JP6424767B2 - 絶縁電線およびケーブル - Google Patents
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Description
導体と、
前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線が提供される。
導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブルが提供される。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るケーブルの断面の概略図である。
図1に示すように、本実施形態のケーブル1は、導体11と、絶縁層12と、シース13とを備え、シース13は、内層14および外層15を含む積層構造を有している。
導体11としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線、アルミニウムや銀等からなる金属線、又は金属線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体11の外径は、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
導体11の外周を被覆するように、絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、従来公知の樹脂組成物、例えばエチレンプロピレンゴムを含む樹脂組成物で形成されている。絶縁層12の厚さは、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
絶縁層12の外周を被覆するように、シース13が設けられている。シース13は、導体11側に位置する内層14と、表面側に位置する外層15とを有する。内層14は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、外層15は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)およびシラングラフトポリエチレン(C)を含む外層材料からなり、シース13は、内層材料および外層材料を積層させて押し出した後、同時にシラン架橋されて形成されることで、内層14および外層15が一体的にシラン架橋されるように構成されている。以下、内層14および外層15それぞれについて、詳述する。
内層14は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料をシラン架橋させることで形成されている。内層材料は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含むので、シラン化合物がグラフト共重合される外層材料との相溶性に優れている。そのため、内層14は、外層15との密着性に優れることになる。しかも、本実施形態では、内層14と外層15とが一体的にシラン架橋されるように構成されるので、その密着性がより高くなる。また、内層14は、極性基を有するシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含むので、シース13全体の耐油性の向上に寄与する。
不飽和結合性基としては、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物をグラフト重合できるようなものであれば限定されず、例えば、ビニル基、メタクリル基およびアクリル基などが挙げられる。これらの中でもメタクリル基が好ましい。メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)は、塩素系ポリマとの相溶性がよく、塩素系ポリマ中に架橋構造を均一に導入することができる。
加水分解性のシラン基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基などの加水分解可能な構造を有するものが挙げられる。これらの加水分解可能な構造を有するシラン基として、例えばハロシリル基、アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基などが挙げられる。
外層15は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)およびシラングラフトポリエチレン(C)を含む外層材料をシラン架橋させることで形成されている。外層材料は、シラン化合物がグラフト共重合されており、内層用樹脂組成物との相溶性に優れている。そのため、外層15は、内層14との密着性に優れることになる。しかも、本実施形態では、内層14と外層15とが一体的にシラン架橋されるように構成されるので、その密着性がより高くなる。また、外層材料は、結晶性が高く硬度が高いシラングラフトポリエチレン(C)を含み、未架橋のままでも耐変形性に優れるため、それからなる外層15は、潰れ等の変形が少なく、外観が良好である。さらに、外層15は、シラングラフトポリエチレン(C)を含み、耐油性が低い傾向にあるが、本実施形態では、シース13の積層構造の一部として構成し、シース13に占める比率を減らしているので、シース13全体としての耐油性を大きく低下させることなく、所望の高い耐油性を得ることができる。
塩素化ポリエチレン(b)は、例えば、線状ポリエチレン(低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど)を水に懸濁分散させた水性懸濁液に塩素ガスを吹き込むことにより得られるものである。塩素化ポリエチレン(b)の塩素化度は、特に限定されないが、シラン化合物のグラフト化率、および架橋させたときの架橋度を所望の範囲とする観点からは、例えば25%以上45%以下であると好ましく、30%以上40%以下であるとより好ましい。
