以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行制御装置を、車両に搭載された走行制御システムに適用した場合を例にして説明する。本発明の走行制御装置の実施の形態は限定されず、車両側と情報の授受が可能な携帯端末装置に適用することもできる。走行制御装置、走行制御システム、及び携帯端末装置は、いずれも演算処理を実行するコンピュータである。
図1は、走行制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の走行制御システム1は、車両に搭載され、走行制御装置100と車載装置200とを備える。
本実施形態の走行制御装置100は、自車両が走行している車線を認識し、車線のレーンマーカの位置と自車両の位置とが所定の関係を維持するように、自車両の動きを制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。本実施形態の走行制御装置100は車線の中央を自車両が走行するように、自車両の動きを制御する。走行制御装置100は、車線のレーンマーカから自車両までの路幅方向に沿う距離が所定値域となるように、自車両の動きを制御してもよい。
走行制御装置100は通信装置20を有し、車載装置200は通信装置40を有し、両装置は有線通信又は無線通信により互いに情報の授受を行う。
まず、車載装置200について説明する。
本実施形態の車載装置200は、検出装置50と、センサ60と、車両コントローラ70と、駆動装置80と、操舵装置90と、出力装置110と、ナビゲーション装置120とを備える。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
以下、車載装置200を構成する各装置についてそれぞれ説明する。
検出装置50は、車両が回避するべき回避対象の存在及びその存在位置を検出する。特に限定されないが、本実施形態の検出装置50はカメラ51を含む。本実施形態のカメラ51は、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラである。カメラ51は自車両の所定の位置に設置され、自車両の周囲を撮像し、自車両の周囲に存在する回避対象を含む画像データを取得する。
検出装置50は、取得した画像データを処理し、自車両に対する回避対象の位置に基づいて、自車両から回避対象までの距離を算出する、検出装置50は、回避対象の位置の経時的な変化から自車両と回避対象の相対速度、自車両と回避対象の相対加速度を対象情報として算出する。画像データに基づく自車両と他車両との位置関係の導出処理、その経時的な変化量に基づく速度情報の導出処理については、本願出願時に知られている手法を適宜に用いることができる。
また、検出装置50は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて回避対象の種別を識別してもよい。検出装置50は、パターンマッチング技術などを用いて、画像データに含まれる回避対象が、車両であるか、歩行者であるか、標識であるか否かを識別する。また、検出装置50は、画像データから対象物の像を抽出し、その像の大きさや形状から対象物の具体的な種別(四輪車、二輪車、バス、トラック、工事車両など)や、車種(小型車、大型車)を識別できる。さらに、検出装置50は、画像データに含まれるナンバープレートに表記された識別子から、その車両の種別、車種を識別できる。回避対象の各種別と大きさは予め対応づけ、その情報を参照して回避対象の大きさを求めてもよい。この識別情報は、対象領域の設定処理において用いることができる。
本実施形態の検出装置50は、自車両が走行するレーンを規定するレーンマーカを撮像画像から検出する。本実施形態におけるレーンマーカは、レーンを規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、レーンの間に存在する植栽であってもよいし、レーンの路肩側に存在するガードレール、縁石、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、レーンの路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの不動の物体であってもよい。
レーンマーカの検出手法は、特に限定されず、出願時に知られた手法を適宜に用いることができる。本実施形態の検出装置50は、路面に描かれたレーンマーカの境界を、路面との明度差が生じるエッジとして検出する。前方路面の撮像画像からレーンの延在方向に沿うエッジを抽出し、エッジの連続性、エッジの方向、連続するエッジの長さなどからレーンマーカを検出する。
ちなみに、一般に、レーンマーカはレーンの延在方向に沿って規則的に描かれるので、過去に検出されたレーンマーカの位置から、将来検出されるであろうレーンマーカの位置を予測できる。検出装置50は、予測されたレーンマーカの検出領域を探索領域として設定する。検出装置50は、設定された各探索領域において、レーンマーカを検出するための評価値を取得する。
たとえば、検出装置50は、所定の明度差を示すエッジが抽出できた場合、所定の明度差を示すエッジの存在率が所定値以上である場合、エッジが所定の連続性を示す場合、エッジの方向と予測されるレーンマーカの方向との差が所定値未満である場合、連続性を示すエッジの長さが所定値以上である場合など、所定の一つの評価項目について評価値が基準を満たした場合、もしくは複数の評価項目の評価値を総合的に集計し、基準値を満たせば、その領域においてレーンマーカが良好に検出できたと判断する。他方、検出装置50は、所定の明度差を示すエッジが抽出できなかった場合、所定の明度差を示すエッジの存在率が所定値未満である場合、エッジが所定の連続性を示さない場合、エッジの方向と予測されるレーンマーカの方向との差が所定値以上である場合、連続性を示すエッジの長さが所定値未満である場合など、所定の一つの評価項目について評価値が準を満たさない場合、もしくは複数の評価項目の評価値を総合的に集計し、これらの評価値が基準値を満たさなければ、レーンマーカの位置の認識に対する確度(正確性)が低く、その領域においてレーンマーカが良好に検出できなかったと判断する。レーンマーカが良好に検出できた場合と良好に検出できなかった場合の評価の基準値は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
レーンマーカが、植栽、道路構造物、不動の物体である場合には、撮像画像にから抽出された特徴点をパターンマッチングすることにより、レーンマーカの位置を検出する。この場合の評価値として、パターンマッチング結果などを用いることができる。
検出装置50は、レーンマーカの探索領域の位置と、評価結果とを対応づけて、後述する走行制御装置100の制御装置10へ送出する。検出装置50は、レーンマーカが検出できたか否かの結果を制御装置10へ送出してもよいし、レーンマーカを検出するために用いられる評価値を制御装置10へ送出してもよい。評価値を取得した制御装置10は、評価値に基づいて、レーンマーカが検出できたか否かの判断を行ってもよい。
なお、本実施形態の検出装置50はレーダー装置52を用いてもよい。レーダー装置52としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。本実施形態の検出装置50は、複数のステレオカメラを用いてもよい。
