フレキシブル配線基板が、圧電アクチュエータ基板を覆っている場合、圧電アクチュエータ基板における逆圧電効果による撓み変形に影響を及ぼすおそれがある。例えば、加圧室上において、フレキシブル配線基板が圧電アクチュエータ基板に接触していると、フレキシブル配線基板の荷重が圧電アクチュエータ基板に対して加圧室側へ加えられる。その結果、意図された動作を正確に実現できないおそれがある。したがって、フレキシブル配線基板が圧電アクチュエータ基板の動作に及ぼす影響を低減できるインクジェットヘッドが提供されることが望ましい。
図1は、本開示の実施形態に係るプリンタ1の要部を模式的に示す斜視図である。
プリンタ1は、インクジェットプリンタである。より具体的には、例えば、プリンタ1は、ピエゾヘッド式、シリアルヘッド式、かつ、オフキャリッジ式のカラープリンタとされている。なお、プリンタ1は、適宜な数の色のインクでカラーの画像を実現してよいが、本実施形態では、4色(ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアン)のインクによってカラー画像を実現する。
プリンタ1は、例えば、メディア(例えば紙)101を矢印y1で示す搬送方向へ搬送する搬送部3と、搬送されているメディア101に向けてインク滴を吐出するヘッド5と、ヘッド5をメディア101の搬送方向に直交する副走査方向(矢印y2)において往復移動させる走査部7と、ヘッド5にインクを供給するインクカートリッジ9と、ヘッド5からのインクの吐出動作を含むプリンタ1の動作を制御する制御部11とを有している。
およびヘッド5からメディア101へのインク滴の吐出が、副走査方向に直交する方向である主走査方向に広がった範囲で繰り返し行われつつ、走査部7によるヘッド5の往復移動が行われることにより、メディア101には帯状の2次元画像が形成される。更に、搬送部3によってメディア101が間欠的に搬送されることで、メディア101には、帯状の2次元画像が繋がって連続的な2次元画像が形成される。
搬送部3は、例えば、不図示の供給スタックに積層された複数のメディア101を一ずつ不図示の排出スタックへ搬送する。搬送部3は、公知の適宜な構成とされてよい。図1では、搬送経路がストレートパスとされ、メディア101に当接するローラ13と、ローラ13を回転させるモータ15と、モータ15に駆動電力を付与するドライバ17とを有する搬送部3が例示されている。
走査部7は、公知の適宜な構成とされてよい。例えば、走査部7は、ヘッド5が搭載される不図示のキャリッジを副走査方向に案内可能に支持する不図示のガイドレールと、キャリッジに固定された不図示のベルトと、当該ベルトが掛け渡された不図示のプーリと、当該プーリを回転させるモータ19と、モータ19に駆動電力を付与するドライバ21とを有している。
インクカートリッジ9は、ヘッド5とは別の場所に(ヘッド5と共に移動しないように)設置されている。インクカートリッジ9は、可撓性のチューブを介してヘッド5と接続されている。インクカートリッジ9は、ヘッド5が吐出するインクの色の数に対応して複数(本実施形態では4つ)設けられている。
制御部11は、例えば、CPU、ROM、RAMおよび外部記憶装置を含んで構成されている。制御部11は、搬送部3のドライバ17、走査部7のドライバ21およびヘッド5のドライバ(後述)に制御信号を出力し、搬送部3、走査部7およびヘッド5の動作を制御する。
図2は、ヘッド5の一部を示す分解斜視図である。なお、図2の紙面下方(z方向の負側)がメディア101側である。
ヘッド5は、インクの流路を構成する流路部材23と、流路部材23からインクを吐出させるための駆動力を生じる圧電アクチュエータ基板25と、圧電アクチュエータ基板25に電気的に接続されたFPC(フレキシブル配線基板)27と、FPC27を介して圧電アクチュエータ基板25を駆動制御するドライバIC29とを有している。
流路部材23は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されており、メディア101に対向する第1面23aおよびその背面の第2面23bを有している。第1面23aには、インク滴を吐出するために、後述する複数のノズルが開口している。また、第2面23bの端部には、インクが供給されるインク供給口31が色毎に形成されている。
