JP6309400B2 - 杭撤去方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、既設杭の上空に何らかの構造物が存在する施工現場では、既設杭を撤去するにあたって、大型クレーンを用いることができない場合もあり、工夫が求められている。
このようにして、既設杭の上空に何らかの構造物が存在し、クレーン作業が制約を受ける領域にて、圧入装置の配置及び既設杭の撤去を効率的に行うことが可能な杭撤去方法を提供することができる。
具体的には、橋脚間に橋桁を架け渡す工事の際、橋桁を下方から一時的に支持する鉄骨架台等を橋脚間に予め設ける場合があり、この鉄骨架台等を支持するコンクリート基礎の下方地盤に、上記場所打ち杭が延設されている。そして、橋桁の架け渡し工事完了後、鉄骨架台は撤去され、さらに、上記コンクリート基礎及び場所打ち杭の撤去を必要とする場合が多い。この場合、図1に示すように、コンクリート基礎Fを撤去した後、場所打ち杭からなる既設杭Pを撤去する際、図2に示すように、橋桁Bが既設杭Pの上方に既に構築されているため、クレーン作業が制約されることとなる。そのため、大型クレーンを用いて既設杭Pを撤去することは困難となる。このような橋桁Bの架渡し施工時に用いられた既設杭Pの全長は、例えば、十数mにも及び、その重量は一本当たり数十トンにもなる。
本実施形態においては、既設杭Pの上方に存在する構造物の一例として、橋桁Bを挙げ、その架渡し工事の際に用いる場所打ち杭(P)を撤去する場合を一例として、以下説明する。
本実施形態において、伸縮部3は、1つの走行台車(2a又は2b)上に、走行方向に離間してそれぞれ2本ずつ、つまり、全部で4本立設されている。各伸縮部3は、具体的には、それぞれ複数本(図2では5本)のブームをテレスコープ状に連続させた伸縮ブームからなる。各伸縮ブームは、ブーム内に内蔵された伸縮シリンダ(図示省略)により、同期して同一速度で伸縮するように構成されている。尚、各伸縮部3の伸縮ストロークは、例えば、後述する図6に示すように、圧入装置10を梁部4の下方の地表面上に配置した状態で、後述する掘削ケーシングC1又は接続ケーシングC2の内の適宜最大長さ(例えば3m程度)のケーシングを圧入装置10の上方に吊り上げ可能に設定されている。さらに、この吊り上げ時に、梁部4の天端が、橋桁Bに干渉しないように設定されている。
この各伸縮部3は、最下段ブームの下端部が走行台車(2a又は2b)に固定され、最上段ブームの上端部が梁部4(詳しくは後述の第1サブビーム4a)に固定されている。
本実施形態において、梁部4は、走行方向に延設される2本の第1サブビーム4a,4aと、走行方向と直交しサブビーム4a,4aの上部に位置する2本のメインビーム4b,4bとを含み、これらが矩形枠状に組み付けられて形成されている。また、梁部4は、2本のメインビーム4b,4bの上部にて走行方向に延設して架け渡される第2サブビーム4cを有している。この第2サブビーム4cの両端部には、ガイドローラを備えたガイドローラ部4dがそれぞれ取り付けられている。第2サブビーム4cは、このガイドローラ部4dを介して、メインビーム4b,4b上を走行方向と直交する方向(以下、「横行方向」という)に横行可能に構成されている。ガイドローラ部4dには、図示を省略したが、例えば、電動モータ等が内蔵されている。これによりガイドローラ部4dは、横行方向に移動可能に構成されている。また、第2サブビーム4cの下面側には、図2に示すように、圧入装置10や既設杭P等の吊り上げ用の吊り具(例えば、フック)5が取り付けられている。
このようにして、門型リフター1は、一対の走行台車2,2にそれぞれ2本の伸縮部3を立設し、伸縮部3の上端部に梁部4を接続して、門型に構成されている。
具体的には、圧入装置10は、筒状ケーシングCを把持して回転させつつ地盤上下方向に圧入すると共に、その圧入した筒状ケーシングCを引き上げ可能に構成され、例えば、ベースフレーム11と、スラストジャッキ12と、昇降フレーム13と、チャック装置14とを含んで構成されている。
