以下、図面を参照して本実施形態に係るインクジェットヘッドについて説明する。なお、同一又は類似する構成について、「第1インク供給路45A」、「第2インク供給路45B」のように、互いに異なる番号(「第1」、「第2」)及び大文字のアルファベット(「A」、「B」)を付すことがある。また、この場合に、番号及び大文字のアルファベットを省略して、単に「インク供給路45」というなど、同一又は類似する構成を区別しないことがある。
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の要部を模式的に示す斜視図である。
プリンタ1は、インクジェットプリンタである。より具体的には、例えば、プリンタ1は、ピエゾヘッド式、シリアルヘッド式、且つ、オフキャリッジ式のカラープリンタとされている。なお、プリンタ1は、適宜な数の色のインクでカラーの画像を実現してよいが、本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの4色によってカラー画像を実現するものとする。
プリンタ1は、例えば、メディア(例えば紙)101を矢印y1で示す搬送方向へ搬送する搬送部3と、搬送されているメディア101に向けてインク滴を吐出するヘッド5と、ヘッド5をメディア101の搬送方向に直交する副走査方向(矢印y2)において往復移動させる走査部7と、ヘッド5にインクを供給するインクカートリッジ9と、ヘッド5からのインクの吐出動作を含むプリンタ1の動作を制御する制御部11とを有している。
ヘッド5からメディア101へのインク滴の吐出が、副走査方向に直交する方向である主走査方向に広がった範囲で繰り返し行われつつ、走査部7によるヘッド5の往復移動が行われることにより、メディア101には帯状の2次元画像が形成される。さらに、搬送部3によってメディア101が、間欠的に搬送されることで、メディア101には、帯状の2次元画像が繋がって連続的な2次元画像が形成される。
搬送部3は、例えば、不図示の供給スタックに積層された複数のメディア101を一ずつ不図示の排出スタックへ搬送する。搬送部3は、公知の適宜な構成とされてよい。図1では、搬送経路がストレートパスとされ、メディア101に当接するローラ13と、ローラ13を回転させるモータ15と、モータ15に駆動電力を付与するドライバ17とを有する搬送部3が例示されている。
走査部7は、公知の適宜な構成とされてよい。例えば、走査部7は、ヘッド5が搭載される不図示のキャリッジを副走査方向に案内可能に支持する不図示のガイドレールと、キャリッジに固定された不図示のベルトと、当該ベルトが掛け渡された不図示のプーリと、当該プーリを回転させるモータ19と、モータ19に駆動電力を付与するドライバ21とを有している。なお、ヘッド5は、キャリッジを含んで定義されてもよいが、以下の説明では、キャリッジを含まないものとして説明する。
インクカートリッジ9は、ヘッド5とは別の場所に(ヘッド5と共に移動しないように)設置されている。インクカートリッジ9は、可撓性のチューブを介してヘッド5と接続されている。インクカートリッジ9は、ヘッド5が吐出するインクの色の数に対応して複数(本実施形態では4つ)設けられている。
制御部11は、例えば、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含んで構成されている。制御部11は、搬送部3のドライバ17、走査部7のドライバ21及びヘッド5のドライバ(後述)に制御信号を出力し、搬送部3、走査部7及びヘッド5の動作を制御する。
図2は、ヘッド5の要部を示す、z方向正側から見た斜視図である。図3は、ヘッド5の要部を示す、z方向負側から見た斜視図である。図4は、図2のIV−IV線における断面図である。
なお、図2及び図3では、図示の都合上、図4に示した部材のうち一部を省略したり、点線で示したりしている。また、図4においては、一部においてIV−IV線以外の断面を示している。図4において、引出線や座標系を示すものでない矢印は、インクの流れを示している。
ヘッド5は、例えば、インク滴を吐出するヘッド本体23と、ヘッド本体23にインクを供給するインク供給部材25と、ヘッド本体23の動作を制御するドライバIC27(図4)と、インクを加熱するための第1ヒータ29及び第2ヒータ31とを有している。
