JP6300458B2 - 積層圧電素子 - Google Patents

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Description

本発明は、積層圧電素子に関する。
圧電材料としては、従来、セラミックス材料であるPZT(PbZrO−PbTiO系固溶体)が多く用いられてきたが、PZTは、鉛を含有することから、環境負荷が低く、また柔軟性に富む高分子圧電材料(圧電フィルム)が用いられるようになってきている。
現在知られている高分子圧電材料は、主に以下の2種類に大別される。すなわち、ナイロン11、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ尿素などに代表されるポーリング型高分子と、ポリフッ化ビニリデン(β型)(PVDF)と、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))(75/25)などに代表される強誘電性高分子との2種類である。
近年、上記の高分子圧電材料以外に、ポリペプチドやポリ乳酸等の光学活性を有する高分子を用いることが着目されている。ポリ乳酸系高分子は、機械的な延伸操作のみで圧電性が発現することが知られている。
光学活性を有する高分子の中でも、ポリ乳酸のような高分子結晶の圧電性は、螺旋軸方向に存在するC=O結合の永久双極子に起因する。特にポリ乳酸は、主鎖に対する側鎖の体積分率が小さく、体積あたりの永久双極子の割合が大きく、ヘリカルキラリティをもつ高分子の中でも理想的な高分子といえる。
延伸処理のみで圧電性を発現するポリ乳酸は、ポーリング処理が不要で、圧電率は数年にわたり減少しないことが知られている。
また、ポリ乳酸系高分子を用いた複数の圧電フィルムを積層させた積層圧電素子も知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、かかる積層圧電素子として、ポリ乳酸を主成分とし所定の延伸軸を有する複数の圧電フィルムと、各圧電フィルムの両主面上に設けられた電極と、を備え、複数の圧電フィルムのうち、少なくとも1つの圧電フィルムは、他の圧電フィルムと延伸軸の方向が異なっている積層圧電素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
国際公開第2013/054918号パンフレット 国際公開第2009/139237号パンフレット
しかしながら、本発明者らによる検討により、上記特許文献1及び2に記載の積層圧電素子では、スピーカー等の音響機器に用いた場合に、音圧の周波数依存性が大きい場合があることが初めて判明した。
従って、本発明の課題は、音圧の周波数依存性を抑制できる積層圧電素子、及び、音圧の周波数依存性が抑制された音響機器を提供することである。
課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 分子配向を有する圧電フィルムを複数備え、前記複数の圧電フィルムの分子配向が略平行であるとともに、湾曲部を有する、積層圧電素子。
<2> 前記湾曲部を曲率が最大となる方向に切断したときの断面において、下記比率Cが、19/20〜6/7である、<1>に記載の積層圧電素子。
比率C = 湾曲部の一端から他端までの直線距離/湾曲部の湾曲に沿った長さ
<3> 前記圧電フィルムの厚さが、20μm〜80μmである、<1>又は<2>に記載の積層圧電素子。
<4> 前記圧電フィルムが少なくとも電極層を介して積層されている積層体と、前記積層体の両面に設けられた電極層と、を備える、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<5> 前記圧電フィルムの両面に電極層を備えた圧電ユニットが、絶縁層を介して積層されている、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<6> 前記圧電フィルムの一方の面に第1電極層を他方の面に第2電極層をそれぞれ備えた圧電ユニットを複数備え、前記複数の圧電ユニットは、互いの第1電極層と第2電極層とが対向する配置で絶縁層を介して積層されており、複数の第1電極層に同電位が付与され、かつ、複数の第2電極層に別の同電位が付与されることにより、複数の圧電フィルムに同電圧が印加される、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<7> 前記複数の圧電フィルムが、L体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有するか、又は、D体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有する、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<8> 前記圧電フィルムは、可視光線に対する内部ヘイズが50%以下であり、且つ、25℃において変位法で測定した圧電定数d14が1pm/V以上である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<9> 前記圧電フィルムは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が25〜700である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
<10> 前記ヘリカルキラル高分子が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である、<7>又は<9>に記載の積層圧電素子。
<11> <1>〜<10>のいずれか1項に記載の積層圧電素子を備える、音響機器。
本発明によれば、音圧の周波数依存性を抑制できる積層圧電素子、及び、音圧の周波数依存性が抑制された音響機器が提供される。
本発明の一例に係る積層圧電素子を示す概略斜視図である。 本発明の別の一例に係る積層圧電素子を示す概略斜視図である。 図1AのA−A線断面図である。 本発明の一実施形態に係る積層圧電素子の湾曲部を示す概略断面図である。 実施例において、積層圧電素子を変形させる前の状態を示す概略斜視図である。 実施例において、積層圧電素子を変形させた後の状態を示す概略斜視図である。 実施例における、比率Cと最大音圧(dB)との関係を示すグラフである。
≪積層圧電素子≫
本発明の積層圧電素子は、分子配向を有する圧電フィルム(以下、単に「圧電フィルム」ともいう)を複数備え、前記複数の圧電フィルムの分子配向が略平行であるとともに、湾曲部を有する。
本発明者らは、圧電フィルムを複数備えた積層圧電素子の構成について検討した結果、複数の圧電フィルムをこれらの分子配向が略平行となるように配置させ、かつ、積層圧電素子を湾曲部を有する形状とすることにより、音圧の周波数依存性が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の積層圧電素子によれば、(例えば音響機器に用いたときに)音圧の周波数依存性を抑制できる。
また、本発明の積層圧電素子によれば、高い音圧を得ることができる。
詳細には、本発明の積層圧電素子は、分子配向を有する圧電フィルムを複数備えることで、分子配向を有する単層の圧電フィルムと比較して、高い音圧を得ることができる。
また、本発明の積層圧電素子は、湾曲部を有することにより、湾曲部を有しない場合と比較して、高い音圧を得ることができる。
ここで、(積層圧電素子が)「湾曲部を有する」とは、積層圧電素子の主面の少なくとも一部が湾曲している(即ち、積層圧電素子の主面の少なくとも一部が湾曲面となっている)ことを指す。
また、「主面」とは、(端面とは異なり)、面積が最も広い面を指す。
