以下、実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、図面を用いて第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。車両用空調装置1は、エンジンEGから車両走行用の駆動力を得る車両に搭載されている。
エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。発電機80にて発電された電力は、バッテリ81に蓄えることができる。バッテリ81に蓄えられた電力は、各種車載機器に供給される。各種車載機器は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器等である。
車両用空調装置1は、エンジンEGから供給される動力、およびバッテリ81から供給される電力を用いて車室内の空調を実行する。車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10および室内空調ユニット30、ならびに図2に示す空調制御装置50等を備えている。
室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31を有している。ケーシング31内には、送風機32、蒸発器15、ヒータコア36およびPTCヒータ37等が収容されている。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)で成形されている。
ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内外気切替箱20が配置されている。内外気切替箱20は、車室内空気と車室外空気とを切替導入する内外気切替手段である。以下では、車室内空気を内気と言い、車室外空気を外気と言う。
内外気切替箱20には、内気導入口21および外気導入口22が形成されている。内気導入口21は、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入手段である。外気導入口22は、ケーシング31内に外気を導入させる外気導入手段である。
内外気切替箱20の内部には、内外気切替ドア23が配置されている。内外気切替ドア23は、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる風量割合変更手段(吸込口モード切替手段)である。
内外気切替ドア23は、電動アクチュエータ62によって駆動される。内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
内外気切替ドア23は、吸込口モードを切り替える吸込口モード切替手段である。吸込口モードとしては、内気モード、外気モードおよび内外気混入モードがある。
内気モードでは、内外気切替ドア23が内気導入口21を全開にするとともに外気導入口22を全閉にするので、ケーシング31内に内気が導入される。外気モードでは、内外気切替ドア23が内気導入口21を全閉にするとともに外気導入口22を全開にするので、ケーシング31内に外気が導入される。
内外気混入モードでは、内外気切替ドア23が内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整するので、内気モードと外気モードとの間で内気と外気の導入比率が連続的に変化される。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32の電動モータは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数が制御される。これにより、送風機32の送風能力が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15の内部には、熱媒体である冷媒が流通する。蒸発器15は、送風機32から送風された送風空気と冷媒とを熱交換させる熱交換器である。蒸発器15は、冷媒によって送風空気を冷却する冷却手段である。
蒸発器15は冷凍サイクル10を構成している。冷凍サイクル10は、エンジンEGが発生する動力を利用して車室内へ吹き出される空気の温度を調整する空気温度調整手段である。
冷凍サイクル10は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13、膨張弁14および蒸発器15等を有している。
圧縮機11は、冷凍サイクル10の冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮手段である。圧縮機11は、車両のエンジンルーム内に配置されており、プーリーおよびベルト等を介してエンジンEGにより回転駆動される。
圧縮機11は、可変容量型圧縮機または固定容量型圧縮機である。可変容量型圧縮機は、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整する圧縮機である。固定容量型圧縮機は、電磁クラッチの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する圧縮機である。
凝縮器12の内部には、圧縮機11から吐出された冷媒が流通する。凝縮器12は、室外送風機の送風ファン12aから送風された外気と冷媒とを熱交換させることによって冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。凝縮器12は、車両のエンジンルーム内に配置されている。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒が持つ熱を放熱させる放熱器である。
送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数が制御されて送風空気量が制御される電動式送風機である。送風ファン12aの回転数が制御されることによって、送風ファン12aの送風空気量が制御される。
気液分離器13は、凝縮器12で凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内空調ユニット30のケーシング31内には、加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34および混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気が流れる空気通路である。加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34は、互いに並列な空気通路である。混合空間35は、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させるための空間である。
