JP6333601B2 - 植物抽出物を用いた薄片状カーボンの製造方法 - Google Patents

植物抽出物を用いた薄片状カーボンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物抽出物を用いた薄片状カーボンの製造方法に関する。特に、導電材料、伝熱材料、トランジスタ、キャパシタ等の蓄電デバイス、センサー、圧電材料、抗菌材料、ろ過材料、樹脂添加剤、光学材料等に使用するための薄片状カーボン、薄片状カーボン組成物、又は薄片状カーボン分散体の製造方法に関する。
グラフェンシートは、炭素原子がハニカム格子状に並んだ2次元単層シートで、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ等の構成単位でもある。このグラフェンシートが厚み10 nm以下程度に積層された薄片状カーボン(本発明において、グラフェンシートも含む概念である)は、その特異な諸物性(例えば、単層グラフェンシートの場合にはヤング率1.0 TPa、キャリア移動度200000 cm2V-1s-1、電気伝導性30・□-1、熱伝導率5000 Wm-1K-1等)を有していることから、導電材料、伝熱材料、トランジスタ、キャパシタ等の蓄電デバイス、センサー、圧電材料、抗菌材料、ろ過材料、樹脂添加剤、光学材料等に使用される新たな材料として注目を浴びている。
薄片状カーボンの製造方法としては、
(1)テープ等を用いた機械的剥離法
(2)金属箔上へのCVDによる形成
(3)SiC基板の加熱
(4)黒鉛の酸化による層間剥離及び得られる酸化グラフェンの還元
等が知られている。
これらのうち、(1)〜(3)の方法は量産性に問題があるとともに、基板上又はテープに付着した状態で薄片状カーボンが得られるために単離が困難である。特に、厚みの小さい薄片状カーボンの場合には、これらの基板又はテープから剥離して薄片状カーボンを単離することはほぼ不可能である。また、仮に単離することができたとしても、これらの方法により得られる薄片状カーボンは極めて凝集しやすく、分散した状態で単離することは非常に困難である。また、凝集した薄片状カーボンを剥離することも非常に困難である。
一方、(4)の方法は、黒鉛を酸化して生成した酸化黒鉛を超音波処理等により層間剥離して酸化グラフェンを得た後に、これを還元してグラフェンに戻す処理である。この方法を採用した場合、酸化グラフェンを液中で還元すると凝集を起こして成膜できなくなってしまう。また、凝集したグラフェンを1枚単位で剥離することは困難である。還元後の凝集を防ぐために、ドデシルベンゼンスルホン酸Naのような界面活性剤を共存させることも検討されている(非特許文献1)。しかしながら、強烈な酸化及び還元を行うため、グラフェン構造を維持したまま薄片状カーボンを得ることは非常に困難であるとともに、安全性にも問題が生ずる。さらに、この方法を採用したとしても、薄片状カーボンは沈殿しており、液中での分散安定化は達成されていない。
このように、薄片状カーボンは、優れた物性を有しているにもかかわらず、分散状態で単離することが非常に困難であり、その方法が求められている。
一方で、食品工場では、水分を多く含む残渣の処理にエネルギーや輸送コストがかかっているので、これらを有効活用することが望まれている。茶やコーヒーは、過剰な粉砕や抽出は味などの品質問題や抽出効率等の問題を生じさせるので、商品価値を高めるためには、通常、過剰な粉砕や抽出を行わない。したがって、茶やコーヒーの抽出残渣には未利用成分が多く残留している。さらに水で抽出する食品については、有機溶媒のみに溶解する成分は丸々残留していると考えられる。
Adv. Funct. Mater. 2010, 20, 2893-2902
本発明は、安価な材料及び簡易なプロセスを用いて、薄片状カーボンを安定分散させることが可能な状態で得ることができる方法を提供することを目的とする。また、この方法を用いて得られる薄片状カーボン、薄片状カーボン組成物及び薄片状カーボン分散体を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、層状構造を有する炭素質材料に対して、植物抽出物の存在下、強力な超音波処理及び/又は高圧処理を施すことにより、安価な材料及び簡易なプロセスを用いているにもかかわらず、薄片状カーボンを安定分散させることが可能な状態で得ることができることを見出した。本発明者らは、当該知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の構成を包含する。即ち、本発明は以下の構成を包含する。
項1.薄片状カーボンの製造方法であって、
層状構造を有する炭素質材料を、植物抽出物の共存下で、
(1)30MPa以上の加圧、及び
(2)100W以上の超音波分散処理
の少なくとも1つの処理を行う、製造方法。
項2.層状構造を有する炭素質材料、植物抽出物、及び溶媒を含有する炭素質材料分散体に対して、
(1)30MPa以上の加圧、及び
(2)100W以上の超音波分散処理
の少なくとも1つの処理を行う、項1に記載の製造方法。
項3.前記溶媒が水を含有し、且つ、該水の含有量が、前記溶媒中の70重量%以上である、項2に記載の製造方法。
項4.前記植物抽出物が、ポリフェノールを含有する、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.前記植物抽出物が、さらに複素環含有化合物を含有する、項4に記載の製造方法。
項6.前記複素環含有化合物が、テトラピロール環、ピロール環、ピラジン環、ピリジン環、及びキサンチン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を分子内に含有する化合物である、項5に記載の製造方法。
項7.前記植物抽出物が、植物を水で抽出処理して得られた抽出残渣を、溶媒で抽出して得られた抽出物である、項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
