図8は、高周波電力供給システムの構成例を示す図である。この高周波電力供給システムは、半導体ウエハや液晶基板等の被加工物に、例えばプラズマエッチング、プラズマCVDといった加工処理を行うためのシステムであり、高周波電源1、伝送線路2、インピーダンス調整装置3(インピーダンス整合装置と言うこともある)、負荷接続部4及び負荷5(プラズマ処理装置5)で構成されている。そして、高周波電源1は、伝送線路2、インピーダンス調整装置3及び負荷接続部4を介して負荷5に高周波電力を供給する。負荷5(プラズマ処理装置5)では、被加工物が配置されるチャンバー(図略)内にプラズマ放電用ガスを導入するとともに、チャンバー内の電極(図略)に高周波電源1から高周波電力を供給して、プラズマ放電用ガスを放電させて非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマ状態になったガスを用いて被加工物を加工している。
プラズマエッチング、プラズマCVD等の用途に用いられるプラズマ処理装置のような負荷5では、製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化していく。ひいては、負荷5のインピーダンス(負荷インピーダンス)が時々刻々と変化していく。このような負荷5に高周波電源1から効率よく電力を供給するためには、負荷インピーダンスの変化に伴い、高周波電源1の出力端から負荷5側を見たインピーダンスZL(以下、負荷側インピーダンスZL)を調整する必要がある。そのために、高周波電力供給システムでは、高周波電源1と負荷5(プラズマ処理装置5)との間に、インピーダンス調整装置3が介装される。
インピーダンス調整装置3は、負荷5に高周波電力を供給する高周波電源1と前記負荷5との間に設けられ、内部に設けた可変電気特性素子(可変コンデンサや可変インダクタ)の電気特性(キャパシタンスやインダクタンス)を調整することにより、高周波電源1から負荷5側を見たインピーダンスを調整するものである。このインピーダンス調整装置3では、可変電気特性素子の電気特性を適切な値にすることによって、高周波電源1のインピーダンスと負荷5のインピーダンスとを整合させて、負荷5から高周波電源1に向かう反射波電力を可能な限り最小にして負荷への供給電力を最大にすることができる。
図9は、従来のインピーダンス調整装置3Pを含む高周波電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
高周波電源1は、出力周波数(高周波電源1から出力される高周波電力が有する基本周波数(基本波の周波数))がある一定の周波数である高周波電源1pである。
また、図9に示すように、インピーダンス調整装置3Pには、第1の可変コンデンサ21、第2の可変コンデンサ24、及びインダクタ23によって構成された調整回路20pが設けられている。なお、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24は、可変電気特性素子の一種である。また、入力端301と調整回路20pとの間には、方向性結合器10が設けられている。また、出力端302(調整回路20pの出力端も実質的に同じ)は負荷5に接続されている。
これにより、高周波電源1から出力された高周波電力は、方向性結合器10及び調整回路20pを介して負荷5に供給される。なお、高周波電源1から出力されて負荷5に向かう高周波電力を進行波電力PFといい、負荷5で反射されて高周波電源1に戻る高周波電力を反射波電力PRという。
図9に示すように、調整回路20pには、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24が備わっているので、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24のキャパシタンスを調整(変更)することによって負荷側インピーダンスZLを調整(変更)することができる。そのため、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24のキャパシタンスを適切な値にすることによって、高周波電源のインピーダンスと負荷5のインピーダンスとを整合させることができる。なお、調整回路20pの構成は、高周波電源1の出力周波数や負荷5の条件等によって異なる。また、可変電気特性素子として、可変インダクタなどが用いられる場合もある。
なお、可変コンデンサや可変インダクタは、電気特性を調整できるものであるので、本明細書では、可変コンデンサや可変インダクタを総称して可変電気特性素子とする。また、キャパシタンスやインダクタンス等の情報を電気特性情報とする。
第1の可変コンデンサ21や第2の可変コンデンサ24のような可変コンデンサは、キャパシタンスを変更できるコンデンサ(キャパシタと言うこともある)である。これらの可変コンデンサ(可変キャパシタ)は、キャパシタンスを調整するための可動部(図略)を有しており、モータ等によって可動部の位置を変位させることで、そのキャパシタンスを調整できるようになっている。
具体的には、可変コンデンサの一対の電極は、少なくとも一方が可動電極になっている。すなわち、可変コンデンサの場合、可動電極が可動部となる。そして、可動部である可動電極の位置を変位させることで、他方の電極との相対位置が変わる。すなわち、可動部である可動電極の位置を変位させることによってキャパシタンスを調整(変更)することができる。このような可変コンデンサのキャパシタンスは、複数段階に調整できるようになっている。
また、可動部の位置に対するキャパシタンスは、可変コンデンサの仕様または実験によって、既知となっている。そのため、可動部の位置が分かれば、キャパシタンスが分かるようになっている。そのため、可動部の位置情報は、キャパシタンスを表す情報(キャパシタンス情報)として扱うことができる。広い概念では、可動部の位置情報は、電気特性を表す情報(電気特性情報)として扱うことができる。
また、可動部の位置を直接検出するのは、その構造上難しいので、例えば、可動部の位置を変位させるモータの回転位置(回転量)を検出することによって、可動部の位置を検出している。この場合、モータの回転位置は、パルス信号で検出してもよいし、電圧等で検出してもよい。このように、可変コンデンサの可動部の位置情報は、直接的または間接的に特定できればよい。
図9の場合は、調整部30によって第1の可変コンデンサ21のキャパシタンスを調整し、位置検出部40によって第1の可変コンデンサ21のキャパシタンス情報を検出(取得)することができる。また、調整部50によって、第2の可変コンデンサ24のキャパシタンスを調整し、位置検出部60によって第2の可変コンデンサ24のキャパシタンス情報を検出(取得)することができる。
調整部30は、第1の可変コンデンサ21の可動部の駆動手段としてのステッピングモータやモータ駆動回路等(いずれも図略)によって構成されている。そして、制御部100pは、調整部30に指令信号を与え、調整部30に含まれるステッピングモータの回転量を制御し、第1の可変コンデンサ21の可動部の位置を変位させることによって、第1の可変コンデンサ21のキャパシタンスを調整する。同様に、調整部50は、第2の可変コンデンサ24の可動部の駆動手段としてのステッピングモータやモータ駆動回路等(いずれも図略)によって構成されている。そして、制御部100pは、調整部50に指令信号を与え、調整部50に含まれるステッピングモータの回転量を制御し、第2の可変コンデンサ24の可動部の位置を変位させることによって、第2の可変コンデンサ24のキャパシタンスを調整する。
位置検出部40は、調整部30に含まれるステッピングモータ回転位置(回転量)を検出するものである。同様に、位置検出部60は、調整部50に含まれるステッピングモータ回転位置(回転量)を検出するものである。
可変インダクタの場合も、構造は異なるが、可変コンデンサと同様に、可動部を有しており、モータ等によって可動部の位置を変位させることで、そのインダクタンスを調整(変更)できるようになっている。その他は、可変コンデンサと同様であるので、説明を省略する。なお、可変インダクタの場合は、可動部の位置が分かれば、インダクタンスが分かるようになっている。そのため、可動部の位置情報は、インダクタンスを表す情報(インダクタンス情報)として扱うことができる。広い概念では、可動部の位置情報は、電気特性を表す情報(電気特性情報)として扱うことができる。
