JP6424767B2 - 絶縁電線およびケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁電線およびケーブルに関する。
絶縁電線やケーブルには、表面に被覆層(絶縁層やシースなど)が設けられている。被覆層を形成する被覆材料は、絶縁電線やケーブルの用途によって異なっており、特に可とう性が求められる場合にはゴム材料が用いられる。このようなゴム材料としては、塩素系ポリマがあり、その中でも機械特性や耐油性に優れることから塩素化ポリエチレンが用いられている。
一般に、ゴム材料を用いて被覆層を形成する場合、被覆層においてゴム弾性や耐熱性を発現させるため、被覆材料に架橋処理が施される。架橋処理としては、例えば、シラン化合物(いわゆるシランカップリング剤)を用いるシラン架橋が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。
具体的には、被覆層は以下のようにシラン架橋させることにより形成される。すなわち、まず、ゴム材料である塩素化ポリエチレンにシラン化合物を添加し、グラフト共重合させることにより、シラングラフト塩素化ポリエチレンを調製する。続いて、シラングラフト塩素化ポリエチレンを押し出して被覆層を形成し、その後、被覆層を水分に曝すことによりシラン架橋させる。
特公昭50−35540号公報
しかしながら、絶縁電線やケーブルにおいて、被覆層をシラン架橋させる場合、被覆層が変形してしまうことがある。一般に、被覆層のシラン架橋は、ゴム材料を押し出して未架橋のままの絶縁電線やケーブルをドラム状に巻き取った後に、水分に曝すことにより行われる。そのため、未架橋の被覆層は、架橋によりゴム弾性を発現する前に、ケーブルなどの自重や張力によって潰れて変形してしまう。その結果、被覆層は、変形した状態でシラン架橋されることとなり、表面の外観が損なわれる。
また、被覆層には、絶縁電線やケーブルの使用環境にあるエンジンオイル等との接触により容易に劣化せず、耐油性に優れていることが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、被覆層に塩素化ポリエチレンを用いたときに、被覆層の変形を抑制するとともに、耐油性を高く維持する技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブルが提供される。
本発明によれば、被覆層に塩素化ポリエチレンを用いたときに、被覆層の変形を抑制するとともに、耐油性を高く維持することができる。
本発明の一実施形態に係るケーブルの断面の概略図である。 実施例における単軸押出機を用いたグラフト処理を説明するための概略図である。 実施例におけるケーブルの作製を説明するための概略図である。
本発明者らの検討によると、ゴム材料である塩素化ポリエチレンにおいて、シラン架橋前の変形を抑制するには、プラスチック材料を混合するとよいことが見出された。プラスチック材料は、一般にゴム材料と比べて結晶成分が多く(高結晶性であり)、融点が高いので、未架橋でも変形しにくい。そのため、プラスチック材料をゴム材料に混合することにより、硬度を増加させ、耐変形性を向上させることができる。
さらに、本発明者らはプラスチック材料について検討を行ったところ、プラスチック材料の中でもポリエチレンがよいことを見出した。ポリエチレンは、塩素化ポリエチレンと同様にシラン化合物をグラフト共重合でき、シラン架橋させることができる。つまり、シラングラフトポリエチレンをシラングラフト塩素化ポリエチレンに混合し、水分と反応させることにより、これらを一体的にシラン架橋させることができる。したがって、ポリエチレンによれば、塩素化ポリエチレンに混合した場合であっても、混合物の架橋度を低下させることなく、塩素化ポリエチレンのみをシラン架橋させたときと同等の架橋度を得ることができる。
ただし、ポリエチレンは、極性基を持たないため、塩素化ポリエチレンと比べて耐油性に劣るといった問題がある。すなわち、塩素化ポリエチレンにポリエチレンを混合し、シラン架橋させることにより、被覆層の変形を抑制できる反面、高い耐油性を維持することが困難となる。ポリエチレンの混合比率を調整することも考えられるが、耐変形性と耐油性とを高い水準で両立することは困難である。
そこで、被覆層を多層構造とし、その外層を、シラングラフト塩素化ポリエチレンとシラングラフトポリエチレンとを含む混合材料で薄くコートして作製することにより検討した。その結果、耐変形性に優れる外層により被覆層全体としての耐変形性を高く維持しつつ、被覆層に占めるポリエチレンの比率を低減して耐油性の低下を抑制することが可能となり、被覆層において耐変形性および耐油性とを高い水準で得られることが見出された。
また、被覆層の内層については、上記外層との密着性の観点から、外層の混合材料との相溶性の高い材料が好ましく、その中でも塩素系ポリマがよいことが見出された。しかも、内層および外層のそれぞれを押し出し、同時にシラン架橋させることにより、これらの層間での架橋反応を発現させ、一体的にシラン架橋させることができ、密着性を大きく向上できることが見出された。
本発明は、上記知見に基づいて成されたものである。
〔本発明の一実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るケーブルの断面の概略図である。
<ケーブルの概略構成>
図1に示すように、本実施形態のケーブル1は、導体11と、絶縁層12と、シース13とを備え、シース13は、内層14および外層15を含む積層構造を有している。
(導体11)
