最初に、本発明が前提としているマニュアル式のロールヘミング加工技術の概略を図1,2に基づいて説明する。
図1は例えば自動車のホイールアーチ部のような円弧状部でのロールヘミング加工を司る装置の概略平面説明図を、図2は図1のb−b線に沿った拡大断面説明図をそれぞれ示している。また、図3は上記装置によるロールヘミング加工の工程説明図である。
ロールヘミング加工は、一般的には、図3の(A)に示すようにアウタパネル1とインナパネル2とを重ね合わせた状態で、アウタパネル1の端末部に予め直立形成されているヘミングフランジ部1aをプリへミングローラ3により45°程度まで折り曲げる縁曲げとしての予備曲げ(プリヘミング)と、同図(B)に示すように、予備曲げ後のヘミングフランジ部1aをヘミングローラ4によりアウタパネル1の一般部に重合するまで折り返していわゆるクリンチ状態とする縁曲げとしての本曲げ(本ヘミング)と、の2工程に分けて行われる。そして、図1,2に示したロールヘミング加工装置は図3の(B)の予備曲げ(プリヘミング)を施す場合の例を示している。
図1に示すロールヘミング加工装置は、水平なテーブル5の上に下型に相当するヘミングダイ6が固定配置されていて、このヘミングダイ6はヘミング加工対象となるアウタパネル1の円弧状部の曲率に合致する形状のものとして形成されている。ヘミングダイ6は、図2に示すように、上壁部6aと縦壁部6bとからなる断面略アングル状のものであり、その上壁部6aの上にヘミング加工対象となるアウタパネル1が位置決め載置されることになる。その上で、そのアウタパネル1はインナパネル2と共に図示しないパッドあるいはクランパーによりヘミングダイ6に押し付けられて加圧拘束されることになる。
上記ヘミングダイ6に近接してローラ加工ユニット7を設けてある。このローラ加工ユニット7は、後述するように、ヘミングダイ6と協働して直接ロールヘミング加工を施すものであり、長尺なアーム部材8の先端に首振り旋回可能に装着してあるとともに、アーム部材8は支持体としてのスライダ9に図示外のリニアガイドを介して長手方向に進退移動可能(スライド可能)に支持されている。また、スライダ9に設けられた図示しないナット部材とそれに螺合するスクリューシャフト10とでボールねじ11が構成されていて、スクリューシャフト10はテーブル5から立設された支持ブラケット12に回転可能に両持ち支持されている。
さらに、スクリューシャフト10の一端には異形の嵌合接続部10aが形成されていて、この嵌合接続部10aに対し例えば回転駆動手段としての手動式のハンドル13が嵌合接続される。これにより、ハンドル13を操作してスクリューシャフト10を正転または逆転駆動させれば、それに応じてスライダ9に直線的な送りが与えられて、スライダ9がスクリューシャフト10の軸心方向にスライド移動するようになっている。
なお、上記ハンドル13に代えて、スクリューシャフト10側の嵌合接続部10aにインパクトレンチまたはナットランナーのソケット部を嵌合させて、それらのインパクトレンチまたはナットランナーの駆動力を用いてスクリューシャフト10を回転させるようにしても良い。さらに、スクリューシャフト10の嵌合接続部10aに電動モータあるいは油空圧式モータの回転軸を接続して、モータ駆動にてスクリューシャフト10を回転させるようにしても良い。
上記ボールねじ11の配置形態については、ヘミングダイ6が、加工対象となるアウタパネル1のヘミング加工部位の円弧状部の曲率と同じ曲率を有しているものとすれば、ヘミングダイ6が描く所定曲率の円弧の弦とほぼ並行にスクリューシャフト10が配置されている。そして、そのスクリューシャフト10に螺合するナット部材がスライダ9に設けられているとともに、平面視にてスクリューシャフト10と直交する長尺なアーム部材8がスライダ9にスライド可能に、すなわちヘミングダイ6に対して進退移動可能に軸受支持されている。なお、図1の例では、アーム部材8はヘミングダイ6の長手方向中央部においてはその法線方向を指向していることになる。