更に、本発明の積層圧電素子は、複数の圧電フィルムの分子配向を略平行としたことにより、少なくとも1つの圧電フィルムの分子配向を他の圧電フィルムの分子配向と直交させた場合(例えば、国際公開第2009/139237号パンフレットに記載された積層圧電素子)と比較して、音圧の周波数依存性を抑制できる。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、少なくとも1つの圧電フィルムの分子配向を他の圧電フィルムの分子配向と直交させた場合には、周波数によっては、複数の圧電フィルムの変位が互いに干渉することにより音圧が低下することがあると考えられる。これに対し、本発明の積層圧電素子は、複数の圧電フィルムの分子配向を略平行とすることにより、幅広い周波数領域に渡り、上記の変位の干渉(音圧の低下)を抑制でき、これにより、音圧の周波数依存性が抑制されると考えられる。
また、本発明において、「略平行」とは、2つの直線のなす角度を0°以上90°以下の範囲で表したときに、この角度が0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
また、本発明において、「複数の圧電フィルムの分子配向が略平行である」とは、任意に選んだ1つの圧電フィルムの分子配向と、残りの圧電フィルムの分子配向と、のなす角度の最大値が、0°以上30°未満であることを指す。
この角度の最大値は、より高い音圧を得る観点から、好ましくは0°以上22.5°以下であり、より好ましくは0°以上10°以下であり、更に好ましくは0°以上5°以下であり、更に好ましくは0°以上3°以下であり、理想的には0°である。
また、本発明の積層圧電素子は、複数の圧電フィルム間での分子配向を略平行としているので、少なくとも1つの圧電フィルムの分子配向を他の圧電フィルムの分子配向と直交させる場合と比較して、積層圧電素子を作製する際に、各圧電フィルム間での分子配向同士の角度の調整をより容易に行えるという利点も有する。
また、本発明において、分子配向は、分子配向度MOR(Molecular Orientation Ratio)を測定することにより求められる。
分子配向度MORの測定方法の詳細は後述する。
また、分子配向を有する圧電フィルムは、例えば、押し出し成形などにより高分子(例えば、後述の光学活性を有するヘリカルキラル高分子。以下同じ。)を含むフィルムを得、次いで、このフィルムを延伸処理して高分子を配向させることによって作製される。
このようにして作製された圧電フィルムでは、通常、分子配向と延伸方向とが略平行となる。
また、本発明において、「音圧」は、周波数1500Hz〜9500Hzの範囲での音圧(dB)を指す。
また、本発明において、「音圧の周波数依存性を抑制できる。」とは、周波数1500Hz〜9500Hzの範囲での最大音圧と最小音圧との差を小さくできることを指す。
また、本発明の積層圧電素子は、周波数1500Hz〜9500Hzの範囲での最大音圧が80dB以上であることが好ましい。
本発明の積層圧電素子に備えられる各圧電フィルムの厚さ(圧電フィルム1枚の厚さ)には特に制限はないが、20μm〜80μmであることが好ましく、30μm〜70μmであることがより好ましい。
厚さが20μm以上であると、機械的強度により優れる。
厚さが80μm以下であると、印加電圧に対する圧電フィルムの変位量をより増大させることができる。
また、本発明の積層圧電素子の総厚には特に制限はないが、より高い音圧を得る観点から、600μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、400μm以下が更に好ましく、300μm以下が特に好ましい。
本発明の積層圧電素子の総厚の下限は、個々の圧電フィルムの厚さに合わせて適宜設定できるが、例えば、総厚は45μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
また、本発明の積層圧電素子は、その一部が湾曲部であればよい。即ち、湾曲部のみから構成されていてもよいし、湾曲部と平面部とから構成されていてもよい。
図1Aは、本発明の積層圧電素子の一例である、積層圧電素子10を示す概略斜視図である。
図1Aに示すように、積層圧電素子10は、その全体が湾曲している。即ち、積層圧電素子10は、湾曲部のみで構成されている。
図1Bは、本発明の積層圧電素子の別の一例である、積層圧電素子20を示す概略斜視図である。
図1Bに示すように、積層圧電素子20は、中央部である湾曲部22と、一端部である平面部24と、他端部である平面部26と、から構成されている。
図2は、図1AのA−A線断面図であり、より詳細には、湾曲部のみからなる積層圧電素子10を曲率が最大となる方向に切断したときの概略断面図である。
この図2では、湾曲部の一端から他端までの直線距離aと、湾曲部の湾曲に沿った長さbと、が定義される。
なお、図1A、図1B、図2、図4A、及び図4Bでは、積層圧電素子の積層構造の図示を省略している。
本発明において、湾曲部の形状には特に制限はないが、より高い音圧を得る観点から、湾曲部を曲率が最大となる方向に切断したときの断面(例えば図2)において、下記比率Cが、19/20〜6/7であることが好ましく、9/10〜6/7であることがより好ましい。
比率C = 湾曲部の一端から他端までの直線距離(例えば図2中の直線距離a)/湾曲部の湾曲に沿った長さ(例えば図2中の長さb)
ここで、「湾曲部を曲率が最大となる方向に切断したときの断面」とは、湾曲部の断面として想定し得る数多くの断面のうち、この湾曲部の頂点における曲率が最大となって表れる断面を指す。
また、本発明では、上述の「湾曲部の湾曲に沿った長さ」の方向を、単に「湾曲に沿った方向」ということがある。
図1A、図1B、図4A、及び図4Bでは、湾曲に沿った方向と積層圧電素子の短辺とが、平行となっているが、本発明において、湾曲に沿った方向と積層圧電素子の一辺との角度には特に制限はない。例えば、湾曲に沿った方向と積層圧電素子の短辺とが、直交していてもよいし、直交及び平行以外の角度であってもよい。また、積層圧電素子は正方形であってもよいし、長方形及び正方形以外の形状であってもよい。
上述の湾曲部の湾曲に沿った長さ(例えば図2中の長さb)には特に制限はないが、60mm〜500mmが好ましく、60mm〜200mmがより好ましく、60mm〜100mmが特に好ましい。
なお、上記積層圧電素子10が、湾曲していない積層圧電素子を湾曲させる(カールさせる)ことにより作製された素子である場合、積層圧電素子10の湾曲に沿った長さは、湾曲させる前の積層圧電素子の長さに等しい。
また、本発明の積層圧電素子では、湾曲部において、圧電フィルムの分子配向が湾曲形状に追従していることが好ましい。これにより、圧電フィルムの分子配向が湾曲形状に追従していない場合と比較して、より高い音圧が得られる。
例えば、湾曲部の中の一点に着目したとき、この一点において、分子配向の方向と湾曲に沿った方向とのなす角度θ(ここで、角度θは、0°以上90°以下の範囲で定義される角度とする)が、90°未満であることが好ましい。これにより、角度θが90°である場合と比較して、より高い音圧が得られる。
上記角度θは、0°以上80°以下が好ましく、0°以上70°以下がより好ましく、0°以上60°以下が更に好ましく、0°以上50°以下が特に好ましい。
また、本発明の積層圧電素子では、前記圧電フィルムが少なくとも電極層を介して積層されている積層体と、前記積層体の両面に設けられた電極層と、を備えることが好ましい。
これにより、圧電フィルム毎に電圧を印加できるので、電圧印加の効率に優れる。従って、高い音圧を効率よく得ることができる。
例えば、この積層圧電素子の総厚と同じ厚さの単層の圧電フィルム全体に電圧を印加する場合と比較すると、同じ電界強さを得るための印加電圧を小さくすることができる。従って、同じ印加電圧の下では、単層の圧電フィルムと比較して、より高い音圧を得ることができる。
なお、上記「両面」とは、両方の主面を意味する(以下、同様である)。
また、本発明の積層圧電素子では、前記圧電フィルムの両面に電極層を備えた圧電ユニットが、絶縁層を介して積層されていることが好ましい。
これにより、絶縁層を挟む2つの電極層に異なる電位を付与できるようになる。
従って、各圧電フィルムに対して同じ向きの電界を生じさせることができるので(後述の実施形態及び図3参照)、音圧の周波数依存性をより効果的に抑制できる。更に、この態様では、圧電フィルム毎に電圧を印加できるので、前述のとおり高い音圧を効率良く得ることができる。