この圧入装置10は、筒状ケーシングCを把持して回転させつつ、スラストジャッキ12を作動させて昇降フレーム13を下降させることにより、筒状ケーシングC(C1,C2)を地中に圧入する。スラストジャッキ12が下端(ストロークエンド)まで下降すると、筒状ケーシングCの把持を解除する。その後、昇降フレーム13を上昇させ、筒状ケーシングCの上部を再び把持し、さらに地中へ筒状ケーシングCを回転させつつ圧入する。この作業を繰り返して、既設杭Pの全長に応じた深さまで、筒状ケーシングCを圧入して、既設杭Pを周囲の地盤から縁切りする。
そして、圧入装置10は、筒状ケーシングCの引き上げ時には、昇降フレーム13を下端に位置させた状態で、接続ケーシングC2を把持し、その後、昇降フレーム13を上昇させて、スラストジャッキ12が上端まで上昇させる。そして、地上に引き上げた接続ケーシングC2を門型クレーン1により撤去し、次の接続ケーシングC2の上端部にワイヤー等を掛けて門型クレーン1により支持する。その後、圧入装置10は、把持を解除して、昇降フレーム13を下降させて、接続ケーシングC2又は掘削ケーシングC1を把持しつつ昇降フレーム13を上昇させる。この作業を繰返して、筒状ケーシングC全体を引き上げる。
その後、門型リフター1の伸縮部3を下降方向に動作させ、図5に示すように、圧入装置10を地表面上に配置し、門型リフター1を退避させる。このようにして、圧入装置10を既設杭Pの配置領域S(図1参照)に合わせて配置する。本実施形態において、この工程が、本発明に係る杭撤去方法における「装置配置工程」に相当する。
その後、圧入装置10により、掘削ケーシングC1を把持して回転させつつ下降させることにより、掘削ケーシングC1を既設杭Pの周囲を囲むように地中に圧入する。そして、スラストジャッキ12(図3参照)を下端(ストローク)まで縮めたところで、掘削ケーシングC1の把持を解除して、昇降フレーム13(図3参照)を上昇させる。その後、接続ケーシングC1の上部を把持し、接続ケーシングC2を回転させつつ下降させることにより、図8に示すように、掘削ケーシングC1をさらに下方に圧入する。そして、この作業を、後続の接続ケーシングC2について繰り返して、図9に示すように、既設杭Pの全長に応じた深さまで、掘削ケーシングC1並びに接続ケーシングC2からなる筒状ケーシングCを圧入して、既設杭Pを周囲の地盤から縁切りする。本実施形態において、この工程が、本発明に係る杭撤去方法における「圧入工程」に相当する。
そして、梁部4に吊り具(例えば、フック)5を介して既設杭Pの一端部P1を連結し、伸縮部3を伸長させ、既設杭Pを引き上げる。
具体的には、図10、及び、図10に示すA矢視方向から見た筒状ケーシングCの頂部を含む部分断面図である図11に示すように、既設杭Pの一端部P1に、ケミカルアンカーボルト6aを打ち込み、そのケミカルアンカーボルト6aの端部に吊り金具6bを取り付け、この吊り金具6bに玉掛けしたワイヤーを、門型リフター1の吊り具5に掛けて、既設杭Pを引き上げる。
さらに、図12に示すように、既設杭Pを引き上げ、既設杭Pの一端部P1側を所定長さ分だけ露出させる。この既設杭Pの露出部分P2の周りには、図示を省略したが、土砂等が付着しており、この付着土をバックホー等により取り除く。その後、図12に示すように、この露出部分P2における筒状ケーシングC2の上端部付近の適宜高さ位置で、水平方向に貫通する2つの貫通孔Paを、図13に示すように、例えば、互いに平行に延伸するようにして削孔する。そして、この貫通孔Paに、それぞれ、例えば、総ネジPC鋼棒(ゲビンデスターブ)等の鋼棒8を挿通し、各鋼棒8の両端からそれぞれナット9を螺合させて、各鋼棒8を既設杭(露出部分P2)Pに強固に取り付ける。各鋼棒8は、筒状ケーシングCの直径より長く、その両端部はそれぞれ、平面視で、筒状ケーシングCの外周面より外方に突出するように取り付けられている。
