近年、音声を高品質に送受信できるデジタルワイヤレスマイクの研究・開発が進められており、その中でも、マルチパスやフェージング等に耐性があり、限られた周波数帯域を効率よく使用できるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変復調方式により送受信するワイヤレスマイクが注目されている。
図12は、OFDMデジタルワイヤレスマイクの基本構成のブロック図である。非特許文献1には、特定ラジオマイクの標準規格が定められており、図12のOFDMデジタルワイヤレスマイクは、その標準規格に準拠した構成である。
図12(a)に示される送信装置10は、情報源符号化部12、伝送路符号化部13、周波数変換部14、電力増幅部15、及び送信アンテナで構成される。また、図12(b)に示される受信装置20は、受信アンテナ、受信増幅部22、周波数変換部23、伝送路復号部24、及び情報源復号部25で構成される。
ここで、送信側において、情報源符号化部12は、アナログの音声信号をデジタル信号に変換すると共に音声信号の圧縮と付加情報の多重を行う。また、伝送路符号化部13は、情報源符号化部12から出力されたデジタル信号をOFDM変調信号に変調して伝送する。受信側は、基本的に送信側と逆の処理を行う。
情報源符号化部と情報源復号部は、伝送する音声信号の圧縮方式によって、構成が選択される。例えば、非圧縮のリニアPCM(pulse code modulation)音声信号を取り扱う場合は、情報源符号化部がAD(アナログデジタル)変換部、情報源復号部がDA(デジタルアナログ)変換部で構成される。音声信号に対して、瞬時圧伸とよばれる振幅方向のみの圧縮を用いる場合は、情報源符号化部がAD変換部と振幅圧縮部で、情報源復号部が振幅伸張部とDA変換部で構成される。また、音声信号に対して、ADPCM(adaptive differential pulse code modulation:適応的差分パルス符号変調)により、データ圧縮を行う場合は、情報源符号化部がAD変換とADPCMエンコーダで、情報源復号部が、ADPCMデコーダとDA変換で構成される。
図13は、図12(a)の送信装置の伝送路符号化部13の構成を示すブロック図である(非特許文献1)。
伝送路符号化部13は、エネルギー拡散部31と、誤り訂正符号化部32と、ビットローテーション部34及びマッピング部35から構成されるキャリア変調部33と、周波数インタリーブ部36と、時間インタリーブ部37と、OFDMフレーム構成部40と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部41と、ガードインターバル付加部42とを備える。これらの構成のうち、キャリア変調部33からガードインターバル付加部42までは、OFDM変調部を構成する。
以下、各構成要素について説明する。
エネルギー拡散部31は、音声情報の偏りによりOFDMの特定のキャリアにエネルギーが集中しないように、情報源符号化部12から伝送された信号を、擬似ランダム信号等を用いてランダム化する。
誤り訂正符号化部32は、所定の符号化率(例えば、1/2又は2/3)で畳み込み符号化を行う。なお、パリティビット等の付加による外符号符号化を、必要に応じて、情報源符号化部において行うこともできる。
キャリア変調部33は、誤り訂正符号化部32から入力される信号に対し、ビットローテーション部34において、時間遅れを生じさせないビット単位でのデータの並び替えを行い、その後、マッピング部35において、キャリアごとに所定の変調方式(変調多値数M)に応じてIQ平面へのマッピングを行い、キャリア変調信号を生成し、周波数インタリーブ部36に出力する。
周波数インタリーブ部36は、特定の搬送波が妨害を受けた場合の耐性を向上させるために、本来隣接しているシンボルのキャリア番号を並び替え、データを周波数的に分散するものである。周波数的に分散するように並び替えたデータを時間インタリーブ部37に出力する。
時間インタリーブ部37は、順次伝送されてくる信号(複素信号)の順番を入れ替えて、時間的にデータを分散させる。これは、後述するパルス雑音等に対する対策として有効である。
OFDMフレーム構成部40は、時間インタリーブ部37から入力される信号に対して、パイロット信号38及びTMCC信号39を挿入して配置することによりOFDMフレームを生成し、IFFT部41に出力する。パイロット信号38は、信号生成時の振幅及び位相が既知であるため、受信側において伝送路特性を推定するのに利用される。パイロット信号には、分散して配置されるSP(Scattered Pilot)信号と、シンボル方向に連続して配置されるCP(Continual Pilot)信号とがある。また、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号は、制御情報を伝送する。
IFFT部41は、OFDMフレーム構成部40から入力されるOFDMフレームに対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)処理を施して有効シンボル期間のIFFT出力信号を生成する。生成されたIFFT出力信号は、ガードインターバル付加部42に出力される。
ガードインターバル付加部42は、IFFT部41から入力される有効シンボル期間のIFFT出力信号の先頭に、IFFT出力信号の後半部分をコピーしたガードインターバルを挿入する。ガードインターバルは、OFDM信号を受信する際にシンボル間干渉を低減させるために挿入されるものであり、マルチパス遅延波の遅延時間がガードインターバル長を超えないように設定される。
このようにして、OFDM送信信号が作成され、周波数変換部14と電力増幅部15を経て送信される。
図14は、図12(b)の受信装置の伝送路復号部24の構成を示すブロック図であり、送信側の伝送路符号化部13と逆の処理を行っている(非特許文献1)。
伝送路復号部24は、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55と、時間デ・インタリーブ部56と、周波数デ・インタリーブ部57と、デ・マッピング部59及びビットデ・インタリーブ部60から構成されるキャリア復調部58と、誤り訂正復号部61と、エネルギー逆拡散部62と、を備える。これらの構成のうち、窓処理部51から、キャリア復調部58までは、OFDM復調部を構成する。