加熱用冷風通路33には、ヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36およびPTCヒータ37は、蒸発器15通過後の空気を加熱する空気加熱手段である。
ヒータコア36は、冷却水回路40を循環する冷却水を熱媒体として蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。冷却水回路40では、ヒータコア36とエンジンEGが冷却水配管によって接続されている。エンジンEGは、冷却水回路40の冷却水を加熱する冷却水加熱手段である。
冷却水回路40には冷却水ポンプ40aが配置されている。冷却水ポンプ40aは、冷却水回路40の冷却水を循環させる冷却水循環手段である。冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。冷却水ポンプ40aの回転数が制御されることによって、冷却水回路40の冷却水循環流量が制御される。冷却水ポンプ40aは、エンジンEGにより回転駆動されるようになっていてもよい。
ヒータコア36および冷却水回路40は、エンジンEGが発生する熱を利用して吹出空気温度を調整する空気温度調整手段である。吹出空気温度は、室内空調ユニット30から車室内へ吹き出される空気の温度である。
PTCヒータ37は、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段である。PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有する電気ヒータである。PTC素子は、電力が供給されることによって発熱する。PTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
PTCヒータ37は、複数本のヒータから構成されている。各ヒータの正極側はそれぞれバッテリ81側に接続されている。各ヒータの負極側はそれぞれスイッチ素子を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子は、各ヒータが有するPTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える通電切替手段である。
各スイッチ素子の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。これにより、各スイッチ素子の通電状態と非通電状態とが独立に切り替えられるので、加熱能力を発揮するヒータの本数が切り替えられて、PTCヒータ37全体としての加熱能力が変化する。
冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導く空気通路である。蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側には、エアミックスドア39が配置されている。
エアミックスドア39は、加熱用冷風通路33へ流入させる冷風と冷風バイパス通路34へ流入させる冷風との風量割合を連続的に変化させる風量割合変化手段である。エアミックスドア39は、車室内へ送風される送風空気の温度を調整する温度調整手段である。すなわち、エアミックスドア39が、加熱用冷風通路33を通過する空気と冷風バイパス通路34を通過する空気との風量割合を変化させることによって、混合空間35にて混合された送風空気の温度が変化する。
エアミックスドア39は、回転軸と板状のドア本体部とを有する片持ちドアである。エアミックスドア39の回転軸は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される。エアミックスドア39の回転軸の一端側にエアミックスドア39のドア本体部が連結されている。エアミックスドア用の電動アクチュエータ63の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
ケーシング31の送風空気流れ最下流部には吹出口24〜26が配置されている。吹出口24〜26は、混合空間35から車室内へ送風空気を吹き出す吹出手段である。吹出口24〜26は、温度調整された送風空気を空調対象空間へ吹き出す吹出手段である。
吹出口24〜26は、フェイス吹出口24、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26である。フェイス吹出口24は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す。フット吹出口25は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す。デフロスタ吹出口26は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出す。
フェイス吹出口24、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側にはそれぞれ、フェイスドア24a、フットドア25aおよびデフロスタドア26aが配置されている。
フェイスドア24aは、フェイス吹出口24の開口面積を調整する。フットドア25aは、フット吹出口25の開口面積を調整する。デフロスタドア26aは、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整する。
フェイスドア24a、フットドア25aおよびデフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段である。フェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、リンク機構(図示せず)を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
フェイスドア24a、フットドア25aおよびデフロスタドア26aによって切り替えられる吹出口モードは、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードおよびフットデフロスタモードである。
フェイスモードでは、フェイス吹出口24が全開されて、フェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気が吹き出される。バイレベルモードでは、フェイス吹出口24およびフット吹出口25の両方が開口されて、車室内乗員の上半身および足元に向けて空気が吹き出される。
