以下に、図1を用いて本発明の第一実施形態に係るターボチャージャ1について説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ1は、エンジン20(図7参照)から排出されている排気の排気圧力を駆動源として加圧圧縮した吸気をエンジン20に供給するものである。ターボチャージャ1は、連結部2、タービン6、コンプレッサ9等から構成されている。
連結部2は、タービン6とコンプレッサ9とを連結している。連結部2は、センターハウジング3、連結軸4、軸受け5等から構成されている。センターハウジング3は、一側にタービン6が連結され、他側にコンプレッサ9が連結されている。連結軸4は、後述のタービンホイール8と後述のコンプレッサホイール11とを連結する。連結軸4は、軸受け5を介してセンターハウジング3に回転自在に支持されている。
タービン6は、エンジン20の排気圧を回転駆動力に変換するものである。タービン6は、タービンケーシング7、タービンホイール8等から構成されている。
タービンケーシング7は、有底円筒状に形成されている部材である。タービンケーシング7は、一側(底部側)がセンターハウジング3に接続されている。タービンケーシング7の一側には、外周部に排気が供給されている排気供給路7aが形成されている。タービンケーシング7の他側(反底部側)には、排気の排出口7bが形成されている。タービンケーシング7の底部には、連結軸4が連通されている。タービンケーシング7の排気供給路7aは、タービンケーシング7の内部に連通するように形成されている。
タービンホイール8は、タービンホイール8の基部であるタービンハブ8aと、タービンハブ8aの外周面8cに周方向に等間隔で配置されている複数のタービンブレード8bとから構成されている。タービンホイール88は、タービンハブ8aが連結軸4に固定されて回転自在に支持されている。タービンハブ8aは、連結軸4の軸心に対して平行な反連結軸4側の外周面8cが連結軸4側に向かって湾曲しながら拡径し、連結軸4側の端部に連結軸4の軸心に対して垂直な方向に向かうフランジ8dが形成されている。
タービンホイール8は、タービンハブ8aのフランジ8d(拡径側)の外周がタービンケーシング7の排気供給路7aに対向し、タービンハブ8aの縮径側の端部がタービンケーシング7の排出口7bに対向するようにタービンケーシング7の内部に配置されている。つまり、タービンホイール8は、排気の供給側から排出側に向かってタービンハブ8aが縮径するように配置されている。このように構成することで、タービンホイール8は、供給された排気の排気圧によって回転されながら、排気をタービンハブ8aの外周面8cによって回転軸に平行な方向に案内して排出口7bから排出させる。
コンプレッサ9は、エンジン20の給気を加圧圧縮する。コンプレッサ9は、コンプレッサケーシング10、コンプレッサホイール11等から構成されている。
コンプレッサケーシング10は、円筒状に形成されている部材である。コンプレッサケーシング10は、一側がセンターハウジング3に接続されて底部が構成されている。センターハウジング3によって構成されている底部には、連結軸4が連通されている。コンプレッサケーシング10の一側(底部側)には、外周部に吸気が排出されている吸気排出路10aが形成されている。コンプレッサケーシング10の他側(反底部側)には、吸気の供給口10bが形成されている。コンプレッサケーシング10の内壁10cは、一側に向かって拡径するように形成されて吸気排出路10aに連通されている。
コンプレッサホイール11は、コンプレッサホイール11の基部を構成するコンプレッサハブ11aと、コンプレッサハブ11aの外周面11dに周方向に等間隔で交互に配置されている複数のフルブレード11b(全翼)とスプリッタブレード11c(短翼)とから構成されている。
コンプレッサホイール11は、コンプレッサハブ11aが連結軸4に固定されて回転自在に支持されている。つまり、コンプレッサホイール11は、連結軸4を介してタービンホイール8からの回転動力が伝達可能に構成されている。コンプレッサハブ11aは、連結軸4の軸心に対して平行な反連結軸4側の外周面11dが連結軸4側に向かって湾曲しながら拡径し、連結軸4側端部に連結軸4の軸心に対して垂直な方向に向かうフランジ11eが形成されている。フルブレード11b(全翼)とスプリッタブレード11c(短翼)の外縁形状は、微小な隙間を構成するようにコンプレッサケーシング10の内壁10cに沿って形成されている。また、スプリッタブレード11cの縮径側の端部は、フルブレード11bの縮径側の端部よりも拡径側に配置されている。なお、コンプレッサホイール11は、スプリッタブレード11cを有しないものでもよい。
