JP6428531B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
ポリプロピレンは結晶性樹脂であることから、剛性には結晶化度が深くかかわるが、通常のポリプロピレン成形体の結晶化度は60〜70%程度にとどまる。よって、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、最も剛性が高いホモポリプロピレンで、1500〜2000MPa程度になることが通常である。この数値は、他のエンプラ系樹脂例えばポリアミドやポリカーボネートに比べてやや低い数値であり、ポリプロピレン系樹脂が自動車の外板用途等への用途展開を図る際の、解決すべき大きな課題となっている。
しかし概して、相溶化剤はポリプロピレン系樹脂やポリスチレン系樹脂そのものと比べて剛性が低いものとなるため、これらの手法では衝撃強度や接着性の改良はなされるものの、剛性の改良が不十分であるという課題を有していた。
86.0−84000/Mn<Tg ・・・(1)
このうち、本発明組成物の主成分であるポリプロピレン系樹脂(A)とは、従来公知のチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等を用いて、従来公知の製造プロセスすなわちスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によってプロピレンを主たるモノマーとして製造された樹脂のことを指し、さらに製造プロセスに関して言えば、バッチ重合法、連続重合法等の従来公知の製造技術をいかように組み合わせて製造されたものであってよい。
ここで、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒については、たとえば「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会、1998年、2.3.1節、p20〜70.に概説されている。製造プロセスに関しては、同書8.1節、p337〜350に概説されている。
ここで融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて10分間保持し熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ10分間保持し、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。
本発明の非晶性樹脂(B)は、溶解度パラメータが18.0(J0.5/cm1.5)を超えることを特徴とする。
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・(a)
ここで、δは溶解度パラメータ(J0.5/cm1.5)、Ecohは凝集エネルギー密度(J/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表し、Σは原子団ごとに与えられているこれらの数値をモノマーを構成する原子団すべてについて和を取る意味である。原子団ごとのEcohやVの数値は、上記“Properties of Polymers, Third completely revised edition”のTable7.3等に挙げられている。
溶解度パラメータの上限を定める理由は特にないが、一般的に使用される樹脂の上限値として50.0(J0.5/cm1.5)を上限とし、好ましくは40.0(J0.5/cm1.5)以下、さらに好ましくは30.0(J0.5/cm1.5)以下である。
数平均分子量によって組成物の剛性向上効果が左右される理由については、本願発明者らは以下のように推定している。
数平均分子量の下限は、1000g/molである。この値を下回ると、非晶性樹脂はいわゆるオリゴマーとなってしまい、剛性向上効果が得られ難くなる。好ましくは1500g/mol以上である。
86.0−84000/Mn<Tg ・・・(1)
好ましくは、下記式(2)を満たすものである。
95.0−84000/Mn≦Tg ・・・(2)
さらに好ましくは、下記式(3)を満たすものである。
100.0−84000/Mn≦Tg ・・・(3)
特に好ましくは、下記式(4)を満たすものである。
106.8−84000/Mn≦Tg ・・・(4)
例えば、J.Res.Nat.Bur.Std.1974年、78A巻、p447.にポリスチレンのTgの分子量依存性について報告があり、数平均分子量Mn(g/mol)とガラス転移温度Tg(℃)が、Tg=k1−k2/Mnの形の関数形で表されることが示されている。(ここで、k1、k2は定数であり、ポリスチレンについてk1=103、k2=84000である)すなわち、本発明で提案する式(1)の数分子量分子量の逆数とガラス転移温度を線形の関数形で記述する形式は、既に公知の関数形であって、k1、k2の与える各数値は、後に示す実施例と比較例との対比により合理的に定めたものである。
Tgの上限を定める理由は特にないが、好ましくは下記式(5)を満たすものであり、さらに好ましくは下記式(6)、最も好ましくは下記式(7)を満たすものである。
Tg≦130−84000/Mn ・・・(5)
Tg≦120−84000/Mn ・・・(6)
Tg≦110−84000/Mn ・・・(7)
このうち、スチレンモノマーの単独重合体は一般的にGPPS(general purpose polystyrene)と呼ばれる。また、本発明の趣旨を超えない限り、ポリブタジエンや、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン共重合ゴムなどを配合した耐衝撃性を向上させたハイインパクトポリスチレン(HIPS)であってもよい。
そこで、本発明の趣旨を超えない範囲で、ポリプロピレン系樹脂(A)と非晶性樹脂(B)の密着性を向上させる各種手法を加えてもよい。具体的には特許文献1〜3に記載されているような各種相溶化剤を少量添加してもよいし、特許文献4、5に記載されているように、ポリプロピレン系樹脂(A)と非晶性樹脂(B)の一方または両方を不飽和カルボン酸またはその無水物やエポキシ基含有化合物等で変成してもよい。あるいはそれら変成した(A)や(B)を相溶化剤として組成物に少量添加してもよい。上記手法の複数を自由に組み合わせて実施することも可能である。ただし、これらの操作を行った結果、(A)と(B)が相溶する状態になってしまうと、剛性改良効果が低下して不適であることは言うまでもない。ポリプロピレン系樹脂(A)を変成する場合の目安としては、用いる非晶性樹脂(B)と相溶性を過度に向上させないよう、両者の溶解度パラメータの差が2.1より大となるように、変成量を調整することが好ましい。なお、変成によって極性モノマーがポリプロピレン系樹脂(A)に結合した場合の溶解度パラメータの算出法としては、結合した官能基の溶解度パラメータとプロピレンモノマーの溶解度パラメータとの、変成量(モル分率)に基づく加成則によって見積もることが出来る。非晶性樹脂(B)を変成した場合も同様に溶解度パラメータを求めることが出来る。
