以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
なお、以下では、本発明の受信装置を説明する一例として、上述したような互いに大きく分離した複数の既存の免許不要帯域(たとえば、IoTなどに使用される920MHz帯、無線LANに使用される2.4GHz帯と5GHz帯)において、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を行うことが可能な無線通信システムにおける受信装置を例とする実施の形態を説明する。
ただし、本発明の受信装置の同期処理については、必ずしも、このような場合に限定されず、より一般的に、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することが可能である。また、本発明の受信装置の同期処理においては、後に説明するように、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、異なる無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することも可能である。
図1は、本実施の形態の無線通信システムの構成を説明するための概念図である。
図1を参照して、送信側では、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯の3つの周波数帯を使用することを前提に、各帯域で無線チャネルを1つずつ使用するものとして、送信フレームを構成する。
なお、各周波数帯で、複数チャネルを使用することとしてもよいが、以下では、周波数帯ごとに1チャネルを使用するものとして説明する。
具体的には、送信データを送信系列を使用する各帯域の伝送レートRiに比例するシンボル数ずつ区切って各帯域に、シリアル/パラレル変換により割り当てる。
例えば、(5GHz帯伝送レート:2.4GHz帯伝送レート:920MHz帯伝送レート)=(R1:R2:R3)=(3:2:1)ならば、送信データの系列を6シンボル毎に区切り、5GHz帯(ch1)、2.4GHz帯(ch2)、920MHz帯(ch3)にはその中の3シンボル、2シンボル、1シンボルを割り当てる。なお、送信系列を分割して割り当てる際には、このような場合に限定されず、より一般には、m個の周波数帯を使用する場合は、周波数帯の伝送レートの比を、(R1:R2:…:Rm)(比率は、既約に表現されるとする)とするとき、送信系列を(R1+R2+…+Rm)×n(m,n:自然数)シンボル毎に区切り、各チャネルには、(R1×n)シンボル、(R2×n)シンボル、…、(Rm×n)シンボルを割り当てるものとしてもよい。
そのような割り当ての後に、各帯域ごとに、送信シンボルに対して物理ヘッダをつけて、パケットとし、これらのパケットを同一タイミングで同時並列的に送信する。
送信側で各帯域に割り当てられたシンボル数については、この物理ヘッダ内に情報として格納される。
受信側では、各帯域上の物理ヘッダを利用して同期と復調処理を行う。復調された各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合し、フレームの復号を行う。
[送信装置の構成]
図2は、本実施の形態の送信装置1000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図2を参照して、送信装置1000は、送信系列を図1で説明したように各周波数帯域に割り当てる処理をするためのシリアル/パラレル変換(以下、S/P変換)部1010と、S/P変換後のデータに対して、周波数帯域ごとに、物理ヘッダの付加や、たとえば、誤り訂正符号の付加、インターリーブ処理など、所定の無線通信方式で通信するための無線フレームを形成する処理を実行するための無線フレーム生成部1020.1〜1020.3と、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3からのデジタル信号に対して、それぞれ、デジタルアナログ変換処理、所定の変調方式への変調処理(たとえば、所定の多値変調方式のための直交変調処理)、アップコンバート処理、電力増幅処理などを実行する高周波処理部(RF部)1040.1〜1040.3と、RF部1040.1〜1040.3の高周波信号をそれぞれ送出するためのアンテナ1050.1〜1050.3とを含む。RF部1040.1〜1040.3の動作は、これらに共通に設けられた局部発振器1030からのクロックに基づいて制御される。
さらに、送信装置1000は、各周波数帯(各周波数帯の中では1つ以上の無線チャネル)の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測するチャネル利用状況観測部1060と、チャネル利用状況観測部1060の観測に基づいて、所定のタイミングでのチャネル利用状況を予測するチャネル利用状況予測部1070と、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3の処理タイミングおよびRF部での送信タイミングを制御して、制御された同一の送信タイミングにおいて所定の期間につき未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信するように制御するアクセス制御部1080とを含む。
このような構成の送信装置1000により、図1で説明したように、データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
このようにすると、帯域間で混雑状況に偏りがあっても送信機会を確保できるため周波数利用効率の向上と伝送遅延の低減が期待でき、またデータの到着順番が入れ替わるような問題も発生しない。
[送信装置の他の構成]
図2では、送信装置1000の構成の一例について説明した。
図2の構成では、送信データをS/P変換部1010により各周波数帯に分配した後に、誤り訂正符号化処理とインターリーブ処理を実施する構成であった。
ただし、送信装置1000の構成は、このような場合に限定されない。
図3は、このような他の構成である送信装置1000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