項8.前記溶媒が有機溶媒を50重量%以上含有する、項7に記載の製造方法。
項9.前記抽出物が、有機アンモニウム、アルカリ金属、アンモニウム、及びポリアルキレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種で処理されている、項8に記載の製造方法。
項10.前記(1)の加圧により、
(i)2個以上の前記炭素質材料分散体同士を衝突させること
(ii)前記炭素質材料分散体と金属又はセラミックス材料とを衝突させること、及び
(iii)前記炭素質材料分散体を断面積1cm以下の空間を通過させること
からなる群より選択される少なくとも1種の処理が行われる、項2〜9のいずれかに記載の製造方法。
項11.前記層状構造を有する炭素質材料の含有量が10重量%以下の濃度で行われる、項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
項12.項1〜11のいずれかに記載の製造方法により得られた薄片状カーボン。
項13.厚みが10nm以下である、項12に記載の薄片状カーボン。
項14.薄片状カーボン分散体の製造方法であって、
層状構造を有する炭素質材料、植物抽出物、及び溶媒を含有する炭素質材料分散体に対して、
(1)30MPa以上の加圧、及び
(2)100W以上の超音波分散処理
の少なくとも1つの処理を行う、製造方法。
項15.項14に記載の製造方法により得られた薄片状カーボン分散体。
項16.項14に記載の製造方法により薄片状カーボン分散体を得た後、溶媒を乾燥させることを特徴とする、薄片状カーボン及び植物抽出物を含有する薄片状カーボン組成物の製造方法。
項17.項16に記載の製造方法により得られた薄片状カーボン組成物。
項18.植物抽出物の含有量が、薄片状カーボン100重量部に対して、1重量部以上である、項17に記載の薄片状カーボン組成物。
項19.項16に記載の製造方法により得られた薄片状カーボン組成物を水又は有機溶媒で洗浄して植物抽出物を除去することを特徴とする、薄片状カーボンの製造方法。
項20.項19に記載の製造方法により得られた薄片状カーボン。
本発明によれば、安価な材料及び簡易なプロセスを用いて、薄片状カーボンを安定分散させることが可能な状態で得ることができる。
また、本発明によれば、薄片状カーボンは、薄片状カーボン単体、薄片状カーボン組成物、及び薄片状カーボン分散体のいずれの態様の薄片状カーボン含有材料であっても、凝集を抑制しつつ得ることができる。つまり、用途に応じて、使用する形態を適宜設定することができるため、汎用性が高い。特に、薄片状カーボンの単離が容易であり、他材料に薄片状カーボンを均一混合することも可能であるため、薄片状カーボンを含むナノコンポジット等への応用も期待される。
試験例1のSEM観察像を示す。
1.薄片状カーボン分散体の製造方法
本発明の薄片状カーボンの製造方法においては、層状構造を有する炭素質材料を、植物抽出物の共存下で、
(1)30MPa以上の加圧、及び
(2)100W以上の超音波分散処理
の少なくとも1つの処理を行う。
層状構造を有する炭素質材料と植物抽出物とを共存させる方法は特に制限はないが、薄片状カーボンが安定分散した薄片状カーボン分散体が得られ、種々の用途に適用しやすいため、層状構造を有する炭素質材料、植物抽出物、及び溶媒を含有する炭素質材料分散体に対して、
(1)30MPa以上の加圧、及び
(2)100W以上の超音波分散処理
の少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
層状構造を有する炭素質材料
層状構造を有する炭素質材料としては、特に制限はないが、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、土状黒鉛、酸化黒鉛等が挙げられる。酸化黒鉛とは、例えば、硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素等の1種以上の酸化剤により酸化された黒鉛が使用され得る。例えば、ハマーズ法により酸化黒鉛を得る場合には、黒鉛を濃硫酸中に浸し、過マンガン酸カリウムを加えて黒鉛を酸化させた後、反応物を希硫酸及び/又は過酸化水素でクエンチし、その後、蒸留水で洗浄すること等により、炭素原子に酸素原子が結合し、層間に酸素原子が導入されて酸化黒鉛を得ることができる。
なかでも、酸素等の異種原子を含まない純度の高い薄片状カーボンを得ようとする場合には、黒鉛を原料として用いることが好ましく、天然黒鉛及び膨張黒鉛がより好ましい。なお、膨張黒鉛を使用する場合は、グラフェン構造の酸化が少ない膨張黒鉛を採用することが好ましい。
また、製造の容易さを重視する場合には、酸化黒鉛を使用してもよい。酸化黒鉛を使用することにより、層間に溶媒分子が挿入されやすく、層方向にのみ剥離させることが容易であり、薄片化効率及び分散性が向上するため、処理時間をより短くすることが可能である。ただし、酸化黒鉛を使用する場合には、後に還元処理が必要となり、グラフェン構造、導電性及び強度をより維持する観点からは、他の材料(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、土状黒鉛)が好ましい。
一方、分散性をより向上させるために、土状黒鉛を採用することも可能である。ただし、結晶性及び構造維持の観点からは、他の材料(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、酸化黒鉛)が好ましい。
また、得られる薄片状カーボンの結晶性、強度、構造維持等を重視する場合には、人造黒鉛を使用してもよい。ただし、処理時間が長くなる傾向にあるため、より効率化のためには、他の材料(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、土状黒鉛、酸化黒鉛)が好ましい。
以上から、純度、製造の容易さ、グラフェン構造維持、導電性、強度等のバランスを考慮すると、天然黒鉛又は膨張黒鉛が特に好ましい。
