ブリッジ型で両方の脚部をエアベアリングで浮上支持するタイプの三次元測定機は、Y軸移動体に変形を生じさせずに、少ない摺動抵抗でY軸移動体をガイドできるという利点がある。
しかしながら、ブリッジ型で両方の脚部をエアベアリングで浮上支持するタイプの三次元測定機は、加減速時におけるピッチング方向及びヨーイング方向の動的な変位が大きいという問題がある。この加減速時におけるピッチング方向及びヨーイング方向の動的な変位は振動として現れ、経時的に収束するが、収束する前に測定を行うと、測定誤差を生じさせるという問題がある。特に、ブリッジ型の三次元測定機では、移動体の重心が駆動側の支持点よりも上部に位置し、その間の距離も離れた構成になるため、倒れやすい構成になる。そのため加減速時の倒れやすさに比例したピッチング方向の慣性モーメントが大きくなり、ピッチング方向に振動が発生し、ピッチング誤差が発生しやすいという欠点がある。
また、ブリッジ型で両方の脚部をエアベアリングで浮上支持するタイプの三次元測定機は、両方の脚部に摺動抵抗が存在しなくなる。この場合、両方の脚部の中間位置でY軸移動体を推進させると、Y軸移動体はバランスよく移動するが、片側の脚部だけを駆動すると、従動側の脚部が遅れて移動するようになり、左右の推進バランスが取れなくなる。このため、ヨーイング方向の動的誤差が大きくなるという欠点がある。
また、両方の脚部をエアベアリングで浮上支持すると、まったく摺動抵抗が存在しないため、駆動後の微小振動が落ち着くまでの静定時間に長い時間を要するようになる。
更に、ブリッジ型では、重心位置が支点位置よりも相対的に高くなるため、動き出した際の慣性力によるピッチング誤差が大きくなる他、そのピッチングによる前後方向の揺れが収まるまでに極めて長い時間を要するという欠点もある。
また、圧縮エアの消費量が大きく、ランニングコストが高いという欠点もある。
一方、ブリッジ型で両方の脚部を直動ガイドで支持するタイプの三次元測定機は、両方の脚部に生じる摺動抵抗が大きくなるという欠点がある。そして、両方共に摺動抵抗が大きい状態で片側の脚部だけを駆動すると、従動側の脚部が遅れて移動するため、左右の推進のバランスが取れなくなり、ヨーイング方向の動的誤差が大きくなるという欠点がある。この結果、直動ガイドの左右で移動のヒステリシスが大きくなってヨーイングが大きくなり、測定誤差を生じさせやすいという欠点がある。
また、2つの直動ガイドで支持されるため、駆動部が発熱しやすいという欠点がある(駆動部の発熱は、装置本体に熱応力を発生させ、ガイド部の変形等を生じさせる。)。
更に、2つの直動ガイドの平行度が高精度に保たれていない場合や長年の経時変化で2つの直動ガイドの平行度が徐々に悪化してくると、直動ガイド同士が相互に干渉して移動時にY軸移動体に変形(捩れ、撓み等)が生じ、動きが滑らかではなくなるという欠点もある。一般に、Y軸移動体の撓みによるプローブの接触位置の誤差は、基準ワークの測定結果から得られる補正式などにより、ある程度は補正可能であるが、撓み量の変化による影響まで正確に補正するのは難しいという問題がある。
また、一方の脚部を一対の直動ガイドで支持し、他方の脚部をエアベアリングで支持する構成の三次元測定機においても、一方の脚部が2つの直動ガイドで支持されるため、摺動抵抗が大きく、駆動部が発熱しやすいという欠点がある。
また、一対の直動ガイドの支持部は、回転方向の変位が許さない構造となる。この場合、一対の直動ガイドとエアベアリングとの平行度が高精度に保たれていない場合、すなわち、厳密には直動ガイドの水準と定盤面(定盤のワーク載置面)の水準位置とがY軸方向で変化していく場合には、Y軸移動体がY軸方向に移動する過程で他方の脚部がエアベアリングから受ける抗力に呼応して、直動ガイドによる支持部分がフレキシブルに回転できない構成となる。この結果、Y軸移動体がX軸方向内で反り返る形となって変形するという欠点がある。なお、一般に直動ガイドの摺動面とエアベアリングの摺動面との平行度は加工誤差を有している。
ガントリー型の三次元測定機でも同様に、2つの直動ガイドで支持されるため、摺動抵抗が大きく、ヨーイング誤差が大きくなる欠点がある。また、2つの直動ガイドの平行度が高精度に保たれていないと、移動時にY軸移動体に変形が生じることや、移動に際して滑らかに移動しないという欠点がある。
また、プローブの定盤面からの高さを補正する基準面位置において、プローブのZ方向の直動ガイドによって定義される基準面と、測定対象の基準面、すなわち、定盤によって規定される基準面とが、全く独立した異なる基準面になるため、Y軸移動体が移動した際に、必ずしも高精度なZ変位を取得することはできないという欠点がある。
更に、ガントリー型の三次元測定機は、ベースに一対のコラムが設置されるため、測定エリアの視認性が悪いという欠点もある。
また、カンチレバー型の三次元測定機は、Y軸移動体が片持ち支持される構成のため、剛性が低く、自重による撓みが生じやすいという欠点がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ピッチング誤差やヨーイング誤差が小さく、定盤基準で高精度な測定ができる三次元測定機を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
第1の態様は、Y軸ガイド手段と、Y軸ガイド手段にガイドされてY軸方向に移動するY軸移動体と、Y軸移動体に備えられるX軸ガイド手段と、X軸ガイド手段にガイドされてX軸方向に移動するX軸移動体と、X軸移動体に備えられるZ軸ガイド手段と、Z軸ガイド手段にガイドされてZ軸方向に移動するZ軸移動体と、Z軸移動体に備えられる測定部と、を備え、測定部をX軸、Y軸、Z軸方向に移動させてワークを測定する測定機において、Y軸ガイド手段は、Y軸と平行な1本のガイドレールと、ガイドレールに複数の転動体を介してスライド自在に設けられ、Y軸移動体のX軸方向の一端が接続されて、Y軸移動体をY軸方向にガイドするスライダと、Y軸及びX軸と平行なガイド面と、Y軸移動体のX軸方向の他端に取り付けられ、ガイド面との間に空気膜を形成して、Y軸移動体のX軸方向の他端をガイド面に対して非接触でスライド可能に支持するエアパッドと、を備える測定機である。
本態様によれば、Y軸移動体は、一端がスライダを介して1本のガイドレール上をスライド自在に支持され、他端がエアパッドを介してガイド面上を浮上支持される。これにより、ガイドレールによるスライダの支持部を中心として、Y軸移動体がY軸と平行な軸周りに揺動(回動)可能に支持される(ローリング方向に揺動(回動)可能に支持される。)。すなわち、スライダの支持部を中心としたとしたY軸移動体のフレキシブルな揺動(回動)が可能となる。これにより、他端のエアパッドは、一定の抗力にてガイド面上の測定ベース位置を基準とした挙動をとるため、測定ベースを基準としたZ方向の測定ができる。また、これにより、Y軸移動体の撓み変形を防ぐことができる。すなわち、2本のガイドレールにスライダを介してスライド自在に支持した場合、2本のガイドレールの平行度が高精度に保たれていないと、Y軸移動体に捩れ等の変形が生じるが、一端を1本のガイドレールで支持し、他端をエアパッドで浮上支持することにより、両者の平行度の違いをY軸移動体の揺れ(ガイドレールによるスライダの支持部を起点としたY軸と平行な軸周りの回転運動(ローリング方向の回転運動))によって吸収でき、Y軸移動体の変形を防ぐことができる。また、両端を支持するので、片持ち支持のような自重による変形も防ぐことができる。これにより、Y軸移動体の変形によって生じる測定誤差を防ぐことができる。
また、一端がスライダを介して1本のガイドレールに支持されることにより、Y軸移動体がY軸上を移動するための直進性は、ガイドレール上のスライダによって規定されることになる。このため、1つのガイドレールを基準としてY軸方向に直進し、Y軸方向への移動時に左右に振れることがない。これにより、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。一般に、エアベアリングによる浮上支持は、Y軸移動体をY軸方向へ移動させるための直進性を確保することが難しく、ヨーイング方向の変位が大きい。このため、両端をエアベアリングによって浮上支持すると、移動方向に対して左右に微小に向きを変えるようになり、ヨーイング方向の変位が大きくなる。一方、本態様のように、一端をガイドレールで支持することにより、Y軸移動体をY軸方向に移動させるための直進性は、一端のガイドレールを基準に、ガイドレールの直進性で規定させることができる。このため、Y軸移動体は一方のガイドレールを基準に直進移動する。この結果、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。これにより、加減速時におけるヨーイング方向の振動を抑えることができ、高精度な測定を行うことができる。