圧電アクチュエータ基板25は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されており、流路部材23の第2面23bに重ねられる。圧電アクチュエータ基板25は、例えば、第2面23bの大部分(複数のインク供給口31の配置領域を除く部分)を覆う大きさに形成されている。
FPC27は、例えば、圧電アクチュエータ基板25を覆う対向部27aと、当該部分から圧電アクチュエータ基板25の外方へ延び出る延在部27bとを有している。なお、延在部27bは、および主走査方向および副走査方向のいずれの方向に設けられてもよい。
ドライバIC29は、例えば、延在部27bにおいて、対向部27aが圧電アクチュエータ基板25に対向する側の面と同一の面に実装されている。なお、ドライバIC29は、FPC27が折り曲げられることによって適宜な位置に配置されてよい。また、FPC27に延在部が2つ設けられ、その2つの延在部それぞれにドライバIC29(合計2つのドライバIC29)が設けられてもよい。
図3(a)は、図2の領域IIIaに相当する領域において流路部材23および圧電アク
チュエータ基板25を示す拡大平面図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線における断面図である。
既に述べたように、流路部材23は、第1面23aに開口する複数のノズル33を有している。また、流路部材23は、複数のノズル33に通じ、第2面23b側に開口する複数の加圧室35(図2も参照)と、インク供給口31からのインクを複数の加圧室35に供給するための共通流路37(図3(b))とを有している。
なお、これらの具体的形状は適宜に設定されよい。例えば、本実施形態において示すように、加圧室35の平面形状は、短辺の中央にノズル33が接続される概ね矩形であってもよい。また、例えば、加圧室35の平面形状は、角部にノズル33が接続される菱形であってもよいし、半円状の端部にノズル33が接続される長円乃至は楕円であってもよい。
流路部材23は、例えば、流路となる貫通孔もしくは溝が形成された複数の板状部材39がz方向に積層されることによって構成されている。複数の板状部材39は、例えば、金属からなる。なお、第1面23aを構成する板状部材39を樹脂で構成し、他の板状部材39を金属で構成するなどしてもよい。
圧電アクチュエータ基板25は、例えば、ユニモルフ型の圧電アクチュエータ基板により構成されており、流路部材23側から順に、弾性体41、共通電極43、圧電体45および複数の個別電極47(図2も参照)が積層されて構成されている。なお、これらはいずれも層状(板状)に形成されている。
弾性体41は、複数の加圧室35の上面を構成している。個別電極47と共通電極43との間に電圧が印加されると、圧電体45は逆圧電効果によって平面方向において縮小する。これにより、弾性体41は加圧室35側へ撓む。この動作が利用されて、加圧室35内のインクに圧力が付与され、インク滴がノズル33から吐出される。
弾性体41、共通電極43および圧電体45は、複数の加圧室35全体に亘って設けられている。一方、個別電極47は、加圧室35毎に設けられている。共通電極43には、例えば、基準電位が付与される。複数の個別電極47には選択的に共通電極43とは異なる電位(駆動信号)が付与される。これにより、複数のノズル33から選択的にインク滴が吐出される。
複数の個別電極47は、加圧室35の概略全体に重なり、圧電体45に電圧を印加するための電極本体47aと、FPC27との接続のための引出電極47bとを有している。電極本体47aは、例えば、加圧室35の平面形状と概ね同様(相似)の形状とされており、本実施形態では、矩形であり、加圧室35より小さい。引出電極47bは、電極本体47aから適宜な方向に延び出ている。例えば、引出電極47bは、電極本体47aに対してノズル33とは反対側へ、加圧室35と重ならない位置まで延び出ている。個別電極47と共通電極43とに挟まれた圧電体45が平面方向において縮小することで弾性体41が加圧室35側に撓む際には、加圧室35の周縁部の圧電体45は平面方向において伸長されることになる。そのため、加圧室35の周縁部の圧電体45が逆圧電効果によって平面方向において縮小すると、かえって撓み量が小さくなってしまう。そのため、加圧室35の周縁部には、駆動信号を伝える引出電極47b以外の電極を設けていない。