本発明において、超音波処理及び/又は加圧処理を行う際の系中における層状構造を有する炭素質材料の含有量は、特に制限されないが、10重量%以下が好ましく、0.0001〜7重量%がより好ましく、0.001〜5重量%がさらに好ましい。なお、層状構造を有する炭素質材料の含有量は、薄いほうが薄片化(層間剥離)がより起こりやすいために薄片状カーボンをより効率的に得られ、処理回数をより少なくできる傾向があるとともに、粘度を適切に維持して超音波処理、加圧処理等を行いやすい傾向がある。一方、層状構造を有する炭素質材料の含有量が濃いほうがより生産性に優れている。このため、薄片化の効率、粘度、生産性等のバランスの観点から、層状構造を有する炭素質材料の含有量を適宜設定することが好ましい。なお、本発明の製造方法において、炭素質材料分散体を使用する場合は、当該分散体中の層状構造を有する炭素質材料の含有量を上記範囲内とすることが好ましい。
植物抽出物
従来は、湿式法にて薄片状カーボンを作製する場合、酸化グラフェン及び水性溶媒を含む水分散体に還元処理を施していたが、この方法ではグラフェン構造を維持することが困難であるとともに、得られる薄片状カーボンが激しく凝集してしまうため、グラフェンシート水分散体を得ることは困難であった。また、安全性の観点でも問題があった。一方、本発明においては、植物抽出物を使用することにより、グラフェン構造を維持した薄片状カーボンが凝集することなく、均一分散した状態(薄片状カーボン分散体等)で薄片状カーボンを得ることができる。この際、植物抽出物は、薄片状カーボンを均一分散させるための分散剤としても機能し得る。
植物抽出物は、植物材料を溶媒で抽出して得られた抽出物である限り特に限定されない。
植物材料としては、植物由来の材料である限り特に限定されず、例えば、植物そのもの、植物を溶媒で抽出処理して得られた抽出残渣等が挙げられる。通常であれば廃棄される残渣を有効利用できるという観点から、好ましくは植物を溶媒で抽出処理して得られた抽出残渣等が挙げられる。この溶媒としては、エタノール、アセトン等の有機溶媒や、水等が挙げられる。
植物材料となる植物としては、ポリフェノール、及び/又は複素環含有化合物を含む植物である限り特に限定されない。
ポリフェノールは、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物である限り特に限定されない。ポリフェノールの具体例としては、カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボン、クロロゲン酸、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン、リグニン分解物等が挙げられる。
複素環含有化合物は、分子内に複素環を含有する化合物であって、上記ポリフェノールに分類されない化合物である限り特に限定されない。複素環含有化合物としては、例えば、テトラピロール環、ピロール環、ピラジン環、ピリジン環、及びキサンチン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を分子内に含有する化合物が挙げられる。より具体的には、クロロフィル、等のテトラピロール類、カフェイン、ニコチンなどのアルカロイド類等が挙げられる。
植物材料となる植物としては、例えば、チャノキ等のツバキ属植物、コーヒー等のコーヒーノキ属植物、ブドウ属植物、リンゴ属植物、ブルーベリー等のスノキ属植物、柿等のカキノキ属植物、バナナ等のバショウ属植物、アーティチョーク等のチョウセンアザミ属植物、アイ等のイヌタデ属植物、アイリス等のアヤメ属植物、アシタバ等のシシウド属植物、アボカド等のワニナシ属植物、アマチャ等のアジサイ属植物、アマチャヅル等のアマチャヅル属植物、アルテア等のタチアオイ属植物、アルピニアカツマダイ等のハナミョウガ属植物、アロエ等のアロエ属植物、イチョウ等のイチョウ属植物、ウイキョウ等のウイキョウ属植物、ウコン等のウコン属植物、エイジツ等のバラ属植物、エチナシ等のムラサキバレンギク属植物、オウゴン等のタツナミソウ属植物、オウバク等のキハダ属植物、オウレン等のオウレン属植物、オクラ等のトロロアオイ属植物、オドリコソウ等のオドリコソウ属植物、オレンジ、グレープフルーツ等のミカン属植物、褐藻、紅藻、緑藻等の海藻、カッコン等のクズ属植物、カモミール等のシカギク属植物、カロット等のニンジン属植物、カワラヨモギ等のヨモギ属植物、キイチゴ等のキイチゴ属植物、キウイ等のマタタビ属植物、キューカンバー等のキュウリ属植物、クチナシ等のクチナシ属植物、クマザサ等のササ属植物、クララ等のクララ属植物、クレマティス等のセンニンソウ属植物、クロレラ等のクロレラ属植物、ゲンチアナ等のリンドウ属植物、コタラヒムブツ等のサラシア属植物、コメ等のイネ属植物、コンフリー等のヒレハリソウ属植物、サイシン等のカンアオイ属植物、サクラ等のサクラ属植物、サトウカエデ等のカエデ属植物、サボンソウ等のサボンソウ属植物、サンザシ、セイヨウサンザシ等のサンザシ属植物、サンショウ等のサンショウ属植物、シア等のシアバターノキ属植物、ジオウ等のアカヤジオウ属植物、シコン等のムラサキ属植物、シソ等のシソ属植物、ショウブ等のショウブ属植物、スイカズラ等のスイカズラ属植物、セイヨウオオバコ等のオオバコ属植物、セイヨウナシ等のナシ属植物、セイヨウノコギリソウ等のノコギリソウ属植物、センキュウ等のハマゼリ属植物、ダイズ等のダイズ属植物、タイム等のイブキジャコウソウ属植物、チョウジ等のフトモモ属植物、トマト等のナス属植物、バラ等のバラ属植物、ブクリョウ等のポリア属植物、ベニバナ等のベニバナ属植物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはチャノキ等のツバキ属植物、コーヒー等のコーヒーノキ属植物、ブドウ属植物、リンゴ属植物、ブルーベリー等のスノキ属植物、柿等のカキノキ属植物、バナナ等のバショウ属植物等が挙げられ、より好ましくはチャノキ等のツバキ属植物、コーヒー等のコーヒーノキ属植物が挙げられる。また、植物材料となる植物の部位も特に限定されず、葉、茎、花、根等を利用することができる。