また、片側のみエアパッドで浮上支持する構成とすることにより、圧縮エアの消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを抑えることができる。更に、1本のガイドレールで支持する構成とすることにより、摺動抵抗を低減できる。これにより、駆動部(モータ)の発熱を抑えることができ、熱応力によるベースの変形を抑えることができる。
第2の態様は、第1の態様の測定機において、スライダを駆動して、Y軸移動体をY軸方向に移動させるY軸駆動手段を更に備える態様である。
本態様によれば、Y軸移動体を駆動するY軸駆動手段が、エアパッド側ではなく、ガイドレール側に配設される。これにより、Y軸移動体のヨーイングによる誤差を更に軽減することができる。すなわち、一方のスライダ部分と、他方のエアパッド部分とでは、摺動抵抗の大きさが異なり、スライダ部分の方が格段に大きい。Y軸移動体を駆動する際、摺動抵抗が大きいスライダ側に駆動手段を設けることで、ガイドレールの直進性を基準にして、Y軸移動体を直進させることが可能となる。これにより、Y軸移動体がY方向に移動する際、左右に微小に交互に向きを変えながら移動するということはなくなり、ガイドレールの直進性に沿って移動することになる。この結果、Y軸移動体のヨーイングによる誤差を更に軽減することが可能となる。
なお、本態様による効果は、上記第1の態様による効果、すなわち、Y軸移動体を揺動可能に支持することの効果(Y軸移動体の変形を防ぐ効果)とは、独立した効果である。本態様は、中央部に測定部を有する測定機において、測定部を支える手段として、一端をガイドレールに沿って摺動するスライダで支持し、他端をエアパッドで浮上支持する機構を有し、スライダ側に駆動系を備えることにより、移動に際して起こるヨーイング(左右に交互に微小に向きを変えながら動く動作)を低減する効果を有する。すなわち、本態様は、摺動抵抗のバランスと、その摺動抵抗のバランスを加味しながら、Y軸移動体を駆動させる際、左右方向へ微小に向きを変える慣性モーメントを低減しながら直進させ、その結果、ヨーイングによる誤差をなくすという独特の作用効果を生じさせるものである。
なお、上記のように、Y軸移動体の両端をエアパッドで浮上支持する場合は、基準となる直進性が確保できず、また、摺動抵抗が存在しないため、片側だけ駆動すると、容易に向きを変えてしまい、ヨーイングが大きくなるという欠点がある。また、両端をスライダで支持する場合も同様に片側だけ駆動すると、ヨーイング誤差が更に大きくなるという欠点がある。また、互いの平行が取れていない場合は、動きそのものが滑らかではなくなるという欠点がある。
第3の態様は、第1又は2の態様の測定機において、ガイドレールが、測定部よりも上方に配設される態様である。
ガイドレールは、Y軸移動体を支える支点となる。厳密に支点は、ガイドレール部分と、エアパッドを支えるガイド面の部分との2つの点になるが、エアパッドは定盤に対して非接触であるため、Y軸移動体を実質的に支える点はガイドレール部分となる。一方、Y軸移動における重心位置は、測定部(プローブで測定する場合はプローブの先端付近)とすることが、測定誤差の観点で最も望ましい。しかし、厳密には測定部の少し上部となる。ただし、ガイドレールの支点位置よりも重心点の位置を下方に位置させることは可能となる。このような駆動機構でスライドする支点位置よりも重心位置が低くなることで、Y軸の移動機構全体が倒れにくい構造とすることができる。そして、このように倒れにくい構造とすることにより、ピッチング方向の誤差(移動する際に前後方向に揺れ動く誤差)を格段に小さくすることができるという効果を奏することができる。このように測定部の位置(プローブで測定する場合はプローブの位置)を、支点となるガイドレール位置よりも低い設定することにより、ピッチング誤差を大きく減らすことができる。
第4の態様は、第1から3のいずれか1の態様の測定機において、X軸及びY軸と平行なワーク載置面を有する定盤を更に備え、ワーク載置面がエアパッドのガイド面を兼ねる態様である。
本態様によれば、ワークを載置するための定盤が備えられ、定盤のワーク載置面がエアパッドのガイド面とされる。これにより、別途ガイド面を備える必要がなくなり、構成を簡素化することができる。また、一般に定盤のワーク載置面は、高精度に平坦化されるので、Y軸移動体を高精度にガイドすることができる。
また、定盤のワーク載置面がエアパッドのガイド面とされることにより、次の効果を奏する。ワークのZ方向の基準面は、定盤の表面(上面)、すなわち、ワーク載置面(定盤面)が基準となる。プローブで測定する場合、プローブをワーク載置面に当接させ、当接された点を0点として、ワーク載置面基準で高さを定義することができる。一方で、プローブを含むY軸移動体の基準面もワーク載置面となる。Y軸移動体は、エアパッドによる浮上力で絶えずワーク載置面を基準として上下する構成とされており、一方の支持点であるガイドレール側は、ガイドレールのセンタを中心として、揺動(回動)する構成とされている。たとえば、ガイドレールと定盤の平行度が確保されていない場合であっても、エアパッドによって形成される一定浮上力の下、ワーク載置面を基準としてY軸移動体を持上げ、ガイドレールの部分で揺動(回動)して調整され、Y軸移動体を撓み変形させることなく追従する。よって、ワーク並びにプローブの2つがワーク載置面を基準としていることから、同一基準面の下で精度よく測定することができる。
また、測定の基準面を、ワーク、プローブともに一つの面と規定することから、制御・管理を容易にすることができ、装置の微小な経年変化があったとしても、逐次構成することにより、高精度な測定を長期にわたり確保することができる。
更に、ガイドレールを測定部よりも上方に配設した場合には、次の効果を奏する。ガイドレールを測定部よりも上方に配設した場合、ワークの測定部位は、Z方向ならびにX方向において、Y軸移動体を支える2つの支点(ガイドレールとエアパッドに対向する定盤)のほぼ中間位置に位置することになる。このように2つの支点のほぼ中間位置にワークの測定部位が存在することは、それぞれの支点部分における微小な振動や微小な変位が、かえって助長されるということはなく、打ち消されるか、少なくとも縮小されることになる。仮に、ブリッジ型の測定機やガントリー型の測定機の場合は、2つの支点の位置に比べて、ワークの測定部位は離れたところに存在する。そのため、支点部分の少しの振動がモーメントによって助長され、更に大きな誤差になってしまう問題がある。しかし、本態様によれば、このように振動や変位が助長されるという問題は発生しない。
第4の態様は、第1から3のいずれか1の態様の測定機において、Y軸移動体は、Z軸と平行な脚部と、脚部の上端部からX軸と平行に延びるX軸ベース部とからなるL字形状を有し、X軸ベース部の先端部にスライダが接続され、脚部の下端部にエアパッドが取り付けられ、X軸ベース部にX軸ガイド手段が備えられる態様である。
本態様によれば、Y軸移動体が、X軸ベース部と脚部とからなるL字形状を有する。Y軸移動体は、X軸ベース部の先端部にスライダが接続され、脚部の下端部にエアパッドが取り付けられて、Y軸方向に移動自在に支持される。L字形状とすることにより、ブリッジ型に比して、移動部を軽量化することができる。これにより、加減速時の慣性モーメントを低減でき、動的なピッチング方向の変位(振動)を低減することができる。また、測定エリアの視認性を向上させることができる。
第6の態様は、第5の態様の測定機において、ガイドレールが備えられるY軸ベースと、定盤に備えられ、Y軸ベースを支持するV字形状のY軸コラムと、を更に備える態様である。
本態様によれば、ガイドレールが配設されるY軸ベースが、定盤上にV字形状のY軸コラムを介して設置される。これにより、測定エリアの視認性を向上させることができる。また、一般に定盤は石で構成され、Y軸コラムは金属で構成(主に鋳鉄製)されるが、Y軸コラムをV字形状とすることにより、剛性を確保しつつ、定盤に対するY軸コラムの設置面積を最小限に抑えることができる。これにより、バイメタルの影響を最小限に抑えることができる。
第7の態様は、第1から3のいずれか1の態様の測定機において、Y軸移動体は、X軸と平行なX軸ベース部と、X軸ベース部の両端からZ軸と平行に延びる一対の脚部とからなる門形状を有し、一方の脚部の下端部にスライダが接続され、他方の脚部の下端部にエアパッドが取り付けられ、X軸ベース部にX軸ガイド手段が備えられる態様である。