この態様において、より好ましくは、前記圧電フィルムの一方の面に第1電極層を他方の面に第2電極層をそれぞれ備えた圧電ユニットを複数備え、前記複数の圧電ユニットは、互いの第1電極層と第2電極層とが対向する配置で絶縁層を介して積層されており、複数の第1電極層に同電位が付与され、かつ、複数の第2電極層に別の同電位が付与されることにより、複数の圧電フィルムに同電圧が印加される態様である(後述の実施形態及び図3参照)。
ここで、「電位が付与される」との概念には、プラス電位又はマイナス電位が付与されることだけでなく、グラウンド電位(0V)が付与されることも包含される。
要するに、各電極層には、各圧電ユニットの電極層間にそれぞれ電圧が印加されるように、電位が付与されればよい。
また、本発明の積層圧電素子では、前記複数の圧電フィルムのいずれもが、L体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有するか、又は、D体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有することが好ましい。
即ち、複数の圧電フィルムが、同じキラリティを有することが好ましい。
これにより、キラリティが異なる2種の圧電フィルムを交互に積層させる場合(詳細には、L体の圧電フィルム、R体の圧電フィルム、L体の圧電フィルム、R体の圧電フィルム・・・の順に積層させる場合)と比較して、同じ圧電フィルムを複数用いて積層圧電素子を作製できるため、圧電フィルム間での変位の干渉がより抑制され、ひいては音圧の周波数依存性がより抑制される。
また、言うまでもないが、圧電フィルムの種類が少なくて済むため、積層圧電素子の製造もより容易となる。
<実施形態>
次に、本発明の積層圧電素子の実施形態について、図3を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。
この実施形態は、上述した好ましい態様の一例である。
図3は、本発明の積層圧電素子の一実施形態である、積層圧電素子100の湾曲部を示す概略断面図である。この断面は、湾曲に沿って切断した断面である。
図3では、積層圧電素子100に対する電圧の印加方法も示している。
図3に示すように、積層圧電素子100では、圧電ユニット110A、圧電ユニット110B、及び圧電ユニット110Cが、絶縁層112を介して積層されている。
圧電ユニット110Aは、圧電フィルム101Aと、圧電フィルム101Aの一方の主面(凸面)に設けられた第1電極層102Aと、圧電フィルム101Aの他方の主面(凹面)に設けられた第2電極層104Aと、から構成されている。
同様に、圧電ユニット110Bは、圧電フィルム101Bと、圧電フィルム101Bの一方の主面(凸面)に設けられた第1電極層102Bと、圧電フィルム101Bの他方の主面(凹面)に設けられた第2電極層104Bと、から構成されている。
同様に、圧電ユニット110Cは、圧電フィルム101Cと、圧電フィルム101Cの一方の主面(凸面)に設けられた第1電極層102Cと、圧電フィルム101Cの他方の主面(凹面)に設けられた第2電極層104Cと、から構成されている。
そしてこの積層圧電素子100では、第1電極層102A及び第2電極層104Cが、最表層となっている。
各圧電フィルム(圧電フィルム101A、101B、101C)は、いずれも、L体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を主成分とした圧電フィルムである。
但し、各圧電フィルムとしては、R体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を主成分とした圧電フィルムを用いることもできる。要するに、本実施形態における各圧電フィルムは、同じキラリティを有していればよい。
次に、積層圧電素子100への電圧印加方法を説明する。
この積層圧電素子100では、第1電極層102A、第1電極層102B、及び第1電極層102Cは、各圧電ユニットにおける各圧電フィルムからみて同一の側(凸面である主面の側)に位置している。そして、これら第1電極層102A、第1電極層102B、及び第1電極層102Cには、同一の電位(例えばプラス電位)が付与される。
一方、第2電極層104A、第2電極層104B、及び第2電極層104Cは、各圧電ユニットにおける各圧電フィルムからみて同一の側(凹面である主面の側)に位置している。そして、これら第2電極層104A、第2電極層104B、及び第2電極層104Cには、各第1電極層に付与された電位とは異なる同一の電位(例えばマイナス電位)が付与される。
即ち、絶縁層112を挟む2つの電極層である、第2電極層104Aと第1電極層102Bとには、異なる電位が付与される(第2電極層104B及び第1電極層102Cについても同様である)。
このようにして、積層圧電素子100には、各圧電フィルムの各々に対し、電圧供給用電源120から供給される電圧と同じ値の電圧が印加される。これにより各圧電フィルムに同じ向きの電界が生じる。
また、図示しないが、積層圧電素子100では、各圧電フィルムの分子配向が湾曲形状に追従している。
また、各第1電極層(第1電極層102A、102B、102C)及び各第2電極層(第2電極層104A、104B、104C)の材質には特に制限はないが、例えば、Al、Ag、Au、Cu、Ag−Pd合金、ITO、ZnO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー等が用いられる。
各電極層の好ましい例の詳細は後述する。
また、絶縁層112として、接着機能を有する絶縁層を用いると、各圧電ユニットを接着しつつ、各圧電ユニット間での絶縁を確保することができる。
なお、積層圧電素子100に含まれる2つの絶縁層112は、同一の層(同一材質、かつ、同一の厚さの層)であってもよいし、異なる層であってもよい。絶縁層の好ましい例の詳細は後述する。
次に、積層圧電素子100の動作について説明する。
積層圧電素子100では、前述のとおり、電圧供給用電源120によって、各圧電フィルムのそれぞれに同一の電圧が印加され、これにより、各圧電フィルム内に同じの向きの電界が生じる。
ここで、各圧電フィルムは、同一のキラリティを有しているため、上記電圧(電界)の印加により、各圧電フィルムが同じ向きに変位する。
これにより、圧電フィルム1枚のみと比較して顕著に高い音圧を得ることができ、かつ、少なくとも1つの圧電フィルムの分子配向を他の圧電フィルムの分子配向と直交させた場合と比較して音圧の周波数依存性を顕著に低減できる。
なお、図3に示す積層圧電素子100では圧電ユニットが3層積層されているが、圧電ユニットの数は3層に限定されることはない。
より高い音圧を得る観点より、圧電ユニットの数は、各圧電ユニット(又は各圧電フィルム)の個々の厚さを考慮した上で、積層圧電素子100の総厚が600μm以下(より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下、特に好ましくは300μm以下)となる範囲で調整することが好ましい。
例えば、圧電ユニット(又は圧電フィルム)の厚さが20μmである場合、圧電ユニットの数は、2層〜10層が特に好ましい。また、圧電ユニット(又は圧電フィルム)の厚さが50μmである場合、圧電ユニットの数は、2層〜4層が特に好ましい。
本発明の積層圧電素子(例えば積層圧電素子100)を製造する方法には特に限定はないが、例えば以下の方法が挙げられる。
例えば、圧電フィルムを、押し出し及び延伸などによって製造する(圧電フィルムの好ましい製造方法の詳細については後述する)。製造された圧電フィルムの両面に、それぞれ、蒸着、スパッタ、塗布等の公知の手法により電極層を形成し、圧電ユニットを得る。
この圧電ユニットを複数用意し、各々を、接着機能を有する絶縁層を介して貼りあわせ、積層圧電素子とする。
得られた積層圧電素子の少なくとも一部を、(好ましくは上述した比率Cの範囲となるように)湾曲(変形)させて湾曲部とすることにより、本発明の積層圧電素子を得る。
積層圧電素子を変形させる方法には特に制限はなく、積層圧電素子に対しこの積層圧電素子の両端の距離を近づける方向に力を加えて変形させる方法や、湾曲面を有する部材を用い、この湾曲面に沿わせて積層圧電素子を変形させる方法等が挙げられる。
