JP6416735B2 - 窒化部品の製造方法及び窒化部品 - Google Patents

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Description

この発明は窒化部品の製造方法及び窒化部品に関し、特に耐表面剥離性に優れた窒化部品の製造方法及び窒化部品に関する。
従来、熱間加工用の金型や工具等の鋼部品については、その表面改質方法として、塩浴法、ガス法等による窒化処理が広く行われている。
窒化処理は、他の表面改質方法である浸炭焼入れや高周波焼入れ等と異なって変態を伴わず、処理温度も低いことから熱処理歪み,寸法変化が小さく、また表層に鉄窒化物である化合物層が生じることで耐摩耗性,耐焼付性,耐食性の向上が期待できる。
また窒化処理では、鉄窒化物層である化合物層とその直下の窒化拡散層(以下単に拡散層とする)に起因する圧縮残留応力の付加と、拡散層における窒素の侵入による硬さ上昇によって、疲労強度を向上させることができる。
特に使用条件が過酷な熱間鍛造型等の金型や工具に用いられる鋼部品にあっては、部品寿命を延ばすため拡散層を含む窒化層を部品表面からより深くまで形成することが望ましい。
しかしながらこのような場合、拡散層の粒界(旧オーステナイト結晶粒界)上に炭化物が析出し、この析出炭化物によって窒化処理面で剥離が生じ易くなってしまう問題が生じる。
窒化処理時に粒界上に炭化物が析出するのは、表層近くに予め存在していた炭化物中のCが窒化処理時に侵入してきたNと置換され、そのCが結晶粒界で炭化物として再析出するものと推測される。
例えば図2(A)は、窒化処理により拡散層の粒界に析出した炭化物の実例(窒化処理後のミクロ組織を示した顕微鏡写真)を示したものである。この図に示すように析出炭化物は粒界に沿って屈曲しながら連続的に析出するものが多い。
またこの析出炭化物は、窒化表面に対し平行に析出する傾向があり、析出炭化物が粒界に沿って連なるように多数生じた場合、窒化表面と平行な面で剥離が生じ易く、これが窒化処理された部品の寿命を短くする原因のひとつとなっている。
この析出炭化物の発生を抑制する方法として、例えば窒化処理における処理時間を短くしたり、処理温度を低くしたりして鋼部品表面に侵入するN量を抑制することが有効である。しかしながらこの場合形成される窒化層が浅くなってしまい窒化処理自体の効果が小さくなってしまう。
尚、窒化層中の炭窒化物を抑制する方法としては、下記の特許文献1に記載されたものがある。
この特許文献1では、「窒化した工具、金型およびその製造方法」についての発明が示され、そこにおいて窒化処理前の鋼部品に脱炭処理を施し、その後に窒化処理を行うことで、窒化硬さを高めるとともに窒化層中の脆弱な炭窒化物の生成、成長を抑制する点が開示されている。
特開2004−332029号公報
しかしながら本発明者らが、窒化処理によって形成される先述の析出炭化物を抑制するため、予め脱炭処理を施した鋼部品に対して塩浴窒化処理を行ったところ、拡散層での析出炭化物を抑制する効果はあったものの、析出炭化物起因のものとは異なる、最外層付近での表面剥離が助長され、金型等の部品寿命の改善には不十分であった。
本発明は以上のような事情を背景とし、耐表面剥離性に優れた窒化部品を製造することができる窒化部品の製造方法及び窒化部品を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は窒化部品の製造方法に関するもので、Cを0.10〜0.70質量%含有する鋼材から成る窒化部品の製造方法であって、該鋼材から成る部品を加熱して、該部品の表層部に脱炭層を形成する脱炭処理を行い、該脱炭処理後に該脱炭層の表面を除去する表面除去処理を実施して該部品の表面C濃度を0.10〜0.25質量%となし、しかる後塩浴窒化処理を実施することを特徴とする。
請求項2は、請求項1において、窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、前記窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で該析出炭化物が10個未満であることを特徴とする。
