<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な構成図である。第1実施形態の印刷装置100は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の印刷媒体200に噴射する液体噴射装置であり、制御装置12と搬送機構14とヘッドモジュール16とを具備する。制御装置12は、印刷装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構14は、制御装置12による制御のもとで印刷媒体200を所定の方向A1に搬送する。
印刷装置100には、インクが充填されたインクカートリッジ300が装着される。図1のヘッドモジュール16は、インクカートリッジ300から供給されるインクを制御装置12による制御のもとで印刷媒体200に噴射する。図1に例示される通り、第1実施形態のヘッドモジュール16は、印刷媒体200の搬送方向A1に交差する方向A2に沿って複数の液体噴射ヘッド20が配列されたラインヘッドである。具体的には、複数の液体噴射ヘッド20を配列した第1列と複数の液体噴射ヘッド20を配列した第2列とで方向A2における各液体噴射ヘッド20の位置が相違するように複数の液体噴射ヘッド20は配置(いわゆるスタガ配置ないし千鳥配置)される。なお、複数のヘッドモジュール16を印刷媒体200の搬送方向A1に沿って並列することも可能である。
図2は、ヘッドモジュール16の任意の1個の液体噴射ヘッド20の斜視図である。図2に例示される通り、液体噴射ヘッド20は、液体噴射部22と筐体24と配線基板26とを具備する。液体噴射部22は、直線状に配列する複数のノズルNから印刷媒体200に対してインクを噴射するヘッドチップである。筐体24は、液体噴射部22を収容および支持する中空のケースであり、内部の空間にインクカートリッジ300からインクが供給される。
配線基板26は、可撓性の基材262の表面に複数の信号配線264が形成された電子部品であり、例えば接着剤を利用して端部が液体噴射部22に固定される。例えばFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuits)が配線基板26として好適に利用される。液体噴射部22には、配線基板26の信号配線264を介して駆動回路(図示略)から駆動信号が供給される。なお、駆動回路のICチップを配線基板26の基材262に実装することも可能である。
図2に例示される通り、液体噴射部22の各ノズルNから液体が噴射される方向をZ方向と表記し、Z方向に直交するX-Y平面を想定する。液体噴射ヘッド20は、Z方向が鉛直方向の下側(印刷媒体200側)を向く姿勢で配置される。したがって、X-Y平面は、印刷媒体200に略平行な平面(水平面)に相当する。X方向は、複数のノズルNが配列する方向(液体噴射ヘッド20の長手方向A2)であり、Y方向は、X方向およびZ方向に交差(典型的には直交)する方向である。Y方向は第1方向の例示であり、Z方向は第2方向の例示である。
図2に拡大して図示される通り、1個の液体噴射ヘッド20の複数のノズルNは、ノズル列GAとノズル列GBとに区分される。ノズル列GAおよびノズル列GBの各々は、X方向に沿って配列された複数のノズルNの集合である。X方向における各ノズルNの位置はノズル列GAとノズル列GBとで相違する。図1から理解される通り、印刷媒体200の横幅(搬送方向A1に直交する方向A2の寸法)を上回る範囲にわたり複数の液体噴射ヘッド20のノズルNが分布する。搬送機構14による印刷媒体200の搬送に並行してヘッドモジュール16の各液体噴射ヘッド20のノズルNから印刷媒体200にインクを噴射することで印刷媒体200には任意の画像が印刷される。
図3は、液体噴射部22の分解斜視図であり、図4は、液体噴射部22の断面図(図2の拡大図におけるIV-IV線の断面図)である。図4は、X方向に直交する断面(Y-Z平面)での液体噴射部22の断面図に相当する。図3および図4に例示される通り、液体噴射部22は、X方向に長尺な平板状の基体42を具備する。基体42の各表面(以下「設置面」という)420には、連通板44と圧力室形成基板52と振動板54と保護板58とが、設置面420側から以上の順番で積層される。すなわち、基体42の設置面420と圧力室形成基板52との間に連通板44が設置され、圧力室形成基板52と保護板58との間に振動板54が設置される。連通板44と圧力室形成基板52と振動板54と保護板58とは、基体42と同様にX方向に長尺な平板状の部材である。
