JP6411118B2 - 遠心羽根車およびそれを用いた一軸多段形遠心圧縮機および遠心羽根車の製造方法 - Google Patents
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Description
このサージ発生する流量(以下、サージ点と称す)より小さい流量で運転しようとすると、遠心圧縮機内部で失速・剥離に起因する逆流を生じ、安定した圧縮機運転が困難になり、圧縮機が損傷する可能性も生じる。
また吐出圧力を下げて、チョーク発生する流量(以下、チョーク点と称する)を超える流量増加を図ろうとしても、圧縮機内部の流路で流れが音速に達する(チョーク現象)と、それ以上の流量に増やすことはできない。
例えば、特許文献1に開示される技術では、羽根入口から出口までの羽根角度分布、言い換えれば羽根の負荷分布を工夫することにより、羽根車のサージマージンを拡大し、同時に羽根車の効率向上を狙っている。この技術によれば、小流量側のサージマージン拡大効果が期待できる。しかし、大流量側のチョークマージン拡大については考慮されていない。
しかし、サージマージンを拡大するための羽根角度分布と、逆にチョークマージンを拡大する角度分布はトレードオフの関係になると考えられるので、この方法でチョークマージンを大幅に拡大することは難しい。
さらに、一軸多段形遠心圧縮機に適用可能な中間羽根をもったシュラウド付きの羽根車には、以下の製造上の課題がある。
例えば、溶接製法で行う場合、中間羽根の前縁付近は、溶接が容易でない。シュラウドに溝を加工して外部から溶接するスロット溶接を用いた場合でも、その前縁付近の溶接そのものの他に、その溶接ビードの仕上げは難しい。これは物理的に加工工具が挿入できないためである。
鋳物で製作する場合は、中間羽根を備えた羽根車の製作は比較的容易である。したがって非圧縮性流体を取り扱うポンプなどでは1種類の鋳型で複数の羽根車を製作できるため、この製法が採用できるが、多段の圧縮機の場合、ガスの圧縮性のため、羽根車形状は各段で異なり、全ての羽根車を鋳物で作るのはコスト面で現実的でない。
《一軸多段形遠心圧縮機の構成》
まず、一軸多段形遠心圧縮機の構成を説明する。図1は、実施例の一軸多段形遠心圧縮機の断面構成図である。
回転軸10は、その両側をラジアル軸受6a、6bで支持され、また軸方向はスラスト軸受7で支持されている。また、回転軸10は、軸端ラビリンス9a、9bによりシールされている。
羽根車20−1〜20−5は、図に示すようなシュラウド付きの羽根車であり、回転部と静止部の間には、マウスラビリンス1b〜5bと段間ラビリンス1e〜4eが設けられ、段間の圧力漏れをシールしている。
このため、一軸多段形の圧縮機においては、強度上の都合から例えば初段のみ、あるいは初段と2段目のみと限定してオープン羽根車を使うケースはありうるが、全段にオープンは羽根車を適用するケースは見られない。
以下、本実施例の一軸多段形遠心圧縮機に適用されるシュラウド付き羽根車の構造を図2、図3により説明する。なお、詳細は後述するが、少なくとも、図1にしめした一軸多段形遠心圧縮機の羽根車20−5が以下の構造を有している。
図2は、シュラウド付きの羽根車20の子午面断面形状をしめす図である。また、図3は、羽根形状を見やすくするためにシュラウドを省いた状態の羽根車20の3次元斜視図(ワイヤーフレーム)である。
そして、実施例の中間羽根20dは、前記スロート位置20fより下流に、中間羽根20dの前縁が位置するように形成さている。また、中間羽根20dの後縁は、主羽根20aの後縁と同じ、符号20eの羽根後縁に位置するように形成されている。
なお、中間羽根前縁より下流側において、その中間羽根のスロート(中間羽根と主羽根の間の最小面積)も当然存在するが、このスロートは主羽根のスロートよりも半径が大きい位置に形成されるので、スロート位置20fのスロート面積よりも大きくなり、作動範囲への影響はない。
つぎに、サージマージの拡大方法について説明する。
実施例の羽根車20は、羽根車の主羽根20aと中間羽根20dの負荷が、羽根の前縁で最小値になるとともに、前記最小値からキャンバー線に沿って増大して最大値になり、前記最大値からキャンバー線に沿って前記後縁向かって減少するように、かつ前記羽根の負荷の最小値が、前記前縁における前記圧縮流体の逆流を抑える大きさになるように、前記主羽根20aと中間羽根20dの翼角度を分布させている。
詳細には、羽根の負荷は、羽根の両側を流れる圧縮流体の流速差や圧力差を示す指標であり、羽根の負荷が大きいほど、羽根車の内部を流れる圧縮流体の減速率が増加する。このため、サージの発生を遅らせるためには、羽根の前縁部での相対速度の減速を緩和し、逆流を抑えることが好適である。
この逆解法は、例えば、所望する羽根負荷の分布を先に求め、その分布に基づいて羽根の形状を決定する手法であり、羽根の形状を先に決定する順解法より、所望する羽根負荷の分布を実現しやすい。
