JP6428988B1 - スピン素子の安定化方法及びスピン素子の製造方法 - Google Patents

スピン素子の安定化方法及びスピン素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の一態様にかかるスピン素子の安定化方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、環境温度が所定温度の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度1.0×107A/cm2以上1.0×109A/cm2以下、パルス幅が所定の範囲内であるパルス電流を、所定の待ち時間の間隔をおいて、所定回以上印加する。

Description

本発明は、スピン素子の安定化方法及びスピン素子の製造方法に関する。
二つの強磁性層の磁化の相対角の変化に基づく抵抗値変化(磁気抵抗変化)を利用した素子として、強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子等が知られている。
近年、磁気抵抗変化を利用したスピン素子の中でも、スピン軌道トルク(SOT)を利用したスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子や、磁壁の移動を利用した磁壁移動型磁気記録素子に注目が集まっている。
例えば、非特許文献1にはスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子が記載されている。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じた純スピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により誘起される。磁気抵抗効果素子内にSOTを誘起するための電流は、磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する方向に流す。磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す必要がなく、磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
また例えば、特許文献1には磁壁移動型磁気記録素子が記載されている。磁壁移動型磁気記録素子は、磁気記録層内における磁壁を移動させることで、抵抗値変化が段階的になる。抵抗値が段階的に変化することで、多値のデータ記録が可能である。また「0」、「1」のデジタル的なデータ記録でなく、アナログ的なデータ記録が可能とされている。
特許第5441005号公報
S.Fukami, T.Anekawa, C.Zhang and H.Ohno, Nature Nano Tec (2016). DOI:10.1038/NNANO.2016.29.
これらのスピン素子は、抵抗値が低い低抵抗状態と抵抗値が高い高抵抗状態とを基準に、データを記録する。データの安定性を高めるためには、スピン素子の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値は一定であることが求められる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値を安定化できるスピン素子の安定化方法及びその方法を用いたスピン素子の製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値がスピン素子に初回の書込み動作を行った時と、複数回の書込み動作後とで異なっていることに気付いた。この差は実際の製品の出荷と言う観点では、問題となりうる。例えば、出荷時に「0」、「1」のデータ記録の閾値としていたものが、ユーザの使用途中に変動する等の問題が生じうる。例えば、半永久的に書き込み可能な素子を実現する為には、1015回程度の書込みの保証が求められる。使用途中で、基準となる閾値が変動すると、記録されたデータの信頼性が低下する。
そこで、鋭意検討の結果、本発明者らは書込み回数が所定の条件を超えると、低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値が安定化することを見出した。一般に、配線に電流を複数回加えるとマイグレーション等により抵抗値が高くなる(配線が劣化する)と考えられていた。しかしながら、今回の結果は通電部に所定量の電流を所定の条件に従って印加することで、抵抗値が安定化するというものであり、驚くべきものである。
すなわち本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様係るスピン素子の安定化方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、環境温度が20℃以上50℃未満の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。
(2)第2の態様係るスピン素子の安定化方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、環境温度が50℃以上200℃以下の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。
(3)第3の態様係るスピン素子の安定化方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、環境温度が−100℃以上20℃未満の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が10nsec以上1μsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。
(4)上記態様係るスピン素子の安定化方法は、前記通電部を構成する元素の活性化エネルギーが200kJ/mol以上であってもよい。
(5)上記態様係るスピン素子の安定化方法は、前記通電部がスピン軌道トルク配線であり、前記素子部が第1強磁性層と第2強磁性層とこれらに挟まれた非磁性層とを備えてもよい。
