JP6414080B2 - リチウムイオン二次電池用バインダー組成物、リチウムイオン二次電池用スラリー組成物、二次電池用電極の製造方法、および、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
本発明のさらなる目的は、容易に製造することができ、ピール強度が高く、リチウムイオン二次電池に高い高温サイクル特性を付与しうるリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、容易に実施することができ、ピール強度が高く、リチウムイオン二次電池に高い高温サイクル特性を付与しうるリチウムイオン二次電池用電極を製造しうる製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、容易に製造することができ、高い高温サイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することにある。
前記架橋剤(A)は、カルボン酸と反応する官能基を有し、
前記粒子状結着剤(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位を含有し、
前記バインダー組成物の固形分質量全量に対する、前記粒子状結着剤(B)の表面酸量の割合が0.01mmol/g以上1.0mmol/g以下であり、
前記バインダー組成物の固形分質量全量に対する、前記水相中の酸量の割合が0.01mmol/g以上1.0mmol/gであり、
前記表面酸量の割合の値を、前記水相中の酸量の割合の値で除した値が、1.0以上であるリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔2〕 前記粒子状結着剤(B)における、前記エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位の割合が、0.1質量%以上30質量%以下である、〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔3〕 前記粒子状結着剤(B)が、さらに、エチレン性不飽和水酸基含有単量体単位を、0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する、〔1〕又は〔2〕に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔4〕 前記架橋剤(A)が、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、および、カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔5〕 前記粒子状結着剤(B)が、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位をさらに含有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔6〕 前記粒子状結着剤(B)100質量部に対する前記架橋剤(A)の量が、0.001質量部以上20質量部以下である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物、電極活物質、及び水溶性増粘剤(C)を含有するリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
〔8〕 前記水溶性増粘剤(C)が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、および、これらの塩、からなる群から選択される少なくとも1種である、〔7〕記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
〔9〕 〔7〕又は〔8〕に記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を、集電体上に塗布、乾燥して、電極活物質層を形成することを含む、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
〔10〕 正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備える、リチウムイオン二次電池であって、
前記正極、前記負極、またはこれらの両方が、〔9〕に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法により製造された電極である、リチウムイオン二次電池。
本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物は、容易に製造することができ、ピール強度が高く、リチウムイオン二次電池に高い高温サイクル特性を付与しうる。
本発明のリチウムイオン二次電池電極の製造方法は、容易に実施することができ、ピール強度が高く、リチウムイオン二次電池に高い高温サイクル特性を付与しうるリチウムイオン二次電池用電極を製造しうる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、容易に製造することができ、高い高温サイクル特性を有するものとしうる。
本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物は、架橋剤(A)、粒子状結着剤(B)及び水を含む。
架橋剤(A)は、バインダー組成物の成分として粒子状結着剤(B)と共存し、バインダー組成物を含むスラリー組成物を用いて電極活物質層を形成する際に、加熱等の処理を行うことにより、スラリー組成物中の他の成分(例えば粒子状結着剤(B)及び水溶性増粘剤(C))の間に架橋構造を形成しうる成分である。架橋剤(A)は、具体的には、粒子状結着剤(B)の粒子同士、水溶性増粘剤(C)の分子同士、及び粒子状結着剤(B)と水溶性増粘剤(C)との間のいずれか一以上において、架橋構造を形成しうる。好ましくは、架橋剤(A)としては、少なくとも粒子状結着剤(B)の粒子同士において架橋構造を形成しうるものを用いうる。
架橋剤(A)は、カルボン酸と反応する官能基を有する。カルボン酸と反応する官能基を有することにより、粒子状結着剤(B)と反応し、粒子状結着剤(B)の粒子間の架橋を効果的に形成することができる。
架橋剤(A)としてのカルボジイミド化合物の例としては、分子中に一般式(1):−N=C=N−・・・(1)で表されるカルボジイミド基を有する架橋性化合物が挙げられる。そして、このようなカルボジイミド化合物の例としては、カルボジイミド基を2つ以上有する化合物、具体的には、一般式(2):−N=C=N−R1−・・・(2)(一般式(2)中、R1は2価の有機基を示す。)で表される繰返し単位を有するポリカルボジイミドおよび/または変性ポリカルボジイミドが好適に挙げられる。本明細書において変性ポリカルボジイミドとは、ポリカルボジイミドに対して、後述する反応性化合物を反応させることによって得られる化合物をいう。
ポリカルボジイミドの合成法は特に限定されるものではないが、例えば、有機ポリイソシアネートを、イソシアネート基のカルボジイミド化反応を促進する触媒(以下「カルボジイミド化触媒」という。)の存在下で反応させることにより、ポリカルボジイミドを合成することができる。また、一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドは、有機ポリイソシアネートを反応させて得たオリゴマー(カルボジイミドオリゴマー)と、当該オリゴマーと共重合可能な単量体とを共重合させることによっても合成することができる。