請求項3は窒化部品に関するもので、Cを0.10〜0.70質量%含有する鋼材から成る窒化部品であって、部品の表層部に、表面C濃度を0.10〜0.25質量%とする脱炭層とともに、窒化層が形成されており、
該窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、前記窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で該析出炭化物が10個未満であることを特徴とする。
請求項4は、請求項3において、前記窒化部品が金型又は工具として用いられるものであることを特徴とする。
以上のように本発明は、塩浴窒化処理前に脱炭処理を行い、予め部品表層部に低C領域の脱炭層を形成しておくことで、塩浴窒化処理における拡散層での析出炭化物の発生を抑制するようになしたものである。
先述した拡散層の結晶粒界に生じる析出炭化物は、部品表層部のC濃度が高いほど、また窒化処理時に部品表層部に侵入するN量が多いほど、その発生が顕著となる。そこで本発明では脱炭処理にて事前に表層部のC濃度を低下させておくことで、窒化処理時に部品表層部に侵入するN量を減らすことなく結晶粒界上の析出する炭化物を抑制することができる。
本発明者らが確認したところによれば、脱炭処理にて部品表面のC濃度を0.25%以下、より望ましくは0.20%以下とすることが結晶粒界上の析出炭化物の抑制に有効である。
かかる本発明によれば、厚い拡散層を確保することで硬さを上昇させて疲労強度を高めるとともに、拡散層における結晶粒界上の析出炭化物を抑制することで耐表面剥離性も向上させることができる。
尚、脱炭処理によって部品表層部に低C領域を形成した場合であっても、部品表面の硬さについては窒化処理によって十分な値を確保することができる。
但し、塩浴窒化処理を施した窒化部品に生じる表面剥離は、析出炭化物に起因するものとこれ以外のもの(析出炭化物に起因しないもの)とがある。
本発明者らが析出炭化物に起因しない表面剥離の原因を究明したところ、脱炭処理により部品表面にCがほとんど含有されていない(フェライト相に近い)領域が存在する状態で塩浴窒化処理が施されると、最表層付近に通常の組織とは異なる剥離を起こしやすい組織が生じること、更に脱炭処理後表面除去処理を施して部品表面のC濃度を0.10%以上とすればその剥離を起こしやすい組織の発生を抑制することができることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくもので、塩浴窒化処理前に脱炭処理にて生じたCがほとんど含有されていない表面部分を除去することにより、部品表面のC濃度を0.10〜0.25%とし、その後に塩浴窒化処理を行うようになしたことを特徴としたものである。
かかる本発明によれば、塩浴窒化処理前の部品表面のC濃度の最適化を図ることにより部品寿命低下の原因となる窒化層での表面剥離の発生を抑制し得て、窒化部品の寿命の大幅延長が期待できる。
尚、本発明の製造方法は、質量%でC:0.10〜0.70%含有する鋼材からなる部品を対象としている。
C量が0.10%未満の鋼材にあってはそもそも本発明が規定する表面C濃度0.10〜0.25%よりもC濃度が低く、C量が0.70%を越える鋼材にあっては、脱炭処理によって生じる表面から深さ方向に向かうC濃度の勾配の傾きが大きいため、表面除去処理で部品の表面C濃度を0.10〜0.25%の範囲に収めるのが難しい。
そこで本発明では対象とする鋼材のC含有量を0.10〜0.70%とする。
本発明では、特に窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で析出炭化物を10個未満とすることが望ましい(請求項2)。
上述のように窒化層中の結晶粒界に析出炭化物が多量に析出すると表面剥離が生じ部品寿命が大幅に低下する。
本発明者らが析出炭化物の発生個数と鍛造型の寿命との関係を調査したところ、図1のような関係が認められた。
