JP6428342B2 - リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
また特許文献2では、電極活物質と、導電材と、両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤からなる分散剤とを含んでなるスラリー組成物を電極合材層の形成に用いることで、導電材の凝集を抑制して導電ネットワークを十分に形成し、二次電池に優れた出力特性を発揮させる技術が提案されている。
更に、上記特許文献に記載されたスラリー組成物では、電極合材層の抵抗を十分に低減することができない場合があり、リチウムイオン二次電池に十分に優れたレート特性を発揮させることができなかった。
したがって、上記従来のバインダー組成物には、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減しつつ、リチウムイオン二次電池に優れた寿命特性を発揮させるという点において、更なる改善の余地があった。
また、本発明は、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとするリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を提供することを目的とする。
そして、本発明は、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとする電極、および、内部抵抗が低減され、そして寿命特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとするリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を提供することができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとする電極、および、内部抵抗が低減され、そして寿命特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物は、リチウムイオン二次電池の電極の形成に用いる。そして、本発明のリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物は、本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物を含んで構成され、リチウムイオン二次電池の電極の形成に用いる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、本発明のリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を用いて製造することができる。更に、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いたことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物は、結着材としての水溶性重合体Xと、両性分散剤Yと、溶媒とを含む。そして、水溶性重合体Xが、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩の少なくとも一方よりなるエチレン性不飽和カルボン酸である化合物(A)と、20℃における水100gに対する溶解度が7g以上であって且つエチレン性不飽和結合を有する、化合物(A)と共重合可能な化合物(B)とを所定の割合で含む単量体組成物を重合して得られ、かつ電解液膨潤度が120質量%未満であり、また両性分散剤Yの酸価が1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であり、かつアミン価が1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であり、さらに両性分散剤Yの配合量が、水溶性重合体X100質量部当たり0.001質量部以上10質量部以下であることを特徴とする。
まず、水溶性重合体Xの調製に用いられる化合物(B)は水への溶解性が高い、すなわち極性の高い単量体である。よって、得られる水溶性重合体Xはリチウムイオン二次電池で通常使用される電解液に対する親和性が低く、結果として得られる水溶性重合体Xの電解液中での膨潤が適度に(120質量%未満に)抑制される。そのため極板の構造が維持され、電極の膨れが抑制されることで、サイクル特性などの寿命特性が向上すると推察される。一方、化合物(A)のカルボキシル基によりリチウムイオン伝導性が向上し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が低減され、また、サイクル特性が向上する。加えて、化合物(A)のカルボキシル基の寄与により水溶性重合体Xが電極活物質を好適に被覆し、電極活物質表面での電解液の分解が抑制され、ガス発生が抑制されるため保存安定性を向上させることできると推察される。
さらに、上述の水溶性重合体Xに加えて所定量の両性分散剤Yを使用することで、スラリー組成物中で電極活物質を良好に分散させることが可能となる。加えて両性分散剤Yが所定の酸価およびアミン価を呈するため、当該両性分散剤Yが、酸性官能基や塩基性官能基を介して水溶性重合体Xおよび電極活物質の双方と好適に相互作用することで、電極活物質間の拘束力を高めるなどして電極物性を向上させ、また両性分散剤Yの電解液中への溶出を抑制することができる。そのため、結果としてリチウムイオン二次電池のサイクル特性などの電池性能が向上すると推察される。
結着材は、本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物を用いて調製したリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を使用して集電体上に電極合材層を形成することにより製造した電極において、電極合材層に含まれる成分が電極合材層から脱離しないように保持し得る成分である。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物の結着材として用いられる水溶性重合体Xは、水溶性の共重合体である。
ここで、本発明において重合体が「水溶性」であるとは、イオン交換水100質量部当たり重合体1質量部(固形分相当)を添加し攪拌して得られる混合物を、温度20℃以上70℃以下の範囲内で、かつ、pH3以上12以下(pH調整にはNaOH水溶液及び/またはHCl水溶液を使用)の範囲内である条件のうち少なくとも一条件に調整し、250メッシュのスクリーンを通過させた際に、スクリーンを通過せずにスクリーン上に残る残渣の固形分の質量が、添加した重合体の固形分に対して50質量%を超えないことをいう。
水溶性重合体Xの調製に用いる単量体組成物は、例えば、単量体と、重合開始剤などの添加剤と、重合溶媒とを含有する。そして、単量体組成物は、単量体として、化合物(A)および化合物(B)を所定の割合で含有する。具体的には、単量体組成物は、単量体組成物中の全単量体の量を100質量%とした際に、20.0質量%以上75.0質量%以下の化合物(A)と、20.0質量%以上75.0質量%以下の化合物(B)とを含有する。なお、単量体組成物は、任意に、化合物(A)および化合物(B)と共重合可能な多官能化合物(C)や、更にこれらを除いたその他の化合物を単量体として含有していてもよい。
化合物(A)としては、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩の少なくとも一方を用いることができる。そして、エチレン性不飽和カルボン酸としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和カルボン酸塩としては、エチレン性不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、ジアクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。さらに、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、などが挙げられる。
また、本発明のバインダー組成物を用いて作製した電極を備えるリチウムイオン二次電池のサイクル特性を更に向上させ、内部抵抗を更に低減する観点からは、エチレン性不飽和カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの塩を用いることが好ましく、アクリル酸またはアクリル酸塩を用いることがより好ましい。
化合物(B)としては、エチレン性不飽和結合を有する共重合可能な化合物であって、20℃における水100gに対する溶解度が、7g以上の化合物を用いることができる。このような溶解度を有する化合物(B)に由来する構造単位は、電解液に対する膨潤性が低いと共に、水を重合溶媒とした際の重合性が高いからである。なお、本発明においてエチレン性不飽和カルボン酸およびその塩は、前述の溶解度を満たす場合であっても、化合物(B)には含まれず、化合物(A)に含まれるものとする。