以下、各構成要素について説明する。
窓処理部51は、周波数変換部23からのOFDM受信信号を受け、OFDM受信信号からガードインターバルを除去し、有効シンボル期間の信号を抽出する。
FFT部52は、ガードインターバルを除去された信号に対してFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を施し、OFDMフレーム信号を復元する。
OFDMフレームデ・マルチプレクス部53は、OFDMフレーム信号から、データとして有効なキャリアシンボル信号とパイロット信号を分離・抽出し、パイロット信号を内挿フィルタ部54に出力し、データとして有効なキャリアシンボル信号を複素除算部55に出力する。
内挿フィルタ部54は、パイロット信号の受信後の振幅及び位相を、基準値(既知の振幅と位相)と比較することにより、パイロット信号の存在するキャリアの伝送路特性を算出し、算出した伝送路特性を時間方向および周波数方向に補間し、全てのOFDMキャリアシンボルに対応した伝送路特性についての情報である伝送路情報(CSI: Channel State Information)を得る。
複素除算部55は、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53から抽出したデータとしてのキャリアシンボル信号を、内挿フィルタ部54で得られた各キャリアシンボルに対応する伝送路情報(CSI)で複素除算し、伝送路での歪みが補正されたデータ信号(Data:複素信号S)を得る。
時間デ・インタリーブ部56は、補正された複素信号Sに対して、時間デ・インタリーブ処理を行い、送信側で時間的に順番が並び替えられたデータを、元の順序に戻す。
周波数デ・インタリーブ部57は、さらに、周波数デ・インタリーブ処理を行い、送信側で周波数的に並び替えられたデータを元に戻す。
キャリア復調部23は、周波数デ・インタリーブ部57から入力される信号に対して、キャリアごとに復調を行い、誤り訂正復号部61に出力する。復調する際には、デ・マッピング部59で複素信号S(I信号値とQ信号値)から、ビット単位のデータに復調し、さらに、ビットデ・インタリーブ部60において、送信側でビット単位で並べ替えたデータを、元の配列に戻す。
誤り訂正復号部61は、キャリア復調部58から入力される信号に対して、ビタビ復号等の誤り訂正処理を行う。なお、誤り訂正復号には、データの信頼性も考慮した軟判定復号を行うこともできる。
エネルギー逆拡散部62は、エネルギー逆拡散を施して、元の信号出力に戻し、情報源復号部25に出力する。
このように、受信装置は、伝送路復号部24において送信側の伝送路符号化部13と逆の処理を行い、その後、情報源復号処理を行う。
次に、上述したOFDMデジタルワイヤレスマイクのパルス雑音に対する対策について説明する。
特定ラジオマイク(ワイヤレスマイク)が利用される1.2GHz帯は、無線標定局との共用であり、パルス性の干渉を受けることが予想される。干渉波は、例えば、パルス幅が150μsec程度の強いパルスが、5〜10msec程度の周期で繰り返し発射される。したがって、OFDM変復調方式のワイヤレスマイクであっても、強いパルス性の干渉によって、ノイズが発生することがある。
図15は、デジタルワイヤレスマイクで使用されるOFDMシンボルとパルス雑音の関係の一例を示した図である。例えば、シンボル長83.3μsecのOFDM変復調方式を用いて送受信を行っている場合に、パルス幅150μsecの強力なパルス波(パルス雑音)が受信入力に入ってくると、2〜3個のOFDMシンボルに跨るデータ(A)が影響を受け、場合によってはパルス性の干渉により音声遮断(プツプツ、ザッ、という雑音)が生じる。
従って、このような干渉の影響を回避するため、時間インタリーブが採用されている。時間インタリーブは、パルス雑音がある瞬間の一群のデータに対して干渉をした場合であっても、後の誤り訂正でデータを復元するための工夫である。
図16は、送信側で時間インタリーブを行った信号に対し、受信側で時間デ・インタリーブを行う様子を示している。図16のように、パルス雑音の干渉を受けて信頼性が失われたキャリアシンボル(A)に対して、受信側で、時間デ・インタリーブによりデータを元の配列に戻すことにより、干渉を受けたデータを分散させ、この後、誤り訂正でデータを回復させることができる。したがって、時間インタリーブと誤り訂正符号化処理の組み合わせは、パルス雑音に対する対策となる。
このような時間インタリーブは、OFDM変復調方式のみならず、シングルキャリアの送・受信装置にも採用することができる。
図17は、シングルキャリアも含めたデジタルワイヤレスマイクの送・受信装置の基本構成を示すブロック図である。
図17(a)は、時間インタリーブを行うデジタルワイヤレスマイクの送信側の基本構成である。送信装置11は、情報源符号化部12と、誤り訂正符号化部16と、キャリア変調部17と、時間インタリーブ部18と、複素信号変調部19と、電力増幅部15と、送信アンテナを、少なくとも含む。この構成は、シングルキャリアのデジタルワイヤレスマイクに適用できるものであると同時に、複素信号変調部19をOFDMフレーム構成部及びIFFT部等に対応させると、OFDM変復調方式のデジタルワイヤレスマイクも含まれる一般的な構成である。
マイクからの音声信号は情報源符号化部12でデジタル信号に変換されるとともに、必要に応じて情報源の圧縮が行われる。情報源符号化部12からの出力信号は、誤り訂正符号化部16で符号化された後、キャリア変調部17にてIQマッピングがなされ、複素信号に変換される。複素信号は時間インタリーブ部18に入力され、時間インタリーブ部18ではパルス妨害が分散されるよう、信号の順序が並び替えられて、データが時間的に分散される。時間インタリーブ部18からの出力信号は、複素信号変調部19で複素信号から送信信号への変調が行われ、電力増幅部15を経た後、送信アンテナから放射される。
図17(b)は、時間デ・インタリーブを行うデジタルワイヤレスマイクの受信側の基本構成である。受信装置21は、受信アンテナと、受信増幅部22と、複素信号復調部26と、時間デ・インタリーブ部27と、キャリア復調部28と、誤り訂正復号部29と、情報源復号部25を、少なくとも含む。この構成は、シングルキャリアのデジタルワイヤレスマイクに適用できるものであると同時に、複素信号復調部26をIFFT部及びOFDMフレームデ・マルチプレクス部等に対応させると、OFDM変復調方式のデジタルワイヤレスマイクも含まれる一般的な構成である。