フットモードでは、フット吹出口25が全開されるとともにデフロスタ吹出口26が小開度だけ開口されて、フット吹出口25から主に空気が吹き出される。フットデフロスタモードでは、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26が同程度開口されて、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気が吹き出される。
乗員が、図2に示す操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードでは、デフロスタ吹出口が全開されて、デフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に向けて空気が吹き出される。
車両用空調装置1は、電熱デフォッガ(図示せず)を備えている。電熱デフォッガは、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部または表面に配置された電熱線である。電熱デフォッガの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
車両用空調装置1は、図2に示すシート空調装置90を備えている。シート空調装置90は、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段である。シート空調装置90は、電力を供給されることによって発熱して座席を加熱する座席加熱手段である。シート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線である。
室内空調ユニット10の各吹出口24〜26から吹き出される空調風では車室内の暖房が不十分となり得る際にシート空調装置90が作動することによって乗員の暖房感を補うことができる。
シート空調装置90の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。空調制御装置50は、座席の表面温度が約40℃程度まで上昇するようにシート空調装置90の作動を制御する。
車両用空調装置1は、シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータを備えていてもよい。シート送風装置は、座席の内側から乗員に向けて空気を送風する送風手段である。ステアリングヒータは、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリング加熱手段である。膝輻射ヒータは、輻射熱の熱源となる熱源光を乗員の膝に向けて照射する暖房手段である。シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御可能である。
図2に示す空調制御装置50(空調制御手段)およびエンジン制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。空調制御装置50は、空調を制御する空調制御手段である。エンジン制御装置70は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御手段である。
エンジン制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器(図示せず)が接続されている。各種エンジン構成機器は、スタータおよび燃料噴射弁の駆動回路等である。スタータは、エンジンEGを始動させる始動手段である。燃料噴射弁は、エンジンEGに燃料を供給する燃料供給手段である。
エンジン制御装置70の入力側には、種々のエンジン制御用のセンサ群(図示せず)が接続されている。種々のエンジン制御用のセンサ群は、アクセル開度センサ、エンジン回転数センサおよび車速センサ等である。
アクセル開度センサは、アクセル開度Accを検出するアクセル開度検出手段である。エンジン回転数センサは、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数検出手段である。車速センサは、車速Vvを検出する車速検出手段である。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電磁クラッチ61、室外送風機の送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。種々の空調制御用のセンサ群は、内気センサ51、外気センサ52、日射センサ53、吐出温度センサ54、吐出圧力センサ55、蒸発器温度センサ56、冷却水温度センサ58、窓近傍湿度センサ59、窓近傍空気温度センサ、および窓ガラス表面温度センサ等である。
内気センサ51は、車室内温度Trを検出する車室内温度検出手段である。外気センサ52は、外気温Tamを検出する外気温検出手段である。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する日射量検出手段である。
吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出手段である。吐出圧力センサ55は、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力検出手段である。
蒸発器温度センサ56は、蒸発器温度TEを検出する蒸発器温度検出手段である。蒸発器温度TEは、蒸発器15からの吹出空気温度である。
蒸発器温度センサ56は、蒸発器15の熱交換フィン温度を検出するフィン温度センサである。蒸発器温度センサ56は、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度センサであってもよい。蒸発器温度センサ56は、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する冷媒温度センサであってもよい。
冷却水温度センサ58は、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段である。
窓近傍湿度センサ59は、窓近傍相対湿度を検出する湿度検出手段である。窓近傍相対湿度は、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度である。窓近傍空気温度センサは、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓近傍空気温度検出手段である。窓ガラス表面温度センサは、窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度検出手段である。