(6)上記態様係るスピン素子の安定化方法は、前記通電部が磁壁を備える磁気記録層であり、前記素子部が前記記録層側から非磁性層と第3強磁性層とを備えてもよい。
(7)上記態様係るスピン素子の安定化方法は、前記スピン素子が複数存在するアレー素子において、n回目に前記パルス電流を印加する前記スピン素子と、n+1回目に前記パルス電流を印加する前記スピン素子と、を変えてもよい。
(8)第4の態様係るスピン素子の安定化方法は、第1の方向に延在する通電部の一面に、強磁性体を含む素子部を形成する工程と、上記態様に係るスピン素子の安定化方法に従い、前記通電部にパルス電流を通電する工程と、を有する。
本実施形態にかかるスピン素子の安定化方法及び製造方法によれば、低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値を安定化できる。
本実施形態にかかるスピン素子の一例であるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の断面模式図である。 本実施形態にかかるスピン素子の一例である磁壁移動型磁気記録素子の断面模式図である。 実施例1にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例1にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例2にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例3にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例4にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例5にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例6にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例7にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例8にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。 実施例9にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の書き込み回数ごとの抵抗値変化を示す図である。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本実施形態にかかるスピン素子の安定化方法は、環境温度が所定温度の場合、スピン素子に、電流密度1.0×10−7A/cm以上1.0×10−9A/cm以下、パルス幅が所定幅のパルス電流を、所定の待ち時間の間隔をおいて、所定回以上印加する。すなわち、スピン素子に所定量以上のエネルギーを与え、スピン素子の抵抗値を安定化させる方法である。まず、スピン素子の例について説明する。
(スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子)
図1は、本実施形態にかかるスピン素子の一例であるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の断面模式図である。図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10は、素子部1とスピン軌道トルク配線(通電部)2とを備える。スピン軌道トルク配線2の素子部1を挟む位置には、導電性を有する第1電極3及び第2電極4を備える。
以下、通電部が延在する第1の方向をx方向、素子部1の積層方向(第2の方向)をz方向、x方向及びz方向のいずれにも直交する方向をy方向と規定して説明する。

<スピン軌道トルク配線>
スピン軌道トルク配線2は、x方向に延在する。スピン軌道トルク配線2は、素子部1のz方向の一面に接続されている。スピン軌道トルク配線2は、素子部1に直接接続されていてもよいし、他の層を介し接続されていてもよい。
スピン軌道トルク配線2は、電流Iが流れるとスピンホール効果によってスピン流が生成される材料からなる。かかる材料としては、スピン軌道トルク配線2中にスピン流が生成される構成のものであれば足りる。従って、単体の元素からなる材料に限らないし、スピン流を生成しやすい材料で構成される部分とスピン流を生成しにくい材料で構成される部分とからなるもの等であってもよい。
スピンホール効果とは、材料に電流Iを流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流Iの向きと直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果によりスピン流が生み出されるメカニズムについて説明する。
スピン軌道トルク配線2の両端に電位差を与えると、スピン軌道トルク配線2に沿って電流Iが流れる。電流Iが流れると、一方向に配向した第1スピンS1と、第1スピンS1と反対方向に配向した第2スピンS2とが、それぞれ電流と直交する方向に曲げられる。例えば、第1スピンS1は進行方向に対しz方向に曲げられ、第2スピンS2は進行方向に対して−z方向に曲げられる。
通常のホール効果とスピンホール効果とは運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通する。一方で、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果では磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる点が大きく異なる。
非磁性体(強磁性体ではない材料)では第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しいので、図中で+z方向に向かう第1スピンS1の電子数と−z方向に向かう第2スピンS2の電子数が等しい。この場合、電荷の流れは互いに相殺され、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