導体11としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線、アルミニウムや銀等からなる金属線、又は金属線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体11の外径は、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
(絶縁層12)
導体11の外周を被覆するように、絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、従来公知の樹脂組成物、例えばエチレンプロピレンゴムを含む樹脂組成物で形成されている。絶縁層12の厚さは、ケーブル1の用途に応じて適宜変更することができる。
(シース13)
絶縁層12の外周を被覆するように、シース13が設けられている。シース13は、導体11側に位置する内層14と、表面側に位置する外層15とを有する。内層14は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、外層15は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)およびシラングラフトポリエチレン(C)を含む外層材料からなり、シース13は、内層材料および外層材料を積層させて押し出した後、同時にシラン架橋されて形成されることで、内層14および外層15が一体的にシラン架橋されるように構成されている。以下、内層14および外層15それぞれについて、詳述する。
(内層14)
内層14は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料をシラン架橋させることで形成されている。内層材料は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含むので、シラン化合物がグラフト共重合される外層材料との相溶性に優れている。そのため、内層14は、外層15との密着性に優れることになる。しかも、本実施形態では、内層14と外層15とが一体的にシラン架橋されるように構成されるので、その密着性がより高くなる。また、内層14は、極性基を有するシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含むので、シース13全体の耐油性の向上に寄与する。
内層材料は、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む。
シラングラフト塩素系ポリマ(A)は、過酸化物を用いて塩素系ポリマ(a)にシラン化合物をグラフト共重合させたものである。シラングラフト塩素系ポリマ(A)は、分子鎖中にシラン化合物に由来するシラン基を有しており、水との反応によりシラン架橋することで架橋体となる。
塩素系ポリマ(a)としては、外層15を形成する材料との相溶性に優れ、所望の耐油性を有するものであれば特に限定されないが、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つであることが好ましい。これらの成分は、分子構造中に塩素を含み、外層15を形成する外層材料との相溶性に優れるだけでなく、極性を有するため耐油性にも優れている。
シラン化合物は、不飽和結合性基と、加水分解性のシラン基とを有している。シラン化合物は、過酸化物の分解で生じるラジカルにより塩素系ポリマにグラフト共重合されることで、塩素系ポリマ(a)にシラン基を導入する。
不飽和結合性基としては、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物をグラフト重合できるようなものであれば限定されず、例えば、ビニル基、メタクリル基およびアクリル基などが挙げられる。これらの中でもメタクリル基が好ましい。メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)は、塩素系ポリマとの相溶性がよく、塩素系ポリマ中に架橋構造を均一に導入することができる。
加水分解性のシラン基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基などの加水分解可能な構造を有するものが挙げられる。これらの加水分解可能な構造を有するシラン基として、例えばハロシリル基、アルコキシシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシシリル基などが挙げられる。
メタクリルシランとしては、具体的には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が好ましく、これらを単独で用いてもよく、併用してもよい。
塩素系ポリマ(a)にグラフト共重合させるシラン化合物の量は、内層14の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。具体的には、シラン化合物の配合量は、塩素系ポリマ(a)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記範囲よりも少ないと、シラン架橋させたときに十分な架橋度が得られないおそれがある。一方、上記範囲よりも多くなると、シラン架橋させる前に早期架橋が生じてしまい、内層14においては架橋による異物(ツブ)が形成されることで、外観が不良となるおそれがある。
過酸化物としては、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物をグラフト共重合できるようなものであれば特に限定されない。過酸化物としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5ジメチル2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネートなどを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、内層材料は、塩素系ポリマ(a)に過酸化物およびシラン化合物を添加し、加熱混練することにより、過酸化物の存在下で塩素系ポリマ(a)にシラン化合物をグラフト共重合させる。これにより、シラングラフト塩素系ポリマ(A)を形成し、内層材料を調製する。