また、可変コンデンサや可変インダクタといった可変電気特性素子は、上記のように構成されているため、例えば、インピーダンス調整装置3Pに、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24が備わっており、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24の可動部の位置が、それぞれ101段階に変位可能である場合、キャパシタンスは、101×101=10,201通り(約1万通り)の組み合わせに変更可能となる。すなわち、インピーダンス調整装置3Pのインピーダンスは、約1万通りの組み合わせに変更可能となる。
また、上記のように可変電気特性素子の可動部の位置が、複数段階に変位可能であるので、可変電気特性素子の可動部がそれぞれ取り得る位置に番号を割り付けることによって、可変電気特性素子の可動部がそれぞれ取り得る位置を組み合わせたものを位置情報として表すことができる。例えば、可変コンデンサの可動部の調整範囲の中で、キャパシタンスが最小となる位置を「0」とし、キャパシタンスが最大となる位置を「100」とすると、各可変コンデンサの可動部の位置は、「0」〜「100」の101段階で表すことができる。そのため、第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24の可動部の位置は、(0,0),(0,1)・・・・(100,100)のようにして位置情報として表すことができる。なお、後述する表1では、第1の可変コンデンサ21の可動部の位置情報を変数VC1で表し、第2の可変コンデンサ24の可動部の位置情報を変数VC2で表すことにする。上記の例では、「VC1」は0〜100の範囲(101段階)で変化し、「VC2」も0〜100の範囲(101段階)で変化する。
このような可変電気特性素子を制御することによってインピーダンス整合を行うインピーダンス調整装置3Pとして、例えば、特許文献1(特開2006−166412)に記載のものが提案されている。
特許文献1に開示されたインピーダンス調整装置3Pでは、まず予め測定された、複数の可変電気特性素子の可動部がそれぞれ取り得る位置に対するインピーダンス調整装置の特性パラメータ(後述するSパラメータまたはTパラメータ)を、可変電気特性素子の可動部の位置情報との対応関係を持たせてメモリ70pに記憶させておく。そして、制御部100pが、方向性結合器10から出力される進行波電圧の検出信号及び反射波電圧の検出信号、位置検出部40及び位置検出部60によって検出される各可動部の位置情報、メモリ70pに記憶されている特性パラメータの情報に基づいて、インピーダンス整合を行っている。
ここで、上述した特性パラメータは、インピーダンス調整装置3全体を伝送装置として扱い、インピーダンス調整装置3に備わっている2つの可変コンデンサ(第1の可変コンデンサ21及び第2の可変コンデンサ24)の調整可能な範囲について、伝送装置としての伝送特性をSパラメータ(又はTパラメータ)の情報として測定したものである。
このような特性パラメータは、インピーダンス調整装置内部における浮遊容量やインダクタンス成分等を含んだ伝送特性を示すものであるので、測定した特性パラメータを用いて、インピーダンス整合を行えば、精度よくインピーダンス整合を行うことができるとされている。
表1は、メモリ70pに記憶される特性パラメータの一例であるが、ここでは、メモリ70pに記憶された特性パラメータがTパラメータである場合の例を示す。この表1において、T(0,0)は、第1の可変コンデンサ21の可動部の位置が「0」であり、第2の可変コンデンサ24の可動部の位置が「0」であるときに測定されたTパラメータを示す。同様にT(100,0)は、第1の可変コンデンサ21の可動部の位置が「100」であり、第2の可変コンデンサ24の可動部の位置が「0」であるときに測定されたTパラメータを示す。他のTパラメータも同様の考え方で符号を付している。なお、表1では、記載を簡略化するために、一部を省略して「・・・」のように記載しているが、実際には、Tパラメータが記憶されている。
また、Sパラメータ(Scattering Parameter)とは、周知のように、所定の4端子回路網(2端子対回路網ともいう)の入力端子及び出力端子に特性インピーダンス(例えば50Ω)の線路を接続した高周波信号を入力したときの4端子回路網における伝送特性を示したものであり、「数1」に示すように、入力側の電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)の各要素から構成される行列で表されるものである。ここでは、インピーダンス調整装置3を4端子回路網として扱って、インピーダンス調整装置3におけるSパラメータを演算するようにしている。
Tパラメータ(Transmission Parameter)とは、「数2」に示すように、Sパラメータから変換できるパラメータである。また、一般的に4端子回路網においては、その伝送特性を測定するときにはSパラメータを用いるのが簡便とされ、演算を行うときにはTパラメータを用いるのが簡便とされている。
また、図10のような4端子回路網におけるSパラメータは「数3」のように定義され、Tパラメータは「数4」のように定義される。
また、ポート1を入力側、ポート2を負荷側とすると、入力反射係数Γin(入力端における反射係数)と出力反射係数Γout(出力端における反射係数)の関係をSパラメータ(「数5」参照)またはTパラメータ(「数6」参照)で表すことができる。
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、従来と同一又は同様の構成には、同一符号を付している。
[第1実施形態]
図1は、インピーダンス調整装置3Aが適用される高周波電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
このシステムは、半導体ウェハや液晶基板等の被加工物に対して高周波電力を供給して、例えばプラズマエッチングといった加工処理を行うものである。このシステムは、可変周波数方式の高周波電源1v、伝送線路2、インピーダンス調整装置3A、負荷接続部4及びプラズマ処理装置からなる負荷5によって構成されている。なお、本明細書では、高周波電源1vとインピーダンス調整装置3Aとを組み合わせたシステムを高周波整合システムとする。
高周波電源1vには、例えば同軸ケーブルからなる伝送線路2を介してインピーダンス調整装置3Aが接続されている。また、インピーダンス調整装置3Aには、例えば電磁波の漏れを抑制するために遮蔽された銅板からなる負荷接続部4が接続されている。また、負荷接続部4には、負荷5が接続されている。
高周波電源1vは、負荷5に対して無線周波帯域の周波数(一般的には、数百KHzないし数十MHz程度の周波数。例えば、400kHz、2MHz、13.56MHz、50MHz等の周波数。)を有する高周波電力を供給するための装置である。なお、高周波電源1vから出力する高周波電力の基本周波数を出力周波数とする。
また、高周波電源1vは、出力周波数が所定の範囲で変更できるようになっており、指令信号によって出力周波数を変更させる。周波数の可変範囲は、高周波電源1vに設けられている発振器(図略)の性能等を考慮して適宜に設定する。例えば、中心周波数が2MHzの場合、2MHz±10%(1.8〜2.2MHz)程度の範囲で出力周波数を変更できるように設計される。
この際、例えば、出力周波数の可変範囲の下限周波数を「0」とし、出力周波数の可変範囲の上限周波数を「100」として、「0」〜「100」の101段階で出力周波数を変更できるように設計される。すなわち、出力周波数の可変範囲が2MHz±10%(1.8〜2.2MHz)である場合、「0」が1.8MHzであり、「100」が2.2MHzであるので、0.004MHz毎(4kHz毎)に出力周波数を変更する。
もちろん、出力周波数や出力周波数の可変範囲は、上記に限定されるものではない。例えば、数百MHz程度の高い出力周波数に設定されることもある。また、2MHz±5%(1.9〜2.1)程度の範囲で出力周波数を変更できるように設計されることもある。
また、高周波電源1vは、高周波電源1vが認識している出力周波数を、電源認識出力周波数Fgeとして出力する。高周波電源1vから出力された電源認識出力周波数Fgeは、後述するインピーダンス調整装置3Aの制御部100に入力される。また、後述するように、インピーダンス整合させるための目標出力周波数情報Fmatがインピーダンス調整装置3Aの制御部100から出力され、その目標出力周波数情報Fmatが高周波電源1vに入力される。高周波電源1vは、その目標出力周波数情報Fmatに基づいて出力周波数を変更する。