ヘッド本体23は、例えば、概ね薄型の直方体状とされており、メディア101に対向される第1面23aと、その背面側の第2面23bとを有している。また、ヘッド本体23は、インクの流路を構成する流路部材33と、流路部材33からインクを吐出させるための駆動力を生じる圧電アクチュエータ基板35とを有している。
流路部材33は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されており、第1面23aを構成している。流路部材33は、色毎に流路を有し、複数の色に対応する複数の流路は、例えば、副走査方向(x方向)に順に配列されている。また、図4に示すように、各色に対応する流路は、第1面23aに開口する複数のノズル33aと、複数のノズル33aに通じる不図示の複数の圧力室33bと、不図示の複数の圧力室に通じる共通流路33cと、共通流路33cの端部に位置する供給口33dとを有している。
各色に対応する流路において、複数のノズル33a及び複数の圧力室33bは、例えば、主走査方向(y方向)に配列されており、また、この配列が副走査方向に2つ又は4つ並列に配置されている。共通流路33cは、例えば、複数のノズル33aの配列の間を当該配列に沿って延びている。
流路部材33は、特に図示しないが、例えば、流路となる貫通孔若しくは溝が形成された複数の板状部材がz方向に積層されることによって構成されている。複数の板状部材は、例えば、金属からなる。なお、第1面23aを構成する板状部材を樹脂で構成し、他の板状部材を金属で構成するなどしてもよい。
圧電アクチュエータ基板35は、例えば、流路部材33の大部分(供給口33dを除く部分)を覆う薄板状に形成されており、第2面23bを構成している。圧電アクチュエータ基板35は、例えば、ユニモルフ型の圧電アクチュエータ基板により構成されており、特に図示しないが、流路部材33側から順に、弾性体、共通電極、圧電体及び複数の個別電極が積層されて構成されている。
弾性体は、複数の圧力室33bの上面を構成する。複数の個別電極には選択的に共通電極とは異なる電位が付与される。個別電極と共通電極との間に電圧が印加されると、圧電体の逆圧電効果によって弾性体は撓む。これにより、圧力室33b内のインクに圧力が付与され、インク滴がノズル33aから吐出される。
インク供給部材25は、例えば、インクが流れる溝や貫通孔が形成された(非可撓性の)基体37と、基体37に貼られた可撓性の第1フィルム39A〜第5フィルム39E(図4)とを有している。
基体37は、例えば、樹脂等からなる。なお、図では、基体37が一体的に形成されているかのように示されているが、実際には、複数の部材が適宜に組み合わされて構成されてよい。フィルム39は、基体37の凹溝等を覆うように基体37に接着剤等により貼られ、基体37とフィルム39との間にインクの流路を構成するものである。フィルム39は、例えば、樹脂からなる。
また、インク供給部材25は、例えば、インクカートリッジ9によりインクが供給される側からヘッド本体23側へ順に、第1インク導入路41A〜第4インク導入路42D(図3に41A〜41D、図4に41A)、第1バッファー部43A〜第4バッファー部43D(図2に43B及び43D、図3に43A及び43C、図4に43A〜43D)、及び、第1インク供給路45A〜第4インク供給路45D(図2及び図3に45A〜45D、図4に45A)を有している。
インク導入路41、バッファー部43及びインク供給路45は、互いに同一の大文字のアルファベット(A〜D)が付されたもの同士が互いに接続されており、互いに接続されたインク導入路41、バッファー部43及びインク供給路45の組み合わせそれぞれは、各色のインクに対応している。
複数のインク導入路41は、例えば、概略、まとめられている。複数のバッファー部43は、例えば、概略、まとめられている。複数のインク供給路45は、例えば、概略、まとめられている。そして、例えば、概略、複数のインク導入路41、複数のバッファー部43及び複数のインク供給路45は、この順で適宜な方向(例えばy方向)に配列されている。
複数のインク導入路41は、例えば、基体37の概略薄型直方体状部分の一方主面に複数の凹溝が形成され、その複数の凹溝が共に第5フィルム39Eによって塞がれることによって構成されている。複数のインク導入路41(溝)は、例えば、基体37のリブによって側方が仕切られ、互いに隣接している(リブを共用している。)。基体37の複数のインク導入路41が形成される部分は、例えば、ヘッド本体23に平行であり、ひいては、複数のインク導入路41は、ヘッド本体23に平行な平面内において延びている。
