この種の非接触型電圧検出装置(以下、単に電圧検出装置ともいう)として、本願出願人は下記の特許文献1に開示された電圧検出装置を既に提案している。この電圧検出装置1zは、フローティング回路部2および本体回路部63を備え、検出対象4に生じている高圧の交流電圧V1(検出対象交流電圧)を非接触で検出可能に構成されている。
フローティング回路部2は、図4に示すように、ガード電極11、検出電極12、電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15および絶縁回路16を備えている。電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15および絶縁回路16は、ガード電極11の電位(本体回路部63に設けられた交流電圧生成装置23の出力端子Poに接続されるため、交流電圧生成装置23から出力される交流電圧V3と同じ電位)を基準とする正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を本体回路部63の交流電圧生成装置23から受けて作動する。
このフローティング回路部2では、電流電圧変換回路13が、検出対象4の交流電圧V1とガード電極11の電圧(基準電圧)との電位差Vdiに起因して、この電位差Vdiの大きさに応じた電流値で、かつ電位差Vdiの極性に応じた向きで検出対象4と検出電極12との間に流れる検出電流Iを積分して、積分信号V2として出力する。また、A/D変換回路15が、バッファアンプ14を介して出力されるこの積分信号V2をサンプリングすることにより、その電圧波形を示すデジタルデータ(波形データ)D1に変換する。このデジタルデータD1は、絶縁回路16を介してデジタルデータD1aとして本体回路部63に出力される。
本体回路部63は、主電源回路21、DC/DCコンバータ22、交流電圧生成装置23および電圧計24を備えている。主電源回路21は、本体回路部63の各構成要素22,23,24を作動させるための電源電圧Vcc(基準電位としてのグランドGの電位を基準として生成される正の直流電圧)を出力する。
DC/DCコンバータ22は、電源電圧Vccに基づいて、一次側のグランドGおよび電源電圧Vccと電気的に分離された(フローティング状態の)二次側において、正電圧Vf+および負電圧Vf−を生成して出力する。この場合、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、DC/DCコンバータ22の二次側の内部基準電位(内部グランド)G1を基準とする直流電圧であって、互いの絶対値が同じで、かつ極性が互いに異なる直流電圧である。この正電圧Vf+および負電圧Vf−は、上記の2次巻線側の内部グランドG1がガード電極11に電気的に接続された状態で、フローティング回路部2に供給される。
交流電圧生成装置23は、図2に示すように、パルス電圧生成回路31、多段倍電圧整流回路32、第1放電抵抗33、コンデンサ34、第2放電抵抗35および制御回路36を備え、任意の波形の交流電圧(電圧信号)V3を生成すると共に、生成した交流電圧V3を出力端子Poを介してフローティング回路部2のガード電極11に印加する。
パルス電圧生成回路31は、トランス41と、トランス41を駆動する駆動回路42(一例として、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子42a〜42dで構成された駆動回路)とを備えている。駆動回路42は、制御回路36から出力される駆動信号Sa,Sbにより、スイッチング素子42a〜42dがオン・オフ制御されることでトランス41の1次巻線41aを駆動して、トランス41の2次巻線41bから交流電圧信号としての交流パルス電圧Vpを出力させる。多段倍電圧整流回路32は、交流パルス電圧Vpを整流することにより、高圧直流電圧Vhを生成して出力端子32aから出力する。
第1放電抵抗33は、高圧直流電圧Vhを分圧して検出電圧Vdeとして出力する。制御回路36は、入力した検出電圧Vdeをデジタルデータに変換し、この変換したデジタルデータとフローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aとに基づいて、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御しつつ生成してパルス電圧生成回路31に出力する。この構成により、制御回路36は、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御することにより、パルス電圧生成回路31によって生成される交流パルス電圧Vpのデューティ比を変化させることが可能になっている。