また、湾曲した圧電ユニットを複数準備し、その後、この複数の圧電ユニットを、接着機能を有する絶縁層を介して貼りあわせることによって積層圧電素子を製造してもよい。
ここで、湾曲した圧電ユニットは、例えば、まず湾曲していない圧電フィルムの両面に電極層を形成し、次いで電極層が形成された圧電フィルムを湾曲させることにより製造することができる。また、湾曲した圧電ユニットは、湾曲した圧電フィルムの両面に電極層を形成して製造することもできる。
次に、本発明の積層圧電素子の各部材について説明する。
<圧電フィルム>
本発明の積層圧電素子は、分子配向を有する圧電フィルム(例えば、前述の圧電フィルム101A、101B、101C)を複数備える。
複数の圧電フィルムの厚みは、同一であっても異なっていてもよい。
以下、圧電フィルムの好ましい態様について説明する。
(圧電定数d14
上記圧電フィルムとしては、25℃において変位法で測定した圧電定数d14が1pm/V以上である圧電フィルムが好ましい。
上記「圧電定数d14」とは、圧電率のテンソルの一つであり、延伸した材料の延伸軸方向に、ずり応力を印加したとき、ずり応力の方向に生じた分極の程度から求める。具体的には、単位ずり応力あたりの発生電荷密度をd14と定義する。圧電定数d14の数値が大きいほど圧電性が高いことを表す。本願において単に『圧電定数』と称するときは、変位法で測定した「圧電定数d14」を指す。
また、複素圧電率d14は、「d14=d14’―id14’’」として算出され、「d14’」と「id14’’」は東洋精機製作所社製「レオログラフソリッドS−1型」より得られる。「d14’」は、複素圧電率の実数部を表し、「id14’’」は、複素圧電率の虚数部を表し、d14’(複素圧電率の実数部)は本実施形態における圧電定数d14に相当する。尚、複素圧電率の実数部が高いほど圧電性に優れることを示す。
以下、変位法による圧電定数d14の測定方法の一例について説明する。
圧電フィルムを、延伸方向(例えばMD方向)に40mm、延伸方向に直交する方向(例えばTD方向)に40mmでそれぞれカットして、矩形の試験片を作製する。次に、アルバック社製スパッタ薄膜形成装置JSP−8000の試験台に、得られた試験片をセットし、ロータリーポンプによりコータチャンバー内を真空状態(例えば、10−3Pa以下)にする。その後、Ag(銀)ターゲットに、印加電圧280V、スパッタリング電流0.4A)の条件で、試験片の一方の面に500秒間スパッタリング処理をする。次いで、試験片の他方の面を、同様の条件で500秒間スパッタリング処理をして、試験片の両面にAgを被覆し、Agの電極層を形成する。
両面にAgの電極層が形成された40mm×40mmの試験片を、圧電フィルムの延伸方向に対して45°なす方向に32mm、45°なす方向に直交する方向に5mmにカットして、32mm×5mmの矩形のフィルムを切り出す。これを、圧電定数測定用サンプルとする。
得られた圧電定数測定用サンプルに、10Hz、300Vppの正弦波の交流電圧を印加したときの、フィルムの変位の最大値と最小値の差分距離を、キーエンス社製レーザ分光干渉型変位計SI−1000により計測する。計測した変位量(mp−p)を、フィルムの基準長30mmで割った値を歪量とし、この歪量をフィルムに印加した電界強度((印加電圧(V))/(フィルム厚))で割った値に2を乗じた値を圧電定数d14とする。
圧電定数は高ければ高いほど、圧電フィルムに印加される電圧に対する前記材料の変位、逆に圧電フィルムに印加される力に対し発生する電圧が大きくなり、有用である。
具体的には、25℃における変位法で測定した圧電定数d14は1pm/V以上が好ましく、4pm/V以上がより好ましく、6pm/V以上がさらに好ましく、8pm/V以上がさらにより好ましい。また圧電定数の上限は特に限定されないが、透明性などとのバランスの観点からは、50pm/V以下が好ましく、30pm/V以下がより好ましい場合がある。
また、本発明における圧電フィルムとしては、透明性の観点から、可視光線に対する内部ヘイズが50%以下である圧電フィルムを用いることが好ましい。
上記圧電フィルムとして、より好ましくは、可視光線に対する内部ヘイズが50%以下であり、且つ、25℃において変位法で測定した圧電定数d14が1pm/V以上である圧電フィルムである。
(内部ヘイズ)
圧電フィルムの透明性は、例えば、目視観察やヘイズ測定により評価することができる。
圧電フィルムは、可視光線に対する内部ヘイズ(以下、単に「内部ヘイズ」ともいう)が50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
圧電フィルムの内部ヘイズは、低ければ低いほどよいが、圧電定数などとのバランスの観点からは、0.01%〜13%であることが好ましく、0.1%〜5%であることがさらに好ましい。
本発明において、「内部へイズ」とは、圧電フィルムの外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。
また、ここでいう「内部ヘイズ」は、厚さ0.05mmの圧電フィルムに対して、JIS−K7105に準拠して、25℃で測定したときの値である。
より詳細には、本発明における内部ヘイズ(以下、「内部ヘイズH1」ともいう)は、以下のようにして測定された値を指す。
即ち、まず、ガラス板2枚の間にシリコンオイルのみを挟んだ構成の積層体のヘイズ(以下、「ヘイズH2」ともいう)、及び、シリコンオイルで表面を均一に濡らした圧電フィルムをガラス板2枚の間に挟んだ構成の積層体のヘイズ(以下、「ヘイズH3」ともいう)を、それぞれ、JIS−K7105に準拠して25℃で測定し、次いで、下記式に従って内部ヘイズH1を求める。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
ヘイズH2及びヘイズH3の測定は、例えばヘイズ測定機〔(有)東京電色製、TC−HIII DPK〕を用いて行うことができる。
また、本発明における圧電フィルムは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であることが好ましい。
(分子配向度MOR、規格化分子配向MORc)
本発明における圧電フィルムは、前述のとおり、分子配向を有する。
この分子配向を表す指標として、「分子配向度MOR」がある。
分子配向度MOR(Molecular Orientation Ratio)は、分子の配向の度合いを示す値であり、以下のようなマイクロ波測定法により測定される。 すなわち、試料(圧電フィルム)を、周知のマイクロ波分子配向度測定装置(マイクロ波透過型分子配向計ともいう)のマイクロ波共振導波管中に、マイクロ波の進行方向に前記試料面(フィルム面)が垂直になるように配置する。
そして、振動方向が一方向に偏ったマイクロ波を試料に連続的に照射した状態で、試料をマイクロ波の進行方向と垂直な面内で0〜360°回転させて、試料を透過したマイクロ波強度を測定することにより分子配向度MORを求めることができる。
また、本発明では、下記式により規格化分子配向MORcを求めることもできる
ここで、規格化分子配向MORcとは、基準厚さtcを50μmとしたときのMOR値である。
MORc=(tc/t)×(MOR−1)+1
(tc:補正したい基準厚さ、t:試料厚さ)
規格化分子配向MORcは、公知の分子配向計、例えば王子計測機器株式会社製マイクロ波方式分子配向計MOA−2012AやMOA−6000等により、4GHzもしくは12GHz近傍の共振周波数で測定することができる。
規格化分子配向MORcは、後述の通り、例えば、主に一軸延伸フィルムの延伸前の加熱処理条件(加熱温度および加熱時間)や延伸条件(延伸温度および延伸速度)等によって制御されうる。
なお規格化分子配向MORcは、位相差量(レターデーション)をフィルムの厚さで除した複屈折率Δnに変換することもできる。具体的には、レターデーションは大塚電子株式会社製RETS100を用いて測定することができる。またMORcとΔnとは大凡、直線的な比例関係にあり、かつΔnが0の場合、MORcは1になる。