なお、以下では、図3において示した、流路部材23および圧電アクチュエータ基板25のうち、一のノズル33に対応する部分(概略、平面視において加圧室35および個別電極47の配置領域)を吐出素子49ということがある。
図4は、概ね図2の領域IVに相当する領域において流路部材23および圧電アクチュエータ基板25を示す平面図である。
図2および図4に示すように、複数の吐出素子49は、ほぼ主走査方向と一致する第1方向に並んでいる吐出素子行51を構成している。吐出素子行51は複数存在し、第1方向と交差する方向である第2方向に並んでいる。第2方向と副走査方向とはほぼ一致している。具体的には、例えば、以下のとおりである。
複数の吐出素子49それぞれは、加圧室35に対してノズル33が配置されたり、電極本体47aに対して引出電極47bが延び出たりする方向を副走査方向(x方向、第2方向)に一致させて配置されている。
複数の吐出素子49が主走査方向(y方向、第1方向)に配列されて構成された吐出素
子49の行(吐出素子行51)においては、複数の吐出素子49は、互いに同一の向きとされている。隣り合っている吐出素子行51同士は、ノズル33(引出電極47b)の向きが互いに逆向きとされ、また、吐出素子49の主走査方向における半分の大きさで、互いにずれて配置されている。
ノズル33側同士を向い合わせた2つの吐出素子行51は、一のインクに対応しており、本実施形態では、4色に対応して、合計で8つの吐出素子行51が設けられている。なお、ブラックインクに対しては吐出素子行51の数を多くするなど、色毎に吐出素子行51の数が異なっていてもよい。
なお、複数の吐出素子49が複数の吐出素子行51を構成していることから明らかなように、複数の加圧室35は、主走査方向(y方向、第1方向)に配列されて加圧室行53(図2)を構成しており、複数の加圧室行53が副走査方向(x方向、第2方向)に並んでいる。
図4に示すように、共通流路37は、インク供給口31に接続されるとともに、吐出素子行51の数に対応して分岐して、吐出素子行51に沿って延びている。
図5は、図4に示した領域と同等の大きさの領域に関して、FPC27の配線パターンを透視して示す平面図である。図6(a)は、図5のVIa−VIa線における、流路部材23の最上層の板状部材39、圧電アクチュエータ基板25およびFPC27の断面図である。
FPC27は、図6(a)に示すように、絶縁性のベースフィルム55と、ベースフィルム55上に形成された導体パターン57と、導体パターン57を覆う絶縁膜59とを有している。そして、FPC27の対向部27aは、絶縁膜59側を圧電アクチュエータ基板25側に対向させて配置されている。
ベースフィルム55は、例えば、可撓性の樹脂フィルムからなる。導体パターン57は、例えば、金属からなる。絶縁膜59は、例えば、ソルダーレジストからなる。ソルダーレジストは、例えば、顔料等を含んだ熱硬化性エポキシ樹脂からなる。
図5および図6(a)に示すように、導体パターン57は、複数の配線61と、複数の配線61の先端に設けられた複数のパッド63とを含んでいる。
複数の配線61は、例えば、吐出素子行51(加圧室行53)に重なるように吐出素子行51に沿って互いに並列に(例えば平行に)延びている。ただし、複数の配線61(その束乃至は配置領域)は、吐出素子行51に対して引出電極47b側とは反対側にずれた位置にて延びている。例えば、複数の配線61は、加圧室35の引出電極47b側には重なっていない一方で、加圧室35の引出電極47bとは反対側には重なっている。別の観点では、複数の配線61は、引出電極47b側とは反対側を向き合わせている2つの吐出素子行51に対して、その間側において重なって延びている。
図5において、複数の配線61は、例えば、紙面上方側(y方向負側)がドライバIC29に接続される側である。図5に示すように、複数の配線61は、ドライバIC29側から吐出素子行51に沿って伸びている第1部位と、第1部位である外側に位置する配線61から順に曲がって引出電極47bへ向かって伸び、その先端にパッド63が設けられている第2部位とを含んでいる。
パッド63と引出電極47bとは対向し、接続部であるバンプ65(図6(a))によ
