JP6381365B2 - ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物に関する。更に詳しくは、情報家電の筐体等の家電部品として好適に使用し得るポリ乳酸樹脂組成物、及び該組成物を射出成形して得られる成形体に関する。
ポリ乳酸樹脂は、原料となるL−乳酸がトウモロコシ、芋等から抽出した糖分を用いて発酵法により生産されるため安価であること、原料が植物由来であるために二酸化炭素排出量が極めて少ないこと、また樹脂の特性として剛性が強く透明性が高いこと等の特徴により、現在その利用が期待されている。
特許文献1には、難燃性とブリード性とのバランスに優れたポリ乳酸樹脂組成物を提供するために、ポリ乳酸樹脂と、金属水酸化物と、リン化合物と、前記リン化合物以外の揮発性化合物とを含み、前記リン化合物の含有量は、前記ポリ乳酸樹脂の合計値100質量部に対して10質量部以下であるポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、耐熱性に優れた難燃かつ耐衝撃性ポリ乳酸樹脂組成物を提供するために、ポリ乳酸樹脂を主成分とし、リン酸トリフェニル類を3〜30質量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物を0.01〜5質量%、過酸化物を0.001質量%以上含有する混合物を溶融混練してなることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、耐熱性、耐衝撃性、更に可撓性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を得るために、ポリ乳酸樹脂と、イソシアネート系シランカップリング剤によって表面処理された金属水和物とを含有し、金属水和物中のアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下であるポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。
国際公開2011/155119号 特開2008−101084号公報 特開2009−270087号公報
しかしながら、特許文献1ではリン化合物のブリードが抑制できることが記載されているものの、リン化合物の配合量は限定されており、耐衝撃性が十分ではないという課題がある。また、特許文献2のポリ乳酸樹脂組成物では、得られる成形体からリン酸トリフェニル類がブリードするという課題がある。特許文献3では、難燃性が十分ではないという課題がある。
本発明は、流動性と難燃性と耐衝撃性とブリード抑制に優れる、ポリ乳酸樹脂組成物、及び該組成物により得られる成形体に関する。
本発明は、下記〔1〕〜〔2〕に関する。
〔1〕 ポリ乳酸樹脂、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、前記トリアリールホスフェートが炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、前記表面処理された金属水酸化物の含有量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、ポリ乳酸樹脂組成物。
〔2〕 前記〔1〕記載の組成物を溶融混練した後、射出成形して得られる、成形体。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形時の流動性に優れ、難燃性と耐衝撃性(衝撃強度)とブリード抑制に優れる成形体を提供することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有するものであって、前記トリアリールホスフェートが炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、かつ、該トリアリールホスフェートと可塑剤とが特定の割合で、かつ、特定の合計含有量となるように配合され、さらに、表面処理された金属水酸化物を特定量含有することで、流動性と難燃性と耐衝撃性とブリード抑制に優れるという効果を奏する。なお、以降において、表面処理された金属水酸化物のことを、単に、表面処理金属水酸化物と記載することもある。
このように優れた効果が奏される理由としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェートは、常温で液体であるため、射出成形時の流動性が高められる。また、流動性が向上することから、一般的な可塑剤には及ばないもののポリ乳酸樹脂と混合されると該樹脂の結晶性を向上させる働きがあり、耐衝撃性が向上すると推定される。また、固体のトリアリールホスフェートでは耐衝撃性が低下し、縮合系のアリールホスフェートでは、耐衝撃性に加えて耐ブリード性も低下するところ、前記構造を有するトリアリールホスフェートと可塑剤とを特定量で併用することにより、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化度が高くなり耐衝撃性が高くなると共に、両成分の耐ブリード性も向上することが可能となる。さらに、トリアリールホスフェート自身の難燃性により、表面処理金属水酸化物の配合量を低減でき、前記構造のトリアリールホスフェートと可塑剤と金属水酸化物を組み合わせて用いることで、難燃性を高めつつ、耐衝撃性や耐ブリード性を向上することができる。
〔ポリ乳酸樹脂組成物〕
以下、各成分について記載する。
[ポリ乳酸樹脂]
ポリ乳酸樹脂としては、市販されているポリ乳酸樹脂(例えば、Nature Works社製、商品名:Nature Works PLA/NW3001D、NW4032D等)の他、乳酸やラクチドから公知の方法に従って合成したポリ乳酸樹脂が挙げられる。強度や耐熱性の向上の観点から、光学純度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のポリ乳酸樹脂が好ましく、例えば、比較的分子量が高く、また光学純度の高いNature Works社製ポリ乳酸樹脂(NW4032D等)が好ましい。光学純度とは、ポリ乳酸樹脂中、L体又はD体の占めるモル%の割合のことである。
また、本発明においては、前記ポリ乳酸樹脂以外に、他の生分解性樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合されていてもよい。他の生分解性樹脂としては、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル樹脂、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。また、前記ポリ乳酸樹脂の一部又は全部が、前記他の生分解性樹脂やポリプロピレン等の非生分解性樹脂とポリ乳酸樹脂とのブレンドによるポリマーアロイとして配合されていてもよい。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の含有量は、流動性、難燃性、耐衝撃性を高める観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは43質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であり、可塑剤や難燃剤を配合し、難燃性、耐衝撃性を高める観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは55質量%以下である。
[トリアリールホスフェート]
本発明で用いられるトリアリールホスフェートは、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェート(以下、単にトリアリールホスフェートともいう)であればよいが、なかでも、以下の一般式:
(RArO)(ArO)3−aPO
(式中、Arはベンゼン環を示し、R、Rは、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1〜3のアルキル基を示すが、共に水素原子である場合は除き、aは1〜3の整数を示す)
で表される化合物が好ましい。
前記式におけるR、Rとしては、耐衝撃性、流動性、難燃性、耐ブリード性の観点から、いずれもがメチル基である場合、Rがメチル基、Rが水素原子である場合、Rがエチル基、Rが水素原子である場合、Rがイソプロピル基、Rが水素原子である場合が好ましく、Rがメチル基、Rが水素原子である場合、Rがイソプロピル基、Rが水素原子である場合がより好ましい。
前記式におけるaは1〜3の整数を示すが、耐衝撃性、流動性、難燃性、耐ブリード性の観点から、1〜2の整数が好ましく、1がより好ましい。即ち、前記式で表される化合物は、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上、好ましくは1〜2、より好ましくは1つ含む化合物である。
前記式で表されるトリアリールホスフェートの具体例としては、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、及びクレジルジフェニルホスフェートからなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、なかでも、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート及びクレジルジフェニルホスフェートを単独で又は組み合わせて用いることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物におけるトリアリールホスフェートの含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、耐ブリード性、難燃性、及び耐衝撃性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部を超えるものであり、耐ブリード性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは21質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは16質量部以下、より更に好ましくは14質量部以下である。
[可塑剤]
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、耐衝撃性及び流動性を向上させる観点から、可塑剤を含有する。
可塑剤としては、好ましくは、耐衝撃性及び耐ブリード性の観点から、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。なお、本明細書におけるリン酸エステル系可塑剤としては、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェートは除く。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜6のジカルボン酸と、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜6のジアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とによるポリエステルなどを挙げることができる。ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられ、ジアルコールとしては、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどを挙げることができる。また、ポリエステル末端の水酸基やカルボキシ基をモノカルボン酸やモノアルコールでエステル化して、封鎖していてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤の具体例としては、多価アルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物と、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のモノカルボン酸とのモノ、ジ又はトリエステルなどを挙げることができる。多価アルコールとしては、好ましくは炭素数3〜200の多価アルコールであり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、上記ジアルコール等を挙げることができる。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸などを挙げることができる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、多価カルボン酸と、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6、より更に好ましくは炭素数1〜4のモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステルなどを挙げることができる。多価カルボン酸としては、好ましくは炭素数3〜10の多価カルボン酸であり、トリメリット酸、上記ジカルボン酸等を挙げることができる。モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び1−ブタノールなどを挙げることができる。具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル;トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル;アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸オクチルデシルなどのアジピン酸エステル;アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステル;コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステルなどを挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸と上記モノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステルなどを挙げることができる。具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェートなどを挙げることができる。