例えば、後述の光学活性高分子がポリ乳酸系高分子で複屈折率Δnを測定波長550nmで測定した場合、規格化分子配向MORcの好ましい範囲の下限である2.0は、複屈折率Δn 0.005に変換できる。また圧電フィルムの規格化分子配向MORcと結晶化度の積の好ましい範囲の下限である40は、圧電フィルムの複屈折率Δnと結晶化度の積が0.1に変換することができる。
本発明における圧電フィルムは、規格化分子配向MORcが3.5〜15.0であることが好ましく、4.0〜15.0であることがより好ましく、6.0〜10.0であることがさらに好ましく、7〜10.0であることがさらにより好ましい。
規格化分子配向MORcが3.5〜15.0の範囲にあれば、延伸方向に配列する高分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、高い圧電性を発現することが可能となる。
(結晶化度)
本発明における圧電フィルムは、結晶化度が20%〜80%であることが好ましい。
ここで、結晶化度は、DSC法によって求めることができる。
圧電フィルムの結晶化度は、好ましくは25%〜70%であり、さらに好ましくは30%〜50%である。
圧電フィルムの結晶化度が20%〜80%であれば、圧電フィルムの圧電性、透明性のバランスがよく、また圧電フィルムを延伸するときに、白化や破断がおきにくく製造しやすい。
(規格化分子配向MORcと結晶化度の積)
本発明における圧電フィルムにおいて、圧電フィルムの結晶化度と規格化分子配向MORcとの積は、好ましくは25〜700、より好ましくは40〜700、さらに好ましくは75〜680、さらに好ましくは90〜660、さらに好ましくは125〜650、さらに好ましくは180〜350である。
結晶化度と規格化分子配向MORcとの積が40〜700の範囲にあれば、圧電フィルムの圧電性と透明性とのバランスがより良好であり、かつ寸法安定性もより高い。
また、本発明における圧電フィルムは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が40〜700であることが好ましい。
次に、本発明における圧電フィルムの成分の好ましい範囲について説明する。
(光学活性を有するヘリカルキラル高分子(光学活性高分子))
上記圧電フィルムは、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(以下、「光学活性高分子」ともいう)を含有することが好ましい。
ここで、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(光学活性高分子)とは、分子構造が螺旋構造である分子光学活性を有する高分子をいう。
光学活性高分子としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
前記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
前記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
光学活性高分子の光学純度としては、圧電フィルムの圧電性を向上する観点から、95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。
光学活性高分子の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
ここで、光学活性高分子の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、『「光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値を、光学純度とする。
なお、光学活性高分子のL体の量〔質量%〕と光学活性高分子のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。
以上の光学活性高分子の中でも、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する化合物が好ましい。
前記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする化合物としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。中でも、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA)またはD−乳酸のホモポリマー(PDLA)が最も好ましい。なお、本実施形態における前記ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子化合物)」、「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
前記「ポリ乳酸」は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子であり、ラクチドを経由するラクチド法と、溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法などによって製造できることが知られている。前記「ポリ乳酸」としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
前記「L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸、グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸、及びこれらの無水物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール、セルロース等の多糖類、及び、α−アミノ酸等のアミノカルボン酸等を挙げることができる。
前記「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが挙げられる。
また光学活性高分子中のコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。例えば光学活性高分子がポリ乳酸系高分子の場合、前記ポリ乳酸系高分子中の乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、前記コポリマー成分が20mol%以下であることが好ましい。
前記ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法や、米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法などにより製造することができる。
さらに、前記の各製造方法により得られた光学活性高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
本発明の圧電フィルムが光学活性高分子を含有する場合、圧電フィルムに含有される光学活性高分子の含有量は、80質量%以上が好ましい。
(光学活性高分子の重量平均分子量)
上記光学活性高分子の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万であることが好ましい。
光学活性高分子の重量平均分子量の下限が5万以上であれば光学活性高分子を成型体としたときの機械的強度が十分となる。光学活性高分子の重量平均分子量の下限は、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、光学活性高分子の重量平均分子量の上限が100万以下であると、光学活性高分子を成形すること(例えば、押出成型などによりフィルム形状などに成形すること)がより容易となる。重量平均分子量の上限は、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
また、光学活性高分子の分子量分布(Mw/Mn)は、圧電フィルムの強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