コンプレッサホイール11は、コンプレッサハブ11aのフランジ11e(拡径側)の外周がコンプレッサケーシング10の吸気排出路10aに対向し、コンプレッサハブ11aの縮径側の端部がコンプレッサケーシング10の吸気の供給口10bに対向するようにコンプレッサケーシング10の内部に配置されている。つまり、コンプレッサホイール11は、吸気の供給側から排出側に向かってコンプレッサハブ11aが拡径するように配置されている。この際、コンプレッサケーシング10の内壁10cとコンプレッサハブ11aとの間隔は、吸気排出路10aに近接するにつれて狭くなるように構成されている。すなわち、コンプレッサケーシング10内には、コンプレッサケーシング10の内壁10c、フルブレード11b、スプリッタブレード11c、及び外周面11dに囲まれる空間によって吸気圧縮通路11f(図2、図3参照)が構成されている。コンプレッサホイール11は、フルブレード11bまたはスプリッタブレード11cから第1ブレードBL1・第2ブレードBL2・が構成されている。
上述の通り、ターボチャージャ1は、タービン6に排気が供給されていると排気圧力によってタービンホイール8が回転されている。タービンホイール8と接続されているコンプレッサホイール11は、タービンホイール8の回転駆動力によって回転されている。コンプレッサホイール11は、吸気の供給口10bから吸気を取り込む。取り込まれた吸気は、コンプレッサホイール11によって吸気圧縮通路11fを介して吸気排出路10aに排出されている。この際、吸気は、吸気圧縮通路11fにおいて加圧圧縮され、圧縮熱が発生する。
次に、図1と図2とを用いて、本発明の一実施形態に係る回転速度検出装置12について説明する。なお、本実施形態において、回転速度検出装置12はコンプレッサ9の回転速度を検出するものとしたがこれに限定するものではなくタービンの回転速度を検出するように構成してもよい。
図1に示すように、回転速度検出装置12は、コンプレッサ9の回転速度を検出する。回転速度検出装置12は、検出部13、アンプ14、コントローラ15等から構成されている。回転速度検出装置12は、検出部13でコンプレッサホイール11のフルブレード11bとスプリッタブレード11cを検出することでコンプレッサ9の回転速度を検出する。
検出部13は、フルブレード11bとスプリッタブレード11cとを検出する。検出部13は、コンプレッサケーシング10の吸気の供給口10b側に形成されている挿入孔10dに挿入して取り付けられている。この際、検出部13は、その先端がコンプレッサケーシング10の内壁10cから突出しないように配置されている。検出部13は、略円筒状の筐体の内部に図示しない磁界Bを発生する磁石と図示しない検出用コイルとを有する。検出部13は、磁石から発生している磁界Bが検出用コイルを貫通するように構成される。つまり、検出部13は、検出コイルを貫通する磁界Bの磁束が変化することにより検出用コイルに誘導起電力が発生するように構成されている。検出部13は、発生した誘導起電力を検出信号として出力する。これにより、回転速度検出装置12は、フルブレード11b若しくはスプリッタブレード11cが検出部13の近傍を通過したと判断する。
検出部13は、形状が異なるフルブレード11bとスプリッタブレード11cとを検出するために、フルブレード11bとスプリッタブレード11cとが共に磁界Bを通過するように配置しなければならない。従って、図2に示すように、検出部13は、フルブレード11bとスプリッタブレード11cとが共にコンプレッサケーシング10に近接している範囲である領域Aが磁界Bの範囲に含まれるように配置する必要がある。
アンプ14は、検出部13からの信号を増幅するものである。アンプ14は、検出部13と接続され、検出部13からの信号を取得する。アンプ14は、検出部13からの信号を増幅してコントローラ15に送信する。
コントローラ15は、コンプレッサ9の回転速度を算出するものである。コントローラ15は、アンプ14からの増幅信号の処理を行うための種々のプログラムやデータが格納されている。具体的には、回転速度検出装置12は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