また、耐衝撃性及び耐ブリード性の観点から、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するエステル化合物が好ましく、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。尚、(ポリ)オキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を意味する。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基が好ましく、オキシエチレン基、又はオキシプロピレン基がより好ましい。
また、可塑剤としては、以下の化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2種以上を組み合わせて用いる場合は、同じ化合物群同士でも異なる化合物群同士であってもよい。
化合物群(A) 分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物
化合物群(B) 式(I):
O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
(式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2〜6のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜12の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物
化合物群(C) 式(II):
Figure 0006381365
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、A、A、Aはそれぞれ独立して炭素数2又は3のアルキレン基を示し、x、y、zはそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す正の数であって、x+y+zが3を超え12以下を満足する数である)
で表される化合物
化合物群(A)
化合物群(A)に含まれるエステル化合物としては、耐衝撃性及び耐ブリード性の観点から、分子中に2個以上のエステル基を有する多価アルコールエステル又は多価カルボン酸エーテルエステルであって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを1〜2モル付加)とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが好ましい。
化合物群(B)
化合物群(B)に含まれる式(I)におけるRは、炭素数が1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基を示し、1分子中に2個存在して、分子の両末端に存在する。Rは炭素数が1〜4であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(I)におけるRは、炭素数が2〜4のアルキレン基を示し、直鎖のアルキレン基が好適例として挙げられる。具体的には、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から、エチレン基、1,3−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましく、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点及び経済性の観点から、エチレン基、1,4−ブチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
式(I)におけるRは、炭素数が2〜6のアルキレン基を示し、ORはオキシアルキレン基として、繰り返し単位中に存在する。Rは炭素数が2〜6であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキレン基の炭素数としては、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,2−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,5−ヘキシレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基が挙げられ、なかでも、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
mはオキシアルキレン基の平均の繰り返し数を示し、1〜6の数である。mが大きくなると、式(I)で表されるエステル化合物のエーテル基価が上がり、酸化されやすくなり安定性が低下する傾向がある。ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、1〜4の数が好ましく、1〜3の数がより好ましい。
nは平均重合度を示し、1〜12の数である。ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から、1〜6の数が好ましく、1〜5の数がより好ましく、1〜4の数が更に好ましい。
式(I)で表される化合物の具体例としては、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜4の数、nが1〜6の数である化合物が好ましく、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜3の数、nが1〜5の数である化合物がより好ましい。
かかる構造のうちでも、耐ブリード性を向上させる観点から、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンンジオールから選ばれる少なくとも1つの2価アルコールのオリゴエステル〔式(I)中、n=1.2〜3〕が好ましい。
式(I)で表される化合物は、市販品であっても公知の製造方法に従って合成したものを用いてもよく、例えば特開2012−62467号公報に開示されているような方法に従って製造することができる。
また、式(I)で表される化合物は、前記構造を有するのであれば特に限定ないが、下記(1)〜(3)の原料を反応させて得られるものが好ましい。尚、(1)と(2)とは、又は(2)と(3)とは、エステル化合物を形成していてもよい。(2)は、酸無水物や酸ハロゲン化物であってもよい。
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコールとしては、前記Rを含むアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノールが挙げられる。なかでも、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸としては、前記Rを含むジカルボン酸であり、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等が挙げられる。なかでも、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、コハク酸、アジピン酸及びそれらの誘導体、例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジメチルが好ましく、コハク酸及びその誘導体、例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチルがより好ましい。
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールとしては、前記Rを含む二価アルコールであり、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。なかでも、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールがより好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが更に好ましい。
よって、前記(1)〜(3)としては、
(1)一価アルコールがメタノール、エタノール、1−プロパノール、及び1−ブタノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、
(1)一価アルコールがメタノール及びエタノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、
(1)一価アルコールがメタノールであり、(2)ジカルボン酸がコハク酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが更に好ましい。
前記(1)〜(3)を用いて式(I)で表されるエステル化合物を得る方法としては、特に限定はないが、例えば、以下の態様1及び態様2の方法が挙げられる。
態様1:(2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程と、得られたジカルボン酸エステルと(3)二価アルコールをエステル化反応させる工程を含む方法
態様2:(1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを一括反応させる工程を含む方法
これらのなかでも、平均重合度を調整する観点から、態様1の方法が好ましい。なお、前記した各工程の反応は、公知の方法に従って行うことができる。
式(I)で表される化合物は、酸価が、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは1.50mgKOH/g以下、より好ましくは1.00mgKOH/g以下であり、生産性及び経済性の観点から、好ましくは0.01mgKOH/g以上、より好ましくは0.05mgKOH/g以上、更に好ましくは0.10mgKOH/g以上である。水酸基価が、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは10.0mgKOH/g以下、より好ましくは5.0mgKOH/g以下、更に好ましくは3.0mgKOH/g以下であり、生産性及び経済性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.3mgKOH/g以上、更に好ましくは0.5mgKOH/g以上である。なお、本明細書において、可塑剤の酸価及び水酸基価は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、式(I)で表される化合物の数平均分子量は、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは300〜1500、より好ましくは300〜1000である。なお、本明細書において、可塑剤の数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
式(I)で表される化合物のケン化価は、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、500〜800mgKOH/gが好ましく、550〜750mgKOH/gがより好ましい。なお、本明細書において、可塑剤のケン化価は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
