以下により、押出成形金型の発明が開示される。図1は押出成形金型1の一例の一部を示している。図1Aでは、押出成形金型1の下流部の概略が示され、図1Bでは、押出成形金型1を用いて押出成形を実施したときの押出成形金型1の出口付近が示されている。図2は、押出成形装置50の概略図である。押出成形装置50は、押出成形金型1を有する。図3は、押出成形金型1の中子10の一例である。図4は、押出成形金型1により形成された成形体40の一例である。
押出成形金型1は、成形材料30の押し出しにより成形体40を形成する金型である。以下の説明において、上流及び下流とは、成形材料30が流れる方向(流れ方向)が基準となる。流れ方向は、図1B、図2及び図4において白抜き矢印で示されている。図4では、成形体40の厚み方向が矢印V1で示され、成形体40の幅方向が矢印V2で示されている。成形体40の厚み方向は、押出成形金型1の上下方向と等しい。成形体40の幅方向は、押出成形金型1の幅方向と等しい。押出成形金型1の幅方向は、流れ方向及び上下方向と垂直な方向である。
図4に示すように、成形体40は、コア部41とスキン部42とを備えている。スキン部42はコア部41を覆う。成形体40は中空部43を有している。スキン部42は成形体40の外面に配置される。スキン部42は、成形体40の表面、裏面及び側面に配置される。スキン部42は筒状であってよい。コア部41は成形体40の内部に配置される。コア部41は、外周がスキン部42に被覆されている。コア部41は、流れ方向から見た場合に、成形体40の表面で露出し得る。中空部43は、コア部41の内部に形成されていてよい。中空部43は空洞である。中空部43は、コア部41内に流れ方向に沿って伸びる棒状の空洞であり得る。成形体40には、複数の中空部43が設けられている。成形体40では、スキン部42が強度及び耐久性に優れた材料で形成され、コア部41が軽量でコストの安い材料で形成され得る。そのため、成形体40の性能が向上する。また、成形体40では、中空部43が存在することにより、更なる軽量化と低コスト化が図られる。そのため、成形体40の性能がさらに向上する。
成形体40は、コア部41を形成するためのコア材料31と、スキン部42を形成するためのスキン材料32とによって形成される。成形体40の形成には、押出成形装置50が用いられる。
図2の押出成形装置50は、成形体40を製造する装置である。押出成形装置50は、窯業系の成形体40を形成し得る。押出成形装置50は、板状の成形体40を形成し得る。押出成形装置50は、好ましくは、窯業系建築板を製造することができる。押出成形装置50は、成形材料30を押し出して成形体40を形成する。成形体40は、流れ方向に沿って長尺の建材となり得る。押し出された成形体40は、流れ方向の適宜の場所で切断されて、寸法が整えられる。
図2に示すように、押出成形装置50は、押出し機51として、第1押出し機51Aと第2押出し機51Bとを備えている。第1押出し機51A及び第2押出し機51Bは、窯業系材料の押出し成形に使用可能な押出し機が利用される。第1押出し機51Aは、コア材料31を押し出す機械である。第2押出し機51Bは、スキン材料32を押し出す機械である。押出成形装置50は、第1押出し機51A及び第2押出し機51Bの下流に押出成形金型1を備えている。
押出し機51は、パグ部52とオーガ部54とを備えている。ここで、図2においては、第1押出し機51Aの構成には数字にAが足された符号が、第2押出し機51Bの構成には数字にBが足された符号が、それぞれ括弧書きで示されている。例えば、パグ部52は、第1押出し機51Aではパグ部52Aと表記され、第2押出し機51Bではパグ部52Bと表記されている。また、オーガ部54は、第1押出し機51Aではオーガ部54Aと表記され、第2押出し機51Bではオーガ部54Bと表記されている。図2及び以下の説明においては、その他の構成も同様の符号が付されている。第1押出し機51A及び第2押出し機51Bにおいて、数字のみの構成で説明したものは、両方に適用できることを意味する。