図3の送信装置1000´では、送信データについて、誤り訂正符号化処理とインターリーブ処理をした後に、S/P変換部1010により各周波数帯に分配する構成となっている。無線フレーム生成部1020.1〜1020.3において、マッピング処理およびIFFT処理、ガードインターバルの付加、デジタルアナログ変換処理を実施する。
誤り訂正符号化処理およびインターリーブ処理をした後に、S/P変換部1010により各周波数帯に分配する構成とすることで、周波数ダイバーシチ効果をより強力に得ることができる。
[受信装置の構成]
以下では、図1で説明したような無線通信システムで使用される受信装置の構成について説明する。
図4は、実施の形態の受信装置2000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図4を参照して、受信装置2000は、複数の周波数帯域(920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯)の信号をそれぞれ受信するためのアンテナ2010.1〜2010.3と、アンテナ2010.1〜2010.3の信号のダウンコンバート処理、復調・復号処理などの受信処理を実行するための受信部2100.1〜2100.3と、受信部2100.1〜2100.3に対して共通に設けられ、受信部2100.1〜2100.3の動作の基準となるクロックである参照周波数信号を生成する局部発振器2020と、受信部2100.1〜2100.3からの信号の各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合するためのパラレル/シリアル変換部2700とを含む。パラレル/シリアル変換部2700からの統合されたフレームの出力は、上位レイヤーに受け渡される。
受信装置2000は、受信した信号のプリアンブル信号から局部発振器2020の周波数オフセットの検出を行って、局部発振器2020の発振周波数を制御するための信号(発振周波数制御信号)を生成し、搬送波周波数同期処理を行い、また、受信した信号からデジタル信号処理におけるタイミング同期をとるための信号(同期タイミング信号)を生成する同期処理部2600を含む。同期処理部2600の構成については、後に、より詳しく説明する。
受信部2100.1は、アンテナ2010.1からの信号を受けて、低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理、所定の変調方式に対する復調処理(たとえば、所定の多値変調方式に対する直交復調処理)、アナログデジタル変換処理等を実行するための高周波処理部(RF部)2400.1と、RF部2400.1からのデジタル信号に対して、復調・復号処理等のベースバンド処理を実行するためのベースバンド処理部2500.1を含む。
受信部2100.2も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.2ならびにベースバンド処理部2500.2を含む。また、受信部2100.3も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.3ならびにベースバンド処理部2500.3を含む。
ベースバンド処理部2500.1〜2500.3およびパラレル/シリアル(P/S)変換部2700とを総称して、デジタル信号処理部2800と呼ぶ。
図5は、図4に示した受信装置2000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図5に示した機能ブロック図は、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う受信装置の構成を示す。
すなわち、無線通信規格802.11aは、5GHz帯の無線LAN通信方式であるものの、図4では、2.4GHz、920MHz帯でも、周波数帯が異なるだけで、それ以外は同様の構成の無線通信方式に従う受信部を使用するものとする。
したがって、各周波数帯域において、後に説明するように、パケットのプリアンブル部分の構成などは、複数の周波数帯について共通であるものとする。
ただし、必ずしも、各周波数帯の無線通信方式が同様の構成を有していることは必須ではなく、周波数帯ごとに無線通信方式(信号形式、シンボル長やサブキャリア間隔など)が異なっていてもよい。この場合は、少なくとも単一の送信系列を各帯域に分割して同時に送信し、また、周波数帯が異なる以外は、RF部の構成が基本的に同一であればよく、パケットのプリアンブル部分の構成(プリアンブルの長さなど)が、複数の周波数帯ごとに異なっていてもよい。
図5では、5GHz帯の受信部2100.3の構成を代表して例示的に示す。
図5を参照して、受信部2100.3のRF部2400.3は、アンテナ2010.3からの受信信号を増幅するための低雑音増幅器3010と、低雑音増幅器3010の出力を周波数変換するためのダウンコンバータ3020と、ダウンコンバータ3020の出力を所定の振幅となるように制御するための自動利得制御器3030と、所定の多値変調信号を復調するための直交復調器3040と、直交復調器3040のI成分出力およびQ成分出力をそれぞれデジタル信号に変換するためのアナログデジタルコンバータ3050とを含む。
RF部2400.3は、さらに、局部発振器2020からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部3060と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、ダウンコンバータ3020でのダウンコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3070と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、直交復調器3040での復調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3080とを含む。
無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送されてきた信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調されている。その結果、RF部2400.3により、搬送帯域OFDM信号は、基底帯域OFDM信号に変換される。