基体37には、複数のインク導入路41の端部に開口する第1導入口47A〜第4導入口47D(図2及び図3に47A〜47D、図4に47A)が形成されている。複数の導入口47は、例えば、適宜な方向に一列に配列されている。複数の導入口47には、例えば、不図示のコネクタ部品を介して、複数のカートリッジ9に接続された複数のチューブが接続される。これにより、複数のインク導入路41にインクが供給される。
なお、図2〜図4は模式図であることから、複数のインク導入路41は、互いに同一の方向に直線状に延びているが、実際には、適宜に屈曲したりしてもよい。例えば、複数の導入口47は、y方向に一列に配列され、複数のインク導入路41は、複数の導入口47から互いに異なる長さでx方向に延びた後に屈曲してy方向に延びてもよい。
複数のバッファー部43は、2つずつにまとめられている。すなわち、第1バッファー部43A及び第2バッファー部43Bは第1バッファーグループ49A(図4)を構成し、第3バッファー部43C及び第4バッファー部43Dは第2バッファーグループ49B(図4)を構成している。
各バッファーグループ49において、2つのバッファー部43は、基体37の概略薄型直方体状部分の両主面に凹部が形成され、その2つの凹部がそれぞれフィルム39により塞がれることによって構成されている。このように、各バッファーグループ49においては、複数のバッファー部43が基体37からなる壁部(凹部底面部)によって仕切られる(壁部を共用する)ことにより、バッファー部43がまとめられている(グループ化されている。)。
各バッファーグループ49において、2つのバッファー部43は、ヘッド本体23に対向する壁部に仕切られて構成され、ヘッド本体23が面する方向において積層的に設けられている。また、2つのバッファーグループ49は、ヘッド本体23が面する方向において互いに積層的に且つ互いに離間して配置されている。
バッファー部43の形状は、例えば、薄型直方体状である。ただし、バッファー部43は、その内部に整流のためのリブが設けられたり、平面視において矩形以外の形状とされたりしてもよい。また、バッファー部43の底面(基体37の凹部の底面)の高さは局所的に変化するように形成されてもよい。
インク導入路41とバッファー部43とは、例えば、主として基体37によって構成された第1導入側連通路51A〜第4導入側連通路51D(図2及び図3に51A〜51D、図4に51A)によって連通されている。これにより、インク導入路41のインクはバッファー部43に供給される。複数の導入側連通路51は、例えば、複数のインク導入路41の端部からz方向の負側へ、対応するバッファー部43のz方向の位置に応じた長さで延びている。
なお、図2〜図4は模式図であることから、複数の導入側連通路51は、互いに交差したりせずに、複数のインク導入路41側における並び方向及び並び順と、複数のバッファー部43側における並び方向及び並び順とが同一になっている。ただし、実際には、複数の導入側連通路51は、適宜に交差するなどしてよく、その端部は適宜な位置とされてよい。例えば、各バッファーグループ49の2つのバッファー部43に接続される2つの導入側連通路51において、一方の導入側連通路51は、バッファー部43のx方向正側且つy方向正側の角部に開口し、他方の導入側連通路51は、バッファー部43のx方向負側且つy方向正側の角部に開口してもよい。
インク供給路45は、例えば、主として基体37に形成された貫通孔によって構成されている。複数のインク供給路45は、例えば、複数のノズル33aが開口する側とは反対側からヘッド本体23に向かって延び、また、ヘッド本体23の一の縁部に沿って一列に配列されている。この配列方向は、例えば、副走査方向(x方向)であり、また、複数のインク導入路41、複数のバッファー部43及び複数のインク供給路45の並び方向に直交する方向である。インク供給路45の横断面(z方向に直交する断面)の形状は、円形、楕円、矩形等の適宜な形状とされてよく、また、横断面の形状及び面積は、z方向において一定であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、インク供給路45を構成する貫通孔は、例えば、基体37に複数の筒状部37aが形成されることによって構成されている。