JP6429399B2 - 抗プリオン化合物のマレイン酸塩及びその製造方法、並びにその医薬組成物 - Google Patents

抗プリオン化合物のマレイン酸塩及びその製造方法、並びにその医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、新規な抗プリオン化合物のマレイン酸塩及びその製造方法、並びに該マレイン酸塩を含むプリオン病の予防、改善又は治療剤に関する。
プリオン病は、異常型プリオンタンパク質の脳への蓄積が引き起こすとされている致死性の神経変性疾患である。プリオン病治療薬の開発は、クロイツフェルト・ヤコブ病をはじめとするヒトプリオン病の治療に直結するため、地域医療を含め今後の医療に大きく貢献できると考えられる。また、プリオン病治療薬はBSE対策としてのヒト、家畜、ペットを含む動物用医薬品として利用できると考えられる。
プリオン病の有効な治療法は確立されていないため、早急なプリオン病治療薬の出現が希求されている。これまでに、プリオン感染細胞で抗プリオン効果を示す化合物(抗プリオン化合物)は多数知られているが、(1)抗プリオン活性が不十分である、(2)構造最適化が容易ではない分子構造である、(3)プリオン病で侵される主要な器官は脳であるが血液脳関門透過性が低いためin vivoでは効果が弱い、(4)肝機能障害等の副作用がある等といった理由によりいずれも治療薬としての実用化には至っていない。
本発明者らは、新規な抗プリオン化合物として、非特許文献1に記載の化合物や、更に活性の高い特許文献1に記載の化合物を見出しており、特に、特許文献1に記載の化合物は、プリオン病の発病や進行の防止に優れた効果を発揮することを見出した。
しかしながら、これまで使用してきた非特許文献1に記載の抗プリオン化合物、及び特許文献1に記載の抗プリオン化合物は、結晶性が悪く、結晶の安定性が悪いため、高純度及び保存安定性の観点から医薬品としての実用化が困難であるという問題があった。
WO2010/131717号公報
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2007, 104, 11921.
本発明は、上記現状に鑑み、結晶性及び結晶の安定性が高い抗プリオン化合物を提供すること、及び実用性に優れているプリオン病の予防、改善又は治療剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記式(1)で表される化合物のマレイン酸塩が、特に驚くべきことに、下記式(1)で表される化合物の他の無機酸塩や有機酸塩と比較して結晶性が良く、結晶の保存が経時的に安定であり、該マレイン酸塩は大量合成を工業的に有利に行なうことができることを見出した。
本発明者らは、上記以外にも下記するように種々の思いがけない新知見を得て、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のマレイン酸塩を必須条件とする発明に関する。
[1]下記式(1)で表される化合物のマレイン酸塩。
[2]前記[1]に記載のマレイン塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
[3]プリオン病の予防、改善又は治療剤であることを特徴とする前記[2]に記載の医薬組成物。
[4]前記[1]に記載のマレイン酸塩を水に濃度25%W/Vで溶解させ、30日経過後に、前記マレイン酸塩が97%以上の保存率を示すことを特徴とする前記[2]又は[3]に記載の医薬組成物。
[5]前記[1]に記載の式(1)で表される化合物と、マレイン酸とを接触させることを特徴とする前記[1]に記載のマレイン酸塩の製造方法。
[6]脳に到達する製剤である前記[2]〜[4]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
本発明によれば、結晶性及び結晶の安定性に優れた抗プリオン化合物を製造でき、該プリオン化合物を工業的に有利に大量合成することができる。
また、遊離の式(1)で表される化合物は水難溶性であるため、効果的な水溶製剤は製造困難であるが、本発明による抗プリオン化合物は、水溶性に優れるため、抗プリオン化合物を静脈内投与により投与することができ、注射剤として使用することができる。
本発明によれば、抗プリオン治療薬を医薬品として実用化することができる。
実施例2の2週間の苛酷試験後のマレイン酸塩の写真である。 比較例2の2週間の苛酷試験後のコハク酸塩の写真である。 実施例3の苛酷試験実施前のマレイン酸塩のX線回析チャートである。 実施例3の2週間苛酷試験後のマレイン酸塩のX線回析チャートである。 実施例3の1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩のX線回析チャートである。 比較例3の苛酷試験実施前のコハク酸塩のX線回析チャートである。 比較例3の2週間苛酷試験後のコハク酸塩のX線回析チャートである。 比較例3の1ヶ月苛酷試験後のコハク酸塩のX線回析チャートである。 試験例5の、ラットへのマレイン酸塩単回投与後の血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度の結果である。 試験例7の、カニクイザルへのマレイン酸塩単回急速静脈内投与後の血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度の結果である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマレイン酸塩は、下記式(1)で表される化合物のマレイン酸塩であることを特徴とする。
本発明のマレイン酸塩は、下記式(1)で表される化合物の無機酸塩並びに有機酸塩(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、マンデル酸、フマル酸又はベンゼンスルホン酸など)と比較して、質的にも量的にも予想外に結晶性が良いばかりでなく、結晶の安定性が高い。
本発明のマレイン酸塩は、例えば、以下の方法で合成することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。しかしながら、本発明のマレイン酸塩生成のために障害となる不純物を含まない等の理由により、工業的に有利な製造方法として下記の方法が特に好ましい。
<好ましい製造方法>
(ただし、conc.HClは濃塩酸を、THFはテトラヒドロフランを、Etはエチルを、dryは乾燥したを、Maleic Acidはマレイン酸を、表す。以下同じ。)
上記ステップ1〜4における各反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。本発明のマレイン酸塩の合成において使用される溶媒は、特に限定されない。
前記溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
前記ステップ1〜4における各反応は、常圧又は加圧下で行うことができる。
前記各反応の反応終了後、反応生成物は、該反応生成物を含む反応系から常法により単離すれば良く、必要に応じて、例えば、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、抽出、蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー、真空乾燥等により、常法を用いて分離精製することにより製造することができる。また、単離・分離精製せずに次工程に進んでも良い。
前記ステップ1〜4において、反応生成物の再結晶(結晶化)のために使用される溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ペンタノール等のアルコール:アセトン;アセトニトリル;テトラヒドロフラン(THF);シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジイソプロピルエーテル等のエーテル等が挙げられる。
<ステップ1の製造方法>
シクロヘキサンカルボキシアルデヒドとアニリンとを、濃塩酸等の酸の存在下で反応させることにより、式(2)で表される4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリンを合成することができる。
本反応で使用される酸としては、例えば、濃塩酸、硫酸等が挙げられ、好ましくは、濃塩酸である。酸の使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド1モルに対して、約0.05〜0.3モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約0.05〜0.15モルであり、より好ましくは、約0.10〜0.13モルである。
本反応で使用されるアニリンの使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド1モル対して、約2.0〜5.0モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約3.0〜4.5モルであり、より好ましくは、約3.9〜4.3モルである。