なお、光学活性高分子の重量平均分子量Mwと、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、下記条件のGPC測定方法により、測定される。
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工社製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
光学活性高分子を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、光学活性高分子の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
光学活性高分子の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いてもよく、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H−100、H−400)等が挙げられる。
光学活性高分子としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、または直接重合法により光学活性高分子を製造することが好ましい。
(安定化剤)
本発明における圧電フィルムは、安定化剤として、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の化合物を含むことが好ましい。
これにより、上記光学活性高分子の加水分解反応を抑制し、得られる圧電フィルムの耐湿熱性をより向上させることができる。
安定化剤については、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0039〜0055の記載を適宜参照できる。
(その他の成分)
本発明における圧電フィルムは、本発明の効果を損なわない限度において、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂やポリスチレン樹脂に代表される公知の樹脂や、シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の無機フィラー、フタロシアニン等の公知の結晶核剤等、その他の成分を含有していてもよい。
無機フィラー及び結晶核剤については、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0057〜0059の記載を適宜参照できる。
(圧電フィルムの製造方法)
本発明における分子配向を有する圧電フィルムの製造方法には特に制限はないが、例えば、押し出し成形などにより高分子(例えば、後述の光学活性を有するヘリカルキラル高分子。以下同じ。)を含むフィルムを得、次いで、このフィルムを延伸処理して高分子を配向させることによって製造することができる。
以下、圧電フィルムが少なくとも光学活性高分子を含む場合における好ましい製造方法(製造方法A及び製造方法B)について説明する。
−製造方法A−
製造方法Aは、光学活性高分子(及び、必要に応じて安定化剤等のその他の成分)を含む非晶状態のシートを結晶化して予備結晶化シート(結晶化原反ともいう)を得る第一の工程と、前記予備結晶化シートを主として1軸方向に延伸する第二の工程と、を含む。
製造方法Aにおいて、圧電フィルムの原料は、既述のポリ乳酸系高分子などの光学活性高分子(及び、必要に応じて、カルボジイミド化合物などの安定化剤等の他の成分)を溶融混練して得ることができる。具体的には、光学活性高分子と必要に応じて用いられる他の成分とを、溶融混練機〔東洋精機社製、ラボプラストミル〕を用い、ミキサー回転数30rpm〜70rpm、180℃〜250℃の条件で、5分〜20分間溶融混練することが好適である。
これにより、光学活性高分子と安定化剤とのブレンド体、複数種のヘリカルキラル高分子のブレンド体、ヘリカルキラル高分子と無機フィラーなどの他の成分とのブレンド体等を得ることができる。
一般的に延伸時にフィルムにかける力を増やすことで、光学活性高分子の配向が促進され圧電定数も大きくなり、結晶化が進み、結晶サイズが大きくなることでヘイズが大きくなる傾向にある。また内部応力の増加により寸法変形率も増加する傾向がある。単純にフィルムに力をかけた場合、球晶のように配向していない結晶が形成される。球晶のような配向が低い結晶は、ヘイズを上げるものの圧電定数の増加には寄与しにくい。よって、圧電定数が高く、ヘイズ及び寸法変形率が低いフィルムを形成するためには、圧電定数に寄与する配向結晶を、ヘイズを増大させない程度の微小サイズで効率よく形成する必要がある。
製造方法Aにおいては、例えば延伸の前にシート内を予備結晶化させ微細な結晶を形成した後に延伸する。これにより、延伸時にフィルムにかけた力を微結晶と微結晶の間の結晶性が低い高分子部分に効率よくかけることができるようになり、ヘリカルキラル高分子を主な延伸方向に効率よく配向させることができる。具体的には、微結晶と微結晶の間の結晶性が低い高分子部分内に、微細な配向結晶が生成すると同時に、予備結晶化によって生成された球晶がくずれ、球晶を構成しているラメラ晶が、タイ分子鎖につながれた数珠繋ぎ状に延伸方向に配向することで、所望の値のMORcを得ることができる。このため、圧電定数を大きく低下させることなく、ヘイズ及び寸法変形率の値が低いシートを得ることができる。
規格化分子配向MORcを制御するには、第一の工程の加熱処理時間および加熱処理温度になどによる結晶化原反の結晶化度の調整、および第二の工程の延伸速度および延伸温度の調整が重要である。前述のとおり、ヘリカルキラル高分子は、分子光学活性を有する高分子である。ヘリカルキラル高分子とカルボジライト化合物を含む非晶状態のシートは、市場から入手可能なものでもよく、押出成形などの公知のフィルム成形手段で作製されてもよい。非晶状態のシートは単層であっても、多層であっても構わない。
−−第一の工程(予備結晶化工程)−−
予備結晶化シートは、光学活性高分子(及び、必要に応じて安定化剤等のその他の成分)を含む非晶状態のシートを加熱処理して結晶化させることで得ることができる。
また、押出成形法などで光学活性高分子(及び、必要に応じて安定化剤等のその他の成分)を含む原料を、光学活性高分子のガラス転移温度よりも高い温度に加熱しシート状に押出成形した後、キャスターで押し出されたシートを急冷することで、所定の結晶化度を有する予備結晶化シートを得ることもできる。
また1)予め結晶化した予備結晶化シートを、後述する延伸工程(第二の工程)に送り、延伸装置にセットして延伸してもよいし(オフラインによる加熱処理)、2)加熱処理により結晶化されていない非晶状態のシートを、延伸装置にセットして、延伸装置にて加熱して予備結晶化し、その後、連続して延伸工程(第二の工程)に送って、延伸してもよい(インラインによる加熱処理)。
非晶状態のシートを予備結晶化するための加熱温度Tは特に限定されないが、本製造方法Aで製造される圧電フィルムの圧電性や透明性など高める点で、光学活性高分子のガラス転移温度Tgと以下の式の関係を満たし、結晶化度が3%〜70%になるように設定されるのが好ましい。
Tg−40℃≦T≦Tg+40℃
(Tgは、前記光学活性高分子のガラス転移温度を表す)
ここで、光学活性高分子のガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、測定対象(例えば光学活性高分子)に対して、昇温速度10℃/分の条件で温度を上昇させたときの融解吸熱曲線から、曲線の屈曲点として得られるガラス転移温度(Tg)を指す。
予備結晶化するための加熱時間またはシート状に押出成形するときに結晶化する場合の加熱時間は、所望の結晶化度を満たし、かつ延伸後(第二工程後)の圧電フィルムの規格化分子配向MORcと延伸後の圧電フィルムの結晶化度の積が好ましくは40〜700、さらに好ましくは125〜650、さらに好ましくは250〜350になるように調整されればよい。加熱時間が長くなると、延伸後の結晶化度も高くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも高くなる。加熱時間が短くなると、延伸後の結晶化度も低くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも低くなる傾向がある。