第1スピンS1の電子の流れをJ、第2スピンS2の電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J−Jで定義される。スピン流Jは、図中のz方向に流れる。図1において、スピン軌道トルク配線2の上面には後述する第1強磁性層1Aが存在する。そのため、第1強磁性層1Aにスピンが注入される。
スピン軌道トルク配線2は、電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかによって構成される。
スピン軌道トルク配線2の主構成は、非磁性の重金属であることが好ましい。ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。これらの非磁性金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。
電子は、一般にそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動く。これに対し、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属はスピン軌道相互作用が大きく、スピンホール効果が強く作用する。そのため、電子の動く方向は、電子のスピンの向きに依存する。従って、これらの非磁性の重金属中ではスピン流Jが発生しやすい。
またスピン軌道トルク配線2は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属とは、強磁性金属、あるいは、反強磁性金属を指す。非磁性金属に微量な磁性金属が含まれるとスピンの散乱因子となる。スピンが散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。スピン軌道トルク配線2の主構成は、反強磁性金属だけからなってもよい。
一方で、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生したスピン流が添加された磁性金属によって散乱され、結果としてスピン流が減少する作用が強くなる場合がある。そのため、添加される磁性金属のモル比はスピン軌道トルク配線を構成する元素の総モル比よりも十分小さい方が好ましい。添加される磁性金属のモル比は、全体の3%以下であることが好ましい。
スピン軌道トルク配線2は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体とは、物質内部が絶縁体、あるいは、高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。この物質にはスピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。そこで外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。これがトポロジカル絶縁体であり、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
トポロジカル絶縁体としては例えば、SnTe、Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3、TlBiSe、BiTe、Bi1−xSb、(Bi1−xSbTeなどが好ましい。これらのトポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
<素子部>
素子部1は、第1強磁性層1Aと第2強磁性層1Bとこれらに挟まれた非磁性層1Cとを備える。素子部1は、スピン軌道トルク配線2と交差する第2の方向(z方向)に積層されている。
素子部1は、第1強磁性層1Aの磁化M1Aと第2強磁性層1Bの磁化M1Bの相対角が変化することにより抵抗値が変化する。第2強磁性層1Bの磁化M1Bは一方向(z方向)に固定され、第1強磁性層1の磁化M1Aの向きが、磁化M1Bに対して相対的に変化する。第2強磁性層1Bは固定層、参照層などと表記され、第1強磁性層1Aは自由層、記録層などと表記されることがある。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性層1Bの保磁力を第1強磁性層1Aの保磁力よりも大きくする。交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性層1Bの磁化M1Bを反強磁性層との交換結合によって固定する。
素子部1は、非磁性層1Cが絶縁体からなる場合は、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子と同様の構成であり、金属からなる場合は巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magnetoresistance)素子と同様の構成である。
素子部1の積層構成は、公知の磁気抵抗効果素子の積層構成を採用できる。例えば、各層は複数の層からなるものでもよいし、第2強磁性層1Bの磁化方向を固定するための反強磁性層等の他の層を備えてもよい。第2強磁性層1Bは固定層や参照層、第1強磁性層1Aは自由層や記憶層などと呼ばれる。
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1Bは、磁化M1A,M1Bの磁化容易軸がz方向に配向した垂直磁化膜でも、磁化容易軸がxy面内方向に配向した面内磁化膜でもよい。また磁化M1A,M1Bは、X方向、Y方向、Z方向のいずれかまたは全てに対して傾いていてもよい。
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1Bは、強磁性材料を適用できる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feを例示できる。また第1強磁性層1が面内磁化膜の場合は、例えば、Co−Ho合金(CoHo)、Sm−Fe合金(SmFe12)等を用いることが好ましい。