コントローラ15は、エンジン20の回転速度Nと出力トルクTqとに基づいてコンプレッサ9の目標回転速度Vtを算出するコンプレッサ回転速度マップM1が格納されている。コントローラ15は、アンプ14と接続され、アンプ14からの増幅信号を取得することが可能である。コントローラ15は、アンプ14からの増幅信号を用いてコンプレッサ9の回転数を算出する。コントローラ15は、エンジン20の制御装置であるECU25に接続され、所定の処理を施したアンプ14からの増幅信号をECU25に送信することが可能である(図7参照)。
次に、図3を用いて、回転速度検出装置12の検出部13において、フルブレード11bまたはスプリッタブレード11cからなる第1ブレードBL1・第2ブレードBL2・・の検出の態様を説明する。図3において、二点鎖線で示す範囲は、検出部13の磁石が発生させている磁界B(検出範囲)を示す。回転速度検出装置12は、フルブレード11bまたはスプリッタブレード11cが磁界Bを通過した際に磁束を変化させることで検出コイルに発生する誘導起電力を検出する。
図3(a)に示すように、検出部13において、フルブレード11bまたはスプリッタブレード11cからなる第1ブレードBL1が磁界Bに進入していない場合、磁界Bの磁束は変化しない。従って、検出部13の検出用コイルには、誘導起電力が発生しない。
図3(b)に示すように、検出部13において、第1ブレードBL1が磁界Bの反回転方向側から進入した場合、第1ブレードBL1が検出部13に近接することで磁界Bの磁束は急激に変化する。従って、検出部13の検出用コイルには、ファラデーの電磁誘導の法則から磁束の変化に応じてプラス極性の誘導起電力が発生する。検出部13の検出用コイルには、第1ブレードBL1の進入により磁界Bの磁束の単位時間当たりの変化量が最も大きい時にプラス極性で最大の誘導起電力が発生する。具体的には、誘導起電力は、第1ブレードBL1の端部が磁界Bに進入した直後であって検出部13に急激に近接する時点にプラス極性で最大の誘導起電力が発生する。
図3(c)に示すように、検出部13において、第1ブレードBL1が磁界B内を通過している場合、検出部13と第1ブレードBL1との距離は略一定に保たれるので磁界Bの磁束は比較的緩やかに変化する。従って、検出部13の検出用コイルには、磁束の変化に応じて第1ブレードBL1が磁界Bに進入した瞬間に比べて小さな誘導起電力が発生する。検出部13の検出用コイルには、第1ブレードBL1の通過時の磁界Bの磁束の単位時間当たりの変化量がゼロになった時に誘導起電力が発生しない。
図3(d)に示すように、検出部13において、第1ブレードBL1のうち一部が磁界Bの回転方向側から抜けた場合、第1ブレードBL1が検出部13から離間することで磁界Bの磁束は急激に変化する。従って、検出部13の検出用コイルには、ファラデーの電磁誘導の法則から磁束の変化に応じてマイナス極性の誘導起電力が発生する。検出部13の検出用コイルには、第1ブレードBL1の離間により磁界Bの磁束の単位時間当たりの変化量が最も大きい時にマイナス極性で最大の誘導起電力が発生する。第1ブレードBL1が磁界Bの回転方向側から抜けた場合、第1ブレードBL1が磁界Bに影響を与えないので磁界Bの磁束は変化しない。従って、検出部13の検出用コイルには、誘導起電力が発生しない。
このようにして、回転速度検出装置12は、第1ブレードBL1が磁界Bの反回転方向側から進入することで時間T11においてプラス極性での最大の誘導起電力を検出し、第1ブレードBL1が磁界Bの回転方向側から抜けることで時間T12においてマイナス極性での最大の誘導起電力を検出する。さらに、回転速度検出装置12は、第2ブレードBL2が磁界Bの反回転方向側から進入することで時間T21においてプラス極性での最大誘導起電力を検出し、第2ブレードBL2が磁界Bの回転方向側から抜けることで時間T22においてマイナス極性での最大の誘導起電力を検出する(図4(a)参照)。同様にして、回転速度検出装置12は、フルブレード11bまたはスプリッタブレード11cから構成されているコンプレッサホイール11の第3ブレードBL3・第4ブレードBL4・・についてそれぞれ誘導起電力を検出する。