式(I)で表される化合物は、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、2個の分子末端に対するアルキルエステル化率(末端アルキルエステル化率)が、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。なお、本明細書において、可塑剤の末端アルキルエステル化率は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
式(I)で表される化合物のエーテル基価は、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、0〜8mmol/gが好ましく、0〜6mmol/gがより好ましい。なお、本明細書において、可塑剤のエーテル基価は、後述の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
化合物群(C)
化合物群(C)に含まれる式(II)で表される化合物は、ポリエーテル型リン酸トリエステルであり、対称構造でも非対称構造でも構わないが、製造上の簡便さからは、対称構造のリン酸トリエステルが好ましい。
、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられるが、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。また、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、炭素数2〜3のアルキル基、即ち、エチル基、プロピル基がより好ましい。
、A、Aは、それぞれ独立して炭素数2又は3のアルキレン基を示し、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。具体的には、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、エチレン基が好ましい。また、A、A、Aは、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基(アルキレンオキサイド)を形成し、式(II)で表される化合物における繰り返し構造を形成する。
x、y、zは、それぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す正の数であって、かつ、x+y+zが3を超え12以下を満足する数である。なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、x、y、zは、正の数であって、かつ、x+y+zが3を超え12未満を満足する数が好ましく、4を超え12未満を満足する数がより好ましく、6以上で9以下を満足する数が更に好ましい。
よって、式(II)で表される化合物としては、
(1)R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、A、A、Aがそれぞれ独立して炭素数2又は3のアルキレン基を示し、x、y、zがそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す正の数であって、かつ、x+y+zが3を超え12以下を満足する数である化合物が好ましく、
(2)R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数2〜3のアルキル基を示し、A、A、Aがいずれもエチレン基であり、x、y、zが正の数であって、かつ、x+y+zが4を超え12未満を満足する数である化合物がより好ましく、
(3)R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数2〜3のアルキル基を示し、A、A、Aがいずれもエチレン基であり、x、y、zが正の数であって、かつ、x+y+zが6以上で9以下を満足する数である化合物が更に好ましい。
式(II)で表される化合物の具体例としては、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート〔式(II)中、R、R、Rはいずれもエチル基、A、A、Aはいずれもエチレン基、x、y、zはいずれも2で、x+y+z=6〕の他に、トリス(メトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(プロポキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(ブトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(メトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)、トリス(エトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)、トリス(プロポキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)等の対称ポリエーテル型リン酸トリエステルやビス(エトキシエトキシエチル)メトキシエトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=7)、ビス(メトキシエトキシエトキシエチル)エトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=8)、ビス(エトキシエトキシエチル)ブトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=6)等の非対称ポリエーテル型リン酸トリエステル、あるいは炭素数1〜4のアルコールのポリオキシエチレン付加物又はポリオキシプロピレン付加物の混合物を式(II)を満たすようにリン酸トリエステル化した非対称ポリエーテル型リン酸エステルが挙げられるが、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(プロポキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(エトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(プロポキシエトキシエトキシエチル)ホスフェートが好ましく、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェートがより好ましい。
可塑剤中、好ましくは、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、あるいは、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するエステル化合物の含有量、より好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、更に好ましくは前記化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物の含有量が、ポリ乳酸樹脂との相溶性を向上させ、耐衝撃性と耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。なお、本明細書において、前記可塑剤の含有量とは、複数の化合物が含有される場合には、総含有量のことを意味する。
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、流動性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上であり、難燃性、耐ブリード性、及び耐衝撃性の観点から、好ましくは21質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは16質量部以下、より更に好ましくは14質量部以下、より更に好ましくは12質量部以下である。
また、前記トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、流動性、耐衝撃性及び難燃性の観点から、16質量部以上、好ましくは17質量部以上、より好ましくは18質量部以上、更に好ましくは19質量部以上であり、耐ブリード性の観点から30質量部以下、好ましくは28質量部以下、より好ましくは26質量部以下、更に好ましくは24質量部以下、より更に好ましくは22質量部以下である。
また、前記トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、耐ブリード性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは16質量部以上24質量部以下、より好ましくは16質量部以上22質量部以下であり、流動性の観点から、好ましくは22質量部以上30質量部以下、より好ましくは24質量部以上30質量部以下であり、流動性、耐衝撃性、難燃性及び耐ブリード性の観点から、好ましくは18質量部以上24質量部以下、より好ましくは19質量部以上22質量部以下である。
前記トリアリールホスフェートに対する前記可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、耐衝撃性と耐ブリード性の観点から、0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.38以上、更に好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは0.55以上、より更に好ましくは0.60以上であり、難燃性、耐衝撃性及び耐ブリード性の観点から、3.5以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.75以下である。
また、トリアリールホスフェートに対する前記可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、難燃性の観点から、好ましくは0.30以上3.0以下、より好ましくは0.30以上2.0以下、更に好ましくは0.30以上1.5以下、より更に好ましくは0.30以上1.0以下であり、耐ブリード性の観点から、好ましくは0.35以上3.0以下、より好ましくは0.35以上2.0以下、更に好ましくは0.38以上1.5以下であり、耐衝撃性の観点から、好ましくは0.50以上3.0以下、より好ましくは0.55以上2.0以下、更に好ましくは0.60以上1.5以下であり、流動性、耐衝撃性、難燃性及び耐ブリード性の観点から、好ましくは0.35以上3.0以下、より好ましくは0.40以上2.0以下、更に好ましくは0.50以上1.0以下であり、より更に好ましくは0.55以上0.80以下であり、より更に好ましくは0.60以上0.75以下である。
[表面処理された金属水酸化物]
表面処理金属水酸化物における金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性及び難燃性の観点から、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。
金属水酸化物に施される表面処理としては、例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸、チタネートカップリング剤、ゾル−ゲルコーティング剤、シリコーンポリマーコーティング剤、樹脂コーティング剤、硝酸塩等を用いる表面処理が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を高める観点からは、シランカップリング剤による表面処理が好ましい。
よって、本発明における表面処理された金属水酸化物としては、流動性、耐衝撃性及び難燃性の観点から、シランカップリング剤によって処理された水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましく、シランカップリング剤によって処理された水酸化アルミニウムがより好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えば、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、エポキシシラン等のカップリング剤が挙げられる。これらのうち、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、耐ブリード性、及び難燃性を高める観点から、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシランのカップリング剤が好ましく、イソシアネートシラン、アミノシランがより好ましく、イソシアネートシランが更に好ましい。
イソシアネートシランとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、n−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤による表面処理を施した金属水酸化物は、例えば、シランカップリング剤を、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶媒に溶解させた溶液を、金属水酸化物の表面に噴霧又は塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法等により得ることができる。