次に、筒状ケーシングCに預けられた既設杭Pの残余部分の一端部P1を、例えば鋼棒8にワイヤーを掛ける等して門型リフター1により吊り上げる。そして、露出された露出部分P2に、同様に、貫通孔Paを削孔し、別の鋼棒8を挿通し、その鋼棒8にナット9を螺合する。この既設杭Pを再び筒状ケーシングCに預けた状態で露出部分P2を地表から所定位置で切断し、この新たな露出部分P2の吊り具側部分P2aを門型リフター1により撤去する。
このように、梁部4に吊り具5を介して既設杭Pの一端部P1を連結し、伸縮部3を伸長させて既設杭Pの一端部P1側を所定長さ分だけ露出させ、露出部分P2を地表から所定高さ位置で切断し、走行台車(2a,2b)を走行させて露出部分P2の吊り具側部分P2aを配置領域Sから撤去する工程を一サイクルとし、このサイクルを既設杭Pの他端部P3が地上に引き抜かれるまで繰り返す。本実施形態において、この工程が、本発明に係る杭撤去方法における「引き抜き工程」に相当する。
そして、図示を省略するが、他の既設杭P(図1では、残り5本)についても、図4〜図19で説明した各工程を行い、全ての既設杭Pの撤去工事が完了する。
このようにして、既設杭の上空に何らかの構造物が存在し、クレーン作業が制約を受ける領域にて、圧入装置の配置及び既設杭の撤去を効率的に行うことが可能な杭撤去方法を提供することができる。
このような現場では、杭撤去方法は、後述する図20又は図21に示すように、地表面上に架台20を設置する架台設置工程と、覆工板21を架台20上に固定する覆工板固定工程とを、前述した装置配置工程に先立って更に含むとよい。
前記架台20は、筒状ケーシングCが挿通される開口部20aを各既設杭Pの配置領域Sに合わせた位置に設けられてなり、例えば形鋼等を用いて形成される。より具体的には、地表面上にベースコンクリート20bが施工され、架台20は、このベースコンクリート20bを介して地表面上に配置される。
前記覆工板21は、開口部20a毎に分割形成される。そして、各覆工板21が、架台20上に固定される。
このように、架台設置工程と覆工板固定工程を含む場合、装置配置工程は、門型リフター1を、梁部4が既設杭Pの上方に位置するように、覆工板21上に配置する門型リフター配置工程と、各覆工板21のうち一の覆工板21aを撤去した後、圧入装置10を撤去した覆工板21a下の開口部20aを跨ぐように、一の覆工板21aに隣接する他の覆工板21b上に固定することにより、圧入装置10の回転止めを行う回転止め工程と、を有する。また、門型リフター1の走行レールLは、覆工板21上に固定される。
これにより、上空に構造物が存在する上、既設杭Pの配置領域Sの周囲の地盤中に地下構造物が存在する場合や、地表面に段差がある場合や、地盤が軟弱な場合等の条件が悪い現場であっても、圧入装置の配置及び既設杭の撤去を効率的に行うことが可能な杭撤去方法を提供することができる。また、回転駆動中の圧入装置10への筒状ケーシングCからの回転方向反力が大きく、圧入装置10を回転させる方向の力が大きい場合であっても、覆工板に圧入装置10を固定することができるため、圧入装置10の回転を防止することができる。その結果、筒状ケーシングCを効率的に回転させることができる。
これにより、圧入装置10の下部外周面11cと固定治具30との間にジャッキ31を配置して、圧入装置10を、ジャッキ31及び固定治具30を介して、覆工板21上に強固に固定することができ、より効率的に筒状ケーシングCを回転させることができる。
また、回転止め工程は、これに限らず、上記ジャッキ伸長工程に代えて、図21に示すように、ベースフレーム11の外周面11cと固定治具30の端面30aとの間に、楔32を打ち込む楔打ち込み工程を含んで構成するようにしてもよい。これにより、ジャッキにより固定する場合と比べて、簡易に固定することができる。そして、圧入装置10の周辺にスペースの余裕がない場合により好適である。