そして、局部発振器2020からの参照周波数信号は、このような搬送帯域OFDM信号から基底帯域OFDM信号への変換における搬送周波数同期に使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器2020からの参照周波数信号は、搬送帯域信号から基底帯域信号への変換における搬送周波数同期に使用される。
再び、図5に戻って、ベースバンド処理部2500.3は、ADC3050からの信号を受けて、ガードインターバル部分を除去するためのGI除去部4010と、ガードインターバルが除去された信号に対して、高速フーリエ変換を実行するためのFFT部4020と、FFT部4020の出力に対して、デマッピングおよびデインターリーブ処理を実行するためのデマッピング/デインターリーブ部4030と、誤り訂正部4040とを含む。
ここで、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、OFDMシンボルの始まりを検出するためのシンボルタイミング同期などに使用される。
より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、ベースバンド処理における同期信号として使用される。
[受信装置の他の構成]
図4および図5では、受信装置2000の構成の一例について説明した。
図4および図5の構成では、図2の送信側の構成に対応して、受信データに対して、デマッピング/デインターリーブ処理および誤り訂正処理を実施した後に、P/S変換部2700により各周波数帯からの信号を結合する構成であった。
ただし、受信装置2000の構成は、このような場合に限定されない。
図6は、このような他の構成である受信装置2000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
図6の受信装置2000´では、受信データについて、P/S変換部2700により各周波数帯の信号を結合した後に、デインターリーブ処理および誤り訂正処理を実行する構成となっている。ベースバンド処理部2500.1〜2500.3において、ガードインターバルの除去、FFT処理およびデマッピング処理を実施する。
したがって、図6の受信装置2000´は、図3の送信装置1000´からの信号の受信に対応するものである。
図7は、このような受信装置2000´のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。図7の構成は、図3の構成に対応するものである。
図7に示した機能ブロック図も、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
図7に示すように、周波数帯域ごとに、ガードインターバル除去部4010によるガードインターバルの除去、FFT部4020によるFFT処理およびデマッピング部4032によるデマッピング処理の後に、P/S変換部2700により各周波数帯の信号を結合する。P/S変換部2700による結合の後に、デインターリーブ部4042によるデインターリーブ処理および誤り訂正部4040による誤り訂正処理を実行する。
(プリアンブルの構成)
以下では、同期処理部2600において同期処理を実行するために使用される受信データのヘッダ中に含まれるプリアンブルの構成について説明する。
図8は、プリアンブルの構成を説明するための概念図である。
プリアンブル信号は、以下に説明するような同期処理の他、伝搬路推定のためにも使用されうる。
図8(a)に示されるように、伝送パケットの物理ヘッダ内には、所定のビットパターンを有するプリアンブル領域(同期プリアンブル)が設けられている。
受信側では、既知であるこのような所定のビットパターンと受信信号との相互相関をとることで、同期処理を行うことが可能である。
また、図8(b)に示されるように、プリアンブル領域に含まれるビットパターンとして、同一のプリアンブルパターン(C)を複数設けることで、一定遅延時間後の受信信号を順に掛け合わせる遅延相関(自己相関)をとることで、同期処理を行う構成とすることも可能である。
このとき、無線LANのIEEE802.11a規格などでは、同期のためのパイロットシンボルが送信信号の中に埋め込まれている。
なお、図8(b)においては、同一のプリアンブルパターンを2つ設けて、一定遅延時間後の受信信号を、順にかけ合わせる構成を示しているが、たとえば、2つの対称なプリアンブルパターン(C,/C)(/Cは、Cと対称なプリアンブルパターン)を設定し、中央から対称に信号を掛け合わせる中央対称相関を用いることも可能である。
また、OFDM信号の受信の場合は、自己相関として、以下のようなものをとることも可能である。すなわち、OFDMシンボルには、通常、ガードインターバルが付加されており、OFDMシンボルの先頭部分と後端部分とに同じ信号部分が存在する。したがって、受信信号とこれをOFDMシンボル長だけ遅延させた信号との自己相関をとることにすると、OFDMシンボルの区切りを検出することが可能である。
ただし、以下では、自己相関としては、定遅延時間後の受信信号を順に掛け合わせる遅延相関をとる場合を例として説明する。
図9は、図8で説明したようなプリアンブル構造の一例として、無線通信規格802.11a方式におけるパケット構造を説明するための概念図である。
図9に示すように、パケットは、データの先頭にフレーム長や伝送速度、分配されたシンボル数などの物理層の情報をやり取りするPLCP(Physical Layer Convergence Protocol)ヘッダが付加されている。
PLCPプリアンブルは、ショートプリアンブルとロングプリアンブルから構成される。
ショートプリアンブル(t1〜t10)は、同一の短いシンボルが10個繰り返されており、それぞれのシンボルを16サンプルで構成されている。このようなショートプリアンブルは、受信側で自己相関または相互相関の処理を行うことで、受信側での自動利得制御、簡易なタイミング同期および周波数オフセットの推定のために使用される。
ロングプリアンブルは、64サンプルの長い同一のシンボル(T1おおびT2)が2個繰り返されており、先頭に32サンプルのGIが付け加えられている。長いトレーニングシーケンスを2回繰り返す構成とすることで、受信側での高精度なタイミング同期、周波数オフセットの推定およびチャネル推定に用いられる。