同図は窒化処理された鍛造用パンチを用いてその先端部で剥離が生じるショット数、及び窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲での析出炭化物の発生個数を調査し、析出炭化物が発生していないパンチにおけるショット数を100として、各パンチの寿命(剥離開始ショット数)を指数で表したものである。
同図によれば析出炭化物の発生個数が10個超となると金型寿命指数が大幅に低下する。
即ち請求項1の製造方法によって、析出炭化物の発生個数を10個以下とすることで析出炭化物起因の剥離を良好に防止することが可能である。
ここで析出炭化物の発生個数は、結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個としてカウントした。
析出炭化物の発生個数の測定方法をこのように規定したのは、析出炭化物は屈曲する2辺で構成された形態が多く、且つ屈曲しながら連なった形態は剥離に対して有害であることが多くの調査で実証されたためである。
請求項3は窒化部品に関するもので、部品の表層部には表面C濃度を0.10〜0.25質量%とする脱炭層とともに、窒化層が形成されており、窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で析出炭化物を10個未満としたものである。かかる窒化部品は、請求項1の製造方法によって好適に製造することが可能である。
上記本発明の窒化部品は、特に高い疲労強度及び耐割れ性が要求される金型又は工具に適用して好適である(請求項4)。
ここで金型又は工具としては、温熱間鍛造用のパンチやダイ,ダイカスト金型,アルミ押し出し用型等に用いられる金型本体はもとより、これに組み付けられて使用される中子,ピン等の金型部品の外、熱間ロール等の用途のもの、更には広く金属,ガラス,樹脂等を加工するための治具等も含まれる。
以上のような本発明によれば、窒化層中の析出炭化物の発生を抑制し得て、耐表面剥離性に優れた窒化部品を製造することができる窒化部品の製造方法及び窒化部品を提供することができる。
結晶粒界上生じた析出炭化物の個数と金型寿命との関係を示した図である。 比較例1のミクロ組織の写真及び析出炭化物数の測定方法の説明図である。 実施例における剥離試験の説明図である。 実施例4におけるミクロ組織の写真である。
次に本発明の実施形態を詳しく説明する。
本実施形態では、窒化部品を、機械加工→脱炭処理→焼入焼戻し処理→表面除去処理→窒化処理の各工程を経て製造する。
使用する鋼材としては例えばJIS SKD61等の合金工具鋼が好適であるが、これに限定するものではなく、必要に応じてCを0.10〜0.70%含有する鋼材を使用することができる。
まず、機械加工の工程において鋼材を所定の形状に加工する。
(脱炭処理)
次に機械加工された鋼部品に対して脱炭処理を施す。
脱炭処理において鋼部品は加熱され、該部品の表層部に低C領域からなる脱炭層が形成される。
脱炭処理条件(加熱温度、保持時間等)については使用する鋼材の成分等により適宜定めることができるが、脱炭処理の加熱温度はAc3〜1050℃が望ましい。Ac3以上で加熱することで鋼組織をオーステナイトとし、表層部の脱炭を促進することができる。
尚、脱炭処理の加熱は大気中で行う他、雰囲気を弱脱炭性に制御した状態で行うことも可能である。
(焼入焼戻し処理)
次に焼入焼戻し処理により鋼部品を、マルテンサイトを主体とする組織とし、各部品に要求されている硬さと靭性を付与する。
この例では、脱炭処理を焼入焼戻し処理とは別に行っているが、焼入時の加熱を利用して脱炭処理を行うことも可能である。
(表面除去処理)
脱炭処理によって生じた鋼部品表面の、Cがほとんど含有されていない領域を削除するもので、具体的には切削加工や硬質メディア噴射をもって行うことができる。
特に削除する深さを規定するものではないが、鋼種と脱炭処理条件から表層に形成されるC濃度が0.10%未満の層の厚みを予見して、部品表面を除去し、部品表面のC濃度を0.10〜0.25%とする。
尚、表面除去処理は必ずしも部品の全表面について行う必要はなく、特に耐表面剥離性が要求される特定範囲のみに実施することも可能である。
