以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態によるオイルポンプ100の構成について説明する。なお、以下では、エンジン80を基準とした場合にクランクシャフト90がX軸に沿って延びるとともにピストン82がZ軸に沿って往復動するものとして説明を行う。
本発明の第1実施形態によるオイルポンプ100は、図1に示すように、エンジン80を備えた自動車(図示せず)に搭載されている。オイルポンプ100は、オイルパン81内のオイル(潤滑油)1を汲み上げて、ピストン82まわりやクランクシャフト90などの可動部(摺動部)に供給(圧送)する機能を有している。なお、クランクシャフト90は、本発明の「駆動軸部」の一例である。また、エンジン80においてクランクシャフト90によってオイルポンプ100が回転駆動される構成は、本発明の「オイルポンプユニット」の一例である。
内接歯車型のオイルポンプ100は、図2に示すように、アルミニウム合金製のケーシング部10と、ケーシング部10に収容されるとともにケーシング部10内で回転可能に設けられたインナロータ20およびアウタロータ30と、ケーシング部10のX1側の開口部15(図4参照)をエンジン80の内側(クランク室85(図1参照)側)から封止するアルミニウム合金製のポンプカバー40と、ケーシング部10のX2側の開口部16(図4参照)に嵌め込まれた円環状のオイルシール50とを備えている。なお、ケーシング部10は、エンジン80の側面(X1側)を覆うチェーンカバー10aの一部により構成されている。また、インナロータ20の回転中心A(X軸)となるシャフト挿入孔22には、クランクシャフト90のX2側の端部領域(後述するロータ挿入軸部92)が貫通されるように構成されており、インナロータ20には、エンジン80(図1参照)の駆動力が直接的に伝達されるように構成されている。なお、インナロータ20およびアウタロータ30は、本発明の「オイルポンプロータ」の一例である。また、ケーシング部10およびポンプカバー40は、それぞれ、本発明の「ポンプハウジング」および「カバー」の一例である。
ここで、図3に示すように、インナロータ20の回転中心A(クランクシャフト90の軸心)は、アウタロータ30の回転中心Bに対して矢印Z2方向に一定量だけ偏心している。クランクシャフト90およびインナロータ20が矢印R1方向(時計回り方向)に回転されると、アウタロータ30は同じ方向に若干の遅れを有して回転される。回転の際、インナロータ20とアウタロータ30との距離の短いところ(Z2側の領域)では、インナロータ20の外歯21とアウタロータ30の内歯31とが噛み合う一方、距離の遠い方(Z1側の領域)ではインナロータ20の歯が1枚少ないために、アウタロータ30との間にしだいに隙間(容積室U)が形成される。また、容積室Uが矢印R1方向への回転移動とともに拡大したり縮小したりしてポンプ機能が生み出される。したがって、容積室Uの極小値から極大値への容積変化(拡大)に伴いオイル1(図1参照)が容積室Uに吸引され、容積室Uの極大値から極小値への容積変化(縮小)に伴い容積室Uに保持されたオイル1が容積室Uから外部に吐出される。なお、インナロータ20の回転中心Aに設けられたシャフト挿入孔22は、小判型の孔形状を有している。また、シャフト挿入孔22は、クランクシャフト90の後述するロータ挿入軸部92よりもひとまわり大きい開口断面形状を有している。
また、図1および図2に示すように、オイルポンプ100には、オイル1を吸入するための吸入油路11と、オイル1を吐出するための吐出油路12とが設けられている。吸入油路11および吐出油路12は、ケーシング部10およびポンプカバー40の各々の内面(インナロータ20およびアウタロータ30を回転可能に挟み込む側の対向面)に凹状を有して形成されている。また、吸入油路11および吐出油路12は、ケーシング部10にポンプカバー40が取り付けられた状態で各々が所定の流路形状を有して形成されている。また、図3において二点鎖線を用いて示すように、吸入油路11の先端の吸入ポート11aおよび吐出油路12の先端の吐出ポート12aが、インナロータ20およびアウタロータ30の噛み合い領域に配置されている。
したがって、図1に示すように、オイルポンプ100は、オイル1をオイルパン81から吸入油路11を介して吸引した後、容積室U(図3参照)の容積縮小とともに所定の油圧を発生させた状態で吐出油路12から吐出する機能を有している。そして、オイル1は、吐出経路2を介してオイルフィルタ83に向けて圧送される。また、オイルフィルタ83を通過して異物が除去されたオイル1は、エンジン80内の可動部(摺動部)に給油される。また、エンジン80内に供給されたオイル1は、戻り油路3を介してクランク室85下部のオイルパン81に戻される。