なお、図9に示したようなプリンブル構造は、例示のためのものであって、このような構成に限定されるものではない。
以下では、図4または図6に示した同期処理部2600の構成について、さらに説明する。
(実施の形態1)(相互相関)
図10は、同期処理部2600の構成のうち、「相互相関」により同期タイミングを生成する構成を説明するための機能ブロック図である。
図10を参照して、同期処理部2600は、RF部2400.1〜2400.3からの信号をそれぞれ受けて、各々の周波数帯について相関処理を行う相関器5000.1〜5000.3と、相関器5000.1〜5000.3からの相関値を合成する相関プロファイル合成部5100と、相関プロファイル合成部5100で合成された相関プロファイルから同期タイミング信号を生成するためのタイミング検出部5300と、相関プロファイル合成部5100で合成された相関プロファイルから周波数偏差(周波数オフセット)を検出するための周波数偏差検出部5500とを含む。
以下に説明するように、複数の異なる周波数帯においてプリアンブル信号を受信することで、同期処理の精度を高めることが可能である。
実施の形態1では、各周波数帯域について、プリアンブルの構造が共通であるものとする。
(相関器のタイミング同期の動作)
まず、相関器5000.1の動作について、説明する。他の相関器5000.2〜5000.3の動作も同様である。
以下では、相関処理は、相互相関によるものとして説明する。
受信信号rと既知信号sの相互相関は下記式によって表現できる
ここで、相関は、τ=0からτ=Tavg−1の期間について、とるものとする。
相互相関を考える場合、同期タイミングの生成においては、伝送路によりフェージングの影響を考慮する必要がある。信号r(t)が、伝送路において、フェージングなどの影響を受けている場合、h(t)を伝搬関数として、r(t)=h(t)・s(t)となる。
このとき、上述した相互相関の式は、下記のように、書き換えられる。
この式は、h(t)の変動が遅く、Tavgの期間で一定とみなせる場合、以下のようになる。
したがって、ある周波数帯の相互相関についてみてみると、その周波数帯におけるフェージングによって位相が回転していることになる。
(同期タイミングのための相関プロファイル合成部5100の動作)
周波数帯f1(中心周波数f1)における相関器出力と周波数帯f2(中心周波数f2)における相関器出力とを合成する処理について、以下に説明する。なお、周波数帯が3以上の場合も、基本的に同様の処理を各周波数帯で実行したものを、後に説明するような重み付けにより合成することができる。
ここで、周波数帯f1における相関器出力と周波数帯f2における相関器出力は、プリアンブルの構造が同一であるとしているので、下記で表せる。
そして、周波数帯f1と周波数帯f2とは、周波数が大きく異なっていることから、伝達関数h1と伝達関数h2とは、独立であると考えてよい。逆にいうと、周波数帯f1と周波数帯f2とは、伝達関数h1と伝達関数h2とは、独立であると考えてよい程度に、周波数が異なっているように、周波数帯を設定するといってもよい。
そのため、これらの相関値は、位相がほぼ同等で強め合うこともあれば、逆相で打消しあうこともある。
打消し合いによってタイミング同期を失敗すると、たとえば、OFDMのFFTタイミングが把握できずパケットを受信することができない。したがって、打消し合いが生じるのを防ぐ必要がある。
このような逆相による打消し合いを防ぐため、周波数帯f1と周波数帯f2との相関値は、以下のように、電力値(あるいは振幅値)に変換して位相情報を含まないようにしてから合成を行う。
各周波数帯で、相互相関をとる場合、この合成されたcavg(t)のピークを検出することで、タイミング同期をとることができる。
受信機の構成として、複素数をI成分、Q成分として管理する場合、式(1)のように電力値に変換した後に合成する方が処理は容易であり、複素数を極座標で管理する場合、式(2)のように、振幅に変換してから、合成する方が処理は容易である。
ここで、式(1)において重み係数に乗算される相関値の絶対値の2乗や、式(2)において重み係数に乗算される相関値の絶対値のように、相関値の絶対値のべき乗で表される量を、本明細書では、「相関値の絶対量」と呼ぶことにする。
ここで、重み係数w1やw2は、以下のようにして決定する。
合成の重みwについて、下記のような規範での合成重みが考えられる。
なお、以下のような規範については、タイミング同期をとる(あるいは、周波数オフセットを算出する)時点よりも前の一定時間の範囲で、履歴情報として取得されているデータを基に、予め重み係数が計算されているものとして説明する。
ただし、たとえば、以下に説明する受信電力規範や相関値規範については、受信時の値を用いて、受信データへの重み付けとすることも可能である。
また、各規範は、受信のステージに応じて、組み合わせて使用してもよい。たとえば、受信の初期においては、以下に説明する受信電力規範を使用し、一定期間経過した後は、受信SINR規範を使用するというような組み合わせで使用することが可能である。もちろん、他の組み合わせでもよい。
i)受信電力規範(干渉を考慮しない)
以下の式のように、全周波数帯域についての受信電力に対する各周波数帯域の受信電力の比で重み係数を決定する。ここで、Nf−1は、周波数帯域番号の最大値である。
ii)受信SINR規範(干渉も考慮。伝搬路推定必要)
以下の式のように、全周波数帯域についてのSINR(Signal to Interference and Noise Ratio)に対する各周波数帯域のSINRの比で重み係数を決定する。
iii)相関値規範(干渉も一部考慮)
以下の式のように、全周波数帯域についての相関値ρの平均に対する各周波数帯域におけるピーク相関値ρの比で重み係数を決定する。
ここで、相対相関値ρxは、周波数帯番号xの相対相関値である。
図11は、OFDM方式の場合に、相対相関値ρxを計算する領域を示す図である。
図11に示すように、t=ttimにおいて、相関値がピークを有するものとし、それに続くガードインターバルの期間(TGIの期間)は、マルチパス伝搬による反射波が見える可能性があるので、この部分は、相対相関値ρxの分母を計算するためには使用しないものとする。そして、相対相関値ρxの分母の計算は、ガードインターバルの期間(TGIの期間)の前後所定の期間(Twindowの期間)の相関値を使用するものとする。