次に、図4を用いて、コンプレッサ9の運転段階での回転速度検出装置12による回転速度の算出について説明する。なお、コンプレッサホイール11は、運転段階において各ブレードのブレード厚およびブレードピッチが所定範囲内の寸法で形成され、その寸法が回転速度検出装置12に設定されているものとする。また、コンプレッサホイール11の速度算出は、コンプレッサホイール11に形成されている第1ブレードBL1から第nブレードBL(n)までの全てについて行われるが、同様の態様であるためメインブレードからなる第1ブレードBL1および第3ブレードBL3、スプリッタブレードからなる第2ブレードBL2および第4ブレードBL4の回転速度算出について説明する。
図4(a)に示すように、回転速度検出装置12は、メインブレードである第1ブレードBL1が検出部13に近接することで誘導起電力がプラス極性において最大となる時間T11とスプリッタブレードである第2ブレードBL2が検出部13に近接することで誘導起電力がプラス極性において最大となる時間T21との間隔であるピッチ通過時間ΔTp12を算出する。そして、回転速度検出装置12は、予め設定されている第1ブレードBL1と第2ブレードBL2とのピッチP12とから第1瞬時回転速度Vp12を算出する。
同様にして、図4(b)に示すように、回転速度検出装置12は、時間T21とメインブレードである第3ブレードBL3が検出部13に近接することで誘導起電力がプラス極性において最大となる時間T31との間隔であるピッチ通過時間ΔTp23を算出する。そして、回転速度検出装置12は、予め設定されている第2ブレードBL2と第3ブレードBL3とのピッチP23とから第2瞬時回転速度Vp23を算出する。このようにして、回転速度検出装置12は、第1瞬時回転速度Vp12から順に第2瞬時回転速度Vp23・・第n瞬時回転速度Vp(n)1を算出する。
回転速度検出装置12は、第1ブレードBL1・第2ブレードBL2・・が検出部13に近接することで磁界Bの磁束は急激に変化する時点を基準としてピッチ通過時間ΔTp12・ΔTp23・・を算出する。つまり、回転速度検出装置12は、第1ブレードBL1・第2ブレードBL2・・の誘導起電力のピーク時点に対応する位置が一定の範囲に含まれている状態の誘導起電力に基づいてピッチ通過時間ΔTp12・ΔTp23・・を算出する。これにより、回転速度検出装置12は、誘導起電力を利用してコンプレッサ9またはタービン6のブレードの回転速度を安定して検出することができる。なお、本実施形態において、誘導起電力がプラスの極性において最大となる時点を基準としてピッチ通過時間ΔTp12・ΔTp23・・を算出したがこれに限定されるものではなく、マイナスの極性において最大となる時点を基準としてもよい。
次に、図5を用いて、コンプレッサ9の運転段階での回転速度検出装置12の検出信号を用いたコンプレッサホイール11の自己故障診断による異常判定について説明する。なお、コンプレッサホイール11の異常判定は、コンプレッサホイール11に形成されている第1ブレードBL1から第nブレードBL(n)までの全てについて行われる。
図5(a)に示すように、回転速度検出装置12は、メインブレードである第1ブレードBL1と隣り合うメインブレードである第3ブレードBL3とが検出部13に近接することで誘導起電力がプラス極性において最大となる時間T11と時間T31との間隔であるピッチ通過時間ΔTp13を算出する。そして、回転速度検出装置12は、予め設定されている第1ブレードBL1と第3ブレードBL3とのピッチP13とから第1メインブレード瞬時回転速度Vp13を算出する。同様にして、回転速度検出装置12は、隣り合うメインブレードにおいて誘導起電力がプラス極性において最大となる時間にもとづいて第2メインブレード瞬時回転速度Vp35・・・を算出する。
次に、図5(b)に示すように、回転速度検出装置12は、スプリッタブレードである第2ブレードBL2と隣り合うスプリッタブレードである第4ブレードBL4とが検出部13に近接することで誘導起電力がプラス極性において最大となる時間T21と時間T41との間隔であるピッチ通過時間ΔTp24を算出する。そして、回転速度検出装置12は、予め設定されている第2ブレードBL2と第4ブレードBL4とのピッチP24とから第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24を算出する。同様にして、回転速度検出装置12は、隣り合うスプリッタブレードにおいて誘導起電力がプラス極性において最大となる時間にもとづいて第2スプリッタブレード瞬時回転速度Vp46・・・を算出する。