そして化合物(B)としては、例えば、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(100以上)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(100以上)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(100以上)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(100以上)、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(100以上)、アクリルアミド(100以上)、メタクリルアミド(100以上)、N−メチロールアクリルアミド(100以上)、アクリロニトリル(7)、スチレンスルホン酸ナトリウム(22)などの、エチレン性不飽和結合を有し、かつ極性の高い官能基(水酸基、アミド基、ニトリル基、リン酸基、アミノ基など)を有する化合物や、エチレングリコールジメタクリレート(100以上)を挙げることができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ここで、上記の括弧中の数値は、温度20℃における水溶解度(単位:g/100g)を示す。なお、温度20℃における水溶解度は、EPA法(EPA Chemical Fate testing Guideline CG-1500 Water Solubility)で測定することができる。
なお、上記化合物(B)に替えて、メチルアクリレート(6)やエチルアクリレート(2)やブチルアクリレート(2)等の20℃における水溶解度が7g未満の化合物を用いて水溶性重合体Xを調製すると、当該水溶性重合体Xが電解液中において過度に膨潤し、極板の構造が維持できず、電極の膨れを抑制することができない。そして結果として、リチウムイオン二次電池の、サイクル特性などの寿命特性を確保することができない。
また化合物(B)は、リチウムイオン二次電池中への持ち込み水分を低下させガスの発生を抑制する観点、および水溶性重合体Xと併用しうる他の重合体(例えば、後述するスチレン−ブタジエン系重合体などの粒子状重合体)の安定性を確保する観点から、アンモニウム塩などの有機塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などの塩(特に金属塩)でないことが好ましく、且つ塩に容易に変換される酸性基(フェノール性水酸基など)を有さないことが好ましい。
A/Bが1.5未満であることで、水溶性重合体Xが電解液中で過度に膨潤することがなく、電極活物質間の粒子間距離が保たれ、かつリチウムイオン伝導性も確保されるため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を更に低減することができるからである。
加えて、A/Bが上述の範囲内であることで、リチウムイオン二次電池の内部抵抗の低減と、サイクル特性の向上をバランスよく達成することができる。
単量体組成物は、単量体として、ポリオキシアルキレン構造および2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能化合物(C)を含むことが好ましい。このような多官能化合物(C)を水溶性重合体Xの重合に用いることで、水溶性重合体Xに適度に高い剛性と柔軟性とを付与することができる。従って、充放電による電極の膨れを抑制する等によりサイクル特性の低下を抑制することができる。また、水との親和性が高いエチレンオキシド鎖の寄与により、水溶性重合体Xの重合が容易となる。加えて、リチウムイオン伝導性が確保され、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減することができる。また、多官能化合物(C)を単量体組成物に含めることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物の固形分濃度を高めることが可能となり、電極の生産性を向上させることができる。
ここで、多官能化合物(C)としては、一般式:−(CmH2mO)n−[式中、mは1以上の整数であり、nは2以上の整数である]で表されるポリオキシアルキレン構造と、2つ以上のエチレン性不飽和結合とを有する化合物を用いることができる。
ポリオキシアルキレン構造と2つ以上のエチレン性不飽和結合とを有する化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、多官能化合物(C)に該当する化合物は、化合物(B)に含まれないものとする。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを指す。
(I)下記一般式:
(II)下記一般式:
(III)下記一般式:
(IV)下記一般式:
(V)下記一般式:
また、電極の生産性を更に高める観点からは、多官能化合物(C)は、2〜6官能のポリアクリレートであることが好ましく、2〜4官能のポリアクリレートであることが更に好ましい。そして2〜4官能のポリアクリレートの中でも、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減しつつ、サイクル特性および保存安定性を向上させる観点からは、2官能のポリアクリレートが特に好ましい。
また、同様の理由により、多官能化合物(C)が有するポリオキシアルキレン構造(−(CmH2mO)n−)の整数nは、20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることが特に好ましく、2以上であることが好ましく、3以上であることが更に好ましく、4以上であることが特に好ましい。整数nが大きすぎる場合には、スラリー組成物の安定性が低下する虞があるからである。また、整数nが小さすぎる場合には、水溶性重合体Xの剛性が高くなり、リチウムイオン二次電池の保存安定性が低下する虞があるからである。なお、多官能化合物(C)が分子内に複数のポリオキシアルキレン構造(−(CmH2mO)n−)を有する場合には、複数のポリオキシアルキレン構造の整数nの平均値が上記範囲内に含まれることが好ましく、全てのポリオキシアルキレン構造の整数nが上記範囲内に含まれることが更に好ましい。
水溶性重合体Xの調製に用いる単量体組成物には、上述した化合物(A)、化合物(B)および多官能化合物(C)と共重合可能な既知の化合物が含まれていてもよい。そして、水溶性重合体Xの調製に用いる単量体組成物が含む単量体は、これら(A)〜(C)を除くその他の化合物が占める割合が20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。
より具体的には、その他の化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、などのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、パーフルオロアルキルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、などのメタクリル酸エステル;その他、酢酸ビニル、グリシジルメタクリレート、2−ビニルピリジン、等が挙げられる。
水溶性重合体Xの調製に用いる単量体組成物に配合する添加剤としては、過硫酸カリウム等の重合開始剤や、テトラメチルエチレンジアミン等の重合促進剤などの重合反応に使用し得る既知の添加剤が挙げられる。なお、添加剤の種類および配合量は、重合方法等に応じて任意に選択することができる。
水溶性重合体Xの調製に用いる単量体組成物に配合する重合溶媒としては、重合方法等に応じて、前述した単量体を溶解または分散可能な既知の溶媒を用いることができる。中でも、重合溶媒としては、水を用いることが好ましい。なお、重合溶媒としては、任意の化合物の水溶液や、少量の有機媒体と水との混合溶液などを用いてもよい。
本発明のバインダー組成物の結着材として用いられる水溶性重合体Xは、上述した単量体、添加剤および重合溶媒を既知の方法で混合して得た単量体組成物を、例えばラジカル重合させることで得られる。なお、上記単量体組成物を重合して得られる、水溶性重合体Xと重合溶媒とを含む溶液は、そのままバインダー組成物の調製に使用してもよいし、溶媒置換や任意の成分の添加などを行なった後にバインダー組成物の調製に使用してもよい。
ここで、化合物(A)としてエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体組成物を使用した場合には、上記水溶液の中和を行なう際に、塩基性のリチウム化合物を使用することが好ましい。塩基性のリチウム化合物を使用すれば、水溶性重合体X中のカルボン酸基がカルボン酸リチウム塩基(−COOLi)となり、スラリー組成物のチクソ性および安定性が更に向上すると共に、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が低減され、加えてサイクル特性および保存安定性が向上するからである。なお、塩基性のリチウム化合物としては、炭酸リチウム(Li2CO3)や水酸化リチウム(LiOH)を用いることができ、水酸化リチウムを用いることが好ましい。