アーム部材8の先端部には、図2に示すように、ボールジョイント(球面継手)14を介してローラ加工ユニット7を首振り旋回可能に支持させてある。ローラ加工ユニット7は、後述するプリへミングローラ18を回転可能に軸受支持している台座部15の下側に、エクステンションブロック16と変形チャンネル状のガイドヨーク部17を延長形成したものである。エクステンションブロック16は先に説明したボールジョイント14との結合部となっているとともに、ガイドヨーク部17はヘミングダイ6の縦壁部6bを跨ぐかたちでこれを受容して、三方向からヘミングダイ6の縦壁部6bを抱持している。
台座部15には縁曲げローラとしてプリへミング加工のための円錐台状のプリへミングローラ18が例えば角柱状の軸体19を介して回転可能に軸受支持されているとともに、ガイドヨーク部17のうちヘミングダイ6の縦壁部6bを挟んで上下方向でプリへミングローラ18と対向する位置にはバックアップローラ20が回転可能に支持されている。なお、バックアップローラ20はヘミングダイ6の長手方向に前後一対のものとして配置されていて、ヘミングダイ6における縦壁部6bの下端面を案内面として転動することになる。また、プリへミングローラ18とバックアップローラ20はその回転中心が互いに平行となるように設定されている。
そして、プリへミングローラ18とバックアップローラ20との間に、予めヘミングフランジ部1a(図3参照)が直立形成されているアウタパネル1をヘミングダイ6とともに挟み込むことで、プリへミングローラ18によるプリへミング加工(ロールヘミング加工)が施されることになるので、プリへミングローラ18とバックアップローラ20との相対距離、すなわちプリへミングローラ18とバックアップローラ20との回転中心間距離は、加工完了時のヘミングフランジ部1aの曲げ度合いに応じて予め設定されている。
また、ガイドヨーク部17には、ヘミングダイ6の縦壁部6bを厚み方向の両側(バックアップローラ20の回転中心方向の両側)から挟み込む案内部材としての複数のガイドローラ21,22が回転可能に設けられている。ここでは、縦壁部6bの背面側に一対のガイドローラ21をヘミングダイの長手方向に並べて配置するとともに、縦壁部6bの前面側に上下一対のガイドローラ22を同じくヘミングダイの長手方向に二組並べて配置してある。これにより、プリへミングローラ18を支持しているローラ加工ユニット7は、ヘミングダイ6に対しバックアップローラ20によって上下方向位置が拘束されているとともに、複数のガイドローラ20,21によって図2の左右方向での位置が拘束されている。なお、案内部材としてのガイドローラ21,22に代えて、ニードル、ボール等の他の転動体のほか、摩擦係数の小さな摺動部材を用いても良い。
このように、ローラ加工ユニット7側のバックアップローラ20および複数のガイドローラ21,22が実質的にヘミングダイ6の縦壁部6bを抱持しているので、図1のボールねじ11のスクリューシャフト10の軸心方向に沿って直線的な送り、例えば図1のスクリューシャフト10の左端部から右端部側に向かって直線的な送りを付与すれば、ローラ加工ユニット7は自律的に首振り旋回しながらヘミングダイ6の曲率に倣ってそのヘミングダイ6の長手方向に移動することになる。そして、ローラ加工ユニット7の移動に伴って、プリへミングローラ18がアウタパネル1側のヘミングフランジ部1aに沿って転動するとともに、ヘミングダイ6と協働して、アウタパネル1側のヘミングフランジ部1aに縁曲げとしてプリへミング加工を施すことになる。
この場合において、図2に示すように、複数のローラ20,21,22を有するローラ加工ユニット7が断面アングル状のヘミングダイ6を抱持していて、機械的な倣い作用によってローラ加工ユニット7を首振り旋回動作させながらアウタパネル1と相対移動させるようにしているので、それによってヘミング加工力が発生し、そのヘミング加工力はプリヘミングローラ18とバックアップローラ20とに挟持されたダイ6が負担することになる。そのため、例えば図1のハンドル13を用いてマニュアル操作にてヘミング加工を施す場合であっても、ハンドル13の回転操作力はきわめて小さなもので済むことになる。