塩素化ポリエチレン(b)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。
過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
ポリエチレン(c)としては、シラン化合物をグラフト重合できるものであれば、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。外層材料の未架橋状態での耐変形性をより向上させる観点からは、ポリエチレン(c)として、密度が高いものを用いるとよい。これは、ポリエチレン(c)は、密度が高くなるほど結晶成分が多くなり、硬度が高くなるからである。具体的には、密度が0.90g/ml以上であることが好ましい。一方、密度が高すぎると、外層材料の硬度が過度に高くなるので、シース13の可とう性が損なわれるおそれがある。そのため、密度の上限値は、0.95g/ml以下であることが好ましい。
ポリエチレン(c)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。
過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
本実施形態のケーブル1の製造方法は、導体11の外周上に絶縁層12を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層12の外周上に内層材料および外層材料を積層させて押し出す押出工程と、内層材料および外層材料を水分に曝して同時にシラン架橋させる架橋工程と、を有する。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
・塩素化ポリエチレン(ムーニー粘度(ML1+4):55):杭州科利化工株式会社製「CM352L」
・クロロプレンゴム(非加硫変性タイプ、ムーニー粘度(ML1+4):48):昭和電工株式会社製「ショウプレンW」
・低密度ポリエチレン(密度d:0.922g/ml、MFR:2.3g/10min):プライムポリマー株式会社製「エボリューSP2030」
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−503」
・ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−1003」
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−903」
・ジクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製「DCP」
・安定剤(ハイドロタルサイト):協和化学工業株式会社製「マグセラー1」
・安定剤(エポキシ化大豆油):日本油脂株式会社製「ニューサイザー510R」
・安定剤(酸化マグネシウム):協和化学工業株式会社「キョーワマグ30」
・滑剤(ポリエチレンワックス):三井化学株式会社製「ハイワックスNL200」
・可塑剤(ナフテン系プロセスオイル):出光興産株式会社製「NP−24」
・カーボン(FEFカーボンブラック):旭カーボン株式会社製「旭カーボン60G」
・難燃剤(三酸化アンチモン):住友金属鉱山株式会社製「三酸化アンチモン」
・酸化防止剤(4,4´−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック300R」
・酸化防止剤(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック224」
・シラノール縮合触媒(ジオクチル錫ジネオデカノエート):日東化学株式会社製「ネオスタンU−830」
シラングラフト材料Aとして、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含む組成物を調製した。
まず、表1に示すように、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、ハイドロタルサイトを6質量部と、エポキシ化大豆油を6質量部と、ポリエチレンワックスを3質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間混練した。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。ペレット同士の粘着を防止するため、ペレットにタルク1質量部をまぶした。
具体的には、得られたペレットに、過酸化物をシラン化合物に溶解させたシランミクスチャーを十分に含浸させた。このとき、表1に示すように、塩素化ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物が0.5質量部、メタクリルシラン(KBM−503)が5質量部となるように、ペレットにシランミクスチャーを含浸させた。そして、シランミクスチャーを含浸させたペレットを、図2に示す単軸押出機100のホッパー101からシリンダ103a内に投入し、スクリュ102の回転によりシリンダ103aからシリンダ103bに送出した。このとき、ペレットをシリンダ103a,103bで加熱して軟化混練することにより、塩素化ポリエチレンにシラン化合物をグラフト重合させた。これにより、シラングラフト塩素化ポリエチレンを形成した。その後、シラングラフト塩素化ポリエチレンを押出機100のヘッド部104に送出し、ダイス105からシラングラフト塩素化ポリエチレンのストランド20(長さ150cm)を押し出した。