窓近傍湿度センサ59、窓近傍空気温度センサおよび窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
空調制御装置50の入力側には、各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。各種空調操作スイッチは空調操作パネル60に設けられている。空調操作パネル60は、車室内前部の計器盤付近に配置されている。
操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチは、車両用空調装置1の作動スイッチ60a、オートスイッチ、運転モード切替スイッチ、吹出口モード切替スイッチ、風量設定スイッチ60b、車室内温度設定スイッチ60cおよびエコノミースイッチ60d等が設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。風量設定スイッチ60bは、送風機32が送風する風量を調整する風量調整手段である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。
エコノミースイッチ60dは、環境への負荷の低減を優先させるスイッチである。エコノミースイッチ60dを投入することにより、車両用空調装置1の作動モードがエコノミーモードに設定される。エコノミーモードは、空調の省動力化を優先させる省動力優先モードである。エコノミースイッチ60dは、省動力優先モードを設定するための省動力優先モード設定手段である。
エコノミースイッチ60dを投入することにより、エコノミーモードが設定されていることを示す信号がエンジン制御装置70に出力される。エンジン制御装置70は、エコノミーモードが設定されていることを示す信号が入力されると、空調のためのエンジンEGの作動頻度を低下させる。換言すれば、エンジン制御装置70は、エコノミーモードが設定されていることを示す信号が入力されると、圧縮機11を駆動する動力を確保するためのエンジンEGの作動頻度を低下させる。
操作パネル60には表示部60e等が設けられている。表示部60eは、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示手段である。
空調制御装置50およびエンジン制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。
例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。エンジン制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する信号を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
空調制御装置50およびエンジン制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御するハードウェアおよびソフトウェアを有している。
空調制御装置50およびエンジン制御装置70のうち、各種制御対象機器を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、各種制御対象機器の作動を制御する制御手段である。
エンジン制御装置70は、エンジンEGがアイドリング状態となった際にエンジンEGを停止させるアイドルストップ制御を実施する。エンジン制御装置70のうちアイドルストップ制御を実施するハードウェアおよびソフトウェアは、アイドルストップ制御手段である。
空調制御装置50のうち、送風機32の作動を制御して送風機32の送風能力を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、送風能力制御手段50aである。送風能力制御手段50aは、送風機32の送風量を調整する風量調整手段である。
空調制御装置50のうち、圧縮機11の電磁クラッチ61の作動を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、圧縮機制御手段である。空調制御装置50のうち、吹出口モードの切り替えを制御するハードウェアおよびソフトウェアは、吹出口モード切替手段50bである。
空調制御装置50のうち、蒸発器15の冷却能力を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、冷却能力制御手段50cである。空調制御装置50のうち、ヒータコア36の加熱能力を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、加熱能力制御手段である。
空調制御装置50におけるエンジン制御装置70と制御信号の送受信を行うハードウェアおよびソフトウェアは、信号出力手段50dである。信号出力手段50dは、アイドルストップ許可信号およびアイドルストップ解除要求信号をエンジン制御装置70に出力する要求手段である。
アイドルストップ許可信号は、アイドルストップ制御を実施してエンジンEGを停止させることを許可する信号である。アイドルストップ解除要求信号は、アイドルストップ制御を解除してエンジンEGを作動させることを要求する信号である。
エンジン制御装置70のうち、空調制御装置50と制御信号の送受信を行うハードウェアおよびソフトウェアは、信号通信手段である。エンジン制御装置70のうち、信号出力手段50d等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定するハードウェアおよびソフトウェアは、作動要否決定手段である。
上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を、図3〜図9に基づいて説明する。図3は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の電動式構成機器や各種車載機器にバッテリ81から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。図3、図4、図6、図8中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まずステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および各種電動アクチュエータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。ステップS1では、フラグや演算値のうち一部のものは、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持される。
次にステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tsetや、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号を読み込む。すなわち、ステップS3では、センサ群51〜59の検出信号等を読み込む。ステップS3では、エンジン制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、およびエンジン制御装置70から出力される制御信号等の一部をエンジン制御装置70から読み込む。
次にステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。ステップS4は目標吹出温度決定手段である。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
Tsetは、車室内温度設定スイッチ60cによって設定された車室内設定温度である。Trは、内気センサ51によって検出された車室内温度である。Tamは、外気センサ52によって検出された外気温である。Tsは、日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインである。Cは補正用の定数である。
目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するものである。目標吹出温度TAOは、車両用空調装置1に要求される空調熱負荷である。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まずステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度TEおよび冷却水温度Twに基づいて算出する。
具体的には、まず次の数式F2により仮のエアミックス開度SWddを算出する。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10,Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
数式F2の{MAX(10,Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
そして、仮のエアミックス開度SWddに基づいて、制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。具体的には、仮のエアミックス開度SWddが大きくなるにつれてエアミックス開度SWを大きな値に決定する。
次のステップS6では、送風機32の送風能力を決定する。具体的には、ステップS6では、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。ステップS6の詳細については、図4のフローチャートを用いて説明する。
まずステップS611では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS612で、操作パネル60の風量設定スイッチ60bによってマニュアル設定されたブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS611にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS613で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて、制御マップを参照して仮ブロワレベルf(TAO)を決定する。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。
制御マップは、図4のステップS613に示すように、TAOに対する仮ブロワレベルf(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。すなわち、TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように仮ブロワレベルf(TAO)を高レベルに上昇させる。図4の例では、TAOの極低温域は−30℃以下であり、TAOの極高温域は80℃以上である。
TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。
TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜40℃)に入ると、送風機32の風量が最低風量となるように仮ブロワレベルf(TAO)を低レベルに低下させる。これにより、空調熱負荷に応じた基本ブロワレベルが算出される。
仮ブロワレベルf(TAO)は、TAOに基づいて決定される値である。仮ブロワレベルf(TAO)は、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tamおよび日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
続くステップS614では、窓近傍湿度センサ59が検出した窓近傍相対湿度に基づいて、図4のステップS614に示す制御マップを参照して下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を決定する。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。
すなわち、窓近傍相対湿度が95%未満の場合、下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を0とし、窓近傍相対湿度が100%以上の場合、下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を20とし、窓近傍相対湿度が95%以上100%未満の場合、窓近傍相対湿度の上昇に応じて下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)を上昇させる。
続くステップS615では、送風機32の送風能力を決定するためにブロワレベルを決定する。ブロワレベルは、送風機32の電動モータに印加する送風機電圧に対応する値である。具体的には、次の数式F3によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MAX(f(TAO),f(窓近傍相対湿度))…(F3)
数式F3のMAX(f(TAO),f(窓近傍相対湿度))とは、f(TAO)およびf(窓近傍相対湿度)のうち大きい方の値を意味している。