負荷5は、半導体ウェハや液晶基板等の被加工物をエッチングやCVD等の方法を用いて加工するためのプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置では、被加工物の加工目的に応じて各種の加工プロセスが実行される。例えば、被加工物に対してエッチングを行う場合には、そのエッチングに応じたガス種類、ガス圧力、高周波電力の供給電力値、及び高周波電力の供給時間等が適切に設定された加工プロセスが行われる。プラズマ処理装置では、被加工物が配置されるチャンバー(図略)内にプラズマ放電用ガスを導入する。また、チャンバー内の電極(図略)に高周波電源1vから高周波電力を印加して、プラズマ放電用ガスを放電させて非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマ状態になったガスを用いて被加工物を加工している。
インピーダンス調整装置3Aは、その入力端301に接続される高周波電源1vと出力端302に接続される負荷5とのインピーダンスを整合させるものである。より具体的には、例えば入力端301から高周波電源1v側を見たインピーダンス(出力インピーダンス)が50Ωに設計され、高周波電源1vが特性インピーダンス50Ωの伝送線路2でインピーダンス調整装置3Aの入力端301に接続されているとすると、インピーダンス調整装置3Aは、当該インピーダンス調整装置3Aの入力端301から負荷5側を見たインピーダンスを50Ωに近づける機能を有する。ひいては、高周波電源1vの出力端から負荷5側を見た負荷側インピーダンスZLを50Ωに近づける。
なお、本実施形態では特性インピーダンスを50Ωとしているが、特性インピーダンスは50Ωに限定されるものではない。また、負荷側インピーダンスZLを特性インピーダンスに一致させて、インピーダンス調整装置3の入力端301における入力反射係数Γinを0にすることが望まれるが、通常は、入力反射係数Γinが所定の許容値以下になれば、インピーダンス整合したと見なしている。
このようなインピーダンス調整装置3Aには、方向性結合器10、制御部100、調整回路20、調整部30、位置検出部40、メモリ70が設けられている。また、調整回路20は、可変電気特性素子としての可変コンデンサ21(図9の第1の可変コンデンサ21と実質的に同じなので同符号にしている),インピーダンスが固定のコンデンサ22及びインダクタ23を備えている。そして、調整回路20に設けられた可変コンデンサ21の可動部の位置を調整するとともに、高周波電源1vの出力周波数を調整することによってインピーダンス整合を行うが、詳細な説明は後述する。
なお、上述したように、可変コンデンサ21の可動部の位置情報は、キャパシタンスを表す情報(キャパシタンス情報)として扱うことができる。広い概念では、可動部の位置情報は、電気特性を表す情報(電気特性情報)として扱うことができる。
なお、調整回路20の構成は、図1に示したものに限定されず、他の構成でもよい。例えば、図1に示した調整回路20は、一般的に逆L型と呼ばれるものであるが、π型など、周知の調整回路を用いることも可能である。どのようなタイプの調整回路にするかは、高周波電源1vの出力周波数や負荷5の条件等によって異なる。
方向性結合器10は、高周波電源1vから負荷5側に進行する高周波(以下、進行波という。)と負荷5側から反射してくる高周波(以下、反射波という。)とを分離して検出する。進行波側の検出信号は、進行波電圧として出力され、反射波側の検出信号は、反射波電圧として出力される。方向性結合器10は、例えば1個の入力ポート11と3個の出力ポート12,13,14を有し、入力ポート11には高周波電源1vが接続され、第1出力ポート12には調整回路20が接続されている。また、第2出力ポート13及び第3出力ポート14は、制御部100に接続されている。
なお、方向性結合器10は、本発明の高周波情報検出手段の一部として機能する。また方向性結合器10と後述するベクトル化部110とを組み合わせたものが、本発明の高周波情報検出手段の一例となる。
入力ポート11から入力される進行波は、第1出力ポート12から出力され、第1出力ポート12から入力される反射波は、入力ポート11から出力される。また、進行波は、適切なレベルまで減衰されて検出され、第2出力ポート13から進行波電圧の検出信号として出力される。また、反射波は、適切なレベルまで減衰されて検出され、第3出力ポート14から反射波電圧の検出信号として出力される。
なお、方向性結合器10に代えて、入力側検出器が用いられてもよい。入力側検出器は、例えば高周波電源1vから入力端301に入力される高周波電圧、高周波電流、及びそれらの位相差(高周波電圧と高周波電流との位相差)を検出するものである。入力側検出器により検出された高周波電圧、高周波電流及び位相差は、制御部100に入力される。
制御部100は、このインピーダンス調整装置3Aの制御中枢となるものであり、図示しないCPU、メモリ、及びROM等を有している。また例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)のような、内部の論理回路を適宜に定義、変更し得るゲートアレイを用いた構成とすることもできる。この制御部100は、方向性結合器10の出力等に基づいて、可変コンデンサ21のキャパシタンス及び高周波電源1vの出力周波数を変化させて、インピーダンス調整装置3Aの調整回路20のインピーダンスを調整するものである。
可変コンデンサ21には、可動部の位置を変位させるための調整部30が接続されている。調整部30は、上記可動部の駆動手段としてのステッピングモータやモータ駆動回路等(いずれも図略)によって構成されている。そして、制御部100は、調整部30に指令信号を与え、調整部30に含まれるステッピングモータの回転量を制御し、可変コンデンサ21の可動部の位置を変位させることによって、可変コンデンサ21のキャパシタンスを調整する。本実施形態では、可変コンデンサ21のキャパシタンスは、例えば、101段階に調整可能となっている。なお、調整部30は、本発明の可変電気特性素子調整手段の一例である。
可変コンデンサ21には、調整部30によって調整される可動部の位置を検出するための位置検出部40が設けられている。位置検出部40によって検出された可変コンデンサ21の可動部の位置情報は、制御部100に送られ、制御部100において認識されるようになっている。なお、位置検出部40は、本発明の可変素子情報検出手段の一例である。
また、制御部100には、メモリ70が接続されており、このメモリ70には、表2に示すようなSパラメータ、又は、表3に示すようなSパラメータを変換したTパラメータが記憶されている。制御部100の機能は後述する。なお、メモリ70は、本発明の特性パラメータ記憶手段(第1の特性パラメータ記憶手段、第2の特性パラメータ記憶手段)の一例である。
なお、本実施形態では、可変コンデンサ21の可動部の位置情報を変数Cで表し、高周波電源1vの出力周波数情報を変数Fで表し、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報を(C,F)のように座標形式で表すことにする。上記の例では、「C」は0〜100の範囲(101段階)で変化し、「F」も0〜100の範囲(101段階)で変化する。もちろん、他の範囲で変化するようにしてもよい。なお、上記のように座標形式で表したときの変数Cの軸は、本発明の第1軸に相当し、変数Fの軸は、本発明の第2軸に相当する。
表2に示すSパラメータは、可変コンデンサ21の可動部の位置と出力周波数とを変数として測定されたものであり、可変コンデンサ21の可動部の位置が、「0」〜「100」の101段階に変位可能であり、高周波電源1vの出力周波数が、「0」〜「100」の101段階に変更可能である場合に測定されたTパラメータの一例である。また表3に示すTパラメータは、表2に示すSパラメータを変換したものである。
なお、表2において、S(0,0)は、可変コンデンサ21の可動部の位置が「0」であり、出力周波数が「0」を示す周波数であるときに測定されたSパラメータを示す。同様にS(100,0)は、可変コンデンサ21の可動部の位置が「100」であり、出力周波数が「0」を示す周波数であるときに測定されたSパラメータを示す。他のSパラメータも同様の考え方で符号を付している。
また、表3に示したTパラメータは、Sパラメータを変換したものであるので、Sパラメータと同様の考え方で符号を付している。すなわち、T(0,0)は、可変コンデンサ21の可動部の位置が「0」であり、出力周波数が「0」を示す周波数であるときに測定されたTパラメータを示す。同様にT(100,0)は、可変コンデンサ21の可動部の位置が「100」であり、出力周波数が「0」を示す周波数であるときに測定されたTパラメータを示す。他のTパラメータも同様の考え方で符号を付している。