(外層15)
外層15は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)およびシラングラフトポリエチレン(C)を含む外層材料をシラン架橋させることで形成されている。外層材料は、シラン化合物がグラフト共重合されており、内層用樹脂組成物との相溶性に優れている。そのため、外層15は、内層14との密着性に優れることになる。しかも、本実施形態では、内層14と外層15とが一体的にシラン架橋されるように構成されるので、その密着性がより高くなる。また、外層材料は、結晶性が高く硬度が高いシラングラフトポリエチレン(C)を含み、未架橋のままでも耐変形性に優れるため、それからなる外層15は、潰れ等の変形が少なく、外観が良好である。さらに、外層15は、シラングラフトポリエチレン(C)を含み、耐油性が低い傾向にあるが、本実施形態では、シース13の積層構造の一部として構成し、シース13に占める比率を減らしているので、シース13全体としての耐油性を大きく低下させることなく、所望の高い耐油性を得ることができる。
外層材料は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)およびシラングラフトポリエチレン(C)を含む。
シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)は、過酸化物を用いて塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物をグラフト共重合させたものであり、主に外層15の耐油性の向上に寄与する。
塩素化ポリエチレン(b)は、例えば、線状ポリエチレン(低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど)を水に懸濁分散させた水性懸濁液に塩素ガスを吹き込むことにより得られるものである。塩素化ポリエチレン(b)の塩素化度は、特に限定されないが、シラン化合物のグラフト化率、および架橋させたときの架橋度を所望の範囲とする観点からは、例えば25%以上45%以下であると好ましく、30%以上40%以下であるとより好ましい。
塩素化ポリエチレン(b)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。
過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
塩素化ポリエチレン(b)にグラフト共重合させるシラン化合物の量は、外層15の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。外層15において、シラン架橋させたときに高い架橋度を得るとともに、早期架橋による外観不良を抑制する観点からは、シラン化合物の配合量は、塩素化ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。
シラングラフトポリエチレン(C)は、過酸化物を用いてポリエチレン(c)にシラン化合物をグラフト共重合させたものであり、外層材料の硬度を高め、未架橋の状態での耐変形性を向上させる。
ポリエチレン(c)としては、シラン化合物をグラフト重合できるものであれば、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。外層材料の未架橋状態での耐変形性をより向上させる観点からは、ポリエチレン(c)として、密度が高いものを用いるとよい。これは、ポリエチレン(c)は、密度が高くなるほど結晶成分が多くなり、硬度が高くなるからである。具体的には、密度が0.90g/ml以上であることが好ましい。一方、密度が高すぎると、外層材料の硬度が過度に高くなるので、シース13の可とう性が損なわれるおそれがある。そのため、密度の上限値は、0.95g/ml以下であることが好ましい。
ポリエチレン(c)にグラフト重合させるシラン化合物としては、上述したものを用いることができ、メタクリル基を有するシラン化合物(メタクリルシラン)が好ましい。
過酸化物としては、上述したものを用いることができる。
ポリエチレン(c)にグラフト共重合させるシラン化合物の量は、外層15の架橋度、もしくは架橋させるときの反応条件(例えば温度、時間など)によって適宜変更するとよい。外層15において、シラン架橋させたときに高い架橋度を得るとともに、早期架橋による外観不良を抑制する観点からは、シラン化合物の配合量は、ポリエチレン(c)100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
外層材料は、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)とシラングラフトポリエチレン(C)とを含むが、これらの混合比率は特に限定されない。シラングラフトポリエチレン(C)の混合比率が高くなると、外層材料の耐変形性が高まる一方、外層15の耐油性が低下するため、耐変形性および耐油性を高い水準でバランスよく得る観点からは、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)とシラングラフトポリエチレン(C)との比率が、質量比率で、55:45〜90:10となることが好ましい。