また、図2に示すように、ポンプカバー40には、クランクシャフト90のX2側の端部領域(後述するロータ挿入軸部92)を挿入するためのシャフト挿入孔41が設けられている。シャフト挿入孔41は、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42から合わせ面42とは反対側のポンプカバー40の表面43までをX軸に沿って貫通している。なお、シャフト挿入孔41は、本発明の「駆動軸部挿入孔」の一例である。
また、クランクシャフト90は、図示しないクランクピンおよびバランスウェイトがクランクジャーナル91に接続されて構成されている。また、クランクジャーナル91のX2側の端部には、インナロータ20のシャフト挿入孔22に挿入されるロータ挿入軸部92が接続されている。ロータ挿入軸部92は、外周面92aの両側方にDカット加工が施された断面を有している。また、ロータ挿入軸部92のX2側の端部には、ベルトプーリ84(図4参照)が嵌合されて締結部材60(図4参照)により固定される軸端部93が接続されている。軸端部93は、ロータ挿入軸部92の一対のDカット面92b間(図3参照)の長さを外径にもつ円形状の断面を有している。また、ベルトプーリ84が軸端部93に固定された状態で、ベルトプーリ84のボス部84aの外周部(外側面)が、ケーシング部10のX2側の開口部16に嵌め込まれたオイルシール50に対して摺動可能に挿入されている。なお、クランクジャーナル91は、本発明の「径大部」の一例である。また、ロータ挿入軸部92は、本発明の「径大部以外の部分」の一例である。
そして、図4に示すように、インナロータ20およびアウタロータ30がケーシング部10に収容された状態で、ポンプカバー40は、矢印X2方向に沿ってケーシング部10に対して締結部材70により装着される。なお、図3に示すように、複数の締結部材70によって、ポンプカバー40の外周部とこれに対応するケーシング部10(図4参照)の外周部とが互いに締結される。そして、図4に示すように、クランクシャフト90が、軸端部93およびロータ挿入軸部92の順にポンプカバー40のシャフト挿入孔41に挿入されるとともに、軸端部93がオイルシール50に嵌め込まれ、ロータ挿入軸部92がインナロータ20のシャフト挿入孔22に挿入される。クランクシャフト90の矢印R1方向への回転とともにインナロータ20およびアウタロータ30が回転駆動されることにより、吸入ポート11a(図3参照)から吸い込まれたオイル1が吐出ポート12a(図3参照)から吐出される。この際、図3および図4に示すように、オイルポンプ100の構造上、容積室Uおよび吐出ポート12aを流動中のオイル1の一部は、ロータ挿入軸部92とシャフト挿入孔22との隙間Sに向かって漏れ出てしまう。
ここで、第1実施形態では、図4および図5に示すように、クランクシャフト90には、ロータ挿入軸部92の外周面92aから半径方向外側に周状(円周状)に突出する周状壁面部94が設けられている。すなわち、外径D1を有するクランクジャーナル91は、外径D2を有するロータ挿入軸部92よりも周状壁面部94の分だけ直径が増加されている(外径D1>外径D2である)。また、周状壁面部94は、ロータ挿入軸部92とクランクジャーナル91との境界に位置する段差面94aにより構成されている。なお、段差面94aは、ロータ挿入軸部92からクランクジャーナル91に向かってX軸に対して一定の傾斜角度を有して直線的に延びている。そして、図4に示すように、エンジン80にオイルポンプ100が組み込まれた状態で、周状壁面部94の最外周部分94b(クランクジャーナル91の外径D1に等しい部分)が、ポンプカバー40のシャフト挿入孔41内において、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42(X2側)と、合わせ面42とは反対側(X1側)のポンプカバー40の表面43との間に位置するように構成されている。
また、図4に示すように、周状壁面部94が配置されているポンプカバー40のシャフト挿入孔41は、インナロータ20側(X2側)の内径d2がインナロータ20とは反対側(X1側)の内径d1よりも大きくなる(内径d2>内径d1である)形状を有するように形成されている。すなわち、シャフト挿入孔41は、クランク室85側(X1側)からオイルポンプ100の内部に向かう厚み方向(X軸方向)に沿って内径d1から内径d2へと内径が徐々に大きくなる(末広がり状に広がる)内側面41aを有して構成されている。なお、内径d1および内径d2は、共に、周状壁面部94の最外周部分94bの外径D1よりも大きい。