シランカップリング剤による表面処理を施した金属水酸化物は、ポリ乳酸樹脂組成物の難燃性、耐ブリード性、及び耐衝撃性を高める観点から、シランカップリング剤と金属水酸化物との質量比(シランカップリング剤/金属水酸化物)を0.1/99.9〜5/95の割合として処理したものが好ましく、0.3/99.7〜3/97の割合として処理したものがより好ましく、0.5/99.5〜2/98の割合として処理したものがさらに好ましい。
表面処理を施した金属水酸化物としては、平均粒径が難燃性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、耐衝撃性の観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは4μm以下である。この平均粒径は、体積中位粒径(D50)のことを意味し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
本発明においては、表面処理を施した金属水酸化物は1種又は2種以上を用いることができ、平均粒径の異なる金属水酸化物を併用することが、流動性及び耐衝撃性のバランスの観点から、好ましい。平均粒径の差は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。
表面処理金属水酸化物のポリ乳酸樹脂100質量部に対する含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物の難燃性及び可塑剤あるいはトリアリールホスフェートの耐ブリード性を高める観点から、40質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上であり、流動性及び耐衝撃性の観点から、120質量部以下、好ましくは110質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは95質量部以下である。
また、表面処理金属水酸化物のポリ乳酸樹脂100質量部に対する含有量は、流動性、難燃性、耐衝撃性及び耐ブリード性の観点から、好ましくは60質量部以上120質量部以下、より好ましくは70質量部以上110質量部以下、更に好ましくは75質量部以上100質量部以下である。
なお、本明細書において、表面処理金属水酸化物の含有量とは、複数の表面処理金属水酸化物が含有される場合には、総含有量のことを意味する。
[有機結晶核剤]
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を向上させ、ポリ乳酸樹脂の結晶性を向上させ、耐衝撃性を向上させる観点から、有機結晶核剤を含有することができる。
本発明における有機結晶核剤としては、以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機結晶核剤を用いることが好ましい。
(a)イソインドリノン骨格を有する化合物、ジケトピロロピロール骨格を有する化合物、ベンズイミダゾロン骨格を有する化合物、インジゴ骨格を有する化合物、フタロシアニン骨格を有する化合物、及びポルフィリン骨格を有する化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(a)という〕
(b)カルボヒドラジド類、ウラシル類、及びN−置換尿素類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(b)という〕
(c)スルホ芳香族カルボン酸エステルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェニルホスホン酸の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド、及びロジン酸アミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(c)という〕
(d)分子中に水酸基とアミド基を有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(d)という〕
これらの中では、曲げ弾性率を向上させる観点から、有機結晶核剤(c)、有機結晶核剤(d)が好ましい。
有機結晶核剤(c)としては、上記の観点から、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH))を有するフェニルホスホン酸の金属塩が好ましく、フェニル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。フェニルホスホン酸の具体例としては、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。
フェニルホスホン酸の金属塩としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の塩が挙げられ、亜鉛塩が好ましい。
有機結晶核剤(d)の分子中に水酸基とアミド基を有する化合物としては、上記の観点から、水酸基を有する脂肪族アミドが好ましく、分子中に水酸基を2つ以上有し、アミド基を2つ以上有する脂肪族アミドがより好ましい。具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。
また、有機結晶核剤(d)のヒドロキシ脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12〜22のヒドロキシ脂肪酸エステルが好ましく、分子中に水酸基を2つ以上有し、エステル基を2つ以上有するヒドロキシ脂肪酸エステルがより好ましい。具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸ジグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド、ペンタエリスリトール−モノ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−ジ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−トリ−12−ヒドロキシステアレート等のヒドロキシ脂肪酸エステルが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよく、これらのなかでも、耐衝撃性を向上させる観点から、(c)と(d)とを併用することがより好ましく、分子中に水酸基とアミド基を有する化合物とフェニルホスホン酸の金属塩とを併用することがさらに好ましく、ヒドロキシ脂肪酸ビスアミド及び無置換のフェニルホスホン酸の金属塩を併用することが更に好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド及び無置換のフェニルホスホン酸の亜鉛塩を併用することが更に好ましい。
また、ヒドロキシ脂肪酸ビスアミドとフェニルホスホン酸の金属塩の質量比(ヒドロキシ脂肪酸ビスアミド/フェニルホスホン酸の金属塩)は、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を高めることで、耐衝撃性を向上させる観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。
有機結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を高めることで、耐衝撃性を向上させる観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上が更に好ましく、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましい。なお、本明細書において、有機結晶核剤の含有量とは、ポリ乳酸樹脂組成物に含有される全ての有機結晶核剤の合計含有量を意味する。
[加水分解抑制剤]
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、難燃性及び耐衝撃性を向上させる観点から、前記成分以外に、更に加水分解抑制剤が適宜含有されていてもよい。
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,3−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
前記カルボジイミド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)はカルボジライトLA−1(日清紡ケミカル社製)を、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,3−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドは、スタバクゾールP及びスタバクゾールP−100(Rhein Chemie社製)を、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドはスタバクゾールI(Rhein Chemie社製)をそれぞれ購入して使用することができる。
加水分解抑制剤の含有量は、難燃性及び耐衝撃性を向上させる観点から、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、有機充填剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有することも可能である。なお、これらの含有量は、特に限定されず公知技術に従って適宜設定することができる。例えば、難燃性を高める観点から、有機充填剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは実質的に配合しないことが好ましい。有機充填剤としては、セルロース、バガス等の植物由来の化合物が挙げられる。
〔ポリ乳酸樹脂組成物の製造〕
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、特定構造のトリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有し、かつ、該ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が16〜30質量部、表面処理された金属水酸化物の含有量が40〜120質量部であり、更に、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5となる量で配合され、更に必要により各種成分を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥又は冷却させてもよい。また、原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能である。なお、溶融混練する際にポリ乳酸樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。
溶融混練温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは165℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、そして、トリアリールホスフェートの分解を抑制する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは215℃以下である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15〜900秒間が好ましい。
〔成形体の製造〕
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、流動性に優れ、加工性が良好であり、公知の方法に従って各種成形体とすることができる。成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形することにより、耐衝撃性、耐ブリード性、難燃性に優れる成形体を提供することができる。よって、本発明はまた、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形して得られる成形体を提供する。
射出成形体は、例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形機を用いて、所望の形状の金型内に充填し、成形することができる。
[射出成形機]