以上の構成により、交流電圧生成装置23は、単体として、制御回路36が交流パルス電圧Vpのデューティ比の制御を実行して、交流パルス電圧Vpのデューティ比を周期的に変化させることにより、高圧直流成分Vhdcに高圧交流成分Vhacが重畳された高圧直流電圧Vhを多段倍電圧整流回路32に生成させることが可能であり、また、この高圧直流成分Vhdcをコンデンサ34でカットして高圧交流成分Vhacのみを出力端子Poから出力することにより、任意の波形の交流電圧V3を出力端子Poから出力することが可能になっている。
また、電圧検出装置1zでは、この交流電圧生成装置23が、電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15および絶縁回路16と共に、交流電圧V3、つまりガード電極11の電圧(フローティング回路部2の基準電圧)を制御するフィードバックループを構成する。
これにより、電圧検出装置1zでは、交流電圧生成装置23の制御回路36が、検出電圧Vdeに基づいて高圧直流電圧Vhの平均値(高圧直流成分Vhdc)を所定の周期で算出しつつ、この平均値が予め規定された基準直流電圧値で一定になるように駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御する直流成分制御処理と、フローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aがゼロに近づくように(つまり、フローティング回路部2の基準電圧であるガード電極11の電圧(交流電圧V3)が検出対象4の交流電圧V1に近づくように、すなわち電位差Vdiが減少するように)、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御する交流成分制御処理とを実行することにより、ガード電極11の電圧(交流電圧V3(高圧交流成分Vhac))を交流電圧V1に追従させて一致させる。電圧計24は、交流電圧V3の実効値をリアルタイムで計測(検出)して表示する。したがって、電圧検出装置1zでは、この電圧計24に表示される数値を観測することにより、検出対象4の交流電圧V1が検出(測定)される。
以下、非接触型電圧検出装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、非接触型電圧検出装置の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す非接触型電圧検出装置としての非接触型電圧検出装置(電圧検出装置)1は、フローティング回路部2および本体回路部3を備え、検出対象4に生じている交流電圧V1(検出対象交流電圧。正側の電圧波形と負側の電圧波形とが対称となる正弦波電圧)を非接触で検出可能に構成されている。本例では一例として、電圧検出装置1は、高圧(例えば、600V以上の電圧)の交流電圧(正弦波形状の交流電圧)が供給されている電線を検出対象4として、この交流電圧(一例として、AC600V)を交流電圧V1として測定する。なお、図4に示す電圧検出装置1zと同じ構成要素については同じ符号を付している。
フローティング回路部2は、図1に示すように、一例として、ガード電極11、検出電極12、電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15および絶縁回路16を備えている。絶縁回路16は、本例では一例としてデジタルアイソレータで構成されて、1次側回路に入力されたデジタル信号を、1次側回路と電気的に絶縁された2次側回路から出力する。
ガード電極11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて、フローティング回路部2における基準電圧部として構成されている。また、ガード電極11は、一例として、図1に示すように、その内部に、検出電極12の後段の回路から絶縁回路16までの回路、つまり、電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15および絶縁回路16が収容されている。これにより、電流電圧変換回路13から絶縁回路16までがガード電極11に覆われた構成になっている。なお、ガード電極11で覆うべき部位は、検出電極12の後段の回路(検出電極12に接続される回路。本例では電流電圧変換回路13)から絶縁回路16の1次側回路まででよい。このため、絶縁回路16の2次側回路については、ガード電極11で覆われない構成とすることもできる。また、ガード電極11には開口部(孔)11aが形成されている。検出電極12は、例えば、平板状に形成されて、ガード電極11内における開口部11aを臨む位置に配設されている。