そして、上述のようにして調製した水溶性重合体Xは、電解液膨潤度が120質量%未満であることが必要であり、118質量%以下であることが好ましく、115質量%以下であることがより好ましく、また、100質量%以上であることが好ましく、103質量%以上であることがより好ましく、105質量%以上であることが更に好ましい。水溶性重合体Xの電解液膨潤度が120質量%以上であると、水溶性重合体Xが電解液中で過度に膨潤して極板構造が維持できず、サイクル特性などの寿命特性が低下する。一方、水溶性重合体Xの電解液膨潤度が100質量%以上であれば、リチウムイオン伝導性が確保され、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を更に低減することができる。加えて、水溶性重合体Xの柔軟性を確保し、水溶性重合体Xの割れおよび剥離を抑制して、リチウムイオン二次電池の保存安定性を更に高めることができる。更に、水溶性重合体Xの電解液膨潤度を上述の範囲内とすることで、電極合材層と集電体の密着性を高めることが可能となる。
なお、水溶性重合体Xの電解液膨潤度は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。また、水溶性重合体Xの電解液膨潤度は、例えば単量体組成物中の化合物(A)や化合物(B)の種類や量を変更することにより調整することができる。
上述した水溶性重合体Xを結着材として含有する本発明のバインダー組成物は、上述した水溶性重合体X以外の重合体を結着材として更に含有していてもよい。
そして、粒子状重合体は、例えば、単量体と、重合開始剤などの添加剤と、重合溶媒とを含む粒子状重合体用単量体組成物を重合して得られる。そして、通常、粒子状重合体は、粒子状重合体用単量体組成物中に含まれていた単量体に由来する構造単位を当該単量体組成物中の各単量体の存在比率と同様の比率で含有している。以下に粒子状重合体として好ましい共役ジエン系重合体を例に挙げ詳述する。
共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体由来の構造単位を含む重合体であり、それらの水素添加物も含まれる。
共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの脂肪族共役ジエン重合体;スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)などの芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン系重合体(NBR)などのシアン化ビニル−共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。これらの中でも、スチレン−ブタジエン系重合体(SBR)などの芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体が好ましい。そして例えば芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体と、任意に、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、フッ素含有単量体、その他の単量体を含む単量体組成物を重合して得られる。
以下、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いられる芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、フッ素含有単量体、およびその他の単量体について詳述する。
芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、スチレンが好ましい。
そして、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物が含む単量体は、上述した芳香族ビニル単量体が占める割合が、35質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。
芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる、脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。
そして、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物が含む単量体は、上述した脂肪族共役ジエン単量体が占める割合が、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、35質量%以下であることが特に好ましい。
芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる、カルボキシル基含有単量体としては、「水溶性重合体X」の項で上述した「化合物(A)」と同様のものを用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イタコン酸が好ましい。
そして、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物が含む単量体は、上述したカルボキシル基含有単量体が占める割合が、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、6質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる、ヒドロキシル基含有単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
そして、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物が含む単量体は、上述したヒドロキシル基含有単量体が占める割合が、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物には、上述した芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体およびヒドロキシル基含有単量体と共重合可能な任意の単量体が含まれていてもよい。
具体的には、任意の単量体としては、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル等のフッ素含有単量体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の硫酸エステル基含有単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有単量体;アリルグリシジルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミドなどの架橋性単量体(架橋可能な単量体);エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;アミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル単量体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、共役ジエン系重合体の調製に用いる粒子状重合体用単量体組成物が含む単量体は、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体およびヒドロキシル基含有単量体以外の単量体が占める割合が、6質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
ここで、結着材としての粒子状重合体は、電解液膨潤度が140質量%以上であることが好ましく、800質量%未満であることが好ましく、500質量%未満であることがより好ましい。粒子状重合体の電解液膨潤度が140質量%以上であれば、リチウムイオン伝導性が確保され、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を更に低減することができる。加えて、良好なリチウムイオン伝導性に因る初期のエージング時に発生するSEI被膜が原因であると推察されるが、リチウムイオン二次電池の保存安定性を向上させることができる。一方、粒子状重合体の電解液膨潤度が800質量%未満であれば、特に高温サイクル時に粒子状重合体の剛性が確保され、電極の膨らみを十分に抑制することができ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
なお、粒子状重合体の電解液膨潤度は、本明細書の実施例に記載の「水溶性重合体X」の電解液膨潤度の測定方法と同様にして測定することができる。
また、例えば芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の電解液膨潤度は、粒子状重合体用単量体組成物中の芳香族ビニル単量体の種類や量、さらには連鎖移動剤や重合温度によって制御されるゲル量を変更することにより調整することができる。
なお、粒子状重合体のゲル含有量は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。また、ゲル含有量は、重合温度、分子量調整剤などの添加剤の種類および量、反応停止時の転化率(モノマー消費量)等を変更することにより調整することができ、例えば、重合時に使用する分子量調整剤の量を少なくするとゲル含有量を高めることができ、重合時に使用する分子量調整剤の量を多くするとゲル含有量を低下させることができる。