受信アンテナからの信号は受信増幅部22で増幅され、複素信号復調部26に入力される。複素信号復調部26でIQ平面上の信号、すなわち複素信号が復調される。複素信号は時間デ・インタリーブ部27に入力され、時間的に拡散されていた信号を元の配列に戻す。このとき、混入されたパルス妨害は時間的に分散される。その後、キャリア復調部28にてIQデ・マッピングされ、デジタルデータ(ビットデータ)に戻した後、誤り訂正復号部29にて誤りを訂正する。誤り訂正復号された信号は情報源復号部25を経て音声信号が再生される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のデジタルワイヤレスマイク用受信装置の基本構成を示すブロック図である。なお、図17(b)に記載の従来のデジタルワイヤレスマイクの受信装置と同一の構成は、同じ符号を付して、説明を簡略化する。
本発明の受信装置は、送信側で時間インタリーブされた信号を受信するものであり、送信装置は、図17(a)に示す従来のデジタルワイヤレスマイクの送信装置11が利用可能である。
受信装置は、従来の構成である、受信アンテナと、受信増幅部22と、複素信号復調部26と、時間デ・インタリーブ部27と、キャリア復調部28と、誤り訂正復号部29と、情報源復号部25に加えて、消失区間判定部80と、区間消失処理を行う仕組み81を含む。
受信アンテナからの信号は受信増幅部22で増幅され、複素信号復調部26に入力される。複素信号復調部26は受信信号から複素信号S(IQ信号)を復調する。複素信号Sは時間デ・インタリーブ部27に入力される。
時間デ・インタリーブ部27は、送信側の時間インタリーブにより時間的に拡散されていた信号を、反対の処理により元の配列に戻す。このとき、信号配列が元に戻ると共に、パルス妨害を受けた信号は時間的に分散される。
消失区間判定部80は、パルス妨害によりデータの信頼性が失われた区間を判定する。パルス雑音は振幅が非常に大きく、干渉を受けた信号がノイズを含んで振幅が大きくなる等の変質を生じる。消失区間判定部80は、変質した複素信号の性質を利用して、パルス妨害を受けた区間を推定する。
区間消失処理を行う仕組み81は、時間デ・インタリーブ部27から出力された信号のうち、消失区間判定部80で推定された区間の信号を消失(零挿入)させる。なお、図では、区間消失処理を行う仕組み81は、時間デ・インタリーブ部27からの信号と零(0)信号とを、消失区間判定部80からの出力に基づいて切り替える構成が示されているが、干渉(妨害)を受けた信号を消失させる処理であれば、どのような電子的処理で実現しても良い。
その後は、従来の受信装置と同じ処理を行う。すなわち、複素信号をキャリア復調部28にてデ・マッピングし、デジタルデータ(ビットデータ)に戻した後、誤り訂正復号部29にて誤りを訂正する。なお、キャリア復調部28を区間消失処理を行う仕組み81より前に配置して、デ・マッピングした後のデジタルデータに対して、パルス妨害を受けた区間の消失処理を行っても良い。どちらの処理によっても、パルス妨害を受けた区間の消失処理を行った後に、誤り訂正復号を行うことにより、誤り訂正が有効に機能する。
誤り訂正復号された信号は、情報源復号部25を経て音声信号が再生される。
本発明のデジタルワイヤレスマイク用受信装置は、干渉(妨害)を受けた信号を消失させ、零(0)信号としているため、誤り訂正復号部29における誤り訂正処理において、干渉(妨害)を受けた信号が用いられることがなく、適正な誤り訂正によりデータを復元することができる。これにより、パルス妨害を受けても音声信号の品質が劣化しないデジタルワイヤレスマイクシステムを実現できる。
図1に示す本発明の基本構成では、パルス妨害を受けたデータも受けていないデータも、共通の時間デ・インタリーブ部27で処理を行うため、重複した構造がなく、ハード的に有利である。
図2は、図1のデジタルワイヤレスマイク用受信装置の構成を変形したブロック図である。図1の構成との相違点は、消失区間判定部80の位置を時間デ・インタリーブ部271,272の前としたことである。
図2に示すように、本発明の受信装置の変形例は、受信増幅部22で受信アンテナからの信号を増幅し、複素信号復調部26で受信信号から複素信号S(IQ信号)を復調する。その後、複素信号Sは時間デ・インタリーブ部271に入力されるとともに、消失区間判定部80にも入力される。
時間デ・インタリーブ部271は、送信側の時間インタリーブにより時間的に拡散されていた信号を、反対の処理により元の配列に戻す。
消失区間判定部80は、時間デ・インタリーブを行う前の信号に対して、パルス妨害によりデータの信頼性が失われた区間を判定する。消失区間判定部80は、パルス妨害により変質した複素信号の性質を利用して、パルス妨害を受けた区間を推定し、その結果を時間デ・インタリーブ部272に出力をする。
時間デ・インタリーブ部272は、消失区間判定部80の出力に対して、時間的に拡散されていた信号を元の配列に戻す処理と同等の処理を行い、消失区間の情報をデ・インタリーブした結果を区間消失処理を行う仕組み81に出力する。
区間消失処理を行う仕組み81は、消失区間判定部80の出力を時間デ・インタリーブ処理した信号に基づいて、時間デ・インタリーブ部271からの信号のうち妨害を受けた信号(区間の信号)を消失(零挿入)させる。なお、区間消失処理を行う仕組み81は、干渉(妨害)を受けた信号を消失させる処理であれば、どのような電子的処理で実現しても良い。
その後は、従来の受信装置と同じ処理を行う。すなわち、複素信号をキャリア復調部28にてデ・マッピングし、デジタルデータ(ビットデータ)に戻した後、誤り訂正復号部29にて誤りを訂正する。なお、キャリア復調部28を区間消失処理を行う仕組み81より前に配置して、デ・マッピングした後のデジタルデータに対して、パルス妨害を受けた区間の消失処理を行っても良い。どちらの処理によっても、パルス妨害を受けた区間の消失処理を行った後に、誤り訂正復号を行うことにより、誤り訂正が有効に機能する。
誤り訂正復号された信号は情報源復号部25を経て音声信号が再生される。