電流電圧変換回路13は、図1に示すように、一例として、演算増幅器13a、抵抗13b,13cおよびコンデンサ13dを備えて、電流電圧変換機能を有する積分回路として構成されている。演算増幅器13aは、非反転入力端子(第1の入力端子)が抵抗13bを介してガード電極11に接続されると共に、反転入力端子(第2の入力端子)が検出電極12に直接接続され、かつ抵抗13cとコンデンサ13dとの並列回路が帰還回路として反転入力端子と出力端子との間に接続されている。
この電流電圧変換回路13は、演算増幅器13aが後述する正電圧Vf+および負電圧Vf−の供給を受けて作動することにより、検出対象4の交流電圧V1とガード電極11の電圧(基準電圧)との電位差(交流の電位差。つまり、交流電圧V1の交流成分から基準電圧の交流成分を減算した電圧)Vdiに起因して、この電位差Vdiの大きさに応じた電流値で、かつ電位差Vdiの極性に応じた向きで検出対象4と検出電極12との間(具体的には、検出電極12と、抵抗13cおよびコンデンサ13dの並列回路とを含む経路)に流れる検出電流Iを積分して、電圧信号である積分信号V2として出力する。具体的には、電流電圧変換回路13は、検出対象4の交流電圧V1とガード電極11の電圧(基準電圧)との電位差Vdiの絶対値に比例した電圧値で、かつ電位差Vdiが正のとき(交流電圧V1がガード電極11の電圧以上のとき)に極性が負になり、電位差Vdiが負のとき(交流電圧V1がガード電極11の電圧未満のとき)に極性が正になる積分信号V2を生成して出力する。
なお、上記の電流電圧変換回路13では、電位差Vdiに応じた電流値で検出対象4と検出電極12との間に流れる検出電流Iの電圧信号(検出電圧信号)への変換を実行すると共に、この電圧信号の積分(電位差Vdiに応じて振幅が変化する積分信号の出力)をも併せて実行する構成を採用しているが、図示はしないが、電流電圧変換回路では、検出対象4と検出電極12との間に流れる検出電流Iの電圧信号(検出電圧信号)への変換のみを実行し、この変換された電圧信号の積分は別途設けた積分回路で実行する構成を採用することもできる。
バッファアンプ14は、高入力インピーダンス、かつ低出力インピーダンスのアンプで構成されて、電流電圧変換回路13から出力される積分信号V2を入力して低インピーダンスで出力する。A/D変換回路15は、A/Dコンバータで構成されて、バッファアンプ14から出力される積分信号V2を所定のサンプリング周期(交流電圧V1の周期に対して十分に短い周期)でサンプリングして、積分信号V2の電圧波形を示すデジタルデータ(波形データ)D1に変換して出力する。
絶縁回路16は、本例では、上記したようにデジタルアイソレータを使用して構成されている。デジタルアイソレータは、デジタル信号を入出力間で電気的に絶縁して伝達するデバイスであって、例えば、フォトトランジスタやフォトカプラといった光絶縁式アイソレータを用いて構成されたものや、磁気結合式アイソレータを用いて構成されたものが存在する。この絶縁回路16は、A/D変換回路15から出力されるデジタルデータD1を電気的に絶縁されたデジタルデータD1aに変換して、配線W1を介して本体回路部3に出力する。
本体回路部3は、図1に示すように、一例として、主電源回路21、DC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」ともいう)22、交流電圧生成装置23、電圧計24、処理部25および出力部26を備えている。主電源回路21は、例えば、バッテリーを備えて構成されて、本体回路部3の各構成要素22,23,24,25,26を作動させるための電源電圧Vcc(基準電位としてのグランドGの電位を基準として生成される正の直流電圧)をそのバッテリーの直流電圧から生成して出力する。一例として、主電源回路21は、バッテリーから出力される直流電圧(例えば12V)から、10Vの電源電圧Vccを生成して出力する。
コンバータ22は、一例として互いに電気的に絶縁された1次巻線および2次巻線を有する絶縁型のトランスと、このトランスの1次巻線を駆動する駆動回路と、トランスの2次巻線に誘起される交流電圧を整流平滑する直流変換部(いずれも図示せず)とを備えて、1次側に対して2次側が電気的に絶縁された絶縁型電源として構成されている。このコンバータ22では、駆動回路が、入力した電源電圧Vccに基づいて作動して、トランスの1次巻線を駆動することにより、トランスの2次巻線に交流電圧を誘起させる。また、直流変換部が、この交流電圧を整流して平滑する。これにより、コンバータ22は、そのトランスの2次巻線側の内部基準電位(内部グランド)G1を基準として、上記電圧(正電圧Vf+および負電圧Vf−)をフローティング状態(グランドGおよび電源電圧Vccと電気的に分離された状態)で生成する。このようにして生成された正電圧Vf+および負電圧Vf−は、上記の内部グランドG1がガード電極11に電気的に接続された状態で、フローティング回路部2に供給される。なお、正電圧Vf+および負電圧Vf−は、絶対値がほぼ同一で、極性が互いに異なる直流電圧として生成される。
