JP2008505254A - エトキシシラン含有ガラス繊維用結合剤 - Google Patents
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Abstract
エトキシシランを含むポリカルボキシベースのガラス繊維用結合剤が提供される。この結合剤を用いて作製された製品は、高温多湿条件下を含めて、良好な物理的特性を示す。
Description
本発明は、耐湿潤老化性を改善したポリカルボキシポリマー結合剤樹脂(binding
resin)に関する。より詳細には、本発明は、多官能性のカルボキシル基反応性硬化剤で架橋することによって硬化する熱硬化性のアクリル酸ベースの結合剤樹脂であって、こうした樹脂を含む結合剤が特に高温多湿条件下で良好な耐老化性を示す結合剤樹脂に関する。このような結合剤は、不織布ガラス繊維品中のホルムアルデヒドベースの結合剤の代替物として有用である。
resin)に関する。より詳細には、本発明は、多官能性のカルボキシル基反応性硬化剤で架橋することによって硬化する熱硬化性のアクリル酸ベースの結合剤樹脂であって、こうした樹脂を含む結合剤が特に高温多湿条件下で良好な耐老化性を示す結合剤樹脂に関する。このような結合剤は、不織布ガラス繊維品中のホルムアルデヒドベースの結合剤の代替物として有用である。
ガラス繊維用結合剤には、この結合剤を織布または不織布ガラス繊維シート製品に塗布し、硬化させ、より硬直な製品を製造する剛化用途から、結合剤樹脂をシートまたは嵩高性の繊維製品に塗布し、その後、これを乾燥させ、場合によっては中間製品であるが、なお硬化性の製品を形成するようにB段階化する熱成形用途、および建物用断熱材などのような完全な硬化系まで様々な用途がある。
ガラス繊維断熱材製品は、一般に、硬化させた熱硬化性ポリマー材料によって接着させたガラス繊維マットを含む。溶融ガラス流を延伸して不規則な長さの繊維にし、成形チャンバー内に吹き込み、そこでこれらは移動コンベヤ上にマットとして不規則に載せられる。これらの繊維には、成形チャンバー内を通過中および延伸作業を終えてからまだ熱い間に水性結合剤が噴霧される。フェノール−ホルムアルデヒド結合剤は、ガラス繊維断熱材産業全体にわたって使用されている。成形作業中のガラス繊維および繊維マットを通過する空気流からの残熱は、一般に、結合剤から大部分の水を揮発させるのに十分であり、それによって、繊維上に、結合剤の残留成分が、粘着性または半粘着性のハイソリッドの液体として残される。コーティングされた繊維マットを硬化オーブンに移送し、例えば熱風をこのマットに吹き込んで結合剤を硬化させ、ガラス繊維を強固に結着させる。
本発明の意味で使用されるガラス繊維用結合剤は、マトリクス樹脂と混同するべきではない。マトリクス樹脂は、完全に異なる、類似性のない技術分野である。時には「結合剤」と称されるが、マトリクス樹脂は繊維間の隙間の空間全体を満たすように働き、その結果、このマトリクスにより繊維の強度特性が複合物に変えられているはずである、高密度な繊維強化製品が得られる。それに対して、本明細書で使用する「結合剤樹脂(binder resin)」は、空間を充填するのではなく、どちらかと言えば、繊維、特に繊維の接点のみをコーティングする。ガラス繊維用結合剤はまた、接着性がセルロース系基板の化学的性質に合わせて調整されている、紙製品または木製品用「結合剤」と同一視することはできない。そのような樹脂の多くは、例えば、尿素/ホルムアルデヒド樹脂およびレソルシノール/ホルムアルデヒド樹脂は、ガラス繊維用結合剤としての使用に適さない。ガラス繊維用結合剤の分野の当業者は、ガラス繊維用結合剤に関連する既知の問題のいずれをも解決することをセルロース系結合剤に期待していないようである。
ガラス繊維断熱材製品に有用な結合剤は、一般に、未硬化状態では低粘度を必要とし、さらに、硬化した時にガラス繊維用の硬直な熱硬化性ポリマーマットを形成するのに十分な特性を必要とする。未硬化状態での結合剤粘度の低さは、マットを正確な大きさにするために必要とされる。また、粘着性結合剤は接着性または粘着性である傾向があり、したがって、それらは、成形チャンバー壁上に繊維の蓄積をまねく。この蓄積された繊維は、後にマット上に落下し、高密度領域および製品の問題を引き起こすことがある。硬化した時に硬直な固形体を形成する結合剤は、完成したガラス繊維断熱材製品が、包装および輸送のために圧縮されたとき、建物中に設置された時にその目標厚さを回復するために必要とされる。
多くの熱硬化性ポリマーの中から、適当な熱硬化性ガラス繊維用結合剤樹脂の候補が非常に多く存在する。しかしながら、結合剤をコーティングしたガラス繊維製品は、多くの場合、必需品タイプのものであり、したがって、コストが推進要因になり、一般に、熱硬化性のポリウレタン、エポキシ樹脂、その他の樹脂のような樹脂が除外される。その優れたコスト/性能比のために、従来一般的に選択された樹脂はフェノール/ホルムアルデヒド樹脂である。フェノール/ホルムアルデヒド樹脂は経済的に製造することができ、尿素で増量させた後、多くの用途で結合剤として使用することができる。このような尿素増量フェノール/ホルムアルデヒド結合剤は、例えば、何年もの間ガラス繊維断熱材産業の中心的存在であった。