本態様によれば、Y軸移動体が門形状を有する。これにより、測定エリアの視認性を高めることができる。
第8の態様は、第7の態様の測定機において、X軸及びY軸と平行なワーク載置面を有する定盤を更に備え、ワーク載置面がガイド面を兼ねる態様である。
本態様によれば、ワークを載置するための定盤が備えられ、定盤のワーク載置面がエアパッドのガイド面とされる。これにより、別途ガイド面を備える必要がなくなり、構成を簡素化することができる。また、一般に定盤のワーク載置面は、高精度に平坦化されるので、Y軸移動体を高精度にガイドすることができる。
第9の態様は、第1から3のいずれか1の態様の測定機において、X軸及びY軸と平行なワーク載置面を有する定盤と、ガイドレールが備えられる第1のY軸ベースと、定盤に備えられ、第1のY軸ベースを支持する第1のY軸コラムと、ガイド面を有する第2のY軸ベースと、定盤に備えられ、第2のY軸ベースを支持する第2のY軸コラムと、を更に備え、Y軸移動体は、バー形状を有する態様である。
本態様によれば、Y軸移動体がバー形状を有する。これにより、Y軸移動体を必要最小限の大きさ、すなわち、X軸移動体の移動を確保できる最小限の大きさにすることができる。これにより、移動部を軽量化でき、加減速時の慣性モーメントを低減することができる。
第10の態様は、第1から9のいずれか1の態様の測定機において、エアパッドは、自由継手を介してY軸移動体に取り付けられる態様である。
本態様によれば、エアパッドが自由継手を介してY軸移動体に取り付けられる。これにより、ガイド面にうねりがある場合であっても、そのうねりに沿ってエアパッドが揺動でき、Y軸移動体が捩じりモーメントを受けるのを防止できる。
第11の態様は、測定部が搭載された移動体を水平な軸に沿ってガイドする測定機の移動ガイド機構において、軸と平行に配設される1本のガイドレールと、ガイドレールに複数の転動体を介してスライド自在に設けられ、移動体の一端が接続されて、移動体を軸に沿ってガイドするスライダと、水平なガイド面と、移動体の他端に取り付けられ、ガイド面との間に空気膜を形成して、移動体の他端をガイド面に対して非接触でスライド可能に支持するエアパッドと、を備える測定機の移動ガイド機構である。
本態様によれば、移動体は、一端がスライダを介して1本のガイドレール上をスライド自在に支持され、他端がエアパッドを介してガイド面上を浮上支持される。これにより、移動体が、ガイドレールによるスライダの支持部を起点としてY軸と平行な軸周りに揺動可能に支持(ローリング方向に揺動可能に支持)される。このように移動体に対してフレキシブルな揺動を可能にすることにより、移動体の変形を防ぐことができる。また、両端を支持するので、自重による変形も防ぐことができる。これにより、移動体の変形によって生じる測定誤差を防ぐことができる。また、一端がスライダを介して1本のガイドレールに支持されることにより、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。これにより、加減速時におけるヨーイング方向の振動を抑えることができ、高精度な測定を行うことができる。また、片側のみエアパッドで浮上支持する構成とすることにより、圧縮エアの消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを抑えることができる。更に、1本のガイドレールで支持する構成とすることにより、摺動抵抗を低減できる。これにより、駆動部(モータ)の発熱を抑えることができ、熱応力によるベースの変形を抑えることができる。
第12の態様は、第11の態様の測定機の移動ガイド機構において、移動体は、脚部とベース部とからなるL字形状を有し、ベース部の先端部にスライダが接続され、脚部の下端部にエアパッドが取り付けられ、ベース部に測定部が搭載される態様である。
本態様によれば、移動体がL字形状を有する。これにより、ブリッジ型に比して、移動部を軽量化することができ、加減速時の慣性モーメントを低減できる。また、測定エリアの視認性を向上させることができる。
第13の態様は、測定部が搭載された移動体を水平な軸に沿ってガイドする測定機の移動ガイド機構において、移動体の一端を支持して、移動体を軸に沿って直線ガイドする1つの機械式の直動案内軸受と、移動体の他端を浮上支持する少なくとも1つのエアベアリングと、を備える測定機の移動ガイド機構である。
本態様によれば、移動体は、一端が1つ直動案内軸受で支持され、他端がエアベアリングで支持される。これにより、移動体を直動案内軸受の部分で揺動可能に支持(ローリング方向に揺動可能に支持)でき、移動体の変形を防ぐことができる。また、両端を支持するので、自重による変形も防ぐことができる。これにより、移動体の変形によって生じる測定誤差を防ぐことができる。また、一端が直動案内軸受で支持されることにより、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。これにより、加減速時におけるヨーイング方向の振動を抑えることができる。また、片側のみエアベアリングで浮上支持する構成とすることにより、圧縮エアの消費量を抑えることができる。これにより、ランニングコストを抑えることができる。更に、1つの直動案内軸受で支持する構成とすることにより、摺動抵抗を低減できる。これにより、駆動部(モータ)の発熱を抑えることができ、熱応力によるベースの変形を抑えることができる。
第14の態様は、第13の態様の測定機の移動ガイド機構において、移動体は、脚部とベース部とからなるL字形状を有し、ベース部の先端部が直動案内軸受に支持され、脚部の下端部がエアベアリングで支持され、ベース部に測定部が搭載される態様である。
本態様によれば、移動体がL字形状を有する。これにより、ブリッジ型に比して、移動部を軽量化することができ、加減速時の慣性モーメントを低減できる。また、測定エリアの視認性を向上させることができる。
本発明によれば、ランニングコストを抑えて高精度な測定ができる。また、視認性の高い測定機を構成することできる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
《第1の実施の形態》
〈装置構成〉
図1は、本発明に係る測定機の第1の実施形態を示す正面図、図2、図3、図4は、それぞれ図1に示した測定機の左側面図、右側面図、平面図である。
この測定機10は、いわゆる三次元測定機であり、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の各軸の方向に移動可能に設けられたプローブを用いてワークの形状、寸法等を測定する。
なお、本実施の形態において、X軸とY軸とは水平な軸を構成し、Z軸は垂直な軸を構成する。したがって、X軸とY軸とが成す面は水平な面を構成し、X軸とZ軸とが成す面、及び、Y軸とZ軸とが成す面は、垂直な面を構成する。
測定機10は、主として、架台(ベース)12と、架台12上に備えられる定盤14と、定盤14上に備えられるY軸コラム16と、Y軸コラム16に支持されるY軸ベース18と、Y軸ベース18に備えられるY軸ガイド機構20と、Y軸ガイド機構20にガイドされてY軸に沿って移動するY軸移動フレーム(Y軸移動体)22と、Y軸移動フレーム22をY軸に沿って移動させるY軸駆動ユニット(Y軸駆動手段)24と、Y軸移動フレーム22に備えられるX軸ガイド機構26と、X軸ガイド機構26にガイドされてX軸に沿って移動するX軸移動フレーム(X軸移動体)28と、X軸移動フレーム28をX軸に沿って移動させるX軸駆動ユニット(X軸駆動手段)30と、X軸移動フレーム28に備えられるZ軸ガイド機構32と、Z軸ガイド機構32にガイドされてZ軸に沿って移動するZ軸移動フレーム(Z軸移動体)34と、Z軸移動フレーム34をZ軸に沿って移動させるZ軸駆動ユニット36と、Z軸移動フレーム34に備えられる測定部38とを備えて構成される。
架台12は、定盤14を水平に支持する。架台12は、3本の固定用脚部12Aと、2本の転倒防止用脚部12Bとを備える。3本の固定用脚部12Aは、三角形の各頂点位置に配置され、うち2本の固定用脚部12Aは、定盤14の右側の前後のコーナー部に配置される。また、残りの1本の固定用脚部12Aは、定盤14の左側の辺の中央部分に配置される。2本の転倒防止用脚部12Bは、定盤14の左側の前後のコーナー部に配置される。
各固定用脚部12Aの先端には、それぞれ高さ調整可能な足部12aが備えられる。同様に、各転倒防止用脚部12Bの先端には、それぞれ高さ調整可能な足部12bが備えられる。