この変形例のデジタルワイヤレスマイク用受信装置も、図1の受信装置と原理的に同じであり、干渉(妨害)を受けた信号を消失させ、零(0)信号としているため、誤り訂正復号部29における誤り訂正処理において、適正な誤り訂正によりデータを復元することができる。この場合、本線信号と消失区間判定部80の出力信号の2つ時間デ・インタリーブ部271,272が必要となるが、一方、この構成は、パルス妨害の判定を時間デ・インタリーブを行う前で処理するため、パルス妨害を受けた信号がまとまっており、消失区間の判定(パルス幅の推定)が容易となる特徴がある。
図3は、本発明の具体的な実施例1としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置を示すブロック図である。実施例1の受信装置では、信号(複素信号)Sの振幅を検出するために絶対値演算を行い、複素信号Sの振幅(|S|)の値をしきい値Wthと比較して消失区間の判定を行う。
図3の実施例1のデジタルワイヤレスマイク用受信装置の構成は、図1の受信装置の基本構成と実質的に同一の構成を備えており、受信アンテナと、受信増幅部22と、複素信号復調部26と、時間デ・インタリーブ部27と、消失区間判定部80と、乗算器84と、キャリア復調部28と、誤り訂正復号部29と、情報源復号部25を含む。各構成要素の機能は、図1と同じであるので説明を省略する。
消失区間判定部80は、信号絶対値演算部82と、信号絶対値判定部83とを含み、信号絶対値演算部82は、時間デ・インタリーブ部27から出力された複素信号Sに対して、その振幅を示す複素信号Sの絶対値(|S|)を導出する。
なお、複素信号Sの絶対値(|S|)は、計算して求めることもできるし、受信信号の振幅であるから、高周波チューナーから出力されるRSSI(Received Signal Strength Indication)信号やAGC(Automatic Gain Control)電圧を用いることもできる。信号絶対値演算部82は、任意の手段を用いて絶対値(|S|)を求めて良い。
信号絶対値判定部83は、信号絶対値演算部82によって導出した複素信号Sの振幅の値(|S|)をしきい値Wthと比較する。強いパルス雑音により干渉(妨害)を受けた信号は変質し、復調したときその振幅が大きな異常値を示す。本実施例1では、この干渉による信号の変質を利用し、信号絶対値演算部82の出力(複素信号Sの振幅|S|)の信号レベルがしきい値Wthを下回る場合は、信頼性のある信号であるとして1を、振幅|S|の信号レベルがしきい値Wth以上となる場合は、パルス妨害を受けた信号であるとして0を、信号絶対値判定部83の出力とする。
したがって、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した信号Sに対して1、パルス妨害を受けたと判定した信号Sに対して0の、判定結果信号Pを出力する。
乗算器84は、時間デ・インタリーブ部27から出力された複素信号Sと、消失区間判定部80からの信号P(1又は0)とを乗算し、この結果、パルス妨害を受けたと判定した信号Sが零(0)となり消失する。
なお、図示されていないが、時間デ・インタリーブ部27と乗算器84との間には、消失区間判定部80の処理に要する時間を調整する遅延調整の手段を設けることが望ましい。
消失区間判定部80と乗算器84により、受信信号がパルス雑音により妨害を受けた区間を零とする消失処理を行った後に、キャリア復調部28によるデ・マッピングと誤り訂正復号部による誤り訂正を行う。なお、キャリア復調部28は、乗算器84の前においても良く、デ・マッピング後のビットデータについて、パルス妨害を受けた消失区間を消失させることもできる。
実施例1は、シングルキャリアのデジタルワイヤレスマイクにも、OFDM変復調方式のデジタルワイヤレスマイクにも、適用可能である。復調された信号(複素信号)Sの振幅に基づいて消失処理を行い、比較的簡易に品質の良い音声出力を得ることができる。
なお、実施例1は、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を有しているが、図2の受信装置の変形例に基づく構造を採用しても良い。
図4は、本発明の具体的な実施例2としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置を示すブロック図である。実施例2の受信装置では、信号(複素信号)Sの誤差量(ME:Modulation Error)を検出するための演算を行い、この誤差量(ME)の値をしきい値MEthと比較して消失区間の判定を行う。
ME(Modulation Error:変調誤差)とは、下記の演算を行うものである。
ME = |受信信号S − 受信信号の推定値<S>|
ここで受信信号の推定値<S>とは、受信信号Sを複素平面上で領域判定などにより判定した信号である。
図4の実施例2のデジタルワイヤレスマイク用受信装置の構成は、図1の受信装置の基本構成と実質的に同一の構成を備えており、受信アンテナと、受信増幅部22と、複素信号復調部26と、時間デ・インタリーブ部27と、消失区間判定部80と、乗算器84と、キャリア復調部28と、誤り訂正復号部29と、情報源復号部25を含む。各構成要素の機能は、図1と同じであるので説明を省略する。
消失区間判定部80は、ME演算部85と、ME判定部86とを含み、ME演算部85は、時間デ・インタリーブ部27から出力された複素信号Sに対して、その誤差量の推定値(ME)を算出する。
ME判定部86は、ME演算部85によって算出した受信信号(複素信号)Sの誤差量(ME)をしきい値MEthと比較する。強いパルス雑音による干渉(妨害)を受けた信号はその誤差量が大きな異常値を示す。本実施例2では、この干渉による信号の誤差量を利用し、ME演算部85の出力(ME)の信号レベルがしきい値MEthを下回る場合は、信頼性のある信号であるとして1を、出力(ME)の信号レベルがしきい値MEth以上となる場合は、パルス妨害を受けた信号であるとして0を、ME判定部86の出力とする。
したがって、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した信号Sに対して1、パルス妨害を受けたと判定した信号Sに対して0の、判定結果信号Pを出力する。
乗算器84は、時間デ・インタリーブ部27から出力された複素信号Sと、消失区間判定部80からの信号P(1又は0)とを乗算し、この結果、パルス妨害を受けたと判定した信号Sが零(0)となり消失する。