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1BにCoFeSi等のホイスラー合金を用いると、磁気抵抗効果をより強く発現することができる。ホイスラー合金は、XYZ又はXYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1−aFeAlSi1−b、CoFeGe1−cGa等が挙げられる。
第2強磁性層1Bには、IrMn,PtMnなどの反強磁性材料からなる層を積層してもよい。シンセティック強磁性結合の構造とすることで、第2強磁性層1Bの漏れ磁場が、第1強磁性層1に与える影響を軽減できる。
非磁性層1Cには、公知の材料を用いることができる。例えば、非磁性層1Cが絶縁体からなる場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としては、Al、SiO、MgO、及び、MgAl等を用いることができる。これらの他にも、Al、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。非磁性層1Cが金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。さらに、非磁性層1Cが半導体からなる場合、その材料としては、Si、Ge、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se等を用いることができる。
素子部1は、その他の層を有していてもよい。第1強磁性層1Aの非磁性層1Cと反対側の面に下地層を有していてもよい。スピン軌道トルク配線2と第1強磁性層1Aとの間に配設される層は、スピン軌道トルク配線2から伝播するスピンを散逸しないことが好ましい。例えば、銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウム等は、スピン拡散長が100nm以上と長く、スピンが散逸しにくいことが知られている。この層の厚みは、層を構成する物質のスピン拡散長以下であることが好ましい。層の厚みがスピン拡散長以下であれば、スピン軌道トルク配線2から伝播するスピンを第1強磁性層1Aに十分伝えることができる。
(磁壁移動型磁気記録素子)

図2は、本実施形態にかかるスピン素子の一例である磁壁移動型磁気記録素子20の断面模式図である。図2に示す磁壁移動型磁気記録素子20は、素子部11と磁気記録層(通電部)12とを備える。磁気記録層12の素子部11を挟む位置には、導電性を有する第1電極3及び第2電極4を備える。
<素子部>
素子部11は、第1強磁性層11Aと非磁性層11Bとを備える。第1強磁性層11A及び非磁性層11Bは、図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10と同様のものを用いることができる。
<磁気記録層>
磁気記録層12は、x方向に延在している。磁気記録層12は、内部に磁壁12Aを有する。磁壁12Aは、互いに反対方向の磁化を有する第1の磁区12Bと第2の磁区12Cとの境界である。図2に示す磁壁移動型磁気記録素子20は、第1の磁区12Bが+x方向に配向した磁化を有し、第2の磁区12Cが−x方向に配向した磁化を有する。
磁壁移動型磁気記録素子20は、磁気記録層12の磁壁12Aの位置によって、データを多値で記録する。磁気記録層12に記録されたデータは、第1強磁性層11A及び磁気記録層12の積層方向の抵抗値変化として読み出される。磁壁12Aが移動すると、磁気記録層12における第1の磁区12Bと第2の磁区12Cとの比率が変化する。第1強磁性層11Aの磁化は、第1の磁区12Bの磁化と同方向(平行)であり、第2の磁区12Cの磁化と反対方向(反平行)である。磁壁12Aがx方向に移動し、z方向から見て第1強磁性層11Aと重畳する部分における第1の磁区12Bの面積が広くなると、磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は低くなる。反対に、磁壁12Aが−x方向に移動し、z方向から見て第1強磁性層11Aと重畳する部分における第2の磁区12Cの面積が広くなると、磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は高くなる。磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は、第1強磁性層11Aに電気的に接続された上部電極と、第1電極3又は第2電極4との間で測定される。
磁壁12Aは、磁気記録層12の延在方向に電流を流す、又は、外部磁場を印加することによって移動する。例えば、第1電極3から第2電極4に電流パルスを印加すると、第1の磁区12Bは第2の磁区12Cの方向へ広がり、磁壁12Aが第2の磁区12Cの方向へ移動する。つまり、第1電極3及び第2電極4に流す電流の方向、強度を設定することで、磁壁12Aの位置が制御され、磁壁移動型磁気記録素子20にデータが書き込まれる。
磁気記録層12は、磁性体により構成される。磁気記録層12を構成する磁性体は、第1強磁性層11Aと同様のものを用いることができる。また磁気記録層12は、Co、Ni、Pt、Pd、Gd、Tb、Mn、Ge、Gaからなる群から選択される少なくとも一つの元素を有することが好ましい。例えば、CoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜、MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料が挙げられる。MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料等のフェリ磁性体は飽和磁化が小さく、磁壁を移動するために必要な閾値電流を下げることができる。またCoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜は、保磁力が大きく、磁壁の移動速度を抑えることができる。
ここまで、所定のスピン素子の具体例について説明した。スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10と磁壁移動型磁気記録素子20は、データの書込み時に素子部1,11と交差する方向に延在する通電部2,12に、書き込み電流を流すという点で共通する。スピン素子は、データの書込み時に素子部と交差する方向に延在する通電部に、書き込み電流を流す3端子型のスピン素子であれば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10及び磁壁移動型磁気記録素子20に限られるものではない。