図2は、メモリ70に記憶されたSパラメータ又はTパラメータの一例を図示したものである。すなわち、測定されたSパラメータ又はTパラメータの一例を図示したものである。図2において、横軸は、可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cであり、縦軸は、高周波電源1vの出力周波数情報Fである。また、黒丸が測定されたSパラメータ又はTパラメータを示している。
なお、図2では、図面を簡略化するために、横軸及び縦軸の一部を省略しているが、1刻みでSパラメータ又はTパラメータがメモリ70に記憶されている。すなわち、可変コンデンサ21の可動部の位置が取り得る値及び高周波電源1vの出力周波数が取り得る値の全ての組み合わせに対するSパラメータ又はTパラメータがメモリ70に記憶されている。
ところで、上記のような(0,0)や(100,0)は、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報を示すものであるため、この組み合わせ情報が分かれば、対応する可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数とが分かる。すなわち、可変コンデンサ21のキャパシタンス情報(電気特性情報)と高周波電源1vの出力周波数とが分かる。そのため、メモリ70には、単にSパラメータやTパラメータを記憶するのではなく、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報と関連付けてSパラメータやTパラメータを記憶する。
上述したように、伝送特性を測定するときにはSパラメータを用いるのが簡便とされ、演算を行うときにはTパラメータを用いるのが簡便とされているので、インピーダンス整合を行うときにはTパラメータを用いる。そのため、通常は、測定したSパラメータをTパラメータに変換したものをメモリ70に記憶しておく。Sパラメータをメモリ70に記憶しておく場合は、必要時にSパラメータからTパラメータに変換して用いる。しかし、インピーダンス整合時にSパラメータからTパラメータに変換すると演算負荷が大きくなるので、予めTパラメータをメモリ70に記憶しておく方が好ましい。そのため、以下では、Tパラメータをメモリ70に記憶し、そのTパラメータを用いてインピーダンス整合を行うものとして説明する。
なお、Sパラメータは、可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数に対応しているので、精度の面から見れば、可変コンデンサ21の可動部の位置が取り得る値及び高周波電源1vの出力周波数が取り得る値の全ての組み合わせに対してSパラメータを測定するのが好ましい。
しかし、上述したように可変コンデンサ21の可動部の位置、及び高周波電源1vの出力周波数は、上述したように複数段階に変位可能(調整可能)になっているが、この全ての組み合わせに対してSパラメータを測定しようとすると、膨大な量のSパラメータを測定することになるので、多くの工数が必要となる。そのため、全ての組み合わせに対してSパラメータを測定するのではなく、一部の組み合わせに対してSパラメータを測定しておき、測定していないSパラメータに対しては線形補間によってSパラメータを推定する手法を用いてもよい。Sパラメータを変換したTパラメータも同様である。
例えば、Sパラメータの各要素S11,S12,S21,S22のそれぞれに対して直線近似による補間演算を行えばよい。またSパラメータを変換したTパラメータも同様に、Tパラメータの各要素T11,T12,T21,T22のそれぞれに対して直線近似による補間演算を行えばよい。補間演算の方法としては、例えば、バイリニア(Bi−Linear)と呼ばれる補間方法(以下、バイリニア補間という)を用いればよい。
上記の表2では、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報とが取り得る全ての組み合わせを対象として、Sパラメータを測定した例を示したが、表4のように、一部の組み合わせを対象としてSパラメータを測定し、他の組み合わせに対応するSパラメータは、一部の組み合わせを対象として測定したSパラメータを用いて演算により推定してもよい。演算による推定は、例えばバイリニア補間で行えばよい。
Sパラメータを変換したTパラメータの場合も同様であり、表3では、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報とが取り得る全ての組み合わせを対象としたが、表5のように一部の組み合わせを対象としたTパラメータを用いて、他の組み合わせに対応するTパラメータを演算により推定してもよい。この場合も演算による推定は、例えばバイリニア補間で行えばよい。
図3は、測定していないSパラメータをバイリニア補間によって求める方法を説明するための図である。この図3では、可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数を変数としたときに、両者の一部の組み合わせに対して測定したSパラメータの測定値に基づいて、測定していないSパラメータをバイリニア補間によって求める方法を説明する。なお、図3では、Sパラメータの要素S11を例にしている。
また本明細書では、Sパラメータの要素を、「Sパラメータの要素名(S11等)」+「組み合わせ情報(C,F)」で表すことにする。例えば、S(10,10)の要素S11をS11(10,10)、S(10,20)の要素S11をS11(10,20)、S(20,10)の要素S11をS11(20,10)、S(20,20)の要素S11をS11(20,20)と表す。したがって、図3では、S11(10,10)の測定値が100、S11(10,20)の測定値が170、S11(20,10)の測定値が160、S11(20,20)の測定値が200であることを示している。なお、図3に示した要素S11の各値例は、実際の測定値ではなく、バイリニア補間を説明し易い数値にしている。
図3の場合、例えばS11(18,16)の推定値は、以下の第1ステップ〜第3ステップによって求めることができる。
第1ステップ:S11(10,10)の測定値とS11(20,10)の測定値とを用いて、S11(18,10)の推定値を求めるための補間演算を行う。
第2ステップ:S11(10,20)の測定値とS11(20,20)の測定値とを用いて、S11(18,20)の推定値を求めるための補間演算を行う。
第3ステップ:第1ステップ及び第2ステップで求めたS11(18,10)の推定値とS11(18,20)の推定値とを用いて、S11(18,16)の推定値を求めるための補間演算を行う。
具体的には、次のようになる。
S11(18,10)の推定値:100×0.2+160×0.8=148
S11(18,20)の推定値:170×0.2+200×0.8=194
S11(18,16)の推定値:148×0.4+194×0.6=175.6
したがって、S11(18,16)の推定値は、175.6となる。
他の要素S12(18,16),S21(18,16),S22(18,16)も、それぞれ同様に推定値を求めることができる。そのため、測定していないSパラメータであっても、その各要素S11,S12,S21,S22を求めることができる。
なお、補間演算によって推定値を求めたいSパラメータが、S(18,20)である場合は、S11(10,20)の測定値とS11(20,20)の測定値とに基づいて、S11(18,20)の推定値を求めることができる。他の要素S12(18,20),S21(18,20),S22(18,20)も、それぞれ同様に推定値を求めることができる。
すなわち、表4のように通常は格子状にSパラメータを測定するので、補間演算によってSパラメータを求める場合には、測定済みの4つのSパラメータに基づいて補間演算するが、測定済みの2つのSパラメータの間に求めたいSパラメータが存在する場合は、演算を簡単にできる。
また、表4のように格子状にSパラメータを測定すると、補間演算が行いやすいという利点がある。もちろん、格子状にSパラメータが測定されていなくても補間演算は行える場合はある。
また上記では、測定したSパラメータのうち、推定したいSパラメータ[S(18,16)]に隣接するSパラメータ[S(10,10)],[S(20,10)],[S(10,20)],[S(20,20)]に基づいて、Sパラメータ[S(18,16)]の推定値を演算していた。しかし、これに限定するものではない。例えば、[S(0,0)],[S(30,0)],[S(0,30)],[S(30,30)]に基づいて、Sパラメータ[S(18,16)]の推定値を補間演算してもよい。補間演算に用いる測定したSパラメータは、推定したいSパラメータ[S(18,16)]に隣接していなくてもよい。ただし、推定したいSパラメータと補間演算に用いる測定したSパラメータとの間隔が離れる程、推定値の精度が悪くなると考えられるので、どのSパラメータに基づいて補間演算をするのかは、精度と利便性を考慮して適宜決定すればよい。