しかしながら、ここ数十年間にわたり、よりクリーンな環境の提供を望む産業界の方の、および連邦規制による揮発性有機化合物(VOC)放出の最小化から、現在使用されているホルムアルデヒドベースの結合剤からの放出削減の研究だけでなく、代替になりそうな結合剤の研究が広範囲にわたって行われてきた。例えば、ベースになるフェノール/ホルムアルデヒドレゾール樹脂の調製でのフェノールとホルムアルデヒドの比の微妙な変更、触媒の変更、および種々の多数のホルムアルデヒド捕集剤の添加により、フェノール/ホルムアルデヒド結合剤からの放出は、以前に使用されていた結合剤と比べて、かなり改善されている。しかしながら、ますます厳しくなる連邦規制とともに、ホルムアルデヒドを含まず、有害物を放出しない代替結合剤系にますます注意が払われている。
こうした候補結合剤系の1つでは、第1成分としてアクリル酸のポリマーを使用し、硬化または「架橋」成分として、グリセリンまたは適度にオキシアルキル化したグリセリンなどのポリオールを使用する。VOC放出に関する情報を含む、このようなポリ(アクリル酸)ベースの結合剤の調製および特性、ならびに尿素ホルムアルデヒド結合剤と対比した結合特性の比較が「Formaldehyde−Free Crosslinking Binders For Non−Wovens」、Charles T. Arkinsら、TAPPI JOURNAL、78巻、11号、161〜168頁、1995年11月に示されている。Arkinsの論文によって開示された結合剤は、B段階化可能であり、尿素/ホルムアルデヒド樹脂のものに類似した物理的特性を与えることができると思われる。
米国特許第5,340,868号は、ポリカルボキシポリマーと、β−ヒドロキシアルキルアミドと、クエン酸などの三官能性モノマーカルボン酸の少なくとも1種との組み合わせで硬化させたガラス繊維断熱材製品を開示している。開示された特定のポリカルボキシポリマーは、ポリ(アクリル酸)ポリマーである。米国特許第5,143,582号も参照されたい。
米国特許第5,318,990号は、ポリカルボキシポリマー、モノマーの三価アルコール、およびリン含有有機酸のアルカリ金属塩を含む触媒を含むガラス繊維用結合剤を開示している。
公開された欧州特許出願EP0583086A1は、前に挙げたArkinsの論文で論じられている、硬化がリン含有触媒系によって触媒されるポリアクリル酸結合剤の詳細を規定しているように見える。より高分子量のポリ(アクリル酸)は、より完全な硬化を示すポリマーを与えることが述べられている。米国特許第5,661,213号、同第5,427,587号、同第6,136,916号、および同第6,221,973号も参照されたい。
いくつかのポリカルボキシポリマーは、ガラス繊維断熱材製品を作製するのに有用であることが見出されている。加工中の成形チャンバー内部へのガラス繊維の凝集または付着の問題、ならびに商業上許容できるガラス繊維断熱材製品の提供に必要な回復性および剛性を示す最終製品を提供するという問題が克服されてきている。例えば、米国特許第6,331,350号を参照されたい。しかしながら、熱硬化性アクリル樹脂は、従来のフェノール系結合剤よりも親水性であることが分かった。この親水性のために、液体の水をより吸収しやすいガラス繊維断熱材が得られる結果になることがあり、それによって製品の完全性が損なわれる可能性がある。また、その結果、現在、ガラス繊維用の結合剤として使用されている熱硬化性アクリル樹脂の耐湿潤老化性を改善することができるかもしれない。これらの問題を克服することは、ガラス繊維用結合剤にポリカルボキシポリマーをよりよく利用する助けとなるであろう。
ガラスマットにフェノール−ホルムアルデヒド結合剤を使用する場合、シラン接着促進剤の使用がしばしば必要とされる。熱硬化性アクリル樹脂ベースの結合剤組成物に適切な接着促進剤を見つけ出すことはまた、より有用なガラス繊維用結合剤を提供するのに助けとなるかもしれない。
したがって、本発明の目的は、新規な非フェノール/ホルムアルデヒド結合剤組成物を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、高温多湿条件下での加水分解安定性が改善されたガラス繊維断熱材製品の作製を可能にするような結合剤を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ホルムアルデヒドを含まず、良好な剛性および厚み回復性を示すガラス繊維断熱材製品を提供することである。