このポリカルボジイミドの合成に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましい。
例えば分子鎖の両末端に水酸基を有する2価のアルコールをカルボジイミドオリゴマーと既知の方法で共重合させることにより、ポリカルボジイミド構造と、2価のアルコール由来の単量体単位とを有するポリカルボジイミドを合成することができる。このように、架橋剤(A)としてのポリカルボジイミドが2価以上のアルコール由来の単量体単位、好ましくは2価のアルコール由来の単量体単位を有する場合、該ポリカルボジイミドを含むバインダー組成物から形成される電極の電解液に対する濡れ性が向上し、該電池部材を備える二次電池の製造における、電解液の注液性を向上させることができる。また、該アルコールを共重合させることは、カルボジイミド化合物の水溶化率を増加させるとともに、水中で自己ミセル化、すなわち、疎水性であるカルボジイミド構造部位の周りに親水性であるエチレングリコール鎖で覆われる構造をとるため、化学的安定性に優れる効果がある。
次に、変性ポリカルボジイミドの合成法について説明する。変性ポリカルボジイミドは、一般式(2)で表される繰返し単位を有するポリカルボジイミドの少なくとも1種に、反応性化合物の少なくとも1種を、適当な触媒の存在下あるいは不存在下で、適宜温度で反応(以下、「変性反応」という。)させることによって合成しうる。
カルボジイミド化合物の、カルボジイミド基(−N=C=N−)1モル当たりの化学式量(NCN当量)は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上であり、好ましくは600以下、より好ましくは500以下である。カルボジイミド化合物のNCN当量が400以上であることで、本発明のバインダー組成物やスラリー組成物の貯蔵安定性を十分に確保することができ、600以下であることで、架橋剤として架橋反応を良好に進行させることができる。
カルボジイミド化合物のNCN当量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてカルボジイミド化合物のポリスチレン換算数平均分子量を求めると共に、IR(赤外分光法)を用いてカルボジイミド化合物1分子当たりのカルボジイミド基の数を定量分析し、下記式を用いて算出することができる。
NCN当量=(カルボジイミド化合物のポリスチレン換算数平均分子量)/(カルボジイミド化合物1分子当たりのカルボジイミド基の数)
架橋剤(A)としてのオキサゾリン化合物の例としては、その分子中に、オキサゾリン基を有する架橋性化合物が挙げられる。そして、このようなオキサゾリン化合物の例としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有する化合物が好適に挙げられる。オキサゾリン基の水素原子の一部又は全部は、他の基により置換されていてもよい。このような、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有する化合物の例としては、分子中にオキサゾリン基を2つ有する化合物(2価のオキサゾリン化合物)、オキサゾリン基を含有する重合体(オキサゾリン基含有重合体)が挙げられる。
2価のオキサゾリン化合物の例としては、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4'−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。中でも、より剛直な架橋構造体を形成する観点から、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)が好ましい。
本願において、オキサゾリン基含有重合体は、2価のオキサゾリン化合物以外の化合物であって、オキサゾリン基を含有する重合体である。
オキサゾリン基含有重合体は、例えば、以下の式(I)で表されるオキサゾリン基含有単量体を重合することにより、又は当該オキサゾリン基含有単量体を含む単量体組成物を共重合することにより合成しうる。
架橋剤(A)として上述のオキサゾリン基含有重合体を使用する場合、オキサゾリン基含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−20℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは30℃以下である。
架橋剤(A)のオキサゾリン当量は、下記式を用いて算出することができる。
オキサゾリン当量=(オキサゾリン化合物の分子量)/(オキサゾリン化合物1分子当たりのオキサゾリン基の数)
ここで、オキサゾリン化合物がオキサゾリン基含有重合体の場合には、オキサゾリン化合物の分子量は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定したポリスチレン換算数平均分子量とすることができ、オキサゾリン化合物1分子当たりのオキサゾリン基の数は、例えば、IR(赤外分光法)を用いて定量することができる。
架橋剤(A)としての多官能エポキシ化合物の例としては、脂肪族ポリグリシジルエーテル、芳香族ポリグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテルなどの多官能グリシジルエーテル化合物を挙げることができる。オキサゾリン基を有する化合物の例としては、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4'−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、及び2,2'−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)が挙げられる。また、日本触媒(株)製エポクロス(商標名)などの高分子タイプもあげることができる。
架橋剤(A)の1質量%水溶液の粘度は、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは700mPa・s以下、特に好ましくは150mPa・s以下である。1質量%水溶液の粘度が上記範囲内である架橋剤を用いることで、電極活物質層と集電体との密着性を優れたものとすることができる。架橋剤(A)の1質量%水溶液の粘度は、カルボキシメチルセルロース(塩)の1質量%水溶液の粘度と同様の方法で測定することができる。
ここで、本明細書において、架橋剤が「水溶性」であるとは、イオン交換水100質量部当たり架橋剤1質量部(固形分相当)を添加し、攪拌して得られる混合物を、温度20〜70℃範囲内で、かつpH3〜12(pH調整にはNaOH水溶液及び/又はHCl水溶液を使用)の範囲内である条件のうち少なくとも一条件に調整し、250メッシュのスクリーンを通過させた際に、スクリーンを通過せずにスクリーン上に残る残渣の固形分の質量が、添加した架橋剤の固形分に対して50質量%を超えないことをいう。上記架橋剤と水との混合物が、静置した場合に二相に分離するエマルジョン状態であっても、上記定義を満たせば、その架橋剤は水溶性であると規定する。架橋構造の形成反応を良好に進行させ、上記電極活物質層と集電体との密着強度、高温サイクル特性を向上させる観点からは、上記架橋剤と水との混合物は、二相に分離しない(一相水溶状態である)こと、即ち架橋剤は一相水溶性であることがより好ましい。
本発明のバインダー組成物が含有する粒子状結着剤(B)は、水などの水系媒体において粒子の形態で分散可能な結着剤であり、バインダー組成物及びスラリー組成物中において粒子の形態で存在する。通常、粒子状結着剤(B)は、25℃において、粒子状結着剤0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90質量%以上となる。