定盤14は、表面を正しく平滑に仕上げた平面盤である。測定対象のワークは、この定盤14の上に載置される。本実施の形態の測定機10では、定盤14が矩形状に形成される。X軸及びY軸は、この定盤14の上面(ワーク載置面(定盤面))14Aと平行に設定され、Z軸は、定盤14の上面(ワーク載置面14A)と垂直に設定される。また、X軸は、定盤14の前後の辺と平行に設定され、Y軸は定盤14の左右の辺と平行に設定される。
なお、定盤14は、熱などによる変形を防ぐため、石材(たとえば、人工大理石など)で構成することが好ましい。
Y軸コラム16は、定盤14の上に設置されて、Y軸ベース18を定盤14から所定高さの位置に支持する。Y軸コラム16は、基部16Aと、その基部16Aの両端から上方に延びる2本の支柱部16Bとを備え、全体としてV字形状に形成される。すなわち、2本の支柱部16Bが、基部16Aから外側に向けて拡がるように配置されて、V字形状に形成される。Y軸コラム16は、基部16Aが定盤14に固定されることにより、定盤14に設置され、Y軸に沿って垂直に配置される。
Y軸コラム16は、たとえば、鋳鉄で構成される。Y軸コラム16を鋳鉄で構成した場合、石材で構成された定盤14との間で温度変化によるバイメタルの影響が問題となる。しかし、本例のY軸コラム16は、V字形状に形成されるので、定盤14との設置面積を抑えることができる。これにより、バイメタルの影響を最小限に抑えることができる。また、Y軸コラム16をV字形状とすることにより、側方の視認性(Y軸コラム16の設置側から見た視認性)も確保することができる。
Y軸ベース18は、角柱状に形成される。Y軸ベース18は、Y軸コラム16に支持されて、定盤14から所定高さの位置に配設される。Y軸ベース18は、Y軸に沿って配設される。
Y軸ベース18は、たとえば、鋳鉄で構成される。なお、Y軸ベース18とY軸コラム16とは一体で構成することも可能である。
Y軸ガイド機構20は、Y軸移動フレーム(Y軸移動体)22をY軸に沿って移動自在に支持する。Y軸ガイド機構20は、Y軸テーブル42と、Y軸テーブル42をY軸に沿って移動自在に支持するY軸直動ガイド44とを備えて構成される。
Y軸直動ガイド44は、いわゆる機械式の直動案内軸受(リニアガイド、LMガイド(商標)ともいう。)である。
図5は、直動ガイドの構成を示す斜視図である。また、図6は、図5の6−6断面図である。
同図に示すように、Y軸直動ガイド44は、直線状に延びる1本のY軸ガイドレール46と、複数のボール(転動体)48を介してY軸ガイドレール46にスライド自在に支持されるY軸スライダ50とを備えて構成される。
Y軸ガイドレール46は、基部46Aと、支持部46Bと、レール部46Cとを備え、断面が略I字形状に形成される。基部46Aは、Y軸ベース18への設置部である。Y軸ガイドレール46は、この基部46Aに支持部46Bを介してレール部46Cが支持される構造を有する。支持部46Bは、基部46A及びレール部46Cに対して薄肉化されており、この結果、Y軸ガイドレール46は、全体としての断面の形状が略I字形状に形成
される。
Y軸ガイドレール46のレール部46Cには、ボール48が転走するボール転走面52が備えられる。本実施の形態のY軸直動ガイド44では、レール部46Cの左右に2条ずつ、合計4条のボール転走面52が備えられる。各ボール転走面52は、Y軸ガイドレール46の軸に沿って形成され、それぞれY軸ガイドレール46の底面(基部46Aの底面)に対して45°の角度で傾斜して形成される。
Y軸スライダ50は、断面の形状が略コ字形状のブロック体として構成され、Y軸ガイドレール46を跨ぐようにして、Y軸ガイドレール46に組み付けられる。Y軸スライダ50には、転動体であるボール48の無限循環路が備えられる。Y軸スライダ50は、この無限循環路内をボール48が循環することにより、Y軸ガイドレール46に対してスライド自在に支持される。
Y軸スライダ50は、スライダ本体54と、スライダ本体54の軸方向(スライド方向)の前後両端面に取り付けられる一対のエンドプレート56とを備えて構成される。
スライダ本体54は、主桁部54Aと、一対の脚部54Bとを備えて構成され、全体として断面形状が略コ字形状のブロック体として構成される。
主桁部54Aは、矩形の平板状に形成され、その上面部分がY軸テーブル42の取り付け面として機能する。
一対の脚部54Bは、主桁部54Aの左右両側に配置される。各脚部54Bの内側には、ボール48が転走する負荷転走面58が備えられる。負荷転走面58は、ガイドレール側のボール転走面52に対応して設けられる。すなわち、Y軸スライダ50をY軸ガイドレール46に組み付けたとき、Y軸ガイドレール46に備えられたボール転走面52と対向するように配置される。本実施の形態のY軸直動ガイド44には、Y軸ガイドレール46のレール部46Cの左右に2条ずつ、合計4条のボール転走面52が備えられている。このため、Y軸スライダ50にも各脚部54Bの内側に2条ずつ、合計4条の負荷転走面58が備えられる。
上記のように、スライダ本体54の負荷転走面58は、Y軸スライダ50をY軸ガイドレール46に組み着けたときに、ガイドレール側のボール転走面52と対向するように配置される。これにより、Y軸ガイドレール46とY軸スライダ50との間にボール48の負荷通路60が構成される。ボール48は、Y軸スライダ50とY軸ガイドレール46との間で荷重を負荷しながら負荷通路60を転走する。
ここで、各負荷転走面58の断面形状(軸方向と直交する方向の断面形状)は、ボール48の球面の曲率半径よりも僅かに大きな曲率半径を有するサーキュラーアーク状に形成される。ただし、この形状は適宜設計変更することができる。Y軸ガイドレール46に備えられるボール転走面52も同様にサーキュラーアーク状に形成される。
各脚部54Bには、各負荷通路60に対応してボール戻し通路62が備えられる(各脚部54Bに2条ずつ、合計4条のボール戻し通路62が1つのスライダ本体54に備えられる。)。ボール戻し通路62は、断面形状が円形状に形成され、負荷通路と平行に形成される。なお、ボール戻し通路62の内径は、ボール48が荷重から開放された状態で転走できるように、ボール48の外径よりも大きく形成される。
エンドプレート56は、スライダ本体54の形状に対応して形成され、断面形状が略コ字形状に形成される。エンドプレート56には、スライダ本体54の各ボール戻し通路62に対応して方向転換路(不図示)が備えられる(左右に2条ずつ、合計4条の方向転換路が1つのエンドプレート56に備えられる。)。方向転換路は、U字形状に形成され、エンドプレート56がスライダ本体54に取り付けられることにより、スライダ本体54のボール戻し通路62と負荷通路60とを連通する。これにより、ボール48の無限循環路が構成される。
ボール48は、負荷通路60においてY軸ガイドレール46のボール転走面52とY軸スライダ50の負荷転走面58に接触し、Y軸ガイドレール46とY軸スライダ50との間に作用する荷重を負荷しながら負荷通路60を転走する。
Y軸スライダ50が、Y軸ガイドレール46上を移動すると、ボール48は、負荷通路60内をY軸スライダ50の移動方向とは逆方向に転走する。そして、負荷通路60の終端から転がり出ると、荷重から解放され、無負荷状態で方向転換路(不図示)に進入する。方向転換路に進入したボール48は、方向転換路に案内されて、その進行方向を180°転換し、ボール戻し通路62に進入する。ボール48は、ボール戻し通路62を無負荷状態で進行した後、再度、方向転換路に進入し、その進行方向を180°転換して、負荷通路60に進入する。そして、再びY軸ガイドレール46とY軸スライダ50との間に作用する荷重を負荷しながら負荷通路60を転走することになる。このようにしてボール48は、負荷状態、無負荷状態を交互に繰り返しながら、無限循環路を循環する。そして、これによりY軸スライダ50がY軸ガイドレール46に沿ってスムーズにスライドすることが可能になる。
なお、本実施の形態のY軸直動ガイド44では、転動体としてボールを利用しているが、転動体にはローラ等も使用することができる。
また、本実施の形態のY軸直動ガイド44では、ボールが転走する無限循環路を4条列で構成しているが、無限循環路の条列数は、これに限定されるものではない。たとえば、無限循環路を2条列としてもよい。
以上のように構成されるY軸直動ガイド44は、Y軸ガイドレール46がY軸に沿ってY軸ベース18に敷設される。したがって、Y軸スライダ50は、Y軸に沿って移動可能に支持される。
また、本実施の形態のY軸直動ガイド44では、1つのY軸ガイドレール46に2つのY軸スライダ50が支持される(図5では1つのスライダのみを図示している。)。