延伸前の予備結晶化シートの結晶化度が高くなると、シートが硬くなってより大きな延伸応力がシートにかかるので、前記シート中の結晶性が比較的低い部分も配向が強くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも高くなる。逆に、延伸前の予備結晶化シートの結晶化度が低くなると、シートが柔らかくなって延伸応力がよりシートにかかりにくくなるので、前記シート中の結晶性が比較的低い部分も配向が弱くなり、延伸後の規格化分子配向MORcも低くなると考えられる。
加熱時間は、加熱温度、シートの厚み、シートを構成する樹脂の分子量、添加剤などの種類または量によって異なる。また、シートを結晶化させる実質的な加熱時間は、後述する延伸工程(第二工程)の前に行なってもよい予熱において、非晶状態のシートが結晶化する温度で予熱した場合、前記予熱時間と、予熱前の予備結晶化工程における加熱時間の和に相当する。
非晶状態のシートの加熱時間またはシート状に押出成形するときに結晶化する場合の加熱時間は、通常は5秒〜60分であり、製造条件の安定化という観点からは1分〜30分でもよい。例えば、光学活性高分子としてポリ乳酸系高分子を含む非晶状態のシートを予備結晶化する場合は、20℃〜170℃で、5秒〜60分加熱することが好ましく、1分〜30分でもよい。
延伸後のシートに効率的に圧電性、透明性、高寸法安定性を付与するには、延伸前の予備結晶化シートの結晶化度を調整することが重要である。すなわち、延伸により圧電性や寸法安定性が向上する理由は、延伸による応力が、球晶状態にあると推測される予備結晶化シート中の結晶性が比較的高い部分に集中し、球晶が破壊されつつ配向することで圧電性d14が向上する一方、球晶を介して延伸応力が結晶性の比較的低い部分にもかかり、配向を促し、圧電性d14を向上させるからと考えられるからである。
延伸後のシートの結晶化度、または後述するアニール処理を行う場合はアニール処理後の結晶化度は、20%〜80%、好ましくは40%〜70%になるように設定される。そのため、予備結晶化シートの延伸直前の結晶化度は3%〜70%、好ましくは10%〜60%、さらに好ましくは15%〜50%になるように設定される。
予備結晶化シートの結晶化度は、延伸後の、本実施形態における圧電フィルムの結晶化度の測定と同様に行なえばよい。
予備結晶化シートの厚みは、第二の工程の延伸により得ようとする圧電フィルムの厚みと延伸倍率によって主に決められるが、好ましくは50μm〜1000μmであり、より好ましくは200μm〜800μm程度である。
−−第二の工程(延伸工程)−−
製造方法Aの第二の工程である、延伸工程における延伸方法は特に制限されず、1軸延伸、2軸延伸、後述する固相延伸などの種々の延伸方法を用いることができる。
この第二の工程を経ることで、分子配向を有する圧電フィルムを好適に得ることができる。更には、主面の面積が大きい圧電フィルムを得ることができる。
予備結晶化シートを主に一方向に延伸することで、予備結晶化シートに含まれる光学活性高分子(例えばポリ乳酸系高分子)の分子鎖を、一方向に配向させ、かつ高密度に整列させることができ、より高い圧電性を有する圧電フィルムが得られると推測される。
予備結晶化シートの延伸温度は、1軸延伸方法や2軸延伸方法等のように、引張力のみで予備結晶化シートを延伸する場合は、予備結晶化シートのガラス転移温度より10℃〜20℃程度高い温度範囲であることが好ましい。
延伸処理における延伸倍率は、3倍〜30倍が好ましく、4倍〜15倍の範囲で延伸することがより好ましい。
予備結晶化シートの延伸を行なうときは、延伸直前にシートを延伸しやすくするために予熱を行なってもよい。この予熱は、一般的には延伸前のシートを軟らかくし延伸しやすくするために行なわれるものであるため、前記延伸前のシートを結晶化してシートを硬くすることがない条件で行なわれるのが通常である。しかし、製造方法Aにおいては、延伸前に予備結晶化を行なうため、前記予熱を、予備結晶化を兼ねて行なってもよい。具体的には、上述した予備結晶化工程における加熱温度や加熱処理時間に合わせて、予熱を通常行なわれる温度よりも高い温度や長い時間行なうことで、予熱と予備結晶化を兼ねることができる。
−−アニール処理工程−−
圧電定数を向上させる観点から、延伸処理を施した後(前記第二の工程の後)の圧電フィルムを、一定の熱処理(以下「アニール処理」とも称する)することが好ましい。なおアニール処理により主に結晶化する場合は、前述の予備結晶化工程で行う予備結晶化を省略できる場合がある。
アニール処理の温度は、概ね80℃〜160℃であることが好ましく、100℃〜155℃あることがさらに好ましい。
アニール処理の温度印加方法は、特に限定されないが、熱風ヒータや赤外線ヒータを用いて直接加熱する方法、加熱したシリコンオイルなど、加熱した液体に圧電フィルムを浸漬して加熱する方法等が挙げられる。
このとき、線膨張により圧電フィルムが変形すると、実用上平坦なフィルムを得ることが困難になるため、圧電フィルムに一定の引張応力(例えば、0.01MPa〜100Mpa)を印加し、圧電フィルムがたるまないようにしながら温度を印加することが好ましい。
アニール処理の温度印加時間は、1秒〜60分であることが好ましく、1秒〜300秒であることがより好ましく、1秒から60秒の範囲で加熱することがさらに好ましい。60分を超えてアニールをすると、圧電フィルムのガラス転移温度より高い温度で、非晶部分の分子鎖から球晶が成長することにより配向度が低下する場合があり、その結果、圧電性や透明性が低下する場合がある。
上記のようにしてアニール処理された圧電フィルムは、アニール処理した後に急冷することが好ましい。アニール処理において、「急冷する」とは、アニール処理した圧電フィルムを、アニール処理直後に、例えば氷水中等に浸漬して、少なくともガラス転移点Tg以下に冷やすことをいい、アニール処理と氷水中等への浸漬との間に他の処理が含まれないことをいう。
急冷の方法は、水、氷水、エタノール、ドライアイスを入れたエタノールやメタノール、液体窒素などの冷媒に、アニール処理した圧電フィルムを浸漬する方法や、蒸気圧の低い液体スプレーを吹き付け、蒸発潜熱により冷却したりする方法が挙げられる。連続的に圧電フィルムを冷却するには、圧電フィルムのガラス転移温度Tg以下の温度に管理された金属ロールと、圧電フィルムとを接触させるなどして、急冷することが可能である。また、冷却の回数は、1回のみであっても、2回以上であってもよく、さらには、アニールと冷却とを交互に繰り返し行なうことも可能である。
−製造方法B−
圧電フィルムが少なくとも光学活性高分子を含む場合における好ましい製造方法としては、上記製造方法A以外にも、下記製造方法Bが挙げられる。
製造方法Bは、光学活性高分子(及び必要に応じ安定化剤等のその他の成分)を含むシートを主として1軸方向に延伸する工程と、アニール処理をする工程と、をこの順で含むものであってもよい。該延伸する工程及びアニール処理をする工程は、製造方法Aにおける工程と同様の工程とすることができる。
また、製造方法Bにおいては、製造方法Aにおける予備結晶化工程を実施しなくともよい。
<電極層>
本発明の積層圧電素子は、前述のとおり、電極層(例えば前述の、第1電極層102A、102B、102C、第2電極層104A、104B、104C)を備えることが好ましい。電極層は、圧電フィルムの主面に設けられることが好ましい。
電極層の材質としては、例えば、Al、Ag、Au、Cu、Ag−Pd合金、ITO、ZnO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー等が挙げられる。
各電極層には、上記材質が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
各電極層には、電極層としての導電性を維持できる範囲でれば、上記材質以外にも、導電性を有しない成分(バインダー成分等)が含まれていてもよい。
電極層は、透明性を有することが好ましい。
具体的には、電極層は、可視光線に対する内部ヘイズが、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