外層15の厚さは、特に限定されないが、外層15を形成するときに、未架橋の外層材料の変形を抑制する観点からは、少なくとも0.2mm以上であることが好ましい。一方、外層15の厚さが過度に大きくなると、シース13に占める比率が高くなり、シース13全体としての耐油性が低くなるおそれがあるので、1.0mm以下であることが好ましい。
なお、外層材料は、塩素化ポリエチレン(b)およびポリエチレン(c)のそれぞれにシラン化合物をグラフト共重合させた後に、シラングラフト塩素化ポリエチレン(B)とシラングラフトポリエチレン(C)とを混合して調製することが好ましい。これにより、(b)成分および(c)成分にそれぞれ最適な条件でシラン化合物をグラフト共重合させることができる。このときのグラフト反応条件(温度や時間など)は、特に限定されない。
なお、外層材料や内層材料には、必要に応じて、シラノール縮合触媒を配合してもよい。シラノール縮合触媒によれば、シラン架橋の反応を促進させ、効率的に架橋させることができる。
シラノール縮合触媒としては、例えば、マグネシウムやカルシウム等のII族元素、コバルトや鉄等のVIII族元素、錫、亜鉛およびチタン等の金属元素やこれらの元素を含む金属化合物を用いることができる。また、オクチル酸やアジピン酸の金属塩、アミン系化合物、酸などを用いることができる。具体的には、金属塩として、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カブリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト等を用いることができる。アミン系化合物として、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等を用いることができる。酸として、硫酸や塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸や酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸を用いることができる。
また、外層材料や内層材料には、可塑剤、酸化防止剤(老化防止剤を含む)、カーボンブラック等の充填剤、難燃剤、滑剤、銅害変色防止剤、架橋助剤、安定剤などのその他の添加剤を配合してもよい。
また、シラン化合物をグラフト共重合させるとき等の混練作業では、例えばロール機、押出機、ニーダ、ミキサ、オートクレーブなどの混練反応装置を用いて混練するとよい。
また、塩素系ポリマ(a)、塩素化ポリエチレン(b)およびポリエチレン(c)にグラフト共重合させるシラン化合物の種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
<ケーブルの製造方法>
本実施形態のケーブル1の製造方法は、導体11の外周上に絶縁層12を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層12の外周上に内層材料および外層材料を積層させて押し出す押出工程と、内層材料および外層材料を水分に曝して同時にシラン架橋させる架橋工程と、を有する。
まず、導体11の外周に、例えばエチレンプロピレンゴムを押し出して被覆させ、絶縁層12を形成する。
続いて、絶縁層12の外周上に、内層材料および外層材料を、この順番で押し出して被覆させる。
続いて、押し出した内層材料および外層材料を、例えば大気中に曝して水分に接触させる。これにより、内層材料に含まれる(A)成分、外層材料に含まれる(B)成分および(C)成分は、それぞれの分子鎖中のシラン基が加水分解によりシラノール基となり、このシラノール基同士が脱水縮合して架橋構造を形成することで、シラン架橋する。シラン架橋は、内層材料および外層材料のそれぞれで生じるだけでなく、これらの層間でも生じるため、シース13においては、内層14および外層15が一体的にシラン架橋されることになる。
以上により、本実施形態のケーブル1が得られる。
〔本発明の他の実施形態〕
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、絶縁層12の外周上に内層材料および外層材料を押し出した後に、これらを同時にシラン架橋させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、内層材料を押し出し、シラン架橋させて内層14を形成した後、内層14の外周上に外層材料を押し出し、シラン架橋させて外層15を形成するようにしてもよい。この場合、内層14の外周上に押し出した外層材料をシラン架橋させる際に、内層14と外層材料との層間でのシラン架橋が進行し、内層14と外層15との間で高い密着性を得られる。
上述の実施形態では、ケーブル1が、導体11の外周に絶縁層12が設けられた1本の絶縁電線を備える場合について説明したが、ケーブル1は、2本以上の絶縁電線を撚り合わせた撚り線を備えてもよい。
上述の実施形態では、ケーブル1において、シース13を、内層14および外層15を有する積層構造とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導体の外周上に絶縁層が形成された絶縁電線において、絶縁層を、内層および外層を有する積層構造としてもよい。
次に、本発明について実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって限定されない。
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。
ポリマ成分として、以下を用いた。
・塩素化ポリエチレン(ムーニー粘度(ML1+4):55):杭州科利化工株式会社製「CM352L」
