図面を参照して実施例の電動車両を説明する。実施例の電動車両は、走行用のモータとエンジンを備えるハイブリッド車である。図1に、ハイブリッド車2の駆動系のブロック図を示す。先に述べたように、ハイブリッド車2は、走行用のモータ8とエンジン91を備える。モータ8の出力トルクとエンジン91の出力トルクは動力分配機構92により適宜に合成/分配される。アクセルペダルが強く踏み込まれたときなど、大きな駆動力が要求された場合には、エンジン91の出力トルクとモータ8の出力トルクは動力分配機構92により合成されて車軸93に伝達される。アクセルペダルの踏込量が一定で小さい場合など、一定で小さい駆動力が要求されている場合には、動力分配機構92は、エンジン91の出力トルクの一部を車軸93に伝達し、残りをモータ8に伝達する。このときモータ8はエンジントルクの一部で発電する。すなわち、ハイブリッド車2は、エンジン91の出力で走行しながら発電する。発電された交流電力はインバータ7で直流に変換され、さらに2個の双方向コンバータ10a、10bで降圧されてバッテリ3に供給される。回生で得た電力でバッテリ3が充電される。なお、先に述べたように、「双方向コンバータ」とは、スイッチング素子のスイッチング動作よって低電圧端から高電圧端へ向けて電圧を昇圧する昇圧動作と、高電圧端から低電圧端へ向けて電圧を降圧する降圧動作の双方が可能なコンバータを意味する。本明細書の場合、双方向コンバータ10a、10bは、バッテリ3の電圧を昇圧してインバータ7に供給する昇圧動作と、インバータ7から送られる回生電力を降圧してバッテリ3に供給する降圧動作の双方が可能である。
バッテリ3からモータ8までの電気回路の構造を説明する。ハイブリッド車2は、バッテリ3と、インバータ7と走行用のモータ8と、2組の双方向コンバータ10a、10bと2個のコンデンサ(第1コンデンサ5と第2コンデンサ6)と、制御装置20を備えている。また、走行用の回路ではないが、ハイブリッド車2は、エアバック装置31を備えている。バッテリ3は、システムメインリレー4を介して2組の双方向コンバータ10a、10bの夫々の低電圧端18(18a、18b)に接続されている。2組の双方向コンバータ10a、10bは並列に接続されている。2組の双方向コンバータ10a、10bの高電圧端19(19a、19b)には、インバータ7が接続されている。第1コンデンサ5は、2組の双方向コンバータ10a、10bの低電圧端18(18a、18b)に並列に接続されている。第1コンデンサ5は、双方向コンバータ10a、10bの昇圧動作のとき、及び、降圧動作のときに電力を一時的に蓄えて双方向コンバータ10a、10bの動作を補助する。第2コンデンサ6は2組の双方向コンバータ10a、10bの高電圧端19(19a、19b)に並列に接続されている。第2コンデンサ6は、インバータ7に入力される電流の脈動を抑える。制御装置20は、夫々の双方向コンバータ10a、10bが備えているスイッチング素子14a、14b、15a、15bに与える駆動パルス信号(PWMパルス信号)を生成する。
一方の双方向コンバータ10aについて説明する。双方向コンバータ10aは、リアクトル12a、上アームスイッチング素子14a、下アームスイッチング素子15a、2個のダイオード16a、17aで構成されている。上アームスイッチング素子14aと下アームスイッチング素子15aは、直列に接続されている。なお、上アームスイッチング素子14aが下アームスイッチング素子15aよりも高電位側に位置する。以下では、「上アーム」と「下アーム」の区別をしない場合には、上アームスイッチング素子14a、下アームスイッチング素子15aを単純にスイッチング素子14a、15aと表記する。
スイッチング素子14a、15aの直列接続の高電位側は双方向コンバータ10aの高電圧端の正極19aに接続され、直列接続の低電位側は双方向コンバータ10aの低電圧端の負極18bと高電圧端の負極19bに接続されている。リアクトル12aの一端は低電圧端の正極18aに接続されており、他端はスイッチング素子14a、15aの直列接続の中点に接続されている。一方のダイオード16aは上アームスイッチング素子14aに逆並列に接続されており、他方のダイオード17aは下アームスイッチング素子15aに逆並列に接続されている。