粒子状重合体の配合量は、水溶性重合体100質量部当たり5質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましく、70質量部以上であることが特に好ましく、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、160質量部以下であることが更に好ましい。粒子状重合体の配合量が水溶性重合体100質量部当たり5質量部以上であれば、バインダー組成物を用いて形成される電極合材層と集電体の密着性が確保され、リチウムイオン二次電池の寿命特性を更に向上させることができる。また、粒子状重合体の配合量が水溶性重合体100質量部当たり300質量部以下であれば、過度の増粘によりスラリー組成物の調製が困難となることもなく、加えて、電極活物質の保液空間を過度に減らすことなく、粒子状重合体が水溶性重合体Xと電極活物質近傍に存在することとなりリチウムイオン二次電池のサイクル特性および保存安定性を更に向上させることができる。
両性分散剤Yは、その分子構造中に酸性官能基および塩基性官能基の双方を有する化合物よりなる分散剤であり、スラリー組成物中における電極活物質などの分散性の向上に寄与し得る成分である。そして両性分散剤Yは、上述したように酸価およびアミン価がそれぞれ特定の範囲内であることを必要とする。なお本発明において、水溶性重合体Xに該当する重合体は、その酸価およびアミン価の双方が上記特定の範囲を満たす場合であっても、両性分散剤Yには含まれず、水溶性重合体Xに含まれるものとする。
ここで両性分散剤Yの酸価は、JIS K 0070:1992に準じて測定することができる。また両性分散剤Yのアミン価は、全アミン価を表し、ASTM D2074に準じて測定することができる。
両性分散剤Yの酸価は、1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であることが必要であり、2mgKOH/g以上であることが好ましく、3mgKOH/g以上であることがより好ましく、また20mgKOH/g未満であることが好ましく、10mgKOH/g未満であることがより好ましい。酸価が1mgKOH/g未満の場合、両性分散剤Yの結着能が低下し、電極合材層と集電体の密着性およびサイクル特性が低下する。一方、酸価が30mgKOH/g超の場合、内部抵抗が上昇し、またサイクル特性および保存安定性が低下する。更に、酸価が30mgKOH/g超の場合、粒子状重合体、特にスチレン−ブタジエン系重合体などの共役ジエン系重合体を使用した場合に、スラリーが過度に増粘性して電極の生産性が低下する虞がある。
両性分散剤Yのアミン価は、1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であることが必要であり、2mgKOH/g以上であることが好ましく、3mgKOH/g以上であることがより好ましく、また20mgKOH/g未満であることが好ましく、10mgKOH/g未満であることがより好ましい。アミン価が1mgKOH/g未満の場合、両性分散剤Yの結着能が低下し、電極合材層と集電体の密着性およびサイクル特性が低下する。一方、アミン価が30mgKOH/g超の場合、内部抵抗が上昇し、またサイクル特性および保存安定性が低下する。
両性分散剤Yは、電解液溶解度が5%以下であることが好ましく、1%以下がより好ましい。両性分散剤Yの電解液溶解度が5%以下である場合、リチウムイオン二次電池内における両性分散剤Yの電解液への溶出が抑制され、サイクル特性および寿命特性を向上させることができる。
ここで、両性分散剤Yの電解液溶解度は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。また、両性分散剤Yの電解液溶解度は、例えば両性分散剤Yを構成する化合物1分子当たりの酸性官能基の数および塩基性官能基の数、並びに分子量などを調整することで電解液との親和性を制御することにより調整することができる。
両性分散剤Yを構成する化合物は、重合体であることが好ましい。そして両性分散剤Yを構成する重合体の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上であり、好ましくは150,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量が上述の範囲内であれば、両性分散剤Yの電極活物質などに対する分散能を確保しつつ電解液中への溶出が抑制され、リチウムイオン二次電池のサイクル特性および保存安定性を向上させることができる。なお、両性分散剤Yを構成する重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(展開溶媒:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算重量平均分子量をさす。
両性分散剤Yを構成する化合物が有する酸性官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、チオール基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。なお、酸性リン酸エステル基は、リン酸基のリン原子に結合する水酸基の一部がアルコキシ基に置換されたものであり、アルコキシ基としては、炭素数が1以上8以下の低級アルコキシ基が好適に挙げられる。これらの酸性官能基は、既知の塩基性化合物により中和されていてもよく、そして塩化されていてもよい。また、両性分散剤Yを構成する化合物は1分子中に1つの酸性官能基を有していてもよく、2つ以上の酸性官能基を有していてもよい。さらに、両性分散剤Yを構成する化合物が2つ以上の酸性官能基を有する場合、2つ以上の酸性官能基は1種のみで構成されていてもよいし、複数種で構成されていてもよい。
そして、両性分散剤Yを構成する化合物において、酸性官能基および塩基性官能基が位置する部位は特に限定されず、例えば当該化合物が重合体である場合は、酸性官能基および塩基性官能基は、それぞれ重合体の主鎖上に位置していてもよく、側鎖上に位置していてもよい。
両性分散剤Yの製法は特に限定されず、例えば両性分散剤Yを構成する化合物としての重合体は、酸性官能基を含む単量体や塩基性官能基を含む単量体を既知の方法で共重合することで、または重合後の重合体に変性反応などで上記酸性官能基や塩基性官能基を導入することで製造することができる。
なお、両性分散剤Yとしては、2種以上の分散剤を混合してなるものを使用することもできる。このような混合には、上で例示した単独で所定の酸価およびアミン価を呈する市販の分散剤を使用することも可能であるし、所定の酸価および/または所定のアミン価を呈しない市販の分散剤を使用することも可能である。ここで、所定の酸価および/または所定のアミン価を呈しない市販の分散剤としては、DISPERBYK-187(酸価:35mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、DISPERBYK-2020(酸価:37mmgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2025(酸価:38mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、DISPERBYK-198(酸価0mgKOH/g、アミン価:4mgKOH/g)、およびDISPERBYK-199(酸価:1.5mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)などが挙げられる(いずれもビックケミー社製)。そして、2種以上の分散剤を混合してなる両性分散剤Yとしては、例えば、DISPERBYK-198(酸価0mgKOH/g、アミン価:4mgKOH/g)とDISPERBYK-199(酸価:1.5mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)の混合物が挙げられる。
両性分散剤Yの配合量は、水溶性重合体X100質量部当たり0.001質量部以上10質量部以下であることが必要であり、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、また5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。両性分散剤Yの配合量が水溶性重合体X100質量部当たり0.001質量部未満の場合、スラリー組成物中における電極活物質などの分散性が低下し、また活物質間の拘束力を確保できず、電極合材層と集電体の密着性などの電極物性が低下する。結果として、電極の膨らみを抑制することができずサイクル特性が低下し、また内部抵抗の上昇および保存安定性の低下を招く。その上電極の生産性の確保も困難となる。一方、両性分散剤Yの配合量が水溶性重合体X100質量部当たり10質量部超の場合、内部抵抗が上昇する。くわえて電極の膨れを十分に抑制することができず、また電極合材層と集電体の密着性を確保することができず、サイクル特性および保存安定性が低下する。
本発明のバインダー組成物の溶媒としては、上述した結着材を溶解または分散可能な既知の溶媒を用いることができる。中でも、溶媒としては、水を用いることが好ましい。なお、バインダー組成物の溶媒の少なくとも一部は、特に限定されることなく、水溶性重合体X、両性分散剤Yおよび必要に応じて添加される水溶性重合体X以外の結着材を調製する際に使用した単量体組成物に含まれていた重合溶媒とすることができる。