そして、ステップS616へ進み、ステップS615にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧を決定する。
すなわち、図4のステップS615に示すように、ブロワレベルの上昇に応じてブロワモータ電圧を上昇させる。
これによると、窓近傍相対湿度が高いほど下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)が大きな値に決定される。このため、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、ブロワレベルとして下限ブロワレベルf(窓近傍相対湿度)が選択されやすくなって、送風機32の送風能力が増加されやすくなる。
次のステップS7では、吸込口モードを決定する。すなわち、ステップS7では、内外気切替箱20の切替状態を決定する。具体的には、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されていない場合は、マニュアルモードに応じた外気導入率を決定してステップS8へ進む。
例えば、吸込口モードが全内気モード(RECモード)の場合、外気導入率を0%に決定し、吸込口モードが全外気モード(FRSモード)の場合、外気導入率を100%に決定する。
一方、オートスイッチが投入されている場合は、目標吹出温度TAOに基づいて、制御マップを参照して、吸込口モードを決定する。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。例えば、TAOが高温域にあるときは外気モードとし、TAOが中間温度域にあるときは内外気混入モードとし、TAOが低温域にあるときは内気モードとする。
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。すなわち、ステップS8では、フェイスドア24a、フットドア25aおよびデフロスタドア26aの切替状態を決定する。具体的には、TAOに基づいて、制御マップを参照して吹出口モードを決定する。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。
例えば、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。したがって、夏季は主にフェイスモードが選択され、春秋季は主にバイレベルモードが選択され、冬季は主にフットモードが選択される。
TAOが高温域である場合、窓近傍湿度センサ59が検出した窓近傍相対湿度が高くて窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードが選択される。したがって、デフロスタ吹出口26から吹き出される風量の割合を増加させることができる。
次のステップS9では、蒸発器温度TEの目標温度TEOを決定する。例えば、本実施形態では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、制御マップを参照して、目標蒸発器温度TEOを決定する。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。本例では、図5に示す制御マップが、予め空調制御装置50に記憶されている。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。PTCヒータ37の作動本数は、外気温Tam、仮のエアミックス開度SWddおよび冷却水温度Twに応じて決定される。
具体的には、まず、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37の作動の要否を決定する。
例えば、仮のエアミックス開度SWddが小さい場合、PTCヒータ37の作動が不要であると決定し、仮のエアミックス開度SWddが大きい場合、PTCヒータ37の作動が必要であると決定する。したがって、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性に応じてPTCヒータ37の作動の要否が決定される。
PTCヒータ37の作動が必要であると決定した場合、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。例えば、冷却水温度Twが低くなるにつれてPTCヒータ37の作動本数を増加させる。
電熱デフォッガの作動状態は、窓ガラスに曇りが発生する可能性、または窓ガラス曇りの発生有無に基づいて決定される。窓ガラスに曇りが発生する可能性、および窓ガラス曇りの発生有無は、車室内の湿度および温度等に基づいて推定される。
次のステップS11では、空調制御装置50からエンジン制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、アイドルストップ許可信号およびアイドルストップ解除要求信号等がある。
アイドルストップ許可信号は、アイドルストップ制御を実施してエンジンEGを停止させることを許可する信号である。アイドルストップ解除要求信号は、アイドルストップ制御を解除してエンジンEGを作動させることを要求する信号である。
アイドルストップ制御を実行するとエンジンEGが停止するので、冷凍サイクル10の圧縮機11も停止する。したがって、蒸発器15における冷媒の温度が上昇し、蒸発器15通過後の空気の温度も上昇する。すなわち、蒸発器15が空気の冷却除湿能力を発揮できなくなる。また、エンジン冷却水温度が低下し、ヒータコア36通過後の空気の温度も低下する。すなわち、ヒータコア36が空気の加熱能力を発揮できなくなる。
具体的には、ステップS11では、蒸発器温度TEがアイドルストップ許可温度TA以下になった場合、アイドルストップ許可信号をエンジン制御装置70に出力し、空調制御装置50は、蒸発器温度TEがアイドルストップ解除温度TB以上になった場合、アイドルストップ解除要求信号をエンジン制御装置70に出力する。アイドルストップ解除温度TBの値は、予め空調制御装置50に記憶されている。
アイドルストップ許可温度TAの値は、空調制御装置50によって決定される。アイドルストップ許可温度TAの初期値である初回許可温度TA1は、空調制御装置50に予め記憶されている。初回許可温度TA1は、アイドルストップ解除温度TBよりも低い値に決定される。
ステップS11におけるアイドルストップ許可温度TAの決定処理の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101では、車両が停車中であるか否かを判定する。例えば、車速センサが検出した車速Vvに基づいて、車両が停車中であるか否かを判定する。