双方向コンバータ10aの昇圧動作には主に下アームスイッチング素子15aが関与する。下アームスイッチング素子15aがオンするとリアクトル12a、下アームスイッチング素子15a、及び、第1コンデンサ5で作られる閉ループに電流が流れ、リアクトル12aに電気エネルギが蓄えられる。下アームスイッチング素子15aがオフすると、リアクトル12aに蓄えられた電気エネルギが放出され、リアクトル12aがポンプのように電流を押し出す。押し出された電流はダイオード16aを通り高電圧端の正極19aに達する。その結果、高電圧端19の電圧が低電圧端18の電圧よりも高くなる。下アームスイッチング素子15aがオンとオフを繰り返すことで、高電圧端19の電圧が低電圧端18の電圧よりも高く保持される。
双方向コンバータ10aの降圧動作には主に上アームスイッチング素子14aが関与する。上アームスイッチング素子14aがオンすると高電圧端の正極19aからリアクトル12aへ向かって電流が流れる。このとき、リアクトル12aに電気エネルギが蓄えられる。高電圧端19の電気エネルギの一部がリアクトル12aに蓄えられている間、低電圧端の正極18aの電位は高電圧端の正極19aの電位よりも低くなる。上アームスイッチング素子14aがオフすると、高電圧端の正極19aからの電力供給が断たれる。しかしこのとき、リアクトル12aに蓄えられた電気エネルギにより、リアクトル12a、第1コンデンサ5、ダイオード17aの閉ループに電流が流れ、低電圧端の正極18aの電位低下が緩やかとなる。上アームスイッチング素子14aがオンとオフを繰り返すことで、低電圧端18の電圧が高電圧端19の電圧よりも低く保持される。
双方向コンバータ10aは、また、リアクトル12aを流れる電流を計測する電流センサ13aを備える。電流センサ13aの計測結果は制御装置20に送られる。電流センサ13aの計測結果を用いた双方向コンバータ10aの制御については後述する。
双方向コンバータ10bは、リアクトル12b、上アームスイッチング素子14b、下アームスイッチング素子15b、2個のダイオード16b、17bで構成されている。双方向コンバータ10bの説明は、双方向コンバータ10aの説明における符号の英字を「a」から「b」に変更したものに相当する。それゆえ、詳しい説明は省略する。上アームスイッチング素子14b、下アームスイッチング素子15bについても、「上アーム」、「下アーム」の区別を要しない場合には、単純に、スイッチング素子14b、15bと表記する。
なお、双方向コンバータ10a、10bが備えるスイッチング素子14a、14b、15a、15bは、具体的にはトランジスタである。より具体的には、スイッチング素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。従ってスイッチング素子14a、14b、15a、15bのオンとオフは、各スイッチング素子のゲートに供給される駆動パルス信号で制御される。駆動パルス信号は、具体的には、PWM信号である。
双方向コンバータ10a、10bが備えるスイッチング素子14a、14b、15a、15bへ供給する駆動パルス信号は、制御装置20が生成する。制御装置20は、双方向コンバータ10aと10bが同じ動作を行うように、各スイッチング素子14a、14b、15a、15bに与える駆動パルス信号を生成する。ただし、双方向コンバータ10aのスイッチング素子14a、15aに与える駆動パルス信号のオンのタイミングと、双方向コンバータ10bのスイッチング素子14b、15bに与える駆動パルス信号のオンのタイミングは、通常走行時は異なり、コンデンサ放電時は一致する。夫々の双方向コンバータ10a、10bに与える駆動パルス信号のオフのタイミングも、通常走行時は異なり、コンデンサ放電時は一致する。駆動信号のオンのタイミング及びオフのタイミングについては後述する。
ハイブリッド車2は、並列に接続された2個の双方向コンバータ10a、10bを備える。2個の双方向コンバータ10a、10bに同じデューティ比の駆動パルス信号を与えると、2個の双方向コンバータ10a、10bがあたかも一つの双方向コンバータとして機能する。モータ8に要求される出力が小さい場合には、一方の双方向コンバータを停止し、他方の双方向コンバータのみで出力を賄うことも可能である。2個の双方向コンバータ10a、10bに同じデューティ比の駆動パルス信号を与える場合、制御装置20は、オンするタイミングが相互にずれている駆動パルス信号を夫々の双方向コンバータのスイッチング素子に与える。これは、各スイッチング素子のスイッチング動作に伴うリプルが重なることを避けるためである。一方、制御装置20は、衝突時に第1コンデンサ5と第2コンデンサ6を急速放電する。その場合、オンするタイミングが一致している駆動パルス信号を2個の双方向コンバータ10a、10bに供給する。これは、オンするタイミングを揃えることでリプルを意図的に重ねて大きくし、リプルによる損失(電力消費)で放電を早めるためである。