粒子状結着剤(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位を含有する重合体である。本願において、単量体単位とは、当該単量体の重合により得られる構造を有する単位である。したがって、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体の重合により得られる構造を有する単位であり、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位を含有する重合体は、カルボン酸基を有する重合体である。
粒子状結着剤(B)は、任意に、エチレン性不飽和水酸基含有単量体単位を含有しうる。このような粒子状結着剤(B)は、エチレン性不飽和水酸基含有単量体を含有する単量体組成物を重合することにより調製しうる。エチレン性不飽和水酸基含有単量体とは、エチレン性不飽和基を有し、且つ水酸基を有する単量体であり、従って、エチレン性不飽和水酸基含有単量体単位を含有する重合体は、水酸基を有する重合体である。
粒子状結着剤(B)は、任意に、脂肪族共役ジエン単量体単位を含有しうる。特に、本発明のバインダー組成物及び本発明のスラリー組成物を、負極活物質層の形成に用いる場合、粒子状結着剤(B)が脂肪族共役ジエン単量体単位を含有することが、ピール強度の付与や電極の柔軟性のため好ましい。脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体の例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。脂肪族共役ジエン単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤(B)は、任意に、芳香族ビニル単量体単位を含有しうる。特に、本発明のバインダー組成物及び本発明のスラリー組成物を、負極活物質層の形成に用いる場合、粒子状結着剤(B)が芳香族ビニル単量体単位を含有することが、ピール強度の付与や充放電時の電極膨れ抑制のため好ましい。芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。芳香族ビニル単量体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤(B)は、上に述べたものの他にも任意の単量体単位を含有しうる。それらの任意の単量体単位は、それぞれに対応する単量体を含有する単量体組成物を用いて調製しうる。
粒子状結着剤(B)は、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を水系溶媒中で重合することにより調製しうる。
ここで、単量体組成物中の各単量体の含有割合は、通常、所望の粒子状結着剤(B)における各単位の含有割合と同様にする。
具体的には、水系溶媒の例としては、水;ダイアセトンアルコール、γ−ブチロラクトンなどのケトン類;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、ブチルセロソルブ、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;などが挙げられる。中でも水は可燃性がなく、粒子状結着剤(B)の粒子の分散体が容易に得られやすいという観点から特に好ましい。主溶媒として水を使用して、粒子状結着剤(B)の粒子の分散状態が確保可能な範囲において上記の水以外の水系溶媒を混合して用いてもよい。
通常、粒子状結着剤(B)は、非水溶性である。したがって、通常、粒子状結着剤(B)は、水を含むバインダー組成物及びスラリー組成物において粒子状となっており、その粒子形状を維持したまま、例えば二次電池用電極に含まれる。
そして、本発明のバインダー組成物及びスラリー組成物では、粒子状結着剤(B)は、個数平均粒径が、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下である。個数平均粒径が上記範囲にあることで、得られる電極の強度および柔軟性を良好にできる。個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡法やコールターカウンター、レーザー回折散乱法などによって容易に測定することができる。
ガラス転移温度は、使用する単量体の種類および量を変更することにより調整することができ、例えば、スチレン、アクリロニトリルなどの単量体を使用するとガラス転移温度を高めることができ、ブチルアクリレート、ブタジエンなどの単量体を使用するとガラス転移温度を低下させることができる。
また、ゲル含有量は、重合温度、重合開始剤の種類、分子量調整剤の種類、量、反応停止時の転化率などを変更することにより調整することができ、例えば、連鎖移動剤を少なくするとゲル含有量を高めることができ、連鎖移動剤を多くするとゲル含有量を低下させることができる。
本発明のバインダー組成物は、水を含む。水は、バインダー組成物において溶媒及び/又は分散媒として機能する。通常、本発明のバインダー組成物では、架橋剤(A)は水に溶解しているか若しくは分散しており、粒子状結着剤(B)は水に分散している。
本発明のバインダー組成物は、上記成分の他に、導電剤、補強材、レベリング剤、電解液添加剤、セルロースナノファイバーなどの成分を含有していてもよい。これらとしては、電池反応に影響を及ぼさないものを適宜選択することができる。例えば公知のもの、具体的には国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のバインダー組成物は、架橋剤(A)、粒子状結着剤(B)、水、及び必要に応じて任意成分を、任意の順序で混合することにより調製しうる。架橋剤(A)及び粒子状結着剤(B)の混合系への添加は、これらを含む溶液又は懸濁液を添加することにより行いうる。
本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物は、水相及び固相を有する。水相は、水及び水に溶解しうる成分からなり、固相は、粒子状結着剤(B)及びその他の水に不溶な固体の相である。
本発明のバインダー組成物においては、バインダー組成物の固形分質量全量に対する、粒子状結着剤(B)の表面酸量の割合が、0.01mmol/g以上1.0mmol/g以下であり、バインダー組成物の固形分質量全量に対する、水相中の酸量の割合が0.01mmol/g以上1.0mmol/gであり、且つ表面酸量の割合の値を水相中の酸量の割合の値で除した値が、1.0以上である。
粒子状結着剤(B)の表面酸量の割合は、好ましくは0.05mmol/g〜1.0mmol/gであり、より好ましくは0.05mmol/g〜0.8mmol/gである。水相中の酸量の割合は、好ましくは0.05mmol/g〜1.0mmol/gであり、より好ましくは0.05mmol/g〜0.8mmol/gである。また、表面酸量の割合の値を水相中の酸量の割合の値で除した値は、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上であり、一方好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下である。これらの値は本明細書の実施例に記載の方法に準拠して測定しうる。