って接合されている。これにより、ドライバIC29が配線61を介して個別電極47と電気的に接続される。また、FPC27は、圧電アクチュエータ基板25に対して固定される。バンプ65は、導電性を有する適宜な材料により形成されてよい。例えば、バンプ65は、金属(例えばAg)からなる粒子を含む樹脂(例えば熱硬化性樹脂)により構成されている。
図5および図6(a)に示すように、絶縁膜59は、パッド63を露出させて複数の配線61を覆っている。これにより、複数の配線61は、導電性材料の付着によって互いに短絡することなどが低減されている。なお、図5において、範囲ARは、絶縁膜59の幅を示している。絶縁膜59は、加圧室35の少なくとも一部に重なる幅を有している。
図6(a)に示すように、引出電極47bとパッド63との間にバンプ65が介在していることによって、個別電極47と絶縁膜59とは、比較的低い圧力で接触している、または、微小隙間(例えば10μm以下)で対向する状態となっている。
なお、このような状態は、例えば、以下のようにFPC27を圧電アクチュエータ基板25に接合することにより実現される。まず、引出電極47b上に、バンプ65となる未硬化状態の材料を塗布する。次に、FPC27を圧電アクチュエータ基板25上に被せ、FPC27を圧電アクチュエータ基板25に押し付ける。この際、バンプ65となる材料が潰れ(変形し)、絶縁膜59が圧電アクチュエータ基板25に接するまたは近づく。その後、バンプ65となる材料が加熱硬化される。
図6(b)は図6(a)の領域VIbの拡大図である。
図6(a)および図6(b)に示すように、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さTは、複数の配線61側よりも端部側において薄くなっている。すなわち、絶縁膜59は、厚肉領域59aと、薄肉領域59bとを有している。また、この厚みの変化は、加圧室35上にて生じている。すなわち、加圧室35上において、厚さTは、複数の配線61側よりもその反対側において薄くなっている。なお、厚さTは、別の表現をすれば、ベースフィルム55から絶縁膜59の表面までの高さである。
また、図6(a)および図6(b)に示すように、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さT2は、厚肉領域59aの中の複数の部分で薄くなっている。この薄い領域は、配線61の間において、配線61の伸びている方向であるy方向に沿って伸びている。すなわち、加圧室35と重なっている部分の絶縁膜59には、y方向に沿って伸びている厚肉部59dと、y方向に沿って伸びており、厚さが厚肉部59dよりも薄い薄肉部59eとが、x方向に交互に配置されている。厚肉部59dと薄肉部59eとが交互に配置された部分は、配線61の配置されていない領域にまで広がって配置されてもよい。
このような絶縁膜59の厚さの変化は、適宜に生じさせることができる。例えば、絶縁膜59の形成方法にもよるが、複数の配線61の配置領域は、非配置領域に比較して厚さTが厚くなりやすい。例えば、スクリーン印刷によってソルダーレジストを塗布して絶縁膜59を形成すると、絶縁膜59は複数の配線61の配置領域において厚さTが厚くなり、非配置領域である端部にて薄くなる。
なお、当該方法に代えてまたは加えて、例えば、絶縁膜59の形成領域全体にソルダーレジスト等の材料を塗布した後、厚さTを厚くしたい領域にのみ再度材料を塗布してもよい。また、絶縁膜59となるソルダーレジストを塗布した後、乾燥あるいは硬化する前、もしくは半乾燥あるいは半硬化した状態で、厚さTを薄くしたい部分を金型などで押圧して、変形させて、絶縁膜59に厚い部分と薄い部分を作ってもよい。
図2に示したドライバIC29は、記述のように、FPC27を介して複数の個別電極47に電気的に接続される。また、特に図示しないが、圧電アクチュエータ基板25には、共通電極43に接続されたパッドが設けられ、当該パッドにFPC27の配線およびパッドが接合されることにより、ドライバIC29は、共通電極43に電気的に接続される。
ドライバIC29には、例えば、所定の駆動周期毎に、全てのノズル33に関して吐出すべきインク量のデータが制御部11から入力される。ドライバIC29は、例えば、共通電極43に基準電位を付与するとともに、入力されたデータに基づいて複数の個別電極47に所定の波形の駆動信号を選択的に出力する。また、ドライバIC29は、例えば、入力されたデータに基づいて駆動周期内において駆動信号を出力する回数を設定する。