図2および図3から理解される通り、基体42の一方の設置面420の面上の要素はノズル列GAに対応し、基体42の他方の設置面420の面上の要素はノズル列GBに対応する。すなわち、ノズル列GAの各ノズルNとノズル列GBの各ノズルNとは基体42を挟んで相互に反対側に位置する。したがって、第1実施形態の基体42は、ノズル列GAとノズル列GBとの間隔を規定するスペーサーとして機能する。なお、基体42の双方の設置面420の面上の要素(連通板44,圧力室形成基板52,振動板54,保護板58)は、基体42を挟んで対称の関係にあり、具体的な構成は実質的に共通するから、以下の説明ではノズル列GAに対応する要素に着目し、ノズル列GBに対応する要素の説明を便宜的に省略する。
基体42の設置面420には連通板44が設置される。図5は、基体42側(図4における下側)からみた連通板44の平面図である。図4および図5から理解される通り、第1実施形態の連通板44は、基礎部71と空間形成部72と側壁部73とを包含する。空間形成部72は、基礎部71からみてZ方向の負側(インクの噴射側とは反対側)に位置し、基礎部71と比較して薄い板状の部分である。したがって、基礎部71のうち基体42側の表面710と空間形成部72のうち基体42側の表面720との段差に相当する空間(凹部)が空間形成部72の基体42側には形成される。側壁部73は、空間形成部72のうちX方向の両端部に形成されて基礎部71に連続する。
基礎部71のうち基体42側の表面710と各側壁部73の表面とが、例えば接着剤を利用して基体42の設置面420に接合されることで、連通板44は基体42に固定される。連通板44が基体42に固定された状態で、空間形成部72は、基体42の設置面420に対して間隔をあけて対向する。図4から理解される通り、基体42の設置面420と空間形成部72の表面720との間隙の空間が、複数のノズルNにわたり共通する液体貯留室(リザーバー)62として機能する。すなわち、設置面420と連通板44(空間形成部72)の表面720とは、Y方向(連通板44に垂直な方向)に沿って相互に間隔をあけて対向することで液体貯留室62の内面を構成する。
図4および図5に例示される通り、連通板44のうち空間形成部72の表面720には複数の支持部77が形成される。すなわち、各支持部77は、連通板44の平面視で(すなわち連通板44に垂直なY方向からみて)、液体貯留室62に重なる位置に形成される。各支持部77は、空間形成部72の表面720からY方向に突起した部分(リブ状の部分)であり、連通板44の空間形成部72と一体に形成される。図5(拡大図)に例示される通り、複数の支持部77は、連通板44の平面視で相互に間隔をあけて所定の方向Wに沿って延在する。方向Wは、X-Z平面内でX方向およびZ方向の双方に対して傾斜した方向である。すなわち、方向Wは、X方向およびZ方向に対して垂直または平行の関係にない。
図4から理解される通り、Y方向における各支持部77の寸法(空間形成部72の表面720と支持部77の頂面との間の距離)は、表面720と設置面420との距離(すなわち液体貯留室62のY方向の寸法)D以下に設定される。図4では、Y方向における各支持部77の寸法が液体貯留室62のY方向の寸法Dと略同等である構成が例示されている。したがって、各支持部77の頂面は、基体42の設置面420に当接する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の支持部77は、基体42の設置面420と空間形成部72の表面720との間隔(寸法D)を維持するためのスペーサー(支柱)として機能する。連通板44の材料や製法は任意であるが、例えばシリコン(Si)の単結晶基板をフォトリソグラフィやエッチング等の半導体製造技術により選択的に除去することで、以上に例示した形状の連通板44を簡便かつ高精度に形成することが可能である。
液体貯留室62は筐体24の内部の空間に連通する。したがって、インクカートリッジ300から筐体24の内部に到達したインクが液体貯留室62に供給される。液体貯留室62に供給されたインクは、図5に例示される通り、各支持部77が延在する方向Wに沿って各支持部77の相互間の流路を進行して液体貯留室62の内部に貯留される。