表面酸量、及び水相中の酸量が前記条件を満たすバインダー組成物を得る方法は、上に述べた方法に代えて、又は上に述べた方法に加えて、他の方法を採用することもできる。例えば、粒子状結着剤(B)の調製の重合反応後に加熱減圧蒸留等の蒸留法により未反応の酸を除去することも可能である。但し、上記、特に粒子状結着剤(B)に関する項目〔1.2.1.〕及び項目〔1.2.2.〕において説明した方法で表面酸量及び水相中の酸量に対する表面酸量の割合を高めた重合反応物を得ることにより、少ないエチレン性不飽和カルボン酸基単量体量により、粒子状結着剤(B)の表面に効率的にカルボン酸基を付与することができ、且つ蒸留の工程を省略することが可能となり、その結果、良好な製品を効率的に製造することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物は、前記本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物、電極活物質、及び水溶性増粘剤(C)を含有する。
本発明のスラリー組成物を負極の製造に用いる場合、電極活物質としては、負極活物質として適切なものを適宜選択しうる。本発明のスラリー組成物を正極の製造に用いる場合、電極活物質としては、正極活物質として適切なものを適宜選択しうる。
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池の負極において電子の受け渡しをする物質として用いうる物質を適宜選択して用いうる。
炭素質材料の例としては、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素、及び、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素が挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素の例としては、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素の例としては、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂(PFA)焼成体、及びハードカーボンが挙げられる。
そして、黒鉛質材料の例としては、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛の例としては、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
負極活物質が粒子である場合、その体積平均粒子径は、二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。具体的な負極活物質の粒子の体積平均粒子径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折法で測定された粒度分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を採用する。
正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極において電子の受け渡しをする物質として用いうる物質を適宜選択して用いうる。
正極活物質としては、特に限定されず種々の活物質が使用できる。例えば、遷移金属を含有する化合物、具体的には、遷移金属を含有する酸化物、又はリチウムと遷移金属との複合酸化物を用いることができる。このような遷移金属の例としては、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄などを挙げることができるが、本発明においては、ニッケルを含有する化合物、特に、リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が好適に用いられる。特に、リチウムとニッケルを含有する複合酸化物は、従来よりリチウム系二次電池の正極活物質として用いられているコバルト酸リチウム(LiCoO2)と比較して、高容量であるため、好適である。リチウムとニッケルとを含有する複合酸化物としては、たとえば、下記一般式で表されるものが挙げられる。
LiNi1−x−yCoxMyO2
(ただし、0≦x<1、0≦y<1、x+y<1、Mは、B、Mn、及びAlから選択される少なくとも1種の元素)
本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物中の、前記本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物の割合は、所望の電池の性能が得られるよう適宜調整しうる。特に、電極活物質100質量部に対する、バインダー組成物中の粒子状結着剤(B)の割合が所望の範囲となるように、バインダー組成物の割合を適宜調整し、所望の組成物を得ることができる。電極活物質100質量部に対する、バインダー組成物中の粒子状結着剤(B)の割合は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、一方好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。当該割合を前記下限以上とすることにより、十分なピール強度を得ることができ、当該割合を前記上限以下とすることにより、抵抗の増大を防ぐことができる。
水溶性増粘剤(C)は、カルボキシル基を有する水溶性の増粘剤である。水溶性増粘剤(C)は、スラリー組成物の粘度調整剤として機能しうる。また本発明のスラリー組成物により得られる電極活物質層において、電極活物質層の物性を適切な状態に保ち、その結果高温サイクル特性等の特性を良好なものとしうる。
ここで本明細書において、増粘剤が「水溶性」であるとは、イオン交換水100質量部当たり増粘剤1質量部(固形分相当)を添加し攪拌して得られる混合物を、温度20〜70℃の範囲内で、かつ、pH3〜12(pH調整にはNaOH水溶液及び/又はHCl水溶液を使用)の範囲内である条件のうち少なくとも一条件に調整し、250メッシュのスクリーンを通過させた際に、スクリーンを通過せずにスクリーン上に残る残渣の固形分の質量が、添加した増粘剤の固形分に対して50質量%を超えないことをいう。上記増粘剤と水との混合物が、静置した場合に二相に分離するエマルジョン状態であっても、上記定義を満たせば、その増粘剤は水溶性であると規定する。
水溶性増粘剤(C)は、カルボキシメチルセルロース又はその塩(以下「カルボキシメチルセルロース(塩)」と略記することがある)を含むことが好ましい。水溶性増粘剤(C)がカルボキシメチルセルロース(塩)を含むことで、バインダー組成物を含むスラリー組成物を集電体上などに塗布する際の作業性をより良好とすることができる。
本発明のスラリー組成物は、水を含みうる。水は、スラリー組成物において溶媒及び/又は分散媒として機能する。通常、本発明のスラリー組成物では、架橋剤(A)は水に溶解しているか若しくは分散しており、粒子状結着剤(B)及び電極活物質は水に分散しており、水溶性増粘剤(C)は水に溶解している。
本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物は、上記成分の他に、導電剤、補強材、レベリング剤、電解液添加剤、セルロースナノファイバーなどの成分を含有していてもよい。これらとしては、電池反応に影響を及ぼさないものを適宜選択することができる。例えば公知のもの、具体的には国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池用バインダー組成物、電極活物質、水溶性増粘剤(C)、及び水等の他の任意の成分を、任意の順序で混合することにより調製しうる。例えば、電極活物質、水溶性増粘剤(C)及び水を混合して、さらに水で固形分濃度を調整して混合液を得、この混合液に、本発明のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物を添加し、さらに混合し、さらに必要に応じて脱泡処理等の任意の処理を施すことにより、スラリー組成物を得ることができる。