なお、図2〜図4は模式図であることから、各筒状部37aの横断面は矩形とされ、複数の筒状部37aは互いに同一の形状及び大きさとされるとともに直線上に配列され、ひいては、複数の筒状部37aは、外面から個別に識別できないような形状となっている。実際には、複数の筒状部37aは、外面から個別に識別できるような形状で形成されてよい。例えば、各筒状部37aの内面及び外面の角部が面取りされたり、複数の筒状部37aの形状及び大きさが互いに異なったり、複数の筒状部37aの配列が直線から若干ずれたりしてもよい。
バッファー部43とインク供給路45とは、例えば、主として基体37によって構成された第1導出側連通路53A〜第4導出側連通路53D(図2に53A〜53D、図3に53A及び53C、図4に53A)によって連通されている。これにより、バッファー部43のインクはインク供給路45に供給される。複数の導出側連通路53は、例えば、複数のバッファー部43の端部からインク供給路45の頂部へ、対応するバッファー部43のz方向の位置に応じた長さで延びている。
なお、図2〜図4は模式図であることから、複数の導出側連通路53は、互いに交差したりせずに、複数のバッファー部43側における並び方向及び並び順と、複数のインク供給路45側における並び方向及び並び順とが同一になっている。ただし、実際には、複数の導出側連通路53は、適宜に交差するなどしてよく、その端部は適宜な位置とされてよい。例えば、各バッファーグループ49の2つのバッファー部43に接続される2つの導出側連通路53において、一方の導出側連通路53は、バッファー部43のx方向正側且つy方向負側の端部に位置し、他方の導出側連通路53は、バッファー部43のx方向負側且つy方向負側の負側の端部に位置してもよい。
また、図2〜図4は模式図であることから、バッファー部43を介して互いに接続される導入側連通路51及び導出側連通路53は、バッファー部43に対する接続位置がx方向において互いに同一とされているが、実際には、これらのバッファー部43に対する接続位置は、バッファー部43の対角線上に位置するなど、x方向の位置が互いに異なっていてもよい。
インク供給路45の先端は、例えば、流路部材33の第1面23aとは反対側の主面に開口する供給口33dに接続される。これにより、インク供給路45から流路部材33へインクが供給される。なお、インク供給部材25と、流路部材33との固定は、例えば、両者が不図示のキャリッジに固定されることなどによりなされる。
インク供給部材25において、いずれの色のインクがいずれの流路に割り当てられるかは、適宜に設定されてよい。ただし、複数のバッファー部43のうち最もヘッド本体23側(ドライバIC27側)に位置する第1バッファー部43Aには、ブラックインクが割り当てられることが好ましい。インク供給部材25において、複数の色のインクに対応する複数の流路は、互いに概ね同様の横断面積及び長さとされてもよいし、特定の色のインクの流路の横断面積及び/又は長さを他の色のインクの流路の横断面積及び/又は長さと大きく異ならせてもよい。
ドライバIC27は、例えば、FPC55を介して圧電アクチュエータ基板35に電気的に接続されている。具体的には、例えば、FPC55は、圧電アクチュエータ基板35に対向する対向部55aと、圧電アクチュエータ基板35から延び出る延在部55bとを有している。特に図示しないが、圧電アクチュエータ基板35の流路部材33とは反対側の面には、複数の個別電極から引き出された複数の引出電極が露出しており、この複数の引出電極と、対向部55aの複数のパッドとが複数のバンプによって接合される。これにより、FPC55は、圧電アクチュエータ基板35に対して固定されるとともに電気的に接続される。また、ドライバIC27は、延在部55bに実装される。なお、FPC55は、例えば、他の不図示のFPC及び/又はケーブルを介して制御部11と接続されている。
ドライバIC27は、例えば、ヘッド本体23に対してノズル33aが開口する側とは反対側に配置される。例えば、図4の例では、ドライバIC27は、FPC55が折り曲げられて延在部55bが対向部55aに重ねられることによって圧電アクチュエータ基板35に対して積層的に配置されている。延在部55bは、例えば、接着剤乃至は適宜な部材によってヘッド本体23に対して固定されている。対向部55aと延在部55bとの間に介在し、延在部55b及び/又はドライバIC27を適宜に位置決めする部材が設けられてもよい。