・クロロプレンゴム(非加硫変性タイプ、ムーニー粘度(ML1+4):48):昭和電工株式会社製「ショウプレンW」
・低密度ポリエチレン(密度d:0.922g/ml、MFR:2.3g/10min):プライムポリマー株式会社製「エボリューSP2030」
シラン化合物として、以下を用いた。
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−503」
・ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−1003」
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBM−903」
過酸化物として、以下を用いた。
・ジクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製「DCP」
その他の添加剤として、以下を用いた。
・安定剤(ハイドロタルサイト):協和化学工業株式会社製「マグセラー1」
・安定剤(エポキシ化大豆油):日本油脂株式会社製「ニューサイザー510R」
・安定剤(酸化マグネシウム):協和化学工業株式会社「キョーワマグ30」
・滑剤(ポリエチレンワックス):三井化学株式会社製「ハイワックスNL200」
・可塑剤(ナフテン系プロセスオイル):出光興産株式会社製「NP−24」
・カーボン(FEFカーボンブラック):旭カーボン株式会社製「旭カーボン60G」
・難燃剤(三酸化アンチモン):住友金属鉱山株式会社製「三酸化アンチモン」
・酸化防止剤(4,4´−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック300R」
・酸化防止剤(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物):大内新興化学工業株式会社製「ノクラック224」
・シラノール縮合触媒(ジオクチル錫ジネオデカノエート):日東化学株式会社製「ネオスタンU−830」
まず、内層材料および外層材料を調製するためのシラングラフト材料A〜Dと、触媒マスターバッチとを下記表1に示す配合で調製した。
(シラングラフト材料Aの調製)
シラングラフト材料Aとして、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含む組成物を調製した。
まず、表1に示すように、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、ハイドロタルサイトを6質量部と、エポキシ化大豆油を6質量部と、ポリエチレンワックスを3質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間混練した。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。ペレット同士の粘着を防止するため、ペレットにタルク1質量部をまぶした。
続いて、得られたペレットにグラフト処理を施した。
具体的には、得られたペレットに、過酸化物をシラン化合物に溶解させたシランミクスチャーを十分に含浸させた。このとき、表1に示すように、塩素化ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物が0.5質量部、メタクリルシラン(KBM−503)が5質量部となるように、ペレットにシランミクスチャーを含浸させた。そして、シランミクスチャーを含浸させたペレットを、図2に示す単軸押出機100のホッパー101からシリンダ103a内に投入し、スクリュ102の回転によりシリンダ103aからシリンダ103bに送出した。このとき、ペレットをシリンダ103a,103bで加熱して軟化混練することにより、塩素化ポリエチレンにシラン化合物をグラフト重合させた。これにより、シラングラフト塩素化ポリエチレンを形成した。その後、シラングラフト塩素化ポリエチレンを押出機100のヘッド部104に送出し、ダイス105からシラングラフト塩素化ポリエチレンのストランド20(長さ150cm)を押し出した。そして、ストランド20を水槽106に導入して水冷し、エアワイパ107で水切りした。その後、ペレタイザ108でストランド20をペレタイズし、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むペレットを得た。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機100を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、シリンダ103aの温度を80℃、シリンダ103bの温度を200℃、ヘッド部104の温度を200℃、ダイス105の温度を200℃とした。また、スクリュ102の回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュ102をフルフライト形状とした。また、ダイス105として、穴径直径5mm、穴数3つのダイスを用いた。
続いて、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むペレットに可塑剤、酸化防止剤、カーボンブラック、難燃剤および滑剤を、表1に示す配合で添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間混練した。これにより、シラングラフト材料Aを調製した。
(シラングラフト材料Bの調製)
シラングラフト材料Bは、シラン化合物の種類をメタクリルシランからビニルシラン(KBM−1003)に変更するとともに過酸化物の配合量を適宜変更して、ビニルシランがグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを形成した以外は、シラングラフト材料Aと同様に調製した。