また、さらなる物性の向上のために、本発明の趣旨を超えない範囲で他の樹脂成分を加えてもよい。具体的には、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーや、ポリカーボネート樹脂(ただし、本発明の(B)に該当するものを除く)、他の結晶性樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂(ただし、本発明の(B)に該当するものを除く)等である。これら、他の樹脂成分の配合量はポリプロピレン系樹脂(A)と非晶性樹脂(B)との組成物100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。
本発明の樹脂組成物には、本発明の組成物の性能をより高めるために、或いは他の性能を付与するために、本発明の機能を損なわない範囲内で添加剤を配合することもできる。
この付加的成分としては、ポリオレフィン樹脂用配合剤として汎用される核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、抗菌剤、防黴剤、蛍光増白剤、着色剤、難燃剤といった各種添加剤を加えることができる。これら添加剤の配合量は、一般に組成物100重量部に対して0.0001〜3重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
GPC測定によって決定した。具体的な測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
示差走査熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、20℃/分の降温速度で−30℃まで温度を降下させ、再び昇温速度20℃/分にて測定した際のサーモグラムに階段状に現れる転移領域の変曲点を示す温度とする。(図1参照)
装置はTA Instruments社製Q2000を用い、サンプル量は約5mgとした。
示差走査熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。装置はTA Instruments社製Q2000を用い、サンプル量は約5mgとした。
・規格番号:JIS K−7171(ISO 178)準拠
・試験機:東洋精機社製 ベンドグラフII
・試験片の形状:厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm
・試験片の作成方法:射出成型(成型については実施例を参照)
・状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24h以上
・試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
・試験片の数:n=3
・支点間距離:64mm
・試験速度:2.0mm/min
・評価項目:曲げ弾性率、及び、曲げ強さ(最大曲げ応力)
・規格番号:JIS K−7111(ISO 179/1eA)準拠
・試験機:東洋精機社製 全自動シャルピー衝撃試験機(恒温槽付き)
・試験片の形状:シングルノッチ付き試験片、厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm
・ノッチ形状:タイプAノッチ(ノッチ半径0.25mm)
・衝撃速度:2.9m/s
・公称振り子エネルギー:4J
・試験片の作成方法:射出成型試験片(成型については実施例を参照)にノッチを切削(ISO 2818準拠)
・状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24h以上
・試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
・試験片の数:n=5
・試験温度:23℃
・評価項目:吸収エネルギー
ポリプロピレン系樹脂(A)として、日本ポリプロ社製のホモポリプロピレン、グレード名MA3を用いた。この試料のMFR(JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠)は10g/10分、融点(Tm)は162.8℃であった。
非晶性樹脂(B)として、表1に示す試料を用いた。(B)−1〜(B)−5は何れもポリスチレンであり、式(a)を用いて求めた溶解度パラメータδは21.6(J0.5/cm1.5)である。(B)−6〜(B)−8はいずれも石油樹脂であり、明細書中に記載の文献より、溶解度パラメータは15.0〜18.0(J0.5/cm1.5)と算出した。
ポリプロピレン系樹脂(A)を98重量%、非晶性樹脂(B)−1を2重量%を測りとり、両者をドライブレンドし良く撹拌した後にDSM社製小型混練機Xploreを用いて、バレル設定温度200℃、スクリュー回転数100RPMの条件で1分間溶融混練を行った。溶融樹脂はそのままXploreの専用加熱ホルダを使用して回収し、Xplore射出成型機にセットし、射出圧1MPa、金型温度40℃の条件で射出成型を行い、厚さ4mm、幅10mm、長さ80mmの試験片を得た。試験片の曲げ弾性率、曲げ強さ、シャルピー衝撃強度の評価を行った。結果を表2に示す。
非晶性樹脂(B)の種類及び配合量を表2〜4記載の通りに行った以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2〜4に示す。ただし、比較例5〜8はシャルピー衝撃試験を行っていない。
実施例1〜3の曲げ弾性率を比較例の同程度の非晶性樹脂含量の結果と比べると明白な通り、本発明の規定を満たす非晶性樹脂を用いた場合には、剛性向上の効果が顕著である。(図2参照)詳細に見れば、比較例2〜4に使用の(B)−3は、分子量が非晶性樹脂(B)の規定を満たしておらず、したがって剛性は(B)配合量と共に増加するが、その効果は実施例と比べて小さい。比較例5〜8に使用の(B)−4及び(B)−5は、分子量は規定を満たすが、ガラス転移温度とMnの関係が規定を満たしておらず、ガラス転移温度の低下が顕著であり、結果的に剛性が向上しない。比較例9〜14に使用の(B)−6、(B)−7、(B)−8は、溶解度パラメータがポリプロピレン系樹脂に近く、非晶性樹脂がポリプロピレン系樹脂に相溶化するために、やはり剛性の向上効果が小さい。
Claims (4)
- ポリプロピレン系樹脂(A)50.0〜99.9重量%と、溶解度パラメータが18.0(J0.5/cm1.5)を超える値を有するポリスチレン系樹脂50.0〜0.1重量%を含む組成物であって、
ポリスチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られたポリスチレン換算分子量)が30000(g/mol)以下であり、かつガラス転移温度Tg(℃)が下記式(1)を満足することを特徴とする樹脂組成物。
86.0−84000/Mn<Tg ・・・(1) - 前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)が1.00〜1.80であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリプロピレン系樹脂(A)の融点(Tm)が155(℃)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
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