本反応における反応温度は、反応規模等に応じて適宜選択することができ、通常は、反応液の内温約120〜150℃の範囲であれば良く、好ましくは、約130〜140℃である。
本反応における反応時間は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、数分〜約7時間の範囲で適宜選択すれば良く、好ましくは、約4〜7時間であり、より好ましくは、約5〜6時間である。数分とは、約1分〜10分程度を意味する。
<ステップ2の製造方法>
式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)は、式(2)で表される4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリンを、好ましくは、塩基及び溶媒の存在下、クロロアセチルクロリドと反応させることにより製造することができる。
式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)の代わりにN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-ブロモアセトアミド)を製造しても良く、この場合は、クロロアセチルクロリドの代わりに、ブロモアセチルブロミドを使用しても良い。
本反応で使用する塩基としては、例えば、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、N,N-ジメチル‐4‐アミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられ、好ましくは、トリエチルアミンである。塩基の使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、式(2)で表される4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリン1モル対して、約2.0〜3.0モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約2.15〜2.17モルである。
本反応で使用する溶媒としては、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、CPME等である。溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常は、式(2)で表される4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリン1重量部に対して、約1.0〜45倍容量の範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約40〜50倍容量であり、より好ましくは、約44〜46倍容量である。
本反応で使用するクロロアセチルクロリドの使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、式(2)で表される4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリン1モル対して、約2.0〜3.0モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約2.17〜2.20モルである。
本反応における反応温度は、反応規模等に応じて適宜選択することができ、通常は、反応液の内温約-4〜0℃の範囲であれば良く、好ましくは、約-4〜-1℃である。
本反応における反応時間は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、数分〜約20時間の範囲で適宜選択すれば良く、好ましくは、約15〜20時間であり、より好ましくは、約16〜18時間である。
<ステップ3の製造方法>
式(1)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]は、式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)を、好ましくは、溶媒の存在下、ピロリジンと反応させることにより製造することができる。また、式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)の代わりに、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-ブロモアセトアミド)を使用しても良い。
本反応で使用されるピロリジンの使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)1モルに対して、約2.0〜5.0モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約4.0〜5.0モルであり、より好ましくは、約4.4〜4.6モルである。
本反応で使用される溶媒としては、好ましくは、THF、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、ジエチルエーテル、トルエン等である。溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常は、式(3)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)1重量部に対して、約1.0〜55.0倍容量の範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約50〜55倍容量であり、より好ましくは、約51.7〜53.0倍容量である。
本反応における反応温度は、反応規模等に応じて適宜選択することができ、通常は、反応液の内温約22〜28℃の範囲であれば良く、好ましくは、約25〜26℃である。
本反応における反応時間は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、数分〜約20時間の範囲で適宜選択すれば良く、好ましくは、約15〜20時間であり、より好ましくは、約17〜19時間である。
<ステップ4の製造方法>
式(4)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩は、式(1)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]を、溶媒の存在下、マレイン酸と反応させることにより製造することができる。
本反応で使用される溶媒としては、好ましくは、THF、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等である。溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常は、式(1)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]1重量部に対して、約1.0〜130倍容量の範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約120〜130倍容量であり、より好ましくは、約125〜129倍容量である。
本反応で使用されるマレイン酸の使用量は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、式(1)で表されるN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]1モルに対して、約2.0〜3.0モルの範囲から適宜選択すれば良く、好ましくは、約2.2〜2.5モルである。
本反応における反応温度は、反応規模等に応じて適宜選択することができ、通常は、反応液の内温約0〜30℃の範囲であれば良く、好ましくは、約20〜30℃であり、より好ましくは約25〜26℃である。
本反応における反応時間は、反応規模や反応温度等により一定しないが、通常は、数分〜約5時間の範囲で適宜選択すれば良く、好ましくは、約3〜5時間であり、より好ましくは、約4.0〜4.5時間である。
各反応終了後、抽出、転溶、濃縮、クロマトグラフィー、結晶化、再結晶等の自体公知の手段を適宜に採用して本発明の塩を容易に取得できる。
本発明のマレイン酸塩は、良好な抗プリオン活性を有する。本発明における抗プリオン活性とは、異常型プリオンタンパク質の生成を抑制する活性を意味する。
本発明のマレイン酸塩は、正常型プリオンタンパク質に強固に結合し、正常型プリオンタンパク質の異常型プリオンタンパク質への構造変換を阻止することができるため、良好な抗プリオン活性を有する。
本発明のマレイン酸塩は、正常型プリオンタンパク質の構造変換抑制や、プリオン病の予防、改善又は治療のために使用できる。本発明のマレイン酸塩を、プリオン病の患者に有効量を投与することにより、プリオン病を予防、改善又は治療することができる。
本発明のマレイン酸塩は、また、ステーキ、食肉等の食品や飲料等に添加して利用することもできる。従って、本発明は、本発明の化合物を含有する食品、食品添加物等も提供する。