(組成物Cの調製)
シラングラフト材料Cとして、シラングラフトクロロプレンゴムを含む組成物を調製した。
具体的には、クロロプレンゴムに、シラン化合物以外の材料を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を80℃とし、混練時間を、安定剤等を添加し終えてから5分間混練した。その後、混練して得られたシートを5mm角の形状にペレタイズし、クロロプレンゴムを含むペレットを得た。ペレット同士の粘着を防止するため、ペレットにタルク1質量部をまぶした。
このペレットに、シラン化合物を含浸させ、シラングラフト材料Aと同様の条件でグラフト処理することにより、シラングラフトクロロプレンゴムを形成し、シラングラフト材料Cを調製した。
(シラングラフト材料Dの調製)
シラングラフト材料Dとして、シラングラフトポリエチレンを含む組成物を調製した。
具体的には、ポリエチレンのペレットにシランミクスチャーを十分に含浸させた。このとき、下記表1に示すように、ポリエチレン100質量部に対して、過酸化物が0.1質量部、シラン化合物(KBM−1003)が1.5質量部となるように、ペレットにシランミクスチャーを含浸させた。そして、シランミクスチャーを含浸させたペレットを、図2に示す単軸押出機100に投入し、グラフト処理を行うことでシラングラフトポリエチレンを形成し、そのストランドをペレタイズすることにより、シラングラフトポリエチレンを含む組成物Dを調製した。
なお、グラフト処理では、スクリュ径40mmの単軸押出機100を用いた。また、スクリュ直径Dとスクリュ長さLとの比率L/Dを25とした。また、シリンダ103aの温度を80℃、シリンダ103bの温度を200℃、ヘッド部104の温度を200℃とした。また、スクリュ102の回転数を20rpm(押出量約120g/分)、スクリュ102をフルフライト形状とした。また、ダイス105として、穴径直径5mm、穴数3つのダイスを用いた。
(触媒マスターバッチの調製)
続いて、上記組成物A〜Dとは別に、シラノール縮合触媒を含む触媒マスターバッチを調製した。
具体的には、粉末状の塩素化ポリエチレン100質量部に対して、ハイドロタルサイトを6質量部と、エポキシ化大豆油を6質量部と、ポリエチレンワックスを3質量部と、さらに、シラノール縮合触媒としてのジオクチル錫ジネオデカノエートを2質量部と、を添加し、8インチロール機を用いて混練した。このとき、ロールの表面温度を100℃とし、シラノール縮合触媒を添加してから3分間混練した。その後、混練物からなるシートを5mm角の形状にペレタイズし、触媒マスターバッチを調製した。
(化学架橋用の材料の調製)
比較材料として、シラン架橋ではなく、過酸化物による化学架橋用の組成物を調製した。
具体的には、シラングラフト材料Aの調製において、シラン化合物を添加せずにグラフト処理を施さずに、シラン化合物以外の成分を混練することにより、化学架橋用の材料を調製した。
Figure 0006424767
<実施例1>
(1)内層材料および外層材料の調製
まず、下記表2に示すように、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aに触媒マスターバッチを添加してドライブレンドすることにより、内層材料を調製した。なお、触媒マスターバッチの添加量は、シラングラフト材料Aの塩素化ポリエチレンに対して20分の1の質量分とした。
また、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aと、シラングラフトポリエチレンを含むシラングラフト材料Cとを、塩素化ポリエチレンとポリエチレンとの比率が60:40となるように、質量比率105.48:40.64で混合することにより、外層材料を調製した。
Figure 0006424767
(2)ケーブルの作製
次に、上記で調製した内層材料および外層材料を用いて、ケーブルを作製した。
具体的には、図3に示すような単軸押出機100を用いて、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)からなる絶縁層12が導体11の表面に形成されたEPゴム絶縁体コア(導体断面積8mm、ゴム絶縁体厚さ1mm、外径3.7mm)の外周に内層材料を厚さが1.5mmとなるように押出被覆した後、外層材料を厚さが0.5mmとなるように押出被覆した。その後、温度60℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に24時間保管して、内層材料および外層材料をシラン架橋させることにより、内層14および外層15を有するシース13を備えるケーブル1を作製した。
なお、ケーブル1の作製では、内層材料の押出に、スクリュ径75mm、比率L/D20の単軸押出機を、外層材料の押出に、スクリュ径40mm、比率L/D20の単軸押出機を、それぞれ用いた。
また、内層材料であるシラングラフト塩素化ポリエチレンの押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を100℃−110℃−115℃−120℃−130℃、ネック109の温度を130℃、クロスヘッド部110の温度を130℃、ダイス105の温度を130℃とした。スクリュ102の回転数を15rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
また、外層材料の押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を100℃−110℃−115℃−120℃−130℃、ネック109の温度を130℃とした。スクリュ102の回転数を25rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
