JP6412787B2 - ホルムアルデヒドを含有しない無機繊維用水溶性バインダー及び無機繊維断熱吸音材の製造方法 - Google Patents

ホルムアルデヒドを含有しない無機繊維用水溶性バインダー及び無機繊維断熱吸音材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、グラスウール、又、ロックウール等の無機繊維断熱吸音材の製造工程に適した物性を示し、その硬化物に優れた弾力性と耐水性を有する、ホルムアルデヒドを含有しない無機繊維用水溶性バインダー、及びそれを用いた無機繊維断熱吸音材に関する。
従来から、グラスウール、又、ロックウール等の無機繊維からなる断熱吸音材において、繊維間を接着させるバインダーとして、水溶性フェノール・ホルムアルデヒド樹脂を主成分としたフェノール系バインダーが広く使用されている。フェノール系バインダーは、加熱により硬化し、弾力性と耐水性に優れた硬化物が得られる事から、これを用いた無機繊維断熱吸音材は、圧縮時の弾力性と、長期間の使用での寸法安定性に優れている。
しかし、フェノール系バインダーに使用される水溶性フェノール樹脂は、架橋剤にホルムアルデヒドが使用されている為、製造工程でのホルムアルデヒドの放出が問題となっている。又、加熱硬化時には多くのホルムアルデヒドが放出され、無機繊維断熱吸音材内部へ残存する為、そのホルムアルデヒドが建物に施工された後、徐々に外部に放出される問題もあった。
近年、ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物による室内空気の汚染が原因とされるシックハウス症候群等の健康被害が問題となっている。その為、製造工程や建物の室内空気へのホルムアルデヒドの放出量について、法律で制限が求められている。
無機繊維断熱吸音材から放出されるホルムアルデヒドは、フェノール系バインダーに含有する物である為、上記問題の解決には、ホルムアルデヒドが含有されていない水溶性バインダーが必要であり、所望され、数多くの提案がなされている。
例えば、下記特許文献1には、(A)ヒドロキシル基を持つ水溶性高分子(より詳細には、ヒドロキシル基を持つ水溶性高分子が、ポリビニルアルコール):100質量部、及び(B)ホウ素系化合物5質量部以上を含有することを特徴する無機繊維用バインダーが開示されている。
又、下記特許文献2には、酸価が350から850mgKOH/gのアクリル系樹脂と、ジアルカノールアミンを少なくとも1種類以上含有する架橋剤と、硬化促進剤とを含有し、前記アクリル系樹脂中のカルボキシル基のモル数に対し、架橋剤中の水酸基とイミノ基との合計のモル数が、モル比で0.8〜1.5であり、揮発性塩基性化合物によってpHが6.0〜8.0に調整されていることを特徴とする無機繊維用水性バインダーが開示されている。
特開2011‐153395号公報 特開2007‐56415号公報
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液は、フェノール系樹脂の水溶液と比較し、水溶液粘度が高く、塗布後の無機繊維断熱吸音材中間体に粘着性が生じる。通常、バインダーを塗布した無機繊維は、有孔コンベア上に吸引されながら堆積される。無機繊維断熱吸音材中間体に粘着性が生じた場合、嵩高の形状にならず、加熱時の加圧不足による無機繊維断熱吸音材の表面平滑性が損なわれる恐れがある。
一般にポリビニルアルコール系樹脂やアクリル系樹脂等は、フェノール系樹脂と比較し、吸水性があり、その硬化物は、フェノール系樹脂に比べ、耐水性に劣る。その為、それらを使用した無機繊維断熱吸音材は、空気中の湿度により、軟化し、製造直後に比べ、柔らかくなり、厚さの変動が起こる恐れがある。
また、バインダーを付着させた無機繊維断熱吸音材の中間体は、加熱処理により乾燥される。一般にポリビニルアルコール系樹脂の水溶性バインダーは、フェノール系樹脂の水溶性バインダーに比べ、高粘度でベタツキが強い傾向がある。水溶性バインダーを噴霧した無機繊維では、ポリビニルアルコール系樹脂の方がベタツキが強くなり、無機繊維堆積コンベアへの貼り付きや加熱処理時の乾燥機有孔プレートへの貼り付きの問題があった。
更に、無機繊維用水溶性バインダーに沈殿物が発生すると、後工程でのスプレー装置に詰まり等の問題を生じてしまうことより、バインダーには、沈殿物が発生しないことが求められている。
したがって本発明の目的は、ホルムアルデヒドを含有しない、無機繊維断熱吸音材の製造工程に対して優れた適性を有し、加熱処理により得られるバインダー硬化物が優れた弾力性と耐水性とを有する無機繊維用水溶性バインダー及びそれを用いた無機繊維断熱吸音材を提供することにある。