射出成形としては、公知の射出成形機を用いることができる。例えば、シリンダーとその内部に挿通されたスクリューを主な構成要素として有するもの〔J75E−D、J110AD−180H(日本製鋼所社製)等〕が挙げられる。なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の原料をシリンダーに供給してそのまま溶融混練してもよいが、予め溶融混練したものを射出成形機に充填することが好ましい。即ち、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練した後、射出成形機を用いて所望の形状の金型内に充填し、成形することが好ましい。
シリンダーの設定温度は、射出成形性の観点から、好ましくは180℃以上であり、また、ポリ乳酸樹脂の劣化やトリアリールホスフェートの分解を抑制する観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。溶融混練機を具備する射出成形機を用いる場合には、溶融混練する際の混練機のシリンダーの設定温度を意味する。なお、シリンダーはヒーターを具備しており、それにより温度調整が行なわれる。ヒーターの個数は機種によって異なり一概には決定されないが、前記設定温度に調整されるヒーターは、少なくとも、溶融混練物排出口側(ノズル先端側)に存在するものが好ましい。
金型温度は、作業性向上及び生産コスト低減の観点から、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が更に好ましい。また結晶化速度向上による耐衝撃性の向上の観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、結晶化速度に優れ低温度での成形加工も可能であるため前記金型温度でも、十分な耐熱性を有する成形体を得ることができる。
金型内での保持時間は、特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の生産性の観点から、結晶化による耐衝撃性の向上の観点から、好ましくは3秒以上、より好ましくは10秒以上、更に好ましくは20秒以上であり、作業性向上及び生産コスト低減の観点から、好ましくは90秒以下、より好ましくは80秒以下、更に好ましくは70秒以下である。
成形体の製造方法としては、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を射出成形する工程を含む方法であれば特に限定はなく、得られる成形品の種類に応じて、適宜、工程を追加することができる。
具体的には、以下の工程を含む態様が挙げられる。
工程(1):ポリ乳酸樹脂に、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、前記トリアリールホスフェートが、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、表面処理された金属水酸化物をポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、ポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練して、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を調製する工程
工程(2):工程(1)で得られたポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を金型内に射出成形する工程
工程(1)は、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を調製する工程である。具体的には、ポリ乳酸樹脂、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有し、前記トリアリールホスフェートが、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、表面処理された金属水酸化物の含有量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、原料を、前述の好ましい溶融混練温度で、溶融混練することにより、調製することができる。
工程(2)は、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を射出成形する工程である。具体的には、工程(1)で得られた溶融混練物を、好ましくは前述の好ましいシリンダー設定温度に加熱したシリンダーを装備した射出成形機に充填し、前述の好ましい金型温度の金型内に射出して成形することができる。
かくして得られた本発明のポリ乳酸樹脂組成物の成形体は、耐衝撃性、耐ブリード性、難燃性に優れ、情報家電の筐体等の家電部品として好適に用いることができる。
本発明の成形体の難燃性は、実施例記載の方法により測定した場合、V−1以上が好ましく、V−0がより好ましい。本発明の成形体の流動性は、同様に、L/Dは145以上が好ましく、160以上がより好ましい。本発明の成形体の耐衝撃性は、同様に、60cm以上が好ましく、75cm以上がより好ましく、90cm以上が更に好ましい。本発明の成形体の耐ブリード性は、同様に、B以上が好ましく、Aがより好ましい。
上述した実施形態に関し、本発明は、さらに、以下のポリ乳酸樹脂組成物を開示する。
<1> ポリ乳酸樹脂、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、前記トリアリールホスフェートが炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、前記表面処理された金属水酸化物の含有量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、ポリ乳酸樹脂組成物。
<2> トリアリールホスフェートが一般式:
(RArO)(ArO)3−aPO
(式中、Arはベンゼン環を示し、R、Rは、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1〜3のアルキル基を示すが、共に水素原子である場合は除き、aは1〜3の整数を示す)
で表される化合物が好ましい、前記<1>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<3> 前記式におけるR、Rとしては、いずれもがメチル基である場合、Rがメチル基、Rが水素原子である場合、Rがエチル基、Rが水素原子である場合、Rがイソプロピル基、Rが水素原子である場合が好ましく、Rがメチル基、Rが水素原子である場合、Rがイソプロピル基、Rが水素原子である場合がより好ましい、前記<2>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<4> 前記式で表されるトリアリールホスフェートは、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を好ましくは1〜2、より好ましくは1つ含む化合物である、前記<2>又は<3>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<5> 前記式で表されるトリアリールホスフェートとしては、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、及びクレジルジフェニルホスフェートからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート及び/又はクレジルジフェニルホスフェートがより好ましい、前記<2>〜<4>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<6> ポリ乳酸樹脂組成物におけるトリアリールホスフェートの含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部を超えるものであり、好ましくは21質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは16質量部以下、より更に好ましくは14質量部以下である、前記<1>〜<5>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<7> 可塑剤としては、好ましくは、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、但し、前記リン酸エステル系可塑剤としては、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェートは除く、前記<1>〜<6>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<8> 可塑剤としては、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するエステル化合物が好ましく、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい、前記<1>〜<7>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<9> 可塑剤としては、以下の化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2種以上を組み合わせて用いる場合は、同じ化合物群同士でも異なる化合物群同士であってもよい、前記<1>〜<8>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
化合物群(A) 分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物
化合物群(B) 式(I):
O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
(式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2〜6のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜12の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物
化合物群(C) 式(II):
Figure 0006381365
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、A、A、Aはそれぞれ独立して炭素数2又は3のアルキレン基を示し、x、y、zはそれぞれ独立してオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す正の数であって、x+y+zが3を超え12以下を満足する数である)
で表される化合物
<10> 化合物群(A)としては、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを1〜2モル付加)とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが好ましい、前記<9>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<11> 化合物群(B)としては、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンンジオールから選ばれる少なくとも1つの2価アルコールのオリゴエステル〔式(I)中、n=1.2〜3〕が好ましい、前記<9>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<12> 化合物群(C)としては、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート〔式(II)中、R、R、Rはいずれもエチル基、A、A、Aはいずれもエチレン基、x、y、zはいずれも2で、x+y+z=6〕の他に、トリス(メトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(プロポキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(ブトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=6)、トリス(メトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)、トリス(エトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)、トリス(プロポキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート(x+y+z=9)等の対称ポリエーテル型リン酸トリエステルやビス(エトキシエトキシエチル)メトキシエトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=7)、ビス(メトキシエトキシエトキシエチル)エトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=8)、ビス(エトキシエトキシエチル)ブトキシエトキシエチルホスフェート(x+y+z=6)等の非対称ポリエーテル型リン酸トリエステル、あるいは炭素数1〜4のアルコールのポリオキシエチレン付加物又はポリオキシプロピレン付加物の混合物を式(II)を満たすようにリン酸トリエステル化した非対称ポリエーテル型リン酸エステルが好ましく、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(プロポキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(エトキシエトキシエトキシエチル)ホスフェート、トリス(プロポキシエトキシエトキシエチル)ホスフェートがより好ましく、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェートが更に好ましい、前記<9>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<13> 