制御装置20について詳しく説明する。制御装置20は、目標調整器21、キャリア発生器22、キャリアタイミング調整器23、指令生成器24、2個のPMW生成器25a、25b、3個の加算器26a−26cを備える。制御装置20は、基本的には、不図示の上位の制御装置からモータの電流目標値Imを受け、2個の双方向コンバータ10a、10bを流れる電流の合計が電流目標値Imに追従するように各スイッチング素子を制御する。
制御装置20の動作を詳しく説明する。目標調整器21は、上位の制御装置から与えられた電流目標値Imに係数Rを乗じる。係数Rは、0.0から1.0までの間の数値であり、2個の双方向コンバータ10a、10bで分担する目標値の割合を決定するパラメータである。「Im×R」が双方向コンバータ10aの目標値になり、「Im×(1−R)」が双方向コンバータ10bの目標値になる。双方向コンバータ10bの目標値は、加算器26aで生成される。通常、係数Rは0.5である。即ち、2個の双方向コンバータ10a、10bの夫々は、電流目標値Imの半分の電流が流れるように制御される。
加算器26bにより、目標値「Im×R」の値から電流センサ13aの計測値が差し引かれる。加算器26bの結果は、双方向コンバータ10aの目標値と実際の電流値との差分である。PWM生成器25aは、この差分がゼロになるように、スイッチング素子14a、15aに与える駆動パルス信号を生成する。なお、駆動パルス信号を生成するときの基準となるキャリア信号はキャリアタイミング調整器23から送られる。PWM生成器25aが生成した駆動パルス信号は、双方向コンバータ10aのスイッチング素子14a、15aに供給される。なお、上アームスイッチング素子14aに供給する駆動パルス信号と下アームスイッチング素子15aに供給する駆動パルス信号は互いに相補的である。相補的であるとは、例えば、上アームスイッチング素子14aに供給する駆動パルス信号のデューティ比が「D」のとき、下アームスイッチング素子15aに供給する駆動パルス信号のデューティ比が「1−D」となることを意味する。相補的な駆動パルス信号を与える理由は後に述べる。
加算器26cにより、目標値「Im×(1−R)」の値から電流センサ13bの計測値が差し引かれる。加算器26cの結果は、双方向コンバータ10bの目標値と実際の電流値との差分である。PWM生成器25bは、この差分がゼロになるように、スイッチング素子14b、15bに供給する駆動パルス信号を生成する。駆動パルス信号を生成するときの基準となるキャリア信号はキャリアタイミング調整器23から送られる。PWM生成器25bが生成した駆動パルス信号は、双方向コンバータ10bのスイッチング素子14b、15bに供給される。双方向コンバータ10bにおいても、上アームスイッチング素子14bに供給する駆動パルス信号と下アームスイッチング素子15aに供給する駆動パルス信号は互いに相補的である。
キャリアタイミング調整器23は、キャリア発生器22から得られるキャリア信号を使い、PWM生成器25aと25bに与えるキャリア信号の位相を相互にずらす。具体的には、キャリアタイミング調整器23は、PWM生成器25aに供給するキャリア信号の180度位相がずれたキャリア信号をPWM生成器25bに供給する。そうすることにより、PWM生成器25aが生成する駆動パルス信号の立ち上がりのタイミングと、PWM生成器25bが生成する駆動パルス信号の立ち上がりのタイミングをずらすことができる。駆動パルス信号の立ち上がりのタイミングが、スイッチング素子をオンするタイミングに相当する。別言すれば、位相が180度ずれたキャリア信号をPWM生成器25a、25bの夫々に与えることで、双方向コンバータ10aのスイッチング素子のオンのタイミングと、双方向コンバータ10bのスイッチング素子のオンのタイミングをずらすことができる。同様に、双方向コンバータ10aのスイッチング素子のオフのタイミングと、双方向コンバータ10bのスイッチング素子のオフのタイミングもずれる。双方向コンバータ10aと10bのスイッチング素子のオン(オフ)のタイミングがずれることで、スイッチング素子がオン(オフ)するときに発生するリプルが重畳することが防止される。制御装置20は、走行時においては、それぞれの双方向DC−DCコンバータ10a、10bの上アームスイッチング素子14a、14bに対して、オンのタイミングが相互にずれているとともにオフのタイミングが相互にずれている駆動パルス信号を供給する。また、制御装置20は、走行時においては、それぞれの双方向DC−DCコンバータ10a、10bの下アームスイッチング素子15a、15bに対して、オンのタイミングが相互にずれているとともにオフのタイミングが相互にずれている駆動パルス信号を供給する。