交流電圧生成装置23は、一例として、図2に示すように、パルス電圧生成回路31、多段倍電圧整流回路32、第1放電抵抗33、コンデンサ34、第2放電抵抗35および制御回路36を備え、任意の波形の高圧交流電圧(電圧信号)V3を生成して、フローティング回路部2のガード電極11に印加する。
パルス電圧生成回路31は、交流電圧信号を出力する交流信号生成回路の一例であって、一例として、1次巻線41aおよび2次巻線41bを有するトランス41と、駆動回路42とを備えている。駆動回路42は、一例として、4つのスイッチング素子42a,42b,42c,42dがフルブリッジ接続されて構成されている。また、駆動回路42における電源電圧VccとグランドGとの間に直列接続された2つのスイッチング素子42a,42bの接続点と、同じく電源電圧VccとグランドGとの間に直列接続された2つのスイッチング素子42c,42dの接続点との間に、1次巻線41aが接続されている。
この構成により、駆動回路42は、スイッチング素子42a,42dの組と、他のスイッチング素子42b,42cの組とが、制御回路36から出力される後述の駆動信号Sa,Sb(図3参照)により、交互にオン・オフ制御されることで、1次巻線41a間に電源電圧Vccを極性を変化させつつ印加する。これにより、パルス電圧生成回路31は、2次巻線41bから交流電圧信号としての交流パルス電圧Vp(例えば、振幅が20Vの交流パルス電圧。図3参照)を出力する。なお、図示はしないが、駆動回路42については、2つのスイッチング素子をハーフブリッジ接続して構成したり、プッシュプル接続して構成したりすることもできる等、種々の公知の構成を採用することができる。
多段倍電圧整流回路32は、一例として、図2に示すように、複数のダイオードと複数のコンデンサとを組み合わせて形成されたコッククロフト・ウォルトン回路で構成されている。この多段倍電圧整流回路32は、パルス電圧生成回路31で生成された交流パルス電圧Vpを整流することにより、高圧直流電圧Vhを生成して出力端子32aから出力する。本例では一例として、多段倍電圧整流回路32は、振幅が20Vの交流パルス電圧Vpを整流して、最大で1200V程度の高圧直流電圧Vhを生成可能に構成されている。
第1放電抵抗33は、多段倍電圧整流回路32の出力端子32aとグランドGとの間に接続されている。また、第1放電抵抗33は、一例として直列接続された2つの抵抗33a,33bを有して構成されて、高圧直流電圧Vhを分圧して検出電圧Vdeとして出力する。また、第1放電抵抗33は、多段倍電圧整流回路32の負荷としても機能して、多段倍電圧整流回路32を構成する各コンデンサに蓄積された電荷を徐々に放電する。本例では、一例として、駆動信号Sa,Sbのデューティ比(0〜0.5)が約0.25の状態で各スイッチング素子42a,42b,42c,42dがスイッチング動作をしているときに、多段倍電圧整流回路32がパルス電圧生成回路31から供給されるエネルギーと、第1放電抵抗33によって放電されるエネルギーとがほぼ一致するように、第1放電抵抗33の抵抗値(本例では、抵抗33a,33bの合成抵抗値)が予め規定されている。
コンデンサ34は、一端が多段倍電圧整流回路32の出力端子32aに接続されている。第2放電抵抗35は、コンデンサ34の他端とグランドGとの間に接続されて、高圧直流電圧Vhに含まれる後述の高圧交流成分Vhacの電位(平均電位)をグランドGの電位に規定する。また、コンデンサ34と第2放電抵抗35との接続点(コンデンサ34の他端)は、交流電圧生成装置23の出力端子Poに接続されている。
制御回路36は、DSP(デジタル信号処理部)やマイクロコンピュータで構成されて、入力した検出電圧Vdeをその電圧波形を示すデジタルデータ(不図示)に変換する。また、制御回路36は、この変換したデジタルデータとフローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aとに基づいて、駆動信号Sa,Sb(図3に示すように、互いの位相が180°異なり、かつ同じデューティ比の信号)をそのデューティ比を制御しつつ生成してパルス電圧生成回路31に出力する。このようにして、制御回路36は、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御することによってパルス電圧生成回路31を制御して、パルス電圧生成回路31によって生成される交流パルス電圧Vpのデューティ比を変化させることが可能になっている。