可塑剤中、好ましくは、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、あるいは、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するエステル化合物の含有量、より好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びリン酸エステル系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、更に好ましくは前記化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である、前記<8>〜<12>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<14> 可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上であり、好ましくは21質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは16質量部以下、より更に好ましくは14質量部以下、より更に好ましくは12質量部以下である、前記<1>〜<13>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<15> トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは17質量部以上、より好ましくは18質量部以上、更に好ましくは19質量部以上であり、好ましくは28質量部以下、より好ましくは26質量部以下、更に好ましくは24質量部以下、より更に好ましくは22質量部以下である、前記<1>〜<14>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<16> トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは16質量部以上24質量部以下、より好ましくは16質量部以上22質量部以下である、前記<1>〜<15>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<17> トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは22質量部以上30質量部以下、より好ましくは24質量部以上30質量部以下である、前記<1>〜<15>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<18> トリアリールホスフェートと可塑剤の合計質量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは18質量部以上24質量部以下、より好ましくは19質量部以上22質量部以下である、前記<1>〜<15>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<19> トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.38以上、更に好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは0.55以上、より更に好ましくは0.60以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.75以下である、前記<1>〜<18>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<20> トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、好ましくは0.30以上3.0以下、より好ましくは0.30以上2.0以下、更に好ましくは0.30以上1.5以下、より更に好ましくは0.30以上1.0以下である、前記<1>〜<19>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<21> トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、好ましくは0.35以上3.0以下、より好ましくは0.35以上2.0以下、更に好ましくは0.38以上1.5以下である、前記<1>〜<19>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<22> トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、好ましくは0.50以上3.0以下、より好ましくは0.55以上2.0以下、更に好ましくは0.60以上1.5以下である、前記<1>〜<19>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<23> トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)は、好ましくは0.35以上3.0以下、より好ましくは0.40以上2.0以下、更に好ましくは0.50以上1.0以下であり、より更に好ましくは0.55以上0.80以下であり、より更に好ましくは0.60以上0.75以下である、前記<1>〜<19>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<24> 金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好ましく、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、水酸化アルミニウムが更に好ましい、前記<1>〜<23>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<25> 表面処理された金属水酸化物としては、シランカップリング剤によって処理された水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましく、シランカップリング剤によって処理された水酸化アルミニウムがより好ましい、前記<1>〜<24>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<26> シランカップリング剤としては、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、エポキシシラン等のカップリング剤が好ましく、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシランのカップリング剤がより好ましく、イソシアネートシラン、アミノシランが更に好ましく、イソシアネートシランが更に好ましい、前記<25>に記載のポリ
乳酸樹脂組成物。
<27> シランカップリング剤による表面処理を施した金属水酸化物は、シランカップリング剤と金属水酸化物との質量比(シランカップリング剤/金属水酸化物)が0.1/99.9〜5/95が好ましく、0.3/99.7〜3/97がより好ましく、0.5/99.5〜2/98が更に好ましい、前記<25>又は<26>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<28> 表面処理された金属水酸化物は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは4μm以下である、前記<1>〜<27>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<29> 平均粒径の差が好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である、平均粒径の異なる金属水酸化物を併用する、前記<1>〜<28>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<30> 表面処理された金属水酸化物のポリ乳酸樹脂100質量部に対する含有量は、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上であり、好ましくは110質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは95質量部以下である、前記<1>〜<29>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<31> 表面処理された金属水酸化物のポリ乳酸樹脂100質量部に対する含有量が、好ましくは60質量部以上120質量部以下、より好ましくは70質量部以上110質量部以下、更に好ましくは75質量部以上100質量部以下である、前記<1>〜<30>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<32> ポリ乳酸樹脂としては、光学純度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のポリ乳酸樹脂である、前記<1>〜<31>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<33> ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは43質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは55質量%以下である、前記<1>〜<32>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<34> 更に、有機結晶核剤を含有してなる、前記<1>〜<33>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<35> 有機結晶核剤としては、以下の(c)〜(d)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機結晶核剤を用いることが好ましい、前記<34>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
(c)スルホ芳香族カルボン酸エステルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェニルホスホン酸の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド、及びロジン酸アミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(c)という〕
(d)分子中に水酸基とアミド基を有する化合物及びヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機化合物〔有機結晶核剤(d)という〕