車両が停車中でないと判定した場合、すなわち車両が走行中であると判定した場合、ステップS12へ進む。したがって、車両走行中にはアイドルストップ許可温度TAの値が初回許可温度TA1から変更されない。
車両が停車中であると判定した場合、ステップS1102へ進み、アイドルストップ制御が解除された後であるか否かを判定する。例えば、アイドルストップ解除フラグがオンされている場合、アイドルストップ制御が解除された後であると判定する。アイドルストップ解除フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされたときにリセットされる。
アイドルストップ制御が解除された後でないと判定した場合、ステップS12へ進む。したがって、車両走行中にはアイドルストップ許可温度TAの値が初回許可温度TA1から変更されない。
アイドルストップ制御が解除された後であると判定した場合、ステップS1103へ進み、アイドルストップ許可温度TAの値を変更して、ステップS12へ進む。
具体的には、図7のタイムチャートに示すように、アイドルストップ許可温度TAの値を、初回許可温度TA1から変更後許可温度TA2に変更する。変更後許可温度TA2は、初回許可温度TA1よりも高い値である。変更後許可温度TA2は、アイドルストップ解除温度TBよりも低い値である。
アイドルストップ許可温度TAの値が変更後許可温度TA2に変更されることによって、アイドルストップ許可信号が早く出力されるようになるので、アイドルストップ制御を早く開始させることができる。そのため、燃費を向上させることができる。
例えば、変更後許可温度TA2は、予め空調制御装置50に記憶されている固定値である。
空調制御装置50は、変更後許可温度TA2を種々の条件に基づいて変化させてもよい。例えば、エコノミーモードが設定されている場合、エコノミーモードが設定されていない場合と比較して変更後許可温度TA2の値を大きくしてもよい。
これにより、エコノミーモードが設定されている場合、アイドルストップ許可信号が一層早く出力されるようになるので、アイドルストップ制御を一層早く開始させることができ、ひいては燃費を一層向上させることができる。
空調制御装置50は、冷房負荷が高いほど変更後許可温度TA2の値を小さくしてもよい。これにより、冷房負荷が高いときに極力冷房を行って乗員の冷房感をを極力確保できる。
例えば、目標吹出温度TAOが低いほど変更後許可温度TA2の値を小さくすればよい。例えば、蒸発器15に流入する空気の温度が高いほど変更後許可温度TA2の値を小さくしてもよい。蒸発器15に流入する空気の温度は、内気温度、外気温度および内外気風量割合に基づいて算出すればよい。内外気風量割合は、吸込口モードに基づいて算出すればよい。蒸発器15の空気入口側に温度センサを設け、この温度センサの検出信号に基づいて、蒸発器15に流入する空気の温度を算出してもよい。
例えば、車室内の日射量Tsが多いほど変更後許可温度TA2の値を小さくしてもよい。空調制御装置50は、車室内の日射量Tsを、車両の進行方向、時刻および天候のうち少なくとも1つに基づいて推定してもよい。
例えば、車両の進行方向が南寄りの場合、車室内の日射量Tsが多いと推定し、車両の進行方向が北寄りの場合、車室内の日射量Tsが少ないと推定すればよい。空調制御装置50は、車両の進行方向を、カーナビゲーションからの情報に基づいて判定すればよい。
例えば、日中の場合、車室内の日射量Tsが多いと推定し、夜間の場合、車室内の日射量Tsが少なくて冷房負荷が低いと推定すればよい。
例えば、晴天の場合、車室内の日射量Tsが多いと推定し、雨天の場合、車室内の日射量Tsが少ないと推定すればよい。空調制御装置50は、晴天であるか雨天であるかを、レインセンサの検出信号に基づいて判定すればよい。
次に、ステップS12では、冷却水回路40の冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが蒸発器温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが蒸発器温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが蒸発器温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが蒸発器温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動させることを決定する。これにより、冷却水が冷却水回路40内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。制御マップは、予め空調制御装置50に記憶されている。
次に、ステップS14では、ステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器12a、32、37、40a、61、62、63、64、90に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、信号出力手段50dからエンジン制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。本例では、制御周期τは250msである。車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
以上のように車両用空調装置1が作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
車室内に吹き出される空調風によって車室内空間が外気温Tamよりも低温に冷やされる場合には、車室内の冷房が実現される。車室内に吹き出される空調風によって車室内空間が外気温Tamより高温に加熱される場合には、車室内の暖房が実現される。
車両用空調装置1がステップS11の制御処理を実行することによって、例えば図7に示すタイムチャートのようにアイドルストップが解除される。図7は、冷房時における制御結果の例を示している。
まず、蒸発器15の温度TEがアイドルストップ許可温度TAを下回って十分に低下すると、アイドルストップが開始される。このときのアイドルストップ許可温度TAの値は、初回許可温度TA1である。
これにより、蒸発器15に低温低圧冷媒が流れなくなって蒸発器15の温度TEが徐々に上昇する。蒸発器15の温度TEがアイドルストップ解除温度TBに達するまでは、蒸発器15の余冷熱によって空気が冷やされる。
蒸発器15の温度TEがアイドルストップ解除温度TBを上回って高くなりすぎると、アイドルストップが解除されてエンジンEGが始動される。これにより、蒸発器15に低温低圧冷媒が流れて蒸発器15の温度TEが低下するので冷房効果が発揮される。