ドライバIC27の形状、大きさ及び平面視におけるヘッド本体23に対する位置は適宜に設定されてよい。例えば、ドライバICは、長尺状に形成され、長手方向をx方向又はy方向に向けて、ヘッド本体23の端部又は中央に配置されている。
ドライバIC27には、例えば、所定の駆動周期毎に、全てのノズル33aに関して吐出すべきインク量のデータが制御部11から入力される。ドライバIC27は、共通電極に基準電位を付与するとともに、入力されたデータに基づいて複数の個別電極に所定の波形の駆動信号を選択的に出力する。また、ドライバIC27は、例えば、入力されたデータに基づいて駆動周期内において、あらかじめ準備した複数の駆動振動のうちの一つを出力したり、駆動信号を出力する回数を設定する。
第1ヒータ29は、ヘッド本体23、複数のインク供給路45及び第1バッファー部43A(複数のバッファー部43のうち最もヘッド本体23側のもの)によって囲まれた空間に配置されている。好ましくは、第1ヒータ29は、ヘッド本体23の平面視において、ヘッド本体23の中央に対してインク供給路45側にその全体又は一部が位置している。別の観点では、好ましくは、第1ヒータ29は、インク供給路45を構成する筒状部37aに隣接している。また、第1ヒータ29は、x方向において複数のインク供給路45に亘る大きさ(両端のインク供給路45それぞれに関してはその全体に完全に亘らなくてもよい)を有している。従って、第1ヒータ29は、インク供給部材25内のインク、特に、インク供給路45内のインクを加熱可能である。
第2ヒータ31は、2つのバッファーグループ49及び複数のインク供給路45に囲まれた空間に配置されている。また、第2ヒータ31は、バッファー部43の可撓性の壁部(フィルム39)に対して対向しており、好ましくは、フィルム39の面積の1/2以上、より好ましくはフィルム39と同等の面積を有している。また、好ましくは、第2ヒータ31は、x方向において複数のインク供給路45に亘る大きさを有している。従って、第2ヒータ31は、インク供給部材25内のインク、特に、複数のバッファー部43内のインクを加熱可能である。
第1ヒータ29及び第2ヒータ31は、例えば、比較的抵抗値が高い導体を含んで構成され、電力が供給されることによって発熱する。これらヒータは、例えば、チップ型のものであってもよいし、フィルム型のものであってもよい。フィルムヒータは、例えば、ミアンダ形状等の所定のパターンで延びる電熱線を絶縁性のフィルムによって挟みこんだ構造のものであってよい。電熱線は、例えば、ニクロム又は鉄・クロム・アルミニウム合金からなる。また、フィルムヒータは、絶縁性フィルムと導電膜とを重ね合わせ、導電膜の両縁部に電圧印加用の電極を配した構造のものであってもよい。導電膜は、例えば、カーボン、酸化錫又はグラファイトからなる。
ドライバIC27又は不図示の他のドライバは、制御部11からの制御信号に基づいて、第1ヒータ29及び第2ヒータ31に電力を供給して、これらのヒータの動作を制御する。なお、特に図示しないが、各ヒータ及び/又はインクの温度を検出する温度センサがヘッド5内の適宜な位置に設けられてよい。そして、温度センサの検出温度に基づいて、制御部11又は各ヒータのドライバによって、各ヒータのフィードバック制御が行われてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、第1ヒータ29及び第2ヒータ31は、圧電アクチュエータ基板35に設けられてヘッド本体23内のインクを加熱するのではなく、基本的に、インク供給部材25に対して配置されてインク供給部材25内のインクを加熱する。従って、例えば、圧電アクチュエータ基板35は従来と同様の構成とされることができ、圧電アクチュエータ基板35の複雑化が低減される。また、例えば、インク供給部材25内の比較的大量のインクを加熱することから、インクの吐出量がインクの温度の変化に及ぼす影響が低減され、インクを安定して一定の温度に保つことができる。