上記目的を達成するにあたって、本発明の無機繊維用水溶性バインダーは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性高分子と、架橋剤と、粘着抑制剤と、離型剤と、シランカップリング剤とを混合し、混合後の水溶液は無機繊維に対し、優れた浸透性を有する無機繊維用水溶性バインダーであり、その硬化物に優れた弾力性と耐水性を有していることを特徴としている(請求項1)。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーにおいて、架橋剤は、(a)ポリカルボン酸の化合物、重合物又は共重合物、(b)硼砂化合物、(c)その混合物、より選択される1種類であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂を100質量部に対し、固形分換算で4.0質量部以上を含有することが好ましい(請求項2)。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーにおいて、前記粘着抑制剤は、塩類化合物の水溶液であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、固形分換算で3.0から20.0質量部含有することが好ましい(請求項3)。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーにおいて、シランカップリング剤を、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.1から3.0質量部を含有することが好ましい(請求項4)。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーにおいて、前記離型剤は、重質オイル、又は、重質オイルとシリコーンオイルの混合物の水分散体であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、固形分換算で5.0から30.0質量部含有することが好ましい(請求項5)。
本発明の無機繊維断熱吸音材は、上記本発明の無機繊維用水溶性バインダーを、無機繊維に塗布し、加熱処理により硬化させて成形したことを特徴とする(請求項6)。
請求項1に記載の無機繊維用水溶性バインダーは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、ホルムアルデヒドを含有しない為、バインダー塗布時や加熱処理時にホルムアルデヒドが放出することなく使用する事ができる。
そして、ポリビニルアルコール系樹脂は架橋剤と混合する事で、親水性を有するポリビニルアルコール中のヒドロキシル基と架橋反応を行い、耐水性を付与する事ができる。それにより、気温や湿度によって、断熱吸音性能に関わる断熱吸音材の厚さ寸法や、施工時に自立性に関係なく剛性が低下することなく、従来のフェノール系バインダーと同等の物性を有するものとなり、住宅、建物の断熱吸音材として好適に使用できる。
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、水溶性高分子であり、架橋剤を添加しない状態で硬化させた場合、その硬化物は水溶性であり、吸水及び膨潤してしまう。請求項2に特定した架橋剤を混合する事で親水基である水溶性高分子中のヒドロキシル基と架橋反応させ、その硬化物に耐水性を付与する事ができる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、水に溶解する事で無機繊維に浸透し、粘着性を発現させてしまう。請求項3に記載の発明によれば、粘着抑制剤として使用する塩類化合物は、ポリビニルアルコール系樹脂を結晶化させ、水への溶解を抑制する。ポリビニルアルコール系樹脂の水への溶解性を調整する事で過度な粘着性の発現を抑制できる。
請求項4に記載の発明によれば、シランカップリング剤が、無機繊維とバインダーとの界面における接着性を向上させる事ができ、得られる無機繊維断熱吸音材の弾力性及び耐水性を向上させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、離型剤として使用する重質オイル及びシリコーンオイルは、無機繊維に滑りを与え、繊維堆積コンベアや乾燥機有孔プレートへの貼り付きを軽減できる。
請求項6に記載の発明によれば、優れた弾力性と耐水性とを有する無機繊維断熱吸音材が提供される。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性高分子と、架橋剤と、粘着抑制剤と、離型剤と、シランカップリング剤とを混合し、その水溶液に過度な粘着性が発生しない無機繊維用水溶性バインダーであり、その硬化物に優れた弾力性と耐水性がある組成物である。尚、優れた弾力性とは、従来技術の代表例たるフェノール系樹脂を主成分とする水溶性バインダーを使用して製造された無機繊維断熱吸音材に比較して優れた弾力性を有すると言うことであり、フェノール系樹脂を主成分とする水溶性バインダーを使用して製造された無機繊維断熱吸音材の反発力と同等又はそれよりも大きな反発力を有することを意味する。優れた耐水性とは、例えば、飽和水蒸気下にて1時間静置した時の厚さの変化率として認識することができるものであり、該変化率が10%以下のものを言う。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーに用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、特に限定はしない。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が水溶液の粘度に直接影響する為、塗布装置のスプレー適性に合わせて選択する必要があり、重合度500以下の低粘度のグレードが好ましい。例えば、日本酢ビ・ポバール社製の「JL-05E」が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーに用いる架橋剤(a)(b)(c)は、上記ポリビニルアルコール系樹脂を100.0質量部に対し、固形分換算で4.0質量部以上を含有することが好ましい。尚、架橋剤は、ポリビニルアルコールに対して作用する為、ポリビニルアルコール固形分に対しての質量部とした。