以上の構成により、交流電圧生成装置23は、単体として、例えば、制御回路36が交流パルス電圧Vpのデューティ比の制御を実行して、交流パルス電圧Vpのデューティ比を例えば図3に示すように周期的に変化させることにより、高圧直流成分Vhdcに高圧交流成分Vhacが重畳された高圧直流電圧Vh(図3参照)を多段倍電圧整流回路32に生成させることが可能であり、また、この高圧直流成分Vhdcをコンデンサ34でカットして高圧交流成分Vhacのみを出力端子Poから出力することにより、任意の波形の高圧交流電圧V3(つまり、高圧交流成分Vhac。図3参照)を出力端子Poから出力することが可能になっている。
本例では一例として、交流電圧生成装置23が電圧検出装置1のフィードバックループ内に組み込まれているため、交流電圧生成装置23の制御回路36は、検出電圧Vdeに関する上記のデジタルデータに基づいて、高圧直流電圧Vhを算出すると共に、この高圧直流電圧Vhの平均値(高圧直流成分Vhdc)を所定の周期で算出し、この平均値が予め規定された基準直流電圧値で一定になるように(基準直流電圧値に維持されるように)駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御する直流成分制御処理を実行する。制御回路36は、この直流成分制御処理を実行して、高圧直流電圧Vhの平均値を基準直流電圧値に維持しているときには、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を平均して約0.25に維持する。
また、制御回路36は、この直流成分制御処理と共に、フローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aがゼロに近づくように(つまり、フローティング回路部2の基準電圧であるガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)が検出対象4の交流電圧V1に近づくように、すなわち電位差Vdiが減少するように)、直流成分制御処理の実行の周期よりも十分に短い周期で駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御する交流成分制御処理を実行する。具体的には、この交流成分制御処理では、制御回路36は、デジタルデータD1aで示される積分信号V2の電圧値の極性が負のとき(交流電圧V1がガード電極11の電圧以上のとき)には、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を増加させて高圧交流電圧V3を上昇させ、デジタルデータD1aで示される積分信号V2の電圧値の極性が正のとき(交流電圧V1がガード電極11の電圧未満のとき)には、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を減少させて高圧交流電圧V3を低下させる交流成分制御処理を実行する。
処理部25は、例えば、制御回路36と共に、または制御回路36とは別体に、DSP(デジタル信号処理部)やマイクロコンピュータで構成されている。また、処理部25は、不図示の分圧回路(例えば、抵抗が直列接続されて構成された分圧回路)を備え、この分圧回路で高圧交流電圧V3を分圧すると共に、分圧された電圧の電圧波形を示すデジタルデータ(波形データ)を生成する。また、処理部25は、このデジタルデータに基づいて、高圧交流電圧V3(つまり、高圧交流成分Vhac)に波形歪みが生じているか否かを判別する判別処理、およびこの判別処理において波形歪みが生じていると判別したときに、交流電圧V1(検出対象交流電圧)が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを示す情報を出力する出力処理を実行する。
高圧交流電圧V3に波形歪みが生じているときには、例えば、高圧交流電圧V3に含まれている奇数次や偶数次の高調波成分が増加する。このため、本例では一例として、この判別処理では、処理部25は、デジタルデータに基づいて、電圧波形についてのスペクトル分析を実行して、交流電圧V1の基本波成分以外の信号成分(つまり、2次、3次などの高調波成分)についてのレベルを検出して、この検出された高調波成分のレベルが予め規定された基準レベル(波形歪みが許容範囲内で最大のときの高調波成分のレベルを若干超えるレベル)以上のときには、波形歪みが生じていると判別し、基準レベル未満のときには、波形歪みが生じていないと判別する。
本例では処理部25は、一例として、高圧交流電圧V3の2次高調波成分のレベルが、基本波成分(高圧交流電圧V3の基本波成分(交流電圧V1の基本周波数と同じ周波数の信号成分))のレベルの10%〜20%の範囲内に規定された基準レベル(例えば、10%、15%または20%)以上のときに、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じていると判別する。