なお、インクは、ドライバIC27や圧電アクチュエータ基板35等の熱によっても加熱される。従って、第1ヒータ29及び第2ヒータ31は、例えば、プリンタ1の起動時に、すなわち、ドライバIC27等によってまだインクが加熱されていない時に、速やかにインクを昇温することに寄与できる。すなわち、ヒータは、プリンタ1を速やかに定常状態にすることに寄与できる。なお、このようにヒータを利用する場合、インクの目標温度は、ヒータによる加熱が行われておらず、且つ、プリンタ1が定常状態となっているときのインクの温度とされる。
また、第1ヒータ29及び第2ヒータ31は、例えば、プリンタ1の定常状態においてドライバIC27等によって昇温されたインクが到達し得る温度と同等以上の温度にインクの温度を保つことによって、ドライバIC27等の駆動状態(画像の種類)に関わらず、インクの温度を一定に管理することに寄与できる。
本実施形態のヘッド5は、より具体的には、所定の開口方向(z方向負側)に開口する複数のノズル33a及び複数のノズル33aからインクを吐出させる駆動力を生じる圧電アクチュエータ基板35と、開口方向とは反対方向(z方向正側)からヘッド本体23に向かって延びており、開口方向に直交する方向(x方向)に配列され、ヘッド本体23内に通じる複数のインク供給路45と、ヘッド本体23に対して開口方向とは反対方向(z方向正側)に位置し(一部が位置する態様を含む)、複数のインク供給路45の配列に亘る大きさを有する第1ヒータ29(又は第2ヒータ31)と、を有している。
従って、複数のインク供給路45内における、ヘッド本体23に流れる直前、且つ、比較的大量のインクを加熱することができる。その結果、効率的且つ安定的にインクの温度を制御することができる。
また、ヘッド5は、複数のノズル33a及び複数のノズル33aからインクを吐出させる駆動力を生じる圧電アクチュエータ基板35を有するヘッド本体23と、ヘッド本体23内に通じ、壁部の少なくとも一部が可撓性のフィルム39によって構成されて容積が変化可能とされた複数のバッファー部43と、第2ヒータ31と、を有している。複数のバッファー部43は、隣接するバッファー部43間で壁部を共用することによりグループ化され、これにより第1バッファーグループ49A及び第2バッファーグループ49Bが構成されている。第2ヒータ31は、第1バッファーグループ49A及び第2バッファーグループ49Bの間に位置している(一部が位置する態様を含む)。
従って、バッファー部43の容積の変化によってインクの吐出量の急激な増減によるインクの圧力変動を吸収し、圧力変動が画質に及ぼす影響を低減できる。そして、第2ヒータ31は、2つにまとめられた複数のバッファー部43の間に配置されるから、効率的に複数の色に対応するインクを加熱することができる。また、バッファー部43は、圧力変動を効果的に吸収できるように、可撓性の壁部(フィルム39)の面する方向を厚さ方向として、比較的浅く且つ広く形成されることが多い。すなわち、バッファー部43では、インクの表面積が大きくされることが多い。これによっても、第2ヒータ31は、効率的にインクを加熱することができ、特に、バッファー部43の厚さ方向においてバッファー部43に対して比較的広い面積で対向することによって効率的にインクを加熱することができる。
また、本実施形態では、ヘッド本体23は、圧電アクチュエータ基板35を有している。そして、複数のノズル33aの開口方向とは反対方向へ、圧電アクチュエータ基板35、第1バッファーグループ49A、第2ヒータ31及び第2バッファーグループ49Bの順にこれらが配置されている。
従って、例えば、第2ヒータ31の熱は、第1バッファーグループ49Aのバッファー部43のインクに伝わり、このインクはバッファー部43を流れていく。従って、第2ヒータ31の熱は、圧電アクチュエータ基板35へ直接的には伝わりにくくなる。その結果、インクの温度を制御するための第2ヒータ31の熱の影響を圧電アクチュエータ基板35が受け、圧電アクチュエータ基板35の特性が変動するおそれが低減される。
また、本実施形態では、ヘッド5は、圧電アクチュエータ基板35を駆動制御するドライバIC27を更に有している。また、所定方向(複数のノズル33aの開口方向とは反対方向)へ、ドライバIC27、第1バッファーグループ49A、第2ヒータ31及び第2バッファーグループ49Bの順にこれらが配置されている。そして、第1バッファーグループ49Aは、ブラックインク用の第1バッファー部43Aを含む。