Y軸テーブル42は、矩形の平板状に形成される。Y軸テーブル42は、Y軸スライダ50に固定されて、水平に設置される(X−Y面と平行に設置される。)。したがって、Y軸テーブル42は、Y軸方向に沿って水平な姿勢でスライド自在に支持される。
Y軸移動フレーム22は、Y軸ガイド機構20にガイドされてY軸に沿って移動する。Y軸移動フレーム22は、水平な梁部22Aと、垂直な支柱部22Bとを有するL字形状に形成され、X軸に沿って垂直に配設される(X−Z面に沿って配設される。)。
梁部22Aは、略角柱状に形成され、X軸に沿って配設される。支柱部22Bは、略角柱状に形成され、Z軸に沿って配設される。支柱部22Bは、上端部で梁部22Aの一端と連結されて一体化される。これにより、全体としてL字形状のY軸移動フレーム22が形成される。
Y軸移動フレーム22は、梁部22Aの先端が、Y軸テーブル42に固定されて、Y軸方向にスライド自在に支持される。また、Y軸移動フレーム22は、支柱部22Bの下端が、エアベアリング70によって定盤14上に浮上支持される。
エアベアリング70は、エアパッド72を備え、定盤14の上面(ワーク載置面)14Aをガイド面として、Y軸移動フレーム22の支柱部22Bを浮上支持する。
エアパッド72は、円盤状に形成され、支柱部22Bの下端部に取り付けられる。エアパッド72は、定盤14の上面(ワーク載置面14A)に向けて圧縮エアを噴射することにより、定盤14の上面との間にエアの層を形成し、支柱部22Bを定盤14の上面に対して浮上支持する。
なお、本例では、エアパッド72が支柱部22Bの下端部に自在継手74を介して取り付けられる。すなわち、エアパッド72が、支柱部22Bの下端部に首振り可能な状態で取り付けられる。このように自在継手74を介してエアパッド72を支柱部22Bに取り付けることにより、定盤14の上面(ガイド面)14Aにうねりがある場合であっても、そのうねりに沿ってエアパッド72が揺動でき、Y軸移動フレーム22が捩じりモーメントを受けるのを防止することできる。
以上のように、Y軸移動フレーム22は、一端(梁部22Aの先端)が1つのY軸直動ガイド44によってY軸方向に沿ってスライド自在に支持され、他端(支柱部22Bの下端)がエアベアリング70によって定盤14上を浮上支持されて、Y軸に沿って移動自在に支持される。このような構造でY軸移動フレーム22を支持することにより、Y軸移動フレーム22の変形(捩れ、撓み等)を防いで、高精度にY軸移動フレーム22を移動させることができる。これは次のメカニズムによる。
Y軸移動フレーム22は、X軸移動フレーム28をX軸方向に移動可能に支持する。このため、その梁部22Aの長さは、少なくともX軸移動フレーム28の移動ストローク分確保する必要がある。また、梁部22Aの両端部を直動ガイド(機械式の直動案内軸受)とエアベアリングとで支持する場合、両者の設置間隔は、X軸移動フレーム28の移動ストローク分確保する必要がある。このように直動ガイドとエアベアリングとを離間して設置した場合、両者の平行度が高精度に保たれていないと、Y軸移動フレーム22にローリング方向のモーメント(Y軸周りのモーメント)が発生する。
いま、Y軸移動フレーム22の両端を直動ガイド(機械式の直動案内軸受)で支持する場合を考える。この場合、Y軸移動フレーム22に発生するモーメントは、曲げモーメントとしてY軸移動フレーム22に直接作用する。この結果、Y軸移動フレーム22に変形が生じる。
一端がエアベアリングを支持し、他端を一対の直動ガイドで支持する場合も同様に、モーメントは、曲げモーメントとしてY軸移動フレーム22に直接作用する。この結果、Y軸移動フレーム22に変形が生じる。
これに対して、本実施の形態のように、一端を1つのY軸直動ガイド44で支持し、他端をエアベアリング70で支持した場合、Y軸移動フレーム22に発生するモーメントは、Y軸直動ガイド44で吸収される。
一般に直動ガイド(機械式の直動案内軸受)は、その構造上、ピッチング方向(図5のMP方向)及びヨーイング方向(図5のMY方向)の負荷モーメントには強いが、ローリング方向(図5のMR方向)の負荷モーメントには弱いという特性がある。このため、一端を1つのY軸直動ガイド44で支持し、他端をエアベアリング70で支持すると、図7に示すように、Y軸移動フレーム22は、ローリング方向(MR)に対してフレキシブルな運動が可能になる。この結果、Y軸移動フレーム22にローリング方向のモーメントが発生した場合であっても、Y軸移動フレーム22には負荷はかからず、変形が防止される。
また、本構造によれば、Y軸移動フレーム22は両端が支持されるので、片持ち支持のように、自重による変形も防ぐことができる。
また、一般にエアベアリングによる浮上支持は、ヨーイング方向の変位が大きいという欠点があるが、一端をY軸直動ガイド44で支持することにより、ヨーイング方向の変位も抑えることができる。すなわち、上記のように、直動ガイドは、ピッチング方向及びヨーイング方向の負荷モーメントには強いという特性を有しているので(与圧がかかった機械式の直動案内軸受であるため、ヨーイング剛性が高い)、一端をY軸直動ガイド44で支持することにより、片側をエアベアリングで支持した場合であっても、ヨーイング方向の変位を効果的に抑えることができる。
更に、片側のみをエアベアリング70で浮上支持する構成とすることにより、圧縮エアの消費量も抑えることができる。
このように、エアベアリングと直動ガイドの特性を上手く利用することにより、変形を生じさせることなく、Y軸移動フレーム22をY軸に沿って移動可能に支持することができる。
Y軸駆動ユニット24は、いわゆるベルト駆動によって、Y軸移動フレーム22を駆動する。Y軸駆動ユニット24は、一対のプーリ76A、76Bと、一対のプーリ76A、76Bに巻き掛けられる駆動ベルト78と、一方のプーリ76Aを回転駆動するY軸モータ80とを備えて構成される。
一対のプーリ76A、76Bは、それぞれブラケット82A、82Bを介して、Y軸ベース18に設置される。各プーリ76A、76Bの回転軸は、X軸と平行に配置される。
駆動ベルト78は、無端状に形成される。駆動ベルト78は、一対のプーリ76A、76Bに巻き掛けられることにより、Y軸に沿って配設される。
ここで、駆動ベルト78は、Y軸直動ガイド44のY軸ガイドレール46と同一直線上に配設される。すなわち、Y軸ガイドレール46に重ねて配置される。このように、駆動ベルト78を配置することにより、摺動抵抗を受けるライン上に駆動点を配置することができ、往復移動のヒステリシスをなくすことができる。
なお、このように駆動ベルト78を配置するため、一対のプーリ76A、76Bは、Y軸直動ガイド44の前後に配置される。また、Y軸移動フレーム22には、この駆動ベルト78を通すための挿通孔84が備えられる。
Y軸モータ80は、一方のプーリ76Aを回転駆動して、駆動ベルト78を走行させる。Y軸モータ80は、ブラケット82Aに取り付けられて、プーリ76Aに接続される。
以上のように構成されるY軸駆動ユニット24は、Y軸モータ80を駆動することにより、駆動ベルト78がY軸方向に沿って走行する。この駆動ベルト78は、Y軸テーブル42に接続される。これにより、Y軸モータ80を駆動すると、Y軸テーブル42がY軸に沿って移動する。また、このY軸テーブル42がY軸に沿って移動することにより、Y軸移動フレーム22がY軸に沿って移動する。
X軸ガイド機構26は、X軸移動フレーム28をX軸に沿って移動自在に支持する。このX軸ガイド機構26は、X軸テーブル86と、X軸テーブル86をX軸方向に沿ってガイドする一対のX軸直動ガイド88とを備えて構成される。
X軸直動ガイド88の構成は、Y軸ガイド機構20を構成するY軸直動ガイド44の構成と同じである。すなわち、X軸ガイドレール90と、複数のボール(不図示)を介してX軸ガイドレール90にスライド自在に支持されるX軸スライダ92とを備えて構成される。X軸ガイドレール90は、Y軸移動フレーム22の梁部22Aに敷設され、X軸に沿って配設される。
X軸テーブル86は、矩形の平板状に形成される。X軸テーブル86は、各X軸直動ガイド88のX軸スライダ92に固定されて、水平に設置される(X−Y面と平行に設置される。)。したがって、X軸テーブル86は、X軸方向に沿って水平な姿勢でスライド自在に支持される。
X軸移動フレーム28は、角柱状に形成される。X軸移動フレーム28は、X軸テーブル86に垂直に取り付けられる。
なお、X軸移動フレーム28は、一対のX軸直動ガイド88によって移動自在に支持されるが、一対のX軸直動ガイド88の設置間隔は短いので、X軸移動フレーム28の変形が問題になることはない。