なお、先に述べた係数Rを0.5以外に設定すると、双方向コンバータ10a、10bのそれぞれの目標値が相違することになる。そうすると、双方向コンバータ10a、10bのそれぞれのデューティ比が異なることになるので、相互のオフタイミングは大きく相違することになる。
他方、制御装置20は、エアバック装置31から車両が衝突したことを示す信号(衝突信号)を受信すると、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6を放電する。制御装置20は、双方向コンバータ10a、10bのスイッチング素子を制御し、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で電力を繰り返し移送することで両方のコンデンサを放電する。このときは、制御装置20は、双方向コンバータ10a、10bのスイッチング素子に対して、オンするタイミングが同じとなる駆動パルス信号を与える。双方向コンバータ10a、10bのスイッチング素子のオンするタイミングが一致すると、各スイッチング素子が発するリプルが重畳して大きくなる。第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で移送される電力の一部が大きなリプルにより消費されるので、コンデンサの放電が早くなる。なお、エアバック装置31は、加速度センサを内蔵しており、加速度センサが計測する加速度が所定の閾値を超えたときに、衝突信号を制御装置20へ送る。制御装置20は、オフのタイミングも一致させる。即ち、制御装置20は、衝突センサによって車両の衝突が検知された場合には、それぞれの双方向DC−DCコンバータ10a、10bのスイッチング素子に対して、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で電力を移送させるようにスイッチング素子を駆動する駆動パルス信号を供給する。このとき制御装置20は、オンのタイミングが一致しているとともにオフのタイミングが一致している駆動パルス信号を夫々の上アームスイッチング素子14a、14bへ供給する。また制御装置20は、オンのタイミングが一致しているとともにオフのタイミングが一致している駆動パルス信号を夫々の下アームスイッチング素子15a、15bへ供給する。
コンデンサの放電処理を説明する。エアバック装置31は衝突を検知すると衝突信号を制御装置20へ送る。制御装置20では、指令生成器24が衝突信号を受ける。衝突信号を受けた指令生成器24は、キャリアタイミング調整器23へ、2個の双方向コンバータ10a、10bに与えるキャリア信号の同期を指令する。同時に、指令生成器24は、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で電力を繰り返し移動させる駆動パルス信号を生成するように、2個のPWM生成器25a、25bへ指令を送る。さらに、指令生成器24は、システムメインリレー4へ、バッテリ3を遮断させる指令を送る。
指令生成器24からの指令を受け、システムメインリレー4が開く。双方向コンバータ10a、10bがバッテリ3から遮断される。指令生成器24からの指令を受けたPWM生成器25a、25bは、次の処理を実行する。説明を簡単にするため、以下ではPWM生成器25aと双方向コンバータ10aについて説明する。PWM生成器25aは、電流目標値Imではなく、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6のそれぞれの電圧に基づいてスイッチング素子14a、15aに供給する駆動パルス信号を生成する。第1コンデンサ5と第2コンデンサ6のそれぞれの電圧は、不図示の電圧センサにより計測される。PWM生成器25aは、まず、上アームスイッチング素子14aをオフし、下アームスイッチング素子15aをオンする駆動パルス信号を生成して夫々のスイッチング素子14a、15aに供給する。そうすると、第1コンデンサ5とリアクトル12aと下アームスイッチング素子15aで形成される閉ループに電流が流れる。このときリアクトル12aで電気エネルギの一部が消費される。また、第1コンデンサ5の正極の電荷が負極へ移動することでも電気エネルギが消費される。さらに電気エネルギの一部はスイッチング素子14a、15bがオン(オフ)する際に発生するリプルによっても消費される。