本発明における「正常型プリオンタンパク質」とは、正常な細胞に発現している感染性を有しないプリオンタンパク質を意味し、「異常型プリオンタンパク質」とは、正常型プリオンタンパク質とアミノ酸配列は同一であるが、立体構造が異なり、感染性を有するプリオンタンパク質を意味する。また、「プリオンに感染する」とは、異常型プリオンタンパク質に構造変換している状態を意味する。
本発明におけるプリオン病とは、正常型プリオンタンパク質が構造変換して生成される異常型プリオンタンパク質により引き起こされる疾患であり、プリオン病としては、例えば、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、FFI、クールーおよび変異型ヤコブ病等が挙げられる。
本発明において、「予防」は、発症の回避、遅延、又は発症率の低下を包含し、「改善」及び「治療」は、症状の軽快、症状の進行抑制、及び治癒ないしは完快を包含する。
<医薬組成物>
本発明は、本発明のマレイン酸塩を有効成分として含有する医薬組成物も含む。
本発明の医薬組成物は、好ましくは、プリオン病の予防、改善又は治療剤である。本発明の医薬組成物は、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。
本発明の医薬組成物の製造方法は、本発明のマレイン酸塩を原料に含んで製造されるものであれば、特に限定されず、従来公知の方法に従って製造することができる。
尚、本発明の医薬組成物は、脳に到達する製剤であることが好ましい。
本発明の医薬組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば、注射剤、クリーム、軟膏、飲料剤、エアロゾル、皮膚ゲル、点眼剤、点鼻剤等の液状製剤;錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、除放剤、坐薬等の固形製剤等が挙げられる。剤型は、プリオン病疾患患者が使用し易い剤型である点で、好ましくは、注射剤、錠剤等である。注射剤は、水性注射剤又は油性注射剤のいずれでも良い。
尚、注射剤等の液状製剤は、凍結保存又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。
本発明の医薬組成物は、何れの剤型の場合も、本発明のマレイン酸塩に加えて、薬学的に許容される基剤又は担体、薬学的に許容される添加剤、本発明のマレイン酸塩以外の生理活性成分若しくは薬理活性成分等を含むことができる。
本発明の医薬組成物は、何れの剤型の場合も、食品、食品添加物、サプリメント、健康食品として使用されて良く、通常、常法により、容器又は袋に収容することができる。容器又は袋は、食品、サプリメント、医薬品、健康食品等の容器として使用可能なものであれば特に限定されず、本発明の医薬組成物の剤型に応じて、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
本発明の医薬組成物の性状は特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、固体状等が挙げられる。また、用時調製により、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、固体状等になったものも含まれる。
本発明の医薬組成物中の本発明のマレイン酸塩の含有量としては、医薬組成物の全量に対して、通常は、約0.01〜0.12重量%であり、好ましくは、約0.02〜0.10重量%であり、より好ましくは、約0.02〜0.05重量%である。このような範囲であれば、プリオン病の予防、改善、又は治療効果が十分に得られる。
本発明の医薬組成物の投与方法は、特に限定されず、経口投与、非経口投与のいずれであっても良く、動脈内、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、直腸内へ、又は経呼吸、経皮、経鼻、経眼等による全身又は局所への投与等の方法により行うことができる。
前記投与方法は、好ましくは、静脈内投与等である。
本発明の医薬組成物の投与量は、投与方法、剤型、投与対象の種、年齢、体重、病歴等に応じて適宜選択されるが、通常、1回当たり体重1kgあたり約1.0〜500mgであり、好ましくは、約10〜100mgである。
また、投与回数も、剤型、プリオン病の程度又は年齢等に応じて適宜選択され、1回投与とするか、ある間隔をおいて持続投与とすることもできる。持続投与の場合、投与間隔は1日1回から数ヶ月に1回でも良い。
本発明の医薬組成物に使用される基剤又は担体は、特に限定されないが、例えば、水、極性溶媒のような水性溶媒、多価アルコール、植物油、油性基剤等が挙げられる。注射剤の基剤又は担体としては、注射用蒸留水、生理用食塩水等が挙げられる。
基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の医薬組成物に使用される薬学的に許容される添加剤としては、例えば、界面活性剤、香料又は清涼化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、及び粘稠化剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
薬学的に許容される添加剤の具体例を以下に例示する。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(以下、「POE」ということもある)−ポリオキシプロピレン(以下、「POP」ということもある)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188)、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(例えば、ポロキサミン)、POEソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80(TO−10等))、POE硬化ヒマシ油(例えば、POE(60)硬化ヒマシ油(HCO−60等))、POEヒマシ油、POEアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル)、及びステアリン酸ポリオキシルのような非イオン性界面活性剤;グリシン型両性界面活性剤(例えば、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン)、及びベタイン型両性界面活性剤(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン)のような両性界面活性剤;並びにアルキル4級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム)のような陽イオン界面活性剤等が挙げられる。尚、括弧内の数字は付加モル数を示す。
香料又は清涼化剤としては、例えば、カンフル、ボルネオール、テルペン類(これらはd体、l体又はdl体のいずれでも良い)、ハッカ水、ユーカリ油、ベルガモット油、アネトール、オイゲノール、ゲラニオール、メントール、リモネン、ハッカ油、ペパーミント油、及びローズ油のような精油等が挙げられる。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤としては、例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩等)、及びグローキル(ローディア社製)等が挙げられる。
pH調節剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、及びリン酸等が挙げられる。
等張化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、及びクエン酸等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤;クエン酸、クエン酸ナトリウムのようなクエン酸緩衝剤;酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムのような酢酸緩衝剤;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムのような炭酸緩衝剤;ホウ酸、ホウ砂のようなホウ酸緩衝剤;タウリン、アスパラギン酸及びその塩類(カリウム塩等)、イプシロン−アミノカプロン酸のようなアミノ酸緩衝剤等が挙げられる。
安定化剤としては、例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、及びモノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸-2-硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウム等)、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤等が挙げられる。