また、第1実施形態では、図3〜図5に示すように、クランクシャフト90には、ロータ挿入軸部92の一対のDカット面92bを除く外周面92aには、オイル1を周状壁面部94に導く複数(合計12本)の溝部95が形成されている。また、溝部95は、各々が、インナロータ20のX2側の側端面よりも若干オイルシール50側の位置からシャフト挿入孔22に対応する領域を経て周状壁面部94の起点部(ロータ挿入軸部92のX1側の端部)まで、X軸に沿って直線的に延びるように設けられている。
これにより、オイルポンプ100が回転駆動中に吐出ポート12aなどからロータ挿入軸部92のDカット面92bを含む外周面92a付近に漏れ出たオイル1は、図4に示すように、インナロータ20のX2側の側端面近傍から隙間Sに流れ込み、ロータ挿入軸部92の外周面92aおよび溝部95内を流通して周状壁面部94へと矢印X1方向に沿って移動される。そして、外周面92aおよび溝部95内を流通したオイル1は、周状壁面部94が回転されるのに伴って、段差面94aに沿って遠心方向(周状壁面部94の半径方向外側)にさらに移動される。そして、ポンプカバー40の合わせ面42と表面43との間に位置する周状壁面部94の最外周部分94bにおいて遠心力により、さらに外側へと跳ね飛ばされる。そして、外側へ跳ね飛ばされたオイル1は、シャフト挿入孔41の傾斜面からなる内側面41aを伝って表面43側から内径の拡大された合わせ面42側へと移動されるとともに、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42へと供給される。
ここで、ケーシング部10とポンプカバー40とは締結部材70により互いに締結されているが、オイルポンプ100の駆動とともに吐出ポート12aの油圧がケーシング部10およびポンプカバー40の双方に作用して各々を僅かに変形させる。また、シャフト挿入孔41まわりには締結部材70(図3参照)が設けられていないので、ポンプカバー40の変形は締結部材70が締め込まれた外周部に対して相対的に大きくなる。したがって、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42にも僅かな隙間が生じる。また、吐出ポート12a(吐出油路12)から漏れ出たオイル1は、合わせ面42に生じた隙間を介してクランク室85側に漏れ出る。また、これと同時に、吸入ポート11a側の領域では、吸入ポート11aの負圧によりクランク室85内のエア(空気)が、ロータ挿入軸部92とシャフト挿入孔22との隙間Sや、合わせ面42に生じた隙間を介して吸入ポート11aに引き込まれる。
しかしながら、第1実施形態では、吐出ポート12aから漏れ出たオイル1は、周状壁面部94の回転運動を利用して隙間が生じやすい合わせ面42へと供給される構成を備えている。これにより、合わせ面42に生じた隙間にオイル1が吸い込まれて満たされた状態となるので、クランク室85内のエア(空気)は、合わせ面42に生じた隙間を介して吸入ポート11aには吸い込まれなくなる。すなわち、合わせ面42の隙間に満たされたオイル1により、クランク室85に対するエアシール機能が図られる。また、合わせ面42の隙間に満たされたオイル1は、吸入ポート11aの負圧により、再び、吸入ポート11aに吸い込まれるが、周状壁面部94の回転により補充された新たなオイル1が合わせ面42の隙間に効率よく供給される。すなわち、漏れ出たオイル1をオイルパン81から新たに吸引して吐出する必要がなくなる。オイルポンプ100では、漏れ出たオイル1の内部循環が図られることにより、エアシール機能と、無駄仕事の回収とが図られている。第1実施形態におけるオイルポンプ100は、上記のように構成されている。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、上記のように、クランクシャフト90にクランクシャフト90の外周面92aから周状に突出する周状壁面部94を設けるとともに、周状壁面部94の最外周部分94bがシャフト挿入孔41内において、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42と、合わせ面42とは反対側のポンプカバー40の表面43との間に位置するように構成する。これにより、オイルポンプ100の回転駆動中に吐出ポート12aからインナロータ20のシャフト挿入孔22とロータ挿入軸部92の外周面92aとの間の隙間Sを伝って漏れ出たオイル1が周状壁面部94に到達するとともに、回転中の周状壁面部94において遠心力により半径方向外側へと移動される。そして、半径方向外側へ移動されたオイル1は、ポンプカバー40の合わせ面42と表面43との間に位置する周状壁面部94の最外周部分94bから遠心方向(半径方向外側)に跳ね飛ばされて、シャフト挿入孔41の内側面41aを伝ってケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42に供給される。