そして、ストランド20を水槽106に導入して水冷し、エアワイパ107で水切りした。その後、ペレタイザ108でストランド20をペレタイズし、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機100を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、シリンダ103aの温度を80℃、シリンダ103bの温度を200℃、ヘッド部104の温度を200℃、ダイス105の温度を200℃とした。また、スクリュ102の回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュ102をフルフライト形状とした。また、ダイス105として、穴径直径5mm、穴数3つのダイスを用いた。
シラングラフト材料Bは、シラン化合物の種類をメタクリルシランからビニルシラン(KBM−1003)に変更するとともに過酸化物の配合量を適宜変更して、ビニルシランがグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを形成した以外は、シラングラフト材料Aと同様に調製した。
シラングラフト材料Cとして、シラングラフトクロロプレンゴムを含む組成物を調製した。
具体的には、クロロプレンゴムに、シラン化合物以外の材料を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を80℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間混練した。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、クロロプレンゴムを含むペレットを得た。ペレット同士の粘着を防止するため、ペレットにタルク1質量部をまぶした。
このペレットに、シラン化合物を含浸させ、シラングラフト材料Aと同様の条件でグラフト処理することにより、シラングラフトクロロプレンゴムを形成し、シラングラフト材料Cを調製した。
シラングラフト材料Dとして、シラングラフトポリエチレンを含む組成物を調製した。
具体的には、ポリエチレンのペレットにシランミクスチャーを十分に含浸させた。このとき、下記表1に示すように、ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物が0.1質量部、シラン化合物(KBM−1003)が1.5質量部となるように、ペレットにシランミクスチャーを含浸させた。そして、シランミクスチャーを含浸させたペレットを、図2に示す単軸押出機100に投入し、グラフト処理を行うことでシラングラフトポリエチレンを形成し、そのストランドをペレタイズすることにより、シラングラフトポリエチレンを含む組成物Dを調製した。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機100を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、シリンダ103aの温度を80℃、シリンダ103bの温度を200℃、ヘッド部104の温度を200℃とした。また、スクリュ102の回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュ102をフルフライト形状とした。また、ダイス105として、穴径直径5mm、穴数3つのダイスを用いた。
続いて、上記組成物A〜Dとは別に、シラノール縮合触媒を含む触媒マスターバッチを調製した。
具体的には、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、ハイドロタルサイトを6質量部と、エポキシ化大豆油を6質量部と、ポリエチレンワックスを3質量部と、さらに、シラノール縮合触媒としてのジオクチル錫ジネオデカノエートを2質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、シラノール縮合触媒を添加してから3分間混練した。その後、混練物からなるシートを5mm角の形状にペレタイズし、触媒マスターバッチを調製した。
比較材料として、シラン架橋ではなく、過酸化物による化学架橋用の組成物を調製した。
具体的には、シラングラフト材料Aの調製において、シラン化合物を添加せずにグラフト処理を施さずに、シラン化合物以外の成分を混練することにより、化学架橋用の材料を調製した。
(1)内層材料および外層材料の調製
まず、下記表2に示すように、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aに触媒マスターバッチを添加してドライブレンドすることにより、内層材料を調製した。なお、触媒マスターバッチの添加量は、シラングラフト材料Aの塩素化ポリエチレンに対して20分の1の質量分とした。
また、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aと、シラングラフトポリエチレンを含むシラングラフト材料Cとを、塩素化ポリエチレンとポリエチレンとの比率が60:40となるように、質量比率105.48:40.64で混合することにより、外層材料を調製した。
次に、上記で調製した内層材料および外層材料を用いて、ケーブルを作製した。