固形分換算で4.0質量部未満だと親水基である水溶性高分子中のヒドロキシル基と架橋剤とが十分に架橋反応せず、硬化物に耐水性を付与する事ができない。
尚、架橋剤の上限は、特に限定するものではないが、経済性の観点からすると、ポリビニルアルコール系樹脂100.0質量部に対して、100.0質量部以下が好ましい。
前記架橋剤(a)としては、脂肪族カルボン酸単量体より選択される1種類以上の単量体の化合物、重合物または共重合物である。上記脂肪族カルボン酸単量体としては、アクリル酸系、メタクリル酸系、クロトン酸系等の脂肪族モノカルボン酸類の重合物、又、共重合物、マレイン酸系、フマル酸系、イタコン酸系等の脂肪族ジカルボン酸類の化合物、重合物、又、共重合物が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂との反応性を考慮すると、単量体中に2個のカルボン酸を持つマレイン酸系共重合物が更に好ましい。好ましい架橋剤(a)としては、五協産業社製「ガントレンツAN−119」(マレイン酸共重合物)や三洋化成社製無機繊維用アクリル樹脂「グラスパール」が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。
前記架橋剤(b)としては、ホウ素化合物であって、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸錯体等が挙げられる。ホウ素系化合物は、混合撹拌時に架橋反応を行う為、水溶液の過度な粘度増加が見られる恐れがあり、低濃度の水溶液として添加する事が好ましい。好ましい架橋剤(b)としては、市販のホウ砂を4.0%水溶液に調整したものが挙げられるが、本発明は、これに限定されない。
前記架橋剤(c)としては、前記架橋剤(a)と(b)の混合物である。耐水性の効果や水溶液の粘度状態に応じて、架橋剤(a)と(b)とを併用して使用できる。従来、フィルム成形の分野では、(b)ホウ素化合物をポリビニルアルコール系樹脂と架橋させ、増粘させる目的として、(a)脂肪族カルボン酸系化合物をポリビニルアルコール系樹脂と架橋させ、耐水性を付与する目的として、併用して使用する事が多く、周知の技術として挙げられる。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーに用いる粘着抑制剤としては、塩類化合物の水溶液であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100.0質量部に対し、固形分換算で3.0から20.0質量部含有することが好ましい。固形分換算で3.0質量部未満だと、粘着性を抑制する事ができない。固形分換算で20.0質量部を超えると、ポリビニルアルコール系樹脂を沈殿させ、塗布時のスプレー性を悪化させる恐れがある。尚、粘着抑制剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とが架橋反応した樹脂に対して作用する為、粘着抑制剤の量は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤との合計100質量部に対しての質量部とした。下記のシランカップリング剤、離型剤の量に関しても同様である。
前記粘着抑制剤としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩ナトリウム、炭酸ナトリウム等の硫酸、塩酸、炭酸、酢酸等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が挙げられ、1種類及び2種類以上の併用する事ができる。なかでも、硫酸アンモニウムは水溶性に優れ、水溶液濃度を任意で調整出来るので好ましい。過度の添加は、ポリビニルアルコールを沈殿させ、塗布時のスプレー性を悪化させる恐れがある。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーに用いるシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤等が挙げられ、具体的には、信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。これらは、1種類または2種類以上を併用する事ができ、上記ポリビニルアルコール系樹脂と上記架橋剤の合計100質量部に対し、固形分換算で0.1から3.0質量部が好ましい。固形分換算で0.1質量部未満だとポリビニルアルコール系樹脂と無機繊維との界面接着が十分に行われない。固形分換算で3.0質量部を超えると、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性や反応性には問題はないが、大幅な性能向上が望めず、コストアップに繋がる。シランカップリング剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と無機繊維との界面接着に作用するほかに、シリコーンオイル等のシリコーン系添加剤の無機繊維表面への定着にも作用する為、無機繊維断熱吸音材の耐水性向上にも効果がある。