回避対象の位置を含む対象情報は、走行制御装置100側へ送出される。検出装置50は、回避対象の位置の変化から求めた回避対象の速度情報、加速度情報、回避対象の種別情報、回避対象が車両である場合には車種などの情報を対象情報に含めて、走行制御装置100側へ送出してもよい。
本実施形態における「回避対象」は、自車両が避けて走行するべき対象である。つまり、自車両は、回避対象に接近しすぎない状態を維持して走行する。検出装置50は、自車両と所定の位置関係を有する対象を回避対象として検出する。検出装置50は、自車両の走行レーン上に存在し、自車両の走行方向前方に存在する物体等であって、自車両から所定距離以内に存在するものを回避対象として検出する。
本実施形態の回避対象は、静止物と移動物を含む。静止している回避対象としては、駐車中の他車両、停車中の他車両、歩道,中央分離帯,ガードレールなどの道路構造物、標識,電柱などの道路設置物、落下物や除雪された雪などの道路の載置物など、車両の走行の障害となる物体が含まれる。移動する回避対象としては、他車両、歩行者が含まれる。他車両としては、自車両の前方を走行する他車両、自車両の前方側方を走行する他車両、後方を走行する他車両、後方側方を走行する他車両、自車両の進行方向からその自車両に接近する他車両(対向車両)が含まれる。車両としては、自転車、バイクなどの二輪車、バス,トラックなどの大型車両、トレーラ、クレーン車などの特殊車両が含まれる。さらに、回避対象としては、工事現場、路面の損傷エリア、水溜りなど、物体が存在しないものの自車両が回避すべき対象を含む。
本実施形態のセンサ60は、操舵角センサ61、車速センサ62を備える。操舵角センサ61は、自車両の操舵量、操舵速度、操舵加速度などの操舵に関する操舵情報を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。車速センサ62は、自車両の車速、加速度を検出し、車両コントローラ70、走行制御装置100へ送出する。
本実施形態の車両コントローラ70は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit, ECU)などの車載コンピュータであり、車両の運転状態を電子的に制御する。本実施形態の車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
本実施形態の駆動装置80は、自車両Vの駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置81などが含まれる。駆動装置80は、運転者のアクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ70又は走行制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む走行制御を実行する。駆動装置80に制御情報を送出することにより、車両の加減速を含む走行制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置80に送出される。
本実施形態の操舵装置90は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置90は、車両コントローラ70から取得した制御信号、又は運転者のステアリング操作により入力信号に基づいて車両の転回制御を実行する。車両コントローラ70は、操舵量を含む制御情報を操舵装置90に送出することにより、転回制御を実行する。また、走行制御装置100は、車両の各輪の制動量をコントロールすることにより転回制御を実行してもよい。この場合、車両コントローラ70は、各輪の制動量を含む制御情報を制動装置81へ送出することにより、車両の転回制御を実行する。
本実施形態のナビゲーション装置120は、自車両の現在位置から目的地までの経路を設定し、後述する出力装置110を介して経路案内情報を出力する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121と、道路種別、道路幅、道路形状その他の道路情報122と、道路情報122が各地点に対応づけられた地図情報123とを有する。本実施形態の位置検出装置121は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。ナビゲーション装置120は、位置検出装置121により検出された自車両の現在位置に基づいて、自車両が走行する道路リンクを特定する。本実施形態の道路情報122は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、追い越しの可否(隣接レーンへの進入の可否)その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。そして、ナビゲーション装置120は、道路情報122を参照し、自車両が走行する道路リンクが属する道路に関する情報を取得し、走行制御装置100へ送出する。自車両が走行する道路種別、道路幅、道路形状は、走行制御処理において、自車両が走行する目標経路RTの算出に用いられる。なお、本実施形態における目標経路RTは、自車両V1が将来通過する一つ又は複数の地点の特定情報(座標情報)を含む。本実施形態の目標経路RTは、自車両V1の次の走行位置を示唆する一つの点を少なくとも含む。目標経路RTは、連続した線により構成されてもよいし、離散的な点により構成されてもよい。
本実施形態の出力装置110は、走行支援に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。本実施形態において、出力装置110は、対象情報に応じた情報、対象領域の位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる制御情報に応じる情報のうち、何れか一つ以上を出力する。本実施形態の出力装置110は、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を含む。車室外ランプ113は、ヘッドライト、ウィンカランプ、ブレーキランプを含む。車室内ランプ114は、インジケータの点灯表示、ディスプレイ111の点灯表示、その他ステアリングに設けられたランプや、ステアリング周囲に設置されたランプを含む。また、本実施形態の出力装置110は、通信装置40を介して、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)などの外部装置に走行支援に関する各種の情報を出力してもよい。高度道路交通システムなどの外部装置は、車両の速度、操舵情報、走行経路などを含む走行支援に関する情報を、複数の車両の交通管理に用いる。
情報の具体的な出力態様を、自車両の左側前方に回避対象としての駐車車両が存在する場合を例にして説明する。