押出し機51において、パグ部52は、材料を混練しながら下流に送り出す機能を有する。オーガ部54は、材料を押出成形金型1に押し出す機能を有する。パグ部52は、オーガ部54との連結位置に、真空部53を有している。真空部53は、材料を脱気する機能を有する。材料の脱気により、成形体40の外観が整い、耐久性などの品質が向上し、比重も確保される。真空部53においては、例えば、目皿が真空部53の上流に設けられ、材料自身でシールされて、減圧が行われる。押出し機51は、材料投入口55を有している。材料投入口55は、材料を押出し機51に投入する口である。材料投入口55は、押出し機51の上流に配置される。材料投入口55はパグ部52と接続されている。また、押出し機51は、材料注入部56を有している。材料注入部56は、押出し機51内の材料を押出成形金型1に注入する部分である。材料注入部56は、押出し機51の下流に配置される。材料注入部56はオーガ部54と接続されている。パグ部52は、二軸スクリュー57を有している。オーガ部54は、一軸スクリュー58を有している。スクリューの使用により、材料を均一性高く押し出すことができる。ここで、第1押出し機51Aの材料注入部56Aは、例えば、パイプで構成される。この材料注入部56Aは、中子10に接続されている。第2押出し機51Bの材料注入部56Bは、外枠金型2に接続されている。なお、図2では、スクリュー方式の押出し機51が示されているが、押出し機51はポンプ方式であってもよい。
成形材料30は、コア部41を形成するためのコア材料31と、スキン部42を形成するためのスキン材料32とにより構成される。コア材料31とスキン材料32とは別々に流れて、押出成形金型1内で合流する。図2の押出成形装置50の例では、コア材料31は第1押出し機51Aを流れる。スキン材料32は第2押出し機51Bを流れる。それぞれの材料は、材料投入口55から投入され、パグ部52で混練された後、真空部53で脱気され、オーガ部54を通って、材料注入部56から押出成形金型1に注入される。なお、図2では、押出成形金型1内でのコア材料31の流れが分かりやすくなるよう、押出成形金型1内のコア材料31が通る部分が破線で示されている。また、成形材料30の流れ方向が白抜き矢印で示されている。
図1Aに示すように、押出成形金型1は、外枠金型2を備えている。外枠金型2は、成形体40の外枠を形成するための金型である。外枠金型2に沿ってスキン材料32が流れる。外枠金型2は、上側に配置される外枠金型上部2Aと下側に配置される外枠金型下部2Bとを備えている。押出成形金型1は、中子10を備えている。中子10は、外枠金型2の内部の空洞に配置されている。中子10は、外枠金型上部2Aと外枠金型下部2Bとの間に配設されている。中子10は、外枠金型2の内部で固定されている。
押出成形金型1は、中空ピン11を備えている。中空ピン11は成形体40の中空部43を形成する機能を有する。中空ピン11は棒状体で構成され得る。中空ピン11は流れ方向に延伸している。押出成形金型1は、中空ピン11を複数有することが好ましい。中空ピン11は、中子10の本体である中子本体12に連結していることが好ましい。その場合、中子10は中空ピン11を備えることになる。中子本体12には、中空ピン11は含まれない。
図3に、中子10の一例が示されている。この中子10は複数の中空ピン11を有している。複数の中空ピン11は幅方向に並んでいる。中空ピン11は、中子本体12の先端部に連結されている。図3では、中空ピン11の延伸軸11yが破線で示されている。
図1及び図3で示すように、中子本体12は、下流になるほど上下方向の幅が小さくなる集結部13を有している。図1では、集結部13の上流側の端部が破線で示されている。集結部13は、上流において分離されたスキン材料32を集結させる機能を有する。集結部13は、中子10の下流側に配置されている。集結部13は、上半分が上集結部13Aとなり、下半分が下集結部13Bで構成されている。上集結部13Aと下集結部13Bとの間に、コア材料31が流れる流路(コア材料流路21)が配置されている。図3に示すように、集結部13の上面13aは、下流に向かって下り傾斜する傾斜面となっている。集結部13の下面13bは、下流に向かって上がり傾斜する傾斜面となっている。集結部13の上面13aには、上方に段状に突出する突出段部14が複数配置されている。集結部13の下面13bにも、下方に段状に突出する突出段部14が複数配置されていてよい。複数の突出段部14の間には、突出段部14の隙間で形成された間隙14aが配置されている。