上述のように、一般にポリビニルアルコール系樹脂の水溶性バインダーは、フェノール系樹脂の水溶性バインダーに比べ、高粘度でベタツキが強い傾向がある。水溶性バインダーを噴霧した無機繊維では、ポリビニルアルコール系樹脂の方がベタツキが強くなり、無機繊維堆積コンベアへの貼り付きや加熱処理時の乾燥機有孔プレートへの貼り付きの問題が発生し易い。離型剤を添加する事でポリビニルアルコール系樹脂に離形性を付与し、これらの問題を解決できる。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーにおいては、離型剤として、重質オイル、又は、重質オイルとシリコーンオイルの混合物の水分散体であり、すでに界面活性剤が添加され水への分散が可能なもの、又は、水に分散したものを使用する。前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、5.0から30.0質量部含有することが好ましく、5.0から20.0質量部が更に好ましい。固形分換算で5.0質量部未満だと離形性を十分に発揮できない。固形分換算で30.0質量部を超えると、オイルを分散させる界面活性剤の影響で無機繊維断熱吸音材の弾力性や耐水性の悪化に繋がる恐れがある。
上記重質オイルとしては、粘度グレードでVG320、VG460、VG680をベースとしたエマルションのものが好ましく、具体的には、出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。VG320より小さいグレードでは、加熱処理時の揮発が大きくなり、離型剤としての効果が弱くなる恐れがある。VG680より大きいグレードでは、無機繊維用バインダーの粘度増加に影響し、無機繊維への浸透性が悪化する恐れがある。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルタイプ、アミノ変性、エポキシ変性、水素変性等の有機官能性タイプのポリシロキサン系オイルのエマルションが好ましい。特にジメチルタイプは、ポリビニルアルコール系樹脂に対し、強い滑りを付与し、離形性の効果が高い。更に、シリコーンオイルは、耐水性向上にも効果があり、添加により耐水性を向上できる。具体的には、信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」が挙げられるが、本発明は、これに限定されない。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーは、必要に応じて、防塵剤、その他撥水剤、着色剤、pH調整剤等の添加剤更に添加しても良い。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーは、上記ポリビニルアルコール系樹脂と、架橋剤と、粘着抑制剤と、シランカップリング剤と、離型剤とを、攪拌機の付いたタンクを用いて混合し、調整することができる。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーの塗布液の固形分濃度は、2.0から20.0質量%が好ましく、2.0から10.0質量%が更に好ましい。20.0質量%を超えると、水溶液の粘度が増加し、無機繊維に対する浸透性が低下する。2.0質量%未満では、水分量が多くなり、加熱処理に時間を要し、生産性が低下する。
次に、本発明の無機繊維断熱吸音材について説明する。
本発明の無機繊維断熱吸音材は、上記無機繊維用水溶性バインダーを無機繊維に付与し、加熱処理により硬化させて成形して得られたものである。
本発明の無機繊維断熱吸音材は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、溶融した無機原料を繊維化装置で繊維化し、その直後に上記の無機繊維用水溶性バインダーを無機繊維に付与する。次いで、無機繊維用水溶性バインダーが付与された無機繊維を繊維堆積装置内の有孔コンベア上に堆積して無機繊維断熱吸音材中間体を形成し、乾燥設備にて所望する厚さに設定した上下一対の有孔プレート等で狭圧し、加熱処理し、無機繊維用水性バインダーを硬化させて無機繊維断熱吸音材を形成する。そして、必要に応じて表皮材等を被覆させて、無機繊維断熱吸音材を所望とする幅、長さに切断して製品が得られる。以下、各工程についてさらに詳しく説明する。
本発明の無機繊維断熱吸音材に用いる無機繊維としては、特に限定しないが、通常の断熱吸音材に使用されているグラスウール、ロックウール等を用いることができる。無機繊維の繊維化方法は、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法とも言う)等の各種の公知方法を用いることができる。特に無機繊維がグラスウールの場合は、遠心法を用いることが好ましい。なお、目的とする無機繊維断熱吸音材の密度は、通常の断熱材や吸音材に使用されている密度でよく、好ましくは5〜300kg/mの範囲である。