ここで、図5(a)に示すように、回転速度検出装置12は、誘導起電力のピーク時の値がaVであった第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と誘導起電力のピーク時の値がbVであった第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24とのうち、誘導起電力のピーク時の値が大きいaVである誘導起電力に基づいて算出された第1メインブレード瞬時回転速度Vp13をターボチャージャ1の瞬時回転速度であるとみなす。第1メインブレード瞬時回転速度Vp13が算出されたメインブレードである第1ブレードBL1と第3ブレードBL3とは、スプリッタブレードである第2ブレードBL2と第4ブレードBL4とよりも検出部13に近接している。すなわち、第1ブレードBL1と第3ブレードBL3との端部は、スプリッタブレードである第2ブレードBL2と第4ブレードBL4との端部よりも外側にあるため周速が大きい。従って、回転速度検出装置12は、回転によって付加される外力がより大きい第1ブレードBL1と第3ブレードBL3とに基づいて算出された第1メインブレード瞬時回転速度Vp13をターボチャージャ1の瞬時回転速度であるとみなすことでターボチャージャ1の異常を早期に発見することができる。
回転速度検出装置12は、第1メインブレード瞬時回転速度Vp13、第2メインブレード瞬時回転速度Vp35・・・からコンプレッサ9(ターボチャージャ1)の平均回転速度であるメインブレード平均回転速度Vm、または第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24、第2スプリッタブレード瞬時回転速度Vp46・・・からコンプレッサ9(ターボチャージャ1)の平均回転速度であるスプリッタブレード平均回転速度Vsを求める。また、回転速度検出装置12は、算出した第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24との差(または割合)からコンプレッサ9の異常を判定する。
次に、図6から図7を用いて、本発明に係る回転速度検出装置12における運転段階での検出信号を用いたコンプレッサホイール11の異常判定について具体的に説明する。なお、本実施形態において、回転速度検出装置12は、メインブレードである第1ブレードBL1、第3ブレードBL3、第5ブレードBL5とスプリッタブレードである第2ブレードBL2、第4ブレードBL4、第6ブレードBL6について説明する。回転速度検出装置12は、メインブレードである第1ブレードBL1、第3ブレードBL3および第5ブレードBL5がプラス極性での最大の誘導起電力を検出した時間T11、時間T31、時間T51、およびスプリッタブレードである第2ブレードBL2、第4ブレードBL4、第6ブレードBL6がプラス極性での最大の誘導起電力を検出した時間T21、時間T41、時間T61を検出しているものとする。
図6に示すように、ステップS110において、回転速度検出装置12は、検出した時間T11と時間T31とからピッチ通過時間ΔTp13、検出した時間T31と時間T51とからピッチ通過時間ΔTp35を算出し、ステップをステップS120に移行させる。
図6に示すように、ステップS120において、回転速度検出装置12は、検出した時間T21と時間T41とからピッチ通過時間ΔTp24、検出した時間T41と時間T61とからピッチ通過時間ΔTp46を算出し、ステップをステップS130に移行させる。
ステップS130において、回転速度検出装置12は、算出したピッチ通過時間ΔTp13および設定されている第1ブレードBL1と第3ブレードBL3とのピッチP13から第1メインブレード瞬時回転速度Vp13を算出し、算出したピッチ通過時間ΔTp35および設定されている第3ブレードBL3と第5ブレードBL5とのピッチP35とから第2メインブレード瞬時回転速度Vp35を算出し、ステップをステップS140に移行させる。
ステップS140において、回転速度検出装置12は、算出したピッチ通過時間ΔTp24および設定されている第2ブレードBL2と第4ブレードBL4とのピッチP24とから第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24を算出し、算出したピッチ通過時間ΔTp46および設定されている第4ブレードBL4と第6ブレードBL6とのピッチP46とから第2スプリッタブレード瞬時回転速度Vp46を算出し、ステップをステップS150に移行させる。