粘稠化剤としては、例えば、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース系高分子化合物、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、α−シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デンプン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメタアクリレートのようなポリビニル系高分子化合物、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、及びカリウム塩等)、ポリアクリル酸のアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等)、ポリアクリル酸のアンモニウム塩のようなカルボキシビニルポリマー、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、エラスチン、セラミド、流動パラフィン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリエチレンイミンアルギン酸塩(ナトリウム塩等)、アルギン酸エステル(プロピレングリコールエステル等)、トラガント末、並びにトリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
これらの添加剤は、医薬組成物のみならず、食品、食品添加剤、健康食品、サプリメントにも使用可能である。
本発明の医薬組成物に使用される、マレイン酸塩以外の薬理活性成分又は生理活性成分としては、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物、セルロース又はその誘導体、及び局所麻酔薬成分等が挙げられる。これらの薬剤の具体例を以下に例示する。
ビタミン類としては、例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、及びユビキノン誘導体等が挙げられる。
アミノ酸類としては、例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、イプシロン−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、及びコンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでも良い。
抗菌薬成分又は殺菌薬成分としては、例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、及びアシクロビル等が挙げられる。
糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、マクロゴールおよびその薬学的に許容される塩類等が挙げられる。
セルロース又はその誘導体としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。
局所麻酔薬成分としては、例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
<薬理活性試験>
本発明の医薬組成物の薬理活性試験は、正常型プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を評価できる方法であれば特に限定されないが、通常は、被検物質の存在下、プリオン感染細胞が生成する異常型プリオンタンパク質の生成を検出する手段を用いることができる。前記プリオン感染細胞は、プリオンに感染しうる細胞に、公知の方法でプリオンを感染させることにより生成できる。異常型プリオンタンパク質の検出は、特定のタンパク質を検出可能な公知の方法を用いることができ、好ましくは定量的な検出方法が用いられる。前記定量的な検出方法としては、通常は抗体、核酸、これらの類似体(ペプチド、PNA等)等の特定のタンパク質を認識する手段と、蛍光体や放射線等で標識したタンパク質のイメージ解析手段(ELISA、ECL-plusウェスタンブロッティング等)等の認識されたタンパク質を定量化する手段とを組み合わせて行われる。
薬理活性試験は、通常は、マウス神経細胞株にプリオンを感染させ、次いで種々の濃度で被検物質(薬剤)を添加した培地で一定期間培養した後、タンパク質を回収して異常型プリオンタンパク質を抗体等で検出し、イメージ解析等により定量化する方法等を利用することができる。前記試験において、異常型プリオンタンパク質の生成量が少ないほど、プリオンタンパク質の構造変化抑制活性に優れ、プリオン病の予防、改善又は治療に高い効果を奏すると評価できる。
本発明のマレイン酸塩及び医薬組成物の抗プリオン活性は、後述のIC50(50%阻害濃度)に基づけば、IC50は好ましくは1.0μM以下であり、より好ましくは0.5μM以下であり、さらに好ましくは0.4μM以下である。本発明において、IC50とは、マレイン酸塩を添加しないときのプリオンタンパク質の濃度を100%としたときの、プリオンタンパク質が50%に減少するマレイン酸塩の有効濃度のことである。
本発明は、下記式(1)で表される化合物と、マレイン酸とを接触させることを特徴とする本発明のマレイン酸塩の工業的に有利な新規製造方法をも含有するので、該製造方法は、上述したマレイン酸塩の取得方法として当業者であれば実施できるように詳細に開示されている。
本発明を以下の実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<有機酸塩の形成>
(実施例1)
アルゴン雰囲気下、アニリン890g(9.5mol)とシクロヘキサンカルボキシアルデヒド270g(2.4mol)を混合させたのち、室温下で濃塩酸22.7g(0.24mol)を滴下した。反応液を140℃で5時間加熱還流したのち、反応液にジエチレングリコール1.1kg、水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、余剰のアニリンを蒸留により留去した。反応液を2N塩酸2.6kgにより抽出し、トルエン1.4Lにより洗浄を行った。水層に5%水酸化ナトリウム水溶液を加え、析出した結晶を回収し、真空乾燥することにより、粗結晶A、257g(yield:38%、mp:104〜107℃)を得た。
粗結晶Aの1H核磁気共鳴スペクトルの結果は、以下の通りであった。
<粗結晶A>
1H NMR(CDCl3,δ) 7.00 (d, 4H, Ar-H), 6.58 (d, 4H, Ar-H), 4.12 (d, 1H, CH), 1.95-1.93 (m, 1H, CH), 1.63 (m, 4H, CH2), 1.18-1.15 (m, 4H, CH2), 0.83 (q, 2H, CH2)
従って、粗結晶Aは、4,4’-(シクロヘキシルメチレン)ジアニリンであることが確認された。
アルゴン雰囲気下、粗結晶A、257g(0.92mol)をジクロロメタン2.6Lに溶解させ、トリエチルアミン204g(2.0mol)を加えた。これに、氷冷下、クロロアセチルクロリド227g(2.0mol)を滴下し、18時間撹拌した。析出した結晶を回収し、ジクロロメタンで洗浄した。これをTHF/CPME混合溶液を用いて再結晶し、結晶B、283g(yield:71%、mp:228℃)を得た。
ピロリジン204g(2.87mol)をTHF2.8Lに溶解させ、室温下、結晶B、283g(0.65mol)を分割添加し、19時間撹拌させた。反応液を酢酸エチル6.0Lで抽出、イオン交換水3.4Lで洗浄を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、減圧濃縮し粗結晶を得た。これをTHF/ジイソプロピルエーテル混合溶液を用いて再結晶し、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]の結晶、274g(yield:83%、mp:167℃)を得た。
結晶Bの1H核磁気共鳴スペクトルの結果は、以下の通りであった。
<結晶B>
1H NMR(CDCl3,δ) 8.14 (br, 2H, CH2), 7.41 (d, 4H, Ar-H), 7.24 (d, 4H, Ar-H), 4.16 (s, 4H, CH2Cl), 3.46 (d, 1H, CH), 2.04 (q, 1H, CH), 1.57-1.55 (m, 4H, CH2), 1.22-1.14 (m, 4H, CH2), 0.85 (q, 2H, CH2)
従って、結晶Bは、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス(2-クロロアセトアミド)であることが確認された。
また、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]の1H核磁気共鳴スペクトルの結果は、以下の通りであった。
<N,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]>
1H NMR(CDCl3,δ) 8.99 (br, 2H, NH), 7.45 (d, 4H, Ar-H), 7.21 (d, 4H, Ar-H), 3.43 (d, 1H, CH), 3.24 (s, 4H, C(O)CH2), 2.67 (br, 8H, NCH2), 2.08-2.00 (m, 1H, CH), 1.83 (quint, 8H, CH2), 1.67-1.59 (m, 4H, CH2), 1.24-1.12 (m, 4H, CH2), 0.84 (q, 2H, CH2)