出力装置110は、対象情報に応じた情報として、駐車車両が存在する方向や位置を自車両の乗員に提供する。ディスプレイ111は、駐車車両が存在する方向や位置を視認可能な態様で表示する。スピーカ112は「左側前方に駐車車両が存在します」といった駐車車両が存在する方向や位置を伝えるテキストを発話出力する。車室外ランプ113である左右のドアミラーに設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを自車両の乗員に知らせてもよい。車室内ランプ114であるステアリング近傍の左右に設けられたランプのうち、左側のランプのみを点滅させて、左側前方に駐車車両が存在することを乗員に知らせてもよい。
また、対象領域の位置に応じた情報として、対象領域の設定方向や設定位置を、出力装置110を介して出力してもよい。先述したように、対象領域が左側前方に設定されたことを、ディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114により乗員に知らせることができる。
本実施形態では、自車両の動きを他車両の乗員に予め知らせる観点から、対象領域の設定方向や設定位置を、車室外ランプ113を用いて外部に出力する。対象領域が設定されると、これを回避するために自車両の進行方向が変更される(操舵が行われる)。対象領域が設定されたことを外部に知らせることにより、対象領域を回避するために自車両の進行方向が変化することを、予め、他車両のドライバに予告できる。例えば、対象領域が左側前方に設定されたときに、右側のウィンカランプ(車室外ランプ113)を点灯させることにより、左側に存在する回避対象の側方を通り過ぎるために自車両が右側に移動することを外部の他車両等に知らせることができる。
さらに、目標経路の位置に応じた情報として、目標経路の形状や曲点の位置をディスプレイ111、スピーカ112により乗員に知らせることができる。ディスプレイ111は、目標経路の形状等を視認可能な線図として表示する。スピーカ112は、「前方の駐車車両を回避するので、右にハンドルを切ります」などのアナウンスを出力する。
さらにまた、目標経路上を自車両に走行させる制御情報に応じた情報として、操舵操作や加減速が実行されることをディスプレイ111、スピーカ112、車室外ランプ113、車室内ランプ114を介して、自車両の乗員又は他車両の乗員に予め知らせる。
このように、回避対象の側方を通り過ぎる際の走行制御に関する情報を出力することにより、自車両及び/又は他車両の乗員に自車両の挙動を予め知らせることができる。出力装置110は、通信装置20を介して上述した情報を高度道路交通システムの外部装置に出力してもよい。これにより、自車両の乗員及び/他車両の乗員は、走行制御される自車両の挙動に応じた対応ができる。
以下、本実施形態の走行制御装置100について説明する。
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置100は、制御装置10と、通信装置20と、出力装置30とを備える。通信装置20は、車載装置200との情報の授受を行う。出力装置30は、先述した車載装置200の出力装置110と同様の機能を有する。出力装置30として、車載装置110の出力装置110を用いてもよい。走行制御装置100が、乗員によって持ち運び可能なコンピュータである場合には、走行制御装置100は、車載装置200の車室外ランプ113、車室内ランプ114の点滅を制御する制御情報を、各装置に出力してもよい。
走行制御装置100の制御装置10は、自車両の走行制御を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、走行制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
本実施形態に係る走行制御装置100の制御装置10は、評価取得機能と、対象情報取得機能と、領域設定機能と、経路設定機能と、制御機能とを有する。本実施形態の制御装置10は、自車両の位置、速度、操舵角(転回角)等を取得する自車情報取得機能と備えてもよい。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
以下、本実施形態に係る走行制御装置100の各機能について説明する。
まず、制御装置10の評価取得機能について説明する。制御装置10は、自車両が走行するレーンを規定する一対のレーンマーカについて、各レーンマーカを検出するためのの評価値を取得する。各評価値は、自車両の走行位置又はタイミングに対応づけられている。評価値は、レーンマーカを検出するにあたり、レーンマーカが検出できたことの確からしさを示す値である。カメラ51の撮像画像に基づいてレーンマーカを検出する場合の「評価値」として、レーンマーカのエッジの輝度差、エッジの連続性、連続するエッジの長さが、レーンマーカ間の幅などの、レーンマーカを検出する際に用いられる値を用いることができる。制御装置10は、各評価値に基づいて、レーンマーカのエッジの輝度差が所定値以上であるか、エッジの連続性が所定値以上であるか、連続するエッジの長さが所定値以上であるか、レーンマーカ間の幅と道路情報122から得られる路幅との差が所定値未満か、といった観点から、レーンマーカの検出結果の確からしさを求める。
制御装置10は、予め設定された評価値のうち一つ以上の評価値について分析し、一又は複数の評価値の総合評価値が第1評価基準未満であるか否かを判断する。第1評価基準は、レーンマーカの位置の認識に対する確度(正確性)が低く、レーンマーカの検出結果を信頼できない、つまり、レーンマーカが検出されなかったか否かを判断するための閾値である。制御装置10は、一又は複数の評価値の総合評価値が第2評価基準以上であるか否かを判断する。第2評価基準は、レーンマーカの位置の認識に対する確度(正確性)が高く、レーンマーカの検出結果を信頼できる、つまり、レーンマーカが検出できたことを判断するための閾値である。第2評価基準は第1評価基準以上の値である。第2評価基準は第1評価基準と同じ値としてもよい。第2評価基準が第1評価基準と同じ値である場合には、本明細書における第2評価基準を第1評価基準と読み替えればよい。
第1評価基準の値、第2評価基準の値は、求められるレーンマーカの検出結果の精度に応じて適宜に設定できる。第1評価基準の値、第2評価基準の値は、一定ではなく、走行する道路の種別など場所に応じて設定してもよいし、走行するエリアが郊外であるか市街地であるかに応じて設定してもよし、時間帯に応じて設定してもよい。
レーンマーカを検出するための評価値は、車載装置200の検出装置50が求め、制御装置10が取得してもよいし、制御装置10が求めてもよい。評価値が第1評価基準値未満であるか否かについても、車載装置200の検出装置50が求め、制御装置10が取得してもよいし、制御装置10が求めてもよい。
レーダ装置52がレーンマーカを検出する際にも、同様に、レーダ装置52が受信する信号の強度、パターン、受信信号の連続性、検出されたレーンマーカ同士の位置関係などのレーンマーカを検出する際に用いる値を用いて、レーンマーカの検出結果の確からしさとしての評価値を求める。
レーンマーカを検出するための評価値、この評価値が第1評価基準未満であること、評価値が第2評価基準以上であることの評価結果は、後述する対象領域の設定処理において用いられる。
制御装置10の対象情報取得機能について説明する。制御装置10は、自車両が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。回避対象は自車両と所定の位置関係を有する。制御装置10は、検出装置50により検出された回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報は回避対象の相対位置、相対速度、相対加速度を含む。
