JP6364820B2 - 正極活物質用有機硫黄化合物、その製造方法、二次電池用正極活物質、二次電池 - Google Patents
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Description
このポリ硫化カーボンは、不飽和ポリマーに硫黄が付加した部分と不飽和ポリマー同士がスルフィド結合につながった構造を有しており、硫黄の溶出に一定の効果を挙げているが、十分ではない。
1)下記一般式(1)で表わされるハロゲン化芳香族化合物と硫黄とを反応させることにより得られる有機硫黄化合物であり、有機硫黄化合物中の全硫黄量(wt%)に対する有機硫黄化合物中にインターカレートされた硫黄量(wt%)の比が0.75未満であることを特徴とする有機硫黄化合物。
2)前記Arが縮合環炭化水素であることを特徴とする1)に記載の有機硫黄化合物。
3)前記Arが9,9’−ビアントラセンであることを特徴とする1)に記載の有機硫黄化合物。
4)一般式(1)で表わされるハロゲン化芳香族化合物と硫黄とを200℃から800℃の間で、減圧雰囲気下において反応させることを特徴とする有機硫黄化合物の製造方法。
5)1)乃至3)のいずれかに記載の有機硫黄化合物を用いたことを特徴とする二次電池用正極活物質。
6)5)に記載の二次電池用正極活物質を用いたことを特徴とする二次電池。
〔有機硫黄化合物〕
前記一般式(1)において、Arは芳香族炭化水素を表わす。芳香族炭化水素の例としては、ビフェニル、ビフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、トリフェニルベンゼン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ビアントラセン、フェナントレン、フェナレン、トリフェニレン、フルオランテン、ペリレン、ペンタフェン、ピセン、コロネン、トルクセン、トリナフチレン、ヘキサヘリセン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘプタセン、ヘプタフェンなどが挙げられる。また、これらの環に置換するハロゲン元素としては臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。nは2以上の自然数であるが、好ましくは2〜6である。
これをさらに加熱すると400℃付近において脱水素化反応が起こり隣接するアントラセン同士が縮合し、リボン状の炭化水素化合物が形成される。
一方、硫黄は室温付近において硫黄原子が8つ連なった環状構造をとっているが下記反応式(2)に示すように、高温下においてその結合が切れビラジカル状態となる。ビラジカルは化学的に活性な状態であるため、速やかに付加反応、付加脱離反応が進行する。
従来より、ジスルフィド化合物はS−S間の結合が示す可逆的な開裂−再結合挙動が電池の正極材料として有望であることが報告されている(Liu,M.;Visco,S.J.;De Jonghe,L.C.,J.Electro Chem.Soc.,138,1896−1901(1991)参照)が、他の有機系活物質と同様にジスルフィド結合の電気化学的反応性の高さによる分子の安定性の低さが原因となっていた。充放電サイクルの繰り返しによる容量の低下が起こる性質を軽減するには、有効な充放電は、可逆的な開裂−再結合を生じるためのS−S間結合に主に依存するものとすると、S−S間結合は、高密度であることが無論好ましい。
本発明において、反応原料としての「ハロゲン化芳香族化合物中のハロゲン元素」:「硫黄」のモル量比は、どのような割合であっても可能である。S−S間結合は、ジスルフィドに限らず、ジスルフィドやトリスルフィドを含むポリスルフィド結合であってよい。しかし、ハロゲン化芳香族化合物中のハロゲン元素:硫黄のモル量比が、100部:500〜3000部であることが好ましく、100部:800〜2500部であることがより好ましく、100部:1000〜2000部であることが更に好ましい。硫黄添加量が上記下限より少ないと、充放電が達成できない。硫黄添加量が上記上限より多いと、PAH(多環炭化水素)のグラフィン構造層間に入り込んだインターカレートS原子は増えるが、芳香族炭素骨格との結合が形成されていないため充放電過程で電解液への溶け出しが起こり、急速に二次電池特性の劣化が進行する。
なお、(有機硫黄化合物中のインターカレートされた硫黄量)/(有機硫黄化合物中の全硫黄量)=0.75未満であることが好ましい。有機硫黄化合物中のインターカレートされた硫黄量と、有機硫黄化合物中の全硫黄量はそれぞれTGAおよび元素分析から求めることができる。硫黄は大気圧下、300℃付近で蒸発してしまう為、インターカレートされた硫黄量をTGAから求めることができる。この比率が0.75を上回ると充放電過程で電解液へ溶け出す硫黄量が多くなり、二次電池の劣化が急速に進行してしまう。
有機硫黄化合物を正極活物質として用いる場合には、各構成材料間の結びつきを強めるため結着剤を用いることもできる。結着剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
本発明における集電体とは、導電体で形成され電池の電極から発生する電荷を集めることができるものである。図1の例では、負極集電体3、正極集電体4として、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス等の金属箔、金属平板、メッシュ状電極、パンチング電極、炭素電極等を用いることができる。また、活物質と集電体とを化学結合させてもよい。
図1におけるセパレーター5は、正極層と負極層が接触して短絡しないようにするものであり、高分子多孔質フィルム、不織布などの材料を用いることができる。更にこのようなセパレーターは、電解質を含ませて構成することも好ましい。ただし、上記電解質として、イオン伝導性高分子等の固体電解質を用いる場合には、セパレーターそのものを省略することもできる。また、図1におけるステンレス外装(封止材)6についても特に制限はなく、電池の外装に用いられる従来公知の材料が用いられる。
本発明で用いる電解質は、負極層1と正極層2の両極間の荷電担体輸送を行なうものであり、一般に室温で10−5〜10−1S/cmのイオン伝導性を有している。電解質としては、例えば電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用することができる。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等の従来公知の材料を用いることができる。
また、電解質塩の溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。なお、これらの溶剤は一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。