そして、シュラウド曲線とハブ曲線を滑らかに、例えば直線的に接続して、羽根が形成される。
図5の主羽根20cと中間羽根20dの接合構造の一例をしめす図により、シュラウド付き羽根車20の製造方法を説明する。
最初に、羽根車ハブ20aを切削加工により、上述のように決定した形状に、主羽根20cと中間羽根20dを削りだす。
次に、別途製作した羽根車シュラウド20bを溶接により接合する。このとき、接合するのは主羽根20cのみとし、中間羽根20dは溶接しないようにする。
まず1つは、半数の羽根(中間羽根20d)を溶接しないので、溶接作業および溶接後のビードの仕上げ作業時間が大幅に短縮される。
次に、羽根車入口部分は主羽根20cのみとなるので、羽根が全部主羽根20cの場合に比べて、空間が広く主羽根20cの前縁の溶接及び溶接ビード仕上げの作業性が向上する。
つぎに、図6により、実施例の羽根車20の羽根の厚さを説明する。
図6は、実施例の羽根車の羽根厚さをしめす3次元斜視図(ワイヤーフレーム)である。シュラウド20bは省略しているが、上述のとおり、主羽根20cがシュラウド20bへ接合される。
このようにすることにより、羽根に生じる応力を緩和し、主羽根20cだけの接合で、羽根一枚あたりにかかる力が大きくても、羽根の強度を十分確保することが可能になる。
図7にしめす例では、主羽根20cは、その前縁からスロート位置20fまでは羽根厚さ一定(羽根厚さ小)とし、スロート位置20f以降では後縁に向かって直線的に羽根厚さを増している。
中間羽根20dは、上述のとおり、その前縁がスロート位置20fより下流に位置するように形成され、後縁で主羽根20cと同じ厚みになるように、後縁に向かって直線的に羽根を厚くしている。
このようにすることにより、スロート面積をより広く確保し、チョーク流量を大きくすることができる。
中間羽根20dは、図7と同様に、その前縁がスロート位置20fより下流に、前縁が位置するように形成され、後縁で主羽根20cと同じ厚みになるように、後縁に向かって直線的に羽根厚さを増している。
つぎに、本実施例の一軸多段形遠心圧縮機に上述の羽根車20を適用する場合に有効な適用段数について説明する。図1には、4段目と5段目の羽根車20−4、20−5に上述の羽根車20を適用した一軸多段形遠心圧縮機をしめした。詳細は後述するが、実施例の一軸多段形遠心圧縮機では、少なくとも、最後段の羽根車20−5に上述の羽根車20を適用する。以下、その理由を説明する。
この作動範囲の中間には、設計点でもある仕様点PDesがある。この仕様点PDesの流量QDesを境に、サージ流量Qsから仕様点流量QDesまでの流量範囲をサージマージン、チョーク流量Qcから仕様点流量QDesまでの流量範囲をチョークマージンと呼んでいる。
この作動範囲の中間に設計点でもある仕様点PDesがあり、初段圧縮機を、仕様点流量QDes(体積流量比=1.0)で運転している場合は、最終段圧縮機も仕様点流量QDesで運転される。
その結果、最終段圧縮機は、図9Bに示すように初段圧縮機よりも体積流量比では大流量側の運転点A’で運転することになる。つまり、仕様点流量QDesからのずれが大きいところでの運転となる。
20(20−1、20−2、20−3、20−4、20−5) 羽根車
20a 羽根車ハブ
20b 羽根車シュラウド
20c 主羽根
20d 中間羽根
20e 羽根後縁
20f スロート位置
Claims (4)
- 複数の羽根の回転により遠心方向に流体を流出する遠心羽根車であって、前記複数の羽根は、
その前縁からスロート位置までの羽根厚さを一定とし、前記スロート位置から後縁までの羽根厚さを後縁に向かって厚みを増した主羽根と、
前記主羽根と交互に設けられ、その前縁が前記スロート位置より下流に設けられ、前記主羽根より長さが短い中間羽根と、
から成り、
前記主羽根と前記中間羽根は、羽根車ハブと前記羽根車ハブに対向するシュラウドとの間に、周方向に配置され、
前記主羽根は、前記羽根車ハブと前記シュラウドに一体接合し、
前記中間羽根は、前記羽根車ハブと前記シュラウドのいずれか一方に一体接合している
ことを特徴とする遠心羽根車。 - 請求項1に記載の遠心羽根車において、
前記中間羽根の高さは、前記主羽根の高さより所定量低い
ことを特徴とする遠心羽根車。 - ひとつの回転軸に複数の遠心羽根車を直列に配置し、流体を順次昇圧する一軸多段形遠心圧縮機において、
請求項1または2に記載の遠心羽根車が、少なくとも最下流段に配置されている
ことを特徴とする一軸多段形遠心圧縮機。 - 請求項1に記載の遠心羽根車の製造方法であって、
羽根車ハブを切削加工して、前記主羽根と前記中間羽根を削りだすステップと、
羽根車シュラウドに、前記主羽根のみを溶接により接合するステップと、
を有することを特徴とする遠心羽根車の製造方法。
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