上記のように予め測定したSパラメータから測定していないSパラメータを補間演算によって推定することができる。そのため、推定したSパラメータをメモリ70に予め記憶してもよい。また、Sパラメータを変換したTパラメータを記憶してもよい。
なお、上記のように、推定したSパラメータ又は推定したSパラメータを変換したTパラメータをメモリ70に記憶する場合、例えば、測定したSパラメータ又は測定したSパラメータを変換したTパラメータを第1の記憶領域に記憶し、推定したSパラメータ又は推定したSパラメータを変換したTパラメータを第2の記憶領域に記憶してもよい。換言すると、測定したSパラメータ又は測定したSパラメータを変換したTパラメータを記憶する領域が第1の記憶領域であり、推定したSパラメータ又は推定したSパラメータを変換したTパラメータを記憶する領域が第2の記憶領域となる。
もちろん、第1の記憶領域及び第2の記憶領域は、同一のハードウェアに設けてもよいし、別のハードウェアに設けてもよい。また、第1の記憶領域及び第2の記憶領域を同一のハードウェアに設ける場合、第1の記憶領域及び第2の記憶領域を、所定の容量の領域毎に分けてもよいし、分けなくてもよい。なお、記憶するパラメータが、測定したパラメータ(測定したパラメータを変換したパラメータ)なのか、推定したパラメータ(推定したパラメータを変換したパラメータ)なのかが区別できるようにしておくことが好ましい。
次にSパラメータのデータの測定方法について説明する。
[Sパラメータの測定するための測定回路]
図4は、インピーダンス調整装置3AのSパラメータを測定するための測定回路の構成を示す図である。この測定回路の構成は、予め製品出荷前に、例えば工場内で組み上げられるものである。
この図4に示すように、インピーダンス調整装置3AのSパラメータは、例えば入出力インピーダンスが50Ωのネットワークアナライザ80を用いて測定される。そのため、インピーダンス調整装置3Aの入力端301に、ネットワークアナライザ80の第1入出力端子81が接続され、インピーダンス調整装置3Aの出力端302に、ネットワークアナライザ80の第2入出力端子82が接続される。また、インピーダンス調整装置3Aの制御部100に、ネットワークアナライザ80の制御端子83が接続される。
なお、方向性結合器10は、特性パラメータ(この例ではSパラメータ)の測定時には使用されず、実際に、半導体やフラットパネルディスプレイ等を製造する際に使用されるものである。
[Sパラメータの測定手順]
図4に示した測定回路では、可変コンデンサ21の可動部の位置を1段階ずつ変化させるとともに、ネットワークアナライザ80から出力される高周波の周波数を1段階ずつ変化させながら、ネットワークアナライザ80においてインピーダンス調整装置3AのSパラメータが測定される。以下、この手順を説明する。
なお、Sパラメータは、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数とを変数として測定されたものであり、可変コンデンサ21が0〜100の101段階に変位可能であり、高周波電源1vの出力周波数が、0〜100の101段階に変更可能であるとする。
まず、制御部100により可変コンデンサ21の可動部の位置が、例えば「0」に設定され、またネットワークアナライザ80の第1入出力端子81から、例えば「0」に対応する周波数(例えば1.8MHz)を有する高周波がインピーダンス調整装置3Aの入力端301に入力される。この高周波の周波数は、高周波電源1vから負荷5に供給される高周波電力の出力周波数に相当する。
ネットワークアナライザ80から出力された高周波(入射波)は、インピーダンス調整装置3Aの入力端301で一部は反射し、第1入出力端子81からネットワークアナライザ80に入力され、残りはインピーダンス調整装置3A内を透過し、出力端302から出力されて第2入出力端子82からネットワークアナライザ80に入力される。
そして、反射波及び透過波は、ネットワークアナライザ80の内部でそれぞれ検出され、入射波、反射波及び透過波を用いてSパラメータのうち、入力側の電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)が測定される。すなわち、入射波、反射波及び透過波をそれぞれa1,b1,b2とすると、S11=b1/a1、S21=b2/a1の演算処理を行うことにより、電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)が測定される。
次に、ネットワークアナライザ80の第2入出力端子82から同一の高周波がインピーダンス調整装置3Aの出力端302に入力される。ネットワークアナライザ80から出力された高周波(入射波)は、インピーダンス調整装置3Aの出力端302で一部は反射し、第2入出力端子82からネットワークアナライザ80に入力され、残りはインピーダンス調整装置3A内を透過し、入力端301から出力されて第1入出力端子81からネットワークアナライザ80に入力される。
そして、反射波及び透過波は、ネットワークアナライザ80の内部でそれぞれ検出される。これらの入射波、反射波及び透過波を用いてSパラメータのうち、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)が測定される。すなわち、入射波、反射波及び透過波をそれぞれa2,b2,b1とすると、S12=b1/a2、S22=b2/a2の演算処理を行うことにより、逆方向電圧の伝達係数(S12)、出力側の電圧反射係数(S22)が測定される。
これにより、先の工程と合わせて、可変コンデンサ21の可動部の位置が「0」であり、出力周波数が「0」(この例では1.8MHzに相当)であるときのSパラメータ「S(0,0)」を構成する電圧反射係数(S11)、順方向電圧の伝達係数(S21)、逆方向電圧の伝達係数(S12)及び出力側の電圧反射係数(S22)が測定されたことになる。すなわち、可変コンデンサ21の可動部の位置が「0」であり、高周波電源1vの出力周波数が「0」であるときのSパラメータ「S(0,0)」が測定される。測定したSパラメータは、ネットワークアナライザ80の制御端子83からインピーダンス調整装置3Aの制御部100に送られる。
制御部100では、上述した「数2」を用いて測定したSパラメータからTパラメータに変換する。そして、変換されたTパラメータは、制御部100により可変コンデンサ21の可動部の位置とネットワークアナライザ80から出力される高周波の周波数(高周波電源1vの出力周波数に相当)とが対応関係を持つようにした上でメモリ70に送付され、メモリ70に記憶される。
その後、可変コンデンサ21の可動部の位置とネットワークアナライザ80から出力される高周波の周波数との組み合わせ情報を順次変更していくことによって、同様に所望のSパラメータを求めることができる。例えば、例えば、S(0,0),S(0,1),・・・S(0,99),S(0,100),S(1,0),S(1,1),・・・S(100,99),S(100,100)のような順番でSパラメータを順次測定すればよい。もちろん、測定する順番は、この順番に限定されない。
測定したSパラメータは、順次Tパラメータに変換される。変換されたTパラメータは、制御部100により可変コンデンサ21の可動部の位置とネットワークアナライザ80から出力される高周波の周波数(高周波電源1vの出力周波数に相当)とが対応関係を持つようにした上でメモリ70に送付され、メモリ70に記憶される。
なお、上記では、1つのSパラメータを測定する毎にTパラメータに変換していたが、これに限定されるものではなく、複数のSパラメータを測定する毎にTパラメータに変換するようにしてもよいし、測定すべきSパラメータを一通り測定した後に、Tパラメータに変換するようにしてもよい。そのために、必要に応じてSパラメータ用のメモリ及びTパラメータ用のメモリの両方を設ければよい。
また、SパラメータやTパラメータのデータは、ネットワークアナライザ80のディスプレイ(図略)やインピーダンス調整装置3Aの外部に設けられたディスプレイやプリンタ(いずれも図略)等に出力するようにされてもよい。もちろん、外部の各種装置(図略)に出力してもよい。
このようにして、インピーダンス調整装置3AのSパラメータが測定されると、インピーダンス調整装置3Aは、例えば工場から出荷され、前述したように、高周波電源1vと負荷5との間に介装されて、現地において実際に半導体やフラットパネルディスプレイ等を製造する際に使用される。