本発明のバインダー組成物は、上述した成分に加え、任意に配合し得る既知の成分を含有していても良い。そのような既知の成分としては増粘剤が挙げられ、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、増粘多糖類、アルギン酸、でんぷんなどの天然系増粘剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの合成系増粘剤(但し、水溶性重合体Xに該当するものを除く)を含有していてもよい。これらの中でも、スラリー組成物にチクソ性を付与し、そしてスラリー組成物の安定性を高める観点から、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸が好ましい。
本発明のバインダー組成物は、上記各成分を混合することにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分を混合することにより、バインダー組成物を調製することができる。
なお、水溶性重合体Xは、水系溶媒中で単量体組成物を重合して調製した場合には、水溶液の状態でそのまま混合し、溶媒として水を含むバインダー組成物を調製することができる。
また、例えば、水溶性重合体Xと電極活物質を混合した後、両性分散剤Yを添加するなど、バインダー組成物の調製と、後述するスラリー組成物の調製とを同時に実施してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物は、上述した本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物および電極活物質を含む。そして、本発明のスラリー組成物を用いて電極を作製すれば、当該電極を備えるリチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、かつ、寿命特性(サイクル特性および保存安定性)を優れたものとすることができる。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物は、特にリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物として好適に使用することができる。
そこで、以下では、まず、本発明のバインダー組成物を用いて調製し得る、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物について説明する。
ここで、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。リチウムを吸蔵および放出し得る物質としては、例えば、炭素系負極活物質、非炭素系負極活物質、および、これらを組み合わせた活物質などが挙げられる。
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいい、炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料と黒鉛質材料とが挙げられる。
そして、炭素質材料としては、例えば、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
そして、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
また、本発明においては、炭素系負極活物質として、その表面の少なくとも一部が非晶質炭素で被覆された天然黒鉛(非晶質コート天然黒鉛)を用いてもよい。
非炭素系負極活物質は、炭素質材料または黒鉛質材料のみからなる炭素系負極活物質を除く活物質であり、非炭素系負極活物質としては、例えば金属系負極活物質を挙げることができる。
また、ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、アルミニウムと、鉄などの遷移金属とを含み、さらにスズおよびイットリウム等の希土類元素を含む合金組成物も挙げられる。
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の分散媒としては、特に限定されることなく、既知の分散媒を用いることができる。中でも、分散媒としては、水を用いることが好ましい。なお、スラリー組成物の分散媒の少なくとも一部は、特に限定されることなく、スラリー組成物の調製に使用したバインダー組成物が含有していた溶媒とすることができる。
上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、上記成分や「リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物」の項で上述した成分の他に、導電材、補強材、レベリング剤、電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、上記各成分を分散媒に分散させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と分散媒とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。
ここで、分散媒としては、通常は水を用いるが、任意の化合物の水溶液や、少量の有機媒体と水との混合溶液などを用いてもよい。
また、スラリー組成物中における、水溶性重合体Xの配合量に対する両性分散剤Yの必須量の範囲および好適量の範囲、並びに、水溶性重合体Xの配合量に対する粒子状重合体の好適量の範囲は、本発明のバインダー組成物中における範囲と同様である。
更に、スラリー組成物が増粘剤を含む場合、スラリー組成物中の増粘剤の含有量は、負極活物質100質量部当たり、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。増粘剤の配合量を上述の範囲内とすることで、スラリー組成物のチクソ性および安定性を確保することができる。
次に、本発明のバインダー組成物を用いて調製し得るリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物について説明する。
なお、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物の分散媒およびその他の成分としては、上述したリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物と同様のものを使用することができるため、以下では説明を省略する。
正極活物質としては、遷移金属を含有する化合物、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属との複合金属酸化物などを用いることができる。なお、遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が挙げられる。
遷移金属硫化物としては、TiS2、TiS3、非晶質MoS2、FeSなどが挙げられる。
リチウムと遷移金属との複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
なお、本明細書において、「平均酸化状態」とは、前記「1種類以上の遷移金属」の平均の酸化状態を示し、遷移金属のモル量と原子価とから算出される。例えば、「1種類以上の遷移金属」が、50mol%のNi2+と50mol%のMn4+から構成される場合には、「1種類以上の遷移金属」の平均酸化状態は、(0.5)×(2+)+(0.5)×(4+)=3+となる。
上記リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物と同様に、上記各成分を分散媒に分散させることにより調製することができる。なお、正極用スラリー組成物中の上記各成分の割合は、適宜に調整することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、本発明のスラリー組成物を用いて得られる電極合材層を有する。より具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを備え、電極合材層には、少なくとも、電極活物質および結着材としての水溶性重合体Xと、水溶性重合体X100質量部当たり0.001質量部以上10質量部以下の両性分散剤Yが含まれている。なお、電極合材層中に含まれている各成分は、上記リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、電極用スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして、上記リチウムイオン二次電池用電極は、本発明のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物を使用して調製しているので、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減しつつ、寿命特性(サイクル特性および保存安定性)を向上させることができる。
なお、上記リチウムイオン二次電池用電極は、例えば、上述したリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を乾燥して集電体上に電極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
上記リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。