植物材料は、輸送の観点からは乾燥したものを用いる方が望ましいが、抽出効率が悪くなる可能性や、水溶性の成分が不溶化する可能性等があることから、湿潤状態のまま、もしくは水分を少なくする程度の必要最小限の乾燥を行ったものを用いることが好ましい。
植物材料は、抽出の効率を上げる、および溶解性の低い成分を多く抽出するという観点から、細かく粉砕したものを用いることが好ましい。粉砕の手段としては、特に限定されず、例えば、ミキサー、ミル、グラインダー、ホモジナイザー等が挙げられる。粉砕の態様も特に限定されることはないが、例えば湿潤した状態の植物材料に水もしくは溶媒を加えてミキサーなどで粉砕することがより好ましい。粉砕は、粉砕物の平均粒径が例えば1mm以下、好ましくは100μm以下になるまで行うことが好ましい。
植物材料は1種単独でもよいし、2種又は3種以上の組み合わせであってもよい。
植物材料の抽出溶媒は、植物内のポリフェノールや複素環含有化合物等を抽出することができる限り特に限定されない。抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、アセトン、トルエン等を挙げることができる。ポリフェノールや含窒素複素環化合物をより効率的に抽出できるという観点から、抽出溶媒は、アルコール(特にエタノール)、アセトン等が好ましく挙げられる。
抽出溶媒は1種単独でもよいし、2種又は3種以上の組み合わせであってもよい。混合溶媒である場合は、完全な混合状態であってもよく、分液した状態であってもよい。また、例えば、水と有機溶媒との混合溶媒である場合、ポリフェノールや含窒素複素環化合物をより効率的に抽出できるという観点から、有機溶媒の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であることができる。
抽出方法は、植物内のポリフェノールや複素環含有化合物等を抽出することができる限り特に限定されない。例えば、植物材料を抽出溶媒に浸漬して放置(又は撹拌)する方法が挙げられる。
抽出時間は、植物内のポリフェノールや複素環含有化合物等を抽出することができる限り特に限定されない。例えば、1分間〜24時間程度であることができる。より長く設定することにより、植物成分がより多く抽出されるが、抽出効率が低くなり得る。よって、抽出効率の観点から、好ましくは1分間〜3時間程度、より好ましくは1分間〜30分間程度であることができる。
抽出温度は、植物内のポリフェノールや複素環含有化合物等を抽出することができる限り特に限定されず、例えば、常温〜100℃程度の温度を採用することができる。
得られた抽出液は、そのまま植物抽出物として用いてもよいし、乾燥、濃縮、若しくは希釈したものを植物抽出物として用いてもよい。輸送、保存の観点から、乾燥したものが好ましいが、乾燥温度が高い場合は高分子化して水溶性が低下する恐れがある。よって、乾燥手段は、減圧乾燥やスプレードライ等の瞬間的に乾燥できる手段が望ましい。
また、本発明の製造方法を溶媒として水を用いて行う場合、植物抽出物中のより多くのポリフェノールや複素環含有化合物の水溶性がより高いことが望ましい。よって、この観点からは、植物抽出物は、有機アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム、又はポリアルキレンオキシドを用いて、定法に従って水溶化処理されていることが好ましい。
上記有機アンモニウムとしては、第四級アンモニウム等の有機アンモニウムが好適に使用され、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムが好ましい。
上記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム塩が挙げられる。
上記ポリアルキレンオキシドとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
本発明において、超音波処理及び/又は加圧処理を行う際の系中における植物抽出物の含有量は、特に制限されないが、植物抽出物の乾燥重量換算で、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜25重量%がより好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。一方、本発明において、処理前に投入する植物抽出物の含有量は、層状構造を有する炭素質材料100重量部に対して、植物抽出物の乾燥重量換算で、1〜100000重量部が好ましく、10〜10000重量部がより好ましい。
溶媒
本発明においては、上記のとおり、層状構造を有する炭素質材料を、植物抽出物の共存下で、特定の処理を行うが、層状構造を有する炭素質材料の薄片化効率、得られる薄片状カーボンの汎用性等の観点から、層状構造を有する炭素質材料、及び植物抽出物を含む炭素質材料分散体に対して、特定の処理を行うことが好ましい。
この炭素質材料分散体としては、分散液として形成してもよいし、基板上に塗膜として形成してもよい。
この際、分散体(分散液又は塗膜)を作製するために使用される溶媒としては、層状構造を有する炭素質材料の薄片化効率等の観点から、水を主溶媒として用いることが好ましい。
分散体中の水の含有量は、特に制限されないが、層状構造を有する炭素質材料の薄片化効率等の観点から、70重量%以上(70〜100重量%)が好ましく、75〜99重量%がより好ましい。
なお、本発明において、溶媒としては、水のみを使用してもよく、有機溶媒は必ずしも使用しなくてもよいが、植物抽出物中の難水溶性成分の水への溶解性をより向上させるために、メタノール、エタノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール;エチレングリコール等のグリコール;グリセリン;2−メトキシエタノール等の有機溶媒を使用してもよい。
使用する溶媒中の有機溶媒の含有量は、層状構造を有する炭素質材料の薄片化効率等の観点から、50重量%以下(0〜50重量%)が好ましく、0〜30重量%がより好ましい。