本発明の二次電池用電極の製造方法は、前記本発明のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を、集電体上に塗布、乾燥して、電極活物質層を形成することを含む。具体的には、本発明のスラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥して集電体上に電極活物質層を形成する工程(乾燥工程)と、任意に、電極活物質層を更に加熱する工程(加熱工程)とを含みうる。
スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的な塗布方法の例としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などが挙げられる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極活物質層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。乾燥方法の例としては、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極活物質層を形成し、集電体と電極活物質層とを備えるリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。スラリー組成物を乾燥する際には、加えられた熱により、架橋剤(A)を介した架橋反応が進行しうる。
また、電極活物質層の形成後に、加熱工程を実施して架橋反応を進行させ、架橋構造をさらに十分なものとすることが好ましい。該加熱工程は、80℃〜160℃で、1時間〜20時間程度行うことが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、正極、負極又はこれらの両方が、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法により製造された電極である。本発明の二次電池は、かかる電極を用いているので、電気的特性を向上させることができると共に、電極活物質層と集電体との密着性を確保することができる。本発明の二次電池は、例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、パソコン、電気自動車、定置型非常用蓄電池などに好適に用いることができる。
二次電池の正極及び負極のうち一方のみが本発明の製造方法により製造された電極である場合、他方の電極としては、既知の電極を用いうる。例えば、負極のみが本発明の製造方法により製造された電極である場合、正極は、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極としうる。また例えば、正極のみが本発明の製造方法により製造された電極である場合、負極は、リチウムイオン二次電池用負極として用いられる既知の負極としうる。
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのアルキルカーボネート系溶媒に、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチルなどの粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩の例としては、特開2012−204303号公報に記載のものが挙げられる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。
また、電解液としては、ポリマーおよび上記電解液を含有するゲル電解質であってもよく、さらには真性ポリマー電解質であってもよい。
セパレータの例としては、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。また、セパレータとして、非導電性粒子を本発明の二次電池用バインダー組成物で結着してなる多孔膜を備えるセパレータを使用してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電などの発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
バインダー組成物の粘度(単位:mPa・s)をB型粘度計で測定した後、40℃に加温したオーブンに1週間貯蔵した。貯蔵後に、B型粘度計で再び粘度を測定し、粘度変化を次式で計算し、下記評価基準にて評価した。
粘度変化(%)=(貯蔵後のバインダー組成物の粘度)/(貯蔵前のバインダー組成物の粘度)×100
A:110%未満
B:110%以上120%未満
C:120%以上130%未満
D:130%以上
バインダー組成物の固形分1g当りの、粒子状結着剤(B)の表面酸量(mmol/g)、及びバインダー組成物の固形分1g当りの、バインダー組成物水相中の酸量(mmol/g)を、下記の操作により測定した。
容量150mlのガラス容器を、蒸留水で洗浄した。この容器に、固形分濃度4%のバインダー組成物50gを入れ、溶液電導率計(京都電子工業社製:CM−117、使用セルタイプ:K−121)にセットして撹拌した。以後、撹拌は塩酸の添加が終了するまで継続した。バインダー組成物の電気伝導度が2.5〜3.0(mS)になるように、0.1規定の水酸化ナトリウム(和光純薬社製:試薬特級)をバインダー組成物に添加した後、6分経過してから電気伝導度を測定した。この値を測定開始時の電気伝導度とした。このバインダー組成物に0.1規定の塩酸(和光純薬社製:試薬特級)を0.5ml添加して30秒後に電気伝導度を測定した。測定直後に、再び0.1規定の塩酸を0.5ml添加して30秒後に電気伝導度を測定した。このように、塩酸の添加と、30秒後の電気伝導度の測定とを、バインダー組成物の電気伝導度が測定開始時の電気伝導度以上になるまで繰り返し行なった。
式(a):バインダー組成物の固形分1g当りの、粒子状結着剤(B)の表面酸量(mmol/g)=(A2−A1)/(バインダー組成物の固形分質量(g))
式(b):バインダー組成物の固形分1g当りの水相中の酸量(mmol/g)=(A3−A2)/(バインダー組成物の固形分質量(g))
式(c):バインダー組成物の固形分g当りの総酸量(mmol/g)=(A3−A1)/(バインダー組成物の固形分質量(g))
二次電池用電極を、幅1cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、電極活物質層側の表面を上にして固定した。試験片の電極活物質層側の表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がし、引き剥がすときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とした。この値が大きいほど、電極の密着強度が大きいことを示す。また、負極の評価においては、下記評価基準にて評価した。
A:5N/m以上
B:3N/m以上〜5N/m未満
C:3N/m未満
5個の単層ラミセル型電池を50℃雰囲気下、1.0Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電操作を繰り返し、電気容量を測定した。5個の平均値を測定値とし、200サイクル終了時の電気容量と5サイクル終了時の電気容量の比(%)で表される充放電容量保持率を求め、下記の評価基準により判定を行った。この値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
A:80%以上
B:60%以上80%未満
C:40%以上60%未満
D:40%未満