N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]100g(0.2mol)をTHF2.0Lに溶解させた。氷冷下、マレイン酸51g(0.43mol)のTHF(300mL)溶液を滴下し、滴下終了後、室温下、20時間撹拌した。析出した結晶を回収し、エタノール/イオン交換水混合溶液(30:1)を用いて再結晶し、目的のN,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩130.8g (yield89.5%, mp145.1℃)を得た。
N,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩の1H核磁気共鳴スペクトル(TMS内部標準)の結果は、以下の通りであった。
<N,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩>
1H NMR(dmso-d6,δ) 10.38 (br, 2H, NH), 7.45 (d, 4H, Ar-H), 7.30 (d, 4H, Ar-H), 6.02 (s, 4H, CH), 4.14(s, 4H, C(O)CH2), 3.47 (d, 1H, CH), 3.30 (br, 8H, NCH2), 2.13-2.10 (m, 1H, CH), 1.93 (quint, 8H, CH2), 1.59 (m, 3H, CH2), 1.46-1.43 (m, 2H, CH2), 1.19-1.13 (m, 3H, CH2), 0.84-0.78 (q, 2H, CH2)
本マレイン酸塩は、中和滴定によりマレイン酸が2分子結合した塩と推定されたので、2マレイン酸塩(分子式:C3950410)として元素分析を行った。その結果は以下の通りで、計算値と実測値の差がいずれも±0.3%以内であったので、本マレイン酸塩は、マレイン酸が2分子結合した塩であることが判明した。
計算値:C,63.75%;H,6.86%;N,7.62%
実測値:C,63.48%;H,6.89%;N,7.48%
(比較例1)
前記のN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]、100g(0.198mol)をTHF2.0Lに溶解させた。氷冷下、コハク酸51.4g(0.435mmol)のTHF溶液0.9Lを滴下し、滴下終了後、室温下、24時間撹拌した。析出した結晶を回収し、THFを用いて再結晶し、目的のN,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]コハク酸塩74.2g(yield:50.5%、mp:145℃)を得た。
N,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]コハク酸塩の1H核磁気共鳴スペクトルの結果は、以下の通りであった。
<N,N’-[ (シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]コハク酸塩>
1H NMR(CDCl3,δ) 9.18(br, 2H, NH), 7.45 (d, 4H, Ar-H), 7.19 (d, 4H, Ar-H), 3.72 (d, 1H, CH), 2.78(s, 4H, C(O)CH2), 2.58 (br, 8H, NCH2), 2.07-2.04 (m, 1H, CH), 1.88 (quint, 8H, CH2), 1.65-1.57 (m, 5H, CH2), 1.23-1.15 (m, 3H, CH2), 0.86-0.83 (m, 2H, CH2)
<有機酸塩の結晶性のスクリーニング>
(試験例1)
実施例1のマレイン酸を、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、マンデル酸、フマル酸又はベンゼンスルホン酸に変更し、酸塩の合成スケールを実施例1の0.01倍のスケールに変更し、再結晶溶媒を表1に記載の各溶媒に変更した以外は、実施例1と同様にして各酸の酸塩を作製し、各塩の結晶性を評価した。これらの塩と実施例1の0.01倍のスケールで作製したマレイン酸塩及び比較例1の0.01倍のスケールで作製したコハク酸塩のスクリーニングの結果を、表1に示す。その結果、酢酸、コハク酸、及びマレイン酸が候補として残った。しかし、実際に実施例1と同じ合成スケールにスケールアップして合成した結果、酢酸塩は乾固により、酢酸が抜けていき、すなわち容易に離脱していき、塩形成をしないことが分かった。
<有機酸塩の苛酷試験>
(実施例2)
実施例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩結晶をシャーレーに入れ、該シャーレーを温度40±2℃、湿度75±5%の恒温恒湿槽に2週間置いて苛酷試験を行なった後のマレイン酸塩の状態を観察した。2週間の苛酷試験後のマレイン酸塩の写真を図1に示す。
2週間苛酷試験後のマレイン酸塩は、白色結晶であり粉体の形状を留めていたことから、本発明のマレイン酸塩は、結晶性が高く、安定性が高いものであることがわかった。さらに前記温度及び条件で苛酷試験を実施し、1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩を得た。該1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩も、粉体の白色結晶であり、粉体の形状を留めていた。
(比較例2)
比較例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1−ピロリジニル)アセトアミド]コハク酸塩結晶をシャーレーに入れ、該シャーレーを温度40±2℃、湿度75±5%の恒温恒湿槽に2週間置いて苛酷試験を行なった後のコハク酸塩の状態を観察した。2週間の苛酷試験後のコハク酸塩の写真を図2に示す。
2週間苛酷試験後のコハク酸塩は、アメ状であり粉体の形状を留めていなかったことから、コハク酸塩は吸湿性が高く、実施例2で示したマレイン酸塩と比較して、結晶性及び安定性が劣ることがわかった。さらに前記温度及び条件で苛酷試験を実施し、1ヶ月苛酷試験後のコハク酸塩を得た。
(実施例3)
前記の2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩と苛酷試験実施前のマレイン酸塩(実施例1で得られたマレイン酸塩)のX線回折データを、X線回折装置(製品名:D8ADVANCE)を用いて、下記の条件により、常法に従って測定した。
X線 :Cu Kα線(1.54Å)
ターゲット:Cu
X線菅電流:45mA
X線菅電圧:45kV
走査範囲 :2θ=4.000〜70.134°
ステップ :2θ=0.021°
苛酷試験実施前、2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩の測定結果を、それぞれ図3、図4及び図5に示す。図3〜5において、Intensityとは回折強度を示し、2-Theta-Scaleとは回折角(2θ(°))を示す。この結果は、2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のマレイン酸塩のX線回折パターンが、苛酷試験実施前のマレイン酸塩のX線回折パターンと比較して変化がなく、極めて安定な結晶であることを示している。従って、本発明のマレイン酸塩は結晶性が高く、安定性が高いものであることを示している。
(比較例3)
前記の2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のコハク酸塩と苛酷試験実施前のコハク酸塩(比較例1で得られたコハク酸塩)のX線回折データを、実施例3と同様の方法を用いてX線回折装置により測定した。苛酷試験実施前、2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のコハク酸塩の測定結果を、それぞれ図6、図7及び図8に示す。図6〜8において、Intensityとは回折強度を示し、2-Theta-Scaleとは回折角(2θ(°))を示す。この結果は、2週間苛酷試験後及び1ヶ月苛酷試験後のコハク酸塩のX線回折パターンが、苛酷試験実施前のコハク酸塩のX線回折パターンと比較して変化しており、不安定な結晶であることを示している。
以上の結果から、本発明のマレイン酸塩は、結晶性及び安定性に、驚くべきことに最も優れたものであることがわかる。尚、該化合物の遊離化合物よりも、対応するマレイン酸塩が、顕著に結晶性及び安定性に優れていることも知見した。
<投与試験>
(試験例2)
実施例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩を注射用生理食塩液に溶解し、濃度が50mg/mL、pH3.79の投与液を調整した。投与液の調整は紫外線をカットした蛍光灯下、投与当日に行った。