したがって、ポンプカバー40のシャフト挿入孔41周辺におけるケーシング部10との合わせ面42の部分に生じた隙間に、このオイル1を溜め込むことができるので、吸入ポート11aの吸引圧力(負圧)に起因してシャフト挿入孔41周辺からエアが吸い込まれるのを抑制することができる。また、オイルパン81から吸入ポート11aを介して吸引されたオイル1に泡噛み(エアレーション)が発生するのを抑制することができるので、泡噛みに起因してオイルポンプ100の性能が低下するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、インナロータ20内の高圧部(吐出ポート12a)から一度漏れ出たオイル1をクランク室85下部のオイルパン81に無駄に放出することなく、オイルポンプ100に留まらせてケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42に再度供給することができる。これにより、合わせ面42に再度供給されたオイル1をインナロータ20内の低圧(吸引)部(吸入ポート11aに対応する部位)から再び吸引することができる。すなわち、漏れ出たオイル1に相当する油量をオイルパン81から新たに吸引して吐出する必要がなくなるので、オイルポンプ100のオイル漏れによる無駄仕事をなくすことができる。
また、第1実施形態では、インナロータ20側(X2側)の内径d2がインナロータ20とは反対側(X1側)の内径d1よりも大きくなる形状を有するようにポンプカバー40のシャフト挿入孔41を構成する。これにより、周状壁面部94の最外周部分94bから遠心方向(半径方向外側)に跳ね飛ばされたオイル1をシャフト挿入孔41におけるインナロータ20側の合わせ面42近傍に容易に導くことができる。したがって、ポンプカバー40のシャフト挿入孔41におけるケーシング部10との合わせ面42の部分に生じた隙間に、周状壁面部94の最外周部分94bから遠心方向に跳ね飛ばされたオイル1を確実に供給して吸い込ませることができる。
また、第1実施形態では、クランクシャフト90は、インナロータ20に挿入(貫通)されるロータ挿入軸部92と、ポンプカバー40のシャフト挿入孔41近傍から外部(エンジン80のクランク室85)に延びるように設けられたクランクジャーナル91を含む。そして、クランクジャーナル91とロータ挿入軸部92との境界に位置する段差面94aにより周状壁面部94を構成する。これにより、クランクジャーナル91とロータ挿入軸部92との境界に位置する段差面94aを利用して、ロータ挿入軸部92の外周面92aから周状に突出する周状壁面部94をクランクシャフト90に容易に設けることができる。また、この段差面94aを利用して、吐出ポート12aからインナロータ20のシャフト挿入孔22とロータ挿入軸部92の外周面92aとの間の隙間Sを伝って漏れ出たオイル1を、遠心力により半径方向外側へと効率よく移動させることができる。
また、第1実施形態では、インナロータ20側(X2側)から周状壁面部94(X1側)に向かって延びるように設けられ、オイル1を周状壁面部94に導く複数の溝部95をクランクシャフト90(ロータ挿入軸部92)の外周面92aに設ける。これにより、吐出ポート12aからインナロータ20のシャフト挿入孔22とロータ挿入軸部92の外周面92aとの間の隙間Sを伝って漏れ出たオイル1を、回転中のロータ挿入軸部92の外周面92aの溝部95を伝わせて周状壁面部94(段差面94a)に容易に導くことができる。すなわち、周状壁面部94へのオイル1の供給量を確実に確保することができるので、周状壁面部94(段差面94a)からケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42にも効率よくオイル1を供給することができる。
(第1実施形態の変形例)
次に、図5〜図7を参照して、本発明の第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、周状壁面部194がインナロータ20のシャフト挿入孔22に若干入り込んだ位置からクランクジャーナル91に向かって延びるようにクランクシャフト190を構成した例について説明する。なお、クランクシャフト190は、本発明の「駆動軸部」の一例である。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
第1実施形態の変形例におけるオイルポンプ105は、図6に示すように、エンジン80におけるクランクシャフト190により回転駆動される。また、クランクシャフト190は、図7に示すように、クランクジャーナル91とロータ挿入軸部92との間に、上記第1実施形態のクランクシャフト90(図5参照)における周状壁面部94の段差面94a(図5参照)よりも大きい表面積からなる周状壁面部194(段差面194a)が形成されている。なお、エンジン80においてクランクシャフト190によってオイルポンプ105が回転駆動される構成は、本発明の「オイルポンプユニット」の一例である。