(1−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン32部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸3部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン64部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
工程(1−1)で得た粒子状結着剤(B)の水分散液1.5部(固形分基準)と、架橋剤(A)(ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製 製品名「カルボジライト(登録商標)SV−02」、NCN当量429、一相水溶性)0.075部(固形分基準)とを混合し(即ち、粒子状結着剤(B)100質量部に対して、架橋剤(A)5質量部となる質量比)、水を加えて固形分割合を40%に調整し、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物について、貯蔵安定性を試験し、且つ、粒子状結着剤(B)の表面酸量およびバインダー組成物水相の酸量を測定した。
水溶性増粘剤(C)としてカルボキシメチルセルロース(略称「CMC」、ダイセル化学工業株式会社製「Daicel 2200」)を用いた。水溶性増粘剤(C)の重合度は、1700、エーテル化度は0.65であった。
工程(1−3)で得たスラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmの銅箔の表面に、乾燥後の膜厚が150μmになるように塗布し、2分間乾燥(0.5m/分の速度、60℃)し、2分間加熱処理(120℃)して電極原反を得た。この電極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmの二次電池用負極を得た。得られた負極について、ピール強度の測定を行なった。
正極活物質としてのスピネル構造を有するLiCoO2を95部に、正極活物質層用結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を固形分量が3部となるように加え、さらに、アセチレンブラック2部及びN−メチルピロリドン20部を加えて、プラネタリーミキサーで混合し、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を得た。
工程(1−5)で得たリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が200μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極活物質を有する正極を得た。
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。
前記工程(1−6)で得られた正極を、4.6×4.6cm2の正方形に切り出し、矩形の正極を得た。
前記工程(1−4)で得られた負極を、5×5cm2の正方形に切り出し、矩形の負極を得た。
単層のポリプロピレン製セパレーター(セルガード社製「セルガード2500」)を、5×5cm2の正方形に切り抜き、矩形のセパレーターを得た。
矩形の正極を、その集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように、アルミニウム包材外装内部に配置した。矩形の正極の正極活物質層側の表面上に、矩形のセパレーターを配置した。さらに、矩形の負極を矩形のセパレーター上に、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うよう配置した。電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、単層ラミセル型のリチウムイオン二次電池を得た。
得られたリチウムイオン二次電池の充放電を、レート0.1Cで3回繰り返し、所定の容量が発現することを確認した後、高温サイクル特性を試験した。
工程(1−2)のバインダー組成物の調製において、架橋剤(A)として、ポリカルボジイミド(「カルボジライト(登録商標)SV−02」)に代えて、ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製、製品名「カルボジライト(登録商標)E−02」、NCN当量445、エマルジョン、実施例2)又は2,2’−ビス(2−オキサゾリン)(東京化成工業社製、オキサゾリン当量140、一相水溶性、実施例3)を用いた他は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
・工程(1−2)のバインダー組成物の調製において、架橋剤(A)の添加量(固形分基準)を0.01部(実施例4)、又は0.15部(実施例5)とした。
・工程(1−3)のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製において、バインダー組成物を、固形分基準で1.51部(即ち、粒子状結着剤1.5部及びポリカルボジイミド0.01部、実施例4)、又は1.65部(即ち、粒子状結着剤1.5部及びポリカルボジイミド0.15部、実施例5)とした。
(6−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン33.8部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸0.2部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン65部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(6−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(7−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン33部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸1部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン65部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(7−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(8−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン30部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸7部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン62部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(8−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(9−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン32.5部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸3部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン64部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(9−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(10−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン30部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸3部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン62部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート5部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(10−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