なお、図示されていないが、時間デ・インタリーブ部27と乗算器84との間には、消失区間判定部80の処理に要する時間を調整する遅延調整の手段を設けることが望ましい。
消失区間判定部80と乗算器84により、受信信号がパルス雑音により妨害を受けた区間を零とする消失処理を行った後に、キャリア復調部28によるデ・マッピングと誤り訂正復号部による誤り訂正を行う。なお、キャリア復調部28は、乗算器84の前においても良く、デ・マッピング後のビットデータについて、パルス妨害を受けた消失区間を消失させることもできる。
また、この実施例2では、誤差量(ME)を利用したが、消失区間判定部にMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)を用いても良い。MERを用いる場合は、MERの値としきい値MERthとを比較し、MERが大きい場合は、パルス妨害を受けていない信号として1を出力し、MERが小さい場合は、パルス妨害を受けている信号であるとして0を出力する。
実施例2は、シングルキャリアのデジタルワイヤレスマイクにも、OFDM変復調方式のデジタルワイヤレスマイクにも、適用可能である。復調された信号(複素信号)Sの誤差量(ME)に基づいて消失処理を行い、比較的簡易に品質の良い音声出力を得ることができる。
なお、実施例2は、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を有しているが、図2の受信装置の変形例に基づく構造を採用しても良い。
図5は、本発明の具体的な実施例3としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置を示すブロック図である。実施例3の受信装置では、信号(複素信号)Sの振幅(|S|)と誤差量(ME)の両方の値を用いてパルス妨害を受けた区間(消失区間)の推定を行う。
図5の実施例3のデジタルワイヤレスマイク用受信装置の構成は、図2の受信装置の基本構成の変形例と実質的に同一の構成を備えており、受信アンテナと、受信増幅部22と、複素信号復調部26と、時間デ・インタリーブ部271と、消失区間判定部80と、時間デ・インタリーブ部272と、乗算器84と、キャリア復調部28と、誤り訂正復号部29と、情報源復号部25を含む。各構成要素の機能は、図2と同じであるので説明を省略する。
消失区間判定部80は、信号絶対値演算部82と、ME演算部85と、パルス区間推定部87とを含む。信号絶対値演算部82は、複素信号復調部26から出力された複素信号Sに対して、その振幅を示す複素信号Sの絶対値(|S|)を導出する。なお、絶対値(|S|)の導出にあたっては、計算で求めても良いし、RSSI信号やAGC電圧を用いても良いことは、実施例1と同様である。
ME演算部85は、複素信号復調部26から出力された複素信号Sに対して、その誤差量の推定値(ME)を算出する。
パルス区間推定部87は、信号絶対値演算部82によって算出した複素信号Sの振幅の値(|S|)をしきい値Wthと比較するとともに、ME演算部85によって算出した受信信号(複素信号)Sの誤差量(ME)をしきい値MEthと比較する。本実施例3では、複素信号Sの振幅|S|に基づく判断(振幅|S|がしきい値Wthを下回る場合は1、しきい値Wth以上となる場合は0)と、受信信号(複素信号)Sの誤差量(ME)に基づく判断(誤差量(ME)がしきい値MEthを下回る場合は1、しきい値MEth以上となる場合は0)とを組み合わせて、パルス区間推定部87の出力を決定する。
例えば、複素信号Sの振幅|S|に基づく判断結果と誤差量(ME)に基づく判断結果との、AND演算又はOR演算により、パルス区間判定部87の出力を決定する。AND演算によれば、パルス妨害の疑いが少しでもある信号が除かれ、OR演算であれば、パルス妨害の判断が緩和される。さらに、両者の判断結果に対して重み付けをして判断することもできる。
この結果、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した信号Sに対して1、パルス妨害を受けたと判定した信号Sに対して0の、判定結果信号Pを出力する。
消失区間判定部80の出力は、その後、時間デ・インタリーブ部272にて、元の配列に戻す処理が行われる。
乗算器84は、時間デ・インタリーブ部271から出力された複素信号Sと、時間デ・インタリーブ部272からの信号P(1又は0)とを乗算し、この結果、パルス妨害を受けたと判定した信号Sが零(0)となり消失する。
なお、図示されていないが、時間デ・インタリーブ部271と乗算器84との間には、消失区間判定部80及び時間デ・インタリーブ部272の処理に要する時間を調整する遅延調整の手段を設けることが望ましい。
乗算器84により、受信信号がパルス雑音により妨害を受けた区間を零とする消失処理を行った後に、キャリア復調部28によるデ・マッピングと誤り訂正復号部による誤り訂正を行う。なお、キャリア復調部28は、乗算器84の前においても良く、デ・マッピング後のビットデータについて、パルス妨害を受けた消失区間を消失させることもできる。
実施例3は、シングルキャリアのデジタルワイヤレスマイクにも、OFDM変復調方式のデジタルワイヤレスマイクにも、適用可能である。復調された信号(複素信号)Sの振幅と誤差量(ME)の両方に基づいて消失処理を行い、より精緻に判定を行って、品質の良い音声出力を得ることができる。
なお、実施例3は、図2の受信装置の変形例に基づく構造を有しているが、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を採用しても良い。
次に、本発明をOFDMデジタル伝送方式のワイヤレスマイクに適用した場合について述べる。OFDMデジタルワイヤレスマイクの基本構成は、図12にて説明したとおりであり、以下では、受信側の伝送路復号部24の構成について、詳しく説明する。
図6は、本発明の具体的な実施例4としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置の伝送路復号部を示すブロック図である。本実施例の伝送路復号部は、伝送路情報(CSI:Channel State Information)の絶対値を用いてパルス妨害を受けた区間(消失区間)の判定を行うものである。