(塩浴窒化処理)
表面除去処理を行った後、塩浴窒化処理を施す。
溶融塩浴としては、NaCN、KCNO,CaCN2,NaCNOなどを主成分とする塩浴を用いて窒化を行う。またNaCl,Na2CO3などとの混合塩浴を用いることができる。
塩浴窒化処理においては、処理温度500〜600℃で、1〜10Hr浸漬させ、窒化層(拡散層を含む)は50μm以上とするのが望ましい。
供試材として、表1に示す化学組成の圧延材を用いた。供試材をΦ150mmの丸棒状に鍛伸した後に空冷し、更に機械加工にてΦ140mm×L300mmの鋼部品を作製した。
その後表2に記載された条件に従って鋼部品に対し焼入焼戻し処理,表面除去処理を行ない、その後塩浴窒化処理を行った。
本例では焼入時の加熱を利用して脱炭処理を行うため、焼入れ時の加熱条件は表2の条件で行ない、その後鋼部品を回転台に載せて回転させ2方向からブロアーで冷却した。
その後焼戻しを580℃×2hの条件で行い、この鋼部品から試験片を採取し、脱炭後の表面C濃度を測定した。
表面除去処理は、表2の通り切削加工(K法)若しくは硬質メディア噴射(L法)の何れかの方法により行い、表面除去処理後の鋼部品から試験片を採取し、窒化前の表面C濃度を測定した。
その後シアン酸カリウム(KCNO)を主成分とする塩浴を用いて550℃×10Hrの条件で塩浴窒化処理を行い、組織観察及び析出炭化物数の測定、硬さ試験、剥離試験に供した。
ここで表面C濃度の測定、析出炭化物数の測定、母材硬さ試験、剥離試験はそれぞれ以下のようにして行った。
<表面C濃度の測定>
JIS G 0558に準拠し、試験片を断面方向に切断・埋込・研磨を実施し、表面から内部へ垂直に電子線マイクロアナリシス(EPMA)でC濃度を線分析し、表面から生地のC濃度が得られるまで炭素濃度推移曲線を作成し、かかる曲線より表面C濃度を求めた。
<析出炭化物数の測定>
窒化部品の断面をナイタール腐食後、図2(A)で示すようなミクロ組織写真(倍率400倍)を用いて、表層から深さ100μm、幅200μmの範囲で結晶粒界に生じた析出炭化物の数を測定する。
析出炭化物の数の測定は、図2(B)で示すよう結晶粒界上に析出する、長さLが5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺が連なった場合を1.5個、屈曲する4辺が連なった場合を2個とカウントする。尚、屈曲のない1辺のみのものは0.5個とカウントする。
また、析出炭化物が緩やかに湾曲している場合でも旧オーステナイト結晶粒界を想定し、隣の粒界との結節点を越えて延びている場合は屈曲とみなす。
測定は2視野について行いその平均値を求め、表2において、析出炭化物数が0〜10個未満の場合はA、10〜25個未満の場合はB、25〜100個未満の場合はC、100個以上の場合はDとした。
<母材硬さ試験>
上記窒化部品から採取した試験片の切断面にて、表面から内部方向に2000μmの深さまでの硬さ試験を行ない母材の硬さを求めた。
硬さ試験はJIS Z 2244に準拠し、ビッカース硬度計にて荷重1.961Nで実施した。また測定は5箇所行い、平均値を用いる。
<剥離試験>
得られた窒化部品よりサイズ20×20×20mmの試験片を作成し、図3(A)に示すようにその窒化表面に対してロックウェル硬度計を用いて荷重1471N(150Kgf)で1/16インチの鋼球からなる圧子を押し付け、試験面に2箇所圧痕を生じさせて、圧痕の縁に生じる亀裂の状態を観察する。
そして亀裂の発生が最も顕著な部分を図3(A)で示す等級見本と比較して最も近い亀裂の等級1,2,3の何れかを選択する。
次に図3(B)に示すように圧痕部分の断面を写真撮影(倍率200倍)して、図中点線で示した表面から100μmの範囲の窒化層に生じた割れの個数をカウントする。断面観察は2箇所の圧痕について行い、割れが多くみとめられた圧痕の断面にてその割れの個数から割れレベルを求めた。
具体的には割れの個数が0〜5であれば割れレベルを1、割れの個数が6以上であれば割れレベルを2とした。