<36> 有機結晶核剤(c)としては、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH))を有するフェニルホスホン酸の金属塩が好ましく、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸の金属塩がより好ましく、無置換のフェニルホスホン酸の金属塩が更に好ましい、前記<35>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<37> 金属塩としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケルが好ましく、亜鉛塩がより好ましい、前記<36>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<38> 有機結晶核剤(d)の分子中に水酸基とアミド基を有する化合物としては、水酸基を有する脂肪族アミドが好ましく、分子中に水酸基を2つ以上有し、アミド基を2つ以上有する脂肪族アミドがより好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が更に好ましい、前記<35>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<39> 有機結晶核剤(c)と(d)とを併用することが好ましく、分子中に水酸基とアミド基を有する化合物とフェニルホスホン酸の金属塩とを併用することがより好ましく、ヒドロキシ脂肪酸ビスアミド及び無置換のフェニルホスホン酸の金属塩を併用することが更に好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド及び無置換のフェニルホスホン酸の亜鉛塩を併用することが更に好ましい、前記<35>〜<38>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<40> ヒドロキシ脂肪酸ビスアミドとフェニルホスホン酸の金属塩の質量比(ヒドロキシ脂肪酸ビスアミド/フェニルホスホン酸の金属塩)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である、前記<39>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<41> 有機結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上が更に好ましく、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましい、前記<34>〜<40>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<42> 更に、加水分解抑制剤を含有してなる、前記<1>〜<41>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<43> 加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である、前記<42>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<44> ポリ乳酸樹脂、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有し、かつ、該ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が16〜30質量部、表面処理された金属水酸化物の含有量が40〜120質量部であり、更に、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5となる量で配合され、更に必要により各種成分を含有する原料を溶融混練して調製する、前記<1>〜<43>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<45> 溶融混練温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは165℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは215℃以下である、前記<44>に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<46> 前記<1>〜<45>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練した後、射出成形機を用いて所望の形状の金型内に充填し、射出成形して得られる成形体。
<47> 射出成形が、シリンダーの設定温度が、好ましくは180℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である、射出成形機を用いて行われる、前記<46>記載の成形体。
<48> 金型温度は、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましく、80℃以下が更に好ましく、また、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい、前記<46>又は<47>記載の成形体。
<49> 以下の工程を含む、前記<46>〜<48>いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物の射出成形体の製造方法。
工程(1):ポリ乳酸樹脂に、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物であって、前記トリアリールホスフェートが、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、表面処理された金属水酸化物をポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、ポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練して、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を調製する工程
工程(2):工程(1)で得られたポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物を金型内に射出成形する工程
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
〔表面処理金属水酸化物の平均粒子径〕
表面処理金属水酸化物の平均粒子径とは、体積中位粒径(D50)のことを意味し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーG(エクソンモービル社製)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
〔可塑剤の酸価、水酸基価、及びケン化価〕
酸価:滴定溶媒としてトルエン/エタノール=2/1(体積比)を用いる他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
水酸基価:アセチル化試薬として無水酢酸/ピリジン=1/4(体積比)を用い、添加量を3mLとする他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
ケン化価:水浴の温度を95℃に、加熱温度を1時間にする他は、JIS K 0070の試験法に従って分析を行う。
〔可塑剤化合物群(A)の分子量〕
可塑剤化合物群(A)の分子量とは、重量平均分子量を意味し、ケン化価から次式より計算で求める。
平均分子量=56108×(1分子中のエステル基の数)/ケン化価
〔可塑剤化合物群(B)の分子量、末端アルキルエステル化率、及びエーテル基価〕
分子量:本明細書において可塑剤化合物群(B)の分子量とは数平均分子量を意味し、酸価、水酸基価、及びケン化価から次式により算出する。
平均分子量 M=(M+M−M×2)×n+M−(M−17.01)×2+(M−17.01)×p+(M−17.01)×q+1.01×(2−p−q)
q=水酸基価×M÷56110
2−p−q=酸価×M÷56110
平均重合度 n=ケン化価×M÷(2×56110)−1
末端アルキルエステル化率:分子末端のアルキルエステル化率(末端アルキルエステル化率)は以下の式より算出することができ、分子末端のアルキルエステル化率は数値が大きいほうが、遊離のカルボキシル基や水酸基が少なく、分子末端が十分にアルキルエステル化されていることを示す。
末端アルキルエステル化率(%)=(p÷2)×100
ただし、M:原料として用いるジカルボン酸と原料として用いる一価アルコールとの
ジエステルの分子量
:原料として用いる二価アルコールの分子量
:原料として用いる一価アルコールの分子量
p:一分子中の末端アルキルエステル基の数
q:一分子中の末端水酸基の数
エーテル基価:以下の式より、カルボン酸エステル1g中のエーテル基のミリモル(mmol)数であるエーテル基価を算出する。
エーテル基価(mmol/g)=(m−1)×n×1000÷M
ただし、m:オキシアルキレン基の平均の繰り返し数(m−1は二価アルコール一分子中のエーテル基の数を表す)
尚、ジカルボン酸、一価アルコール、ニ価アルコールを複数種用いる場合、分子量は、数平均値の分子量を用いる。
<可塑剤の製造例1>(コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル)
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル〔(MeEOSA〕を得た。得られたジエステルは、重量平均分子量410、粘度(23℃)27mPa・s、酸価0.2mgKOH/g、鹸化価274mgKOH/g、水酸基価1mgKOH/g以下、色相APHA200であった。
<可塑剤の製造例2>(コハク酸と1,3−プロパンジオールおよびメタノールのジエステル、原料(モル比):コハク酸ジメチル/1,3−プロパンジオール(1.5/1))
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)に1,3−プロパンジオール521g(6.84モル)及び触媒として28質量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.9g(ナトリウムメトキシド0.031モル)を入れ、常圧、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留去した。その後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)1500g(10.26モル)を1時間かけて滴下し、常圧、120℃で、反応により生じるメタノールを留去した。次に、60℃に冷却し、28質量%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液5.6g(ナトリウムメトキシド0.029モル)を入れ、2時間かけて120℃に昇温した後、圧力を1時間かけて常圧から3.7kPaまで徐々に下げてメタノールを留去した。その後、80℃に冷却してキョーワード600S(協和化学工業社製)18gを添加し、圧力4.0kPa、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力0.1kPaで、温度を2.5時間かけて85℃から194℃に上げて残存コハク酸ジメチルを留去し、常温黄色の液体を得た。なお、触媒の使用量は、ジカルボン酸エステル100モルに対して0.58モルであった。(式(I)におけるR:メチル、R:エチレン、R:1,3−プロピレン、m=1、n=4.4;酸価0.64mgKOH/g;水酸基価1.3mgKOH/g;ケン化価719.5mgKOH/g;数平均分子量850;末端アルキルエステル化率98.5%;エーテル基価0mmol/g)。
<可塑剤の製造例3>(トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート)
1リットル四つ口フラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテル600g(4.47モル)を加え、乾燥窒素ガスを毎分50mLの流量で吹き込みながら、減圧下(20kPa)で攪拌した。次いで反応系内を室温(15℃)に保ちながらオキシ塩化リン114g(0.745モル)をゆっくりと滴下し、その後、40〜60℃で5時間熟成した。その後、16質量%の水酸化ナトリウム水溶液149gを添加して中和し、過剰の未反応ジエチレングリコールモノエチルエーテルを70〜120℃の温度条件で減圧留去し、さらに水蒸気と接触させて粗リン酸トリエステル367gを得た。さらに、この粗リン酸トリエステルに16質量%の塩化ナトリウム水溶液300gを加えて洗浄した。その後、分層した下層を廃水し、残りの上層を75℃の減圧下で脱水した後、さらにろ過で固形分を除去し、目的とするトリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート266gを得た(収率80%)。このトリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェートは無色透明の均一液体であり、クロルイオン分析を行った結果、クロルイオン含量は10mg/kg以下であった。
<水酸化アルミニウム(A):表面処理水酸化アルミニウムの製造例1>
有機溶剤(アセトン)200gにイソシアネート系シランカップリング剤(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製、KBE−9007)5gを溶解させ、そこに水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BE033、平均粒径2μm、アルカリ金属系物質の含有量0.01質量%)500gを入れ、ミキサーで攪拌し、その後有機溶剤を除去し、乾燥して、質量比(シランカップリング剤/水酸化アルミニウム)が1/99の割合で処理したイソシアネート系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム(A))を得た。