図6の実施例4の受信装置の伝送路復号部の構成は、図14の伝送路復号部の基本構成に、消失区間判定部80を加えた構成を備えており、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55と、消失区間判定部80と、時間デ・インタリーブ部56と、周波数デ・インタリーブ部57と、キャリア復調部58と、乗算器91と、誤り訂正復号部61と、エネルギー逆拡散部62と、を含む。各構成要素の機能は、図14と同じであるので説明を省略する。
なお、本発明において、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55からなり、OFDM受信信号から複素信号(Data)と伝送路情報(CSI)を出力するブロック群を、「OFDM複素信号復調部」と呼ぶことがある。
消失区間判定部80は、CSI絶対値演算部88と、CSI絶対値判定部89とを含む。
内挿フイルタ部54において、抽出されたパイロット信号から全てのキャリアシンボルに対応した伝送路情報(CSI)が求められ、CSI絶対値演算部88は、このCSIの振幅を示す絶対値(|CSI|)を演算する。後述のように、このCSIの絶対値は、全てのキャリアシンボル毎に求めても良いし、シンボル単位で求めても良い。CSI絶対値判定部89では、このCSIの絶対値(|CSI|)をしきい値Wthと比較することで、消失区間を判定する。
なお、強いパルス雑音による干渉(妨害)があると、CSIが影響を受けてその振幅が大きな異常値を示す。本実施例4では、この干渉による影響を利用し、CSI絶対値演算部88の出力(|CSI|)の信号レベルがしきい値Wthを下回る場合は信頼性のあるシンボルが伝送されているとして1を、出力(|CSI|)の信号レベルがしきい値Wth以上となる場合は、パルス妨害を受けたシンボルが伝送されているとして0を、CSI絶対値判定部89の出力とする。
したがって、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した区間に対して1、パルス妨害を受けたと判定した区間に対して0の、判定結果信号Pを出力する。
判定結果信号(判定された消失区間の情報)を時間デ・インタリーブ部56及び周波数デ・インタリーブ部57でそれぞれデ・インタリーブを施す。同様に復調された本線のデータと乗算器91にて乗算を行い、消失処理を行なった後、誤り訂正復号部61に入力し、ビタビ復号等の誤り訂正を行う。その後は、通常のOFDM信号の復号処理となる。
消失区間の判定はOFDM信号のキャリアシンボルごとに行うこともできるし、OFDM信号のシンボル単位(同一タイミングで送信される一群のキャリアシンボル)で行うこともできる。OFDMのシンボル番号をi, キャリア番号をkとすると、伝送路情報CSIは、CSI(i,k)と記述できる。キャリアシンボルごとに消失区間を判定する場合は、CSI(i,k)の単位で判定を行う。
一方、シンボル単位で実施する場合は、キャリア方向に加算平均演算を行う。OFDMのサブキャリア数をKとすると、シンボル単位の伝送路情報CSIが次式で得られる。
このシンボル単位の値を使って、シンボルごとに伝送路情報CSIの絶対値をしきい値Wthと比較して消失区間を判定する。
本実施例4は、復調された本線のデータ(Data)と、消失区間判定部80の判定結果信号Pを求めた後、それぞれ時間デ・インタリーブを行っているから、図2の受信装置の変形例に基づく構造を有しているが、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を採用しても良い。
また、図6では、キャリア復調部58の後に、乗算器91が配置されているが、乗算器91を周波数デ・インタリーブ部57とキャリア復調部58の間に配置し、複素信号Sに対して判定結果信号Pを掛け合わせて、パルス妨害を受けた信号を消失させても良い。
図7は、本発明の具体的な実施例5としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置の伝送路復号部を示すブロック図である。本実施例の伝送路復号部は、信号(Data、複素信号S)の誤差量(ME:Modulation Error)を用いてパルス妨害を受けた区間(消失区間)の判定を行うものである。ここで誤差量(ME)は、実施例2で定義したME(Modulation Error:変調誤差)を用いてよい。
図7の実施例5の受信装置の伝送路復号部の構成は、図14の伝送路復号部の基本構成に、消失区間判定部80を加えた構成を備えており、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55と、消失区間判定部80と、時間デ・インタリーブ部56と、周波数デ・インタリーブ部57と、キャリア復調部58と、乗算器91と、誤り訂正復号部61と、エネルギー逆拡散部62と、を含む。各構成要素の機能は、図14と同じであるので説明を省略する。
消失区間判定部80は、ME演算部85と、ME判定部86とを含む。
内挿フイルタ部54において、抽出されたパイロット信号から全てのキャリアシンボルに対応した伝送路情報(CSI)が求められ、本線のデータ信号をCSIで複素除算することで全てのキャリアシンボルの検波処理が行われる。ME演算部85は、この検波処理された信号から変調誤差量(ME)の算出を行う。後述のように、この変調誤差量(ME)は、全てのキャリアシンボル毎に求めても良いし、シンボル単位で求めても良い。ME判定部86では、このMEの値としきい値MEthとの値の比較を行い、消失区間を判定する。
実施例2と同様に、パルス妨害があると変調誤差(ME)が大きくなるので、この干渉による影響を利用し、ME演算部85の出力(ME)の信号レベルがしきい値MEthを下回る場合は、信頼性のある信号であるとして1を、出力(ME)の信号レベルがしきい値MEth以上となる場合は、パルス妨害を受けた信号であるとして0を、ME判定部86の出力とする。
したがって、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した信号Sに対して1、パルス妨害を受けたと判定した信号Sに対して0の、判定結果信号Pを出力する。
判定結果信号(判定された消失区間の情報)を時間デ・インタリーブ部56及び周波数デ・インタリーブ部57でそれぞれデ・インタリーブを施す。同様に復調された本線のデータと乗算器91にて乗算を行い、消失処理を行なった後、誤り訂正復号部61に入力し、ビタビ復号等の誤り訂正を行う。その後は、通常のOFDM信号の復号処理となる。