得られた投与液を、試験動物としてカニクイザル(雄雌3〜5歳齢、体重3〜4Kg)を用い、ディスポータブルシリンジおよび経口カテーテルにより、胃内へ強制経口投与(投与回数1回)した。投与液量は5mL/kgとし、投与日に測定した体重に基づき算出した。投与時点から1、2、4、8及び24時間後に、橈側皮静脈または伏在静脈から採血量約0.5mL/時点を採取した。なお、抗凝固剤としてヘパリン(ナトリウム塩)を用いた。
採取した血液を遠心分離(約10000×g、3分、約4℃)し、個体毎に血漿を得た。得られた血漿中のN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩濃度をHPLC測定により測定した。結果を表2に示す。表2においてBLQとは、測定可能な下限値より低い濃度(<5ng/mL)であることを示す。この結果から、本発明のマレイン酸塩が、血中においても分解されることなく、安定性が高いことがわかる。
(試験例3)
実施例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩を注射用生理食塩液に溶解し、濃度が12.5mg/mL及び0.2mg/mLの投与液を調整した。投与液の調整は紫外線をカットした蛍光灯下、投与当日に行った。pHは、濃度12.5mg/mLの投与液では3.74、濃度0.2mg/mLの投与液では4.47であった。
得られた2種の濃度の投与液を、試験動物としてカニクイザル(雌3〜5歳齢、体重2〜4Kg)を用い、ディスポータブルシリンジおよび注射針(24G)を用いて伏在静脈より投与速度0.5mL/min又は2mL/minにて静脈内投与(投与回数1回)した。投与時点から5分、2、4、8、24時間後に、採血部位橈側皮静脈または伏在静脈から採血量約0.5mL/時点を採取した。投与液量は投与日に測定した体重に基づき算出した。なお、抗凝固剤としてヘパリン(ナトリウム塩)を用いた。
採取した血液を遠心分離(約10000×g、3分、約4℃)し、個体毎に血漿を得た。得られた血漿中のN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1−ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩濃度をHPLC測定により測定した。結果を表3に示す。この結果からも、本発明のマレイン酸塩が、血中においても分解されることなく、安定性が高いことがわかる。
<異常型プリオンタンパク質の定量>
(試験例4)
マウス視床下部神経細胞系列GT1は、マウスプリオンに感染しうる。本発明のマレイン酸塩の抗プリオン作用を評価する目的で、GTFK−1細胞系列を用いた(N. Nishida et al., J. Virol, 74, 320-325 (2000))。これらはGSS由来の(O. Milhavet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 97, 13937-13942 (2000))マウス適合プリオンFukuoka−1株である。
GTFK細胞を、37℃下、5%二酸化炭素で、ダルベッコ培地に10%牛胎児血清、50U/mLのペニシリンG、50mg/mLの硫酸ストレプトマイシンを加えた培養液で培養した。コンフルエントとなった細胞を、一週間毎に、0.25%トリプシンと1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いて継代した。細胞の濃度は、0.5×10cells/mLに調整した。
次いで、実施例1のマレイン酸塩(N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩)を、10mMの濃度でDMSOに溶解した。約3×10の細胞を、6穴プレートに藩種し、24時間後に、培養液を含む前記マレイン酸塩で培養液を置換した。この培養液とDMSO濃度が同じである培養液を、対照として使用した。前記マレイン酸塩を添加してから3日後、細胞を、150μLのトリトン−DOC溶解液で溶解した。11200×gで遠心した後、上澄み液中のタンパク質濃度をBCAプロテインアッセイキット(Pierce社製)で測定し、溶解液で1mg/mLに調整して試料を得た。
得られた試料を、20μg/mLの濃度のプロテイナーゼKで、37℃で30分間加水分解した後、反応を3mMの阻害剤(ベファブロック)で停止させた。その後、試料を21952×gで45分間、4℃で遠心し、沈殿物を試料緩衝液に溶かして煮沸させた後、15%ポリアクリルアミドで、180Vで20分間電気泳動した。その後、ウエスタンプロットを行い、蛋白質をPVDF膜(Immobilon-P、ミリポア社製)に転写した。異常型プリオンタンパク質検出のための一次抗体としては、M−20抗体(SANTA CRUZ社製)を使用した。シグナルはSuper Signal液(Pierce社製)で可視化し、LAS―1000UV解析装置(LAS-1000 UVmini、富士フイルム社製)でスキャンした。全異常型プリオンタンパク質バンドの濃度を測定し、Multi Gauge(ソフトウェア名)を用いて比較した。実施例1のマレイン酸塩を添加しないときの異常型プリオンタンパク質の濃度を100%とし、異常型プリオンタンパク質が50%に減少する該マレイン酸塩の有効濃度(IC50)を、該マレイン酸塩の添加濃度を0.05、0.1、0.3、0.5、0.8、1.2、1.5,2.0及び5.0μMとして細胞に添加することにより求めた。その結果、実施例1のマレイン酸塩のIC50は、0.46±0.20μMと低い値を示し、本発明のマレイン酸塩が、プリオン病の予防、改善又は治療に有効な化合物であることが示された。
<ラットにおける単回投与後の薬物動態試験>
(試験例5)
実施例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩29.9mgに局方生理食塩液(株式会社大塚製薬工場製)100mLを加え、スターラーで撹拌しつつ溶解させ、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]換算濃度が0.2mg/mLの、急速静脈投与及び経口投与用の投与液を得た、この投与液を0.22μmのフィルターでろ過後、減菌した。得られた液を60mL採取し、局方生理食塩液90mLを加えて希釈して、0.08mg/mL(N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]換算濃度)の、持続静脈内投与用の投与液を得た。尚、投与液の調整は紫外線をカットした蛍光灯下、投与当日に行った。また、上記2種の投与液のpHは、ともに4.68であった。
雄性Crl:CD(SD)ラットを8週齢で購入後(日本チャールス・リバー株式会社より購入)、温度19.0〜25.0℃、相対湿度35.0〜75.0%、12時間周期の照明(7:00〜19:00)の条件下で、固形飼料(CR−LPF:オリエンタル酵母工業製、放射線滅菌済)及び飲用水(5μmフィルター濾過後、紫外線照射した水道水)を自由に摂取させ飼育した。飼育開始後、動物個体毎に一般状態を5日以上毎日観察し、健康状態が良好であることを確認して検疫した。動物入荷日及び検疫終了日に体重測定を行い、検疫終了時の体重が入荷時の体重よりも増加し、順調に発育していることを確認した。尚、検疫終了時の体重は、平均体重±20%以内であることを確認した。検疫終了後も投与日(投与直前)まで毎日一般状態を観察し、馴化を継続した。
急速静脈内投与は、上記投与液を、上記検疫及び馴化をしたラット(投与時の週齢:8週齢)に、翼付注射針(25G×3/4、ニプロ社製)及びディスポーザブル注射筒(2.5mL、テルモ社製)を用いて1mL/minの投与速度で尾静脈内に投与(単回投与)することにより行った。尚、投与液量は、投与日に測定した体重に基づいて算出し、1mg/kgであった。
持続静脈内投与は、上記投与液を、上記検疫及び馴化をしたラット(投与時の週齢:8週齢)に、大腿静脈に挿入されたカテーテルよりシリンジポンプ(TE-312、テルモ社製)及びディスポーザブル注射筒(50mL、テルモ社製)を用いて5.43mL/kg/hの投与速度で投与(単回投与)することにより行った。投与速度は投与日に測定した体重に基いて算出した。投与直前に生理食塩液でフラッシングを行い、カテーテル内液を排出した。投与終了後、カテーテル内での血液凝固を防ぐため、カテーテル内にヘパリン・グリセリン溶液(グリセリン6容量に対しヘパリンナトリウム注射液(1000単位)4容量を加えた後(最終ヘパリンナトリウム濃度:400単位/mL)、フィルター滅菌を行い、冷蔵保存した液)を充填させた。尚、投与液量は投与日に測定した体重に基づいて算出し、10mg/kgであった。
経口投与は、上記投与液を、上記検疫及び馴化をしたラット(投与時の週齢:8週齢)に、経口ゾンデ(フチガミ器械社製)をディスポーザブル注射筒(2.5mL、テルモ社製)に装着し、投与液量及び投与器材のデッドボリューム分の投与液を投与器材に充填し、強制経口投与(単回投与)した。尚、投与液量は投与日に測定した体重に基づいて算出し、1mg/kgであった。
尚、上記急速静脈内投与、持続静脈内投与及び経口投与の投与量はいずれも、N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]換算用量である。