3端子型のスピン素子は、第1の方向に延在する通電部と、通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部とを備える。3端子型のスピン素子は、通電部に沿って電流が流れることでデータを書き込み、素子部と通電部の一端との間に電流が流れることでデータを読み出す。3端子型のスピン素子は、通電部の素子部を挟む位置に、書き込み電流を印加するための2つの端子と、素子部の通電部と反対側の端面に、読み出し電流を印加するための1つの端子とを有する。
<スピン素子の安定化方法>
上述のように、本実施形態にかかるスピン素子の安定化方法は、スピン素子に所定量以上のエネルギーを与え、スピン素子の抵抗値を安定化させる方法である。
環境温度が20℃以上50℃未満の場合は、通電部2、12のx方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加するパルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。
環境温度が50℃以上200℃以下の場合は、通電部2、12のx方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加するパルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。環境温度が50℃以上200℃以下の場合は、環境温度が20℃以上50℃未満の場合よりパルス電流の印加回数が少なくなる。
環境温度が−100℃以上20℃未満の場合は、通電部2、12のx方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が10nsec以上1μsec以下のパルス電流を、印加するパルス電流のパルス幅倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する。環境温度が−100℃以上20℃未満の場合は、環境温度が20℃以上50℃未満の場合よりパルス電流のパルス幅を長くできる。
ここで環境温度とは、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の温度であり、より具体的にはスピン軌道トルク配線2の温度である。
各温度域で、上記の関係を満たすようにパルス電流を印加すると、スピン素子の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値が安定化する。通電部に電流を印加すると、通電部に存在するボイド、欠損等の加工ダメージや酸素吸着等が除去され、通電部の配線抵抗が安定化することに起因すると考えられる。
また通電部を構成する元素の活性化エネルギーQは、200kJ/mol以上であることが好ましい。この条件を満たす元素としては、例えばV、Fe、Co、Ge、Nb、Rh、Pd、Ta、W、Ir、Pt等があげられる。活性化エネルギーが大きいほど、エレクトロマイグレーションが生じにくくなる。通電部で過度なエレクトロマイグレーションが生じ、通電部の全体抵抗が高くなることを避けることができる。
スピン素子が複数存在するアレー素子の場合、n回目にパルス電流を印加するスピン素子と、n+1回目にパルス電流を印加するスピン素子と、を変えることが好ましい。一つのスピン素子に連続してパルス電流が印加されると、そのスピン素子は発熱する。そのため、上記のように所定時間以上の待ち時間をおいた後に次のパルス電流が印加される。n回目とn+1回目とで、印加するスピン素子を変えると、一つの素子における待ち時間の間に、他の素子にパルス電流を印加することができ、効率的に処理を行うことができる。
<スピン素子の製造方法>
本実施形態にかかるスピン素子の製造方法は、第1の方向に延在する通電部の一面に、強磁性体を含む素子部を形成する工程と、上述のスピン素子の安定化方法に従い、通電部にパルス電流を通電する工程と、を有する。
スピン素子は、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10(図1)の場合でも、磁壁移動型磁気記録素子(図2)の場合でも、フォトリソグラフィー等の技術を用いて作製することができる。
例えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の場合、以下の手順で作製する。まず基板に貫通孔を開け、貫通孔を導電体で充填することで、第1電極3及び第2電極4を作製する。次いで、通電部となるスピン軌道トルク配線2の基となる層を積層し、フォトリソグラフィーの技術を用い、配線上に加工する。最後に、第1強磁性層1Aの基となる層、非磁性層1Cの基となる層、第2強磁性層1Bの基となる層を順に積層し、フォトリソグラフィーの技術を用い、素子部1を加工する。
磁壁移動型磁気記録素子20の場合は、素子部11を作製する際に積層する層の構成が異なるだけである。そのため、上述の工程と同様の手順で、磁壁移動型磁気記録素子20を作製できる。
スピン素子は、個別に作製してもよいし、ウェハ上に多数の素子を一括で作製してもよい。製造効率の観点からは、ウェハ上に多数の素子を一括で作製することが好ましい。
次いで、上述のスピン素子の安定化方法に従い、通電部にパルス電流を通電する。パルス電流を通電するのは、複数の素子が存在するウェハの状態で行ってもよいし、ウェハ上に作製された各素子をチップ化した後に行ってもよい。製造効率を高めるためには、ウェハの状態でパルス電流を各素子に印加することが好ましく、発熱を抑制するためにはウェハ上に存在する各素子に順番にパルス電流を印加することが好ましい。
上述のように、本実施形態にかかるスピン素子の安定化方法によれば、スピン素子の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値を安定化することができる。また本実施形態にかかるスピン素子の安定化方法を製造過程に設けることで、出荷段階から低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値が安定化したスピン素子を市場に供給することができ、製品の信頼性を高めることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