回避対象が他車両であり、この他車両と自車両とが車車間通信が可能であれば、自車両の制御装置10は、他車両の車速センサが検出した他車両の車速、加速度を対象情報として取得してもよい。もちろん、制御装置10は、高度道路交通システムの外部装置から他車両の位置、速度、加速度を含む対象情報を取得することもできる。
制御装置10の自車情報取得機能について説明する。制御装置10は、自車両の位置を含む自車情報を取得する。自車両の位置は、ナビゲーション装置120の位置検出装置121により取得できる。自車情報は、自車両の車速、加速度を含む。制御装置10は、自車両の速度を車速センサ62から取得する。自車両の速度は、自車両の位置の経時的な変化に基づいて取得することもできる。自車両の加速度は、自車両の速度から求めることができる。自車情報は、自車両の現在位置と車速から求められた、将来の時刻における自車両の位置を含む。将来の時刻における自車両の位置に基づいて、将来の時刻における自車両と回避対象との位置関係を求めることができる。
制御装置10の領域設定機能について説明する。制御装置10は、取得した対象情報に含まれる回避対象の位置に基づいて、対象領域を設定する。回避対象は、自車両の周囲に存在し、自車両が回避するべき立体物である。
図2は、対象領域Rの設定手法の一例を示す図である。図2に示す例において、自車両の走行方向Vd1は、図中+y方向である。同図において、自車両が走行する走行レーンLn1の延在方向も、図中+y方向である。
図2は、自車両V1の走行レーンLn1の左側の路肩側に駐車された他車両V2が検出された状態を上方から見た図である。図2は、自車両V1は、その後方から他車両V2に接近し、他車両V2(回避対象)の側方を通り、レーンLn1内を走行方向Vd1に向かって走行する場面を示す。回避対象としての他車両V2は自車両V1の前方に存在する。検出された他車両V2は、自車両V1が走行する走行レーンLn1に存在し、自車両V1の直進を妨げるため、自車両V1が回避するべき回避対象である。
本例において、制御装置10は、自車両V1が走行方向Vd1に沿って回避対象V2に接近するときに、自車両の位置と回避対象の位置との関係に基づいて対象領域R0を設定する(以下、R1,R2を含めRと総称することもある)。対象領域Rは、自車両V1と回避対象V1との距離が所定値X1未満となる接近状態又は接触状態が生じることを避ける観点から設定されてもよいし、自車両V1と回避対象V1との距離を所定値X2以上に保つ観点から設定されてもよい。
制御装置10は、他車両V2を含む所定の範囲に対象領域Rを設定する。制御装置10は、他車両V2などの回避対象の位置に基づいて、対象領域Rを設定する。対象領域Rの設定において用いられる「回避対象の位置」は、予め定義できる。回避対象が他車両V2である場合には、他車両V2の重心位置、中央位置、他車両V2のフロント部分の何れかの位置、他車両V2のリア部分の何れかの位置、他車両V2の左右ドア部分の何れかの位置を、「他車両V2の位置」として定義できる。制御装置10は、「回避対象の位置」を基準として、対象領域Rを設定する。本図では、対象領域R0を例にして説明するが、後述する対象領域R1,R2についても同じである。
本実施形態において、対象領域R0は、他車両V2の外形に沿った形状としてもよいし、他車両V2を内包する形状としてもよい。また、制御装置10は、対象領域R0の境界を、他車両V2の外形に沿った形状としてもよいし、他車両V2を包含する円形、楕円形、矩形、多角形としてもよい。また、対象領域R0は、対象領域R0の境界を他車両V2の表面(外縁)から所定距離(A)未満として、対象領域R0の面積を小さく設定してもよいし、対象領域R0の境界を、他車両V2から離隔させた所定距離B(B>A)以上として、対象領域R0の面積を大きく設定してもよい。
図2に示す対象領域R0は、他車両V2を包含する矩形の形状で定義されている。図2に示すように、自車両の走行方向Vd1を前方とし、その逆方向を後方として定義した場合において、対象領域R0はその前後に前後端部RL1,RL2を有する。この前後端部RL1,RL2は、自車両の走行レーンLn1の延在方向(+y)に沿う対象領域R0の長さを規定する端線である。図2に示す対象領域R0の走行レーンLn1の延在方向(+y)に沿う長さは、前後端部RL1の(y1)とRL2(y2)の間の距離であるL0である。前後端部RL1,RL2のうち、対象領域R0に接近する自車両V1から見て手前側(上流側)に位置する前後端部を第1端部RL1とする。一方、前後端部RL1,RL2のうち、回避対象に接近又はその側方を通過する自車両V1から見て奥手側(下流側)に位置する前後端部を第2端部RL2とする。第1端部RL1及び第2端部RL2は、他車両V2の位置(基準位置)V20からの距離により設定される。第1端部RL1と第2端部RL2は、対象領域R0の境界上に位置する。
図2に示すように、自車両の車幅方向をVw1(図中X方向)として定義した場合において、対象領域R0はその左右のそれぞれに左右端部RW1,RW2を有する。この左右端部RW1,RW2は、自車両V1との車幅方向に沿う距離を規定する端線(端部)である。また、左右端部RW1,RW2は、自車両の走行レーンLn1の路幅方向(X)に沿う対象領域の長さ(幅)を規定する端線である。図2に示す対象領域R0の路幅方向に(X)沿う長さは、左端部RW1(レーンマーカx1側の端部)と右端部RW2(レーンマーカx2側の端部)との間の距離W0である。
自車両が車幅方向に沿って回避対象V2に接近するときに、対象領域R0の左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方に位置する左右端部を第1横端部RW1とする。一方、左右端部RW1,RW2のうち、自車両V1から見てその自車両V1の側方とは反対の側方(路肩側)に位置する左右端部を第2横端部RW2とする。第1横端部RW1及び第2横端部RW2は、他車両V2の位置(基準位置)V20からの距離により設定できる。第1横端部RW1と第2横端部RW2は、対象領域R0の境界上に位置する。
図2に示すように、自車両V1の走行レーンLn1の対向車線Ln2を対向走行する対向車両V3が存在する場合には、制御装置10は対向車両V3を回避対象として検出する。同図には示さないが、制御装置10は、同様の手法で、対向車両V3を含む範囲の対象領域を設定する。
本実施形態の制御装置10は、図2に示すように、評価値が第1評価基準未満であると評価されたレーンマーカ、つまり正確に検出されなかったレーンマーカの位置に基づいて、そのレーンマーカに対応する位置に対象領域RLを設定する。
本実施形態の制御装置10は、レーンマーカの何れか一方が検出されなかった場合において、レーンマーカが検出できなかった領域を、通常時よりも注意を払うべき領域であると位置づけて、対象領域を設定する。検出されなかったレーンマーカについての対象領域RLと、他車両などの立体物についての対象領域R0とは、自車両V1が走行するレーンの右左同じ側に存在することもあるし、一方が右側に存在し、他方が左側に存在することもある。