具体的には、図3に示すような単軸押出機100を用いて、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)からなる絶縁層12が導体11の表面に形成されたEPゴム絶縁体コア(導体断面積8mm2、ゴム絶縁体厚さ1mm、外径3.7mm)の外周に内層材料を厚さが1.5mmとなるように押出被覆した後、外層材料を厚さが0.5mmとなるように押出被覆した。その後、温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に24時間保管して、内層材料および外層材料をシラン架橋させることにより、内層14および外層15を有するシース13を備えるケーブル1を作製した。
なお、ケーブル1の作製では、内層材料の押出に、スクリュ径75mm、比率L/D20の単軸押出機を、外層材料の押出に、スクリュ径40mm、比率L/D20の単軸押出機を、それぞれ用いた。
また、内層材料であるシラングラフト塩素化ポリエチレンの押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を100℃−110℃−115℃−120℃−130℃、ネック109の温度を130℃、クロスヘッド部110の温度を130℃、ダイス105の温度を130℃とした。スクリュ102の回転数を15rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
また、外層材料の押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を100℃−110℃−115℃−120℃−130℃、ネック109の温度を130℃とした。スクリュ102の回転数を25rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
作製したケーブルを、以下の方法により評価した。
未架橋のシースの変形度合いを評価するため、外層の架橋処理前の硬度を測定した。具体的には、JIS Aタイプの硬度計を用いて、架橋処理前の外層の硬度、つまり外層材料の硬度を測定し、その値が80以上であれば耐変形性に優れ、架橋処理前に巻き取ったとしても変形する可能性が低いものと判断して合格「○」、80未満であれば変形する可能性が高いものとして不合格「×」とした。
架橋処理後のシースの引張伸びを評価するため、引張試験を行った。具体的には、架橋処理後のケーブルからシースを剥離し、剥離したシースを6号ダンベルで打ち抜いて試験サンプルを作製し、試験サンプルをショッパー試験機にて引張速度200mm/min、標線間長さ20mmで引っ張ったときの破断時伸び率を測定した。本実施例では、伸びが350%以上であれば合格「○」、300%未満であれば不合格「×」とした。
シースの耐油性を評価するため、引張伸びと同様に試験サンプルを作製し、その試験サンプルをIRM902号試験油に100℃、24時間の条件で浸漬させた。浸漬前後の試験サンプルについて、引張伸びと同様に引張試験を行い、下記式に示すように、破断引張強さの浸漬後の残率を算出した。この残率が65%以上であれば、十分な耐油性を有しているものとして優「◎」、60%以上65%未満であれば、良「○」、60%未満であれば不可「×」とした。
(破断引張強さの浸漬後残率)=(浸漬後の試験サンプルの引張強さ/浸漬前の試験サンプルの引張強さ)×100
内層および外層の密着性は、剥離試験を行い、層間の破壊状態を観察することにより評価した。具体的には、まず、架橋処理後のシースを3cmの長さに切断し、層間に外部から約3mmの長さの切り込みを入れる。続いて、内層を固定した後、外層をペンチでつまみ、約2cmの長さとなるまで剥離させた。内層および外層を剥離できなかった場合(剥離の途中で外層が破断した場合)、密着性に優れるものとして優「◎」、剥離はできるものの、目視および手触りにて内層に外層が付着したと確認された場合、密着性が十分であるとして良「○」、界面で内層および外層がそれぞれ剥ぎ取られた場合、密着性が不十分として不可「×」とした。
本実施例では、架橋のための加熱条件が100℃未満と低い場合や特に架橋設備を必要としない場合、低コストとして合格「○」、反対に加熱条件が高温であったり、特別な架橋設備が必要となったりする場合、高コストであるとして不合格「×」とした。
評価結果を下記表3に示す。表3に示すように、実施例1では、架橋処理前の硬度が84と高く、架橋処理前にケーブルをドラム状に巻き取ったとしても、ケーブル表面(外層)に潰れ等の変形が生じる可能性が低いことが確認された。また、架橋処理後のシースの引張強さが440%、耐油試験後の引張強さ残率が72%と、いずれも高く、機械特性や耐油性に優れることが確認された。また、層間での剥離試験によると、外層が破断してしまい、剥離させることが困難であることから、内層と外層との密着性に優れていることが確認された。また、実施例1では、水分でシラン架橋させることができたため、架橋の際に加熱条件を高温とする必要がなく、また電子線照射などの特別な設備を必要としないため、低コストであることが分かった。
実施例2では、実施例1と同じ内層材料および外層材料を用いたが、内層材料および外層材料を同時にシラン架橋させるのではなく、内層材料および外層材料をそれぞれ、押出被覆した直後にシラン架橋させ、別々にシラン架橋させた以外は実施例1と同様にケーブルを作製した。
実施例2では、層間でのシラン架橋が十分に進まず、実施例1ほど高い密着性を得られなかったものの、十分な密着性を確保できることが確認された。それ以外の耐油性や機械特性などの評価については、実施例1と同様に良好であることが確認された。
実施例3,4では、内層材料を変更した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