(3)評価方法
作製したケーブルを、以下の方法により評価した。
(架橋処理前の硬度)
未架橋のシースの変形度合いを評価するため、外層の架橋処理前の硬度を測定した。具体的には、JIS Aタイプの硬度計を用いて、架橋処理前の外層の硬度、つまり外層材料の硬度を測定し、その値が80以上であれば耐変形性に優れ、架橋処理前に巻き取ったとしても変形する可能性が低いものと判断して合格「○」、80未満であれば変形する可能性が高いものとして不合格「×」とした。
(引張伸び)
架橋処理後のシースの引張伸びを評価するため、引張試験を行った。具体的には、架橋処理後のケーブルからシースを剥離し、剥離したシースを6号ダンベルで打ち抜いて試験サンプルを作製し、試験サンプルをショッパー試験機にて引張速度200mm/min、標線間長さ20mmで引っ張ったときの破断時伸び率を測定した。本実施例では、伸びが350%以上であれば合格「○」、300%未満であれば不合格「×」とした。
(耐油性)
シースの耐油性を評価するため、引張伸びと同様に試験サンプルを作製し、その試験サンプルをIRM902号試験油に100℃、24時間の条件で浸漬させた。浸漬前後の試験サンプルについて、引張伸びと同様に引張試験を行い、下記式に示すように、破断引張強さの浸漬後の残率を算出した。この残率が65%以上であれば、十分な耐油性を有しているものとして優「◎」、60%以上65%未満であれば、良「○」、60%未満であれば不可「×」とした。
(破断引張強さの浸漬後残率)=(浸漬後の試験サンプルの引張強さ/浸漬前の試験サンプルの引張強さ)×100
(層間の密着性)
内層および外層の密着性は、剥離試験を行い、層間の破壊状態を観察することにより評価した。具体的には、まず、架橋処理後のシースを3cmの長さに切断し、層間に外部から約3mmの長さの切り込みを入れる。続いて、内層を固定した後、外層をペンチでつまみ、約2cmの長さとなるまで剥離させた。内層および外層を剥離できなかった場合(剥離の途中で外層が破断した場合)、密着性に優れるものとして優「◎」、剥離はできるものの、目視および手触りにて内層に外層が付着したと確認された場合、密着性が十分であるとして良「○」、界面で内層および外層がそれぞれ剥ぎ取られた場合、密着性が不十分として不可「×」とした。
(架橋設備の必要性)
本実施例では、架橋のための加熱条件が100℃未満と低い場合や特に架橋設備を必要としない場合、低コストとして合格「○」、反対に加熱条件が高温であったり、特別な架橋設備が必要となったりする場合、高コストであるとして不合格「×」とした。
(4)評価結果
評価結果を下記表3に示す。表3に示すように、実施例1では、架橋処理前の硬度が84と高く、架橋処理前にケーブルをドラム状に巻き取ったとしても、ケーブル表面(外層)に潰れ等の変形が生じる可能性が低いことが確認された。また、架橋処理後のシースの引張強さが440%、耐油試験後の引張強さ残率が72%と、いずれも高く、機械特性や耐油性に優れることが確認された。また、層間での剥離試験によると、外層が破断してしまい、剥離させることが困難であることから、内層と外層との密着性に優れていることが確認された。また、実施例1では、水分でシラン架橋させることができたため、架橋の際に加熱条件を高温とする必要がなく、また電子線照射などの特別な設備を必要としないため、低コストであることが分かった。
Figure 0006424767
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ内層材料および外層材料を用いたが、内層材料および外層材料を同時にシラン架橋させるのではなく、内層材料および外層材料をそれぞれ、押出被覆した直後にシラン架橋させ、別々にシラン架橋させた以外は実施例1と同様にケーブルを作製した。
実施例2では、層間でのシラン架橋が十分に進まず、実施例1ほど高い密着性を得られなかったものの、十分な密着性を確保できることが確認された。それ以外の耐油性や機械特性などの評価については、実施例1と同様に良好であることが確認された。
<実施例3,4>
実施例3,4では、内層材料を変更した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
具体的には、実施例3では、内層材料として、ビニルシランがグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Bを用いた。実施例3では、実施例1ほど高い密着性が得られなかったものの、十分な密着性を確保できることが確認された。この理由としては、以下のように推測される。すなわち、メタクリルシランによれば、ビニルシランと比べて塩素化ポリエチレンに対する相溶性が高く、均質にグラフト共重合できるので、局所的にシラン化合物が少なく、密着が弱くなるような部分を低減することができる。
実施例4では、内層材料として、シラングラフトクロロプレンゴムを含むシラングラフト材料Cを用いた。実施例4では、実施例1と同様に評価結果が良好であることが確認された。
なお、実施例4において、内層材料であるシラングラフトクロロプレンゴムの押出条件は以下のようにした。シリンダ103aからシリンダ103bの温度を80℃−80℃−85℃−90℃−100℃、ネック109の温度を100℃、クロスヘッド部110の温度を100℃、ダイス105の温度を100℃とした。スクリュ102の回転数を15rpm、スクリュ102の形状をフルフライト形状とした。ケーブル1の引取速度を10m/minとした。
<比較例1>