次いでPWM生成器25aは、下アームスイッチング素子15aをオフし、上アームスイッチング素子14aをオンする駆動パルス信号を生成して各スイッチング素子へ供給する。そうすると、第2コンデンサ6に蓄えられた電力の一部が第1コンデンサ5へ移動する。その際、電気エネルギの一部はリアクトル12aで消費される。さらに電気エネルギの一部はスイッチング素子14a、15bがオフ(オン)する際に発生するリプルによっても消費される。第1コンデンサ5に蓄えられた電力が所定の量に達したら、PWM生成器25aは、上アームスイッチング素子14aをオフし、下アームスイッチング素子15aをオンする駆動パルス信号を生成して夫々のスイッチング素子14a、15aに与え、上記した処理を繰り返す。PWM生成器25aは、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の夫々の両端電圧が所定の閾値電圧以下に下がるまで、スイッチング素子14a、15aのオンとオフを繰り返す。
PWM生成器25bもPWM生成器25aと同じ処理を行う。ここで、キャリアタイミング調整器23は、PWM生成器25aとPWM生成器25bに同期したキャリア信号を送る。そうすると、双方向コンバータ10a、10bの上アームスイッチング素子14aと14bのオンのタイミングとオフのタイミングが一致する。また、下アームスイッチング素子15aと15bのオンのタイミングとオフのタイミングも一致する。その結果、2個の双方向コンバータ10a、10bのスイッチング素子が発するリプルが重なり、リプルの振幅が大きくなる。リプルの振幅が大きくなるとリプルによって消費される電力(損失)が大きくなる。重畳したリプルによる電力消費が第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の放電を早めることになる。
通常走行時と放電時の制御装置20の処理を簡単にまとめると次の通りである。制御装置20は、夫々の双方向コンバータ10a、10bのスイッチング素子14a、15a、14b、15bに供給する駆動パルス信号を生成する。制御装置20は、通常の走行時には、それぞれの双方向DC−DCコンバータの上アームスイッチング素子14a、14bに対して、オンのタイミングが相互にずれているとともにオフのタイミングが相互にずれている駆動パルス信号を供給する。また、制御装置20は、それぞれの双方向DC−DCコンバータの下アームスイッチング素子15a、15bに対して、オンのタイミングが相互にずれているとともにオフのタイミングが相互にずれている駆動パルス信号を供給する。なお、通常の走行時とは、別言すれば、車両の衝突が検知されていないときである。制御装置20は、車両の衝突が検知された場合にはオンのタイミングが一致しているとともにオフのタイミングが一致している駆動パルス信号をそれぞれの双方向コンバータ10a、10bの上アームスイッチング素子14a、14bに供給して第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で電力を移送して放電する。同様に、制御装置20は、車両の衝突が検知された場合にはオンのタイミングが一致しているとともにオフのタイミング一致している駆動パルス信号をそれぞれの双方向コンバータ10a、10bの下アームスイッチング素子15a、15bにも供給する。
双方向コンバータ10a(10b)は、リアクトル12a(12b)を備えており、衝突時には、第1コンデンサ5と第2コンデンサ6の間で電力を移送するときにリアクトル12a(12b)を通して電力を消費させる(コンデンサを放電する)。