さらに、電極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、電極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、例えば負極として、本発明のリチウムイオン二次電池用電極(負極)を用いたものである。そして、上記リチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いているので、内部抵抗が低減され、そして寿命特性(サイクル特性および保存安定性)に優れている。
なお以下では上記リチウムイオン二次電池用負極を使用したリチウムイオン二次電池について説明するが、本発明のバインダー組成物を用いて製造し得るリチウムイオン二次電池としては、正極のみが本発明のリチウムイオン二次電池用正極であるリチウムイオン二次電池や、正極および負極の双方が本発明のリチウムイオン二次電池用電極であるリチウムイオン二次電池も挙げられる。
上記リチウムイオン二次電池の正極としては、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、例えば、正極合材層を集電体上に形成してなる正極を用いることができる。
なお、集電体としては、アルミニウム等の金属材料からなるものを用いることができる。また、正極合材層としては、既知の正極活物質と、導電材と、結着材とを含む層を用いることができる。
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等のアルキルカーボネート系溶媒に、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。
セパレータとしては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、リチウムイオン二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。
上記リチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。リチウムイオン二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
実施例および比較例において、水溶性重合体Xの電解液膨潤度、粒子状重合体のガラス転移温度およびゲル含有量、分散剤(両性分散剤Yを含む)の電解液溶解度、電極の生産性、負極合材層と集電体の密着性、並びに、リチウムイオン二次電池のレート特性、サイクル特性およびサイクル後の負極の膨らみ、保存安定性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
水溶性重合体Xを含む水溶液を、湿度50%、温度23〜25℃の環境下で乾燥させて、厚み1±0.3mmに成膜した。成膜したフィルムを、温度60℃の真空乾燥機で10時間乾燥させた後、裁断して約1gを精秤した。得られたフィルム片の質量をW0とする。このフィルム片を、温度60℃の環境下で、電解液(組成:濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート2体積%(溶媒比)を添加))に3日間浸漬し、膨潤させた。その後、フィルム片を引き上げ、表面の電解液をキムワイプで拭いた後、質量を測定した。膨潤後のフィルム片の質量をW1とする。
そして、以下の計算式を用いて電解液膨潤度を算出した。
電解液膨潤度(質量%)=W1/W0×100
<ガラス転移温度>
粒子状重合体を含む水分散液を、湿度50%、温度23〜26℃の環境下で3日間乾燥させて、厚み1±0.3mmに成膜した。成膜したフィルムを、温度60℃の真空乾燥機で10時間乾燥させた。その後、乾燥させたフィルムをサンプルとし、JIS K7121に準拠して、測定温度−100℃〜180℃、昇温速度5℃/分の条件下、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、DSC6220SII)を用いてガラス転移温度Tg(℃)を測定した。
<ゲル含有量>
粒子状重合体を含む水分散液を、湿度50%、温度23〜25℃の環境下で乾燥させて、厚み1±0.3mmに成膜した。成膜したフィルムを、温度60℃の真空乾燥機で10時間乾燥させた。その後、乾燥させたフィルムを3〜5mm角に裁断し、約1gを精秤した。裁断により得られたフィルム片の質量をw0とする。このフィルム片を、50gのテトラヒドロフラン(THF)に24時間浸漬した。その後、THFから引き揚げたフィルム片を温度105℃で3時間真空乾燥して、不溶分の質量w1を計測した。
そして、以下の計算式を用いてゲル含有量を算出した。
ゲル含有量(質量%)=(w1/w0)×100
<電解液溶解度>
分散剤約1gを100meshのSUS製金網(事前に質量を測定)上に載置し(分散剤が粘性液体状である場合には金網に塗布する)、温度105℃で3時間真空乾燥後、分散剤と金網の質量の合計を測定し、分散剤の電解液浸漬前質量Y0を算出した。
その後、分散剤が付着した上記金網を、50gの電解液(組成:濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒はEC/EMC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート2体積%(溶媒比)を添加))に、温度57〜63℃の環境下で72時間浸漬させた。その後該金網を引き上げ、分散剤と金網の質量の合計を測定し、分散剤の電解液浸漬後質量Y1を算出した。
そして、以下の計算式を用いて電解液溶解度を算出した。
電解液溶解度(質量%)={(Y0−Y1)/Y0}×100
得られる電解液溶解度の値が大きいほど、分散剤が電解液に溶解し易いことを示し、例えば分散剤が電解液に完全に溶解する場合においては、電解液溶解度は100質量%となり、全く溶解しない場合は0質量%となる。
<電極の生産性>
粘度が3000±300mPa・s(B型粘度計、60rpmで測定)となるように調製したスラリー組成物の固形分濃度を以下の基準で評価した。スラリー組成物の固形分濃度が高いほど、スラリー組成物の乾燥が容易になり、生産性が向上することを表す。
A:固形分濃度が48質量%以上
B:固形分濃度が45質量%以上48質量%未満
C:固形分濃度が45質量%未満
<負極合材層と集電体の密着性>
作製したリチウムイオン二次電池用負極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、負極合材層を有する面を下にして負極合材層表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている)。測定を3回行い、その平均値を求めてこれを剥離ピール強度とし、以下の基準により評価した。剥離ピール強度の値が大きいほど、負極合材層と集電体の密着性に優れることを示す。
A:剥離ピール強度が3.0N/m以上
B:剥離ピール強度が2.5N/m以上3.0N/m未満
C:剥離ピール強度が1.5N/m以上2.5N/m未満
D:剥離ピール強度が1.5N/m未満
<リチウムイオン二次電池のレート特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で、5時間静置した。次に、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.65Vまで充電し、その後、温度60℃で12時間エージング処理を行った。そして、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.00Vまで放電した。その後、0.2Cの定電流にて、CC−CV充電(上限セル電圧4.40V)を行い、0.2Cの定電流にて3.00VまでCC放電を行った。
次に、温度25℃の環境下、4.40−3.00V間で、0.5Cの定電流充放電を実施し、このときの放電容量をC0と定義した。その後、温度−20℃の環境下で、同様に0.5Cの定電流にてCC−CV充電、0.5Cの定電流にて放電を実施し、このときの放電容量をC1と定義した。そして、レート特性として、ΔC=(C1/C0)×100(%)で示される容量変化率を求め、以下の基準により評価した。この容量変化率ΔCの値は大きいほど、高電流での放電容量が高く、そして内部抵抗が低いことを示す。
A:ΔCが40%以上
B:ΔCが38%以上40%未満
C:ΔCが35%以上38%未満
D:ΔCが35%未満
<リチウムイオン二次電池のサイクル特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で5時間静置した。次に、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.65Vまで充電し、その後、温度60℃で12時間エージング処理を行った。そして、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.00Vまで放電した。その後、0.2Cの定電流法にて、CC−CV充電(上限セル電圧4.40V)を行い、0.2Cの定電流法にて3.00VまでCC放電を行なった。
その後、温度25℃の環境下、セル電圧4.40−3.00V、1.0Cの充放電レートにて充放電の操作を100サイクル行った。そして、1サイクル目の容量、すなわち初期放電容量X1、および、100サイクル目の放電容量X2を測定し、ΔC´=(X2/X1)×100(%)で示される容量変化率を求め、以下の基準により評価した。この容量変化率ΔC´の値が大きいほど、サイクル特性に優れていることを示す。