図4に例示される通り、連通板44のうち基体42とは反対側の表面には圧力室形成基板52が設置される。圧力室形成基板52は、連通板44の基礎部71と空間形成部72とにわたる平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して連通板44に固定される。図6は、圧力室形成基板52の平面図である。図4および図6から理解される通り、圧力室形成基板52には、相異なるノズルNに対応する複数の開口部522が形成される。複数の開口部522はX方向に沿って配列する。各開口部522は、平面視でZ方向に長尺な貫通孔である。圧力室形成基板52の材料や製法は任意であるが、例えば連通板44と同様に、シリコンの単結晶基板を半導体製造技術により選択的に除去することで簡便かつ高精度に圧力室形成基板52を形成することが可能である。
なお、連通板44の板厚(基礎部71の厚さ)は、例えば200μm以上かつ800μm以下の寸法(好適には400μm程度)に設定され、圧力室形成基板52の板厚は、例えば50μm以上かつ200μm以下の寸法(好適には70μm程度)に設定される。以上の構成によれば、液体噴射部22の組立時の各部品の取扱いが容易であり、かつ、圧力室66の容量(例えばインクの増粘の抑制に必要な容量)を充分に確保できるという利点がある。
図4に例示される通り、圧力室形成基板52のうち連通板44とは反対側の表面には振動板54が設置される。振動板54は、弾性的に振動可能な平板状の部材であり、例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で弾性膜の表面に積層された絶縁膜とを含んで構成される。図4から理解される通り、振動板54と連通板44(基礎部71)とは、圧力室形成基板52に形成された各開口部522の内側で、圧力室形成基板52の板厚に相当する間隔をあけて相互に対向する。圧力室形成基板52の開口部522の内側で連通板44と振動板54とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室(キャビティ)66として機能する。以上の説明から理解される通り、圧力室形成基板52は、圧力室66を形成する基板として機能する。図6から理解される通り、第1実施形態の各圧力室66は、Z方向(すなわちインクの噴射方向)に長尺な空間である。
図4および図5(特に拡大図)から理解される通り、連通板44の空間形成部72には、相異なるノズルN(圧力室66)に対応する複数の供給流路64が形成される。複数の供給流路64は平面視でX方向に沿って配列し、空間形成部72の基体42側の表面720のうち相互に隣合う各供給流路64の間には隔壁75が形成される。各供給流路64は、空間形成部72をY方向に貫通する流路であり、図4および図6から理解される通り液体貯留室62と圧力室66とを連通する。したがって、液体貯留室62に貯留されたインクは複数の供給流路64に分岐して各圧力室66に並列に供給される。すなわち、各圧力室66にはインクが充填される。図5から理解される通り、複数の支持部77は、供給流路64および隔壁75に対してZ方向に所定の間隔をあけて形成される。
図4および図5に例示される通り、連通板44の基礎部71には、相異なるノズルN(圧力室66)に対応する複数の第1流路Q1が形成される。複数の第1流路Q1は、平面視でX方向に沿って配列する。各第1流路Q1は、連通板44の基礎部71をY方向に貫通する流路(貫通孔)であり、当該第1流路Q1に対応する圧力室66に連通する。
また、図4および図5に例示される通り、連通板44の基礎部71のうち基体42側の表面710には、第1流路Q1から基礎部71の周縁(液体貯留室62とは反対側の周縁)までZ方向に直線状に延在する溝部(切欠)74がノズルN毎に形成される。連通板44の溝部74の内周面と基体42の設置面420とで包囲された管状の空間がインクの流路(以下「第2流路Q2」という)として機能する。第2流路Q2の一方の端部は第1流路Q1に連通し、第2流路Q2のうち第1流路Q1とは反対側の端部がノズルNとして機能する。以上の説明から理解される通り、Y方向に沿う第1流路Q1とZ方向に沿う第2流路Q2とを含む連通流路68を介して圧力室66とノズルNとが連通する。すなわち、液体貯留室62から供給流路64と圧力室66と連通流路68(第1流路Q1および第2流路Q2)とを経由してノズルNから外部に到達するインクの流路が形成される。