図4以下の図面は本発明に係るロールヘミング加工装置を実施するためのより具体的な形態を示し、自動車用のドアパネルにヘミング加工(予備曲げとしてのプリヘミング加工または本曲げとしてのヘミング加工)を施す場合の例を示している。そして、図4では図2に示したローラ加工ユニット7と同等のローラ加工ユニット27を用いることを前提に構築された設備構成とっている。
図4の設備構成では、汎用加工部23とストレージ部24とに分けられていて、汎用加工部23では、水平なベース25を母体としてその上に後述するローラ加工ユニット27のほか、大径のスラストベアリングの如き軸受部材26を介して旋回台28が水平面内で旋回可能に設けられている。そして、ベース25上の旋回台28に隣接して、図2のものと基本構造を同じくするローラ加工ユニット27、アーム部材8およびボールねじ11等を有するローラ加工機構部29が設けられている。
ストレージ部24には、車種毎に相違するドア形状に応じた複数のヘミング加工用のヘミングダイ、例えばA車種〜D車種用のヘミングダイ30A〜30Dがストレージされていて、複数のヘミングダイ30A〜30Dのなかからヘミング加工に必要ないずれか一つのヘミングダイを選択して旋回台28上に移載するようになっている。旋回台28上には位置決め手段として複数のロケートピン31が、各々のヘミングダイ30A〜30D側には位置決め手段として各ロケートピン31に対応する複数のロケート穴32がそれぞれ形成されていて、いずれのヘミングダイ30A〜30Dを旋回台28上に移載した場合にも、ロケートピン31とロケート穴32との嵌合によって旋回台28に対して位置決めすることができるようになっている。なお、汎用加工部23とストレージ部24との間でのヘミングダイ30A〜30Dの入れ替えは、例えばホイストまたはクレーン等の助力装置を用いて行うものとする。なお、いずれのヘミングダイ30A〜30Dについても、ヘミング加工に関与する周縁部については、図2と同様に断面略アングル状のものとして形成されている。
ローラ加工機構部29におけるボールねじ11、スライダ9およびアーム部材8は図1のものと同様であって、ローラ加工ユニット27のみが図2の構造を基本としつつも当該図2のものと異なっていて、その詳細を図5に示している。
図5において、図2と比較すると明らかなように、台座部15やガイドヨーク部17と母体としてこれらに組み付けられたヘミングローラ18、バックアップローラ20および複数のガイドローラ21,22にて実質的にヘミングダイ6の縦壁部6bを抱持することができる点では図2のものと同一であるものの、台座部15とガイドヨーク部17とを切り離して両者を接近離間可能に構成した点で異なっていて、そのために台座部15を昇降可能に案内支持するスライドガイド機構33が設けられている。
より詳しくは、図5に示すように、背板34と上下一対の支持板35,36とにより側面視略コ字状をなすユニット本体としてのガイドブラケット37が形成されている。このガイドブラケット37に上下方向を指向する一対のガイドロッド38が設けられていて、これらのガイドロッド38にローラ加工ユニット27の台座部15、すなわちプリヘミングローラ18を支持している台座部15が昇降可能に案内支持されている。他方、台座部15から独立したガイドヨーク部17、すなわりプリヘミングローラ18以外の複数のバックアップローラ20や複数のガイドローラ21,22を支持しているガイドヨーク部17はガイドブラケット37における下側の支持板36に連結支持されている。これにより、ローラ加工ユニット27では、プリヘミングローラ18を支持している台座部15と、プリヘミングローラ18以外のバックアップローラ20やガイドローラ21,22を支持しているガイドヨーク部17とは、上下方向で接近離間動作可能となっている。なお、スライドガイド機構33におけるガイドブラケット37の背板34の背面側には、図2に示したようにアーム部材8との連結部となるボールジョイント14が設けられる。