(実施例1)
図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10を作製した。具体的には、Auからなる第1電極3及び第2電極4を設けた基板状にスピン軌道トルク配線2となる層を積層した。スピン軌道トルク配線2となる層としては、Taを3nm積層した。そして、フォトリソグラフィーによりスピン軌道トルク配線2となる層を配線状に加工し、スピン軌道トルク配線2を作製した。スピン軌道トルク配線2は、y方向の幅が0.2μm、x方向の長さが0.7μmであった。スピン軌道トルク配線2を構成するTaの活性化エネルギーは414kJ/molであった。
次いで、スピン軌道トルク配線2の周囲をSiOからなる層間絶縁膜で埋め、その上に、第1強磁性層1Aの基となる層、非磁性層1Cの基となる層、第2強磁性層1Bの基となる層を積層した。そして、フォトリソグラフィーにより加工し、所定の形状の素子部1をスピン軌道トルク配線2のx方向の中央の位置に作製した。
素子部1の具体的構成は、以下とした。
第1強磁性層1A:CoFeB、0.8nm
非磁性層1C:MgO、2.5nm
第2強磁性層1B:CoFeB、1.0nm
更に熱安定性を向上させるために、第2強磁性層1Bの上に、Ru(0.42nm)と、[Co(0.4nm)/Pt(0.8nm)]とを積層し、シンセティック構造とした。
最後に、素子部1の側面をSiOからなる層間絶縁膜で埋め、素子部1の第2強磁性層1B上に上部電極としてAuを積層した。
上記の手順で作製したスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の第1電極3と第2電極4の間に、環境温度が20℃の条件で、パルス電流を印加した。印加したパルス電流は、電流密度1.0×10A/cm、パルス幅1nsecとした。パルス電流を印加する際の待ち時間は、100nsecとした。
そして、第1強磁性層1Aと第1電極3との間の抵抗値変化を測定した。測定は、書き込み回数の桁数が変化した際の最初の100回を測定した。また1×1011回を超えた後は、1011回ごとに、最初の100回を測定した。その結果を図3及び図4に示す。図3は、1×10回から1×1010回書込みを行った結果であり、図4は、1×1010回から1×1011回書込みを行った結果である。図3に示すように、1×10回書き込みを行った時点で、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値は安定化した。これらの抵抗値の上限値及び下限値は、1×1011回書込みを行った時点でも大きく変動しなかった。
すなわち、20℃以上の温度環境において、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。また電流密度を1.0×10A/cm以上の電流密度を印加した場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。さらに、パルス幅を1nsec以上とした場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。
(実施例2)
実施例2は、パルス電流を印加する環境温度を50℃とした点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同じとした。
その結果を図5に示す。図5は、1×10回から1×1010回書込みを行った結果である。測定は、書き込み回数の桁数が変化した際の最初の100回を測定した。図5に示すように、1×10回書き込みを行った時点で、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値は安定化した。これらの抵抗値の上限値及び下限値は、1×1010回書込みを行った時点でも大きく変動しなかった。
すなわち、50℃以上の温度環境において、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。また電流密度を1.0×10A/cm以上の電流密度を印加した場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。さらに、パルス幅を1nsec以上とした場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。
(実施例3)
実施例3は、パルス電流を印加する環境温度を−100℃とした点が実施例1と異なる。また印加したパルス電流のパルス幅を10nsecとし、パルス電流を印加する際の待ち時間を100nsecとした点も実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同じとした。
その結果を図6に示す。図6は、1×10回から1×1010回書込みを行った結果である。測定は、書き込み回数の桁数が変化した際の最初の100回を測定した。図6に示すように、1×10回書き込みを行った時点で、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の低抵抗状態及び高抵抗状態における抵抗値は安定化した。これらの抵抗値の上限値及び下限値は、1×1010回書込みを行った時点でも大きく変動しなかった。
すなわち、−100℃以上の温度環境において、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。また電流密度1.0×10A/cm以上の電流密度を印加した場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。さらに、パルス幅を10nsec以上とした場合でも、少なくとも1×10回書き込みを行えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の抵抗値は安定化すると言える。
(実施例4〜6)