図4に例示される通り、振動板54のうち圧力室形成基板52とは反対側の表面には、相異なるノズルN(圧力室66)に対応する複数の圧電素子56が形成される。各圧電素子56は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた積層体である。なお、圧電素子56の圧電体を複数の圧電素子56にわたり連続させることも可能である。保護板58は、各圧電素子56を保護する要素であり、圧力室形成基板52(振動板54)の表面に例えば接着剤で固定される。保護板58のうち基体42側の表面に形成された凹部582に各圧電素子56が収容される。
図4に例示される通り、振動板54の表面には、相異なる圧電素子56に電気的に接続された複数の接続端子57が形成される。図7は、複数の接続端子57を拡大した平面図である。図7に例示される通り、複数の接続端子57は、連通板44の平面視で相互に間隔(典型的には等間隔)をあけてX方向に配列される。各接続端子57は、振動板54の周縁から圧電素子56までZ方向に直線状に延在する導体パターンである。図4および図7から理解される通り、複数の接続端子57は、連通板44の平面視で液体貯留室62(空間形成部72)に重なる位置に形成される。すなわち、各接続端子57の下方(Y方向の正側)に液体貯留室62が位置する。
以上に説明した通り、各接続端子57がX方向に間隔をあけてZ方向に延在するのに対し、平面視で各接続端子57に重なる液体貯留室62内の各支持部77は、X方向およびZ方向に対して傾斜した方向Wに延在する。したがって、図7から理解される通り、連通板44の平面視で各支持部77と各接続端子57とは重なる。具体的には、1個の支持部77は、連通板44の平面視で、X方向に配列する複数の接続端子57に重なる。
図7に例示される通り、複数の接続端子57が形成された振動板54の表面には、配線基板26の基材262の端部が例えば接着剤で固定される。具体的には、配線基板26と振動板54との間に接着剤を介在させた状態で、図4に図示される通り、振動板54の表面のうち各接続端子57が形成された領域に対して配線基板26の端部を外力Fにより押付けることで、配線基板26は振動板54に固定される。配線基板26が振動板54に接合された状態では、相互に対応する信号配線264と接続端子57とが電気的に接続される。
以上の構成のもと、駆動回路から配線基板26の各信号配線264に供給された駆動信号は、信号配線264と接続端子57とを経由して各圧電素子56の電極に供給される。各圧電素子56は駆動信号に応じて個別に振動する。圧電素子56に連動して振動板54が振動することで圧力室66内のインクの圧力(圧力室66の容積)が変動し、圧力室66内の圧力の増加によりノズルNからインクが噴射される。以上の説明から理解される通り、圧電素子56は、信号配線264から接続端子57に供給される駆動信号に応じて圧力室66内の圧力を変動させて圧力室66内のインクをノズルNから噴射させる圧力発生素子として機能する。
以上に説明した通り、第1実施形態では、平面視で液体貯留室62に重なるように複数の接続端子57が形成されて配線基板26の各信号配線264に接続されるから、液体貯留室62と各接続端子57とが平面視で重ならない構成と比較して、液体噴射ヘッド20が小型化されるという利点がある。他方、各接続端子57が平面視で液体貯留室62に重なる構成では、振動板54のうち接続端子57が形成された領域に配線基板26を押付けた場合に、各接続端子57の下方の液体貯留室62が外力Fの作用で変形する可能性がある。第1実施形態では、平面視で液体貯留室62に重なるように支持部77が形成されるから、配線基板26の実装時の外力Fに起因した液体貯留室62の変形を抑制することが可能である。すなわち、第1実施形態によれば、液体噴射ヘッド20の小型化と液体貯留室62の変形の抑制とを両立できるという利点がある。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の複数の支持部77は、液体貯留室62の機械的な強度を補強する要素(補強部)として機能する。
第1実施形態では、各接続端子57が延在するZ方向や複数の接続端子57が配列するX方向に対して傾斜する方向Wに支持部77が延在して複数の接続端子57に重なるから、例えば、Z方向に延在する支持部77が1個の接続端子57のみに重なる構成と比較して液体貯留室62の変形を抑制できるという効果は格別に顕著である。また、複数の支持部77が液体貯留室62に形成されるから、1個の支持部77のみを形成した構成と比較して液体貯留室62の変形を有効に抑制できる。複数の支持部77が相互に間隔をあけて方向Wに延在する構成によれば、図5を参照して前述した通り、相互に隣合う各支持部77の間隔をインクの流路として利用できるという利点もある。