上記した急速静脈内投与、持続静脈内投与及び経口投与のそれぞれにおいて、投与終了時点から5分、2時間、4時間、8時間、24時間及び48時間後に、無麻酔下で鎖骨下静脈からヘパリンナトリウム処理した注射針及びシリンジを用いて、それぞれ約0.25mL(投与後8時間までの場合)又は約0.45mL(投与後24時間以降の場合)を採血し、マイクロテストチューブに移した。血液0.05mL(投与後8時間までの場合)又は0.1mL(投与後24時間以降の場合)をコンバストパットに分取し(各n=1)、後述する方法により放射能を測定して血液中放射能濃度を求めた。血液の残部は遠心分離機(CF15D2、日立工機社製)を用いて遠心分離(4℃、12000rpm×5min)し、血漿を採取した。得られた血漿0.05mL(投与後8時間までの場合)又は0.1mL(投与後24時間以降の場合)をコンバストパットに分取し(各n=1)、後述する方法により放射能を測定して血漿中放射能濃度を求めた。血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度の結果を、表4及び図9に示す。
また、血液及び血漿中放射能濃度推移を、薬物動態解析ソフトウェアPhoenix WinNonlin 6.3(Pharsight Corporation as part of Certara)のNon-compartmental analysisにより解析し、薬物動態パラメータを算出した。その結果を表4に示す。
尚、表4及び図9において、Bolusとは急速静脈内投与を、Infusionとは持続静脈内投与を、POとは経口投与を示す。
(放射能の測定)
tSIE(transformed Spectral Index of External standard)法によりクエンチング補正を行う液体シンチレーションカウンター(Tri-Carb 2300TR、PerkinElmer社製)を用い、放射能を測定した。測定は各バイアル当たり5分間、1回とし、バックグラウンド値は測定試料と同一のシンチレーションカクテルのみ、またはコンバストパッド(PerkinElmer社製)を燃焼して調整したバックグラウンドバイアルを5分間、1回測定して得られた放射能測定値とした。このバックグラウンド値を差し引いてネットのカウント値とした。尚、放射能の検出限界はバックグラウンド値の2倍とした。
サンプルオキシダイザー(Model 307型、PerkinElmer社製)により燃焼処理を行って放射能を測定した際は、あらかじめ放射能の回収率(n=3、許容範囲90.0%以上)を測定した。また、最終燃焼後にも同様に放射能の回収率(n=3)を測定した。尚、サンプルオキシダイザーによる燃焼処理は、発生した14CO2をCO2吸収剤(Carbo-Sorb、PerkinElmer社製:6mLとして設定)に回収させ、Permafluor E+(PerkinElmer社製:9mLとして設定)を混合することにより行った。尚、血液及び血漿は、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度は、上記放射能測定値を用い、薬物動態試験支援システムADMESUPPORT Ver2.1(富士通株式会社製)を用いて算出した。当該システムの情報には、群に関する情報、核種に関する情報、動物購入に関する情報、投与に関する情報、採取項目に関する情報及び測定予定に関する情報を登録した。
血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度は、実施例1で得られたマレイン酸塩のフリー体(N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド])換算濃度として算出した。

表4及び図9の結果から、ラットへの急速静脈内投与において、血液中放射能濃度は投与後5分後から投与後48時間後まで血漿中放射能濃度の6〜11倍高い値で推移したことから、本発明のマレイン酸塩は血球移行性が高いと考えられる。
また、持続静脈内投与においても、血液中放射能濃度は血漿中放射能濃度より12〜16倍高い値で推移した。
これらの結果から、本発明のマレイン酸塩は、注射による静脈内投与に特に適していると考えられる。
(試験例6)
(組織中放射能濃度の測定)
実施例1で得られたマレイン酸塩をラットに単回投与後48時間における組織中放射能濃度を表6に、血球移行率(T)及び血漿中放射能濃度に対する血液中放射能濃度の比(RB)を表7に示す。組織中放射濃度、血球移行率(T)及び血漿中放射能濃度に対する血液中放射能濃度の比(RB)は、以下のようにして求めた。
上記した急速静脈内投与、持続静脈内投与又は経口投与したラットを、投与48時間後にイソフルラン吸入麻酔下で開腹し、後大静脈から可能な限り採血した後、腹大動脈を切断放血して安楽死させ、下記の表5の組織を摘出した。尚、表5において、組織A〜Dはそれぞれ、A:組織の全量を採取してその一部を放射能測定に供した組織、B:組織の全量を採取してその全量を放射能測定に供した組織、C:組織の一部を採取してその一部を放射能測定に供した組織、D:組織の一部を採取してその全量を放射能測定に供した組織である。
採取した組織について、試験例5に記載した方法で放射能を測定して組織中放射能濃度を求めた。
また、血液試料1mLをコンバストパッドに分取し(n=1)、試験例5に記載した方法で放射能を測定して血液中放射能濃度を求めた。また、血液試料の一部を毛細管に採取し(n=1)、遠心分離機(HC-12A、トミー精工社製)を用いて遠心分離(12000rpm×5min)してヘマトクリット値を測定した。血液試料残部は、遠心分離機(CF7D2、日立工機社製)を用いて遠心分離(4℃、3000rpm×10min)して、その上清を血漿試料とした。血漿試料1mLをコンバスパッドに分取し(n=1)、試験例5に記載した方法で放射能を測定して血漿中放射能濃度を求めた。
また、血漿中放射能濃度に対する各組織中放射能濃度の比率(T/P比)を算出した。血液中放射能濃度(Cb)、血漿中放射能濃度(Cp)及びヘマトクリット値(Ht)の測定結果から、次式により放射能の血球移行率(T)及び血漿中放射能濃度に対する血液中放射能濃度の比(RB値)を算出した。尚、T/P比、T及びRB値の算出には、Microsoft Excel 2010(Microsoft Corporation)を用いた。T及びRB値は、それぞれ、以下の式で表される。
T(%)=(1-Cp/Cb×(100-Ht)/100)×100
RB=Cb/Cp
また、採取した組織について、上記A〜Dに分類した組織は、生理食塩液で洗浄して濾紙片により付着水分を除いた後、それぞれ以下のように処理した。
・組織A:組織重量を測定し、解剖用剪刀により粗砕した後、約0.5gをコンバストパッドに分取、秤量して(n=1)、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
・組織B:コンバストパッドに採取して組織重量を測定した後、全量をサンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
・組織C:組織の一部を採取した。白色脂肪については約0.1g(n=1)を、他の組織については約0.3g(n=1)をコンバスパッドに分取、秤量して、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
・組織D:組織の一部をコンバストパッドに分取、秤量して、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
また、脳脊髄液については、マイジェクター(テルモ社製)を用いて一部(n=1)をコンバストパッドに分取、秤量して、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
表6及び表7の結果から、いずれの投与経路においても、投与後48時間に、脳下垂体、顎下腺、腸間膜リンパ、甲状腺、胸腺、肺、肝臓、副腎、腎臓、脾臓及び膵臓において、血漿中放射能濃度の100倍以上の放射能が確認されたことから、本発明のマレイン酸は組織への移行性が高いものであると考えられる。
また、大脳及び小脳においては、血液中放射能濃度よりも高い放射能が確認されたことから、本発明のマレイン酸塩は中枢神経系への移行性も高いと考えられる。
<カニクイザルにおける単回投与後の薬物動態試験>
(試験例7)
実施例1で得られたN,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]マレイン酸塩22.4mgに局方生理食塩液(株式会社大塚製薬工場製)15mLを加え、スターラーで撹拌しつつ溶解させた後、0.22μmのフィルターでろ過後、滅菌し、2.0mg/mL(N,N’-[(シクロヘキシルメチレン)ジ-4,1-フェニレン]ビス[2-(1-ピロリジニル)アセトアミド]換算濃度)の投与液を得た。投与液の調整は紫外線をカットした蛍光灯下、投与当日に行った。得られた投与液のpHは、3.969であった。
カニクイザルを購入後(日本チャールス・リバー株式会社より購入、支輸出国:中国)、サルの検査場所指定施設で、30日間以上の輸入検疫期間を含めて検疫・馴化を6週間以上行い、健康状態が良好であることを確認した動物を本試験へ移管した。