従って、複数の色のインクを均等に昇温することが容易化される。具体的には、まず、ブラックインクは、一般に、他の色のインクよりも使用量が多い。従って、ブラックインクの温度を他の色のインクと同等の温度に維持するためには、ブラックインクに対して他の色のインクよりも多くの熱量を付与する必要がある。一方、ドライバIC27は発熱するから、ドライバIC27側に配置された第1バッファーグループ49Aに収容されているブラックインクをドライバIC27によって重点的に昇温させることができる。しかも、ドライバIC27は、ヘッド本体23から多量のインクを吐出させるときほど圧電アクチュエータ基板35に印加する電力が多くなり、発熱量が増大する。従って、ブラックインクの使用量が多いときほどブラックインクに付与する熱量を多くすることができ、効率的にブラックインクと他の色との温度を同等にすることができる。
上記のブラックインクを重点的に加熱する作用効果は、特に、第1バッファーグループ49Aが、ドライバIC27に対向する壁部を共用する2つのバッファー部43を含み、その2つのバッファー部43のうちドライバIC27側に位置する第1バッファー部43Aがブラックインク用であるときに、顕著である。
以下、図5及び図6を参照して、第1ヒータ29及び第2ヒータ31の具体例又は変形例を説明する。
図5(a)は、第1ヒータ29の具体例を示す断面図である。当該断面図は、図4の一部に相当する。
この具体例では、第1ヒータ29は、フィルムヒータによって構成されている。そして、第1ヒータ29は、複数のインク供給路45を構成する複数の筒状部37aの外面に接着剤等によって貼り付けられている。このような構成によれば、例えば、第1ヒータ29の熱をインク供給路45内のインクに効率的に伝えることができる。また、例えば、ヘッド5の小型化も容易化される。
図5(b)は、第1ヒータ29の他の具体例を示す断面図である。当該断面図は、図4の一部に相当する。
この具体例でも、第1ヒータ29は、フィルムヒータによって構成されている。この具体例では、ドライバIC27に対して金属板からなるヒートシンク57が接着剤等によって固定されており、そのヒートシンク57に第1ヒータ29が接着剤等により貼り付けられている。このような構成によれば、例えば、ドライバIC27の発熱量が少ないときに第1ヒータ29によって発熱し、ドライバIC27の発熱量が多いときと同様の状態を再現することができる。
また、ドライバIC27単体を第1ヒータ29として用いてよい。その場合、例えば、図5(a)の第1ヒータ29の位置に、ドライバIC27を複数のインク供給路45を構成する複数の筒状部37aの外面に沿って配置する。具体的には、金属板からなるヒートシンク57の一方の面にドライバIC27を接着剤等により貼り付け、他方の面を筒状部37aに接着剤等によって貼り付ければよい。さらに、図5(b)に示したヒートシンク57の断面形状をL字状にするなどして、ドライバICと接している面と異なる面を複数のインク供給路45を構成する複数の筒状部37aの外面に接着剤等によって張り付けてもよい。いずれにしても、ドライバIC27の発熱を、インク供給路45内のインクに効率的に伝えることができる。
図6(a)は、第2ヒータ31の具体例を示す断面図である。当該断面図は、図4の一部に相当する。
この具体例では、第2ヒータ31は、フィルムヒータによって構成されている。そして、第2ヒータ31は、2つのバッファーグループ49の間に設けられたヒータ設置部61に接着剤等により貼り付けられている。ヒータ設置部61は、例えば、バッファー部43と同等の面積を有する金属板によって構成されており、インク供給部材25の一部として、バッファー部43に対向する向きで基体37に固定されている。そして、ヒータ設置部61の一方の面に第2ヒータ31が重ねられている。
なお、図6では、ヒータ設置部61は2つのバッファーグループ49に対して等しい距離で配置されているが、いずれか一方に近い位置に配置されてもよい。また、各バッファーグループ49に対向するヒータ設置部61及び第2ヒータ31が合計2組設けられてもよい。比較的厚いヒータ設置部61の両主面に第2ヒータ31が折り返されて貼り付けられていてもよい。
図6(b)は、第2ヒータ31の変形例を示す断面図である。当該断面図は、図4の一部に相当する。