[インピーダンス調整装置3Aの動作]
次に高周波電力供給システムとして実際に使用されるインピーダンス調整装置3Aの動作を、図5を参照して説明する。
図5は、制御部100の機能ブロック図である。制御部100は、機能の観点から、図5に示すように、ベクトル化部110、周波数検出部120、Tパラメータ取得部130、現時点の出力反射係数演算部140、目標入力反射係数設定部150、仮想出力反射係数演算部160、メモリ170、近似反射係数探索部180、目標位置設定部191及び目標周波数設定部192によって構成される。
なお、周波数検出部120は、本発明の周波数検出手段の一例であり、Tパラメータ取得部130は、本発明の特性パラメータ取得手段の一例であり、現時点の出力反射係数演算部140は、本発明の出力反射係数演算手段の一例であり、仮想出力反射係数演算部160は、本発明の仮想の出力反射係数演算手段の一例であり、メモリ170は、本発明の仮想の出力反射係数記憶手段の一例であり、近似反射係数探索部180は、本発明の近似反射係数探索手段の一例であり、目標位置設定部191は、本発明の目標電気特性設定手段の一例であり、目標周波数設定部192は、本発明の目標出力周波数設定手段の一例である。
高周波電源1vによって高周波電力が負荷5に供給されると、方向性結合器10によって進行波及び反射波が分離されて検出される。進行波側の検出信号は、進行波電圧として出力され、反射波側の検出信号は、反射波電圧として出力される。ベクトル化部110では、方向性結合器10の出力を入力し、入力信号を所定の間隔でサンプリングして、大きさ及び位相情報を含むベクトル情報として、現時点の入力端301における進行波電圧Vfinow及び反射波電圧Vrinowを出力する。なお、方向性結合器10の出力をディジタル情報に変換するために、A/Dコンバータ(図略)が設けられている。
また、方向性結合器10等に代えて入力側検出器を用いる場合も、入力側検出器の出力をディジタル情報に変換するために、A/Dコンバータ(図略)が設けられており、周知の方法によって、入力側検出器から入力された情報に基づいて、進行波電圧Vfinow及び反射波電圧Vrinowが求められる。
この場合、入力側検出器と、入力側検出器から入力された情報に基づいて進行波電圧Vfinow及び反射波電圧Vrinowを求める部分とを含めたものが、本発明の高周波情報検出手段の一例となる。
ベクトル化部110から現時点の入力端301における進行波電圧Vfinow及び反射波電圧Vrinowが出力されると、それらは現時点の出力反射係数演算部140に入力される。
「数7」に示すように、反射波電圧Vrinowから進行波電圧Vfinowを除算することにより、現時点の入力端301における反射係数Γinnow(以下、入力反射係数Γinnow)を演算することができる。なお、入力反射係数Γinnowの絶対値(入力反射係数絶対値)は、|Γinnow|である。
周波数検出部120は、進行波電圧Vfinowを入力し、周知の方法によって高周波電源1vから負荷5に供給される高周波電力の出力周波数を検出し、現時点の出力周波数Fnowとして出力する。現時点の出力周波数Fnowは、Tパラメータ取得部130及び目標周波数設定部192に送られる。なお、周知の方法としては、例えばPLL(Phase-locked loop)を用いた周波数検出方法、零クロス法を用いた周波数検出方法等がある。もちろん、これらの方法に限定されず、他の方法を用いても良い。
また、上述したように、方向性結合器10に代えて、入力側検出器が用いられる場合は、周波数検出部120は、例えば、入力側検出器によって検出される高周波電圧を入力し、この高周波電圧に基づいて、高周波電源1vから負荷5に供給される高周波電力の出力周波数を検出すればよい。
また、上述したように、本実施形態で用いられるSパラメータは、ネットワークアナライザ80から出力された高周波の周波数が、高周波電源1vから負荷5に供給される高周波電力の出力周波数に相当するものとして測定されたものである。そのため、周波数検出部120で検出する出力周波数と、Sパラメータ測定時にネットワークアナライザ80から出力する高周波の周波数とのずれを可能な限り小さくしておく必要がある。
このような観点で見た場合、高周波電源1vが認識している電源認識出力周波数Fgeと、周波数検出部120が検出する現時点の出力周波数Fnowとのずれも可能な限り小さくしておく必要がある。高周波電源1vの製造メーカとインピーダンス調整装置3の製造メーカが同一であれば、上記のずれは可能な限り小さくすることができる。しかし、高周波電源1vの製造メーカと、インピーダンス調整装置3の製造メーカとが異なる場合は、ずれが生じる恐れがある。そうなると、精度のよいインピーダンス整合ができなくなる。そのため、本実施形態では、インピーダンス調整装置3(周波数検出部120)で、高周波電源1vから負荷5に供給される高周波電力の出力周波数を検出するようにしている。
もちろん、電源認識出力周波数Fgeと現時点の出力周波数Fnowとのずれが殆ど無い場合は、周波数検出部120を不要にし、電源認識出力周波数FgeをTパラメータ取得部130に入力するようにしてもよい。
一方、位置検出部40では、現時点における可変コンデンサ21の可動部の位置が検出され、現時点の位置情報Cnowとして出力され、Tパラメータ取得部130に送られる。
Tパラメータ取得部130は、位置検出部40から出力された現時点の位置情報Cnow及び周波数検出部120から出力された現時点の出力周波数Fnowが入力される。
Tパラメータ取得部130では、メモリ70に記憶されているTパラメータを用いて現時点の位置情報Cnow及び現時点の出力周波数Fnowに対応したTパラメータを取得し、取得したTパラメータを出力する。出力されたTパラメータは、現時点の出力反射係数演算部140に送られる。
現時点の出力反射係数演算部140では、現時点の入力端301における進行波電圧Vfinow、反射波電圧Vrinow及びTパラメータ取得部130から出力されたTパラメータに基づいて、現時点の出力端302における進行波電圧Vfonow及び反射波電圧Vronowが演算される。この場合、下記に示す「数8」によって、現時点の出力端302における進行波電圧Vfonow及び反射波電圧Vronowが演算される。
なお、「数8」において、T11now,T12now,T21now及びT22nowは、Tパラメータ取得部130から出力されたTパラメータを構成する各要素である。すなわち、現時点の可変コンデンサ21の可動部の位置、高周波電源1vの出力周波数に対応したTパラメータの各要素を示す。
また、現時点の出力反射係数演算部140は、「数9」に示すように、現時点の出力端302における反射波電圧Vronowを進行波電圧Vfonowで除算して、現時点の出力端302における反射係数Γoutnow(以下、出力反射係数Γoutnow)を演算する。演算結果は、近似反射係数探索部180に送られる。
また、現時点の出力反射係数Γoutnowは、Tパラメータを用いて、「数10」のように演算することもできる。
目標入力反射係数設定部150では、予め目標となる入力反射係数Γinset(以下「目標入力反射係数Γinset」という)が設定される。この目標入力反射係数Γinsetは、「数11」によって表すことができる。この目標入力反射係数設定部150で設定された目標入力反射係数Γinsetは、仮想出力反射係数演算部160に送られる。なお、目標入力反射係数Γinsetは、随時変更できるようにしてもよい。
「数11」において、Zinは目標インピーダンスであって、実数部Rin及び虚数部Xinの和であるZin=Rin+jXinで表される。また、Zoは特性インピーダンスである。なお、目標入力反射係数Γinsetは直接的に設定されてもよいし、目標入力反射係数Γinsetが直接的に設定されることに代えて、上記した目標インピーダンスZin及び特性インピーダンスZoが予め設定され、これらから目標入力反射係数Γinsetに変換されて用いられてもよい。
目標入力反射係数Γinsetは通常は最小値、すなわち0(目標入力反射係数Γinsetを実数部と虚数部との和で表した場合、Γinset=0+j0)であるので、この目標入力反射係数Γinsetになるように、可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数を調整すると、入力端301における反射波が最小になって、インピーダンス整合を行わせることができる。もちろん、目標入力反射係数Γinsetを0以外にしてもよいが、整合したと見なす値以下に設定する(例えば、0.05や0.1等の比較的小さい値)。また、所望する目標入力反射係数Γinsetは、予め設定しておいてもよいし、目標入力反射係数Γinsetを設定するための設定部を設けて、随時変更できるようにしてもよい。