そして、図6に示すように、オイルポンプ105が組み込まれた状態では、周状壁面部194の段差面194aのX2側の端部がインナロータ20のシャフト挿入孔22のX1側の開口部に若干挿入された位置を起点として、シャフト挿入孔41内をクランクジャーナル91に向かって斜め方向に延びている。また、この場合においても、周状壁面部194の最外周部分194b(クランクジャーナル91の外径D2に等しい部分)は、ポンプカバー40のシャフト挿入孔41内において、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42(X2側)とポンプカバー40の表面43(X1側)のとの間に位置するように構成されている。
なお、図7に示すように、ロータ挿入軸部92の外周面92aに形成されている複数の溝部195の各々は、段差面194aの起点がシャフト挿入孔22に若干入り込んでいる分、段差面194aにも形成された端部195aを有している。これにより、図6に示すように、オイルポンプ105が回転駆動中に吐出ポート12aなどからロータ挿入軸部92の外周面92a付近に漏れ出たオイル1は、インナロータ20のX2側の側端面近傍から隙間Sに流れ込み、ロータ挿入軸部92の溝部195を流通して周状壁面部194へと矢印X1方向に沿って移動される。そして、溝部195を流通したオイル1は、周状壁面部194が回転されるのに伴って、段差面194aに沿って遠心方向(周状壁面部194の半径方向外側)にさらに移動され、最外周部分194bにおいて遠心力によりさらに外側へと跳ね飛ばされる。そして、外側へ跳ね飛ばされたオイル1は、シャフト挿入孔41の内側面を伝って表面43側から内径の拡大された合わせ面42側へと傾斜面を移動されるとともに、ケーシング部10とポンプカバー40との合わせ面42へと供給される。
なお、段差面194aの位置が異なる点を除いて、インナロータ20まわりの構造を含めたオイルポンプ105は、上記第1実施形態のオイルポンプ100と同様に構成されている。
第1実施形態の変形例では、上記のように、周状壁面部194の段差面194aのX2側の端部がインナロータ20のシャフト挿入孔22のX1側の開口部に若干挿入されるようにクランクシャフト190をインナロータ20に組み付けるように構成する。これにより、ロータ挿入軸部92の溝部195を流通して周状壁面部194へと矢印X1方向に沿って移動されるオイル1をより迅速に周状壁面部194に到達させるとともに、回転される段差面194aに沿って遠心方向に移動させることができる。
また、第1実施形態の変形例では、複数の溝部195の各々を、ロータ挿入軸部92の外周面92aのみならず段差面194aにも形成した端部195aを有するように構成する。これにより、ロータ挿入軸部92の溝部195を流通して周状壁面部194へと矢印X1方向に沿って移動されるオイル1を、確実に周状壁面部194の段差面194aに到達させることができる。なお、第1実施形態の変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態)
次に、図3および図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、クランクジャーナル291とロータ挿入軸部92との境界部分において半径方向外側に突出する鍔状部294を設けてクランクシャフト290を構成した例について説明する。なお、クランクシャフト290は、本発明の「駆動軸部」の一例である。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
第2実施形態におけるオイルポンプ200は、図8に示すように、エンジン80におけるクランクシャフト290により回転駆動される。また、クランクシャフト290は、クランクジャーナル291とロータ挿入軸部92との間に鍔状部294が形成されている。なお、クランクジャーナル291の外径D1とロータ挿入軸部92の外径D2とは、ほぼ等しい。また、鍔状部294は、ロータ挿入軸部92の外周面92aから半径方向外側に外周面92aに対して垂直に突出するように形成されており、鍔状部294は、クランクジャーナル291およびロータ挿入軸部92よりも大きい外径D3を有している。また、鍔状部294は、ロータ挿入軸部92とクランクジャーナル291との境界領域に位置する円周状(円環状)の垂直な側面294aにより構成されている。なお、エンジン80においてクランクシャフト290によってオイルポンプ200が回転駆動される構成は、本発明の「オイルポンプユニット」の一例である。