以上のとおり、本実施形態では、ヘッド5は、流路部材23、圧電アクチュエータ基板25およびFPC27を有している。流路部材23は、第1面23aに開口するノズル33、および、ノズル33に通じ、第1面23aの背面である第2面23bに開口する加圧室35を有している。流路部材23としては、加圧室35が開口している側に、加圧室35を塞ぐように板状部材39を更に積層したものを用いてもよい。加圧室35を流路部材23内で第2面23b側に配置することで、加圧室35を覆うように配置されている圧電アクチュエータ基板25に生じる圧力は、加圧室35上に積層された板状部材39を介して加圧室35に伝わる。このようにすることで、例えば、インクの溶媒などが圧電アクチュエータ基板25の信頼性に影響を与える可能性を小さくできる。圧電アクチュエータ基板25は、第2面23bに重ねられて加圧室35を塞いでいる。FPC27は、絶縁性のベースフィルム55、ベースフィルム55の一方の面に設けられた配線61、および、配線61を覆う絶縁膜59を有し、絶縁膜59側を圧電アクチュエータ基板25の流路部材23とは反対側に対向させて配置され、圧電アクチュエータ基板25に電気的に接続されている。加圧室35上において、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さTは、第2面23bに沿う所定方向(x方向、第2方向)の一方側(配線61側)と他方側とで異なっている。
したがって、加圧室35上において、絶縁膜59は、厚い部分がスペーサとなって薄い部分が圧電アクチュエータ基板25(個別電極47)に接することが抑制される。その結果、FPC27が圧電アクチュエータ基板25の動作に及ぼす影響を低減できる。具体的には、例えば、FPC27の荷重が加圧室35上にて圧電アクチュエータ基板25に加えられることが抑制される。また、例えば、加圧室35上の少なくとも一部においてFPC27が個別電極47に密着することが抑制されることから、個別電極47がFPC27から離れるときに両者の間に空気が入り込みやすく、両者の間の負圧による抵抗が低減される。
加圧室35と重なる位置の厚肉領域59aにおいて、厚肉部59dと薄肉部59eとは配置されているので、圧電アクチュエータ基板25の動作に及ぼす影響を低減できる。また、フレキシブル配線基板27と圧電アクチュエータ基板25とは、接続部であるバンプ65で電気的および物理的に接合している。複数の接続部(バンプ65)は、y方向に並んで配置されて、接続部行66を構成している。複数の接続部行66は、x方向に並んでいる。すなわち、フレキシブル配線基板27は、接続部(バンプ65)の間隔が、y方向よりも大きくなっているx方向に撓みやすいなっている。そのため、y方向に伸びた厚肉部59dとy方向に伸びた薄肉部59eとをx方向に交互の配置することで、フレキシブル配線基板27をx方向に、より撓みやすくすることで、圧電アクチュエータ基板25の動作に及ぼす影響をより低減できる。
また、薄肉部59eを隣り合っている配線61の間に配置することで、配線61は厚肉部59dに配置されることになるので、配線61が露出して、断線などが起きるのを抑制できる。
また、本実施形態では、複数の配線61が加圧室35上において一方側に位置し、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さTは、前記一方側(複数の配線61側)が他方側よりも厚くなっている。
したがって、絶縁膜59の形成方法によっては、複数の配線61の配置領域において厚さTが厚くなりやすい現象を利用して、簡便に、加圧室35上において厚さTを一方側と他方側とで異ならせることができる。
また、本実施形態では、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さTが薄くなっている側において、引出電極47bが加圧室35から引き出されている。引出電極47bが存在する部分は、加圧室35の周縁部の中では、駆動信号が加わることで生じる振動の大きい部分なので、絶縁膜59が近接することにより影響が大きい部分である。引出電極47bが引き出されている側の絶縁膜59の厚さTが薄くなっていることで、この影響を生じ難くすることができる。
図7は、FPC27の変形例を示す図6(a)に相当する断面図である。