この場合、処理部25は、このように1つの高調波成分のレベルが基準値以上になるか否かに基づいて波形歪みの発生の有無を判別するという構成に代えて、複数の高調波成分の各レベルがすべて、それぞれに対して予め個別に規定された基準レベル以上になったときに波形歪みが発生していると判別する構成を採用することもできる。一例として、2次高調波成分のレベルが基本波成分のレベルの10%〜20%の範囲内に規定された基準レベル(例えば10%)以上であり、かつ3次高調波成分のレベルが基本波成分のレベルの10%〜20%の範囲内に規定された基準レベル(例えば10%)以上であるときに、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じていると判別する構成を採用することもできる。
なお、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じているときには、例えば、高圧交流電圧V3の正側波形と負側波形とが非対称になることが多い。このため、処理部25は、判別処理において、デジタルデータに基づいて、電圧波形についての波形分析を実行して、正側波形の最大値と負側波形の最大値との差を算出し、この算出した差が予め規定された基準値(例えば、差の絶対値が10%)以上のときには、波形歪みが生じていると判別し、基準値未満のときには、波形歪みが生じていないと判別する構成を採用することもできる。
出力部26は、本例では一例としてLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されて、処理部25から出力される情報を画面上に表示する。なお、出力部26は表示装置に限定されず、例えば、外部装置へのこの情報の送信を行う送信装置や、フラッシュメモリなどの記録媒体が着脱自在であって、装着された記録媒体にこの情報を記録可能な記憶装置で構成することもできる。
次いで、電圧検出装置1による検出対象4の交流電圧V1についての検出動作(測定動作)について説明する。なお、交流電圧V1は、AC600Vであるため、振幅は約1700Vであることから、上記の高圧直流電圧Vhの平均値に対する基準直流電圧値は、DC900V程度の一定の電圧に予め規定されているものとする。
まず、検出電極12が検出対象4に非接触の状態で対向するように、フローティング回路部2(または電圧検出装置1全体)を検出対象4の近傍に位置させる。これにより、図1に示すように、検出電極12と検出対象4との間に静電容量C0が形成された状態になる。
次いで、電圧検出装置1の起動状態において、本体回路部3では、処理部25が判別処理を繰り返し実行し、交流電圧生成装置23では、制御回路36が、上記した直流成分制御処理および交流成分制御処理を繰り返し実行している。この場合、制御回路36が、この直流成分制御処理を繰り返すことにより、検出電圧Vdeに関するデジタルデータに基づいて算出される高圧直流電圧Vhの平均値(高圧直流成分Vhdcの電圧値)を基準直流電圧値(DC900V)に維持している。
この状態において、検出対象4の交流電圧V1と、ガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)との電位差Vdiの極性が正のとき(つまり、交流電圧V1が高圧交流電圧V3以上のとき)には、検出対象4から検出電極12を介して電流電圧変換回路13に検出電流Iが流れ込んでいる状態である。この場合、電流電圧変換回路13は、上記のガード電極11(基準電圧)に対して極性が負になる積分信号V2を出力する。A/D変換回路15は、この積分信号V2をデジタルデータD1に変換し、絶縁回路16は、このデジタルデータD1を電気的に絶縁されたデジタルデータD1aに変換して本体回路部3に出力する。
本体回路部3の交流電圧生成装置23では、制御回路36は、上記した交流成分制御処理を実行することにより、フローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aで示される積分信号V2の電圧の極性が負であることを検出して、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を増加させる。これにより、交流パルス電圧Vpのデューティ比も同様にして増加して、パルス電圧生成回路31から多段倍電圧整流回路32に供給されるエネルギーが、第1放電抵抗33によって放電されるエネルギーよりも多くなる。このため、多段倍電圧整流回路32から出力される高圧直流電圧Vhの電圧値、ひいては交流電圧生成装置23から出力される高圧交流電圧V3(つまり、高圧交流成分Vhac)が上昇して、交流電圧V1に近づく(電位差Vdiが減少する)。