このように、突出段部14及び間隙14aが設けられることにより、スキン材料32の流れがスムーズになる。集結部13の上流側の端部には、幅方向に伸びる突条部15と、集結部13の表面(上面13a)の傾斜面と面一になるように突条部15が切り欠かれた切欠部16とが配置されている。切欠部16は、集結部13の上流側端部の両端部に設けられている。図3では、集結部13の上面13aの突条部15及び切欠部16が図示されているが、突条部15及び切欠部16は、集結部13の下面13bにも設けられていてよい。突条部15と切欠部16とが設けられることで、材料不足によって成形不良の発生しやすい幅方向の端部にスキン材料32が供給されやすくなる。そのため、良好な成形が行われる。
集結部13の先端には、コア材料31が流入するコア材料流入口17が配置されている。コア材料流入口17は、開口によって形成される。コア材料流入口17は、第1押出し機51Aの材料注入部56Aと流路(コア材料流路21)を介して接続されている。コア材料流入口17は、中空ピン11の周囲に設けられている。
図1に示すように、押出成形金型1は、成形材料30が流れる流路20を有する。流路20は、コア材料31が流れるコア材料流路21と、スキン材料32が流れるスキン材料流路22とを有する。コア材料流路21は、中子10内に配置されている。スキン材料流路22は、外枠金型2と中子10との間の隙間で形成され得る。スキン材料流路22は、中子10の上側に配置されたスキン材料流路22aと、中子10の下側に配置されたスキン材料流路22bとを有する。スキン材料流路22aは、中子10と外枠金型上部2Aとの間の隙間で形成されている。スキン材料流路22bは、中子10と外枠金型下部2Bとの間の隙間で形成されている。スキン材料流路22は、中子10の側方に設けられていてもよい。その場合、中子10の外周にスキン材料流路22が設けられ得る。そのため、スキン材料32がコア材料31を包み込みやすくなる。第2押出し機51Bから外枠金型2に注入されたスキン材料32は、外枠金型2の内面に沿って下流に流れる。
スキン材料流路22とコア材料流路21とは、コア材料流入口17付近で合流する。この合流地点が、合流部23となる。合流部23では、コア材料31とスキン材料32とが合流する。合流部23よりも下流は、外枠金型2に囲まれた筒状の流路20を成形材料30が流れる。このとき、中空ピン11が存在することにより、中空ピン11の外周形状が反映されて中空部43の成形が行われる。そして、外枠金型2の出口2pから成形後の成形材料30が出される。外枠金型2の出口2pは、押出成形金型1の出口と言える。中空ピン11の断面形状は、四角形(例えば正方形、長方形、菱形)、六角形、八角形などの多角形や、円形、楕円形などの曲線を有する形状、星形など、適宜の形状であってよい。中空ピン11の断面形状は、中空部43の形状に反映される。図4の成形体40では、角部がやや丸まった四角形の中空部43が図示されている。
図1に示すように、押出成形金型1は、外枠金型2の出口付近に、成形材料30の流路20が中空ピン11の延伸軸11yに向かって大きくなる拡大流路部3を有している。拡大流路部3の存在により、コア材料31は外枠金型2の出口2pの手前において減圧される。そのため、コア材料31は、拡大流路部3において中空ピン11側に膨張しやすくなる。このように、あらかじめ外枠金型2の出口2pから出る前に外枠金型2内でコア材料31を膨張させておくことで、外枠金型2のから出たときのコア材料31の膨張が抑制され、スキン材料32に対する押し広げが抑制される。それにより、成形不良が低減される。拡大流路部3では、外枠金型2の内面の形状は、拡大流路部3よりも上流の形状が維持されていていよい。なお、中空ピン11の延伸軸11yとは、中空ピン11の中心付近を通り、中空ピン11が延伸する方向に進む仮想の直線である。中空ピン11の延伸軸11yは流れ方向に延伸する。中空ピン11の延伸軸11yは、成形体40の中空部43の中心付近を延伸し得る。
図1の例では、拡大流路部3は、外枠金型2の出口付近において中空ピン11の断面積が小さくなる構造を有している。中空ピン11の断面積が小さくなることで、流路20が外枠金型2の出口付近で拡大する。図1は、拡大流路部3を形成する構造を有する中空ピン11の一例である。