無機繊維にバインダーを付与するには、この分野で公知のスプレー装置等を用いて塗布、噴霧する。バインダーの付与量の調整は、従来のバインダーと同様の方法で調整することができる。そして、バインダーの付与量は、無機繊維断熱吸音材の密度や用途によって異なるが、バインダーを付与した無機繊維断熱吸音材の質量を基準として、固形分換算で0.5〜15.0質量%の範囲が好ましく、0.5〜9.0質量%の範囲がより好ましい。
無機繊維は繊維化から堆積の間で徐々に絡み合い、ウール状の形態をとる。無機繊維にバインダーを付与するタイミングとしては、繊維化後であればいつでも良いが、ウール内部への付着が難しくなる為、バインダーを効率的に付与させるためには、ウール形態の弱い、繊維化直後に付与することが好ましい。
上記工程によってバインダーが付与された無機繊維は、繊維堆積装置内の有孔コンベア上に堆積され、嵩高い無機繊維断熱吸音材中間体となる。繊維堆積装置は、有孔コンベアの裏面より吸引する事で無機繊維を効率的に堆積させることができる。
その後、前記無機繊維断熱吸音材中間体を、乾燥設備にて所望とする厚さになるように設定した上下一対の有孔コンベア等で連続的に狭圧し、加熱した熱風によりバインダーを硬化させて、無機繊維断熱吸音材をマット状に成形した後、所望とする幅、長さに切断する。
バインダーの加熱硬化温度は、特に限定しないが、160〜250℃が好ましい。また、加熱硬化時間は、無機繊維断熱吸音材の密度、厚さにより、30秒〜10分の間で適宜調整する。
本発明の無機繊維断熱吸音材は、そのままの形態で用いてもよく、また、表皮材で被覆して用いてもよい。表皮材としては、この分野で公知のものを使用する事ができ、例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属箔フィルム、不織布、織布あるいはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
このようにして得られた本発明の無機繊維断熱吸音材は、バインダーの加熱硬化時に、ホルムアルデヒドを放出することがないので、従来のフェノール系バインダーと比較して、環境負荷の少ないものである。
以下に、本発明を実施例によって説明する。本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の説明において、部及び%は、質量基準を表す。
(実施例1)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤としてホウ砂の4%水溶液を固形分換算で4.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で15.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、実施例1の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(実施例2)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で92.5部と、架橋剤として五協産業社製マレイン酸系共重合物「ガントレンツAN−119」の水溶液を固形分換算で7.5部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、実施例2の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(実施例3)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で92.5部と、架橋剤として五協産業社製マレイン酸系共重合物「ガントレンツAN−119」の水溶液を固形分換算で7.5部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、実施例3の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(実施例4)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で70.0部と、架橋剤としてアクリル酸重合物である三洋化成社製無機繊維用アクリル樹脂「グラスパール」の水溶液を固形分換算で30.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、実施例4の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(実施例5)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で50.0部と、架橋剤としてアクリル酸重合物である三洋化成社製無機繊維用アクリル樹脂「グラスパール」の水溶液を固形分換算で50.