A:ΔC´が88%以上
B:ΔC´が85%以上88%未満
C:ΔC´が83%以上85%未満
D:ΔC´が83%未満
<サイクル後の負極の膨らみ>
上述したサイクル試験後のリチウムイオン二次電池を、温度25℃、0.2Cの定電流にてセル電圧3.00Vまで放電を行い、その後1.0Cの定電流にてCC−CV充電(上限セル電圧4.30V)を実施した。そしてリチウムイオン二次電池を解体して負極を取り出し、負極合材層の厚みT1を厚みゲージにて測定した。リチウムイオン二次電池作製前の負極合材層の厚みをT0とし、ΔT={(T1−T0)/T0)}×100(%)で示される厚み変化率を求め、以下の基準により評価した。ΔTで表される負極の厚みの変化率は、サイクル中の極板構造の崩壊による厚み増加、負極表面におけるLi等の析出による厚み増加、などの寄与によるものであり、小さいほどサイクル後の負極が膨らんでいないことを示す。
A:ΔTが20%未満
B:ΔTが20%以上25%未満
C:ΔTが25%以上30%未満
D:ΔTが30%以上
<リチウムイオン二次電池の保存安定性>
作製したリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で5時間静置した。次に、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.65Vまで充電し、その後、温度60℃で12時間エージング処理を行った。そして、温度25℃、0.2Cの定電流法にて、セル電圧3.00Vまで放電した。その後、0.2Cの定電流法にて、CC−CV充電(上限セル電圧4.30V)を行い、0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00VまでCC放電を行なった。
次に、リチウムイオン二次電池のセルの体積(V0)をアルキメデス法によって算出した。その後、温度25℃、0.2Cの定電流法にてセル電圧4.40Vまで充電し、温度80±2℃の条件下で3日間放置したのち、温度25℃、0.2Cの定電流法にてセル電圧3.00Vまで放電した。その後、セルの体積(V1)を測定し、ガス発生量を以下の計算式により算出し、以下の基準により評価した。ガス発生量が少ないほど、保存安定性(高温保存特性)に優れていることを示す。
ガス発生量(mL)=V1(mL)−V0(mL)
A:ガス発生量が2mL未満
B:ガス発生量が2mL以上3mL未満
C:ガス発生量が3mL以上4mL未満
D:ガス発生量が4mL以上
<水溶性重合体X1を含む水溶液の調製>
セプタム付き1Lフラスコに、イオン交換水720gを投入して、温度40℃に加熱し、流量100mL/分の窒素ガスでフラスコ内を置換した。次に、イオン交換水10gと、化合物(A)としてのアクリル酸9.5g(25.0%)と、化合物(B)としてのアクリルアミド28.5g(75.0%)と、イオン交換水(共洗い用)10gとを混合して、シリンジでフラスコ内に注入した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液8.0gをシリンジでフラスコ内に追加した。更に、その15分後に、重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液40gをシリンジで追加した。4時間後、重合開始剤としての過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0gをフラスコ内に追加し、更に重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンの2.0%水溶液20gを追加して、温度を40℃に昇温し、重合反応を進めた。3時間後、亜硫酸水素ナトリウム2.5%水溶液0.8gおよび過硫酸カリウムの2.5%水溶液0.8gを添加して、温度を80℃に昇温し、1時間保持することで未反応物の重合を進めた。その後、フラスコを空気中に開放して重合反応を停止させた。
その後、水酸化リチウムの10%水溶液を用いて生成物のpHを8に調整して、水溶性重合体X1を含む水溶液を得た。そして、水溶性重合体X1の電解液膨潤度を測定した。結果を表1に示す。
<粒子状重合体(スチレン−ブタジエン系重合体)を含む水分散液の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、芳香族ビニル単量体としてのスチレン65部(63.1%)、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン35部(34.0%)、カルボキシル基含有単量体としてのイタコン酸2部(1.9%)、ヒドロキシル基含有単量体としての2−ヒドロキシエチルアクリレート1部(1.0%)、分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.3部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、溶媒としてのイオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム1部を投入し、十分に攪拌した後、温度55℃に加温して重合を開始した。
モノマー消費量が95.0%になった時点で冷却し、反応を停止した。こうして得られた重合体を含んだ水分散体に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。さらにその後、温度30℃以下まで冷却し、スチレン−ブタジエン系重合体よりなる粒子状重合体の水分散液を得た。なお、得られた粒子状重合体のゲル含有量は92%、ガラス転移温度は10℃であった。
<リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛および天然黒鉛の混合物(理論容量:360mAh/g)100部と、水溶性重合体X1を含む水溶液(固形分濃度:6.5%)を固形分相当で1.0部と、両性分散剤Y1(ビックケミー社製「DISPERBYK-2012」、酸価7mgKOH/g、アミン価7mgKOH/g、電解液溶解度0.5%未満)を固形分相当で0.01部(水溶性重合体X100部当たり1部)を投入し、さらにイオン交換水にて固形分濃度が60%となるように希釈し、その後、回転速度45rpmで60分混練した。さらにその後、上述したスチレン−ブタジエン系重合体よりなる粒子状重合体を含む水分散液(固形分濃度:40%)を固形分相当で1.5部(水溶性重合体X100部当たり150部)投入し、回転速度40rpmで40分混練した。そして、粘度が3000±300mPa・s(B型粘度計、60rpmで測定)となるようにイオン交換水を加え(イオン交換水の量は80部であった)、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を調製した。なお、このときのスラリー組成物の固形分濃度は47質量%であった。この固形分濃度をもとに、電極の生産性を評価した。結果を表1に示す。
<リチウムイオン二次電池用負極の製造>
上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ15μmの銅箔の表面に、塗付量が12.8〜13.2mg/cm2となるように塗布した。このリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物が塗布された銅箔を、300mm/分の速度で、温度80℃のオーブン内を2分間、さらに温度110℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、負極原反を得た。
そして、得られた負極原反をロールプレス機にて密度が1.68〜1.72g/cm3となるようプレスし、さらに、水分の除去を目的として、真空条件下温度105℃の環境に4時間置き、負極を得た。この負極を用いて負極合材層と集電体の密着性を評価した。結果を後述する表に示す。
<リチウムイオン二次電池用正極の製造>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのLiCoO2100部、導電材としてのアセチレンブラック2部(電気化学工業(株)製、HS−100)、結着材としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、(株)クレハ化学製、KF−1100)2部を添加し、さらに、分散媒としての2−メチルピリロドンを全固形分濃度が67%となるように加えて混合し、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製した。
得られたリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、塗布量が25.5〜26.5mg/cm2となるように塗布した。その後、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物が塗布されたアルミ箔を、0.5m/分の速度で温度60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、乾燥させた。その後、温度120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。