蒸発器15の温度TEがアイドルストップ許可温度TAを下回って十分に低下すると、アイドルストップが再び開始される。このときのアイドルストップ許可温度TAは、変更後許可温度TA2であり、初回許可温度TA1よりも高い温度である。したがって、初回のアイドルストップ時と比較して蒸発器15の温度TEが高いときに2回目のアイドルストップが開始される。これにより、2回目のアイドルストップの開始が早くなるので燃費を向上できる。
本実施形態では、制御ステップS11で説明した通り、空調制御装置50の信号出力手段50dは、アイドルストップ制御が実施された後のアイドルストップ許可温度TA2を、アイドルストップ制御が実施される前のアイドルストップ許可温度TA1よりも高い値に変更する。
これによると、冷却用熱交換器15の温度TEが初回のアイドルストップ制御開始時よりも高くても2回目のアイドルストップ制御を許可するので、2回目のアイドルストップ制御を早く開始させることができる。そのため、アイドルストップの頻度を高めて燃費を向上させることができる。
本実施形態では、空調制御装置50の信号出力手段50dは、エコノミーモードが設定されている場合、エコノミーモードが設定されていない場合と比較して、アイドルストップ制御が実施された後のアイドルストップ許可温度TA2の値を高くする。
これによると、エコノミーモードが設定されている場合、エコノミーモードが設定されていない場合と比較して2回目のアイドルストップ制御を早く開始させることができるので、乗員の要望に応じてアイドルストップの頻度を一層高めて燃費を一層向上させることができる。
本実施形態では、空調制御装置50の信号出力手段50dは、冷房負荷が高いほど、アイドルストップ制御が実施された後のアイドルストップ許可温度TA2の値を低くする。
これによると、冷房負荷が高いほど2回目のアイドルストップ制御の開始を遅らせることができるので、アイドルストップの頻度を高めて燃費を向上させつつ、乗員の冷房感を極力確保できる。
例えば、空調制御装置50の信号出力手段50dは、冷却用熱交換器15に流入する空気の温度が高いほど、信号を出力した後のアイドルストップ許可温度TA2の値を低くすればよい。
例えば、空調制御装置50の信号出力手段50dは、車室内における日射量が多いほど、信号を出力した後のアイドルストップ許可温度TA2の値を低くすればよい。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、アイドルストップが解除された後、アイドルストップ許可温度TAを高い値に変更するが、本実施形態では、図9に示すように、アイドルストップが解除された後、アイドルストップ許可温度TAを高い値に変更するとともに、送風機32を停止させる。
具体的には、ステップS1103にてアイドルストップ許可温度TAの値を変更した後、ステップS1104へ進み、送風機32を停止させてステップS12へ進む。
これにより、蒸発器15への送風が停止されるので、蒸発器15での熱交換が抑制される。そのため、蒸発器温度TEをアイドルストップ許可温度TAまで速やかに低下させることができるので、2回目のアイドルストップが一層開始されやすくなる。
。
2回目のアイドルストップが開始されたら、送風機32を再び作動させる。これにより、冷房が再開される。
本実施形態では、空調制御装置50の風量制御手段50aは、アイドルストップ制御が実施された後の送風機32の風量を、アイドルストップ制御が実施される前の送風機32の風量よりも減少させる。
これによると、アイドルストップ制御が実施された後、冷却用熱交換器15での熱交換が抑制されるので、冷却用熱交換器15の温度TEをアイドルストップ許可温度TA1、TA2に速やかに低下させることができる。そのため、2回目のアイドルストップ制御を一層早く開始させることができるので、アイドルストップの頻度を一層高めて燃費を一層向上させることができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、アイドルストップが解除された後、アイドルストップ許可温度TAを高い値に変更するが、本実施形態では、図10に示すように、アイドルストップが解除された後、アイドルストップ許可温度TAを高い値に変更するとともに、送風機32の送風量を減少させる。
具体的には、ステップS1103にてアイドルストップ許可温度TAの値を変更した後、ステップS1105へ進み、送風機32の送風量を減少させてステップS12へ進む。
これにより、蒸発器15への送風量が減少するので、蒸発器15での熱交換が抑制される。そのため、蒸発器温度TEをアイドルストップ許可温度TAまで速やかに低下させることができるので、2回目のアイドルストップが一層開始されやすくなる。
。
空調制御装置50は、ステップS1105で変更する送風機32の送風量を種々の条件に基づいて変化させてもよい。例えば、エコノミーモードが設定されている場合、エコノミーモードが設定されていない場合と比較して送風機32の送風量を少なくしてもよい。
これにより、エコノミーモードが設定されている場合、蒸発器15での熱交換が一層抑制される。そのため、蒸発器温度TEをアイドルストップ許可温度TAまで一層速やかに低下させることができる。
空調制御装置50は、冷房負荷が高いほど送風機32の送風量を多くしてもよい。これにより、冷房負荷が高いときに極力冷房を行って乗員の冷房感をを極力確保できる。
例えば、目標吹出温度TAOが低いほど送風機32の送風量を多くすればよい。例えば、蒸発器15に流入する空気の温度が高いほど送風機32の送風量を多くしてもよい。例えば、車室内の日射量Tsが多いほど送風機32の送風量を多くしてもよい。
空調制御装置50は、2回目のアイドルストップが開始されたら、送風機32の送風量を元に戻す。これにより、通常の冷房を行って乗員の冷房感を確保できる。
空調制御装置50は、2回目のアイドルストップが開始されても、送風機32の送風量を元に戻さず低風量で維持してもよい。これにより、蒸発器温度TEの上昇を抑制できるので、アイドルストップが行われる時間を長くでき、ひいては燃費を一層向上できる。
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせ可能である。上記実施形態を種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、車両用空調装置1は、エンジンEGから車両走行用の駆動力を得る車両に搭載されているが、車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行可能なハイブリッド車両に搭載されていてもよい。