている。
各切屑排出溝4は、工具回転方向Tを向く壁面を有しており、この壁面のうち、切れ刃に隣接する部分がすくい面とされている。具体的には、切れ刃のすくい面のうち、該切れ刃の後述する外周刃6、底刃9、及びコーナ刃10に隣接する部分がそれぞれ、外周刃6のすくい面4a、底刃9のすくい面4b、及びコーナ刃10のすくい面4cとされている。
本実施形態では、4条の切屑排出溝4に対応して4条のギャッシュ7が形成されており、これらのギャッシュ7同士が、径方向内側の端部(エンドミル本体2の先端面における径方向の中央、つまり軸線O上)で互いに連通している。
刃部3aは、周方向に間隔をあけて複数の切れ刃を有している。切れ刃はそれぞれ、外周刃6、コーナ刃10及び底刃9を有しており、これらがL字状をなす1つの切れ刃を形成して、滑らかに連続している。
本実施形態のラジアスエンドミル1は、4枚刃(4つの切れ刃)の刃部3aを有している。ただし、ラジアスエンドミル1の切れ刃の数(L字状に連続する外周刃6、コーナ刃10及び底刃9の組数)は、本実施形態で説明する4枚刃に限定されるものではなく、例えば3枚刃以下であってもよく、又は5枚刃以上であってもよい。なお、切れ刃の数は、切屑排出溝4の数に対応している。
切屑排出溝4における工具回転方向Tを向く壁面と、エンドミル本体2の外周面との交差稜線には、外周刃6が形成されている。外周刃6は、切屑排出溝4の前記壁面の外周端縁に沿って、つる巻き線状(螺旋状)に延びている。
刃部3aの外周面には、周方向に隣り合う切屑排出溝4同士の間に、外周逃げ面5がそれぞれ形成されている。外周逃げ面5の幅(外周刃6に直交する向きの長さ)は、外周刃6の延在方向に沿って略一定とされている。
外周刃6が軸線O回りに回転して形成される回転軌跡は、軸線Oを中心とする1つの円筒面となる。
なお、特に図示していないが、ラジアルレーキ角が「+(プラス)」、つまり正(ポジティブ)の角度であるとは、エンドミル本体2の横断面視において、外周刃6のすくい面4aが、径方向の外側に向かうに従い工具回転方向Tへ向かって傾斜して延びているときの、角度αである。この場合、上記所定の径方向D(基準面)に対して、外周刃6のすくい面4aが、工具回転方向Tとは反対側に配置される。
なお、外周刃6以外に、底刃9及びコーナ刃10のいずれか1つ以上のラジアルレーキ角が、負の角度に設定されていてもよい。
図1〜図3に示されるように、切屑排出溝4における工具回転方向Tを向く壁面と、エンドミル本体2の先端面との交差稜線には、底刃(先端刃)9が形成されている。底刃9は、切屑排出溝4の前記壁面の先端縁に沿って、直線状に延びている。
刃部3aの先端面には、周方向に隣り合う切屑排出溝4同士の間に、先端逃げ面8がそれぞれ形成されている。先端逃げ面8の幅(底刃9に直交する向きの長さ)は、底刃9の延在方向に沿って略一定とされている。
本実施形態では、図3に示されるエンドミル本体2の正面視において(エンドミル本体2の先端面を軸線O方向から正面に見て)、底刃9は、径方向に沿うように延びており、該底刃9の内端(径方向内側の端縁)は、軸線O上よりも径方向外側に配置されている。
なお、底刃9は、軸線Oに垂直な平面に含まれるように延びていてもよく、この場合、底刃9の前記回転軌跡は、軸線Oに垂直な平面となる。
なお、底刃9のすくい角は、正の角度に設定されていてもよい。この場合、底刃9のすくい面4bは、先端から基端側へ向かうに従い漸次工具回転方向Tとは反対側へ向けて傾斜する。
図1〜図3に示されるように、切屑排出溝4における工具回転方向Tを向く壁面のうち、エンドミル本体2の先端外周部に位置する部分(コーナ部)には、コーナ刃10が形成されている。コーナ刃10は、底刃9の外端と外周刃6の先端を滑らかに繋いでおり、エンドミル本体2の先端外周側へ向けて凸となる凸曲線状をなしている。
コーナ逃げ面11は、先端逃げ面8の径方向外側の端部と外周逃げ面5の先端部を滑らかに繋いでおり、エンドミル本体2の先端外周側へ向けて凸となる凸曲面状をなしている。
本実施形態では、図3に示されるエンドミル本体2の正面視において、コーナ刃10は、工具回転方向Tかつ径方向外側へ向けて凸となる凸曲線状をなしている。また、図2に示されるエンドミル本体2の側面視において、コーナ刃10(軸線Oに接近配置されたコーナ刃10を参照)は、工具回転方向Tかつ基端側へ向けて凸となる凸曲線状をなしている。
なお、コーナ刃10のすくい角は、負の角度に設定されていてもよい。この場合、コーナ刃10のすくい面4cは、先端外周縁から径方向内側かつ基端側へ向かうに従い漸次工具回転方向Tへ向けて傾斜する。また、コーナ刃10のすくい角は、0°に設定されていてもよい。
以上説明した本実施形態のラジアスエンドミル1によれば、エンドミル本体2がセラミックにより形成されている。そして、外周刃6、底刃9及びコーナ刃10のうち、少なくとも外周刃6のラジアルレーキ角(外周すくい角、図4における角度α)が負の角度に設定されており、具体的には、外周刃6のラジアルレーキ角が、−20°〜−10°とされている。
これにより外周刃6は、被削材を削り取る(掻き取る)ように、高速で切削することが可能になる。また、軟化した被削材に比べてラジアスエンドミル1の硬度が相対的に高められるため、外周刃6の摩耗(摩滅)が顕著に抑制されて、工具寿命が延長する。