具体的には、実施例3では、内層材料として、ビニルシランがグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Bを用いた。実施例3では、実施例1ほど高い密着性が得られなかったものの、十分な密着性を確保できることが確認された。この理由としては、以下のように推測される。すなわち、メタクリルシランによれば、ビニルシランと比べて塩素化ポリエチレンに対する相溶性が高く、均質にグラフト共重合できるので、局所的にシラン化合物が少なく、密着が弱くなるような部分を低減することができる。
実施例4では、内層材料として、シラングラフトクロロプレンゴムを含むシラングラフト材料Cを用いた。実施例4では、実施例1と同様に評価結果が良好であることが確認された。
なお、実施例4において、内層材料であるシラングラフトクロロプレンゴムの押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を80℃−80℃−85℃−90℃−100℃、ネック109の温度を100℃、クロスヘッド部110の温度を100℃、ダイス105の温度を100℃とした。スクリュ102の回転数を15rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
比較例1では、内層材料として、シラングラフト材料Aから、化学架橋用の材料に変更してケーブルを作製した。具体的には、まず、化学架橋用の材料をEPゴム絶縁体コアの外周上に押出被覆し、加圧蒸気で封入され、180℃と高温に加熱された加熱管に挿通させ、内層材料を化学架橋させて内層を形成した。その後、実施例1と同じ外層材料を内層の外周上に押出被覆してシラン架橋させ、外層を形成することにより、ケーブルを作製した。
比較例1では、内層材料と外層材料とで架橋方式が異なるためか、層間での架橋が十分に進まず、高い密着性を得られないことが確認された。また、内層を化学架橋させるために高温の加熱処理を施す必要があるため、実施例と比べてコストが高くなることが確認された。
比較例2では、実施例1で用いた、シラングラフト材料Aを含む内層材料を押出被覆して、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例2では、シラングラフトポリエチレンを含まず、シラングラフト塩素化ポリエチレンのみを含む材料でシースを構成したため、加熱処理前の硬度が70と低く、ドラム状に巻き取ったときにシース表面が変形する可能性が高いことが確認された。なお、比較例2では、単層構造のシースを形成したため、層間の密着性については試験を行っていない。
比較例3では、比較例2と同様に、シラングラフトポリエチレンを含まず、シラングラフトクロロプレンゴムのみを含む材料でシースを構成したため、加熱処理前の硬度が53と低く、ドラム状に巻き取ったときにシース表面が変形する可能性が高いことが確認された。なお、比較例3では、単層構造のシースを形成したため、層間の密着性については試験を行っていない。
比較例4では、化学架橋用の材料を押出被覆し、比較例1と同様の条件で加熱処理して化学架橋させることにより、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例4では、耐油性や機械特性などの諸特性については良好であることが確認されたが、化学架橋させるために高温で加熱処理する必要があるため、高コストであることが確認された。
比較例5では、実施例1で用いた、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aと、シラングラフトポリエチレンを含むシラングラフト材料Cとを、所定の比率で含む外層材料をEPゴム絶縁体コアの外周上に押出被覆して、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例5では、シラングラフトポリエチレンを配合してシースを形成したため、架橋処理前にケーブルをドラム状に巻き取ったとしても、ケーブル表面(外層)に潰れ等の変形が生じる可能性が低いことが確認された。しかし、シースにおいて、耐油性に劣るシラングラフトポリエチレンの比率が多くなったため、シースの耐油性が低下し、高い耐油性を維持できないことが確認された。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線が提供される。
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記塩素系ポリマ(a)が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである。
付記1又は2の絶縁電線において、好ましくは、
前記シラン化合物がメタクリル基を有する。
本発明の他の態様によれば、
導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブルが提供される。
11 導体
12 絶縁層
13 シース
14 内層
15 外層
Claims (4)
- 導体と、
前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線。 - 前記塩素系ポリマ(a)が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである、請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記シラン化合物がメタクリル基を有する、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
- 導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブル。
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