以上のように合成された合成相関値Cavgのピークを探索することで、タイミング検出部5300により、同期タイミング信号が生成される。
あるいは、合成の重みwの他の例として、下記のような規範での合成重みを用いてもよい。
iv)受信電力規範(干渉を考慮しない)
v)受信SINR規範
vi)相関値規範
(周波数オフセット検出のための相関プロファイル合成部5100の動作)
まず、特定の周波数帯の受信信号に周波数オフセットΔfが存在する場合,受信信号は下記の式で表すことができる。
r´(t)を相互相関の式に代入すると、以下のようになる。
また、時間がTずれた点における相関値c(t+T)の相関値は、以下のようになる。
r(t)が周期Tの繰り返し波形である場合、時刻tにてr(t+τ)=s(τ)を満たすと、c(t)とc(t+T)は、以下の式で表され、ともにピークを持つ。
ここで、プリアンブル信号は、周期Tの繰り返し波形であるため、r(t)=r(t+T)とみなせるので、h(t)の変動が遅く、Tの期間で一定とみなせる(すなわちh(t)=h(t+T))場合、上記の式は、以下のように表される。
このとき、c(t)とc(t+T)との複素相関結果は、下記のようになる。
相関値c(t)とc(t+T)との相関結果は,周波数オフセットに起因する位相のみを持つ。
次に、周波数帯f1とf2における相関器出力を合成することを考える。
図4または図6に示したように、各周波数帯に対して、同一の局部発振器2020からの信号が参照周波数信号として供給される構成となっている場合、周波数帯f1(中心周波数f1)における周波数オフセットΔf1と周波数帯f2(中心周波数f2)における周波数オフセットΔf2は下記の関係となる。
ここで、周波数f1とf2は既知であるため、Nも既知である
また、周波数帯f1とf2における相関器出力は、プリアンブルパターンが同一であるので、下記で表せる。
遅延信号との複素相関値c(f1、t+T)c*(f1、t)および遅延信号との複素相関値c(f2、t+T)c*(f2、t)とは,異なる周波数オフセット量による位相回転を受けているため、これらの複素相関値の合成を行う前に,各相関出力の位相情報をそろえる必要がある。
そこで、例えば、複素相関値c(f2、t+T)c*(f2、t)の位相情報を複素相関値c(f1、t+T)c*(f1、t)の位相情報に合わせる場合、位相成分のみ1/N倍した相関値へ変換する。arg(x)は、複素数xの偏角を求める関数であるものとする。
もちろん、複素相関値c(f1、t+T)c*(f1、t)の位相情報を複素相関値c(f2、t+T)c*(f2、t)の位相情報に合わせる場合、位相成分のみN倍した相関値へ変換してもよい。
なお、例外的に、ここで、周波数帯f1における位相成分をN倍した結果がπあるいは−πを超えてしまう場合、周波数帯f2において生じている周波数オフセット量が、検出可能範囲を超えている可能性がある。そこで、そのような場合はw1を1、w2を0にして、周波数帯f1における相関結果のみを用いるものとする。このようにすることで、周波数帯f2において検出範囲を超える大きな周波数オフセットが生じたとしても、周波数帯f1の結果を用いることで、周波数帯f2における周波数オフセットを検出することが可能となる。
また、周波数帯が3以上ある場合は、いずれか1つの周波数帯を基準として、他の残りの周波数帯の位相成分を、周波数帯の中心周波数の比に応じて、その基準の周波数帯にそろえる処理を行うものとする。
位相情報を合わせた後、以下のような重みづけを行い、相関結果の合成を行う
したがって、複素相関値c(t+T)c(t)avgの偏角から周波数オフセットΔf1を以下の式のようにして、検出できる。
このようにして算出されたΔf1から、局部発振器2020の発振周波数の周波数オフセットを求めることができる。
図12は、以上説明したような相互相関の処理を行う相関器5000.1〜5000.2、相関プロファイル合成部5100、タイミング検出部5300、周波数偏差検出部5500の構成を説明するための機能ブロック図である。
図12においても、例示として、周波数帯は、2つであるものとして図示しているが、周波数帯は、より多くてもよい。
図12を参照して、相関器5000.1は、受信信号r(f1、t)を受けて、順次、遅延するために直列に接続された遅延回路5002.1〜5002.mと、遅延回路5002.1〜5002.mに格納された信号と既知信号sとの乗算を行うための乗算器5004.1〜5004.mと、乗算器5004.1〜5004.mからの出力を積算する積算器5010とを含む。相関器5000.2も同様の構成を有する。各遅延回路は、1サンプル分だけ信号を遅延する。
なお、もしも周波数帯ごとにサンプリングレートが異なる場合は、周波数帯域間で相関をとるタイミングを揃えるために、相関器の前後でオーバーサンプリングをする処理を行ってもよい。
相関プロファイル合成部5100は、タイミングプロファイル合成部5110と、周波数偏差プロファイル合成部5210とを含む。
タイミングプロファイル合成部5110は、式(1)において、|c(f1、t)|2を算出する絶対値演算部5112.1と、式(1)において、|c(f2、t)|2を算出する絶対値演算部5112.2と、絶対値演算部5112.1の出力と重みw1とを乗算する乗算器5114.1と、絶対値演算部5112.2の出力と重みw2とを乗算する乗算器5114.2と、乗算器5114.1と乗算器5114.2の出力を加算する加算器5116とを含む。
タイミング検出部5300は、加算器5116の出力のピークを検出して、同期タイミング信号ttimを生成する。
なお、式(2)に相当する処理をする場合は、絶対値演算部5112.1と絶対値演算部5112.2とで、振幅を計算することとすればよい。
一方、周波数偏差プロファイル合成部5210は、相関器5000.1の出力を時間Tだけ遅延させる遅延器5212.1と、遅延器5212.1の出力の共役複素を生成する共役複素演算器5214.1と、相関器5000.1の出力と共役複素演算器5214.1の出力とを乗算する乗算器5216.1とを含む。