本発明の別の目的は、シラン化合物を含む新規なポリカルボキシポリマーベースの結合剤組成物、この結合剤組成物を使用した、良好な物理的特性を示す製品、および有害物の放出に関して問題のない結合剤を提供することである。
本発明のこれらの目的およびその他の目的は、これに添付される以下の説明および特許請求の範囲を見れば当業者には明らかになるであろう。
前記の目的によれば、本発明によって新規なガラス繊維用結合剤が提供される。本発明の結合剤組成物は、ポリカルボキシポリマー、ポリオール、およびエトキシシランを含む。また、この結合剤組成物が、リン含有有機酸のアルカリ金属塩などの触媒を含むことも好ましい。
本発明の結合剤の重要な面は、エトキシシランが存在するということである。エトキシシランの存在は、結合剤、ひいてはこの結合剤が適用されるガラス繊維マットに良好な加水分解安定性を与えることが見出された。さらには、エトキシシランを使用すると、その他のシランとは対照的に、HAP(有害大気汚染物質)と認められている、メタノールなどの有害な放出物の発生が回避される。その結果、本発明の結合剤を用いて作製された断熱材などのガラス繊維製品は、必要なR値になるように、製品が公示されている厚さを満たし、また、良好な回復性および剛性特性、ならびに良好な加水分解安定性をも有するような競争力のある利点を備えている。
本発明の結合剤において使用されるポリカルボキシポリマーは、複数の側鎖カルボキシ基を含む有機ポリマーまたはオリゴマーを含む。このポリカルボキシポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、桂皮酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸などを含むが、それに限定されることはない、不飽和カルボン酸から調製されたホモポリマーまたはコポリマーとすることができる。あるいは、このポリカルボキシポリマーは、無水マレイン酸、メタクリル酸無水物など、ならびにそれらの混合物を含むが、それに限定されることはない、不飽和の酸無水物から調製され得る。これらの酸および酸無水物を重合する方法は、化学技術分野では周知である。
本発明のポリカルボキシポリマーはさらに、前記の不飽和カルボン酸または酸無水物の1種以上と、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニルなどを含むが、それに限定されることはない、ビニル化合物の1種以上とのコポリマーを含むことができる。これらのコポリマーを製造する方法は、当技術分野では周知である。
好ましいポリカルボキシポリマーは、ポリアクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーを含む。ポリカルボキシポリマー、特にポリアクリル酸ポリマーの数平均ベースの分子量は10000未満が特に好ましく、より好ましくは5000未満、最も好ましくは約4000以下である。低分子量ポリカルボキシポリマーは、pHが低い結合剤と組み合わせたとき、優れた回復性および剛性を示す最終製品が得られる。
本発明のホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物はまた、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリオールを含む。このポリオールは、加熱および硬化作業の間、組成物中のポリ酸との反応に十分に利用できるように、十分に不揮発性でなければならない。このポリオールは、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レソルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール酸尿素(glycollated urea)、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および、例えば、これによって参照により本明細書に組み込む米国特許第4,076,917号の教示に従って製造することができるビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジパミドなどのβ−ヒドロキシアルキルアミドなどが例示される、ある種の反応性ポリオールなど、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する、分子量が約1000未満の化合物とすることができる。あるいは、このポリオールは、例えば、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのホモポリマーまたはコポリマーなど、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む付加重合体とすることができる。本発明のために最も好ましいポリオールは、トリエタノールアミン(TEA)である。
ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.01から約1/3である。ポリオール中のヒドロキシルの当量に対してポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量が過剰であることが好ましい。ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.4から約1/1であることがより好ましい。ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.2から約1/0.95であることが最も好ましく、より好ましくは1/0.6から1/0.8、最も好ましくは1/0.65から1/0.75である。1/0.7に近い低い比は、低分子量ポリカルボキシポリマーと組み合わせたとき、また好ましくはpHが低い結合剤と組み合わせたとき、本発明において特に有利なものであることが分かった。
本発明の結合剤はまた、エトキシシランを含む。シランは、水素−シリコーン結合を含む化合物であり、Dow Corning社、GE Silicones社などの化学会社から市販されている。シラン化合物は、カップリング機構によってガラス繊維への結合剤の接着促進剤として働くと考えられる。シランは、熱硬化性ポリカルボキシ分子と反応し、ガラス繊維基材に付着する。適切なシランを選択した場合、ポリカルボキシベースの結合剤の特性、ひいてはガラス繊維製品の特性を向上することができることが分かった。
本発明のシランは、エトキシシランである。このエトキシシランは、一般に、ビニル基を含まず、好ましくはエポキシ基またはグリシドキシ基を含む。エトキシシランの混合物を使用することもできる。最も好ましいエトキシシランの中には、グリシドキシジエトキシシランまたはエポキシジエトキシシランなどのジエトキシシラン、およびトリエトキシシランがある。これらは、ポリカルボキシ/ポリオール結合剤系と組み合わせて使用したとき、良好な結果を与えることが分かった。認められた利点は、回復性および剛性などの良好な特性である。エトキシシランを含むポリカルボキシベースの結合剤系はまた、高温多湿条件下で加水分解安定性が良好であるという利点を有する。したがって、このような結合剤の良好な物理的性能は環境条件にかかわらず実現することができ、それは実際に競争力のある利点を与える。本発明の結合剤組成物において使用されるエトキシシランはまた、放出物のいずれもHAP(有害大気汚染物質)ではないと考えられるので、有害な放出物を生じることはない。本発明の結合剤組成物にエトキシシランを使用することによって提供される良好な物理的特性と環境受容性の組み合わせは、本業界にとって実に有利である。
本発明のホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物はまた、触媒を含むことが好ましい。最も好ましくは、この触媒は、例えば、ポリリン酸のアルカリ金属塩、リン酸二水素のアルカリ金属塩、ポリリン酸、アルキルホスフィン酸など、分子量が約1000未満の化合物であることができるリン含有促進剤である。あるいは、この触媒は、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で生成したアクリル酸および/またはマレイン酸の付加重合体、リン酸塩の連鎖移動剤または連鎖停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから製造した付加重合体、および、例えば、共重合したホスホエチルメタクリレート、同様のホスホン酸エステル、共重合したビニルスルホン酸モノマー、それらの塩などの酸官能性モノマー残基を含む付加重合体など、リン含有基を有するオリゴマーまたはポリマーとすることができる。このリン含有促進剤は、ポリ酸とポリオールの合計重量の約1重量%から約40重量%のレベルで使用することができる。リン含有促進剤のレベルは、ポリ酸とポリオールの合計重量の約2.5重量%から約10重量%であることが好ましい。
また、本発明の結合剤のpHは低い、すなわち4.5以下であることが最も好ましい。低分子量ポリカルボキシポリマーと低いpHとを組み合わせることにより、加工の困難さが最小である結合剤、ならびに優れた回復性および剛性を有する最終製品が提供されることが分かった。
ホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物は、さらに、例えば、乳化剤、顔料、充填剤、移行防止助剤、硬化剤、融合剤、湿潤剤、殺生剤、可塑剤、消泡剤、着色剤、ワックス、酸化防止剤などの従来の処理剤成分を含むことができる。
このホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物は、従来の混合技術を使用して、ポリ酸、ポリオールおよびリン含有促進剤を混合することによって調製することができる。別の実施形態では、カルボキシルまたは酸無水物を含有する付加重合体およびポリオールは同じ付加重合体中に存在することができ、この付加重合体は、カルボキシル、酸無水物またはそれらの塩の官能性と、ヒドロキシルの官能性の両方を含むことになる。別の実施形態では、カルボキシ基の塩は、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミンなど、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する官能性アルカノールアミンの塩である。別の実施形態では、ポリオールおよびリン含有促進剤は同じ付加重合体中に存在することができ、この付加重合体はポリ酸と混合することができる。さらに別の実施形態では、カルボキシルまたは酸無水物を含有する付加重合体、ポリオールおよびリン含有促進剤は、同じ付加重合体中に存在することができる。他の実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書に前述されるように、ポリ酸のカルボキシル基は、混合前、混合中または混合後に、固定塩基によって約35%未満程度にまで中和されて、水性組成物を得ることができる。ポリ酸の形成中に、部分的に中和を行うことができる。
ポリ酸およびポリオールの組成物を調製した後、次いで、エトキシシランをその組成物に添加して混合し、または単に組成物に添加して、ガラス繊維上に噴霧される最終的な結合剤組成物を形成することができる。したがって、これによって参照により全体を明らかに本明細書に組み込む米国特許第6,331,350号に記載されているように、エトキシシランは、基本的に、従来のポリカルボキシ結合剤系に対しての重要な添加剤である。溶融ガラス流を延伸して不規則な長さの繊維にし、成形チャンバー内に吹き込み、そこでこれらが移動コンベヤ上にマットとして不規則に載せられるとき、これらの繊維には、成形チャンバー内を通過中に、エトキシシランを含む本発明の水性結合剤組成物が噴霧される。
より詳細には、ガラス繊維断熱材製品の作製において、この製品は、従来の技術を使用して、作製することができる。周知のように、ガラス繊維の多孔性マットは、溶融ガラスを繊維状にし、直ちに移動コンベヤ上でガラス繊維マットを形成することによって製造することができる。次いで、広げられたマットを硬化用オーブンに搬送し、通過させ、その中で熱風をマット中に送って、樹脂を硬化させる。このマットをわずかに圧縮して、完成品を所定の厚さおよび表面仕上げにする。一般的には、硬化用オーブンは、約150℃から約325℃の温度で操作する。好ましくは、温度は約180℃から約225℃の範囲である。一般に、マットは、オーブン内に約1/2分から約3分間いる。従来の断熱材製品または防音材製品の製造では、この時間は約3/4分から約2分の範囲である。硬化した硬い結合剤マトリクスを含むガラス繊維はバットの形でオーブンから出てきて、これは包装および輸送のために圧縮することができ、その後、束縛されなくなると、その厚さを実質的に回復する。
このホルムアルデヒドを含まない硬化性水性組成物はまた、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、パディング、含浸、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター付着、凝析などの従来の技術によって、既に形成された不織布に塗布することもできる。
ホルムアルデヒドを含まない水性組成物を、不織布に塗布した後、加熱して、乾燥および硬化を行う。加熱時間および加熱温度は、乾燥速度、加工性および取扱い性、ならびに処理された基板の特性発現に影響を及ぼす。約120℃から約400℃で、約3秒から約15分間の熱処理を行うことができ、約150℃から約250℃の処理が好ましい。必要に応じて、乾燥および硬化作用を2段階以上の別個のステップで行うことができる。例えば、この組成物を、まず最初に、この組成物を実質的に硬化することなく、実質的に乾燥させるのに十分な温度および時間で加熱し、次いで、より高温および/またはより長時間で2度目の加熱を行い、硬化することができる。「B段階」と呼ばれるこうした方法は、例えばロールの形で、結合剤で処理した不織布を提供するために使用することができ、この結合剤で処理した不織布は、後の段階で、硬化プロセスと同時に、特定の形状に形成あるいは成形しながら、またはそうすることなく、硬化することができる。