表2で示した剥離試験の評価は、亀裂の等級(1,2,3)と割れレベル(1,2)の積の値(1〜6の何れかの値)に基づいて行なった。具体的には亀裂の等級×割れレベルの値が1〜2の場合はA、3〜4の場合はB、5〜6の場合はCとした。
表2の結果において、比較例1及び比較例4は、窒化処理前に脱炭処理を行っておらず窒化処理前の表面C濃度が比較例1で0.40%、比較例4で0.55%と、本発明の上限値0.25%よりも高い。このため窒化処理において多くの析出炭化物が生成され(表2における析出炭化物数は比較例1がD、比較例4がC)、剥離試験の結果もCである。
尚、図2(A)は比較例1の窒化処理後のミクロ組織写真である。この画像からも析出炭化物数が多数生じていることが見て取れる。
比較例2及び比較例3は、脱炭処理を行った後、表面除去処理を行なわなかった例である。これらの例では窒化前の表面C濃度が本発明の下限値0.10%よりも低くなっている。この場合析出炭化物起因ではない剥離が生じ易くなり、その結果剥離試験の結果が比較例2でB、表面C濃度が更に低い比較例3ではCであった。
比較例5も比較例1,4と同様に脱炭処理を行わなかった例である。この比較例5は比較的低C(0.18%)の鋼種を使用しているため析出炭化物数の値は低く抑えられており良好である。但しこの比較例5では析出炭化物に起因しない表面剥離が生じ、剥離試験の結果はCであった。この比較例5とほぼ同じ表面C濃度で脱炭処理及び表面除去処理が施された実施例1,4の剥離試験の結果が良好であることから、耐表面剥離性を向上させるためには脱炭処理及び表面除去処理を経て所定の表面C濃度を得ることが有効と思われる。
比較例6は高C(1.03%)の鋼種に対して、脱炭処理及び表面除去処理を実施したものである。この例のように高Cの鋼種においては、脱炭処理後の表面から深さ方向に向けてのC濃度の勾配の傾きが大きいため、表面C濃度が0.25%としてもその直下のC量は急激に高くなるためどうしても析出炭化物が生じやすくなる。この例において析出炭化物数はB、剥離試験はCであった。
これに対して本発明の条件を満たす実施例1〜7は、析出炭化物数、剥離試験、何れの結果もAで良好な結果が得られた。
図4に実施例4のミクロ組織を示しているが、この画像から、実施例4のものは析出炭化物数が良好に抑制されていることが見て取れる。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (4)

  1. Cを0.10〜0.70質量%含有する鋼材から成る窒化部品の製造方法であって、
    該鋼材から成る部品を加熱して、該部品の表層部に脱炭層を形成する脱炭処理を行い、
    該脱炭処理後に該脱炭層の表面を除去する表面除去処理を実施して、該部品の表面C濃度を0.10〜0.25質量%となし、
    しかる後塩浴窒化処理を実施することを特徴とする窒化部品の製造方法。
  2. 請求項1において、窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、前記窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で該析出炭化物が10個未満であることを特徴とする窒化部品の製造方法。
  3. Cを0.10〜0.70質量%含有する鋼材から成る窒化部品であって、
    部品の表層部に、表面C濃度を0.10〜0.25質量%とする脱炭層とともに、窒化層が形成されており、
    該窒化層における旧オーステナイト結晶粒界上に析出する長さ5μm以上の析出炭化物が、粒界に沿って途中で屈曲する2辺で構成されていた場合を1個とカウントし、更に屈曲する3辺で構成されていた場合を1.5個、屈曲する4辺で構成されていた場合を2個、屈曲のない1辺のみの場合を0.5個とカウントしたとき、前記窒化層の表面から深さ100μm、幅200μmの範囲で該析出炭化物が10個未満であることを特徴とする窒化部品。
  4. 請求項3において、前記窒化部品が金型又は工具として用いられるものであることを特徴とする窒化部品。
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