ステップS150において、回転速度検出装置12は、算出した第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第2メインブレード瞬時回転速度Vp35とからメインブレードを基準としたコンプレッサ9(ターボチャージャ1)の平均回転速度であるメインブレード平均回転速度Vmを算出し、または、算出した第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24と第2スプリッタブレード瞬時回転速度Vp46とからスプリッタブレードを基準としたコンプレッサ9(ターボチャージャ1)の平均回転速度であるスプリッタブレード平均回転速度Vsを算出し、ステップをステップS160に移行させる。
ステップS160において、回転速度検出装置12は第1メインブレード瞬時回転速度Vp13をターボチャージャ1の瞬時回転速度としてECU25等に伝達し、メインブレード平均回転速度Vsまたはスプリッタブレード平均回転速度Vsをターボチャージャ1の平均回転速度としてECU25等に伝達し、ステップをステップ160に移行させる。
ステップS170において、回転速度検出装置12は、算出した第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24との差の絶対値が第1基準値δ1未満か否か判断する。ここで、第1基準値δ1とは、コンプレッサホイール11の経年劣化と判断される寸法をいう。その結果、算出した第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24との差の絶対値が第1基準値δ1未満であると判定した場合、回転速度検出装置12はステップをステップS110に移行させる。一方、算出した第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24との差の絶対値が第1基準値δ1未満でないと判定した場合、回転速度検出装置12はステップをステップS280に移行させる。
ステップS280において、回転速度検出装置12は、ターボチャージャ1(コンプレッサ9)に異常が発生していると判断してECU25等に伝達し、ステップをステップ110に移行させる。
このように、回転速度検出装置12は、第1メインブレード瞬時回転速度Vp13、第2メインブレード瞬時回転速度Vp35、第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24および第2スプリッタブレード瞬時回転速度Vp46を検出部13において最大の誘導起電力が発生した時点に基づいて算出している。つまり、回転速度検出装置12は、誘導起電力のピーク時点に対応する各ブレードの位置が一定の範囲に含まれているので算出結果にばらつきが生じにくい。さらに、回転速度検出装置12は、誘導起電力のピーク時点に対応するブレードの位置が一定の範囲に含まれているので算出した二系統の瞬時回転速度にばらつきが生じにくく正確な自己診断が行われる。これにより、回転速度検出装置12は、誘導起電力を利用してコンプレッサ9またはタービン6の回転速度を安定して検出することができる。加えて、回転速度検出装置12は、第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24との対比からコンプレッサ9(タービン6)の状態を判定することができる。
また、本発明に係る回転速度検出装置12における運転段階での検出信号である第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24とを算出することでコンプレッサ9の速度変動がより精度よく把握される。これにより、図7に示す構成のエンジン20の制御において、第1メインブレード瞬時回転速度Vp13と第1スプリッタブレード瞬時回転速度Vp24とをフィードバックしてエンジン20の燃料噴射弁21、吸気弁22、排気弁23およびEGR弁24の開度等の制御を行うことによりエンジン20の負荷の変化に精度よく対応して排気のばらつきを低減し、負荷に応じた適切な状態にエンジン20を制御することができる。
さらに、エンジン20の質量に比べて十分に小さい質量のコンプレッサ9は、燃料噴射量が変動した際にコンプレッサ9の平均回転速度であるメインブレード平均回転速度Vsまたはスプリッタブレード平均回転速度Vsがエンジン20の回転速度Nよりも感度よく変動する。従って、メインブレード平均回転速度Vsまたはスプリッタブレード平均回転速度Vsに基づいて、燃料の微小噴射により変動したエンジン20の回転速度Nから燃料噴射量を補正する噴射量補正を実施することができる。