動物移管後、一般状態及び摂餌量を6日間観察して健康状態が良好であることを確認したのち、投与に供した。カニクイザルの投与時の体重は、3.60〜4.34kgであった。
尚、飼育環境としては、温度23.0〜29.0℃、相対湿度35.0〜75.0%、12時間周期の照明(7:00〜19:00)の条件下で、固形飼料(CMK−2:日本クレア社製)及び飲用水(5μmフィルター濾過後、紫外線照射した水道水)を自由に摂取させた。
急速静脈内投与は、上記投与液を、上記で得られたカニクイザル(投与時の年齢:4年齢)に、翼付注射針(25G×3/4”、ニプロ社製)及びディスポーザブルシリンジ(2.5mL、テルモ社製)を用いて2mL/minの投与速度で伏在静脈内に投与(単回投与)することにより行った。尚、投与液量は、投与日に測定した体重に基づき算出し、1mg/kgであった。
上記した急速静脈内投与の投与終了時点から5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、10時間、24時間、48時間、72時間、120時間及び168時間後に、非麻酔下で橈側皮静脈あるいは大腿静脈から約0.50mL(投与後120時間までの場合)又は約5mL(投与後168時間)を採血した。採血した各サンプルについて、血液中放射能濃度及び血漿中放射能濃度、並びに薬物動態パラメータを求めた。その結果を、表8及び図10に示す。
また、試験例6と同様にして、急速静脈内投与後1時間、4時間及び24時間における放射能の血球移行率(T)及び血漿中放射能濃度に対する血液中放射能濃度の比(RB値)を表9に示す。

表8及び9並びに図10の結果から、カニクイザルへの急速静脈内投与において、血液中放射能濃度は投与5分後から投与24時間後までは比較的速やかに低下し、それ以降の消失は緩除であった。また、血漿中放射能濃度は、血液中放射濃度と比較して同程度又は低い値で推移し、本発明のマレイン酸塩は血球成分に移行し易いことが確認された。
これらの結果から、本発明のマレイン酸塩は、注射による静脈内投与に適していることがわかった。
(試験例8)
(組織中放射能濃度の測定)
上記した試験例7における各時間の採血終了後のカニクイザルに、ペントバルビタール(ソムノペンチル、共立製薬社製)を約0.4mL/kgの用量で静脈内投与し、全身麻酔下、頸動脈より放血し、安楽死させたのち下記表10の組織を摘出した。尚、表10において、組織A〜Cの分類は、上記した表5におけるものと同一である。
血液及び血漿の放射能測定用試料の採取は、試験例7と同様に行った。
脳脊髄液は、マイジェクター(27G×1/2”、1mL、テルモ社製)を用いて採取し、試験例6と同様の方法で放射能を測定し、脳脊髄液中放射能濃度を求めた。
表10に記載の他の組織については、生理食塩水で洗浄し、濾紙片により付着水分を除いた。
尚、消化管は切開し、約40mLの生理食塩水で内容物を洗い出す操作を2回繰り返した後、濾紙片により付着水分を除き、内容物を洗い出した生理食塩水は2回分を合わせた。
また、胆汁は胆嚢から注射針(テルモ社製)を装着した注射筒(テルモ社製)を用いて採取した。
採取した試料について、試験例6と同様の方法で放射能を測定し、組織(胆嚢中胆汁及び消化管内容物は除く)については組織中放射能濃度を求めた。また、血漿中放射能濃度に対する各組織中放射能濃度の比率(T/P比)についても算出した。尚、T/P比の算出にはMicrosoft Excel 2010を用いた。
全重量が測定可能な組織(組織A及びB)については、測定した組織全重量に基づき投与放射能に対する分布率(組織中放射能分布率)を算出した。血液、骨格筋、皮膚及び白色脂肪については、組織全重量をそれぞれ体重の6.0%、41.4%、9.4%及び7.8%として組織中放射能分布率を算出した。
また、採取した組織について、上記A〜Cに分類した組織は、それぞれ、以下のように処理した。
・組織A:組織重量を測定し、組織は解剖用剪刀により、消化管内容物(胃内容物、小腸内容物、大腸内容物)はミキサーにより、それぞれ粗砕した後、一部をコンバストパッドに分取、秤量して(n=1)、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
・組織B:コンバストパッドに採取して組織重量を測定した後、全量をサンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
・組織C:組織の一部を採取し、約0.1g(n=1)をコンバスパッドに分取、秤量して、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
また、脳脊髄液については、マイジェクター(テルモ社製)を用いて一部(n=1)をコンバストパッドに分取、秤量して、サンプルオキシダイザーにより燃焼処理した。
上記のようにして求めた、カニクイザルに実施例1のマレイン酸塩を1mg/kgの用量で単回急速静脈内投与したときの組織中放射濃度及び組織中放射能分布率を、それぞれ表11及び表12に示す。

表11及び12の結果から、組織中放射能濃度は、大部分の組織において血漿よりも高く、本発明のマレイン酸塩は組織移行性が高いことが示唆された。
また、副腎、脾臓、膵臓、脳下垂体等多くの組織において投与後168時間に最高濃度を示し、体内残存量(組織中放射能分布率の合計)は投与放射能の51.22%であったことから、本発明のマレイン酸塩は、組織残留性が高く、体外への排出は非常に援除であると考えられる。
<水溶液中安定性試験>
(試験例9)
逆浸透膜(RO)水製造装置(MILLIPORE社製 Elix)、フィルター(MILLIPORE社製 PROGARD S2 CARTRIDGE)を用いて、逆浸透膜(RO)水を作製した。
トリフルオロ酢酸(TFA)(和光純薬工業社製 和光特級)2mLを前記逆浸透膜(RO)水2000mLに溶解し、0.2%TFA水溶液を調整した。アセトニトリル(和光純薬工業社製 HPLC用アセトニトリル)1容量と0.2%TFA水溶液1容量を振り混ぜ試料溶解液を調製した。実施例1で得られたマレイン酸塩5.0mgを計量し、調整した試料溶解液に溶かして20mLにし(25%W/V)、30mL容量のバイアル管中で室温(20℃)と冷蔵庫内(4℃)の2通りの温度条件にて保管した。経時的なマレイン酸塩の純度の測定は、試料5μLを採取し、以下の条件で液体クロマトグラフィーを行い、マレイン酸塩のピーク面積を測定した。
<測定条件>
HPLC装置:prominence(島津製作所製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長245nm)
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル充填カラム(GL Sciences Inc社製 Inertsil ODS-2)
カラム温度:40度付近の一定温度
移動相条件:アセトニトリル/0.2%TFA水溶液を20/80から開始し、20分間の直線グラジエント法で60/40にし、その後、30分間この条件を保つ。
液量:1.0mmL/min
試料溶液注入量:5μmL
以上の条件下で、マレイン酸塩は15分付近に検出される。
マレイン酸塩の純度は、(マレイン酸塩のピーク面積)/(保持時間4〜35分のピーク面積合計)×100によって求めた。その結果を表13に示す。
表13の結果から、本発明のマレイン酸塩は、水溶液中で室温および冷蔵庫内で30日経過後も97%以上の保存率を示し、水溶液中でも安定であることが明らかとなった。
本発明のマレイン酸塩は、プリオン病の予防、改善又は治療剤の有効成分として使用することができる。また、本発明のマレイン酸塩は、結晶性及び結晶の安定性に優れたものであり、大量合成ができるため、該マレイン酸塩を含むプリオン病の予防、改善又は治療剤の製造を実用化することができる。さらに、本発明のマレイン酸塩は、水溶化できるため、注射剤として使用することができる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される化合物のマレイン酸塩。
  2. 請求項1に記載のマレイン酸塩を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
  3. プリオン病の予防、改善又は治療剤であることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 請求項1に記載のマレイン酸塩を水に濃度25%W/Vで溶解させ、30日経過後に、前記マレイン酸塩が97%以上の保存率を示すことを特徴とする請求項2又は3に記載の医薬組成物。
  5. 請求項1に記載の式(1)で表される化合物と、マレイン酸とを接触させることを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩の製造方法。
  6. 脳に到達する製剤である請求項2〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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