図1で示される中空ピン11は、基部11Aと、テーパー部11Bと、突出部11Cとを備えている。基部11Aは、合流部23の下流において中空ピン11が中空部43を形成するために流れ方向に延伸する部分である。基部11Aは、中空ピン11の延伸方向に垂直な方向での断面形状が延伸方向にわたって略同じであってよい。基部11Aは中子本体12と連結されていてよい。
テーパー部11Bは、基部11Aよりも下流(先端側)に配置され、先端に向かうにつれて断面積が小さくなるように先細りする部分である。テーパー部11Bでは、中空ピン11の断面積が徐々に小さくなる。このようにテーパー部11Bが設けられていると、コア材料31を徐々に減圧して穏やかに膨張させることができるため、一気に膨張させる場合に比べて、コア材料31がスキン材料32から剥離することが抑制される。
突出部11Cは、テーパー部11Bの下流(先端側)に配置さている。突出部11Cは、延伸方向において断面積が略同じに形成されている。突出部11Cは、テーパー部11Bの先端から下流に突出している。突出部11Cは、基部11Aよりも小さい断面積で流れ方向に延伸している。このように突出部11Cが設けられていると、減圧により膨張したコア材料31の形状が整えられるため、中空部43の形状が安定した成形体40が得られやすくなる。
中空ピン11の先端11pは、外枠金型2の出口2pとほぼ同じ位置に配置されている。中空ピン11の先端11pと外枠金型2の出口2pとの位置が揃うことで、成形不良がより抑制されやすくなる。
成形体40は、押出成形金型1を用いて成形材料30を押し出すことで製造される。成形材料30は、スキン部42を形成するスキン材料32と、コア部41を形成するコア材料31とを含んでいる。ここで、コア材料31は、膨張性を有する材料が用いられ得る。押出成形金型1は、コア材料31が膨張性を有する場合に有効である。コア材料31の膨張性は、成形時に発揮されるものであってよい。コア材料31は、押出成形時に圧縮され、押出成形金型1から出るときに圧縮から開放され得る。コア材料31の膨張性は、押出成形の圧力が開放される際に発生し得る。スキン材料32が、成形時に膨張性を有していてもよい。ただし、コア材料31の膨張性がスキン材料32の膨張性よりも大きい方が拡大流路部3は効果的である。拡大流路部3を有する押出成形金型1は、コア材料31がスキン材料32よりもスウェル比が大きいときに有効だからである。スウェル比とは断面積が大きくなる比率である。コア材料31及びスキン材料32は押出成形時に圧縮され得る。コア材料31の圧縮率が、スキン材料32の圧縮率よりも大きい場合に、押出成形金型1はより有効である。圧縮された材料は金型から出るときに元に戻ろうとするため、コア材料31の圧縮率が高いと、コア材料31がスキン材料32を押し広げやすくなるからである。
成形体40の製造にあたっては、スキン材料32を第2押出し機51Bの材料投入口55Bから投入し、スキン材料32を押し出して、押出成形金型1の外枠金型2に注入する。それと同時に、コア材料31を第1押出し機51Aの材料投入口55Aから投入し、コア材料31を押し出して、押出成形金型1の中子10に注入する。
コア材料31及びスキン材料32に用いる成形材料としては、適宜のセメント系成形材料が使用される。セメント系成形材料から窯業系成形体が得られる。セメント系成形材料の具体例としては、例えば、セメント、シリカ、補強繊維及び水などが配合された混合物が挙げられる。上記のセメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント、フライアッシュセメントなど公知のセメントが使用できる。シリカは、珪酸質原料であり、適宜のシリカが用いられる。補強繊維としては、例えばパルプ繊維等の天然繊維、ビニロン、ポリプロピレン等の有機繊維や、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維等の無機繊維が挙げられる。セメント系成形材料には、上記列挙した補強繊維のうちの一種のみが含まれていてもよいし、二種以上が含まれていてもよい。また、セメント系成形材料には、骨材、軽量骨材、減水剤、増粘剤、その他の添加剤が含まれていてもよい。例えば、マイカや、その他の軽量化の骨材が含まれてもよい。セメント系成形材料を構成する各成分の配合比率や混合方法は特に制限されず、製造する窯業系成形体に要求される物性や使用用途に応じて適宜設定することができる。なお、窯業系成形体を形成するための成形材料としては、セメント系成形材料に限られることはなく、その他の水硬性無機質材料、セラミック材料、粘土等の焼成材料などを用いることができる。