工程(1−1)の粒子状結着剤(B)の調製において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを加える時期を、重合転化率が50%になった時点(実施例11)、重合転化率が60%になった時点(実施例12)、又は重合転化率が85%になった時点(実施例13)とした他は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(14−1.粒子状結着剤(B)の調製)
重合缶Aに、イオン交換水74部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩)0.2部、過硫酸アンモニウム0.3部およびイオン交換水9.7部を加え、70℃に加温し30分攪拌した。次いで、上記とは別の重合缶Bに、2−エチルヘキシルアクリレート32部、アクリロニトリル64部、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてのイタコン酸3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.3部を投入し、イオン交換水74部を加えて攪拌することで、エマルジョンを作製した。作製したエマルジョンを、約200分かけて重合缶Bから、重合缶Aに逐次添加した後、重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。約180分攪拌し、単量体消費量が97%以上になったところで冷却して反応を終了した。これにより、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
工程(14−1)で得た粒子状結着剤(B)の水分散液1.5部(固形分基準)と、架橋剤(A)(ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製 製品名「カルボジライト(登録商標)SV−02」、NCN当量429、一相水溶性)0.12部(固形分基準)とを混合し(即ち、粒子状結着剤(B)100質量部に対して、架橋剤(A)8質量部となる質量比)、水を加えて固形分割合を40%に調整し、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物について、貯蔵安定性を試験し、且つ、粒子状結着剤(B)の表面酸量およびバインダー組成物水相の酸量を測定した。
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、Li(Ni0.5Co0.3Mn0.2)O2 98部、導電材としてのアセチレンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)2部および上記水溶性増粘剤(C)の1%水溶液(実施例1の工程(1−3)で用意したものと同じもの)1部(固形分基準)をそれぞれ加え、イオン交換水で固形分濃度80%に調整した後、25℃で60分間攪拌した。次に、イオン交換水で固形分濃度70%に調整した後、さらに25℃で15分間攪拌し、混合液を得た。
この混合液に、(14−2)で得たバインダー組成物を、固形分基準で1.62部(即ち、粒子状結着剤1.5部及びポリカルボジイミド0.12部)入れ、水を加えて最終固形分濃度が50%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良いリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を得た。
工程(14−3)で得たスラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmのアルミ箔の表面に、乾燥後の膜厚が80μmになるように塗布し、2分間乾燥(0.5m/分の速度、60℃)し、2分間加熱処理(120℃)して電極原反を得た。この電極原反をロールプレスで圧延して、正極活物質層の厚みが50μmのリチウムイオン二次電池用正極を得た。得られた正極についてピール強度の測定を行なったところ、ピール強度は30N/mであった。
工程(1−2)のバインダー組成物の調製において、架橋剤(A)を添加せず、粒子状結着剤(B)の添加量を1.575部(固形分基準)に変更した他は、実施例1の工程(1−1)〜(1−4)と同様にして、リチウムイオン二次負極を得た。
正極及び負極として、工程(1−6)で得られた正極及び工程(1−4)で得られた負極に代えて、工程(14−4)及び工程(14−5)で得られたものを用いた他は、実施例1の工程(1−7)と同様にして、リチウムイオン二次電池を得て評価した。
(C1−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン32.5部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸3部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン64.5部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート0.09部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(C1−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(C2−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン33部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸0.05部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン66部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(C2−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
(C3−1.粒子状結着剤(B)の調製)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン20部と、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体としてイタコン酸32部と、芳香族ビニル単量体としてスチレン47部と、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部と、イオン交換水150部と、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.4部と、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部とを入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が70%になった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート1部を加えた。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着剤(B)の水分散液を得た。