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、実施例5の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(比較例1)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤として硼砂4%水溶液を固形分換算で4.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例1の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(比較例2)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で92.5部と、架橋剤として五協産業社製マレイン酸系共重合物「ガントレンツAN−119」の水溶液を固形分換算で7.5部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例2の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(比較例3)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で97.0部と、架橋剤として硼砂4%水溶液を固形分換算で3.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で15.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例3の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
尚、比較例3は、請求項1の発明には含まれるものの、請求項2の発明には含まれない。ここでは、請求項2に着目し、「比較例」として把握した。
(比較例4)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で97.0部と、架橋剤として五協産業社製マレイン酸系共重合物「ガントレンツAN−119」を固形分換算で3.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例4の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
尚、比較例4は、請求項1の発明には含まれるものの、請求項2の発明には含まれない。ここでは、請求項2に着目し、「比較例」として把握した。
(比較例5)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤として硼砂の4%水溶液を固形分換算で4.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で25.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例5の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
尚、この比較例5は、請求項1に係る発明には含まれるものの、請求項3に係る発明には含まれない。ここでは、請求項3に着目し、比較例として把握した。
(比較例6)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤として硼砂の4%水溶液を固形分換算で4.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で15.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で40.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例6の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
尚、この比較例6は、請求項1に係る発明には含まれるものの、請求項5に係る発明には含まれない。ここでは、請求項5に着目し、比較例として把握した。
(比較例7)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤として硼砂の4%水溶液を固形分換算で4.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で15.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で20.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例7の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
尚、この比較例7は、請求項1に係る発明には含まれるものの、請求項5に係る発明には含まれない(離型剤の固形分換算の合計量が35.0部である)。ここでは、請求項5に着目し、比較例として把握した。
(比較例8)