次に、図3A〜図3Cに基づいて、本実施形態の対象領域の設定手法を説明する。図3A〜図3Cは、図2と同様に、自車両の進行方向に他車両V2が駐車している状態を上方から見た図である。
図3Aはレーンマーカの評価値が第2評価基準以上である場合に設定される対象領域R1の例を示し、図3Bはレーンマーカの評価値が第1評価基準未満である場合に設定される対象領域R2の例を示す。
図3A及び図3Bでは、自車両V1の走行方向Vd1を基準として、検出できなかったレーンマーカX10の位置とは反対側のレーンマーカX1側の位置に、回避対象としての他車両V2が存在する場合を示す。
本実施形態の制御装置10は、評価値が第1評価基準未満である、つまり、右側のレーンマーカX10が正確に検出できなかった場合には、評価値が第2評価基準以上である場合よりも、横端部RW1と回避対象との距離が短くなるように、対象領域Rを設定する。横端部RW1とは、レーンマーカX1側に存在する他車両v2(回避対象)の右側方を自車両V1が通過する際における、対象領域Rの左右端部のうち自車両V1側に位置する横端部RW1である。対象領域R2の横端部RW1の位置と回避対象である他車両V2との距離を短くすることにより、検出できなかったレーンマーカと対象領域R2との間の距離を広く確保する。
異なる観点によれば、本実施形態の制御装置10は、レーンマーカX10の評価値が第1評価基準未満である、つまり、レーンマーカX10の少なくとも一部が正確に検出できなかった場合には、自車両V1が他車両V2(回避対象)の側方を通過する際における、対象領域R2の左右端部のうちレーンマーカX10側に位置する横端部RW1と、そのレーンマーカX10との距離が長くなるように、対象領域Rを設定する。このように、対象領域R2の横端部RW1の位置をレーンマーカX10から離隔させることによって、検出されなかったレーンマーカX10と対象領域R2との間に形成される走行スペースを広く確保できる。
一部が検出されなかったレーンマーカX10と対象領域R2との間の距離を確保することにより、対象領域R2の位置に基づいて設定される目標経路も、他車両V2(回避対象)側に設定される。図3Bに示すように、レーンマーカの一部又は全部が検出されなかったときの対象領域R2の横端部RW1の位置は、図3Aに示す対象領域R1の横端部RW1aの位置よりも他車両V2に接近する方向(自車両V1の目標経路RTの反対側)へシフトしている。
図3Aに、レーンマーカが検出されているときの対象領域R1における横端部RW1の位置と、回避対象の横端部RW1側の位置V2X0との距離dW1を示す。図3Bに、レーンマーカの一部(Qで示す領域)が検出されていないときの対象領域R2における横端部RW1の位置と、回避対象の位置V2X0との距離dW2を示す。レーンマーカが検出されていないときの距離dW2は、レーンマーカが良好に検出されているときの距離dW1よりも短い。
このように、検出されなかったレーンマーカと目標経路との距離が確保されるので、自車両V1は通常よりも注意を払うべき、不検出のレーンマーカから離隔した位置を通行できる。
また、本実施形態では、レーンマーカX10の全部が良好に検出できなかった場合に、対象領域R1の横端部RW1の位置を他車両V2に近い位置にシフトするので、レーンマーカX10の検出が良好でない場合であっても、自車両V1がレーンマーカX10に接近しすぎる(所定距離以上接近する)ことを防止できる。本実施形態の走行制御装置100によれば、レーンマーカX10が正確に検出できなかった場面においても、適切な目標経路を設定し、自車両V1の走行制御を継続できる。この結果、レーンマーカの検出結果に応じて、走行制御が中断されるようなことがない。
次に、図3Cに基づいて、具体的な対象領域R0の設定手法について説明する。走行する自車両V1の目標経路RTに影響を与えるのは、対象領域R1の左右端部のうち自車両V1に隣接する横端部RW1であるため、説明の対象とする対象領域R0の横位置は、自車両V1側に位置する横端部RW1の位置である。
図3Cに示すように、対象領域Rの路肩側のレーンマーカX1からの幅がW0である場合には、対象領域Rの幅W0と自車両V1の幅VW1との和(W0+VW1)が、走行レーン幅LWよりも小さい場合に、自車両V1は回避対象である他車両V2の側方を走行できる。本例の対象領域Rの幅W0は、他車両V2の大きさを考慮して設定される。対象領域Rの幅W0は他車両V2の幅VW2と、その移動範囲等を考慮した余裕幅dw1とを加えた値とする。他車両V2の幅VW2は、撮像画像、レーダー信号などの実際の検出結果に基づいて求めてもよいし、回避対象の種別(歩行者、二輪車、四輪車)などに応じて求めてもよい。回避対象が他車両であれば、その他車両の車種(軽自動車、コンパクトカー、トラック、バスなど)に応じて求めてもよい。他車両V2の車種は、大きさ、形状などの外観の特徴、ナンバープレートの識別子に基づいて求めてもよい。また、余裕幅dは、回避対象の種別(歩行者、二輪車、四輪車)などに応じて設定できる。余裕幅dw1は、他車両V2について実際に検出された幅の長さに応じて設定してもよい。余裕幅dw1は、他車両V2の車種(軽自動車、コンパクトカー、トラック、バスなど)に応じて設定してもよい。
本実施形態では、上記条件を満たすように、対象領域Rの位置(路肩側のレーンマーカx1と自車両V1側の横端部RW1との幅方向の距離:サイドディスタンスの一態様)を算出する。対象領域Rの横端部RW1の位置は、路肩側のレーンマーカX1からの距離により定義してもよいし、対象領域Rの幅W0により定義してもよい。また、対象領域Rの横端部RW1を、レーンLn1の対向車線側のレーンマーカx10からの距離により定義してもよい。
さらに、本実施形態では、自車両V1と対象領域R0との間に最低限確保するべき安全代d1と、乗員が安心して回避対象である他車両V2の側方を通過できる余裕代d2とを考慮して、対象領域R0の横位置RW1又はその幅W0´を設定してもよい。これらd1,d2は、併せて設定されてもよいし、別々に設定されてもよい。この場合には、制御装置10は、W0+VW+(d1 and/or d2)<LWとなるように対象領域R0の幅W0を算出する。なお、走行レーン幅LWは、道路情報122に含まれる道路幅LW2とレーン数とに基づいて算出してもよいし、検出装置50の画像情報から一対のレーンの位置を検出し、画像情報に基づいてレーン幅を算出してもよい。自車両V1の幅VWは、車両コントローラ70から取得する。
対象領域R0の幅W0は、自車両V1が走行するレーンを規定する一対のレーンマーカx1,x10のいずれか一方から、対象領域R0の自車両V1側の端部RW1までの距離としてもよい。対象領域R0の自車両V1側の横端部RW1の位置は、回避対象である他車両V2の側方を走行する際の自車両V1からの距離により規定してもよい。特に限定されないが、幅W0の寸法を、他車両V2に対する自車両V1の相対速度の2乗に比例する値としてもよい。
本実施形態の制御装置10は、自車両V1が走行する走行レーンLn1以外の走行レーンLn2において、自車両V1の進行方向から自車両V1に接近する対向車両V3(回避対象)に関する対象情報を取得する。
図3Cに示すように、本実施形態では、自車両V1の走行レーンに対向する対向レーンを対向走行する対向車両V3が存在する場合には、対向車両V3を含む対象領域R3を設定する。上述した対象領域R1の設定手法と同様の手法により、対象領域R3を設定する。対象領域R3の自車両V1側の横端部RW3は、対向車両V3の位置に基づいて設定される。