本発明において、溶媒を使用した炭素質材料分散体を用いて特定の処理を行う場合、炭素質材料分散体中の溶媒の総量(植物抽出物中の液体成分、及びそれ以外の溶媒の総量)は、特に制限されないが、層状構造を有する炭素質材料の薄片化効率等の観点から、60〜99.9998重量%が好ましく、65〜99.998重量%がより好ましく、75〜99.98重量%がさらに好ましい。
本発明において、溶媒を使用した炭素質材料分散体を用いて特定の処理を行う場合、炭素質材料分散体は、植物抽出物分散体に層状構造を有する炭素質材料を投入してもよいし、層状構造を有する炭素質材料分散体に植物抽出物を投入してもよい。また、溶媒中に、層状構造を有する炭素質材料及び植物抽出物を同時に投入してもよい。
他の成分
本発明において、特定の処理を行う際には、層状構造を有する炭素質材料は、植物抽出物以外にも、他の成分と共存させてもよい。つまり、特定の処理を行う前の炭素質材料分散体には、他の成分を含ませてもよい。これにより、最終的に得られる薄片状カーボン分散体や薄片状カーボン組成物中にも、これら他の成分を含ませることができる。このような他の成分としては、カーボンファイバー(特に繊維径500nm以下のカーボンナノファイバー)、活性炭、カーボンブラック(アセチレンブラック、オイルファーネスブラック等;特に導電性が高く、比表面積が大きいケッチェンブラック)、ガラス状カーボン、カーボンマイクロコイル、フラーレン、バイオマス系炭素材料(バガス、ソルガム、木くず、おがくず、竹、木皮、稲ワラ、籾殻、おからかす、米糠、パルプくず等を原料としたもの;リグニンから製造したカーボンファイバー等)を、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
処理
本発明では、上記のとおり、層状構造を有する炭素質材料を、植物抽出物の共存下で、特定の加圧処理及び/又は特定の超音波分散処理を行う。なお、炭素質材料分散体を使用する場合には、炭素質材料分散体に対して、特定の加圧処理及び/又は特定の超音波分散処理を行う。
加圧処理を施すことにより、層状構造を有する炭素質材料の微粒化が起こるために、条件によってはグラフェン構造を維持できない可能性もあるが、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を効率よく行うことができ、処理時間を低減することができる。このような加圧処理を施す際の加圧レベルは、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を十分に行うことができるものであれば特に制限はないが、30MPa以上、好ましくは50〜400MPa、より好ましくは100〜300MPaである。このような加圧処理は、高圧分散装置等を用いて行い得る。
このような加圧により、例えば、
(i)2個以上の前記炭素質材料分散体同士を衝突させること、
(ii)前記炭素質材料分散体と金属又はセラミックス材料とを衝突させること、
(iii)前記炭素質材料分散体を断面積1cm以下の空間を通過させること
等の処理が行われることが好ましい。
上記(i)及び(ii)によれば、加圧条件をより強くすることが可能であり、層状構造を有する炭素質材料の薄片化をより効率よく行うことができ、処理時間をより低減することができる。また、上記(iii)によれば、グラフェン構造をより維持しつつ、層状構造を有する炭素質材料の薄片化をより適切に行うことができる。この加圧操作を1回以上、好ましくは10回以上行えばよい。
加圧温度は特に制限はなく、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を十分に行うことができる温度とすればよく、0〜100℃、特に20〜95℃とし得る。
超音波分散処理を施すことにより、グラフェン構造をより維持しつつ、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を徐々に行うことができる。後述するように、超音波分散処理は、前記加圧処理の前処理として行ってもよい。このような超音波分散処理を施す際の出力は特に制限はないが、層状構造を有する炭素質材料の薄片化の観点から、通常行われる超音波分散処理(40〜50W程度)よりも強力なものとすることが好ましい。具体的には、超音波分散処理の出力は、100W以上、好ましくは300〜20000W、より好ましくは400〜18000Wである。
超音波分散温度は特に制限はなく、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を十分に行うことができる温度とすればよく、0〜80℃、特に10〜70℃とし得る。超音波分散時間は特に制限はなく、層状構造を有する炭素質材料の薄片化を十分に行うことができる時間とすればよく、1〜600分、特に3〜120分とし得る。
なお、前記加圧処理及び超音波分散処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行ってもよい。特に、加圧処理を行う際には、予備処理(前処理)として、後述の超音波分散処理を行い、層状構造を有する炭素質材料の微粒化を行っておくことが好ましい。
上記(i)及び(ii)によれば、加圧条件をより強くすることが可能であり、層状構造を有する炭素質材料の薄片化をより効率よく行うことができ、処理時間をより低減することができる。また、上記(iii)によれば、グラフェン構造をより維持しつつ、層状構造を有する炭素質材料の薄片化をより適切に行うことができる。