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96.0部と、架橋剤として硼砂の4%水溶液を固形分換算で4.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で15.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、比較例8の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
(比較例9)
DIC社製無機繊維用水溶性フェノール系樹脂「フェノライト」の水溶液を固形分換算で100.0部と、反応促進剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で3.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、比較例9の無機繊維用水溶性バインダーを得た。尚、水溶性フェノール樹脂「フェノライト」は、すでに架橋剤(ホルムアデヒド)が混合されている為、新たな架橋剤の添加は行わない。
尚、ポリビニルアルコール樹脂の場合とフェノール樹脂の場合では、硫酸アンモニウムの作用が異なる。水溶性高分子がポリビニルアルコール樹脂の場合には、硫酸アンモニウムはポリビニルアルコール系樹脂を結晶化させ、水への溶解を抑制するため、粘着抑制剤として作用する。これに対して、水溶性高分子が水溶性フェノール樹脂の場合には、加熱処理時に樹脂を酸性にし、反応促進剤として作用する。
(比較例10)
ポリアクリル酸を主成分とした三洋化成社製無機繊維用アクリル樹脂「グラスパール」の水溶液を固形分換算で100.0部と、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムの24%水溶液を固形分換算で5.0部と、シランカップリング剤として信越化学社製アミノプロピルトリメトキシシラン「KBE903」を1.0部と、離型剤として出光興産社製重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15.0部及び信越化学製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5.0部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4%になるように、水で調整して、比較例10の無機繊維用水溶性バインダーを得た。尚、無機繊維用アクリル樹脂「グラスパール」はすでに架橋剤が混合されている為、新たな架橋剤の添加は行わない。
実施例1〜5、比較例1〜10で得られた無機繊維用水溶性バインダーを用いて、下記に記す方法にて評価を実施した。
(液安定性の評価)
実施例1〜5、比較例1〜10で得られた無機繊維用水溶性バインダーを1時間静置し、液中への沈殿物の発生の有無を確認した。
沈殿物が発生した場合、後工程でのスプレー装置にて詰まり等の問題に発展する為、無い事を基準とした。
(粘着性の評価)
実施例1〜5、比較例1〜10で得られた無機繊維用水溶性バインダーを遠心法により繊維化したグラスウールに樹脂固形分が5%付着する様にスプレー装置にて塗布し、無機繊維堆積装置内で吸引しながら有孔コンベア上に堆積させ、無機繊維断熱吸音材中間体を得た。得られた無機繊維断熱吸音材中間体の厚さを測定し、下記数式により、粘着度を求めた。
粘着性=中間体厚さ/成形厚さ×100
※成形厚さ:20mm
粘着性の目標値は、後工程での挟圧成形時の潰し代を考慮し、150%以上が望ましい。
中間厚さ=成形厚さ20mm × 粘着性150%以上 = 30mm以上
(乾燥機適性の評価)
前記で得られた無機繊維断熱吸音材中間体をそれぞれの樹脂特性に適した乾燥温度(ポリビニルアルコール系樹脂:190℃、フェノール系樹脂:240℃、アクリル系樹脂:260℃)にて、10分間の加熱処理を実施し、密度 64kg/m、厚さ 20mm、バインダー付着率 5.0%の無機繊維断熱吸音材を成形した。成形時に乾燥機プレート面への成形品の貼り付き状態を確認した。
貼り付きは、製造工程でのトラブルに展開する為、無い事を基準とした。
(弾力性の評価)
前記で得られたそれぞれの無機繊維断熱吸音材を、SHIMADZU社製万能試験機「AG-IS」を用い、厚さ50%まで圧縮した時の反発力を測定し、比較した。
弾力性は、比較例9のフェノール系樹脂を使用した無機繊維断熱吸音材の反発力を基準とし、フェノール系樹脂を使用した無機繊維断熱吸音材の反発力よりも大きな数値を有するものは、「弾力性良好」と判断した。
(耐水性の評価)
前記で得られた無機繊維断熱吸音材を、HIRAYAMA社製加圧加湿試験機「HG−50」を用いて、飽和水蒸気下にて1時間静置し、試験後の厚さ変化率を測定し、比較した。
厚さ変化率(膨れ率)=(試験後厚さ−試験前厚さ)/試験前厚さ×100
無機繊維断熱吸音材を飽和水蒸気下で静置することにより、断熱吸音材は水を含み、強度低下に伴って、厚さが増す。従って、この厚さ変化率が小さい程、水を含む量が少なく、強度低下の起こさない耐水性に優れている断熱吸音材といえる。
(ホルムアルデヒド放散量の評価)
前記で得られた無機繊維断熱吸音材を、JIS A 1901の試験規格に基づき、ホルムアルデヒドの放散量を測定した。
ホルムアルデヒドを含まない樹脂材料である為、未検出を基準にした。
前記で記した実施例1〜5の評価結果を表1に、比較例1〜10の評価結果を表2に示した。