本実施形態の制御装置10は、対向車両V3、他車両V2を含む複数の回避対象に関する対象情報を取得した場合には、対向車両V3に関する対象領域R3の位置と、対向車両V3以外の回避対象である他車両V2の位置に基づいて、対向車両R3以外の回避対象である他車両V2の対象領域R2を設定する。
自車両V1はレーンマーカx2を超えて走行することができないと仮定した場合を例にして説明する。この場合において、制御装置10は、W0+VW+(d1and/ord2)+dV1<LW2となるように対象領域R2の幅W0を算出する。つまりVW<LW2−(W0´+dV1)の関係が成立するときに自車両V1は駐車中の他車両V2を回避しつつ、対向する対向車両V3とすれ違うことができる。仮に、上記関係が成立しない場合には、自車両V1は、他車両V2の手前(−y側)で停車して、対向車両V3が自車両V1の横を通り過ぎるタイミングを待機する。なお、dV1は対向レーンの幅など、自車両V1が走行するときに最低限確保する幅である。
さらに、図3Cに示すように、一部又は全部が良好に検出できなかったレーンx10が存在する場合には、検出できなかったレーンマーカを含むように対象領域RLを設定する。この場合において、制御装置10は、W0+VW+(d1 and/or sd2)+d4+W4*(1/2)<LWとなるように対象領域R0の幅W0の寸法(端部間の距離)を算出する。
次に、図4に基づいて、対象領域の長さ(図中Y方向の長さ)の制御手法を説明する。図4は、自車両V1が回避対象である他車両V2に接近するときに、レーンマーカx10の一部が良好に検出されなかった場面を示す図である。
本実施形態の制御装置10は、自車両V1が回避対象である他車両V2に接近するときに、自車両V1の走行レーンを規定するレーンマーカx1,x10の少なくとも何れか一方の評価値が第1評価基準未満である場合には、評価値が第2評価基準以上である場合よりも、対象領域R2の前後端部のうち自車両V1側に位置する第1端部RL1と他車両V2(回避対象)との距離dL1が長くなるように、対象領域R2を設定する。
図4には、レーンマーカが良好に検出されなかった場合に設定される対象領域R2´を対象領域R2に重畳して示す。対象領域R2´は破線で示す領域である。図4に示すように、対象領域R2´は、対象領域R2よりも、自車両V1に近い位置に延在している。対象領域R2´の長さdL1´は、対象領域R2の長さdL1よりも長い。
本実施形態では、自車両V1の前方のレーンマーカの一部又は全部が検出できない場合には、前方のレーンマーカの全部が良好に検出された場合と対象領域R0の適切な長さが異なるという観点から、制御装置10は、レーンマーカの一部又は全部が検出できない場合には、レーンマーカの全部が良好に検出された場合よりも、自車両V1が走行するレーンの延在方向(Y方向)に沿う他車両V2から対象領域R0の第1端部RL1までの長さdL1を長く設定する。具体的に、レーンマーカの全部が良好に検出された場合には、他車両V2から第1端部RL1までの長さをdL1とし、レーンマーカの一部又は全部が良好に検出されなかった場合には、他車両V2から第1端部RL1´までの長さをdL1´としする。このときdL1´>dL1となる。
ちなみに、対象領域R0は回避対象を検出したタイミング、つまり回避のための転回のための操作(操舵操作など)が行われるよりも前のタイミングにおいて設定される。レーンマーカの検出状態を考慮せずに、画一的な手法により対象領域R0を設定すると、レーンマーカの不正確な位置に基づいて算出された目標経路RT1を変更せざるを得ない場合がある。目標経路RT1が変更されると、操舵量、操舵角、車速、加速度などが変更されるので、車両の挙動の連続性を保つことができない。このような車両の挙動は、乗員に不信感を与える場合がある。
本実施形態では、レーンマーカの検出状態を考慮して、レーンマーカのが良好に検出できなかった場合には、他車両V2から対象領域R0の自車両V1側の第1端部RL1までの長さdL1を長く設定するので、適切な対象領域R1を設定できる。この対象領域R1の境界の位置に基づいて設定された目標経路RT1によれば、他車両V2を回避するために自車両V1が転回を開始するタイミングを早めることができる(自車両V1が転回を開始する地点を上流側にシフトできる)ので、自車両の転回量、転回角の変化を緩やかにできる。また、ドライバが設定された目標経路RT1を是正する場合において、ドライバの操作を受け入れる時間を長く設定できる。
本実施形態の制御装置10は、自車両V1が走行するレーンLn1を規定する左右一対のレーンマーカx1,x10のうち、回避対象である他車両V2が存在する側の一方のレーンマーカx1のみが検出され、他方のレーンマーカx10が検出されなかった旨の評価値を取得した場合には、検出された一方のレーンマーカx1の位置から、検出されなかった他方のレーンマーカx10の位置を推測する。
検出されなかった他方のレーンマーカx10の検出手法は特に限定されないが、本実施形態では、道路情報122が備える道路幅の情報を参照し、一方のレーンマーカx1の位置に基づいて、他方のレーンマーカx10の位置を推測する。
本実施形態の制御装置10は、検出されなかった他方のレーンマーカの位置と回避対象の位置に基づいて、対象領域Rを設定する。本処理において、対象領域Rは、回避対象のレーンLn1の路幅方向に沿う大きさを考慮することが好ましい。図3Cにおいて説明したように、回避対象である他車両V2の幅VW2を考慮して、対象領域Rを定義する。
図5に基づいて、対向車両V3の位置に基づいてレーンマーカx10の位置を推測する手法を説明する。
本実施形態の制御装置10は、自車両V1が走行するレーンLn1の隣の隣接レーンLn2を走行、自車両V1に向かって接近する対向車両V3の位置を取得する。そして、制御装置10は、自車両V1が走行するレーンLn1のレーンマーカx1,x10のうち、隣接レーンLn2側のレーンマーカx10の評価値が第1評価基準未満である場合には、対向車両V3の位置に基づいて自車両V1が走行するレーンLn1と隣接レーンLn2とを区切るレーンマーカx10の位置を推測する。
本実施形態の制御装置10は、一又は複数の対向車両V3のエッジを抽出する。エッジを抽出する場所は限定されない。制御装置10は、対向車両V3のタイヤのエッジ、タイヤホイールのエッジ、ボディのエッジ、又はレーンL2の路面と対向車両V3との境界に対応するエッジを抽出する。
図5に示すように、対向車両V3が複数存在し、エッジも複数抽出された場合には、制御装置10は、自車両V1に最も近い対向車両V3のエッジを選択する。
図5に示す例では、対向車両V3a,V3b,V3cが存在する場合には、それぞれの対向車両V3についてエッジの位置P3a,P3b,P3cが得られる。このうち、自車両V1に最も近いエッジの位置P3cを、対向車両V3が走行するレーンLn2と自車両V1が走行するレーンLn1とを区切るレーンマーカx10の位置として推測する。そして、制御装置10は、推測されたレーンマーカx10の位置と回避対象である他車両V2の位置に基づいて、他車両V2の対象領域R2を設定する。