ここで、目標入力反射係数Γinset、現時点の出力反射係数Γoutnow、及びTパラメータとの関係は、「数12」のように表される。すなわち、現時点の出力反射係数Γoutnowにおいて、目標入力反射係数設定部150で設定された目標入力反射係数Γinsetにしたときに「数12」が成り立つ。
ただし、T11mat,T12mat,T21mat,T22matは、現時点の出力反射係数Γoutnowであるときに、目標入力反射係数Γinsetにできる可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報に対応したTパラメータの各要素である。「数12」は、以下のようにして求めることができる。
出力反射係数Γoutnowは、「数9」または「数10」で求めることができる。また、進行波電圧Vfonow及び反射波電圧Vronowは、「数8」を参照してTパラメータを考慮すれば、Vfonow=T11mat・Vfinow+T12mat・Vrinow、Vronow=T21mat・Vfinow+T22mat・Vrinowで表される(Vfinow,Vrinowは、現時点の入力端における進行波電圧及び反射波電圧)。したがって、Γoutnow=(T21mat・Vfinow+T22mat・Vrinow)/(T11mat・Vfinow+T12mat・Vrinow)となる。ここで、入力反射係数Γinset=Vrinow/Vfinowなので、Γoutnow=[T21mat・Vfinow+T22mat・(Γinset・Vfinow)]/[T11mat・Vfinow+T12mat・(Γinset・Vfinow)]=(T21mat+T22mat・Γinset)/(T11mat+T12mat・Γinset)となる。
上記のように「数12」が成り立つため、現時点の出力反射係数演算部140で現時点の出力反射係数Γoutnowを求めたときに、「数12」が成り立つTパラメータ(T11mat,T12mat,T21mat,T22mat)にできれば、入力反射係数Γinnowを目標入力反射係数Γinsetにすることができる。したがって、「数12」が成り立つTパラメータ(T11mat,T12mat,T21mat,T22mat)に対応する可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせを探せばよい。
しかし、「数12」が成り立つようにTパラメータの4つの要素(T11mat,T12mat,T21mat,T22mat)をそれぞれ自由に調整できるのであれば、「数12」が成り立つTパラメータ(T11mat,T12mat,T21mat,T22mat)を求めることができる。ところが、SパラメータやTパラメータは、インピーダンス調整装置全体を伝送装置として扱ったときの伝送特性を表すものであり、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ毎に、4つの要素が1組となって測定されたものである。そのため、厳密に「数12」が成り立つTパラメータ(T11mat,T12mat,T21mat,T22mat)が存在する可能性は低い。
ここで、表3に示すような予め測定したTパラメータ又は予め測定したTパラメータから補間演算によって推定できるTパラメータを「数12」の右辺に代入したときの演算結果を仮想の出力反射係数Γoutnow’とする。また、「数12」の右辺に代入するTパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数をΓoutnow’(C,F)と表す。また、Tパラメータの各要素も同様に、T11mat(C,F),T12mat(C,F),T21mat(C,F),T22mat(C,F)と表す。例えば、T(1,0)であるときの仮想の出力反射係数をΓoutnow’(1,0)と表す。上記の関係は、「数13」のようになる。なお、T(C,F)は複数個あるので、Γoutnow’(C,F)も複数個演算される。
そのため、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)の中から、現時点の出力反射係数Γoutnowに一番近い仮想の出力反射係数Γoutnow’ (C,F)(以下、近似反射係数Γoutnow”(C,F)という。)を探せば、「数12」が成り立つ条件に一番近い可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせを特定することができる。上述したように、目標入力反射係数Γinsetは、整合したと見なす値以下に設定されるので、近似反射係数Γoutnow”(C,F)にすることができれば、整合したと見なすことができる。
そこで、仮想出力反射係数演算部160では、TパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算する。そして、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶していく。
メモリ170に記憶する工程は、予め行っておけるので、インピーダンス整合を行う前に行っておくことが好ましい。そうすることで、インピーダンス整合時の演算負荷を低減できる。なお、目標入力反射係数Γinsetを変更した場合は、再度、仮想出力反射係数演算部160で、TパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算し、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶しておくのが好ましい。
近似反射係数探索部180は、メモリ170に記憶されている仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)の中から、現時点の出力反射係数Γoutnowに一番近いもの(近似反射係数Γoutnow”(C,F))を探索するものである。探索する際には、現時点の出力反射係数Γoutnowと、仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)との間の絶対値が一番小さいものを探索すればよい。
近似反射係数探索部180によって探索された近似反射係数Γoutnow”(C,F)には、可変コンデンサ21の可動部の位置情報C及び高周波電源1vの出力周波数情報Fが含まれている(関連付けられている)。そのため、探索された近似反射係数Γoutnow”(C,F)に対応する可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数が特定できる。
なお、もし近似反射係数Γoutnow”(C,F)の絶対値|Γoutnow”(C,F)|が、所定値よりも大きい場合は、例えば、一旦可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数を調整した後、再度近似反射係数Γoutnow”(C,F)を探索する工程を行う等の処理をすればよい。または、異常があったと見なして異常信号を出力するようにしてもよい。
これまでの説明で明らかなように、上記のようにして特定した可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数にすると、入力端における反射係数Γinを目標入力反射係数Γinsetに近づけることができる。すなわち整合状態に近づけることができる。通常はインピーダンス整合したと見なされる状態にすることができる。そのため、以下に示すように、特定した可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数にするための調整が行われる。
目標位置設定部191は、上記のようにして特定した可変コンデンサ21の可動部の位置を目標位置cmat(本発明の目標電気特性情報の一例)として設定する。また目標位置設定部191は、可変コンデンサ21の可動部の位置が目標位置cmatに調整(変位)されるように指令信号としての目標位置情報Cmatを調整部30に向けて出力する。目標位置情報Cmatは調整部30に適した形式で生成される。例えば電圧信号やパルス信号として生成される。
調整部30は、目標位置情報Cmatに基づいて、ステッピングモータ等を駆動し、可変コンデンサ21の可動部の位置を目標位置cmatに調整する(変位させる)。
