JP6419623B2 - 防虫用薬剤揮散具 - Google Patents
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Description
従って、保持体を収納する収納容器についてヒンジ構造や嵌合構造などが必要になることから、構造が複雑になり、また部品点数も多くなってしまうという課題がある。また、常温揮散性薬剤を保持体から効率よく揮散させるために保持体を収納容器の内面にできるだけ接触させない状態で収納しなければならないことから、収納後の薬剤揮散具の厚みが自ずと厚くなってしまうという問題もある。
このようなインサート成型タイプに薬剤揮散具は保持体と容器とが一体化していることから、上記した収納タイプのように複雑な構造を必要とせず、また薬剤揮散具の厚みを薄くすることができるという利点がある。
ここで、板紙を保持体の担体として採用する場合には、サイズの大きい板紙を所定の大きさに切断して用いるのが通常となっている。そして、このような板紙においては、製造する際のプレス処理などによって表裏面については各繊維間の細孔がある程度塞がれた状態となっているが、端部については後日所定の大きさに切断されて使用されることから、切断面が言わばむき出しの状態(表裏面のような細孔が塞がれた状態ではない状態)となっている。
従って、係る端部(特に切断面)については、表裏面に比べて薬剤の揮散が激しい状態となってしまうのである。そしてその結果、保持体の部位によって薬剤の揮散速度が異なってしまうことから、防虫効果を一定の状態で維持することが困難になってしまうという問題が発生するのである。すなわち、薬剤が端部(特に切断面)から一気に放出されてしまうことになり、薬剤の防虫性能を表裏面からの揮散速度を基準に設定すると、先に端部から薬剤が揮散されてしまうことになり、逆に端部からの揮散速度を基準に設定すると、今度は表裏面からの揮散が著しく遅くなってしまうことになり、薬剤揮散具としての揮散効果(防虫効果)が安定しないのである。
従って、端部からの薬剤の揮散がより激しくなり、薬剤揮散具としての揮散効果が安定しないのである。
本発明に係る防虫用薬剤揮散具1の容器部分2は、プラスチック樹脂をインサート成型することによって作製したものであり、保持体3を収納するために枠状体の形状となっていること(枠状体部4を有すること)と、保持体3から常温揮散性薬剤を揮散させるための開口5が設けられていることを必須の要件とする。なお、図1、2に示す例においては、クローゼットや洋服ダンスなどの収納空間のハンガーパイプに吊り下げるためのフック部6が設けられている構造となっており、さらにフック部6には突起部7が設けられている構造となっている。
また、容器部分2については容器部分2の正背面方向に窪み8を設けて、容器部分2の正背面から一定の深さを設ける(図1、2においては正面方向に(T3)の深さの窪み8を設けている)ことによって、係る空間をより確保することができる。なお、係る窪み8の深さ(T3)については保持体3の厚さ(T1)の0.1〜6倍とすることが好ましく、その中でも0.1〜2倍とすることが好ましい。
ここで、加熱されたプラスチック材料は保持体3の端部にも圧入されることになる。従って、保持体3の端部(特に切断面)に対するプラスチック材料の圧入状態を特定の関係とすることで安定した揮散効果(防虫効果)を発現させることができることになる。具体的には、切断面の5〜50%がプラスチック材料で圧入されていることが好ましく、その中でも5〜25%がプラスチック材料で圧入されていることが好ましい。
さらに、常温揮散性薬剤を保持体3の表裏面から均一に揮散させるため、図1、2に示すように、枠状体部4が正背面において対称となるように開口5を設けることが好ましい。
本発明に用いられる保持体3は、常温揮散性薬剤を紙や不織布などで作製した担体9に含浸させたり、常温揮散性薬剤を樹脂などで作製した担体9に混練したりして保持させたものである。
また、保持体3の端部10は切断面11となっていることが必要である。このように保持体3の端部10が切断面11となっていることによって、上記した容器部分2との相乗効果による安定した揮散効果(防虫効果)を発現させることができるのである。なお、保持体3の厚さ(T1)については0.2〜5mmとすることが好ましい。
本発明に用いられる常温揮散性薬剤としては、常温において防虫成分が揮散するものであれば特に限定されるものではなく各種のものを使用することができるが、少量で十分な効力を有し、においがなく、人体に対する安全性が高いという点からピレスロイド系防虫剤を用いることが好ましい。なお、これらのピレスロイド系防虫剤については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができる。そして、これらの中でも、より防虫効果が高いことから、エムペントリン、プロフルトリン、メトフルトリン、及びトランスフルトリンを単独または併用して用いることが好ましい。
まず、担体に97×45×1mmサイズの板紙を用い、常温揮散性薬剤としてエムペントリンを300mg含浸させることによって保持体を作製した。