また、ガイドブラケット37にはクランプレバー39aを操作部とするトグルクランプ機構39が設けられていて、このトグルクランプ機構39の一部が台座部15の一部に連結されている。そして、図5に示すように、クランプレバー39aがアンクランプ位置P1にある状態では、一対のガイドロッド38に案内支持されている台座部15が上昇することでガイドヨーク部17から離間してアンクランプ状態にある一方、図6に示すように、クランプレバー39aがクランプ位置P2にある状態では、一対のガイドロッド38に案内支持されている台座部15が下降することでガイドヨーク部17に接近してクランプ状態となり、トグルクランプ機構39の特性としてそのクランプ状態を自己保持することができるようになっている。
つまり、ローラ加工ユニット27は、プリヘミングローラ18を支持している台座部15と、プリヘミングローラ18以外のバックアップローラ20やガイドローラ21,22を支持しているガイドヨーク部17とが接近離間可能、すなわちクランプ,アンクランプ動作可能であることから、図4のいずれのヘミングダイ30A〜30Dに対してもその脱着が可能となっている。
言い換えるならば、先に説明したように、それぞれのヘミングダイ30A〜30Dのうちヘミング加工に直接関与する部分が図2のものと同様に断面略アングル状のものとして形成されていることから、スライドガイド機構33に支持されているローラ加工ユニット27をアンクランプ状態とした上で図2に示したボールジョイント14の自由度を併用することで、いずれのヘミングダイ30A〜30Dに対してもその脱着が可能となっいる。そして、ローラ加工ユニット27を図4の旋回台28上に位置決めされているいずれかのヘミングダイ30A〜30Dに装着した上でクランプ状態とするならば、図2のものと同様にプリヘミングローラ18やバックアップローラ20さらにはガイドローラ21,22が断面アングル状のヘミングダイ30A〜30Dのいずれかを抱持するかたちとなり、なお且つトグルクランプ機構39の特性としてそのクランプ状態を自己保持することができる。そして、このクランプ状態においては、プリヘミングローラ18を支持している台座部15と、プリヘミングローラ18以外のバックアップローラ20やガイドローラ21,22を支持しているガイドヨーク部17との相対位置関係は、図2に示したものと何ら異なるところがないことになる。
図7は台座部15におけるプリヘミングローラ18の支持形態の具体例を示していて、ここでは台座部15に対しプリヘミングローラ18がローラアダプタ40を介して脱着可能な構造となっている。
図7に示すように、台座部15には正面視にて略L字状をなすホルダ41が固定されているとともに、ホルダ41の張り出し部41aと対向するようにして矩形状の着座基準凹部42が形成されている。そして、この着座基準凹部42に対し後述するローラアダプタ40が着座するようにして、当該着座基準凹部42とホルダ41の張り出し部41aとの対向間隙内にローラアダプタ40が挿入される。
他方、プリンへミングローラ18は角柱状の軸体19の先端に回転自在に装着されていて、その軸体19が高さ位置調整用のシムプレート43と共にローラアダプタ40に止めねじ44にて固定支持されている。ローラアダプタ40は正面視にて例えば変形コ字状をなしていて、その高さがホルダ41側の着座基準凹部42とホルダ41の張り出し部41aとの対向間隙内に嵌合し得る大きさに設定されているとともに、着座フランジ部40aがホルダ41側の着座基準凹部42に着座嵌合するように設定されている。
そして、ホルダ41側の着座基準凹部42とローラアダプタ40の着座フランジ部40aにそれぞれ位置決め穴45が形成されていることから、着座基準凹部42に着座フランジ部40aが着座するようにホルダ41にローラアダプタ40を挿入した上で、着座基準凹部42および着座フランジ部40aの双方に形成された位置決め穴45に共通の位置決めピン46を挿入することで、ホルダ41に対するローラアダプタ40の位置決め固定、ひいてはホルダ41に対して、ローラアダプタ40に支持されているプリヘミングローラ18が位置決め固定されるようになっている。