なお、本発明において、層状構造を有する炭素質材料として、酸化黒鉛を使用する場合には、上記加圧処理及び/又は超音波分散処理を施した分散体中には、薄片状カーボンの酸化物として存在している。このため、層状構造を有する炭素質材料として、酸化黒鉛を使用する場合には、後処理として還元処理を施すことが好ましい。還元処理としては、化学還元、電気化学還元等、種々の方法が採用できるが、化学還元が好ましい。なかでも、ヒドラジン、水素化ホウ素Na等のような還元剤による化学還元が好ましい。還元剤量は、薄片状カーボンの酸化物100重量部に対して、1〜1000重量部が好ましく、10〜500重量部がより好ましく、50〜300重量部がさらに好ましい。また、還元時に加熱を行うとより還元しやすくなる。加熱温度は、40〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、60〜120℃がさらに好ましい。還元時間は10分〜64時間が好ましく、30分〜48時間がより好ましく、1〜24時間がさらに好ましい。ただし、グラフェン構造が過度に破壊されない程度とすることが好ましい。
2.薄片状カーボン分散体
上記した本発明の製造方法によれば、所望の薄片状カーボンが得られる。特に、本発明の製造方法によれば、所望の薄片状カーボンが分散した状態で存在する薄片状カーボン分散体が得られる。
このようにして得られる薄片状カーボンは、薄いほうが諸物性に優れるため好ましいが、厚みが10nm以下、特に0.3〜5nmの薄片状カーボンが得られ得る。厚みが非常に大きい薄片状カーボンが得られることもあるが、多数の薄片状カーボンの厚みは上記範囲内である。
このようにして得られる薄片状カーボンは、薄いほうが諸物性に優れるため好ましいが、10層以下(つまり1〜10層)のグラフェンが積層した層状構造を有する薄片状カーボンが得られ得る。積層数が非常に大きい薄片状カーボンが得られることもあるが、多数の薄片状カーボンの積層数は上記範囲内である。このような薄片状カーボンは、多くの凸角と凹角をもつ平面形状をしているため、その大きさは一概には規定できない。本明細書では、一枚の薄片状カーボンにおいて最も離れている凸角間の距離をその薄片状カーボンの大きさとする。
このような薄片状カーボンとしては、大きさが200nm以上、好ましくは300nm以上、より好ましくは500nm以上のものが得られ得る。このような大きさの薄片状カーボンは、十分な導電性が得られ得る。なお、薄片状カーボンの大きさは、大きい方が電気的物性等の諸物性が優れていることが知られており好ましいため、大きさの上限は限定されない。また、薄片状カーボンの大きさは、顕微鏡(レーザー顕微鏡等)観察により測定するものとする。
本発明の製造方法によれば、薄片状カーボンは、薄片状カーボン分散体として得られ得る。本発明の製造方法では、植物抽出物を含んでいるため、薄片状カーボン分散体においても、植物抽出物が含まれている。この植物抽出物は、薄片状カーボン表面に吸着して溶媒中で薄片状カーボンを高濃度に孤立分散させることも可能であるため、薄片状カーボン分散体においては分散剤としても機能する。また、前記植物抽出物は市販品を用いることができ、コスト及び分散性の両方で従来品より優位性がある。さらに、この植物抽出物は、薄片状カーボン表面に残存しても十分な導電性を維持することができ、また、この植物抽出物を薄片状カーボンから容易に除去することができるという優位性もある。
また、従来の酸化処理及び還元処理を行う方法においては、還元処理の際にプラスチック基板が加水分解されること、還元処理を施すと薄片状カーボンが凝集するため分散体として存在し得ないこと等から、プラスチック基板上に薄片状カーボン分散体を形成することは不可能であったが、本発明においては、上記植物抽出物を含ませつつ特定の処理を行うことで、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック基板が加水分解を受けることなく、薄片状カーボン分散体を基板上に形成することも可能である。また、上記のとおり、この薄片状カーボン分散体から薄片状カーボンの分離・精製が容易であり、他材料に薄片状カーボンを均一混合することも可能であるため、薄片状カーボンを含むナノコンポジット等へ適用できる。さらに、薄片状カーボン分散体の乾燥物である薄片状カーボン組成物は、植物抽出物を含んでいても、導電性等の優れた諸物性を有するうえに、残存する植物抽出物を容易に除去できるため、導電材料、伝熱材料、トランジスタ、キャパシタ等の蓄電デバイス、センサー、圧電材料、抗菌材料、ろ過材料、樹脂添加剤、光学材料等のさまざまな用途に適用することができる。
3.薄片状カーボン組成物及び薄片状カーボン
本発明において、薄片状カーボン組成物は、上記薄片状カーボン分散体の乾燥物であり、薄片状カーボンと植物抽出物とを含んでいる。このような薄片状カーボン組成物の形状としては、特に制限はないが、塗膜、シート、塊状体等を挙げることができる。
乾燥物を得るためには、薄片状カーボン分散体の乾燥の他、基板上に薄片状カーボン分散体をスピンコートや塗布後に乾燥する方法、通常の固液分離により薄片状カーボン組成物を回収する方法等により実施することができる。この分離を行う方法としては、例えば、通常の固液分離に使用されている方法、例えば、濾紙、ガラスフィルター等を用いて濾過する方法;遠心分離後に濾過する方法;減圧濾過器を使用する方法を例示できる。次に、乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、温風乾燥機等を用いて50〜200℃程度で1〜24時間程度乾燥させる方法を例示できる。
このようにして得られる薄片状カーボン組成物は、十分な導電性を有するだけではなく、優れたガスバリア性も有する
本発明において、薄片状カーボン組成物は、薄片状カーボン表面に植物抽出物が残存していても十分な電気伝導性等の諸物性を有し得るが、必要に応じて、当該植物抽出物を除去することができる。具体的には、植物抽出物は、薄片状カーボン組成物を水、有機溶媒等で洗浄することにより除去することができる。洗浄処理は水及び有機溶媒以外にも、希酸又は希アルカリで洗浄することによっても除去できる。
従来の分散剤は、いわゆる洗剤に使われる界面活性剤のタイプが多く、これらは分散剤分子と薄片状カーボンとの疎水性相互作用を利用して吸着していると考えられ、また分子量が比較的大きいため、その吸着力も大きいと考えられる。他方、本発明で用いる植物抽出物中のポリフェノールや複素環含有化合物は薄片状カーボンとπ−π相互作用を利用して吸着しているため、水性媒体中でしか吸着を維持できず、また分子量が小さいため従来品と比べて吸着力も弱い。よって、本発明で用いる植物抽出物は従来品よりも薄片状カーボン組成物から除去し易いという利点がある。