つまり、本実施形態のラジアスエンドミル1による切削モード(加工形態)は、従来の一般的なラジアスエンドミルの切削モードとは、大きく異なっている。
しかも、本実施形態のラジアスエンドミル1の外周刃6は、ラジアルレーキ角が上記数値範囲とされていることにより、刃物角が十分に確保されて、刃先強度が向上している。従って、刃先のチッピング等も生じにくくなっている。
また、外周刃6のラジアルレーキ角が、−10°を超える場合には、ラジアルレーキ角が正角側に近づき過ぎて、所期する切削熱が得られなくなる。つまり、切削熱が十分に高められないので被削材が軟化せず、本実施形態の上述した作用効果が得られなくなるばかりか、外周刃6が早期に摩耗して工具寿命に達するおそれがある。
従って、本実施形態において外周刃6のラジアルレーキ角は、−20°〜−10°である。
なお、外周刃6のラジアルレーキ角が−15°に設定された場合に、最も顕著な効果を奏する。
一方、本実施形態の上記構成においては、外周刃6のねじれ角を30°〜40°と小さく設定して、被削材に対する外周刃6の切削抵抗を意図的に高めている。これにより切削加工時には、被削材に対するラジアスエンドミル1の外周刃6の切削抵抗が大きくなって、切削熱(せん断領域での塑性変形による発熱や摩擦熱等)も高くなる。
これにより外周刃6は、被削材を削り取る(掻き取る)ように、高速で切削することが可能になる。また、軟化した被削材に比べてラジアスエンドミル1の硬度が相対的に高められるため、外周刃6の摩耗(摩滅)が顕著に抑制されて、工具寿命が延長する。
また、外周刃6のねじれ角が、40°よりも小さくされていることで、被削材を軟化させるのに十分な切削熱を得ることが可能な程度に、外周刃6の切削抵抗を高めることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
ただし、外周刃6のねじれ角が30°〜40°の範囲であると、上述した格別顕著な作用効果を奏することから、好ましい。また、外周刃6のねじれ角が39°未満であると、より安定的に上述の作用効果が得られることとなり、さらに望ましくは、外周刃6のねじれ角は、30°〜35°である。なお、30°〜35°の中でも、30°に近づくほど切削熱が高められて、良好な結果が得られやすい。
本発明の実施例として、前述した実施形態のラジアスエンドミル1を用意した。すなわち、実施例のラジアスエンドミル1は、エンドミル本体2がセラミックからなり、外周刃6のラジアルレーキ角(外周すくい角)αが、−20°〜−10°の範囲内である。
ラジアスエンドミルの刃数、サイズ:4枚刃、φ10mm×R1.25mm
被削材:INCONEL(登録商標)718
回転数:20000min−1
切削速度:628m/min
送り速度:2000mm/min
一刃あたりの送り:0.025mm/tooth
クーラント:ドライ
切削方式:ダウンカット
突出長さ:23mm
切込量ae:3.0mm
切込量ap:7.5mm
図5に示されるように、本発明の実施例1〜3においては、切削長が十分に確保され、切削加工が安定して工具寿命が延長されることが確認された。なかでも、外周刃6のラジアルレーキ角αが−17.5°〜−12.5°の範囲内である実施例2においては、切削長が35m以上にまで達しており、より格別顕著な効果を奏することが確認された。
2 エンドミル本体
4 切屑排出溝
6 外周刃
9 底刃(先端刃)
10 コーナ刃
O 軸線
T 工具回転方向
α 角度(外周刃のラジアルレーキ角)
β 角度(外周刃のねじれ角)
Claims (4)
- 軸状をなし、セラミックからなるエンドミル本体と、
前記エンドミル本体の外周に形成され、該エンドミル本体の軸線方向に沿う先端から基端側へ向かうに従い漸次前記軸線回りの周方向のうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、
前記切屑排出溝における前記工具回転方向を向く壁面と、前記エンドミル本体の外周面との交差稜線に形成された外周刃と、
前記切屑排出溝における前記壁面と、前記エンドミル本体の先端面との交差稜線に形成された底刃と、
前記エンドミル本体の先端外周部に位置するとともに、前記底刃の外端と前記外周刃の先端を繋ぎ、前記エンドミル本体の先端外周側へ向けて凸となる凸曲線状をなすコーナ刃と、を備え、
前記外周刃、前記底刃及び前記コーナ刃のうち、少なくとも前記外周刃のラジアルレーキ角が、負の角度に設定されており、
前記外周刃のラジアルレーキ角は、−20°〜−10°であり、
前記外周刃のねじれ角は、30°〜40°であることを特徴とするラジアスエンドミル。 - 請求項1に記載のラジアスエンドミルであって、
前記外周刃のラジアルレーキ角が、−17.5°〜−12.5°であることを特徴とするラジアスエンドミル。 - 請求項1又は2に記載のラジアスエンドミルであって、
前記外周刃のねじれ角が、30°〜35°であることを特徴とするラジアスエンドミル。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のラジアスエンドミルであって、
前記エンドミル本体は、サイアロンからなることを特徴とするラジアスエンドミル。
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