ここで、図7に示すように、ローラアダプタ40を併用して、ホルダ41を有する台座部15に対しプリへミングローラ18を脱着可能な位置決め固定構造としているのは、プリへミングローラ18の交換を容易にするためである。そして、台座部15にローラアダプタ40を嵌合保持させた状態では、ホルダ41側の張り出し部41aと着座基準凹部42とによってローラホルダ40の上下方向位置が規制され、着座基準凹部42の周壁面のほか、位置決め穴45と位置決めピン46との嵌合によって前後左右方向の位置が規制されることになるので、簡易な位置決め固定構造でありながらもプリへミング加工に十分に対抗することができるだけの強度および剛性が得られることになる。
したがって、本実施の形態によれば、図4のほか図8,9に示すように、旋回台28の上にいずれかの車種に応じたヘミングダイ、例えばA車種用のヘミングダイ30Aを位置決め載置する。さらに、そのヘミングダイ30Aの上に加工対象となるドアパネルとして、ドアアウタパネルDaを下側にしてその上にドアインナパネルDbを重ね合わせたものを位置決めする。この場合において、ドアアウタパネルDaのドア本体のうちヘミング加工が不要なドアウエスト部を除いた残り三辺部のうちいずれかの一辺部が加工機構部29と正対するようにドアアウタパネルDaを位置決めするものとする。
なお、ヘミングダイ30A上に位置決めされたドアアウタパネルDaはクランパーあるいはパッド等にて下向きに加圧拘束されることになるが、図8,9ではクランパー等の手段を図示省略している。
続いて、ボールねじ11のスクリューシャフト10を図1と同様のハンドル13等にて回転操作してそのスクリューシャフト10に螺合しているスライダ9をスクリューシャフト10の長手方向に適宜移動させて、当該長手方向でのローラ加工ユニット27の位置を定める。これにより、ボールねじ11は、支持体としてのスライダ9の位置を調整する位置調整手段として機能する。
さらに、アーム部材8の長手方向での自由度を使って、ドアアウタパネルDaが位置決めされているヘミングダイ30Aに対してローラ加工ユニット27を前進動作させる。そして、図5に示すように、ローラ加工ユニット27をアンクランプ状態とした状態で、図2のボールジョイント14の自由度を併用しながらローラ加工ユニット27をヘミングダイ30Aに装着する。つまり、図2に示すように、台座部15に支持されているプリヘミングローラ18や、ガイドヨーク部17に支持されているバックアップローラ20およびガイドローラ21,22により、旋回台28上のヘミングダイ30Aのうち図2のような断面アングル状の部分を挟み込み、その状態でクランプレバー39aを操作して図6のクランプ状態とする。
このクランプ状態は図2の状態と同じ状態にほかならず、ローラ加工ユニット27の台座部15に支持されているプリヘミングローラ18や、ガイドヨーク部17に支持されているバックアップローラ20およびガイドローラ21,22により、旋回台28上のヘミングダイ30Aのうち図2のような断面アングル状の部分を抱持したかたちとなる。
なお、ローラ加工ユニット27のクランプ状態においては、図2に示すように、プリヘミングローラ18とドアアウタパネルDa側のヘミングフランジ部F(図2のヘミングフランジ部1a)の一部が干渉することになるが、ヘミングフランジ部Fは遅かれ速かれヘミング加工が施されることになるので、何ら問題となることはない。
こうして、旋回台28上のヘミングダイ30Aとローラ加工ユニット27との相対位置決めが完了したならば、作業者により手作業にて旋回台28上のヘミングダイ30Aをそのヘミングダイ30A上に位置決めされているドアパネルと共にゆっくりと旋回させる。このヘミングダイ30Aの旋回動作に伴い、ローラ加工ユニット27はヘミングダイ30Aの形状に忠実に追従するように倣って相対移動し、それに伴ってドアアウタパネルDa側のヘミングフランジ部Fに対し図2と同じ形態をもってヘミング加工が施されることになる。そして、ドアアウタパネルDaの一辺部のほぼ全長にわたってローラ加工ユニット27との相対移動がなされたならば、それをもって当該一辺部のヘミング加工が終了する。