周波数偏差プロファイル合成部5210は、さらに、相関器5000.2の出力を時間Tだけ遅延させる遅延器5212.2と、遅延器5212.2の出力の共役複素を生成する共役複素演算器5214.2と、相関器5000.2の出力と共役複素演算器5214.2の出力とを乗算する乗算器5216.2と、乗算器5216.2の出力の位相を1/Nとするための位相演算器5220と、乗算器5216.1の出力と重みw1とを乗算する乗算器5222.1と、位相演算器5220の出力と重みw2とを乗算する乗算器5222.2と、乗算器5222.1と乗算器5222.2の出力を加算する加算器5230とを含む。
周波数偏差検出部5500は、周波数帯f1における周波数オフセットΔf1を算出し、この周波数オフセットΔf1に基づいて、局部発振器2020の周波数オフセットΔfを算出する。
以上のような構成により、一部の帯域に干渉が存在しても、周波数ダイバーシチ利得によってその他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することができる。また、各帯域で伝搬損失やフェージングの影響が異なるため、一部帯域の通信品質が劣悪になったとしても、その他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することが可能となる。
(実施の形態1の変形例)(自己相関)
以上の説明では、伝送された信号のプリアンブル部分と、既知の信号との相互相関により同期処理を実行する構成について、説明した。
ただし、同期処理については、プリンブルの構成によっては、上述したように自己相関により同期処理を実行することも可能である。
以下、実施の形態1の変形例として、このような自己相関による同期処理について説明する。
実施の形態1の変形例でも、各周波数帯域について、プリアンブルの構造が共通であるものとする。
(相関器によるタイミング同期および周波数オフセットの検出の動作)
特定の周波数帯域について、受信信号rの自己相関は下記式によって表現できる。
期間Tavgの範囲で、r(t−τ)=r(t−τ+T)とみなせる場合、以下のように表される。
したがって、期間Tavgの範囲ですべてのサンプルが同相加算される。
一方、r(t−τ)≠r(t−τ+T)の場合は、同相加算されずに打消し合いが発生する。
したがって、r(t−τ)=r(t−τ+T)となる区間のみ、c(t)は高いピークを持つことになる。
なお、OFDM方式の場合、上述のとおり、ガードインターバル(GI)と呼ばれる送信信号の一部コピーがシンボル先頭に挿入されるため、自己相関によって、このコピー区間のみc(t)が高いピークを持つようになる。これによって、相関値c(t)を観測することでOFDMシンボルタイミングが検出できる。
周波数オフセットΔfが存在する場合,受信信号は下記の式で表すことができる
r´(t)を自己相関の式に代入すると、以下のようになる。
ここで、区間Tavgの間、r(t−τ)=r(t−τ+T)とみなせる信号である場合は、以下のようになり、相関値c(t)は、周波数オフセットに起因する位相のみを持つ。
次に、周波数帯f1とf2における相関器出力を合成することを考える。
図4または図6に示したように、各周波数帯に対して、同一の局部発振器2020からの信号が参照周波数信号として供給される構成となっている場合、周波数帯f1(中心周波数f1)における周波数オフセットΔf1と周波数帯f2(中心周波数f2)における周波数オフセットΔf2は下記の関係となる。
ここで、周波数f1とf2は既知であるため、Nも既知である
ここで、周波数帯f1とf2における相関器出力は、GIやOFDMシンボル長が同一であるので、下記で表せる。
相関値c(f1、t)と相関値c(f2、t)とは,異なる周波数オフセット量による位相回転を受けているため、これらの相関値の合成を行う前に,各相関出力の位相情報をそろえる必要がある。
そこで、例えば、相関値c(f2、t)の位相情報を相関値c(f1、t)の位相情報に合わせる場合、位相成分のみ1/N倍した相関値へ変換する。
もちろん、相関値c(f1、t)の位相情報を相関値c(f2、t)の位相情報に合わせる場合、位相成分のみN倍した相関値へ変換してもよい。
なお、ここでも、例外的に、周波数帯f1における位相成分をN倍した結果がπあるいは−πを超えてしまう場合、周波数帯f2において生じている周波数オフセット量が、検出可能範囲を超えている可能性がある。そこで、そのような場合は、w1を1、w2を0にして、周波数帯f1における相関結果のみを用いる。このようにすることで、周波数帯f2において検出範囲を超える大きな周波数オフセットが生じたとしても、周波数帯f1の結果を用いることで、周波数帯f2における周波数オフセットを検出することが可能となる。
また、周波数帯が3以上ある場合は、いずれか1つの周波数帯を基準として、他の残りの周波数帯の位相成分を、周波数帯の中心周波数の比に応じて、その基準の周波数帯にそろえる処理を行うものとする。
位相情報を合わせた後、以下のような重みづけを行い、相関結果の合成を行う
ここで、重み係数w1やw2については、実施の形態1と同様である。
タイミング検出部5300は、この相関値cavg(t)のピークを検出することで、同期タイミング信号を出力する。また、周波数偏差検出部5500は、以下の式により、周波数帯f1における周波数オフセットΔf1を算出し、この周波数オフセットΔf1に基づいて、局部発振器2020の周波数オフセットΔfを算出する。
以上のような構成により、一部の帯域に干渉が存在しても、周波数ダイバーシチ利得によってその他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することができる。また、各帯域で伝搬損失やフェージングの影響が異なるため、一部帯域の通信品質が劣悪になったとしても、その他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することが可能となる。
図13は、以上説明したような自己相関の処理を行う相関器5000.1〜5000.2、相関プロファイル合成部5100、タイミング検出部5300、周波数偏差検出部5500の構成を説明するための機能ブロック図である。
図13においても、例示として、周波数帯は、2つであるものとして図示しているが、周波数帯は、より多くてもよい。