成形体40において、コア材料31及びスキン材料32として用いる材料は上記セメント系成形材料が適用可能であるが、コア材料31とスキン材料32とは、異なる材料として定義される。例えば、コア材料31とスキン材料32とは、含有成分が互いに異なるものであってよい。また、コア材料31とスキン材料32とは含有する成分が同じで各成分の含有量が異なっていてもよい。例えば、固形分における組成(成分及び含有量)は同じで、コア材料31がスキン材料32よりも水をより多く含むことによって、これらは異なる材料となり得る。コア材料31がスキン材料32よりも水を多く含むと、コア材料31が軽量になり固形分の材料も少なくなるため、成形体40の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
また、コア材料31とスキン材料32とは、空気含有率が異なるものであってもよい。この場合、コア材料31とスキン材料32とは、固形分の組成は同じで固形分に対する水分比率が異なるものであってもよいし、さらには、空気含有率以外が同じ組成のものであってもよい。それにより、成形材料から容易に、物性の異なるコア材料31とスキン材料32とが形成される。例えば、コア材料31がスキン材料32よりも空気を多く含むと、コア材料31が軽量になり固形分の材料も少なくなるため、成形体40の軽量化及び低コスト化を図ることができる。空気含有率は、押出し機51で行われる減圧の真空度の違いによって制御され得る。例えば、コア材料31の真空度(減圧の度合)をスキン材料32の真空度(減圧の度合)よりも低くする。すなわち、第1押出し機51Aの真空部53Aの圧力が、第2押出し機51Bの真空部53Bの圧力よりも高くなるようにする。すると、コア材料31は、空気の含有率がスキン材料32よりも高くなる。ここで、コア材料31の真空度が低いと、コア材料31として柔らかい材料(一般的に粘度が低い材料又は比重が低い材料)を用いた場合でも、容易に真空引き(減圧)することが可能となり、コア材料31の脱気が容易になる。例えば、水を多く含むコア材料31では、粘度が低くなるため、真空度が高まると、真空装置がコア材料31を吸い込んでしまうおそれがあるが、真空度が低くなることにより、その現象が抑制される。さらに、コア材料31は、成形体40の内部に配置されて成形体40の外周表面には現れないため、コア材料31が空気を多く含むことで成形体40のコア部41に気泡が残存したとしても、品質の問題は発生しにくい。このように、コア材料31の真空度を低くすることに利点がある。
成形体40の製造において、スキン材料32はスキン材料流路22に流入される。コア材料31はコア材料流路21に流入される。スキン材料流路22を流れるスキン材料32は、途中で分岐されて上側のスキン材料流路22aと下側のスキン材料流路22bとを流れる。スキン材料32は中子10の外周を流れていてもよい。コア材料流路21を流れるコア材料31は中空ピン11が配置された下流に向かって流れる。そして、スキン材料32とコア材料31とが押出成形金型1内で合流する。合流は、合流部23において行われる。具体的には、集結部13において、上側のスキン材料流路22aを流れるスキン材料32が下側に向かい、下側のスキン材料流路22bを流れるスキン材料32が上側に向かう。そして、スキン材料流路22a、22b及びコア材料流路21が合流する地点において、スキン材料32とコア材料31とが合流する。このとき、スキン材料32は、コア材料31の周囲に配置される。コア材料31は中空ピン11の周囲に配置される。
図1Bに示すように、合流後の流路20を流れる成形材料30はさらに下流に向かって流れる。下流に向かって流れる成形材料30は、外枠金型2の出口2p付近の拡大流路部3に到達する。そして、拡大流路部3において、中空ピン11の延伸軸11y側にコア材料31が膨張する。このとき、拡大流路部3において、スキン材料32は、外枠金型2によって周囲が囲まれているため、コア材料31はスキン材料32を押し広げる方向に膨張できず、中空ピン11に向かう方向に膨張する。そのため、スキン材料32の押し広げによるスキン部42の亀裂や引き裂きが抑制される。また、スキン部42とコア部41との剥離が抑制される。拡大流路部3の後、成形材料30は押出成形金型1から出される。以上により、成形体40の成形が行われる。