この場合において、ローラ加工ユニット27がヘミングダイ30Aの形状に追従する際に必要となる上下方向の自由度および首振り旋回自由度は図2に示したボールジョイント14によって得られ、また、ローラ加工ユニット27がヘミングダイ30Aに対し接近離間する方向の自由度はアーム部材8のスライド自由度によって得られる。
さらに、先に述べたように、複数のローラを有するローラ加工ユニット27が断面アングル状のヘミングダイ30Aの一部を抱持していて、機械的な倣い作用によってローラ加工ユニット27を追従動作させながらドアアウタパネルDaと相対移動させるようにしているので、それによってヘミング加工力が発生し、そのヘミング加工力はプリヘミングローラ18とバックアップローラ20とに挟持されたヘミングダイ30Aが負担することになる。そのため、仮に旋回台28の旋回動作を作業者の手作業にて行ったとしても、その旋回のための操作力はきわめて小さいもので済むことになる。
上記のようにドアアウタパネルDaの特定の一辺部についてのヘミング加工が終了したならば、クランプレバー39aをアンクランプ操作して、図6のクランプ状態から図5のアンクランプ状態に一旦戻して、ローラ加工ユニット27をヘミングダイ30Aから離脱させる。
そして、旋回台28をヘミングダイ30Aごと旋回動作させて、ドアアウタパネルDaのうちヘミング加工が施されていない他の一辺部をローラ加工ユニット27と正対する位置に割り出すと共に、再度ローラ加工ユニット27をヘミングダイ30Aに装着して、以降は上記と同様の操作を繰り返すことになる。
ここで、図7に示すように、プリヘミングローラ18の支持構造として、ローラアダプタ40による脱着可能な構造としているのは、プリヘミングローラ18の積極的な交換を容易にするためであることは先に述べた。したがって、図7の予備曲げ用のプリへミングローラ18に代えて、その予備曲げに続く本曲げ用のヘミングローラ(図3の(B)に示したものと同等のもの)をローラアダプタ40を用いて台座部15に装着することで、本曲げとしてのローラヘミング加工にも無理なく対応することができる。
また、異なる車種のドアパネルについてのヘミング加工を行う場合には、図4における汎用加工部23の旋回台28とストレージ部24との間でヘミングダイ30B〜30Dのいずれかとの入れ替えを行った上で、上記と同様の操作を行うものとする。
このように本実施の形態によれば、一見退歩的なヘミング加工技術でありながらも、ロボットのような高機能且つ高価な設備を用いることなく、きわめて簡易な設備構成でヘミング加工を行うことができるので、設備費の大幅な低廉化が図れ、特にドアパネルの少品種極少量生産の場合にはきわめて有効である。
図10は本発明に係るロールヘミング加工装置の第2の実施の形態を示す図で、先に説明した図5,6と共通する部分には同一符号を付してある。
この第2の実施の形態では、図10に示すように、ローラ加工ユニット27のスライド案内機構33に案内支持されている台座部15を昇降動作させる手段として、図5,6のトグルクランプ機構39に代えて、回転式の操作ハンドル47を用いたものである。
この第2の実施の形態では、スライドガイド機構33のボス部33aに螺合するねじ軸47aの一端が操作ハンドル47の中心部に同軸一体に連結されているとともに、ねじ軸47aの他端が台座部15に回転可能に連結されていて、操作ハンドル47を回転操作することで、スライドガイド機構33に案内支持されている台座部15が昇降動作、つまり、台座部15に支持されているプリミングローラ18が、ガイドヨーク部17に支持されているその他のガイドローラ20,21,22に対して接近動作することが可能となっている。そのため、先の第1の実施の形態と同様に、ヘミングダイ30A〜30Dに対するローラ加工ユニット27の脱着を手作業にて行うことができる。