実施例4〜6は、スピン軌道トルク配線2を構成する材料をPtに変えた点が実施例1〜3と異なる。Ptは、実施例1〜3に用いたTaと比較して活性化エネルギーが小さく、279kJ/molである。また、スピンホール角の極性が異なる材料である。その他の条件は、実施例1〜3と同様にした。実施例4は実施例1と同じ環境温度であり、実施例5は実施例2と同じ環境温度であり、実施例6は実施例3と同じ環境温度である。
その結果を図7〜図9に示す。図7は、実施例4において1×10回から1×1010回書込みを行った結果であり、図8は、実施例5において1×10回から1×1010回書込みを行った結果であり、図9は、実施例6において1×10回から1×1010回書込みを行った結果である。測定は、書き込み回数の桁数が変化した際の最初の100回を測定した。
スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子は、20℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例4)し、50℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例5)し、−100℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例4)していた。
(実施例7〜9)
実施例7〜9は、スピン軌道トルク配線2を構成する材料をWに変えた点が実施例1〜3と異なる。Wは、実施例1〜3に用いたTaと比較して活性化エネルギーが大きく、622kJ/molである。その他の条件は、実施例1〜3と同様にした。実施例7は実施例1と同じ環境温度であり、実施例8は実施例2と同じ環境温度であり、実施例9は実施例3と同じ環境温度である。
その結果を図10〜図12に示す。図10は、実施例7において1×10回から1×1010回書込みを行った結果であり、図11は、実施例8において1×10回から1×1010回書込みを行った結果であり、図12は、実施例9において1×10回から1×1010回書込みを行った結果である。測定は、書き込み回数の桁数が変化した際の最初の100回を測定した。
スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子は、20℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例7)し、50℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例8)し、−100℃において1×10回書き込みを行った時点で抵抗値は安定化(実施例9)していた。
1、11 素子部
1A、11A 第1強磁性層
1B 第2強磁性層
1C、11B 非磁性層
2 スピン軌道トルク配線
3 第1電極
4 第2電極
10 スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子
12 磁気記録層
12A 磁壁
12B 第1の磁区
12C 第2の磁区
20 磁壁移動型磁気記録素子

Claims (8)

  1. 第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、
    環境温度が20℃以上50℃未満の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する、スピン素子の安定化方法。
  2. 第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、
    環境温度が50℃以上200℃以下の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が1nsec以上100nsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅の10倍以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する、スピン素子の安定化方法。
  3. 第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、強磁性体を含む素子部と、を備えるスピン素子において、
    環境温度が−100℃以上20℃未満の場合、前記通電部の前記第1の方向に、電流密度が1.0×10A/cm以上1.0×10A/cm以下、パルス幅が10nsec以上1μsec以下のパルス電流を、印加する前記パルス電流のパルス幅以上の待ち時間をおいて、10回以上印加する、スピン素子の安定化方法。
  4. 前記通電部を構成する元素の活性化エネルギーが200kJ/mol以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスピン素子の安定化方法。
  5. 前記通電部がスピン軌道トルク配線であり、前記素子部が第1強磁性層と第2強磁性層とこれらに挟まれた非磁性層とを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスピン素子の安定化方法。
  6. 前記通電部が磁壁を備える磁気記録層であり、前記素子部が前記磁気記録層側から非磁性層と第3強磁性層とを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスピン素子の安定化方法。
  7. 前記スピン素子が複数存在するアレー素子において、
    n回目に前記パルス電流を印加する前記スピン素子と、n+1回目に前記パルス電流を印加する前記スピン素子と、を変える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスピン素子の安定化方法。
  8. 第1の方向に延在する通電部の一面に、強磁性体を含む素子部を形成する工程と、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載のスピン素子の安定化方法に従い、前記通電部にパルス電流を通電する工程と、を有するスピン素子の製造方法。
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