消失区間の判定はOFDM信号のキャリアシンボルごとに行うこともできるし、OFDM信号のシンボル単位で行うこともできる。OFDMのシンボル番号をi,キャリア番号をkとすると、変調誤差MEは、ME(i,k)と記述できる。キャリアシンボルごとに消失区間を判定する場合は、ME(i,k)の単位で判定を行う。
一方、シンボル単位で実施する場合は、キャリア方向に加算平均演算を行う。OFDMのサブキャリア数をKとすると、シンボル単位の誤差量MEが次式で得られる。
このシンボル単位の値を使って、シンボルごとに誤差量ME(i)をしきい値MEthと比較して消失区間を判定する。
本実施例5は、復調された本線のデータ(Data)と、消失区間判定部80の判定結果信号Pを求めた後、それぞれ時間デ・インタリーブを行っているから、図2の受信装置の変形例に基づく構造を有しているが、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を採用しても良い。
また、図7では、キャリア復調部58の後に、乗算器91が配置されているが、乗算器91を周波数デ・インタリーブ部57とキャリア復調部58の間に配置し、複素信号Sに対して判定結果信号Pを掛け合わせて、パルス妨害を受けた信号を消失させても良い。
図8は、本発明の具体的な実施例6としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置の伝送路復号部を示すブロック図である。本実施例の伝送路復号部は、伝送路情報(CSI)の絶対値と、信号(Data、複素信号S)の誤差量(ME:Modulation Error)の両者を用いて、パルス妨害を受けた区間(消失区間)の判定を行うものである。
図8の実施例6の受信装置の伝送路復号部の構成は、図14の伝送路復号部の基本構成に、消失区間判定部80を加えた構成を備えており、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55と、消失区間判定部80と、時間デ・インタリーブ部56と、周波数デ・インタリーブ部57と、キャリア復調部58と、乗算器91と、誤り訂正復号部61と、エネルギー逆拡散部62と、を含む。各構成要素の機能は、図14と同じであるので説明を省略する。
消失区間判定部80は、ME演算部85と、CSI絶対値演算部88と、統合判定部90とを含む。
ME演算部85は、本線のデータ信号をCSIで複素除算することで検波処理された信号(Data、複素信号S)から変調誤差量(ME)の算出を行う。この処理は、実施例5と同じである。
また、CSI絶対値演算部88は、このCSIの振幅を示す絶対値(|CSI|)を演算する。この処理は、実施例4と同じである。
統合判定部90は、CSI絶対値演算部88によって算出したCSIの絶対値(|CSI|)をしきい値Wthと比較するとともに、ME演算部85によって算出した受信信号(複素信号)の誤差量(ME)をしきい値MEthと比較する。そして、CSIの振幅を示す絶対値(|CSI|)に基づく判断と、受信信号(複素信号)の誤差量(ME)に基づく判断とを組み合わせて、統合判定部90の出力を決定する。
例えば、CSIの絶対値(|CSI|)に基づく判断結果と誤差量(ME)に基づく判断結果との、AND演算又はOR演算により、統合判定部90の出力を決定する。さらに、両者の判断結果に対して重み付けをして判断することもできる。
この結果、消失区間判定部80は、パルス妨害を受けていないと判定した区間に対して1、パルス妨害を受けたと判定した区間に対して0の、判定結果信号Pを出力する。
判定結果信号(判定された消失区間の情報)を時間デ・インタリーブ部56及び周波数デ・インタリーブ部57でそれぞれデ・インタリーブを施す。同様に復調された本線のデータと乗算器91にて乗算を行い、消失処理を行なった後、誤り訂正復号部61に入力し、ビタビ復号等の誤り訂正を行う。その後は、通常のOFDM信号の復号処理となる。
なお、消失区間の判定はOFDM信号のキャリアシンボルごとに行うこともできるし、OFDM信号のシンボル単位で行うこともできることは、実施例4,5と同様である。
本実施例6は、復調された本線のデータ(Data)と、消失区間判定部80の判定結果信号Pを求めた後、それぞれ時間デ・インタリーブを行っているから、図2の受信装置の変形例に基づく構造を有しているが、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を採用しても良い。
また、図8では、キャリア復調部58の後に、乗算器91が配置されているが、乗算器91を周波数デ・インタリーブ部57とキャリア復調部58の間に配置し、複素信号Sに対して判定結果信号Pを掛け合わせて、パルス妨害を受けた信号を消失させても良い。
図9は、本発明の具体的な実施例7としてのデジタルワイヤレスマイク用受信装置の伝送路復号部を示すブロック図である。本実施例の伝送路復号部は、パルス妨害を受けた区間(消失区間)の判定を行うとともに、伝送路情報(CSI)の絶対値を利用し、伝送路復号部の誤り訂正に軟判定復号を用いるものである。
図9の実施例7の受信装置の伝送路復号部の構成は、図14の伝送路復号部の基本構成に、消失区間判定部80を加え、誤り訂正復号部61を誤り訂正軟判定復号部93とした構成を備えており、窓処理部51と、FFT(Fast Fourier Transform)部52と、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53と、内挿フィルタ部54と、複素除算部55と、消失区間判定部80と、時間デ・インタリーブ部56と、周波数デ・インタリーブ部57と、キャリア復調部58と、乗算器91及び92と、誤り訂正軟判定復号部93と、エネルギー逆拡散部62と、を含む。図14と同じ構成要素の機能は、説明を省略する。
消失区間判定部80は、内挿フイルタ部54において求められた伝送路情報(CSI)と、本線のデータ信号をこのCSIで複素除算することで検波処理されたデータ信号(Data)を入力とし、パルス妨害を受けていないと判定した区間に対して1、パルス妨害を受けたと判定した区間に対して0とする判定結果信号Pと、CSIの振幅を示す絶対値(|CSI|)とを、出力する。
消失区間判定部80は、CSI絶対値演算部を備えるが、その他の内部構成は任意に設定することができ、判定結果信号Pを得る方法としては、例えば、前述の実施例4〜6の何れの判定方法でも採用することができる。