続いて、制御装置10の経路設定機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、設定された対象領域R0の境界の位置に基づいて目標経路RTを算出し、自車両V1と回避対象との距離を制御する。ここで、「対象領域R0の位置に基づいて目標経路RTを算出する」手法は限定されない。制御装置10は、対象領域R0内に自車両V1が進入しないように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域R0と自車両V1の存在領域との重複面積が所定値未満となるように目標経路RTを算出してもよいし、対象領域R0の境界線から所定距離だけ離隔した位置を目標経路RTとして算出してもよいし、対象領域R0の境界線を目標経路RTとして算出してもよい。先述したように、対象領域R0は、自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならないように、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれるように設定される。このため、目標経路RTも自車両V1と回避対象との距離が所定値未満とならない位置に、又は、自車両V1と回避対象との距離が所定閾値に保たれる位置に設定される。
制御装置10の制御機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、目標経路RT上を自車両V1に走行させる制御情報を車両側の車両コントローラ70、駆動装置80、及び操舵装置90に出力する。
制御装置10から制御情報を取得した本実施形態の車両コントローラ70は、駆動装置80及び操舵装置90を制御して、目標経路RTに沿って自車両V1を走行させる。車両コントローラ70は、検出装置50により検出された道路形状や、ナビゲーション装置120の道路情報122及び地図情報123が記憶するレーンマーカモデルを用いて、自車両が車線に対して所定の横位置を維持しながら走行するように操舵装置90の制御を行う。車両コントローラ70は、操舵角センサ61から取得した操舵角、車速センサ62から取得した車速、およびステアリングアクチュエータの電流の情報に基づいて、操舵制御量(転回制御量)を算出し、ステアリングアクチュエータに電流指令を送ることで、自車両が目標の横位置を走行するように制御を行う。なお、自車両V1の横位置を制御する方法として、上述した操舵装置90を用いる他、駆動装置80及び/又は制動装置81を用いて左右の駆動輪の回転速度差により自車両V1の走行方向(すなわち、横位置)を制御してもよい。その意味において、車両の「転回」とは、操舵装置90による場合の他、駆動装置80及び/又は制動装置81による場合も含む趣旨である。
最後に、本実施形態の制御装置10の提示機能について説明する。制御装置10は、算出された、対象情報に応じた情報、対象領域Rの位置に応じた情報、目標経路の位置に応じた情報、及び目標経路上を自車両に走行させる制御情報に応じる情報を出力装置110に送出し、上述した態様で外部に出力させる。
続いて、本実施形態の走行制御装置100の制御手順を、図6及び図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、各ステップでの処理の内容は、上述したとおりであるため、ここでは処理の流れを中心に説明する。
まず、図6に基づいて、走行制御の全体の手順について説明する。
ステップS101において、制御装置10は、少なくとも自車両V1の位置を含む自車情報を取得する。自車情報は、自車両V1の車速・加速度を含んでもよい。ステップS102において、制御装置10は、自車両V1が回避すべき回避対象の位置を含む対象情報を取得する。対象情報は、回避対象の速度・加速度を含んでもよい。
ステップS103において、制御装置10は、回避対象の検出結果を検出装置50から取得する。回避対象の検出結果は、回避対象の位置の情報を含む。ステップS104において、制御装置10は、回避対象の位置に応じて対象領域Rを設定する。対象領域Rの設定処理のサブルーチンについては、図7において説明する。
ステップS105において、制御装置10は、対象領域Rの境界の位置に基づいて目標経路RTを算出する。目標経路RTは、自車両V1が走行する一又は複数の目標座標を含む。各目標座標は、目標横位置(目標X座標)と目標縦位置(目標Y座標)とを含む。算出された一又は複数の目標座標と自車両V1の現在位置とを結ぶことにより、目標経路RTを求める。なお、ステップS105に示す目標座標の算出方法については後述する。
ステップ106において、制御装置10は、ステップS105で算出された目標座標の目標横位置を取得する。また、ステップS107において、制御装置10は、自車両V1の現在の横位置とステップS106で取得した目標横位置との比較結果に基づいて、横位置に関するフィードバックゲインを算出する。
そして、ステップS108において、制御装置10は、自車両V1の実際の横位置と、現在位置に対応する目標横位置と、ステップS107のフィードバックゲインとに基づいて、目標横位置上を自車両V1に移動させるために必要な操舵角や操舵角速度等に関する目標制御値を算出する。ステップS112において、制御装置10は、目標制御値を車載装置200に出力する。これにより、自車両V1は、目標横位置により定義される目標経路RT上を走行する。なお、ステップS105において複数の目標座標が算出された場合には、目標横位置を取得する度にステップS106〜S112の処理を繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての制御値を車載装置200に出力する。
ステップS109において、制御装置10は、ステップS105で算出された一又は複数の目標座標についての目標縦位置を取得する。また、ステップS110において、制御装置10は、自車両V1の現在の縦位置、現在位置における車速及び加減速と、現在の縦位置に対応する目標縦位置、その目標縦位置における車速及び加減速との比較結果に基づいて、縦位置に関するフィードバックゲインを算出する。そして、ステップS111において、制御装置10は、目標縦位置に応じた車速および加減速度と、ステップS110で算出された縦位置のフィードバックゲインとに基づいて、縦位置に関する目標制御値を算出する。ステップS109〜S112の処理は、先述したステップS106〜S108,S112と同様に、目標縦位置を取得する度に繰り返し、取得した目標横位置のそれぞれについての制御値を車載装置200に出力する。
ここで、縦方向の目標制御値とは、目標縦位置に応じた加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値である。たとえば、エンジン自動車にあっては、制御機能は、現在および目標とするそれぞれの加減速度および車速の算出値に基づいて、目標吸入空気量(スロットルバルブの目標開度)と目標燃料噴射量を算出し、これを駆動装置80へ送出する。なお、制御機能は、加減速度および車速を算出し、これらを車両コントローラ70へ送出し、車両コントローラ70において、これら加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値をそれぞれ算出してもよい。