粒子状結着剤(B)の水分散液として、実施例1の工程(1−1)で得たものに代えて、前記工程(C3−1)で得たものを用いた他は、実施例1の工程(1−2)〜(1−7)と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
工程(1−1)の粒子状結着剤(B)の調製において、2−ヒドロキシエチルアクリレートを加える時期を、重合転化率が0%の時点(即ち重合開始と同時、比較例4)、又は重合転化率が40%になった時点(比較例5)とした他は、実施例1と同様にして、バインダー組成物、負極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。
工程(16−2)のバインダー組成物の調製において、架橋剤(A)を添加せず、粒子状結着剤(B)の添加量を1.62部(固形分基準)に変更した他は、実施例16と同様にして、バインダー組成物を得て評価し、さらに、正極、及びリチウムイオン二次電池を得て評価した。得られた正極についてピール強度の測定を行なったところ、ピール強度は8N/mであった。
使用(A):使用した架橋剤(A)。SV−02:ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製 製品名「カルボジライト(登録商標)SV−02」、NCN当量429、一相水溶性。E−02:ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製、製品名「カルボジライト(登録商標)E−02」、NCN当量445、エマルジョン。オキサゾリン:2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、東京化成工業社製、オキサゾリン当量140、一相水溶性。
(A)添加量:架橋剤(A)の添加量。粒子状結着剤(B)100質量部に対する割合(部)
表面酸量:粒子状結着剤(B)の表面酸量(mmol/g)
水相中酸量:バインダー組成物の水相の酸量(mmol/g)
酸量比:(粒子状結着剤(B)の表面酸量(mmol/g))/(バインダー組成物の水相の酸量(mmol/g))
イタコン酸量:粒子状結着剤(B)の調製に用いたイタコン酸の量(部)
2HEA量:粒子状結着剤(B)の調製に用いた2−ヒドロキシエチルアクリレートの量(部)
2HEA添加時転化率:2−ヒドロキシエチルアクリレートを添加する時期の、その他の単量体の重合転化率(%)
St量:粒子状結着剤(B)の調製に用いたスチレンの量(部)
Bd量:粒子状結着剤(B)の調製に用いた1,3−ブタジエンの量(部)
貯蔵安定:貯蔵安定性試験の評価結果
ピール強度:ピール強度の評価結果
サイクル特性:サイクル特性の評価結果
本願規定の範囲内で架橋剤(A)の量を実施例1と異なる値に調整した実施例4及び5も、貯蔵安定性、ピール強度、及びサイクル特性の全てにおいてバランスのとれた高い性能を示すことがわかる。
本願規定の範囲内で粒子状結着剤(B)の表面酸量及び水層中酸量を実施例1と異なる値に調整した実施例6〜10も、貯蔵安定性、ピール強度、及びサイクル特性において高い性能を示すことがわかる。一方粒子状結着剤(B)の表面酸量及び水層中酸量が本願規定の範囲外である比較例2及び3は、貯蔵安定性、ピール強度、サイクル特性が劣ることがわかる。
本願規定の範囲内で粒子状結着剤(B)の表面酸量と水相酸量との割合を実施例1と異なる値に調整した実施例11〜13も、貯蔵安定性、ピール強度、及びサイクル特性において高い性能を示すことがわかる。一方粒子状結着剤(B)の表面酸量と水相酸量との割合が本願規定の範囲外である比較例1、4及び5は貯蔵安定性、ピール強度、及びサイクル特性が劣ることがわかる。
本発明のバインダー組成物を正極に適用した実施例14と、比較例6との対比から、本発明のバインダー組成物を正極に適用しても、ピール強度及びサイクル特性において有利な効果が得られることがわかる。
Claims (10)
- 架橋剤(A)、粒子状結着剤(B)及び水を含み、水相及び固相を有する、リチウムイオン二次電池用バインダー組成物であって、
前記架橋剤(A)は、カルボン酸と反応する官能基を有し、
前記粒子状結着剤(B)は、エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位を含有し、
前記バインダー組成物の固形分質量全量に対する、前記粒子状結着剤(B)の表面酸量の割合が0.01mmol/g以上1.0mmol/g以下であり、
前記バインダー組成物の固形分質量全量に対する、前記水相中の酸量の割合が0.01mmol/g以上1.0mmol/gであり、
前記表面酸量の割合の値を、前記水相中の酸量の割合の値で除した値が、1.0以上であるリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。 - 前記粒子状結着剤(B)における、前記エチレン性不飽和カルボン酸基単量体単位の割合が、0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記粒子状結着剤(B)が、さらに、エチレン性不飽和水酸基含有単量体単位を、0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記架橋剤(A)が、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、および、カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記粒子状結着剤(B)が、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 前記粒子状結着剤(B)100質量部に対する前記架橋剤(A)の量が、0.001質量部以上20質量部以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用バインダー組成物、電極活物質、及び水溶性増粘剤(C)を含有するリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
- 前記水溶性増粘剤(C)が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、および、これらの塩、からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物。
- 請求項7又は8に記載のリチウムイオン二次電池用スラリー組成物を、集電体上に塗布、乾燥して、電極活物質層を形成することを含む、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
- 正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極、前記負極、またはこれらの両方が、請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法により製造された電極である、リチウムイオン二次電池。
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