また、第1実施形態では、圧力室形成基板52に沿うZ方向にインクが噴射されるから、圧力室形成基板52がインクの噴射方向に直交する構成(例えば後掲の図11の構成)と比較して、インクの噴射方向(Z方向)からみた液体噴射ヘッド20(液体噴射部22)の面積を削減することが可能である。したがって、高密度にノズルを配置できるという利点がある。また、圧力室66とノズルNとを連通する連通流路68が、インクの噴射方向(Z方向)に交差するY方向に沿う第1流路Q1を含むから、インクの噴射方向に沿う流路のみで圧力室66とノズルNとが連通する構成と比較して、圧力室66とノズルNとの間の流路長が長く確保される。したがって、ノズルNの内側でインクに発生した増粘の影響が圧力室66内まで到達する可能性を低減できる(ノズルNの内側で増粘したインクが圧力室66内に到達し難い)という利点がある。以上のようにノズルNの内側での増粘の影響が圧力室66内に到達する可能性が低減されるから、例えば、圧力室66内のインクの増粘を解消するために排出(フラッシング)する必要があるインクの量を削減することが可能である。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で利用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図8は、第2実施形態における液体噴射ヘッド20(液体噴射部22)の断面図であり、第1実施形態の説明で参照した図4に対応する。図8から理解される通り、基体42のうち連通板44の空間形成部72に対向する位置には、設置面420と比較して窪んだ凹部424が形成される。第2実施形態では、基体42の凹部424と連通板44の空間形成部72との間の空間が液体貯留室62として利用される。他方、第2実施形態の連通板44は、第1実施形態と同様に、平面視で液体貯留室62に重なる空間形成部72を包含する。ただし、第1実施形態で例示した複数の支持部77は、第2実施形態の空間形成部72には形成されない。配線基板26の各信号配線264に接続される複数の接続端子57が平面視で液体貯留室62に重なる構成は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、液体貯留室62と各接続端子57とが平面視で重ならない構成と比較して液体噴射ヘッド20が小型化されるという利点がある。なお、液体貯留室62に所期の容量が確保できるならば凹部424を省略することも可能である。
図8に例示される通り、第2実施形態における基体42の設置面420には、基体42の周縁までZ方向に直線状に延在する溝部(切欠)422がノズルN毎に形成される。連通板44の表面(基礎部71の表面710)に形成された溝部74の内周面と基体42の設置面420に形成された溝部422の内周面とで包囲された管状の空間が第2流路Q2として機能する。以上の構成によれば、連通板44の溝部74で第2流路Q2を形成する第1実施形態と比較して第2流路Q2の断面積が増加するから、圧力室66内に対する増粘の影響を低減するために必要な容量を連通流路68に確保し易いという利点がある。
図8に例示される通り、第2実施形態では、基体42および連通板44におけるZ方向の側面(印刷媒体200との対向面)にノズルプレート40が設置される。ノズルプレート40は、基体42や連通板44と同様にX方向に長尺な平板状の部材であり、例えば接着剤を利用して基体42および連通板44に固定される。ノズルプレート40には、X方向に配列する複数のノズルNが形成される。第2流路Q2の一方の端部は第1流路Q1に連通し、第1流路Q1とは反対側の端部はノズルプレート40の1個のノズルNに連通する。すなわち、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、Y方向に沿う第1流路Q1とZ方向に沿う第2流路Q2とを含む連通流路68を介して圧力室66とノズルNとが連通する。
ところで、液体貯留室62の容量の確保という観点のみからすると、図9に例示されるように連通板44の空間形成部72を省略した構成(以下「対比例」という)も想定され得る。対比例では、基体42の凹部424と圧力室形成基板52とが直接的に対向し、両者間の空間が液体貯留室62として機能する。しかし、対比例のもとでは、振動板54の表面に配線基板26を実装する段階で、配線基板26を押圧する外力Fの作用により液体貯留室62が変形する可能性がある。他方、第2実施形態では、平面視で液体貯留室62に重なる空間形成部72が連通板44に形成されるから、配線基板26の実装時の外力Fに起因した液体貯留室62の変形を図9の対比例と比較して抑制できるという利点がある。すなわち、第2実施形態においても、液体噴射ヘッド20の小型化と液体貯留室62の変形の抑制との両立が実現される。