固体電解質に用いられる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体;アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体;ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。なお、固体電解質は、これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いても、高分子化合物のみでそのまま用いてもよい。
化合物(C−1)の合成
よく乾燥させた重合管(外径25mm、高さ80mm)に10,10’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン0.25g(0.49mmol)と硫黄0.50g(2×16×0.49mmol=15.68mmol、ハロゲン元素1つに対して16倍モル使用)を(あらかじめ乳鉢でよく混合しておく)入れ、凍結乾燥を3回繰り返した後、封管した。
封管された重合管を電気炉に入れ、図2に示す温度ステップで反応を行なった。
化合物(C−2)の合成
550℃での処理時間を2時間とした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−2)を得た(0.31g)。元素分析及びTGA結果を表1に記す。
化合物(C−3)の合成
550℃での処理時間を5時間とした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−3)を得た(0.29g)。元素分析及びTGA結果を表1に記す。
化合物(C−4)の合成
ハロゲン化芳香族化合物を1,6−ジブロモピレン0.25gとした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−4)を得た(0.30g)。元素分析及びTGA結果を表1に記す。
化合物(C−5)の合成
ハロゲン化芳香族化合物を1,3,5−トリス(4−ブロモフェニル)ベンゼン0.25gとした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−5)を得た(0.25g)。元素分析及びTGA結果を表1に記す。
化合物(C−6)の合成
ハロゲン化芳香族化合物を1,3,6,8−テトラブロモピレン0.25gとした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−6)を得た(0.22g)。
元素分析及びTGA結果を表1に記す。
化合物(C−7)の合成
ハロゲン化芳香族化合物を2,3,6,7,10,11−ヘキサブロモトリフェニレン0.25gとした以外は化合物(C−1)の合成と同様に行ない化合物(C−7)を得た(0.56g)。元素分析及びTGA結果を表1に記す。
比較化合物1の合成
よく乾燥させた重合管(外径25mm、高さ80mm)に10,10’−ジブロモ−9,9’−ビアントラセン0.25g(0.49mmol)を入れ、凍結乾燥を3回繰り返した後、封管した。封管された重合管を電気炉に入れ、図2に示す温度ステップで反応を行なった。放冷後、封管を破り、内容物をイオン交換水100mlが入ったビーカーに空け30分攪拌洗浄した。不溶物をろ別し、トルエン100mlが入ったビーカー中でさらに30分攪拌洗浄した。不溶物をろ過し、80℃で減圧乾燥することにより、光沢のある黒色物質を得た(0.18g)。続いて黒色物質0.18gと0.27gの硫黄を乳鉢でよく混合し、ガラスチューブオーブン(SHIBATA製、GTO−200)を用いて155℃、アルゴン雰囲気下で熱処理を12時間行った。その結果、比較化合物1として黒色物質0.45gを得た。
−電池の作成−
化合物(C−1)と導電補助材のグラファイト、結着材のポリ(フッ化ビニリデン)を混合し、そこにN−メチルピロリドンを加え、全体が均一になるまで混練して黒色のペーストを得た。混合比は、化合物(C−1):グラファイト:結着材=2:6:2とした。続いて、このペーストを、ブレードコート治具を用いてアルミニウム箔上に均一に塗工した。得られた塗工膜を、予め120℃に設定しておいた温風乾燥器内に入れて、20分間乾燥させ、電極層を作製した。電極層をφ16mmの円形状に打ち抜き円形状正極電極とした。露点温度−70℃以下のグローブボックス中において、ステンレス外装内に、前記円形状正極、φ25mmのポリプロピレン多孔質フィルムセパレータ、φ16mmの円形状のLi金属箔陰極の順に積層し、電解質として1.0mol/LのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合体積比1:2)を加えた。最後にステンレス外装としての蓋をかぶせ、密閉して実施例1の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−2)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例2の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−3)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例3の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−4)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例4の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−5)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例5の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−6)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例6の電池を作製した。
化合物(C−1)を、表2に示されるように、化合物(C−7)の有機硫黄化合物に変えた点以外は、実施例1と同様にして実施例7の電池を作製した。
化合物(C−1)を、単体硫黄に変えた点以外は、実施例1と同様にして比較例1の電池を作製した。
化合物(C−1)を、比較化合物1に変えた点以外は、実施例1と同様にして比較例2の電池を作製した。
実施例1〜7及び比較例1、2の電池について、定電流(0.05mA)下で、カットオフ電圧を充電3.0V、放電1.5Vとして充放電を行なった。放電−充電を1回行なうと1サイクルとし、50サイクル後の放電容量を表2に記した。表2から、本発明の有機硫黄化合物を活物質として使用した実施例の電池は、比較例の電池に比べて、サイクル特性が良好であることがわかる。
2 正極層
3 負極集電体
4 正極集電体
5 セパレーター
6 ステンレス外装
Claims (4)
- 請求項1に記載の正極活物質用有機硫黄化合物を含むことを特徴とする二次電池用正極活物質。
- 請求項3に記載の二次電池用正極活物質を用いたことを特徴とする二次電池。
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