そして、図8に示すように、オイルポンプ200が組み込まれた状態で、鍔状部294の最外周部分294b(外径D3である部分)が、ポンプカバー240のシャフト挿入孔241内において、ケーシング部10とポンプカバー240との合わせ面242(X2側)と、合わせ面242とは反対側(X1側)のポンプカバー240の表面243との間に位置するように構成されている。そして、鍔状部294は、X1側の側面294cが、ポンプカバー240の表面243よりも外側(クランク室85側)に突出しないように構成されている。なお、ポンプカバー240は、本発明の「カバー」の一例である。また、シャフト挿入孔241は、本発明の「駆動軸部挿入孔」の一例である。また、表面243は、本発明の「合わせ面とは反対側のカバーの表面」の一例である。
また、第2実施形態では、ポンプカバー240のシャフト挿入孔241は、インナロータ20とは反対側(X1側)に設けられ、内径d1を有する小径部分241aと、小径部分241aのインナロータ20側(X2側)に段差を介して隣接するように設けられ、内径d1よりも大きい内径d2を有する大径部分241bとを有している。すなわち、シャフト挿入孔241は、クランク室85側(X1側)からオイルポンプ200の内部に向かう厚み方向(X軸方向)に沿って内径d1から内径d2へと内径が階段状に大きくなるように構成されている。また、小径部分241aに対して大径部分241bがひとまわり大きく形成されることによって、合わせ面242には周状に凹部241c(切欠き部)が形成されている。
これにより、オイルポンプ200が回転駆動中に吐出ポート12aなどからロータ挿入軸部92の外周面92a付近に漏れ出たオイル1は、インナロータ20のX2側の側端面近傍から隙間Sに流れ込み、ロータ挿入軸部92の外周面92aおよび溝部95内を流通して鍔状部294へと矢印X1方向に沿って移動される。そして、外周面92aおよび溝部95内を流通したオイル1は、鍔状部294が回転されるのに伴って、側面294aに沿って遠心方向(鍔状部294の半径方向外側)にさらに移動され、最外周部分294bにおいて遠心力によりさらに外側へと跳ね飛ばされる。そして、外側へ跳ね飛ばされたオイル1は、表面243側からシャフト挿入孔241の小径部分241aを伝って凹状(切欠き状)を有する大径部分241b(凹部241c)に溜まり込む。そして、大径部分241bに溜まり込んだオイル1は、ケーシング部10とポンプカバー240との合わせ面242へと供給される。
なお、鍔状部294を有するクランクシャフト290により回転駆動させる点を除いて、インナロータ20まわりの構造を含めたオイルポンプ200は、上記第1実施形態のオイルポンプ100と同様に構成されている。
第2実施形態では、上記のように、クランクシャフト290は、ポンプカバー40シャフト挿入孔41近傍に設けられた鍔状部294を含み、鍔状部294は、鍔状部294のインナロータ20側の側面294aにより構成されている。これにより、ポンプカバー240のシャフト挿入孔241近傍に設けられた側面294aを利用して、ロータ挿入軸部92の外周面92aから周状に突出する鍔状部294をクランクシャフト290に容易に設けることができる。また、この側面294a(鍔状部294)を利用して、吐出ポート12aからインナロータ20のシャフト挿入孔22(ロータ挿入軸部92の外周面92a付近)を伝って漏れ出たオイル1を、遠心力により半径方向外側へと効率よく移動させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図3および図8〜図10を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、クランクシャフト390におけるクランクジャーナル391と同軸状に装着されて回転駆動されるスプロケット301に周状壁面部304を設けた例について説明する。なお、クランクシャフト390およびスプロケット301は、本発明の「駆動軸部」の一例である。また、図中において、上記第2実施形態と同様の構成には、第2実施形態と同じ符号を付して図示している。
第3実施形態におけるオイルポンプ300は、図9に示すように、エンジン80におけるクランクシャフト390により回転駆動される。ここで、クランクシャフト390は、クランクジャーナル391にタイミングチェーン86に駆動力を伝達するためのスプロケット301が同軸状に嵌合されて装着されている。なお、ベルトプーリ84が嵌合される軸端部393の外径は、クランクジャーナル391の外径と等しい。また、スプロケット301は、中空軸状の胴部302に、タイミングチェーン86に噛み合うギア部303が一体化されて構成されている。また、オイルポンプ300が組み込まれた状態で、スプロケット301の胴部302は、X2側の端部領域が、ポンプカバー240のシャフト挿入孔241を貫通してインナロータ20のシャフト挿入孔22(図3参照)に確実に係合する位置まで延びている。なお、エンジン80においてクランクシャフト390によってオイルポンプ300が回転駆動される構成は、本発明の「オイルポンプユニット」の一例である。