この変形例では、複数のバッファー部43の壁部を構成する可撓性の第1フィルム239A〜第4フィルム239Dがフィルムヒータによって構成されている。そして、第2フィルム239B及び第3フィルム239Cは、第2ヒータ31として機能する。なお、4つのフィルムのうち、第2フィルム239B及び/又は第3フィルム239Cのみがフィルムヒータによって構成されてもよい。
この変形例によれば、例えば、第2ヒータ31がバッファー部43を構成する可撓性のフィルム239に兼用されることから、ヘッド5の小型化及びヘッド5の製造工程の簡素化が図られる。また、例えば、第2ヒータ31は直接的にバッファー部43のインクを加熱することができ、効率的である。
図7は、バッファー部の変形例を示す模式的な断面図である。なお、この断面図は、直交座標系xyzから理解されるように、図4の紙面右側から見た断面図に相当する。
この変形例は、5色以上(図7の例では7色)のインクが用いられる場合におけるバッファー部の構成の例を示している。この場合においても、実施形態と同様に、複数のバッファー部43及び243は、第1バッファーグループ249A及び第2バッファーグループ249Bにまとめられ、その間に第2ヒータ31が配置されている。また、各バッファーグループ249は、例えば、実施形態と同様に、第2ヒータ31に対向する不図示の壁部を共用する2つのバッファー部243(又は43)を含む。
さらに、各バッファーグループ249は、第2ヒータ31に対向する壁部に沿って並べられた複数(2つ)のバッファー部243を含んでいる。より具体的には、例えば、ブラックインクに対応するバッファー部43は、実施形態と同様の構成とされており、他の色のインクに対応するバッファー部243は、実施形態のバッファー部43をxy平面において分割して構成されている。ブラックインクに対応するバッファー部43の面積を大きくしてあることにより、一般的に他の色のインクより使用量が多いブラックインクに多くの熱量を付与することができる。なお、xy平面において互いに隣接するバッファー部243同士は、例えば、特に図示しないが、実施形態の基体37に相当する部材において、実施形態のバッファー部43と同様の凹部に形成されたリブによって仕切られている(リブを共有している)。
このような構成によれば、例えば、実施形態と同様に、2つのバッファーグループ249内のインクを効率的に加熱することができる。また、例えば、インクの色が5色以上になった場合に、2つのバッファーグループ249及び第2ヒータ31の積層方向(z方向)にバッファー部を増加させるのではなく(この態様も本願発明に含まれる)、当該積層方向に交差(より詳細には直交)する方向(x方向)にバッファー部を増やすことから、2つのバッファーグループ249間の第2ヒータ31によって、複数のインクを平均的に加熱することができる。
本発明は、以上の実施形態(具体例含む)又は変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、プリンタ(インクジェットヘッド)は、ピエゾヘッド式、シリアルヘッド式、且つ、オフキャリッジ式に限定されない。例えば、プリンタは、サーマルヘッド式、ラインヘッド式、及び/又は、オンキャリッジ式であってもよい。プリンタにおけるインクジェットヘッド以外の部分(例えばメディアの搬送部)の構成も例示した構成以外の適宜な構成とされてよい。メディアも紙に限定されず、金属又は樹脂からなるものであってもよい。
ヘッド本体内に通じる流路を構成するインク供給部材の構成も、例示したものに限定されない。例えば、複数の導入路(41)は、立体交差するように構成されてもよいし、基体37のみによって構成されてもよい。また、例えば、複数のバッファー部は、2つのバッファーグループにまとめられなくてもよい。また、例えば、2つのバッファーグループは、複数のノズルの開口方向に直交する方向において互いに対向していてもよい。また、例えば、バッファー部が設けられなかったり、インク供給路が設けられずにバッファー部が直接にヘッド本体に接続されたりしてもよい。
ドライバICは、一つに限定されず、複数設けられてもよい。例えば、ヘッド本体に接合されるFPCは、ヘッド本体から延び出る延在部を2つ有し、当該2つの延在部それぞれにドライバICが実装されてもよい。この2つのドライバICがヘッド本体と、バッファー部との間に配置されてもよい。