そして、得られた正極原反をロールプレス機にて密度が3.40〜3.50g/cm3となるようにプレスし、さらに、分散媒の除去を目的として、真空条件下、温度120℃の環境に3時間置き、正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
単層のポリプロピレン製セパレータ、上記の負極および正極を用いて、捲回セル(放電容量800mAh相当)を作製し、アルミ包材内に配置した。その後、電解液として濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート2体積%(溶媒比)含有)を充填した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、温度150℃のヒートシールをしてアルミ包材を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。このリチウムイオン二次電池を用いて、レート特性、サイクル特性およびサイクル後の負極の膨らみ、並びに保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
両性分散剤Y1の量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
両性分散剤Y1に替えて、それぞれ両性分散剤Y2(ビックケミー社製「DISPERBYK-2001」、酸価19mgKOH/g、アミン価29mgKOH/g、電解液溶解度0.5%未満)、両性分散剤Y3(ビックケミー社製「DISPERBYK-2010」、酸価20mgKOH/g、アミン価20mgKOH/g、電解液溶解度0.5%未満)両性分散剤Y4(ビックケミー社製「DISPERBYK-198(酸価0mgKOH/g、アミン価4mgKOH/g)とDISPERBYK-199(酸価1.5mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)の1:2(質量比)混合物、混合後の酸価1mgKOH/g、アミン価1.3mg/KOH、混合後の電解液溶解度2.5%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
表2に示す単量体を当該表に示す割合で使用した以外は水溶性重合体X1と同様にしてそれぞれ調製した水溶性重合体Xを、水溶性重合体X1に替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
また、水溶性重合体Xの調製に、実施例20においては、化合物(B)としてアクリルアミドに加えメタクリルアミドを使用し、実施例21においては、化合物(B)として2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用した。
両性分散剤Y1を使用しない以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
両性分散剤Y1の量を表3のように変更した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
表3に示す単量体を当該表に示す割合で使用した以外は水溶性重合体X1と同様にしてそれぞれ調製した水溶性重合体を、水溶性重合体X1に替えて使用し、かつ両性分散剤Y1に替えて、それぞれ分散剤Y5(ビックケミー社製「DISPERBYK-2015」、酸価10mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、電解液溶解度85%)、分散剤Y6(ビックケミー社製「DISPERBYK-198」、酸価0mgKOH/g、アミン価4mgKOH/g、電解液溶解度90%)を表3に示す量で使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
表3に示す単量体を当該表に示す割合で使用した以外は水溶性重合体X1と同様にしてそれぞれ調製した水溶性重合体を、水溶性重合体X1に替えて使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表3に示す。
なお、比較例5においては、水溶性重合体Xの調製に、化合物(A)、化合物(B)および多官能化合物(C)以外の化合物としてメチルメタクリレートを使用した。
「AA」は、アクリル酸を示し、
「AAm」は、アクリルアミドを示し、
「MAAm」は、メタクリルアミドを示し、
「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、
「MMA」は、メチルメタクリレートを示し、
「PEGDA」はポリエチレングリコールジアクリレートを示し、
「EPETA」は、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートを示す。
また、上述の表の実施例1〜6より、両性分散剤Yの量を変更することにより、リチウムイオン二次電池の内部抵抗をより低減し、そして電極の生産性、負極合材層と集電体の密着性、サイクル特性および保存安定性を更に向上させ得ることがわかる。
そして、上述の表の実施例1、7〜9より、両性分散剤Yの酸価およびアミン価を変更することにより、リチウムイオン二次電池の電極の膨れを更に抑制しつつ、リチウムイオン二次電池の保存安定性および電極の生産性を更に向上させ得ることがわかる。
さらに、上述の表の実施例1、10〜21より、水溶性重合体Xを調製する際の単量体の種類や配合割合を変更することにより、リチウムイオン二次電池の電極の膨れを更に抑制しつつ内部抵抗をより低減し、そして電極の生産性、サイクル特性および保存安定性を更に向上させ得ることがわかる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとするリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を提供することができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗を低減し、併せて寿命特性を優れたものとする電極、および、内部抵抗が低減され、そして寿命特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
Claims (7)
- 水溶性重合体X、両性分散剤Yおよび溶媒を含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物であって、
前記水溶性重合体Xは、化合物(A)と、化合物(B)とを含む単量体組成物を重合してなり、
前記化合物(A)は、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩の少なくとも一方よりなるエチレン性不飽和カルボン酸化合物であり、
前記化合物(B)は、20℃における水100gに対する溶解度が7g以上であって、エチレン性不飽和結合を有する前記化合物(A)と共重合可能な化合物であり、
前記単量体組成物の全単量体中の前記化合物(A)の割合が20.0質量%以上75.0質量%以下であり、全単量体中の前記化合物(B)の割合が20.0質量%以上75.0質量%以下であり、
前記水溶性重合体Xの電解液膨潤度が120質量%未満であり、
前記両性分散剤Yは、酸価が1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であり、かつアミン価が1mgKOH/g以上30mgKOH/g未満であり、
そして、前記両性分散剤Yの配合量が、前記水溶性重合体X100質量部当たり、0.001質量部以上10質量部以下である、
リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。 - 前記単量体組成物は、ポリオキシアルキレン構造および2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能化合物(C)をさらに含み、全単量体中の前記多官能化合物(C)の割合が0.01質量%以上20.0質量%以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記単量体組成物は、全単量体中の前記化合物(A)の割合を全単量体中の前記化合物(B)の割合で除した値が1.5未満である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 前記両性分散剤Yの電解液溶解度が5%以下である、請求項1〜3の何れかに記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物および電極活物質を含む、リチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物。
- 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池電極用スラリー組成物を用いて調製した電極合材層を、集電体上に備える、リチウムイオン二次電池用電極。
- 正極、負極、電解液およびセパレータを備え、前記正極および負極の少なくとも一方が、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
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