次に、金型に上記の保持体をセットした後、プラスチック材料にPETを用いてインサート成型を行うことによって、図1、2に示す、実施例1の防虫用薬剤揮散具を作製した。なお、各構成要件の内容を表1に示す。
D1、D2、T1、T2、T3、容器部分の開口率、プラスチック材料の切断面への圧入率を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして実施例2〜18の防虫用薬剤揮散具を作製した。
D1、D2、T3を表1に示すようにした(保持体の外周縁と枠状体の内周縁との距離が略等間隔とはならないようにした)以外は、実施例1と同様にして比較例1の防虫用薬剤揮散具を作製した。
D1、D2、T1を表1に示すようにした(保持体の外周縁と枠状体の内周縁との距離が略等間隔とはならないようにし、D1/T1を本願発明の好ましい範囲外とした)以外は、実施例1と同様にして比較例2の防虫用薬剤揮散具を作製した。
D1、D2、プラスチック材料の切断面への圧入率を表1に示すようにした(保持体の外周縁と枠状体の内周縁との距離が略等間隔とはならないようにし、切断面の大部分を露出させた)以外は、実施例1と同様にして比較例3の防虫用薬剤揮散具を作製した。
内容積が300Lで、かつ内容積の8割程度となるように衣料を入れた洋服ダンスを準備し、実施例および比較例の防虫用薬剤揮散具を洋服ダンスのハンガーパイプに1個設置した。試験開始1週間後、6ヶ月後、12ヶ月後に、保持体に残っている常温揮散性薬剤の量を測定し、揮散率を評価した。結果を表2に示す。
内容積が300Lで、かつ内容積の8割程度となるように衣料を入れた洋服ダンスを準備し、実施例および比較例の防虫用薬剤揮散具を洋服ダンスのハンガーパイプに1個設置した。
具体的には、衣料の間5箇所のそれぞれ上部、中部、下部の3つの位置、計15箇所に、上記アミカゴを置き、置いてから1週間後のウールモスリン布の食害状況を観察することによって防虫性能を評価した。なお、防虫性能は以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:(全ての幼虫が死んでしまった。布には全く食害なし。)
○:(数匹の幼虫は生きているが、布には全く食害なし。)
○△:(全ての幼虫は生きているが、布には全く食害なし。)
△:(わずかな食害あり。)
×:(明らかに食害が認められる。)
また、比較例2の防虫用薬剤揮散具は、比較例1よりも長期間の防虫効果が劣る結果となった。これは、防虫用薬剤揮散具の保持体の厚みが薄いことから、比較例1の理由に加えて、保持体に保持されている常温揮散性薬剤が短期間で揮散され尽くされたためであると考えられる。
さらに、比較例3の防虫用薬剤揮散具は、比較例1、2よりもさらに長期間の防虫効果が劣る結果となった。これは、プラスチック材料の切断面への圧入率が低い(プラスチック材料による切断面の被覆率が低く、切断面の大部分が露出状態にある)ことから、保持体に保持されている常温揮散性薬剤が短期間で揮散され尽くされたためであると考えられる。
2 容器部分
3 保持体
4 枠状体部
5 開口
6 フック部
7 突起部
8 窪み
9 担体
10 端部
11 切断面
12 インジケータ部
Claims (5)
- 端部に切断面を有する担体に常温揮散性薬剤を保持させた保持体を、
プラスチック材料を用いてインサート成型した防虫用薬剤揮散具であって、
前記保持体を、
前記プラスチック材料の枠状体の内側で、かつ前記保持体の外周縁と前記枠状体の内周縁
との距離が略等間隔となるように配置し、
前記切断面の5〜50%を、
前記プラスチック材料で圧入することによって前記保持体が前記枠状体と一体化していることを特徴とする防虫用薬剤揮散具。
- 前記保持体の外周縁と前記枠状体の内周縁との最大距離が、
10mm以下となるように配置したことを特徴とする請求項1に記載の防虫用薬剤揮散具。
- 前記保持体の外周縁と前記枠状体の内周縁との最大距離が、
前記保持体の厚さの1〜20倍であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防虫用薬剤揮散具。
- 前記枠状体の厚さが、
前記保持体の厚さの1〜20倍であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の防虫用薬剤揮散具。
- 前記常温揮散性薬剤が、エムペントリン、プロフルトリン、メトフルトリン、及びトランスフルトリンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の防虫用薬剤揮散具。
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JP2015067654A JP6419623B2 (ja) | 2015-03-27 | 2015-03-27 | 防虫用薬剤揮散具 |
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