比較例1では、内層材料として、シラングラフト材料Aから、化学架橋用の材料に変更してケーブルを作製した。具体的には、まず、化学架橋用の材料をEPゴム絶縁体コアの外周上に押出被覆し、加圧蒸気で封入され、180℃と高温に加熱された加熱管に挿通させ、内層材料を化学架橋させて内層を形成した。その後、実施例1と同じ外層材料を内層の外周上に押出被覆してシラン架橋させ、外層を形成することにより、ケーブルを作製した。
比較例1では、内層材料と外層材料とで架橋方式が異なるためか、層間での架橋が十分に進まず、高い密着性を得られないことが確認された。また、内層を化学架橋させるために高温の加熱処理を施す必要があるため、実施例と比べてコストが高くなることが確認された。
<比較例2>
比較例2では、実施例1で用いた、シラングラフト材料Aを含む内層材料を押出被覆して、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例2では、シラングラフトポリエチレンを含まず、シラングラフト塩素化ポリエチレンのみを含む材料でシースを構成したため、加熱処理前の硬度が70と低く、ドラム状に巻き取ったときにシース表面が変形する可能性が高いことが確認された。なお、比較例2では、単層構造のシースを形成したため、層間の密着性については試験を行っていない。
比較例3では、実施例4で用いた、シラングラフト材料Cを含む内層材料を押出被覆して、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例3では、比較例2と同様に、シラングラフトポリエチレンを含まず、シラングラフトクロロプレンゴムのみを含む材料でシースを構成したため、加熱処理前の硬度が53と低く、ドラム状に巻き取ったときにシース表面が変形する可能性が高いことが確認された。なお、比較例3では、単層構造のシースを形成したため、層間の密着性については試験を行っていない。
<比較例4>
比較例4では、化学架橋用の材料を押出被覆し、比較例1と同様の条件で加熱処理して化学架橋させることにより、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例4では、耐油性や機械特性などの諸特性については良好であることが確認されたが、化学架橋させるために高温で加熱処理する必要があるため、高コストであることが確認された。
<比較例5>
比較例5では、実施例1で用いた、シラングラフト塩素化ポリエチレンを含むシラングラフト材料Aと、シラングラフトポリエチレンを含むシラングラフト材料Cとを、所定の比率で含む外層材料をEPゴム絶縁体コアの外周上に押出被覆して、単層のシースを形成した以外は、実施例1と同様にケーブルを作製した。
比較例5では、シラングラフトポリエチレンを配合してシースを形成したため、架橋処理前にケーブルをドラム状に巻き取ったとしても、ケーブル表面(外層)に潰れ等の変形が生じる可能性が低いことが確認された。しかし、シースにおいて、耐油性に劣るシラングラフトポリエチレンの比率が多くなったため、シースの耐油性が低下し、高い耐油性を維持できないことが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記塩素系ポリマ(a)が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである。
[付記3]
付記1又は2の絶縁電線において、好ましくは、
前記シラン化合物がメタクリル基を有する。
[付記4]
本発明の他の態様によれば、
導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブルが提供される。
1 ケーブル
11 導体
12 絶縁層
13 シース
14 内層
15 外層

Claims (4)

  1. 導体と、
    前記導体の外周上に配置される絶縁層と、を備え、
    前記絶縁層は、内層および外層を含む積層構造を有し、
    前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
    前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
    前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、絶縁電線。
  2. 前記塩素系ポリマ(a)が、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンの少なくとも1つである、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記シラン化合物がメタクリル基を有する、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 導体と、前記導体の外周上に配置される絶縁層と、前記絶縁層の外周上に配置されるシースとを備え、
    前記シースは、内層および外層を含む積層構造を有し、
    前記内層は、塩素系ポリマ(a)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素系ポリマ(A)を含む内層材料からなり、
    前記外層は、塩素化ポリエチレン(b)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフト塩素化ポリエチレン(B)と、ポリエチレン(c)にシラン化合物がグラフト共重合されたシラングラフトポリエチレン(C)と、を含む外層材料からなり、
    前記内層および前記外層は、一体的にシラン架橋されるように構成される、ケーブル。
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