X軸駆動ユニット30は、いわゆる送りネジによってX軸移動フレーム28を移動させる。X軸駆動ユニット30は、ネジ棒94と、ネジ棒94に螺合されるナット部材96と、ネジ棒94を回転駆動するX軸モータ98とを備えて構成される。
ネジ棒94は、一対のブラケット100を介して、Y軸移動フレーム22の梁部22Aに回転自在に取り付けられる。ネジ棒94は、X軸に沿って配設される。また、ネジ棒94は、一対のX軸直動ガイド88の間に配設される。
ナット部材96は、ネジ棒94に螺合される。ナット部材96は、X軸テーブル86に連結される。したがって、ネジ棒94を回転させると、その回転量に応じてX軸テーブル86がX軸方向に沿って移動する。
X軸モータ98は、ネジ棒94に連結され、ネジ棒94を回転駆動する。X軸モータ98は、一方のブラケット100に取り付けられて、ネジ棒94に連結される。
以上のように構成されるX軸駆動ユニット30は、X軸モータ98を駆動すると、ネジ棒94が回転し、その回転量に応じてX軸テーブル86がX軸方向に沿って移動する。この結果、X軸テーブル86に設けられたX軸移動フレーム28がX軸方向に沿って移動する。
Z軸ガイド機構32は、Z軸移動フレーム34をZ軸に沿って移動自在に支持する。このZ軸ガイド機構32は、Z軸テーブル102と、Z軸テーブル102をZ軸方向に沿ってガイドする一対のZ軸直動ガイド104とを備えて構成される。
Z軸直動ガイド104の構成は、Y軸ガイド機構20を構成するY軸直動ガイド44の構成と同じである。すなわち、Z軸ガイドレール106と、複数のボール(不図示)を介してZ軸ガイドレール106にスライド自在に支持されるZ軸スライダ108とを備えて構成される。Z軸ガイドレール106は、X軸移動フレーム28に敷設され、Z軸に沿って配設される。
Z軸テーブル102は、矩形の平板状に形成される。Z軸テーブル102は、各Z軸直動ガイド104のZ軸スライダ108に固定されて、垂直に設置される(X−Z面と平行に設置される。)。したがって、Z軸テーブル102は、X−Z面に沿ってスライド自在に支持される。
Z軸移動フレーム34は、角柱状に形成される。Z軸移動フレーム34は、Z軸に沿ってZ軸テーブル102に取り付けられて、Z軸に沿って移動自在に支持される。
なお、Z軸移動フレーム34は、一対のZ軸直動ガイド104によって移動自在に支持されるが、一対のZ軸直動ガイド104の設置間隔は短いので、Z軸移動フレーム34の変形が問題になることはない。
Z軸駆動ユニット36は、いわゆる送りネジによってZ軸移動フレーム34をZ軸に沿って移動させる。Z軸駆動ユニット36は、ネジ棒110と、ネジ棒110に螺合されるナット部材112と、ネジ棒110を回転駆動するZ軸モータ114とを備えて構成される。
ネジ棒110は、一対のブラケット116を介して、X軸移動フレーム28に回転自在に取り付けられる。ネジ棒110は、Z軸に沿って配設される。また、ネジ棒110は、一対のZ軸直動ガイド104の間に配設される。
ナット部材112は、ネジ棒110に螺合される。ナット部材112は、Z軸テーブル102に連結される。したがって、ネジ棒110を回転させると、その回転量に応じてZ軸テーブル102がZ軸方向に沿って移動する。
Z軸モータ114は、ネジ棒110に連結され、ネジ棒110を回転駆動する。Z軸モータ114は、一方のブラケット116に取り付けられて、ネジ棒110に連結される。
以上のように構成されるZ軸駆動ユニット36は、Z軸モータ114を駆動すると、ネジ棒110が回転し、その回転量に応じてZ軸テーブル102がZ軸方向に沿って移動する。この結果、Z軸テーブル102に設けられたZ軸移動フレーム34がZ軸方向に沿って移動する。
測定部38は、Z軸移動フレーム34に備えられる。測定部38は、測定部本体118とプローブ120とを備える。測定部本体118は、ボックス状に形成され、プローブ制御用の機器(不図示)を内蔵する。プローブ120は、測定部本体118からZ軸に沿って鉛直下向きに配設される。Z軸移動フレーム34を移動させると、プローブ120はZ軸方向に沿って移動する。測定時は、このプローブ120の先端を測定対象のワークに接触させ、接触時の先端の座標(X、Y、Z)を検出して、その座標値の集合からワークの形状、寸法等を測定する。
なお、Y軸ベース18には、Y軸移動フレーム22のY軸上での位置を検出するための図示しないスケール(Y軸スケール)がY軸に沿って備えられる。プローブ120のY軸座標は、このY軸スケールによって、Y軸移動フレーム22の位置を検出することにより取得する。
また、Y軸移動フレーム22の梁部22Aには、X軸移動フレーム28のX軸上での位置を検出するための図示しないスケール(X軸スケール)がX軸に沿って備えられる。プローブ120のX軸座標は、このX軸スケールによって、X軸移動フレーム28の位置を検出することにより取得する。
更に、X軸移動フレーム28には、Z軸移動フレーム34のZ軸上での位置を検出するための図示しないスケール(Z軸スケール)がZ軸に沿って備えられる。プローブ120のZ軸座標は、このZ軸スケールによって、Z軸移動フレーム34の位置を検出することにより取得する。
〈作用〉
上記のように、本実施の形態の測定機10は、三次元測定機として構成され、ワーク(測定対象物)の形状、寸法等の測定が行われる。
図7に示すように、ワークWは、定盤14の上に載置される。
測定は、プローブ120の先端をワークWの表面に接触させることにより行われる。すなわち、プローブ120を移動させて、プローブ120の先端がワークWに接触したときの座標(X、Y、Z)を検出し、その座標値の集合からワークの形状、寸法等を測定する。
プローブ120は、X軸モータ98、Y軸モータ80、Z軸モータ114を駆動することにより、X、Y、Zの各軸に沿って移動する。すなわち、X軸モータ98を駆動すると、X軸移動フレーム28がX軸に沿って移動し、この結果、プローブ120がX軸に沿って移動する。また、Y軸モータ80を駆動すると、Y軸移動フレーム22がY軸に沿って移動し、この結果、プローブ120がY軸に沿って移動する。また、Z軸モータ114を駆動すると、Z軸移動フレーム34がZ軸に沿って移動し、この結果、プローブ120がZ軸に沿って移動する。
この際、X軸移動フレーム28及びZ軸移動フレーム34が搭載されるY軸移動フレーム22が、1つのY軸直動ガイド44と、エアベアリング70とによって移動自在に支持されるので、高精度にプローブ120を移動させることができる。
すなわち、上記のように、Y軸移動フレーム22をY軸に沿って移動可能に支持するために、Y軸直動ガイド44とエアベアリング70とを離間して設置すると、Y軸移動フレーム22にローリング方向のモーメントが発生するが、Y軸移動フレーム22は、ローリング方向(MR)に対してフレキシブルな運動が可能(Y軸周りに揺動が可能)であるため、Y軸移動フレーム22にローリング方向のモーメントが発生した場合であっても、Y軸移動フレーム22は変形することになく支持される。これにより、X軸移動フレーム28及びZ軸移動フレーム34が搭載されるY軸移動フレーム22を安定して高精度に支持することができる。
すなわち、たとえば、Y軸移動フレーム22の両端をそれぞれ直動ガイドで支持した場合、両端の直動ガイドの平行度が高精度に保たれていないと、Y軸移動フレーム22に捩れ等の変形が生じるが、一端をY軸直動ガイド44で支持し、他端をエアベアリング70で浮上支持することにより、両者の平行度の違いをY軸移動フレーム22の揺れによって吸収でき、Y軸移動フレーム22の変形を防ぐことができる。
また、一端がY軸直動ガイド44で支持されることにより、Y軸移動フレーム22がY
軸上を移動するための直進性は、Y軸直動ガイド44を構成するY軸ガイドレール46上のY軸スライダ50によって規定されることになる。このため、1つのガイドレール(Y軸ガイドレール46)を基準としてY軸方向に直進し、Y軸方向への移動時に左右に振れることがない。これにより、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。一般に、エアベアリングによる浮上支持は、移動時の直進性を確保することが難しく、ヨーイング方向の変位が大きい。このため、Y軸移動フレーム22の両端をエアベアリングによって浮上支持すると、移動方向に対して左右に微小に向きを変えるようになり、ヨーイング方向の変位が大きくなる。一方、本実施の形態のように、一端をY軸直動ガイド44で支持することにより、Y軸移動フレーム22をY軸方向に移動させるための直進性は、Y軸直動ガイド44の直進性で規定させることができる。このため、Y軸移動フレーム22はY軸直動ガイド44を基準に直進移動する。この結果、ヨーイング方向の変位を抑えることができる。これにより、加減速時におけるヨーイング方向の振動を抑えることができ、高精度な測定を行うことができる。