そして、ステップS112に進み、制御装置10は、ステップS111で算出された縦方向の目標制御値を、車載装置200に出力する。車両コントローラ70は、転回制御及び駆動制御を実行し、自車両に目標横位置及び目標縦位置によって定義される目標経路RT上を走行させる。
ステップS113において、制御装置10は、出力装置110に情報を提示させる。出力装置110に提示させる情報は、ステップS106において算出された対象領域の位置・速度であってもよいし、ステップS105〜S111において算出された目標経路の形状であってもよいし、ステップS112において車載装置200へ出力された目標制御値であってもよい。
ステップS114において、ドライバがステアリング操作等をしたか否か、ドライバの操作介入の有無を判断する。ドライバの操作が検出されなければ、ステップS101へ戻り、新たな対象領域の設定、目標経路の算出及び走行制御を繰り返す。他方、ドライバが操作をした場合には、ステップS115に進み、走行制御を中断する。次のステップS116において、走行制御を中断した旨の情報を提示する。
続いて、図7のフローチャートに基づいて、本実施形態の走行制御装置100の対象領域の設定処理(図6 S104)のサブルーチンについて説明する。
自車情報、対象情報を取得した後(ステップS103)、ステップS201において、制御装置10は、自車両V1が走行するレーンに存在する回避対象(駐車中の他車両など)が検出されたら、ステップS202へ進む。ステップS202において、ステップS201で検出された回避対象としての他車両V2が存在する側(図2の−x側)とは反対側(図2の+x側)のレーンマーカx10を検出するための評価値が第1評価基準未満である場合には、レーンマーカx10の検出ができなかった(レーンマーカx10の検出位置をロストした)と判断し、ステップS203に進む。
ステップS203において、制御装置10は対象領域Rを設定する。制御装置10は、レーンマーカx10が良好に検出できなかったので、検出できなったレーンマーカx10の位置に対象領域RLを設定し、その対象領域RLと、他車両V2との位置とに基づいて、他車両V2の対象領域R2を設定してもよい。
ステップS203において、制御装置10は他車両V2の対象領域R2の横端部RW1を他車両V2側にシフトする。本処理では、レーンマーカx10が検出された場合よりも、対象領域R2の横端部RW1と他車両V2との距離は短くなる。また、本処理では、レーンマーカx10が検出された場合よりも、対象領域R2の横端部RW1と検出できなったレーンマーカx10との距離は長くなる。
ステップS203において、制御装置10は他車両V2の対象領域R2の前端部RL1を自車両V1側にシフトする。本処理では、レーンマーカx10が検出された場合よりも、対象領域R2の前端部RL1と他車両V2との距離は長くなる
ステップS204において、制御装置10は、良好に検出できたレーンマーカx1の位置に基づいて、一部又は全部において良好に検出できなかったレーンマーカx10の位置を推測する。制御装置10は、レーンLn2を走行する対向車両V3のエッジの位置に基づいて、良好に検出できなかったレーンマーカx10の位置を推測する。ステップS204において、良好に検出できなかったレーンマーカx10の位置が推測できた場合にはステップS205に進み、推測できなかった場合にはステップS208に進む。
ステップS208において、制御装置10は、対向車両のエッジからレーンマーカx10の位置を推測する。良好に検出できなかったレーンマーカx10の位置を推測できたら、ステップS205に進む。
ステップS205において、レーンマーカの位置、他車両V2の大きさ、対向車両V2の対象領域R2の位置に基づいて、各他車両V2などの回避対象の対象領域Rを設定する。その後ステップS206に進む。
続くステップS206において、制御装置10は、設定した対象領域Rに基づいて、目標経路を算出する。続いて、図6のステップS105の目標経路の算出処理を開始し、ステップS106以降の処理を実行する。
本発明の実施形態の走行制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の走行制御装置100によれば、回避対象である他車両V2が存在する側とは反対側のレーンマーカx10が良好に検出できなかった場合には、レーンマーカx10が良好に検出できた場合よりも、対象領域R2の自車両側に位置する横端部RW1と他車両V2との距離を短くするので、検出できなかったレーンマーカx10と対象領域R2の境界(横端部RW1)との間の距離を確保できる。これにより、レーンマーカを見失っても、連続性のある適切な目標経路RTを設定でき、自車両V1のドライバの運転感覚にマッチした走行が維持されるの。つまり、レーンマーカを見失っても、ドライバに不安を感じさせない走行制御を実現できる。
[2]本実施形態の走行制御装置100によれば、自車両V1の前方のレーンマーカx10が良好に検出できなかった場合には、レーンマーカx10が良好に検出できた場合よりも、対象領域R2の自車両側に位置する前端部RL1と他車両V2との距離を長くする。この対象領域R1の境界の位置に基づいて設定された目標経路RT1によれば、他車両V2を回避するために自車両V1が転回を開始するタイミングを早めることができる。これにより、自車両の転回量、転回角の変化を緩やかにできる。また、走行状況を監視するドライバの運転操作を受け入れる時間を長くとることができる。
[3]本実施形態の走行制御装置100は、検出できたレーンマーカの位置から検出できなかったレーンマーカの位置を推測するので、安定した走行制御を実行できる。
[4]本実施形態の走行制御装置100は、対向車両V3の位置を考慮して、回避対象である他車両V2の対象領域R2を設定するので、対向車両V3と擦れ違うことを考慮した対象領域R2を設定できる。
[5]本実施形態の走行制御装置100は、対向車両V3の位置に基づいて、検出できなったレーンマーカの位置を推測するので、安定した走行制御を実行できる。
[6]本実施形態の走行制御方法が制御装置10により実行されることにより、上記走行制御装置100と同様の作用を奏し、同様の効果を奏する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る走行制御装置の一態様として、車載装置200ともに走行制御システム1を構成する走行制御装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、評価取得手段と、対象情報取得手段と、領域設定手段と、経路設定手段と、制御手段と、を備える走行制御装置の一例として、評価取得機能と、対象情報取得機能と、領域設定機能と、経路設定機能と、制御機能とを実行する制御装置10を備える走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。本明細書では、自車情報取得手段をさらに備える走行制御装置の一例として、制御装置10が自車情報取得機能を実行する走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。本明細書では、出力手段をさらに備える走行制御装置の一例として、出力装置30,110をさらに備える走行制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。