以上の説明から理解される通り、第2実施形態の空間形成部72は、液体貯留室62の機械的な強度を補強する要素(補強部)として機能する。なお、第1実施形態における空間形成部72も同様に、液体貯留室62の機械的な強度を補強する要素として機能する。すなわち、前述の第1実施形態は、空間形成部72と複数の支持部77との双方を液体貯留室62の補強に利用した形態である。第1実施形態では、液体貯留室62の内面のうち相互に対向する表面720と設置面420との間隙内に支持部77が設置されるから、支持部77が設置されない構成(例えば第2実施形態)と比較して、液体貯留室62の変形を抑制できるという効果は格別に顕著である。他方、第2実施形態では、液体貯留室62に複数の支持部77が形成されないから、複数の支持部77を具備する第1実施形態と比較して液体貯留室62の容量を確保し易いという利点がある。
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態における液体噴射ヘッド20(液体噴射部22)の断面図である。第1実施形態および第2実施形態では、各圧電素子56を駆動するための駆動信号を、駆動回路から配線基板26を介して各接続端子57に供給した。第3実施形態では、駆動信号を生成する駆動回路282と、駆動信号を駆動回路282から各接続端子57に供給する信号配線284とが、保護板58に設置される。したがって、第1実施形態の配線基板26は第3実施形態では省略される。なお、保護板58以外の要素の構成は第2実施形態と同様である。例えば、平面視で液体貯留室62に重なる空間形成部72が連通板44に形成される。また、複数の接続端子57が平面視で液体貯留室62に重なるから、第1実施形態や第2実施形態と同様に液体噴射ヘッド20の小型化が実現される。
図10に例示される通り、第3実施形態の保護板58は、実装面584と傾斜面586とを包含する平板状の部材である。保護板58の実装面584には、駆動回路282を搭載したICチップが実装される。傾斜面586は、保護板58が設置される振動板54の表面(あるいは圧力室形成基板52や連通板44の表面)に対して傾斜した平坦面である。図10に例示される通り、相異なる接続端子57に対応する複数の信号配線284が保護板58に形成される。各信号配線284は、実装面584における駆動回路282の出力端子から傾斜面586の下端部にかけて延在する。保護板58が振動板54の表面に実装された状態で、各信号配線284は接続端子57に電気的に接続される。
保護板58は、例えば接着剤で振動板54の表面に固定される。具体的には、駆動回路282および複数の信号配線284が設置された保護板58と振動板54との間に接着剤を介在させた状態で、図10に図示される通り、振動板54の表面のうち各接続端子57が形成された領域に対して保護板58を外力Fにより押付けることで、各信号配線284と各接続端子57とが相互に導通した状態で保護板58が振動板54に固定される。なお、振動板54のうち平面視で各圧力室66に重なる領域から延在して形成された圧電素子56の圧電体や電極の表面に保護板58を固定することも可能である。
以上に説明したように保護板58を振動板54に対して押圧する構成では、各接続端子57の下方に位置する液体貯留室62が外力Fの作用で変形する可能性がある。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、平面視で液体貯留室62に重なる空間形成部72が連通板44に形成されるから、保護板58の設置時の外力Fに起因した液体貯留室62の変形を抑制できるという利点がある。以上の説明から理解される通り、第1実施形態や第2実施形態のように配線基板26が固定される構成のほか、第3実施形態の例示のように保護板58が固定される構成でも、空間形成部72により液体貯留室62の変形を抑制する構成は有効である。
なお、以上の説明では、第2実施形態(複数の支持部77が形成されない構成)における保護板58を変形した構成を第3実施形態として例示したが、駆動回路282と複数の信号配線284とが設置された保護板58を振動板54に固定する構成は、空間形成部72と複数の支持部77との双方を具備する第1実施形態にも同様に適用され得る。