図13を参照して、相関器5000.1は、受信信号r(f1、t)を受けて、所定時間Tだけ遅延させるための遅延回路5020と、遅延回路5020の出力の共役複素を生成するための共役複素演算器5030と、受信信号r(f1、t)と共役複素演算器5030の出力とを乗算するための乗算器5040と、乗算器5040の出力を順次、遅延するために直列に接続された遅延回路5002.1〜5002.mと、遅延回路5002.1〜5002.mからの出力を積算する積算器5010とを含む。相関器5000.2も同様の構成を有する。各遅延回路は、1サンプル分だけ信号を遅延する。
なお、もしも周波数帯ごとにサンプリングレートが異なる場合は、周波数帯域間で相関をとるタイミングを揃えるために、相関器の前後でオーバーサンプリングをする処理を行ってもよい。
相関プロファイル合成部5100は、タイミングプロファイル合成部5110と、周波数偏差プロファイル合成部5210とを含む。
タイミングプロファイル合成部5110は、相関器5000.1の出力と重みw1とを乗算する乗算器5114.1と、相関器5000.2の出力と重みw2とを乗算する乗算器5114.2と、乗算器5114.1と乗算器5114.2の出力を加算する加算器5116とを含む。
タイミング検出部5300は、加算器5116の出力のピークを検出して、同期タイミング信号ttimを生成する。
一方、周波数偏差プロファイル合成部5210は、相関器5000.1の加算器5110の出力と重みw1とを乗算する乗算器5222.1と、相関器5000.2の加算器5110の出力の位相を1/Nとするための位相演算器5220と、位相演算器5220の出力と重みw2とを乗算する乗算器5222.2と、乗算器5222.1と乗算器5222.2の出力を加算する加算器5230とを含む。
周波数偏差検出部5500は、加算器5230の出力により周波数帯f1における周波数オフセットΔf1を算出し、この周波数オフセットΔf1に基づいて、局部発振器2020の周波数オフセットΔfを算出する。
以上のような構成により、一部の帯域に干渉が存在しても、周波数ダイバーシチ利得によってその他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することができる。また、各帯域で伝搬損失やフェージングの影響が異なるため、一部帯域の通信品質が劣悪になったとしても、その他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、各周波数帯域で、相関器5000.1〜5000.3により相関値を算出した後、これらの相関値を、相関プロファイル合成部5100で合成する構成について説明した。
これに対して、実施の形態2では、周波数帯域ごとの相関結果の合成ではなく、各周波数帯域において1次同期処理を行い、各周波数で検出されたタイミング/周波数オフセットの検出結果を、合成する手法である。
このような手法は、各周波数帯におけるプリアンブル信号が大きく異なっている(例えばプリアンブルの長さが違うなど)場合に有効である。
図14は、実施の形態2の同期処理部2600´の構成を説明するための機能ブロック図である。
実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して、説明は繰り返さない。
また、実施の形態2の受信装置の構成は、同期処理部2600´の構成を除いて、実施の形態1の受信装置2000または受信装置2000´の構成と同様である。
(相関器の動作)
相関器5000.1〜5000.3は、それぞれ、実施の形態1と同様の動作を行う。
すなわち、相関器5000.1〜5000.3は、無線通信方式に応じて、相互相関または自己相関を算出する。
(1−1相互相関を行う際のタイミング検出動作)
実施の形態1と同様にして、期間Tavgの範囲で、r(t+τ)=h(t)・・s(τ)とみなせる場合、相関器5000.1〜5000.3がそれぞれ実行する相関処理は、以下のように表される。
したがって、期間Tavgの範囲ですべてのサンプルが同相加算される。
一方、r(t+τ)≠h(t)・・s(τ)の場合は、同相加算されずに打消し合いが発生する。
その結果、r(t+τ)=h(t)・・s(τ)となる場合のみ,c(t)は高いピークを持つことになる。
そこで、タイミング検出部5600.1〜5600.3では、s(τ)と一致する信号が受信されたタイミングで、c(t)がピークを発生するため、相関器出力のc(t)によって、対応する周波数帯域x(x番目の周波数帯)において信号の受信タイミングttim,xを求めることできる。
(1−2相互相関による周波数オフセットの検出動作)
周波数オフセットΔfが存在する場合,実施の形態1と同様にして、h(t)の変動が遅く、Tの期間で一定とみなせる(すなわちh(t)=h(t+T))場合、受信信号の相関値c(t)とc(t+T)との複素相関結果は、下記のようになる。
相関値c(t)とc(t+T)との相関結果は,周波数オフセットに起因する位相のみを持つ。
したがって、周波数偏差検出部5700.1〜5700.3は、以下のようにして、相関値c(t)とc(t+T)の複素相関結果の偏角から、対応する周波数帯xにおける周波数オフセットΔfxを検出できる。
(2−1自己相関を行う際のタイミング検出動作)
実施の形態1と同様にして、相関器5000.1〜5000.3による自己相関は、期間Tavgの範囲で、r(t−τ)=r(t−τ+T)とみなせる場合、以下のように表される。
したがって、期間Tavgの範囲ですべてのサンプルが同相加算される。
一方、r(t−τ)≠r(t−τ+T)の場合は、同相加算されずに打消し合いが発生する。
したがって、r(t−τ)=r(t−τ+T)となる区間のみ、c(t)は高いピークを持つことになる。このため、タイミング検出部5600.1〜5600.3では、相関器出力のc(t)によって、対応する周波数帯域x(x番目の周波数帯)において信号の受信タイミングttim,xを求めることできる。
(2−2自己相関による周波数オフセットの検出動作)
実施の形態1と同様にして、区間Tavgの間、r(t−τ)=r(t−τ+T)とみなせる信号である場合は、以下のようになり、相関値c(t)は、周波数オフセットに起因する位相のみを持つ。
したがって、周波数偏差検出部5700.1〜5700.3は、以下のようにして、相関値c(t)とc(t+T)の複素相関結果の偏角から、対応する周波数帯xにおける周波数オフセットΔfxを検出できる。
(検出結果合成部5800、検出結果合成部5900の動作)