目標周波数設定部192は、上記のようにして特定した高周波電源1vの出力周波数を目標出力周波数fmat(本発明の目標出力周波数情報の一例)として設定する。また目標周波数設定部192は、高周波電源1vの出力周波数が目標出力周波数fmatに調整(変更)されるように指令信号としての目標出力周波数情報Fmatを高周波電源1vに向けて出力する。目標出力周波数情報Fmatは高周波電源1vに適した形式で生成される。
高周波電源1vは、目標出力周波数情報Fmatに基づいて、出力周波数を目標出力周波数fmatに調整(変更)する。
ここで、目標出力周波数情報Fmatについて補足説明をする。
上述したように、高周波電源1vの製造メーカと、インピーダンス調整装置3の製造メーカとが異なる場合等で、高周波電源1vが認識している電源認識出力周波数Fgeと、周波数検出部120が検出する現時点の出力周波数Fnow(インピーダンス調整装置3が認識する現時点の出力周波数Fnow)とのずれ(誤差)が生じる場合がある。そうなると、精度のよいインピーダンス整合ができない。
そのため、目標出力周波数fmatを、そのまま高周波電源1vに出力するのではなく、「数21」のように、目標出力周波数fmatと現時点の出力周波数Fnowとの差を演算し、その差に電源認識出力周波数Fgeを加算した周波数を目標周波数情報Fmatとする。このようにすれば、電源認識出力周波数Fgeとインピーダンス調整装置3が認識する現時点の出力周波数Fnowとのずれ(誤差)を考慮した目標出力周波数情報Fmatを高周波電源1vに向けて出力することになるので、電源認識出力周波数Fgeと現時点の出力周波数Fnowとにずれ(誤差)が生じる場合であっても、精度のよいインピーダンス整合を行える。
または、「数15」のように、目標出力周波数fmatと現時点の出力周波数Fnowとの差を演算し、その差の周波数を目標周波数情報Fmatとする。そして、高周波電源1v側で電源認識出力周波数Fgeに目標周波数情報Fmatを加算した周波数を演算し、新たな出力周波数とするように高周波電源1vを構成してもよい。このようにしても、電源認識出力周波数Fgeと現時点の出力周波数Fnowとにずれが生じる場合であっても、精度のよいインピーダンス整合を行える。
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態における制御部100aの機能ブロック図である。制御部100aは、機能の観点から、図6に示すように、ベクトル化部110、周波数検出部120、Tパラメータ取得部130、現時点の出力反射係数演算部140、目標入力反射係数設定部150、仮想出力反射係数演算部160a、メモリ170、近似反射係数探索部180、目標位置設定部191及び目標周波数設定部192によって構成される(第1実施形態とは、仮想出力反射係数演算部160aが異なる)。
上記の第1実施形態では、仮想出力反射係数演算部160が、例えば、メモリ70に記憶されている全ての特性パラメータ(以下ではTパラメータを用いて説明する)を対象として、TパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算する。そして、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶していた。
これに対して、第2実施形態では、仮想出力反射係数演算部160aが、例えば、メモリ70に記憶されている一部のTパラメータを対象として、そのTパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算する。そして、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶するように構成される。以下、図を用いて説明する。
図7は、仮想出力反射係数演算部160aが対象とするTパラメータの一例を示すものである。
メモリ70には、例えば、図7のようにTパラメータが記憶されているとする。なお、黒丸が記憶されているTパラメータを示している。また、図7に示すTパラメータは、メモリ70に記憶されているTパラメータの一部であり、他のTパラメータを省略している。すなわち、表3のように、可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとが、それぞれ0〜100の範囲、且つ1間隔で組み合わされた場合のTパラメータがメモリ70に記憶されているが、図7では、可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとが、それぞれ45〜55の範囲、且つ1間隔で組み合わされた場合のTパラメータを図示している。
また、図7において斜線を付けた範囲、すなわち、可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとが、それぞれ47〜53の範囲(1間隔)のTパラメータを対象とすることを示している。
仮想出力反射係数演算部160aは、図7に示すTパラメータを対象とし、第1実施形態と同様に対象となるTパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算する。
そして、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶していく(上記の第1実施形態と同様である)。
近似反射係数探索部180、目標位置設定部191、目標周波数設定部192等は、上記の第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同様に、可変コンデンサ21の可動部の位置及び高周波電源1vの出力周波数が調整される。ここでは説明を省略する。
なお、もし近似反射係数Γoutnow”(C,F)の絶対値|Γoutnow”(C,F)|が、所定値よりも大きい場合は、例えば、メモリ70に記憶されているTパラメータのうち、図7に示すTパラメータ以外のTパラメータを対象とし、上記したように対象となるTパラメータがT(C,F)であるときの仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を演算し、その後、演算した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を、可変コンデンサ21の可動部の位置と高周波電源1vの出力周波数との組み合わせ情報(C,F)に関連付けてメモリ170に記憶していく。そして、近似反射係数探索部180が、新たにメモリ170に記憶した仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)の中から、現時点の出力反射係数Γoutnowに一番近いもの(近似反射係数Γoutnow”(C,F))を探索すればよい。これらは、上記の第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
<第2実施形態の効果>
上記のようにすると、インピーダンス整合すると予想される可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとの組み合わせ情報が大凡分かっている場合に効果がある。
すなわち、インピーダンス整合すると予想される可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとの組み合わせ情報が大凡分かっているので、該当する範囲の仮想の出力反射係数Γoutnow’(C,F)を対象とすれば、近似反射係数探索部180において、効率よく近似反射係数Γoutnow”(C,F)を探索することができる。具体的には、第1実施形態よりも第2実施形態の方が、近似反射係数探索部180において、近似反射係数Γoutnow”(C,F)を探索する際の探索数が少なくて済むので、演算負荷が少ない。よって、第1実施形態よりも第2実施形態の方が、高速に処理を行うことができる。
なお、上記では、特定の範囲にある可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとの組み合わせ情報(C,F)を対象としたが、対象とする範囲は、1つではなく複数であってもよい。例えば、プラズマのプロセス条件が途中で変更されることにより、インピーダンス整合すると予想される可変コンデンサ21の可動部の位置情報Cと高周波電源1vの出力周波数情報Fとの組み合わせ情報が変わる場合に有効である。
また、この発明の範囲は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、特性パラメータとしてSパラメータやTパラメータを用いたが、特性パラメータとしてはこれらに限るものではない。例えばZパラメータやYパラメータであってよく、この場合は、これらのパラメータを上述したTパラメータに変換して上述のインピーダンス整合を行えばよい。