押出成形金型1から押し出された成形体40は、通常、プレス成形、切削加工、養生処理、化粧塗装などの複数の工程を経て、窯業系の板材となり得る。プレス成形では、表面に凹凸模様が付与され得る。なお、押出成形金型1の出口に模様付けロールを配置させて、押し出された成形材料30に即時に凹凸模様を施してもよい。
図5は、押出成形金型1及びそれを用いた押出成形の他の例が示されている。図5は図5A〜図5Hから構成される。図5に示される押出成形金型1では、図1の例と同様に、中空ピン11は、外枠金型2の出口付近において断面積が小さくなっている。拡大流路部3は、中空ピン11の断面積が小さくなる構造によって形成されている。上記と同様の構成については、同じ符号が付されている。白抜き矢印は流れ方向を示す。
図5Aの押出成形金型1では、中空ピン11は、基部11A及びテーパー部11Bを有している。この中空ピン11は、上記で説明した突出部11Cを有していない。中空ピン11の先端11pにはテーパー部11Bの先端の端面11qが配置されている。図5Bは、図5Aの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図5Cの押出成形金型1では、中空ピン11は、基部11A及びテーパー部11Bを有している。この中空ピン11は、上記で説明した突出部11Cを有していない。中空ピン11の先端11pは、先細りして尖ったテーパー部11Bの先端で構成されている。図5Dは、図5Cの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図5Eの押出成形金型1では、中空ピン11は、基部11A及び突出部11Cを有している。この中空ピン11は、上記で説明した先細りするテーパー部11Bを有していない。突出部11Cは、基部11Aの先端から基部11Aよりも小さい大きさで下流に向かって突出している。突出部11Cの断面積は基部11Aの断面積よりも小さい。そのため、基部11Aと突出部11Cとの境界部分で流路20が広がって、外枠金型2の出口付近に、拡大流路部3が設けられている。図5Fは、図5Eの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図5Gの押出成形金型1では、中空ピン11は、図1と同様に、基部11Aとテーパー部11Bと突出部11Cとを備えているが、中空ピン11の先端11pは、外枠金型2の出口2pよりも下流に配置されている。中空ピン11の先端11pは、外枠金型2からはみ出しているといってよい。ただし、テーパー部11Bは、外枠金型2の出口2pよりも上流に配置されている。そのため、中空ピン11は外枠金型2の出口2pの手前で断面積が小さくなる。それにより、外枠金型2の出口付近において流路20が広がり、拡大流路部3が設けられている。このように、中空ピン11の先端11pの位置は、外枠金型2の出口2pの位置からずれていてもよい。さらには、中空ピン11は、先端11pが外枠金型2の出口2pよりも外側に飛び出ていてもよい。要するに、外枠金型2の出口2pの手前で、流路20が拡大すれば、拡大流路部3が設けられ、良好な成形が行われる。図5Hは、図5Gの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図5B、図5D、図5F及び図5Hで示すように、図5に示す形態においても、拡大流路部3が設けられているため、コア材料31が外枠金型2から出る前に膨張するので、スキン材料32への押し広げが抑制され、良好に成形が行われる。
図6は、押出成形金型1及びそれを用いた押出成形の他の例が示されている。図6は図6A〜図6Fから構成される。図6では、拡大流路部3は、外枠金型2の出口2pよりも上流に中空ピン11の先端11pが配置される構造を有している。このように、中空ピン11の先端11pが外枠金型2の内部に位置する場合も、成形材料30が流れる流路20が拡大するため、拡大流路部3が形成される。上記と同様の構成については、同じ符号が付されている。白抜き矢印は流れ方向を示す。