一方、検出対象4の交流電圧V1と、ガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)との電位差Vdiの極性が負のとき(つまり、交流電圧V1が高圧交流電圧V3未満のとき)には、電流電圧変換回路13から検出対象4に検出電極12を介して検出電流Iが流出している状態である。この場合、電流電圧変換回路13は、上記のガード電極11(基準電圧)に対して極性が正になる積分信号V2を出力する。A/D変換回路15は、この積分信号V2をデジタルデータD1に変換し、絶縁回路16は、このデジタルデータD1を電気的に絶縁されたデジタルデータD1aに変換して本体回路部3に出力する。
制御回路36は、上記した交流成分制御処理を実行することにより、フローティング回路部2から出力されるデジタルデータD1aで示される積分信号V2の電圧の極性が正であることを検出して、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を減少させる。これにより、交流パルス電圧Vpのデューティ比も同様にして減少して、パルス電圧生成回路31から多段倍電圧整流回路32に供給されるエネルギーが、第1放電抵抗33によって放電されるエネルギーよりも少なくなる。このため、多段倍電圧整流回路32から出力される高圧直流電圧Vhの電圧値、ひいては交流電圧生成装置23から出力される高圧交流電圧V3(つまり、高圧交流成分Vhac)が低下して、交流電圧V1に近づく(電位差Vdiが減少する)。
この電圧検出装置1では、このようにして、電流電圧変換回路13、バッファアンプ14、A/D変換回路15、絶縁回路16および本体回路部3の交流電圧生成装置23がフィードバックループを構成して、高圧交流電圧V3の電圧値を上昇または低下させるフィードバック制御動作を実行することにより、交流電圧V1が電圧検出装置1の検出上限に達しないときには、ガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3(高圧交流成分Vhac))を交流電圧V1に追従させて一致させる。電圧計24は、高圧交流電圧V3の実効値(基準電圧。ガード電極11の電圧)をリアルタイムで計測(検出)して表示する。したがって、この電圧計24に表示される数値を観測することにより、検出対象4の交流電圧V1が検出(測定)される。
このようにして、電圧検出装置1がガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)を交流電圧V1に追従(一致)させることができているときには、高圧交流電圧V3は、交流電圧生成装置23での出力上限に達していない(電圧検出装置1の検出上限に達していない)状態であることから、高圧交流電圧V3には波形歪みは殆ど生じていない。このため、処理部25は、判別処理において、高圧交流電圧V3の2次高調波成分のレベルが基準レベル未満であることを検出し、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じていないと判別する。また、これにより、処理部25は、出力処理を実行しない。したがって、出力部26の画面上には、交流電圧V1(検出対象交流電圧)が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを示す情報は表示されない。
一方、電圧検出装置1がガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)を交流電圧V1に追従(一致)させることができていないときには、高圧交流電圧V3は、その各周期内における少なくとも1つのポイントにおいて交流電圧生成装置23での出力上限に達する(電圧検出装置1の検出上限に達する)状態であり、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じている状態である。このため、処理部25は、判別処理において、高圧交流電圧V3の2次高調波成分のレベルが基準レベル以上であることを検出し、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じていると判別する。この場合、処理部25は、出力処理を実行して、交流電圧V1(検出対象交流電圧)が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを示す情報を出力部26の画面上に表示させる。
このように、この電圧検出装置1では、処理部25が、ガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)に波形歪みが生じているか否かを判別する判別処理、およびこの判別処理において波形歪みが生じていると判別したときに、交流電圧V1が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを示す情報を出力部26から出力する出力処理を実行する。