<水酸化アルミニウム(B):表面処理水酸化アルミニウムの製造例2>
表面処理水酸化アルミニウムの製造例1と同様の方法で、イソシアネート系シランカップリング剤(KBE−9007)、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、B703、平均粒径3.5μm、アルカリ金属系物質の含有量0.3質量%)を質量比(シランカップリング剤/水酸化アルミニウム)が1/99の割合で処理したイソシアネート系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム(B))を得た。
<水酸化アルミニウム(C):表面処理水酸化アルミニウムの製造例3>
表面処理水酸化アルミニウムの製造例1と同様の方法で、アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製、KBE−903)、水酸化アルミニウム(B703)を質量比(シランカップリング剤/水酸化アルミニウム)が1/99の割合で処理したアミノ系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム(C))を得た。
実施例1〜18及び比較例1〜11
[工程(1)]
表1〜3に示す組成物原料を、同方向噛み合型二軸押出機(東芝機械社製、TEM−41SS)を用いて210℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットは、110℃で2時間除湿乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
[工程(2)]
工程(1)で得られたペレットを、シリンダー温度を190℃とした射出成形機(日本製鋼所社製、J75E−D)を用いて射出成形し、金型温度80℃、成形時間60秒でテストピース〔角柱状試験片(125mm×12mm×1.6mm)及び平板試験片(100mm×100mm×2mm)〕を得た。
なお、表1〜3における原料は以下の通りである。
〔ポリ乳酸樹脂〕
NW4032D:Nature Works 4032D(ネイチャーワークス社製)
〔有機結晶核剤〕
スリパックスH:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製)
PPA−Zn:無置換のフェニルホスホン酸亜鉛塩(日産化学工業社製)
LAK−301:5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム(竹本油脂社製)
エヌジェスターTF−1:1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド(新日本理化社製)
〔可塑剤〕
(MeEO)SA:可塑剤の製造例1で製造されたコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物
DAIFATTY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール=1/1混合物とのジエステル(大八化学工業社製)
MeSA−1,3PD:可塑剤の製造例2で製造されたコハク酸と1,3−プロパンジオールおよびメタノールのジエステル
TEP−2:可塑剤の製造例3で製造されたトリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェート
〔炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含む、トリアリールホスフェート(トリアリールホスフェート)〕
レオフォス65:トリアリールホスフェートイソプロピル化物(味の素ファインテクノ社製)
CDP:クレジルジフェニルホスフェート(大八化学工業社製)
〔金属水酸化物〕
水酸化アルミニウム(A):表面処理水酸化アルミニウムの製造例1で製造されたイソシアネート系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム、平均粒径2μm、粉粒状
水酸化アルミニウム(B):表面処理水酸化アルミニウムの製造例2で製造されたイソシアネート系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム、平均粒径3.5μm、粉粒状
水酸化アルミニウム(C):表面処理水酸化アルミニウムの製造例3で製造されたアミノ系シランカップリング剤処理水酸化アルミニウム、平均粒径3.5μm、粉粒状
BE033:水酸化アルミニウム(日本軽金属社製)、平均粒径2μm、粉粒状
〔その他の難燃剤〕
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学工業社製)
PX−200:縮合リン酸エステル(大八化学工業社製)
〔酸化防止剤〕
IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製)
得られたポリ乳酸樹脂組成物及びその成形体の特性を、下記の試験例1〜4の方法に従って評価した。結果を表1〜3に示す。
試験例1<難燃性の評価>
テストピース〔角柱状試験片(125mm×12mm×1.6mm)〕を用いて、Underwriters Laboratories社の安全標準UL94 垂直燃焼試験の手順に基づき、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させて、その後燃焼が30秒以内に止まったならば、さらに10秒間接炎させるという燃焼試験を5個の試料について実施した。UL94垂直燃焼試験(UL94V)の判定基準に基づき、V−2、V−1、V−0の判定を行った。判定基準を以下に示した。V−1以上が好ましく、V−0がより好ましい。なお、これらの判定基準に当てはまらないものについては難燃性をNotとした。
〔難燃性の判定基準〕
・V−0
いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子を落下させる試料がない。
2回目の接炎の後、30秒以上赤熱を続ける試料がない。
・V−1
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子を落下させる試料がない。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない。
・V−2
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる、燃焼する粒子の落下が許容される。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない。
試験例2<流動性の評価>
得られたポリ乳酸樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機(日本製鋼所社製、J75E−D)を用いて射出成形し、金型温度80℃、射出圧942kgf/cm、射出速度68cm/secにそれぞれ設定して、3mm厚のスパーラルフロー評価用の成形体を射出成形した。この成形体の長さをL(mm)、厚みをD(mm)として、L/Dを求め、流動性の指標とした。L/Dが大きい樹脂組成物ほど、流動性が良好であり、L/Dは145以上が好ましく、160以上がより好ましい。
試験例3<耐衝撃性の評価>
落球衝撃試験機(安田精機製作所社製)と平板試験片(100mm×100mm×2mm)を用いて、1kgの鉄球を平板試験片へ落下させた際の破壊されない高さ(cm)を落球衝撃強度高さとして測定した。前記落球衝撃試験を10回繰り返し行い、落球衝撃強度高さ(cm)の数平均値を求めた。落球衝撃強度高さ(cm)が高いほど耐衝撃性に優れることを示し、60cm以上が好ましく、75cm以上がより好ましく、90cm以上が更に好ましい。
試験例4<耐ブリード性の評価>
テストピース(125mm×12mm×1.6mm)を用いて、温度60℃/湿度85%の条件で恒温室に1週間静置後、その表面外観における添加剤のブリードの有無を目視で観察し、下記の判定基準で耐ブリード性の評価を行った。ブリードが少ないほど、耐ブリード性に優れ、B以上が好ましく、Aがより好ましい。
〔耐ブリード性の判定基準〕
A:目視でも確認できず、指でなぞっても液体や粉体が付着しない。
B:目視では確認できないが、指でなぞると指にわずかに液体又は粉体の付着感がある。
C:目視で成形体表面に液滴又は粉が確認され、指でなぞると指に液体又は粉体が付着する。
Figure 0006381365
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表1〜3の結果から、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、特定のトリアリールホスフェート、表面処理された金属水酸化物を、特定量で配合した本発明のポリ乳酸樹脂組成物(実施例1〜18)は、145(L/D)以上の流動性を示し、難燃性がV−1以上であり、落球衝撃強度高さが60cm以上であり、優れた耐ブリード性を示した。
一方、比較例1の表面処理していない金属水酸化物を用いた場合には、耐衝撃性が低く、特定のトリアリールホスフェートを使用していない比較例2では流動性及び耐衝撃性が低く、可塑剤を使用しない比較例3では、流動性及び耐衝撃性が低かった。
また、比較例4のアルキル基を有しないトリフェニルホスフェートでは、耐衝撃性が低く、比較例5の縮合系のホスフェートでは、流動性、耐衝撃性が低く、耐ブリード性も良くなかった。表面処理された金属水酸化物量が少ない比較例6では、耐ブリード性が低く、表面処理された金属水酸化物量が多い比較例7では、流動性、耐衝撃性が低くなる。トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比が低い比較例8、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比が高い比較例9では、いずれも耐ブリード性が良くなかった。可塑剤とトリアリールホスフェートの合計量が少ない比較例10では、流動性が低く、多い比較例11では耐ブリード性が低下した。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、情報家電の筐体等の家電部品として好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸樹脂、トリアリールホスフェート、可塑剤、及び表面処理された金属水酸化物を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物(但し、セルロースを含有するものを除く)であって、前記トリアリールホスフェートが炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含み、該トリアリールホスフェートと前記可塑剤の合計質量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して16〜30質量部であり、トリアリールホスフェートに対する可塑剤の質量比(可塑剤/トリアリールホスフェート)が0.30〜3.5であり、前記表面処理された金属水酸化物が、シランカップリング剤により処理された金属水酸化物を含み、前記表面処理された金属水酸化物の含有量が前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して40〜120質量部である、ポリ乳酸樹脂組成物。
  2. 炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアリール基を1つ以上含むトリアリールホスフェートの含有量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、5〜21質量部である、請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 可塑剤の含有量が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、4〜21質量部である、請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 可塑剤が、(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を有するエステル化合物を含む、請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 更に、有機結晶核剤を含む、請求項1〜いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. 請求項1〜いずれか記載の組成物を溶融混練した後、射出成形して得られる、成形体。
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