具体的には、図7と図8とに示すように、ECU25は、エンジン回転速度検出センサ16が検出するエンジン20の回転速度Nに加えて回転速度検出装置12から取得したメインブレード平均回転速度Vsまたはスプリッタブレード平均回転速度Vsから目標開弁時間TQtでの実燃料噴射量Q1を算出する。そして、ECU25は、実燃料噴射量Q1(図8における二点鎖線)が目標噴射量Qt(図8における実線)になるように燃料噴射弁21の開弁時間TQを開弁時間TQrに補正する。これにより、質量が大きい大型のエンジン20においても、コンプレッサ9のメインブレード平均回転速度Vsまたはスプリッタブレード平均回転速度Vsを利用することで微小噴射による噴射量補正をより正確に行うことができる。
以下では、図9を用いて、本発明に係る回転速度検出装置12の第二実施形態における回転速度検出装置12について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図9(a)に示すように、第二実施形態におけるターボチャージャ26は、エンジン20(図7参照)から排出されている排気の排気圧力を駆動源として加圧圧縮した吸気をエンジン20に供給するものである。ターボチャージャ26は、連結部2、タービン6、コンプレッサ9等から構成されている。
連結部2は、タービン6とコンプレッサ9とを連結している。連結部2は、センターハウジング3、連結軸27、軸受け5等から構成されている。センターハウジング3は、一側にタービン6が連結され、他側にコンプレッサ9が連結されている。連結軸27は、後述のタービンホイール8と後述のコンプレッサホイール11とを連結する。連結軸27は、軸受け5を介してセンターハウジング3に回転自在に支持されている。
タービンホイール8は、タービンハブ8aが連結軸27に固定されている。タービンハブ8aは、連結軸27の軸心に対して平行な反連結軸27側の外周面8cが連結軸27側に向かって湾曲しながら拡径し、連結軸27側端部に連結軸27の軸心に対して垂直な方向に向かうフランジ8dが形成されている。コンプレッサホイール11は、コンプレッサハブ11aが連結軸27に固定されている。つまり、コンプレッサホイール11は、連結軸27を介してタービンホイール8からの回転動力が伝達可能に構成されている。
連結軸27は、タービンホイール8とコンプレッサホイール11とを連結するものである。連結軸27の一側は、タービンホイール8の回転中心に連結される。連結軸27の他側は、コンプレッサホイール11の回転中心に連結される。連結軸27は、軸受け5を介してセンターハウジング3に回転自在に支持されている。図9(a)、図9(b)に示すように、連結軸27の途中部は、軸方向断面視で正多角形の面取り部28が形成されている。面取り部28は、その面部分28aまたは辺部分28bがタービンホイール8またはコンプレッサホイール11のメインブレードまたは/およびスプリッタブレードの枚数と一致するように構成されている。本実施形態において、コンプレッサホイール11のメインブレード11bが10枚の場合、面取り部28は、連結軸27の軸方向断面視で正10角形に形成されている。
回転速度検出装置12の検出部13は、面取り部28の面部分28aと辺部分28bとを検出する。検出部13は、センターハウジング3の連結軸27の近傍に形成されている挿入孔3aに挿入されて取り付けられている。検出部13は、その先端が面取り部28に接触しないようにして面取り部28に対向する状態で配置されている。検出部13と面取り部28との距離は、連結軸27の回転中心Cから面部分28aまでの距離D1と回転中心Cから辺部分28bまでの距離D2との差だけ変動する。従って、検出部13の磁界Bの磁束は、連結軸27が回転して面部分28aと辺部分28bと交互に通過することで急激に変化する。これにより、検出部13の検出用コイルには、ファラデーの電磁誘導の法則から磁束の変化に応じてプラス極性の誘導起電力が発生する。
回転速度検出装置12は、誘導起電力のピーク時点に対応する面取り部28の面部分28aまたは辺部分28bの位置が一定の範囲に含まれているので算出結果にばらつきが生じにくい。これにより、誘導起電力を利用してコンプレッサまたはタービンのブレードの回転速度を安定して検出することができる。