耐熱性の不織布は、例えば断熱材バットまたはロールなどの用途に使用することができ、屋根ふき材または床張り材用の補強マットとして、粗紡糸として、プリント回路基板または電池セパレーター用のマイクロガラスベースの基板として、フィルター素材として、テープ素材として、オフィスパーティション用の、ダクトライナーまたはダクトボード内のテープボードとして、石造建築物用のセメント質または非セメント質のコーティング剤中の補強スクリムとして使用することができる。結合剤の良好な加水分解安定性および良好な耐湿潤老化性のために、本発明の結合剤を使用して作製された製品は変化する環境条件下で使用することができる。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
5種類のポリカルボキシ/ポリオール結合剤を調製した。4種類はシラン添加剤を使用し、1種類はシランを含有させなかった。ポリカルボキシ/ポリオールの組み合わせは、調製した各結合剤について同じであり、シランの濃度は、結合剤の固形分の約0.8重量%に固定した。各サンプルについてのシランは、次の通りとした。
ガラス繊維マット製品を各結合剤サンプルを使用して作製し、プラント測定による回復性(値が高いほど良い)および剛性ついて試験した。製品の剛性測度は、所定の期間にわたってその末端で支持されている間に自重でガラス繊維バット製品がゆがむ量である。この数値は「ドループ」と呼ばれ、低い数値であることが望ましい。その結果を以下に示す。
この結果は、エポキシジエトキシシランを含む結合剤であるサンプルNo.2によって最もよいドループ性能が達成されることを示している。
本発明を好ましい実施形態と共に説明してきたが、当業者であれば明らかなように、変形および改変を用いることもできることを理解されたい。このような変形および改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれると考えるべきである。
Claims (18)
- ポリカルボキシポリマーとポリオールとエトキシシランの水溶液を含むガラス繊維用結合剤。
- 前記ポリカルボキシポリマーの分子量が、5000未満である、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記ポリカルボキシポリマーの分子量が、4000未満である、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- リン含有有機酸のアルカリ金属塩を含む触媒をさらに含む、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記触媒が、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項4に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記ポリオールが、トリエタノールアミンである、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記ポリカルボキシポリマーが、ポリアクリル酸のホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 結合剤中のポリカルボキシポリマーおよびポリオールの量が、カルボキシ基当量とヒドロキシル基当量の比が約1/0.65から1/0.75の範囲内であるものである、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- ポリアクリル酸のホモポリマーおよび/またはコポリマーとトリエタノールアミンとエトキシシランの水溶液を含み、
前記ポリアクリル酸ポリマーは、分子量が5000以下である、ガラス繊維用結合剤。 - リン含有有機酸のアルカリ金属塩を含む触媒をさらに含む、請求項9に記載のガラス繊維用結合剤。
- 結合剤中のポリアクリル酸ポリマーおよびトリエタノールアミンの量が、カルボキシ基当量とヒドロキシル基当量の比が約1/0.65から1/0.75の範囲内であるものである、請求項9に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記エトキシシランが、ジエトキシシランを含む、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 前記エトキシシランが、エポキシ基を含む、請求項1に記載のガラス繊維用結合剤。
- 請求項1に記載の結合剤を含有するガラス繊維のマットを含むガラス繊維製品。
- 建物用断熱材である、請求項14に記載のガラス繊維製品。
- 屋根ふき材または床張り材用の補強マットである、請求項14に記載のガラス繊維製品。
- プリント回路基板または電池セパレーターに有用なマイクロガラスベースの基板、フィルター素材、テープ素材、または補強スクリムである、請求項14に記載のガラス繊維製品。
- フィルター素材である、請求項14に記載のガラス繊維製品。
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