Figure 0006412787
Figure 0006412787
上記結果より、粘着性について、比較例1及び2の値に低下が見られた。比較例1及び2は、粘着抑制剤が無添加の為、無機繊維中間体に粘着性が生じ、吸引時に潰れたと思われる。そして、比較例1及び2は、無機繊維中間体の厚さが不十分な為、その後の加熱時に十分な加圧が無く、表面平滑性に劣る傾向が見られた。又、粘着抑制剤を3.0部以上添加したその他については、十分な結果が得られた。
上記結果より、液安定性について、比較例5に沈殿物が見られた。比較例5は、粘着抑制剤として硫酸アンモニウムを25.0部と多量に添加した為、ポリビニルアルコール系樹脂の水への溶解性が極端に低下し、樹脂成分の沈殿が見られた。沈殿物の発生は、長時間の使用においてスプレー装置での詰まりに発展する恐れがある。そして、樹脂成分が沈殿し、付着量が低下してしまう為、成形物の弾力性や耐水性の悪化にもつながった。
上記結果より、乾燥機適性については、比較例8に乾燥プレートへの貼り付きが見られた。比較例8は、離型剤を添加していない為、無機繊維断熱吸音材に離形性が無く、貼り付きが発生した。離型剤を5.0部以上添加したその他については、貼り付きは見られなかった。尚、比較例8に関しては、乾燥プレートに貼り付いてしまったことより、成形物を製造することができず、従って、弾力性、耐水性、ホルムアルデヒド放散量に関しての試験は行わなかった。
上記結果より、弾力性について、比較例3〜7に低い値が見られた。比較例3及び4は、架橋剤が3.0部と少ない為、架橋反応が十分に行われなかったためと思われる。比較例5は、粘着抑制剤の過添加により、樹脂成分が沈殿し、無機繊維への付着が十分に行われなかったためと思われる。比較例6及び7は、離型剤の過添加により、離型剤に含まれる界面活性剤が無機繊維断熱吸音材強度(弾力性)に悪影響を示した。又、実施例1及び2と比較例1及び2の比較では、その強度に大きな変化が見られない事から、粘着抑制剤が樹脂の反応に悪影響を示していないことが分かる。
上記結果より、耐水性については、比較例3及び4と比較例6及び7に悪い値が見られた。比較例3及び4は、架橋剤が3.0部と少なく、樹脂の架橋反応が十分に行われなかったと思われる。比較例6及び7は、離型剤の合計添加率が30.0部以上と多く、離型剤に含まれる界面活性剤の影響で耐水性の悪化が見られたと思われる。
上記結果より、ホルムアルデヒド放散量について、フェノール系樹脂を用いた比較例9以外は未検出であった。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーは、無機繊維断熱吸音材の製造工程に優れた適性を示し、ホルムアルデヒドを含有しないバインダーであり、それを用いた無機繊維断熱吸音材は、住宅や建物の断熱材又は吸音材として好適に使用できる。

Claims (6)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性高分子と、架橋剤と、粘着抑制剤と、シランカップリング剤と、離型剤とを混合して得られた無機繊維用水溶性バインダーであり、
    前記粘着抑制剤が、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩類化合物を含み、
    その硬化物に優れた弾力性と耐水性とがある事を特徴とする、無機繊維用水溶性バインダー。
  2. 前記架橋剤は、(a)ポリカルボン酸の化合物、重合物又は共重合物、(b)硼砂化合物、(c)その混合物、より選択される1種類であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂を100質量部に対し、固形分換算で4.0質量部以上を含有する請求項1に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
  3. 前記粘着抑制剤は、塩類化合物の水溶液であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、固形分換算で3.0から20.0質量部含有した請求項1又は2のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
  4. シランカップリング剤を、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、固形分換算で0.1から3.0質量部を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
  5. 離型剤は、重質オイル、又は、重質オイルとシリコーンオイルの混合物の水分散体であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、5.0から30.0質量部含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダーを無機繊維に付与し、加熱処理により硬化させて成形したことを特徴とする無機繊維断熱吸音材。
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