ここで、第3実施形態では、スプロケット301の胴部302には、周状壁面部304が一体的に形成されている。周状壁面部304は、胴部302の外周面302aから半径方向外側に外周面302aに対して垂直に突出する段差面304aを有している。そして、段差面304aの半径方向の最外周部となる周状壁面部304の最外周部分304b(外径D3である部分)が、ポンプカバー240のシャフト挿入孔241内において、ケーシング部10とポンプカバー240との合わせ面242(X2側)と、反対側の表面243との間に位置するように構成されている。また、胴部302は、段差面304a(周状壁面部304)の最外周部分304bと同じ外径D3を有して矢印X1方向に延びる外周部302bを有している。この外周部302bは、シャフト挿入孔241を矢印X1方向に延びてギア部303まで達している。なお、外周部302bは、本発明の「径大部」の一例である。また、胴部302における外周面302aを有する部分は、本発明の「径大部以外の部分」の一例である。
また、第3実施形態では、図10に示すように、スプロケット301には、胴部302の外周面302aの一部にオイル1を周状壁面部304に導く複数の溝部305が形成されている。また、溝部305は、インナロータ20のX2側の側端面よりも若干オイルシール50(図9参照)側の位置から周状壁面部304の起点部(胴部302のX1側の端部)まで、X軸に沿って直線的に延びている。
これにより、オイルポンプ300が回転駆動中に吐出ポート12aなどから胴部302の外周面302a付近に漏れ出たオイル1は、インナロータ20のX2側の側端面近傍から隙間Sに流れ込み、胴部302の外周面302aおよび溝部305内を流通して周状壁面部304へと矢印X1方向に沿って移動される。そして、オイル1は、周状壁面部304が回転されるのに伴って段差面304aに沿って遠心方向(周状壁面部304の半径方向外側)にさらに移動され、最外周部分304bにおいて遠心力によりシャフト挿入孔241に跳ね飛ばされて、最終的に、合わせ面242へと供給される。
なお、周状壁面部304を有するスプロケット301が同軸状に装着されたクランクシャフト390により回転駆動させる点を除いて、インナロータ20まわりの構造を含めたオイルポンプ300は、上記第2実施形態のオイルポンプ200(図8参照)と同様に構成されている。
第3実施形態では、上記のように、クランクシャフト390におけるクランクジャーナル391にスプロケット301を装着するとともに、スプロケット301の胴部302に周状壁面部304を設けるように構成する。これにより、クランクジャーナル391の外径を増加させて周状壁面部94(図5参照)や鍔状部294(図7参照)を設ける場合と異なり、クランクジャーナル391の外径を変更(増加)させることなくスプロケット301側の形状(外径)をアレンジすることによってオイル1を跳ね飛ばす周状壁面部304をオイルポンプ300内に容易に設けることができる。また、タイミングチェーン86に駆動力を伝達するスプロケット301を有効に利用して周状壁面部304を設けることができるので、スプロケット301の設計変更によってオイル1への泡噛みを抑制するという効果を容易に得ることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および2実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例および第2実施形態におけるオイルポンプユニットでは、クランクシャフト90(190、290)のロータ挿入軸部92をインナロータ20のシャフト挿入孔22に挿入してオイルポンプ100(105、200)を駆動させた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、クランクシャフト90の駆動力をベルト/プーリ機構を介して取り出すとともに、プーリ軸心に取り付けられた駆動軸部をインナロータ20のシャフト挿入孔22に挿入(固定)してオイルポンプを駆動させるように構成されたオイルポンプユニットに対しても、本発明を適用することは可能である。