2a,2b・・・一対の走行台車
3・・・・・・・伸縮部
4・・・・・・・梁部
5・・・・・・・吊り具
6a・・・・・・ケミカルアンカーボルト
6b・・・・・・吊り金具
8・・・・・・・鋼棒
10・・・・・・圧入装置
11・・・・・・ベースフレーム
11c・・・・・外周面
20・・・・・・架台
20a・・・・・開口部
21・・・・・・覆工板
21a・・・・・一の覆工板
21b・・・・・他の覆工板
30・・・・・・固定治具
30a・・・・・端面
31・・・・・・ジャッキ
32・・・・・・楔
B・・・・・・・橋桁
C・・・・・・・筒状ケーシング
F・・・・・・・コンクリート基礎
L・・・・・・・走行レール
P・・・・・・・既設杭(場所打ち杭)
P1・・・・・・一端部
P2・・・・・・露出部分
P2a・・・・・吊り具側部分
P3・・・・・・他端部
P’・・・・・・流動化処理土
Pa・・・・・・貫通孔
S・・・・・・・配置領域
Claims (5)
- 地盤上下方向に延設して配置された既設杭を囲むように、筒状ケーシングを圧入装置により地表面側から圧入し、前記既設杭を周囲の地盤から縁切りした後、前記既設杭を撤去する杭撤去方法であって、
地表面に対し水平方向に走行可能な一対の走行台車と、該走行台車にそれぞれ立設されると共に地表面に対して鉛直方向に伸縮可能な各伸縮部と、該各伸縮部の上端部間を連結する梁部とを有する門型リフターにより、前記圧入装置を前記既設杭の配置領域に合わせて配置する装置配置工程と、
前記圧入装置により前記筒状ケーシングを圧入する圧入工程と、
前記圧入装置を前記門型リフターにより撤去した後、前記梁部に吊り具を介して前記既設杭の一端部を連結し、前記伸縮部を伸長させて前記既設杭の一端部側を所定長さ分だけ露出させ、該露出部分を貫通する貫通孔を削孔し、前記貫通孔に前記筒状ケーシングの直径より長い鋼棒を挿通し、前記既設杭を前記鋼棒の両端部を介して前記筒状ケーシングの上端部で支持した状態で、前記露出部分を地表から所定高さ位置で切断し、前記走行台車を走行させて前記露出部分の吊り具側部分を前記配置領域から撤去する工程を一サイクルとし、該サイクルを前記既設杭の他端部が地上に引き抜かれるまで繰り返す引き抜き工程と、
を含む、杭撤去方法。 - 前記既設杭は場所打ち杭であることを特徴とする請求項1に記載の杭撤去方法。
- 前記既設杭が複数個所に配置されている構成とし、
前記筒状ケーシングが挿通される開口部を前記各既設杭の配置領域に合わせた位置に設けられてなる架台を、前記地表面上に設置する架台設置工程と、
前記開口部毎に分割形成される各覆工板を、前記架台上に固定する覆工板固定工程と、
を前記装置配置工程に先立って更に含み、
前記装置配置工程は、
前記門型リフターを、前記梁部が前記既設杭の上方に位置するように、前記覆工板上に配置する門型リフター配置工程と、
前記各覆工板のうち一の覆工板を撤去した後、前記圧入装置を前記撤去した覆工板下の前記開口部を跨ぐように他の覆工板上に固定することにより、前記圧入装置の回転止めをする回転止め工程と、
を有する、請求項1又は2に記載の杭撤去方法。 - 前記回転止め工程は、
前記圧入装置の下部外周面の複数箇所にて該外周面と離間して対向する端面を有して形成される固定治具を、前記他の覆工板上に固定する治具固定工程と、
前記下部外周面と前記固定治具の端面との間に、楔を打ち込む楔打ち込み工程と、
を有する、請求項3に記載の杭撤去方法。 - 前記回転止め工程は、
前記圧入装置の下部外周面の複数箇所にて該外周面と離間して対向する端面を有して形成される固定治具を、前記他の覆工板上に固定する治具固定工程と、
前記下部外周面と前記固定治具の端面との間にジャッキを配置した後、該ジャッキを伸長させるジャッキ伸長工程と、
を有する、請求項3に記載の杭撤去方法。
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