また、Y軸移動フレーム22は、両端が支持された構造になるので、片持ち支持のように、自重による変形も生じることがない。
更に、一般にエアベアリングによる浮上支持は、ヨーイング方向の変位が大きいという欠点があるが、本実施の形態の測定機10では、一端がY軸直動ガイド44で支持されるので、ヨーイング方向の変位も抑えることができる。
また、片側のみがエアベアリング70で支持されるので、圧縮エアの消費量も抑えることができる。
また、本実施の形態の測定機10では、Y軸移動フレーム22を駆動するための駆動ベルト78が、Y軸ガイドレール46上に配置されるため、往復移動のヒステリシスをなくすことができる。すなわち、摺動抵抗を受けるライン上に駆動点が配置されるので、往復移動のヒステリシスをなくすことができる。これにより、Y軸移動フレーム22のヨーイングによる誤差を更に軽減することができる。すなわち、一方のY軸直動ガイド44の部分と、他方のエアパッド72の部分とでは、摺動抵抗に大きさな差があり、Y軸直動ガイド44の部分の方が格段に大きい。Y軸移動フレーム22を駆動する際、摺動抵抗が大きいY軸直動ガイド44側に駆動手段を設けることで、Y軸直動ガイド44の直進性を基準にして、Y軸移動フレーム22を直進させることが可能となる。これにより、Y軸移動フレーム22が、Y方向に移動する際、左右に微小に交互に向きを変えながら移動するのを防止できる。これにより、Y軸移動フレーム22のヨーイングによる誤差を更に軽減することができる。
更に、1つのY軸直動ガイド44で支持する構成とすることにより、摺動抵抗を低減できる。これにより、Y軸モータ80の発熱を抑えることができ、熱応力によるベース等の変形を抑えることができる。
なお、本実施の形態の測定機10のように、Y軸移動フレーム22がローリング方向(MR)に揺動可能に支持されると、その揺動によってプローブの接触位置に誤差が生じ得るが、このY軸移動フレーム22の揺動による誤差変化には再現性があるため、容易に補正することができる。
上記のように、Y軸移動フレームの両端が直動ガイドによって支持されている場合や、Y軸移動フレームの一端が一対の直動ガイドで支持されている場合、Y軸移動フレームに変形(捩れ、撓み等)が生じ得るが、その変形は温度等によって変化する。このため、誤差変化の再現性に乏しく、Y軸移動フレームの変形によって生じる測定値への影響を正確に捉えることが難しい。
一方、本実施の形態の測定機10では、Y軸移動フレーム22が変形せず、Y軸移動フレーム22の揺動のみが測定誤差として現れる。このY軸移動フレーム22の揺動による測定誤差には再現性があるため、一般的に行われている公知の補正技術を適用すれば、高精度に補正することができる。
誤差の補正は、たとえば、基準ワーク(寸法、形状等が既知のワーク)を測定し、その測定結果から補正式を算出し、得られた補正式を用いて測定結果を補正することにより行われる。
また、本実施の形態の測定機10によれば、Y軸移動フレーム22が、L字形状に形成されるため、Y軸移動フレーム22の重量も軽量化することができる。これにより、加減速時の慣性モーメントを低減でき、動的なピッチング方向の変位(振動)を低減することができる。また、側方からの測定エリアの視認性も向上させることができる。
また、本実施の形態の測定機10によれば、定盤14のワーク載置面14Aがエアパッド72のガイド面とされる。これにより、別途ガイド面を備える必要がなくなり、構成を簡素化することができる。また、一般に定盤のワーク載置面は、高精度に平坦化されるので、Y軸移動体を高精度にガイドすることができる。
また、定盤14のワーク載置面14Aがエアパッド72のガイド面とされることにより、単独で次の効果を奏する。ワークのZ方向の基準面は、定盤14のワーク載置面14Aとなる。プローブ120をワーク載置面14Aに当接させ、当接された点を0点として、ワーク載置面基準で高さを定義することができる。一方で、プローブ120を含むY軸移動フレーム22の基準面もワーク載置面14Aとなる。Y軸移動フレーム22は、エアパッド72による浮上力で絶えずワーク載置面14Aを基準として上下する構成とされており、一方の支持点であるY軸直動ガイド44側は、Y軸ガイドレール46のセンタを中心として、揺動(回動)する構成とされている。たとえば、Y軸ガイドレール46と定盤14のワーク載置面14Aとの平行度が確保されていない場合であっても、エアパッド72によって形成される一定浮上力の下、ワーク載置面14Aを基準としてY軸移動フレーム22を持上げ、Y軸ガイドレール46の部分で揺動(回動)して調整され、Y軸移動フレーム22を撓み変形させることなく追従する。よって、ワーク並びにプローブ120の2つがワーク載置面14Aを基準としていることから、同一基準面の下で精度よく測定することができる。
また、測定の基準面を、ワーク、プローブ120ともに一つの面と規定することから、制御・管理を容易にすることができ、装置の微小な経年変化があったとしても、逐次構成することにより、高精度な測定を長期にわたり確保することができる。
また、本実施の形態の測定機10では、Y軸直動ガイド44がプローブ120の先端よりも上方に配設されているため、Y軸の移動機構全体が倒れにくい構造とすることができる。これにより、ピッチング誤差を大きく減らすことができる。
Y軸直動ガイド44を構成するY軸ガイドレール46は、Y軸移動フレーム22を支える支点となる。厳密に支点は、Y軸ガイドレール46の部分と、エアパッド72を支える定盤14のワーク載置面14Aの部分の2つの点になるが、エアパッド72は定盤14に対して非接触であるため、Y軸移動フレーム22を実質的に支える点はY軸ガイドレール46の部分となる。一方、Y軸方向の移動における重心位置は、プローブ120の先端付近とすることが、測定誤差の観点で最も望ましい。しかし、厳密にはプローブ120の先端の少し上部となる。ただし、Y軸ガイドレール46の支点位置よりも重心点の位置を下方に位置させることは可能となる。このような駆動機構でスライドする支点位置よりも重心位置が低くなることで、Y軸の移動機構全体が倒れにくい構造とすることができる。そして、このように倒れにくい構造とすることにより、ピッチング方向の誤差(移動する際に前後方向に揺れ動く誤差)を格段に小さくすることができるという効果を奏することができる。このように、Y軸直動ガイド44がプローブ120の先端よりも上方に配設されることにより、ピッチング誤差を大きく減らすことができ、測定精度を更に向上させることができる。
また、Y軸直動ガイド44をプローブ120の先端よりも上方に配設した場合には、次の効果を奏する。Y軸ガイドレール46をプローブ120の先端よりも上方に配設した場合、ワークの測定部位は、Z方向ならびにX方向において、Y軸移動フレーム22を支える2つの支点(Y軸ガイドレール46の部分とエアパッド72に対向する定盤14の部分)のほぼ中間位置に位置することになる。このように2つの支点のほぼ中間位置にワークの測定部位が存在することは、それぞれの支点部分における微小な振動や微小な変位が助長されるということはなく、打ち消されるか、少なくとも縮小されることになる。仮に、ブリッジ型の測定機やガントリー型の測定機の場合は、2つの支点の位置に比べて、ワークの測定部位は離れたところに存在する。そのため、支点部分の少しの振動がモーメントによって助長され、更に大きな誤差になってしまう問題がある。しかし、Y軸直動ガイド44をプローブ120の先端よりも上方に配設した場合には、このように振動や変位が助長されるという問題は発生しない。
なお、重心位置をプローブ120の先端付近に近づけるため、Y軸スライダ50は、Y軸移動フレーム22の梁部22Aの下面と略同一面付近に取り付けることが好ましい。また、プローブ120の先端は、鉛直下方に移動するようにし、プローブ付近にプローブ120の制御用機器を搭載し重心を下げることが好ましい。
《第2の実施の形態》
図8は、本発明に係る測定機の第2の実施形態を示す正面図である。また、図9は、図8に示した測定機の右側面図である。
同図に示すように、本実施の形態の測定機10Aは、Y軸移動フレーム22が、いわゆる門型形状に形成される点で第1の実施の形態の測定機10と相違する(いわゆるブリッジ型)。したがって、ここでは、構造上、第1の実施の形態の測定機10と相違する点についてのみ説明し、第1の実施の形態の測定機10と同一又は対応する構成には、同一符号を付して、その説明は省略する。