以上のようにして、相互相関または自己相関のいずれかにより、タイミング検出部5600.1〜5600.3において、各周波数帯xの受信タイミングttim,xが求められ、周波数偏差検出部5700.1〜5700.3において、対応する周波数帯xにおける周波数オフセットΔfxが求められた後に、検出結果合成部5800、検出結果合成部5900において、受信タイミングおよび周波数オフセットが算出される。
まず、検出結果合成部5800においては、以下のような処理がされる。
各周波数帯では,上述したようにプリアンブル信号から同期タイミングが検出される。
周波数帯毎にプリアンブル長やサンプリングレートの違いがある場合、そのままでは、タイミング情報を合成することができない。
したがって、所定の周波数帯域のプリアンブル長、サンプリングレートに合わせるように、以下のように補正をかける。
ここで、axはサンプリングレートを補正する係数であり、bxはプリアンブル構成による理論上の同期位置の差を補正する項であって、以下のように表される。
ここで、複数の周波数帯において同期して、同時にパケットが伝送されてきたときにおいて、「周波数帯xの理想検出タイミング位置」とは、周波数帯xについて理想的なサンプリングレートで同期タイミングを検出できる時間軸上の位置のことをいい、「基準とする周波数帯の理想検出タイミング位置」とは、基準とする周波数帯について理想的なサンプリングレートで同期タイミングを検出できる時間軸上の位置のことをいう。すなわち、プリンブル構造(プリアンブル長など)の相違により、同期タイミングを検出できる位置が理想的な状態でも、周波数帯ごとにずれるため、bxは、これを補正するための係数である。
補正後の各周波数帯における検出結果に対して、合成重みwを乗算し,合成したものを最終のタイミング検出結果ttimとする。
ただし,ttim,xは整数であるものとして、以下のように丸め処理を施す。
次に、周波数偏差の検出に当たっては、プリアンブル長,サンプリングレートの補正を行った場合、同期タイミングttimを逆補正することで、使用する帯域のプリアンブル長,サンプリングレートに合わせる。
一方、検出結果合成部5900では、以下のような処理がされる。
逆補正された同期タイミングttimを用いて、各周波数帯において,周波数オフセット量Δfxを検出する。
各周波数帯の参照となるオシレータが同一となっている場合、局部発振器2020から見ると、中心周波数に対する周波数オフセット量の割合は一定であるものの、各周波数帯においては周波数オフセット量の絶対値は帯域毎に異なる。
したがって、中心周波数と周波数オフセット量の比に変換する。
このようにして、中心周波数との比に変換した周波数オフセット量を、重みwを乗算し、合成することによって、最終的な周波数オフセット検出結果とする。
なお、ここでも、例外的に、周波数帯f1における周波数オフセット検出結果をN倍した結果が、周波数帯f2において周波数オフセット検出範囲を超える場合、w1を1、w2を0にして、周波数帯f1における相関結果のみを用いる。このようにすることで、周波数帯f2において検出範囲を超える大きな周波数オフセットが生じたとしても、周波数帯f1の結果を用いることで、周波数帯f2における周波数オフセットを検出することが可能となる。
この場合、局部発振器2020の発振周波数をfとすると、Δf=Δf´×fとすることで、局部発振器2020の周波数オフセットを得ることができる。
なお、検出結果合成部5800、検出結果合成部5900において、重み係数wについては、実施の形態1と同様であるものとする。
また、以上の説明では、例示として、周波数帯が2つであるものとして説明したが、周波数帯は、3以上であっても、同様である。
図15は、実施の形態2の同期処理部2600´の構成を説明するための機能ブロック図である。
図15においても、例示として、周波数帯が2つの場合を説明するが、周波数帯は、3つ以上でもよい。
それぞれの周波数帯の受信信号r(f1,t)およびr(f2,t)に対して、相関器5000.1および5000.2において相関処理がされる。ここで、相関処理は、上述のとおり、無線通信方式に応じて、相互相関または自己相関が実行される。
相関器5000.1および5000.2の出力に基づいて、タイミング検出部5600.1および5600.2において、各周波数帯ごとに一次的な同期タイミングttim,xの検出が行われる。
周波数帯毎にプリアンブル長やサンプリングレートの違いがある場合、サンプルレートプリアンブル補正部5602.2において、上述のとおり、ここでは、周波数帯f1に合せるようにサンプルレートおよびプリアンブルの補正が実行される。
補正後の同期タイミングttim,xについて、乗算器5114.1および5114.2により重みw1と重みw2がそれぞれ乗算され、加算器5116でこれらが加算され、丸め処理が行われることで、最終のタイミング検出結果ttimが得られる。
一方、周波数偏差検出部5700.1および5700.2は、最終のタイミング検出結果ttimを受けて、上述のとおり、同期タイミングttimを逆補正することで、使用する帯域のプリアンブル長,サンプリングレートに合わせる。
このようにして、逆補正した同期タイミングを使用することで、各周波数帯について、周波数オフセット量Δfxを検出する。
オフセット変換部5702.1と5702.2は、それぞれ、対応する周波数帯で検出された周波数オフセットを、各周波数帯の中心周波数と周波数オフセット量の比に変換する。
オフセット変換部5702.1と5702.2の出力に、乗算器5222.1および5222.2により重みw1と重みw2がそれぞれ乗算され、加算器5230でこれらが加算され、最終的な周波数オフセット検出結果が生成される。
以上のような構成により、各周波数帯におけるプリアンブル信号が大きく異なっている(例えばプリアンブルの長さが違うなど)場合にも、一部の帯域に干渉が存在しても、周波数ダイバーシチ利得によってその他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することができる。また、各帯域で伝搬損失やフェージングの影響が異なるため、一部帯域の通信品質が劣悪になったとしても、その他の帯域の信号がそれをカバーするため、同期を確立することが可能となる。
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。