植物抽出物を除去するための洗浄は、薄片状カーボン組成物と洗浄液とを接触させることにより行うことができる。洗浄液としては、植物抽出物を溶解できるものであれば、水、各種の有機溶媒等が使用できる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール(特に炭素数1〜6の低級アルコール)、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
これらの中でも、洗浄後に薄片状カーボン組成物から短時間で蒸発する有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、常圧における沸点が50〜250℃程度、特に60〜200℃程度のもの、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が例示できる。
また、上記のように、植物抽出物を除去するための洗浄を、薄片状カーボン組成物と希酸又は希アルカリとを接触させ、次いで水洗することにより行ってもよい。希酸は、0.1〜5%塩酸が好ましく、希アルカリは0.1〜3%アンモニア水が好ましい。
洗浄操作は、洗浄液と薄片状カーボン組成物とを接触させればよい。例えば、薄片状カーボン分散体から回収された薄片状カーボン組成物を、洗浄液中に室温で静かに浸漬させるのが好ましい。浸漬時間は、薄片状カーボン組成物の形状を維持するために、30分以内が好ましく、20分以内がより好ましい。
洗浄液の使用量は、洗浄を行うに有効な量であれば特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、薄片状カーボン組成物100重量部に対して、洗浄液を100〜100000重量部程度、特に1000〜5000重量部程度使用すると良好な結果が得られる。
このようにして、薄片状カーボンを単離することができるが、この際得られる薄片状カーボンは、上記したような特徴を有するものである。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造例1
茶葉に90℃の湯を注ぎ3時間浸漬したのち、抽出液を除去した。湿潤した茶葉58gに水を600g加え、ミキサーで1分間粉砕した。その液を18890gで10分遠心分離した。上清を親水化PTFEろ紙を用いて減圧ろ過した。さらに、遠心の沈殿物に30〜60g程度の水を加えて混合し、上清と同様に減圧ろ過した。その結果、ろ液として、緑色の液580g(固形分濃度0.4%)を得た。この溶液を濃縮して固形分濃度1%の溶液を作製した(分散剤1とする)。
ろ過で得られた残渣の重量は67gであり、粉砕により比表面積が増えた分、吸着する水が増えたので、大幅に増加していた。この残渣にエタノール400gを加えて常温で1時間撹拌を行った。減圧ろ過を行ったところ、洗浄に使用したエタノールも含めて、濃緑色の透明な液420g(固形分濃度0.4%)と残渣40gが得られた。この溶液を濃縮して、水と溶媒置換を行い、固形分濃度1%の溶液を作製した(分散剤2とする)。
製造例2
茶葉に90℃の湯を注ぎ1時間浸漬したのち、抽出液を除去した。湿潤した茶葉43gにエタノールを400g加え、ミキサーで1分間粉砕した。その液を減圧ろ過することにより、濃緑色の透明な液450g(固形分濃度0.9%)と残渣26gが得られた。この溶液を濃縮し、水と溶媒置換を行い、固形分濃度1%の溶液を作製した(分散剤3とする)。
ろ過で得られた残渣に、アセトン100gを加え、50℃で30分保持したのち、減圧ろ過を行ったところ、洗浄に使用したアセトンを含めて緑色の透明な液127g(固形分濃度0.2%)と残渣9gが得られた。この溶媒を一旦乾燥し、再度水を加えたところ全く溶解しなかったが、さらにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を滴下したところ、固形分が溶解し、茶色の透明の水溶液が得られた。濃度は調整せず、重量を100gに調整した(分散剤4とする)。
製造例3
ペーパードリップ後に得られた残渣を常温乾燥し、コーヒー抽出残渣28gを得た。これにアセトンを100g加え、50℃で1時間抽出を行った。その後、減圧ろ過を行った結果、濃褐色の液90g(固形分濃度2.0%)が得られた。これに水を加え、濃縮してアセトン分を除去すると、不溶分が発生し白濁した。この不均一な液に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を、固形分が溶解し茶色の透明の水溶液が得られるまで滴下し、最終的に固形分濃度を1%に調整した(分散剤5とする)。
製造例4
ペーパードリップ後に得られた残渣を常温乾燥し、コーヒー抽出残渣59gを得た。これにエタノールを200g加え、70℃に昇温し1時間抽出を行った。その後、減圧ろ過を行った結果、濃褐色の液160g(固形分濃度1.4%)が得られた。この溶液に水を加え、濃縮してエタノール分を除去したところ白濁した。この不均一な液に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を、茶色の透明な水溶液が得られるまで滴下し、最終的に固形分濃度を1%に調整した(分散剤6とする)。
実施例1
100gの分散剤1に0.01gの膨張黒鉛(伊藤黒鉛製)を加えた。これを、超音波分散装置を用いて、出力約400Wで、氷冷しながら30分間分散処理した。その結果、均一な分散液が得られた。分散液を導電ガラスに塗布し、SEMで観察したところ、薄片状の炭素(厚み10nm以下、3〜20層程度)が観察された。この観察像を図1に示す。
実施例2