制御装置20が双方向コンバータ10a(10b)の上アームスイッチング素子14a(14b)と下アームスイッチング素子15a(15b)に相補的な駆動パルス信号を与える理由を説明する。先に述べたように、昇圧動作は主に下アームスイッチング素子15a、15bが担い、降圧動作は主に上アームスイッチング素子14a、14bが担う。即ち、昇圧動作の際には、上アームスイッチング素子14a、14bはオフしたままでよい。また、降圧動作の際には下アームスイッチング素子15a、15bはオフしたままでよい。しかし、制御装置20は、上アームスイッチング素子14a、14bに供給する駆動パルス信号の相補信号を下アームスイッチング素子15a、15bに供給する。例えば、上アームスイッチング素子14a、14bに供給する駆動パルス信号のデューティ比が「D」のとき、制御装置20は、下アームスイッチング素子15a、15bにはデューティ比が「1−D」の駆動パルス信号を供給する。これは次の理由による。電動車両の場合、アクセルペダルが踏まれれば、バッテリ3からモータ8へ電流が流れ、力行となる。一方、ブレーキペダルが踏まれればモータ8からバッテリ3へ電流が流れ、回生となる。すなわち、電動車両では力行と回生が不規則に頻繁に切り替わる。双方向コンバータ10a、10bの上アームスイッチング素子14a、14bと下アームスイッチング素子15a、15bに互いに相補的な駆動パルス信号(PWM信号)を供給すると、電流の向きに関わらず、低電圧端18と高電圧端19の電圧比を一定に保つことができる。別言すれば、双方向コンバータ10a、10bの上アームスイッチング素子14a、14bと下アームスイッチング素子15a、15bに互いに相補的な駆動パルス信号(PWM信号)を供給すると、双方向コンバータ10a、10bは、アクセルペダルとブレーキペダルの操作に応じて従動的に力行と回生が切り替わる。このことによって、力行と回生の区別に関わりなく、制御装置20は、双方向コンバータ10a、10bに供給する駆動パルス信号を生成することがきる。別言すれば、制御装置20は、力行と回生の変化に応じて駆動パルス生成の制御ルールを切り換える必要がなくなる。従って制御装置20のアルゴリズムが極めて単純になるという利点が得られる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例のハイブリッド車2におけるエアバック装置31が請求項の「衝突センサ」の一例に相当する。「衝突センサ」は、加速度センサのように実際に衝突したことを検知するセンサのほかに、レーザやレーダや画像処理によって前方車両との距離を計測して衝突が不可避であることを判断するセンサであってもよい。
実施例で説明した技術では、スイッチング素子を駆動する駆動パルス信号を生成する際の参照信号となるキャリア信号の位相をずらすことで、2個の双方向コンバータのオンタイミングをずらした。キャリア信号を利用する代わりに、スイッチング素子の制御周期の開始タイミングをずらすことで、2個の双方向コンバータのオンタイミングをずらしてもよい。例えば、一方の双方向コンバータの制御周期がT0+dT×n(T0は制御開始時刻、dTは周期、nは自然数)で表される場合に、他方の双方向コンバータの制御周期をT0+T1+dT×n(T0、dT、nは前述のとおり、0<T1<T0)とすることで、2個の双方向コンバータのスイッチング素子のオンタイミングを時間T1だけずらすことができる。
実施例のハイブリッド車の双方向コンバータ10a、10bは、夫々がリアクトル12a、12bを備えていた。2個の双方向コンバータ10a、10bは、一つのリアクトルを共有していてもよい。
実施例の「双方向コンバータバータ」は、最初に述べたように、「双方向DC−DCコンバータ」の略である。
双方向コンバータの低電圧端に並列に接続されたコンデンサと高電圧端に並列に接続されたコンデンサの間で電力を移送して放電する技術については、特開2010―213406号公報、特開2008−306795号公報に開示されているのでそちらも参照されたい。
本明細書が開示する技術は、双方向コンバータを備えていれば、燃料電池車に適用することも可能である。燃料電池車であっても、回生電力を充電するバッテリは備える。本明細書が開示する技術は、力行には燃料電池とバッテリを用い、回生電力はバッテリに蓄えるタイプの燃料電池車に適用することができる。そのような燃料電池車であれば、燃料電池とバッテリの出力を昇圧する昇圧動作と、バッテリを充電するために回生電力を降圧する降圧動作の双方の機能を有する双方向コンバータを搭載するからである。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。