したがって、この第2の実施の形態においても、先の第1の実施の形態と作用効果が得られることになる。
図11は本発明に係るロールヘミング加工装置の第3の実施の形態を示す図で、先に説明した図8と共通する部分には同一符号を付してある。
この第3の実施の形態では、図11に示すように、ドアパネルの種類によっては、その輪郭形状の大小や、外板面となるドアアウタパネルDaの曲率の度合いに大小があることに着目し、加工機構部29により多くの自由度を持たせるように考慮したものである。
詳しくは、図11の(A)に示すように、旋回台28に対しローラ加工ユニット27が接近離間する方向での自由度をもつ水平方向リニアガイド機構48と、ローラ加工ユニット27の上下方向での自由度をもつ上下方向リニアガイド機構49とを設けることで、ベース25上に直交二軸のスライドガイド機構50を形成し、上下方向リニアガイド機構49側にスライダ9を支持させたものである。なお、図11では図示省略しているが、同図のボールねじ11のスクリューシャフト10も上下方向リニアガイド機構49に両持ち支持される。
この第3の実施の形態によれば、ローラ加工ユニット27の位置調整に際して、水平方向リニアガイド機構48と上下方向リニアガイド機構49のそれぞれの自由度を使うことができるので、図11の(A)のほか同図の(B)に示すように、加工対象となるドアパネルに、輪郭形状の大小や、外板面となるドアアウタパネルDaの曲率の度合いの大小があったとしても、それらの仕様違いに無理なく対応することができるようになる。
ここで、ローラ加工ユニット27の首振り旋回自由度を得るにあたり、図2に示したボールジョイント14の自由度だけでは不足気味となる可能性がある。そこで、図11に示したアーム部材8とスライダ9との間に、スクリューシャフト10の軸心周りの回転自由度、すなわちスクリューシャフト10の軸心周りにアーム部材が上下方向に揺動できるような自由度を持たせるようにしても良い。
また、例えば図11の(A)または(B)の形態でのローラヘミング加工において、一回のローラヘミング加工動作のなかでローラ加工ユニット27に要求される上下方向の変位が極端に大きい場合には、ヘミングダイ30Aを旋回台28ごと旋回動作させたとしても、倣い動作をもってローラ加工ユニット27をヘミングダイ30Aに忠実に追従させることができなくなる可能性がある。そのような場合には、旋回台28の旋回動作と併せて、図1に示したハンドル13の回転操作により、スライダ9にスクリューシャフト10の軸心方向の送りを付与することが望ましい。
図12は本発明に係るロールヘミング加工装置の第4の実施の形態を示す図で、先に説明した図8と共通する部分には同一符号を付してある。
この第4の実施の形態では、ベース25上の旋回台28を挟んで2台の加工機構部29を対向配置し、ドアパネルのヘミング加工部位に応じて2台の加工機構部29を選択的に使い分けるようにしたものである。この第4の実施の形態では、加工機構部29が1台である場合に比べて、旋回台28の旋回量を少なくすることができる利点がある。なお、図12に示したような2台の加工機構部29の配置形態は、直交二軸のスライドガイド機構50を有しない図11に示したローラヘミング加工装置にも同様に適用することができる。
ここで、上記各実施の形態では、ローラ加工ユニット27としてプリンへミング加工(予備曲げ)のためのプリへミングローラ18を備えている場合について説明したが、先にも述べたように、プリへミングローラ18に代えて、本曲げのためのヘミング加工用のヘミングローラを備えている場合にも本発明を適用することができる。さらに、上記各実施の形態では、ドアパネルのヘミング加工について例示しているが、本発明はドアパネル以外の同種のカバーパネル(開閉体)類のヘミング加工のほか、自動車用カバーパネル類以外の同種のヘミング加工にも同様に適用することができるものである。