図6Aの押出成形金型1では、中空ピン11は基部11Aの断面積を維持したまま、下流に突出している。この中空ピン11は、上記で説明した先細りするテーパー部11B及び基部11Aよりも断面積が小さくなる突出部11Cを備えていない。中空ピン11は、外枠金型2の開口から引っ込んでいるといえる。図6Bは、図6Aの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図6Cの押出成形金型1では、中空ピン11は基部11Aとテーパー部11Bと突出部11Cとを備えている。中空ピン11の形状は、図1で示されるものと同様であってよい。ただし、図6Cで示される中空ピン11は、先端11pが外枠金型2の出口2pよりも上流に位置している点で、図1とは異なる。図6Dは、図6Cの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図6Eの押出成形金型1では、中空ピン11は基部11Aとテーパー部11Bとを備えているが、上記で説明した突出部11Cは備えていない。図6Eの押出成形金型1の中空ピン11は、図5Aのものと同じ形状であるが、先端11pの位置において異なっている。図6Fは、図6Eの押出成形金型1を用いて押出成形する様子を示している。
図6B、図6D及び図6Fで示すように、これらの形態においても、拡大流路部3が設けられているため、コア材料31が外枠金型2から出る前に膨張するので、スキン材料32への押し広げが抑制され、良好に成形が行われる。図6C及び図6Eでは、拡大流路部3は、外枠金型2の出口付近において中空ピン11の断面積が小さくなる構造、及び、外枠金型2の出口2pよりも上流に中空ピン11の先端11pが配置される構造の両方を有している。
図5及び図6から理解されるように、押出成形金型1は、外枠金型2の出口付近に、成形材料30の流路20が中空ピン11の延伸軸11yに向かって大きくなる部分(拡大流路部3)を有すればよい。図5及び図6から、その他の種々の変形例も理解されるであろう。
図1に示される押出成形金型1を使用して押出成形を行った。成形材料30としては、次のものを使用した。
スキン材料として、質量比で、セメント43部、珪酸質原料43部、パルプ5部、添加剤1部を混合し、この混合物の固形分合計100部に対して、水を40部加えたものを用いた。また、コア材料として、質量比で、セメント43部、珪酸質原料43部、パルプ5部、添加剤1部を混合し、この混合物の固形分合計100部に対して、水を60部加えたものを用いた。スキン材料とコア材料とは、固形分の組成は同じであるが、水の含有率が異なる。
比較例として、図7Aの押出成形金型1αを準備した。図7は図7A〜図7Cから構成される。図7Aに示すように、比較例の押出成形金型1αは拡大流路部3を有していない。中空ピン11は断面積が同じまま外枠金型2の出口2pの位置まで下流に突出している。図7Aの押出成形金型1αは、中空ピン11の形状以外は、図1の例の押出成形金型1と同じであってよい。
図7Aの押出成形金型1αで押出成形を行ったところ、図7Cに示される成形体40αが得られた。この成形体40αでは、成形体40αの幅方向の端部におけるスキン部42αとコア部41αとの境界部分において、スキン部42αの引き裂き44が見られた。図7Bに、図7Aの押出成形金型1αを用いた押出成形の模式図が示されている。図7Bに示されるように、図7Aの押出成形金型1αでは、押出成形金型1αから成形材料30が出たときに、コア材料31が外側に膨張し、スキン材料32が押し広げられる(図の線矢印参照)。そのため、スキン材料32の引き裂きが発生したと考えられる。
一方、図1の押出成形金型1による押出成形では、スキン部42の引き裂きが発生しなかった。これは、図1Bに示されるようにコア材料31が外枠金型2の出口2pの手前で内側に膨張したからと考えられる。よって、拡大流路部3により、成形不良が抑制されることが確認された。また、図1の押出成形金型1を用いた場合、金型から出た後の膨張がなく、成形体40の地合も良好であった。
なお、図1の押出成形金型1を用いる場合、コア材料31の膨張を考慮して、中空ピン11の基部11Aは、図7の押出成形金型1αの中空ピン11よりも径が大きく形成されてもよい。