図8に示すように、Y軸移動フレーム22は、水平な梁部22Aと、その水平な梁部22Aの両端から下方に向けて垂直に延びる一対の支柱部22B、22Cとを備えて構成され、全体として門型形状に形成される。すなわち、第1の実施の形態の測定機10のY軸移動フレーム22に、更に支柱部22Cが備えられた形状と略同じ形状で形成される。
なお、このようにY軸移動フレーム22が門型形状に形成されることにより、本実施の形態の測定機10Aには、Y軸コラムが備えられていない。
Y軸移動フレーム22は、一方の支柱部22Bがエアベアリング70によって定盤14上に浮上支持され、他方の支柱部22CがY軸ガイド機構20によってY軸方向に移動自在に支持される。
Y軸ガイド機構20は、Y軸テーブル42と、Y軸テーブル42をY軸に沿って移動自在に支持する1つのY軸直動ガイド44とを備えて構成される。
Y軸直動ガイド44は、Y軸ガイドレール46と、複数のボール(不図示)を介してY軸ガイドレール46にスライド自在に支持されるY軸スライダ50とを備えて構成される。Y軸ガイドレール46は、Y軸に沿ってY軸ベース18に敷設される。
Y軸ベース18は、長尺状に形成され、Y軸に沿って定盤14に取り付けられる。
Y軸移動フレーム22は、一方の支柱部22Cの下端部が、Y軸テーブル42に固定されて、Y軸方向に移動自在に支持される。
以上のように、本実施の形態の測定機10Aも、Y軸移動フレーム22が、1本のY軸直動ガイド44とエアベアリング70とによって、Y軸方向に移動自在に支持される。これにより、Y軸移動フレーム22が、ローリング方向(MR)に対してフレキシブルな運動が可能になり、Y軸移動フレーム22に変形を生じさせることなく支持することができる。
また、本実施の形態の測定機10Aは、Y軸移動フレーム22が、門型形状に形成されるため、側方からの視認性を更に向上させることができる。
なお、本例では、定盤14にY軸ベース18を設置し、そのY軸ベース18にY軸直動ガイド44等が設置される構成としているが、Y軸直動ガイド44等は、定盤14に設置する構成とすることもできる。
《第3の実施の形態》
図10は、本発明に係る測定機の第3の実施形態を示す正面図である。また、図11は、図10に示した測定機の左側面図である。
同図に示すように、本実施の形態の測定機10Bは、Y軸移動フレーム22が、直線状に延びるバー形状に形成される点で第1の実施の形態の測定機10と相違する(いわゆるガントリー型)。したがって、ここでは、構造上、第1の実施の形態の測定機10と相違する点についてのみ説明し、第1の実施の形態の測定機10と同一又は対応する構成には、同一符号を付して、その説明は省略する。
Y軸移動フレーム22は、角柱状のバー形状に形成される。すなわち、第1の実施の形態の測定機10のY軸移動フレーム22が梁部22Aのみで構成された場合と略同じ形状で形成される。
Y軸移動フレーム22が、このように直線状のバー形状に形成されるため、本実施の形態の測定機10Bには、一対のY軸コラムが定盤14上に備えられる。すなわち、第1のY軸コラム16と第2のY軸コラム17とが備えられる。
第1のY軸コラム16は、上記第1の実施の形態の測定機10のY軸コラム16と同様にV字形状に形成される。そして、その上部に第1のY軸ベース18が水平に支持される。
第2のY軸コラム17も第1のY軸コラム16と同様にV字形状に形成される。このY軸コラム17の上部には、第2のY軸ベース19が水平に支持される。
第2のY軸ベース19は、角柱状に形成される。この第2のY軸ベース19の上面19Aは、エアベアリング70のガイド面を構成する。このため、第2のY軸ベース19の上面19Aは、平滑に形成される。また、第2のY軸ベース19は、上面19Aが水平(X−Y面と平行)になるようにして、第2のY軸コラム17に支持される。
Y軸移動フレーム22は、一端がY軸ガイド機構20にガイドされてY軸方向に移動自在に支持され、他端がエアベアリング70によってガイド面(第2のY軸ベース19の上面19A)上を浮上支持される。
Y軸ガイド機構20は、Y軸テーブル42と、Y軸テーブル42をY軸に沿って移動自在に支持する1つのY軸直動ガイド44とを備えて構成される。
Y軸直動ガイド44は、Y軸ガイドレール46と、複数のボール(不図示)を介してY軸ガイドレール46にスライド自在に支持されるY軸スライダ50とを備えて構成される。Y軸ガイドレール46は、Y軸に沿って第1のY軸ベース18に敷設される。
Y軸移動フレーム22は、一端が、Y軸テーブル42に固定されて、Y軸方向に移動自在に支持される。
エアベアリング70は、エアパッド72を備え、第2のY軸ベース19の上面19Aをガイド面として、Y軸移動フレーム22の他端を浮上支持する。
エアパッド72は、自在継手74を介してY軸移動フレーム22の他端に取り付けられる。エアパッド72は、第2のY軸ベース19の上面19Aに向けて圧縮エアを噴射することにより、第2のY軸ベース19の上面19Aとの間にエアの層を形成し、Y軸移動フレーム22の他端を第2のY軸ベース19の上面19Aに対して浮上支持する。
以上のように、本実施の形態の測定機10Aも、Y軸移動フレーム22が、1本のY軸直動ガイド44とエアベアリング70とによって、Y軸方向に移動自在に支持される。これにより、Y軸移動フレーム22が、ローリング方向(MR)に対してフレキシブルな運動が可能になり、Y軸移動フレーム22に変形を生じさせることなく支持することができる。
また、本実施の形態の測定機10Bでは、Y軸移動フレーム22がバー形状であるため、Y軸移動フレーム22を軽量化することができる。これにより、加減速時の慣性モーメントを低減することができる。
また、Y軸移動フレーム22には、重心に近いY軸方向の支持ができるため、加減速時におけるピッチング方向の動的な変位を抑えることができ、安定した高精度なガイドができる。
一方、本実施の形態の測定機10Bでは、定盤14の両側部にY軸コラム(第1のY軸コラム16と第2のY軸コラム17)が立設される構成となるため、側方からの測定エリアの視認性が低下する。
したがって、視認性と移動の安定性を考慮すると、上記第1の実施の形態のように、Y軸移動フレーム22は、全体としてL字形状とすることが好ましい。
《その他の実施の形態》
上記実施の形態では、Y軸移動フレーム22の一端をY軸に沿って支持する支持機構として、ガイドレール(Y軸ガイドレール46)と、そのガイドレールに転動体を介してスライド自在に支持されるスライダ(Y軸スライダ50)とからなる直動ガイド(Y軸直動ガイド44)を採用しているが、Y軸移動フレーム22の一端をY軸に沿って支持する支持機構は、これに限定されるものではない。他端をエアベアリングで浮上支持した場合に、Y軸移動フレーム22をY軸周りに揺動可能に支持することができる構造であればよい。このためには、1つのガイドレールと、そのガイドレールにスライド自在に支持されるスライダとを備え、スライダがガイドレールに対してローリング方向に揺動可能に支持される構成(ローリング方向の揺れを許容できる構造)であればよい。なお、この場合、ローリング方向以外の変位、すなわち、ピッチング方向及びヨーイング方向の変位には強い構成であることが好ましい。これにより、ピッチング方向及びヨーイング方向の変位を防いで、高精度にY軸移動フレーム22をY軸に沿ってガイドすることができる。
また、上記実施の形態では、Y軸スライダ50をベルト駆動して、Y軸移動フレーム22をY軸方向に移動させる構成としているが、Y軸移動フレーム22を駆動する手段(Y軸駆動手段)は、これに限定されるものではない。Y軸スライダ50の支持部を支点としてY軸移動フレーム22の揺動を許容しつつ、Y軸移動フレーム22をY軸に沿って移動させることができる構成であればよい。
なお、Y軸駆動手段は、Y軸スライダ50を駆動して、Y軸移動フレーム22を移動させる構成とすることが好ましい。Y軸スライダ50を駆動する構成とすることにより、Y軸ガイドレール46の直進性を基準にして、Y軸移動フレーム22を直進させることができ、Y軸移動フレーム22のヨーイングを防止することができる。この効果は、Y軸スライダ50の支持部を支点としてY軸移動フレーム22を揺動可能に支持することの効果とは、独立した効果である。上記実施の形態の測定機10のように、中央部に測定部を有する測定機において、測定部を支える手段として、一端をガイドレールに沿って摺動するスライダで支持し、他端をエアパッドで浮上支持する機構を有し、スライダ側に駆動系を備えることにより、移動に際して起こるヨーイングを低減する効果を有する。すなわち、上記構成は、摺動抵抗のバランスと、その摺動抵抗のバランスを加味しながら、Y軸移動フレーム22を駆動させる際、左右方向へ微小に向きを変える慣性モーメントを低減しながら直進させ、その結果、ヨーイングによる誤差をなくすという独特の作用効果を生じさせるものである。