100gの分散剤1に0.01gの膨張黒鉛(伊藤黒鉛製)を加えた。これを、超音波分散装置を用いて、出力約400Wで、氷冷しながら5分間分散処理した。さらに、高圧分散装置を用いて、処理圧力約250MPaで偏心状態のセラミックボールに衝突させる分散処理を40回行った。その結果、均一な分散液が得られた。これは、1日放置した後でも分散状態を維持していた。また、得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEM、TEM、およびラマン分光で分析したところ、薄片状(主に数層程度)の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例3
分散剤1を分散剤2に変える以外は、実施例2と同様に実験を行った。得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例4
分散剤1を分散剤3に変える以外は、実施例2と同様に実験を行った。得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例5
分散剤1を分散剤4に変え、膨張黒鉛量を0.003gとする以外は、実施例2と同様に実験を行った。得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例6
分散剤1を分散剤5に変える以外は、実施例2と同様に実験を行った。得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例7
分散剤1を分散剤6に変える以外は、実施例2と同様に実験を行った。得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み5nm以下、2〜10層程度)が観察された。
実施例8
100gの分散剤1に0.01gの天然黒鉛(和光純薬製)を加えた。600Wの超音波分散装置を用いて、出力約400Wで、氷冷しながら5分間分散処理した。さらに、高圧分散装置を用いて、処理圧力約250MPaで偏心状態のセラミックボールに衝突させる分散処理を100回相当分行った。その結果、均一な分散液が得られた。これは、1日放置した後でも分散状態を維持していた。また、得られた分散液をろ過し、アセトンで洗浄して分散剤成分を除去し、SEMで分析したところ、薄片状の炭素(厚み7nm以下、2〜15層程度)が観察された。

Claims (12)

  1. 薄片状カーボンの製造方法であって、
    層状構造を有する炭素質材料を、植物抽出物の共存下で、
    (1)30MPa以上の加圧、及び
    (2)100W以上の超音波分散処理
    の少なくとも1つの処理を行い、
    前記植物抽出物が植物から抽出されるポリフェノール、及び/又は複素環含有化合物を含む、製造方法。
  2. 層状構造を有する炭素質材料、前記植物抽出物、及び溶媒を含有する炭素質材料分散体に対して、
    (1)30MPa以上の加圧、及び
    (2)100W以上の超音波分散処理
    の少なくとも1つの処理を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記溶媒が水を含有し、且つ、該水の含有量が、前記溶媒中の70重量%以上である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記複素環含有化合物が、テトラピロール環、ピロール環、ピラジン環、ピリジン環、及びキサンチン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を分子内に含有する化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記植物抽出物が、植物を水で抽出処理して得られた抽出残渣を、溶媒で抽出して得られた抽出物である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記溶媒が有機溶媒を50重量%以上含有する、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記抽出物が、有機アンモニウム、アルカリ金属、アンモニウム、及びポリアルキレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種で処理されている、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記(1)の加圧により、
    (i)2個以上の前記炭素質材料分散体同士を衝突させること
    (ii)前記炭素質材料分散体と金属又はセラミックス材料とを衝突させること、及び
    (iii)前記炭素質材料分散体を断面積1cm 以下の空間を通過させること
    からなる群より選択される少なくとも1種の処理が行われる、請求項2〜のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記層状構造を有する炭素質材料の含有量が10重量%以下の濃度で行われる、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  10. 薄片状カーボン分散体の製造方法であって、層状構造を有する炭素質材料、植物抽出物、及び溶媒を含有する炭素質材料分散体に対して、
    (1)30MPa以上の加圧、及び
    (2)100W以上の超音波分散処理
    の少なくとも1つの処理を行い、
    前記植物抽出物が植物から抽出されるポリフェノール、及び/又は複素環含有化合物を含む、製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法により薄片状カーボン分散体を得た後、溶媒を乾燥させることを特徴とする、薄片状カーボン及び植物抽出物を含有する薄片状カーボン組成物の製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法により得られた薄片状カーボン組成物を水又は有機溶媒で洗浄して植物抽出物を除去することを特徴とする、薄片状カーボンの製造方法。
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