<変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)第1実施形態では、Y方向における各支持部77の寸法を液体貯留室62のY方向の寸法Dと略同等に設定した構成を例示したが、Y方向における各支持部77の寸法が液体貯留室62の寸法Dを下回る構成も採用され得る。すなわち、各支持部77の頂面と基体42の設置面420とが間隔をあけて対向する。以上の構成では、配線基板26の実装時の外力Fの作用により連通板44(空間形成部72)が変形することで各支持部77の頂面と基体42の設置面420とが相互に接触し、それ以上の変形が支持部77により阻止されるから、液体貯留室62の変形を抑制できるという前述の効果は実現される。
(2)前述の各形態では、接続端子57が形成される領域まで振動板54がZ方向に延在する構成を例示したが、振動板54が形成される範囲は以上の例示に限定されない。例えば、図11に例示される通り、接続端子57の端部(圧電素子56とは反対側の端部)までは振動板54を形成しない構成も採用され得る。図11の構成では、振動板54の表面から圧力室形成基板52の表面に到達するように複数の接続端子57がZ方向に延在し、圧力室形成基板52のうち振動板54から張出した領域に配線基板26(または第3実施形態の保護板58)が設置される。以上の説明から理解される通り、接続端子57が形成される下地となる要素の種類は任意である。
(3)支持部77の形態は第1実施形態の例示に限定されない。例えば、第1実施形態では方向Wに延在する複数の支持部77を相互に間隔をあけて設置したが、例えば、柱状(円柱状や角柱状)の支持部77を液体貯留室62に設置した構成や、Z方向に平行な複数の支持部77を相互に間隔をあけてX方向に配列した構成も採用され得る。液体貯留室62に1個の支持部77のみを設置することも可能である。また、第1実施形態では連通板44の空間形成部72の表面720から各支持部77が突起する構成を例示したが、支持部77が形成される位置は適宜に変更される。例えば、連通板44のうち基礎部71の側面(基礎部71と空間形成部72との段差の部分)から液体貯留室62に突起するように支持部77を形成することも可能である。
(4)前述の各形態では、圧力室形成基板52に沿うZ方向にインクが噴射される構成を例示したが、液体噴射部22の各要素とインクの噴射方向との関係は以上の例示に限定されない。例えば、図12に例示されるように、圧力室形成基板52に沿うY方向にインクが噴射される構成も採用される。図12の構成では、第1実施形態で例示した基体42が、X-Z平面に平行なノズルプレート41に置換される。ノズルプレート41には複数のノズルNが形成され、連通板44(基礎部71)に形成された第1流路Q1を介して各ノズルNが圧力室66に連通する。以上の構成では、圧力室形成基板52や連通板44に垂直なY方向に各ノズルNからインクが噴射される。
(5)前述の各形態では、印刷媒体200の搬送方向A1に直交する方向A2に複数の液体噴射ヘッド20を配列したラインヘッドをヘッドモジュール16として例示したが、シリアルヘッドにも本発明を適用することが可能である。例えば図13のヘッドモジュール18は、前述の各形態に係る複数の液体噴射ヘッド20をキャリッジに搭載したシリアルヘッドであり、印刷媒体200の搬送方向A1に直交する方向A2に沿って往復しながら各ノズルNからインクを噴射する。
(6)圧力室66内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)は圧電素子56に限定されない。例えば、静電アクチュエータ等の振動体を圧力発生素子として利用することも可能である。また、圧力発生素子は、圧力室66に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、加熱により圧力室66の内部に気泡を発生させて圧力室66内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、圧力発生素子は、圧力室66の内部の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方式(ピエゾ方式/サーマル方式)や具体的な構成の如何は不問である。
(7)以上の各形態で例示した印刷装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。