また、上記第1実施形態およびその変形例では、ロータ挿入軸部92からクランクジャーナル91(191)に向かってX軸に対して一定の傾斜角度を有して直線的に延びる傾斜面からなる段差面94a(194a)を周状壁面部94(194)に設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ロータ挿入軸部92から最外周部分にいくにしたがって傾斜角度が徐々に大きくなるように周状壁面部の段差面を構成してもよい。また、たとえば、上記第2実施形態のように、ロータ挿入軸部92の外周面92aから半径方向外側に垂直に延びた段差面を有する周状壁面部をクランクシャフト90に設けるように構成してもよい。
上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態では、クランクシャフト90(190、290)におけるロータ挿入軸部92の外周面92aに溝部95(195)を設け、上記第3実施形態では、スプロケット301における胴部302の外周面302aに溝部305を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、このような溝部95(195、305)をクランクシャフト90のロータ挿入軸部92や胴部302の外周面302aに設けなくてもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例および第2実施形態では、クランクシャフト90(190、290)におけるロータ挿入軸部92の外周面92aにおいてX軸に沿って直線的に延びる溝部95(195)を設け、上記第3実施形態では、スプロケット301における胴部302の外周面302aにおいてX軸に沿って直線的に延びる溝部395を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X軸まわりに所定の割合で旋回しながらインナロータ20のX2側の側端面よりも若干オイルシール50側の位置からシャフト挿入孔22に対応する領域を経て周状壁面部94の起点部(ロータ挿入軸部92のX1側の端部)まで連続的に延びるような溝部を設けるように構成してもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態および第3実施形態では、ケーシング部10およびポンプカバー40(240)をアルミニウム合金を用いて構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ケーシング部10およびポンプカバー40(240)の少なくとも一方が樹脂製であってもよい。金属製よりも樹脂製のほうがより変形しやすいが、合わせ面42(242)に供給されたオイル1によって変形により生じた隙間のエアシールを有効に行うことができる。
また、上記第3実施形態では、スプロケット301を利用してその胴部302に周状壁面部304を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、胴部302のみからなり外径を調整可能なカラー部材などをクランクジャーナル391に装着して、このカラー部材に周状壁面部や鍔部などを設けるように構成してもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態および第3実施形態では、エンジン80にオイル(潤滑油)1を供給するオイルポンプ100(105、200、300)に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関の回転数に応じて変速比を自動的に切り替えるオートマチックトランスミッション(AT)にATフルード(ATオイル)を供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。また、ギアの組み合わせを替えて変速する上記AT(多段変速機)とは異なり連続的に無段階で変速比を変更可能な無段変速機(CVT)内の摺動部に潤滑油を供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。また、車両におけるステアリング(操舵装置)を駆動するパワーステアリング装置にパワーステアリングオイルを供給するためのオイルポンプに本発明を適用してもよい。
また、上記第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態および第3実施形態では、エンジン80を備えた自動車などの車両にオイルポンプ100(105、200、300)を搭載した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、内燃機関(エンジン)を備えた車両以外の設備機器に搭載されたオイルポンプに対して本発明を適用してもよい。また、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどが適用可能である。