したがって、この電圧検出装置1によれば、電圧検出装置1の操作者は、この出力部26から出力される情報に基づいて、検出対象4に生じている交流電圧V1が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを認識することができ、これにより、操作者が電圧計24に表示されている数値を検出対象4の交流電圧V1を示す正しい数値であると誤って認識する事態の発生を確実に回避することができる。
また、この電圧検出装置1では、処理部25は、高圧交流電圧V3の波形についてのスペクトル分析を実行して2次高調波成分のレベルを検出すると共に、この検出したレベルが基準レベル以上のときに、高圧交流電圧V3に波形歪みが生じていると判別する。したがって、この電圧検出装置1によれば、高圧交流電圧V3にスイッチングノイズなどの高周波ノイズが重畳している場合であっても、判別処理において、ガード電極11の電圧(高圧交流電圧V3)に波形歪みが生じているか否かを正確に判別することができる。
また、処理部25は、判別処理において、高圧交流電圧V3の波形についてのスペクトル分析を実行する構成に代えて、上記したように、高圧交流電圧V3における正側波形の最大値と負側波形の最大値との差を算出し、この算出した差が予め規定された基準値(例えば、差の絶対値が正側波形または負側波形の最大値の10%)以上のときに波形歪みが生じていると判別する構成を採用することもできる。この構成を採用した電圧検出装置1によれば、スペクトル分析と比較して簡易な処理で波形歪みが生じているか否かを判別し得るため、処理部25の判別処理での負荷を軽減することができる。
なお、上記の例では、多段倍電圧整流回路32に出力する交流電圧信号を生成する交流信号生成回路の一例として、多段倍電圧整流回路32に出力する交流パルス電圧Vpを生成するパルス電圧生成回路31(トランス41と駆動回路42とを備えた回路)を備えているが、このパルス電圧生成回路31に代えて、図示はしないが、圧電トランスと、この圧電トランスに駆動パルスを出力して圧電トランスを駆動する圧電トランス駆動回路とを備えた回路を交流信号生成回路として備える構成を採用することもできる。
この構成の交流信号生成回路では、圧電トランス駆動回路から圧電トランスに出力する駆動パルスのデューティ比を制御することで、圧電トランスから交流電圧信号として出力される交流電圧の振幅を変化させることが可能である。したがって、この構成の交流信号生成回路を採用した電圧検出装置では、制御回路36は、この交流信号生成回路に対する制御を実行して、電位差Vdiが減少するように圧電トランスから多段倍電圧整流回路32に出力される交流電圧信号の振幅を制御する。
また、上記の例では、出力部26を表示装置で構成して、処理部25から出力される情報(検出対象4に生じている交流電圧V1が電圧検出装置1の検出上限を超えていることを示す情報)を画面上に表示しているが、出力部26を送信装置や記録装置で構成したときには、処理部25から出力されるこの情報を送信装置を介して外部装置に送信したり、記憶装置を介して記録媒体に記録したりすることで、この情報を出力する。
また、上記の例では、電流電圧変換回路13を構成する演算増幅器13aの非反転入力端子を抵抗13bを介してガード電極11に接続し、反転入力端子を検出電極12に直接接続する構成を採用しているが、演算増幅器13aの非反転入力端子をガード電極11に直接接続し、反転入力端子を検出電極12に小さな抵抗値(例えば、抵抗13cの抵抗値と比較して十分に小さな抵抗値。例えば数Ω〜数十Ω程度)の抵抗を介して間接に接続する構成を採用することもできる。
また、上記の交流電圧生成装置23の構成では、フローティング回路部2において、A/D変換回路15が電流電圧変換回路13から出力される積分信号V2(上記の例ではバッファアンプ14から出力される積分信号V2)をデジタルデータD1に変換し、絶縁回路16がこの変換されたデジタルデータD1を本体回路部3に出力する構成を採用しているが、フローティング回路部2において、電流電圧変換回路13から出力される積分信号V2を絶縁回路16がアナログ信号のまま本体回路部3に出力する構成を採用することもできる。この構成においても、本体回路部3側において、例えば制御回路36が、この積分信号V2をデジタルデータに変換することにより、変換したデジタルデータと、検出電圧Vdeの電圧波形を示すデジタルデータとに基づいて、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御することができる。また、制御回路36が、フローティング回路部2から出力されたアナログ信号としての積分信号V2と、アナログ信号としての検出電圧Vdeとに基づいて、駆動信号Sa,Sbのデューティ比を制御する構成を採用することもできる。