複素除算部55からの出力データと同様に、CSIの絶対値(|CSI|)と、消失区間判定部からの信号Pの両方に対して、時間デ・インタリーブ部56及び周波数デ・インタリーブ部57でそれぞれデ・インタリーブの処理を施す。その後、乗算器91,92により、P×|CSI|をキャリア復調後の本線の受信信号に対して乗算を行う。
この乗算処理の結果、P信号によりパルス妨害を受けた信号は消失し、他の信号は、伝送情報の絶対値(|CSI|)の重み付けがなされる。
その後、誤り訂正軟判定復号部93にて、軟判定による誤り訂正復号を行う。キャリア復調後の信号に対して乗算(重み付け)を行うことで、伝搬路のフェージングなどによって振幅が小さくなっているサブキャリアの信頼度を下げて軟判定復号を行うことで、誤り訂正の性能を上げることができる。
このように構成することで、フェージングとパルス妨害の両方の影響がある環境でも安定に利用できるデジタルワイヤレスマイク用送・受信装置を提供できる。
なお、本実施例7は、復調された本線のデータ(Data)と、伝送情報の絶対値(|CSI|)と、消失区間判定部80の判定結果信号Pを求めた後、それぞれ時間デ・インタリーブを行っているから、図2の受信装置の変形例に基づく構造を有しているが、図1の受信装置の基本構成に基づく構造を採用しても良い。
また、図9では、キャリア復調部58の後に、乗算器91,92が配置されているが、乗算器91,92を周波数デ・インタリーブ部57とキャリア復調部58の間に配置し、複素信号Sに対して判定結果信号Pを掛け合わせて、パルス妨害を受けた信号を消失させても良い。
図10は、受信ダイバーシティを適用したデジタルワイヤレスマイク用受信装置の伝送路復号部を示すブロック図である。
受信ダイバーシティは、複数のアンテナで受信した同一の無線信号について、電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いたり、受信した信号を合成したりすることによって、通信の質や信頼性の向上を図る技術のことである。これまで説明したいずれの実施例と組み合わせることができるが、図10では、伝送路情報(CSI)の重み付けによる軟判定復号の実施例(実施例7)に適用した例を示す。
図10のダイバーシティの受信装置の伝送路復号部の構成は、図14の従来の伝送路復号部の基本構成と比較して、窓処理部51、FFT(Fast Fourier Transform)部52、OFDMフレームデ・マルチプレクス部53、及び内挿フィルタ部54からなる受信部を複数系統(ここではn系統)備えており、OFDM受信信号をn系統で受信して、受信信号を強めることができる。
n系統で受信されたOFDM受信信号1〜nは、それぞれ、データ信号(Data)及び伝送路情報(CSI)に変換され、ダイバーシティ合成部94に入力される。ダイバーシティ合成部94は、複数の系統のデータ信号(Data)1〜nと伝送路情報(CSI)1〜nとに基づいて、品質の向上したデータ信号Data及び伝送路情報の絶対値(|CSI|)と、消失区間を判定した結果である判定結果信号Pを演算して出力する。
ダイバーシティ合成部94から出力されたデータ信号と、CSIの絶対値(|CSI|)と、消失区間判定部からの信号Pの3者に対して、時間デ・インタリーブ部56及び周波数デ・インタリーブ部57でそれぞれデ・インタリーブの処理を施し、乗算器91,92により、P×|CSI|をキャリア復調後の本線の受信信号に対して乗算を行う。なお、図10では、キャリア復調部58の後に、乗算器91,92が配置されているが、乗算器91,92を周波数デ・インタリーブ部57とキャリア復調部58の間に配置し、複素信号Sに対して判定結果信号Pを掛け合わせて、パルス妨害を受けた信号を消失させても良い。
この乗算処理の結果、P信号によりパルス妨害を受けた信号は消失し、他の信号は、伝送情報の絶対値(|CSI|)の重み付けがなされる。
その後、誤り訂正軟判定復号部93にて、軟判定による誤り訂正復号を行う。キャリア復調後の信号に対して乗算(重み付け)を行うことで、伝搬路のフェージングなどによって振幅が小さくなっているサブキャリアの信頼度を下げ、振幅の大きいサブキャリアの信頼度を高めて軟判定復号を行うことで、誤り訂正の性能を上げることができる。
このように構成することで、フェージングとパルス妨害の両方の影響がある環境でも安定に利用できるデジタルワイヤレスマイク用送・受信装置を提供できる。
図11に、ダイバーシティ合成部95の構成例を示す。ダイバーシティ合成部95は、複数(n)の系統の伝送路情報(CSI)1〜n[Hl(k)]に基づいて、ダイバーシティ合成用重み係数生成部95にて、重み係数Wl(k)を生成し、各系統ごとに、この重み係数Wl(k)を各データ信号Xl(k)とを掛け合わせ、合成部97にて合成して、品質の向上したデータ信号Dataを導出する。
また、各系統から得られたCSIのノルム合成(すなわち、重み係数Wl(k)の分母、次式)を用いて、全体のCSIの絶対値(|CSI|)を得る。
また、消失区間を判定した結果である判定結果信号Pは、ME演算部85において、品質の向上したデータ信号Dataから求めたME値と、複数系統から導かれた伝送路情報(CSI)の絶対値とに基づいて、総合判定部90にて消失区間を判定する。
これら出力(データ信号Data、伝送路情報(CSI)の絶対値、判定結果信号P)を、時間デ・インタリーブ部56に入力して、以下は、図10の処理を行う。
このダイバーシティは、全ての実施例と組み合わせて、信号データの品質を向上させることができる。
(実験結果)
従来技術と本発明の効果を検証した。
パルス妨害の大きい環境(ノイズ強度が信号強度の10倍以上の条件)において、(a)時間インタリーブを行わない場合、(b)時間インタリーブは行うが消失判定を行わない場合、(c)時間インタリーブと消失判定を共に行う場合の3つの場合において、ビットエラーが起きる割合を対比実験した。
その結果、BER(Bit Error Ratio)が、(a)の場合では5×10-5であったのに対し、(b)の時間インタリーブのみでは、3×10-5と僅かに改善したのみであった。しかし、本発明の(c)の場合は、BERが5×10-7以下と大幅に改善し、本発明の効果が実証された。
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。