この変形例では、絶縁膜59は、加圧室行53(図2参照)の間に、ベースフィルム55からの厚さT(図6(b)参照)が、加圧室35上に位置する部分(厚肉領域59aおよび薄肉領域59b)よりも厚い部分(第2厚肉領域59c)を有している。第2厚肉領域59cは、例えば、加圧室行53に沿って延び、各加圧室行53の複数の加圧室35全体に亘る長さを有している。
第2厚肉領域59cは、薄肉領域59bに対して厚肉領域59aを形成したのと同様の手法によって形成されてよい。例えば、第2厚肉領域59cにおいては、厚肉領域59aよりも配線61の密度を高くしたり、加圧室行53の間において、絶縁膜59となる材料を、加圧室35上よりも多い回数で塗布したりすることにより形成されてよい。
このような構成によれば、絶縁膜59が加圧室35上にて圧電アクチュエータ基板25(個別電極47)に接することが更に抑制され、FPC27が圧電アクチュエータ基板25の動作に及ぼす影響をより低減できる。
また、この変形例では、絶縁膜59の端部は、加圧室35上に位置している。したがって、加圧室35上の領域のうち絶縁膜59の端部よりも外側においては、絶縁膜59が圧電アクチュエータ基板25に接しない。別の観点では、絶縁膜59がスペーサとなることにより、加圧室35上の一部の領域においては、FPC27(ベースフィルム55)が圧電アクチュエータ基板25に接することが抑制される。その結果、FPC27が圧電アクチュエータ基板25の動作に及ぼす影響をより低減できる。
図8(a)および図8(b)は、FPC27の導体パターン57の変形例を示す平面図である。
実施形態では、図5を参照して説明したように、複数の配線61は、外側の配線から順に外側へ屈曲して引出電極47b上へ延びた。その結果、複数の配線61の配置領域の幅は、徐々に狭くなった。図8(a)および図8(b)の変形例では、複数の配線の配置領域の幅が複数の加圧室35に亘って一定に保たれるように導体パターン57が形成されて
いる。
図8(a)の例では、複数の配線61がドライバIC29側から加圧室行53に沿って延びるに伴い、複数の配線61を徐々に外側にずらし、また、複数の配線61の内側に複数の配線61と並列に延びるダミー配線67の数を徐々に増加させている。ダミー配線67は、電気的に浮遊状態とされていてもよいし、基準電位に接続されていてもよい。
図8(b)の例では、複数の配線61は、複数の配線61がドライバIC29側から加圧室行53に沿って延びるに伴い、残った配線61の幅を徐々に大きくしている。なお、図8(b)では、残った配線61全体の幅を徐々に大きくしているが、特定の配線61の幅を大きくしてもよい。
既に述べたように、絶縁膜59の形成方法によっては、絶縁膜59のベースフィルム55からの厚さは、複数の配線61の配置領域において厚くなる。そこで、図8(a)および図8(b)のように複数の配線61(およびダミー配線67)の配置領域の幅を複数の加圧室35に亘って一定に保つことにより、絶縁膜59の厚い部分(厚肉領域59a)の幅を複数の加圧室35に対して一定にすることができる。その結果、FPC27が複数の加圧室35に及ぼす影響を均一化することができる。
なお、ここでいう配線の配置領域の幅が一定とは、図5を参照して説明した実施形態に比較して配線の配置領域の幅の変化が小さければよいものとする。したがって、例えば、複数の加圧室35に亘って複数の配線の配置領域の幅の変化が1本の配線61の幅よりも小さければ、複数の配線の配置領域の幅は複数の加圧室35に亘って一定である。図8(b)のように1本の配線61の幅が変化する場合には、例えば、1本の配線61の幅の最小値を基準として判断してよい。配線61が枝分かれする位置における局所的な配置領域の変化は無視されてよい。配線の配置領域の幅は、前述の局所的な変化を除いて、±20%の範囲内、更に±10%の範囲内であることが好ましい。
本開示は、以上の実施形態または変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、プリンタ(インクジェットヘッド)は、シリアルヘッド式、かつ、オフキャリッジ式に限定されない。例えば、プリンタは、ラインヘッド式、および/または、オンキャリッジ式であってもよい。プリンタにおけるインクジェットヘッド以外の部分(例えばメディアの搬送部)の構成も例示した構成以外の適宜な構成とされてよい。メディアも紙に限定されず、金属または樹脂からなるものであってもよい。