透明性の観点からは、電極層の材質は、ITO、ZnO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー等が好ましい。
電極層の厚さには特に制限はないが、10nm〜1000nmが好ましく、30nm〜600nmがより好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。
厚さが10nm以上であると、導電性をより高くすることができる。
また、厚さが1000nm以下であると、積層圧電素子全体としての圧電性がより高く維持される。
電極層は、蒸着、スパッタリング、塗布形成(必要に応じ乾燥や焼成を含む)等、公知の方法によって形成することができる。
<絶縁層>
本発明の積層圧電素子は、前述のとおり、絶縁層(例えば、上述の絶縁層112。以下同じ。)を少なくとも1層備えることが好ましい。
上記絶縁層(例えば絶縁層112。以下同じ。)の厚さは、5μm〜30μmが好ましく、7μm〜25μmがより好ましい。
厚さが5μm以上であると、絶縁性により優れる。
一方、厚さが30μm以下であると、積層圧電素子全体に占める圧電フィルムの割合が高くなるので、積層圧電素子全体としての性能がより向上する。
また、上記絶縁層は、1MHzで測定された比誘電率が3.4以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
また、上記絶縁層は、透明性を有することが好ましい。
具体的には、絶縁層は、可視光線に対する内部ヘイズが、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
また、上記絶縁層は、接着性を有すること(即ち、接着層としての機能を兼ねること)が好ましい。
これにより、圧電ユニット同士を接着させつつ、上述した絶縁層としての効果を得ることができる。
接着性を有する絶縁層は、圧電フィルムとの間で、ピール強度3N/m以上を確保できる絶縁層であることが好ましい。
接着機能を有する絶縁層としては、誘電率が低い(例えば1MHzで測定された比誘電率が3.4以下である)公知の接着剤を用いて形成された層が挙げられる。
上記接着剤の主成分である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン−エポキシ系、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、変性シリコーン系、水性高分子-イソシアネート系、スチレン-ブタジエンゴム系、ニトリルゴム系、アセタール樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、臭素樹脂、デンプン系、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が用いられる。
また、接着剤としては、紫外線硬化型の接着剤を用いることも好ましい。
また、接着剤としては、乾燥前の状態で、250〜490mPa・sの粘度を有する接着剤が好ましい。
また、接着機能を有する絶縁層としては、誘電率が低い(例えば1MHzで測定された比誘電率が3.4以下である)公知の接着シート等も挙げられる。
接着シートとしては、OCA(透明両面接着シート)、OCR(透明接着レジン)等が挙げられる。
<その他の部材>
本発明の積層圧電素子は、必要に応じ、その他の部材を備えていてもよい。
その他の部材としては、保護層、湾曲形状に支持するために積層される支持層、電極層に接続される配線、電極層と配線とを接続する導電性ペースト層、等が挙げられる。
以上で説明した本発明の積層圧電素子は、高い音圧が得られ、しかも、音圧の周波数依存性が抑制されることから、スピーカー、マイクロフォン、イヤフォン等の音響機器に好適に用いることができる。
ここでいう音響機器には、単体としての音響機器のみならず、携帯電話、携帯情報端末、携帯ゲーム機、各種表示装置(液晶表示装置、有機EL表示装置、等)、パーソナルコンピューター、電子辞書、車両、等に搭載される音響機器も含まれる。
≪音響機器≫
本発明の音響機器は、積層圧電素子を備える。
このため、本発明の音響機器によれば、音圧の周波数依存性が抑制される。
本発明の音響機器は、積層圧電素子の湾曲に沿った方向の両端部を支持する支持部材(例えば、後述の図4B中の支持部材202及び支持部材204)を備えることが好ましい。これにより、音響機器を作動させた時に(即ち、積層圧電素子に電圧を印加した時に)、上記両端部が固定端となって、中央部(湾曲部)を振動させることができる。
支持部材は、上記両端部を支持する支持枠であってもよい。
また、本発明の音響機器は、必要に応じ、積層圧電素子に電圧を印加するための電圧印加用電源等、適宜、その他の部材を備えて構成される。
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
≪積層圧電素子の作製≫
図3に示した積層圧電素子100と同じ層構成の積層圧電素子を作製した。
以下、詳細を説明する。
<圧電フィルムの作製>
光学活性を有するヘリカルキラル高分子(光学活性高分子)としての三井化学(株)製ポリ乳酸(PLA)(登録商標LACEA、H−400、重量平均分子量Mw:20万)100重量部に対して、安定化剤(B)〔カルボジイミド化合物〕としての下記安定化剤SI(ラインケミー社製、Stabaxol I(商品名)、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)を1重量部添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、220℃〜230℃に加熱しながらTダイから押し出し、55℃のキャストロールに0.5分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。前記予備結晶化シートの結晶化度を測定したところ5.63%であった。
得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度1650mm/分で延伸を開始し、3.3倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。得られたフィルムの厚さは50μmであった。
その後、前記一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、130℃に加熱したロール上に60秒間接触させアニール処理し(アニール処理工程)、圧電フィルムを得た。
なお、本実施例では、分子配向と一軸延伸方向とが平行(両者のなす角が0°)となる。
<圧電フィルムの物性測定>
得られた圧電フィルムについて、以下の測定を行った。
(光学活性高分子(PLA)のMw、Mw/Mn、光学純度、キラリティ)
上記圧電フィルムに含まれる光学活性高分子(PLA)のMw、Mw/Mn、光学純度、及びキラリティを、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0126〜0128に記載された方法と同様の方法によって測定した。
その結果、Mwは20万であり、Mw/Mnは2.87であり、光学純度は98.5%eeであり、キラリティはLであった。
(融点、結晶化度)
圧電フィルムを、10mg正確に秤量し、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−1)を用い、昇温速度500℃/分の条件で140℃まで昇温し、さらに昇温速度10℃/分の条件で200℃まで昇温して融解曲線を得た。得られた融解曲線から融点Tm及び結晶化度を得た。
その結果、融点Tmは164.6℃であり、結晶化度は39.8%であった。
(内部ヘイズ)
予めガラス板2枚の間に、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96−100CS)のみを挟んでヘイズ(H2)を測定し、次にシリコンオイルで表面を均一に塗らした圧電フィルムをガラス板2枚で挟んでヘイズ(H3)を測定し、下記式のようにこれらの差をとることで本実施例の圧電フィルムの内部ヘイズ(H1)を得た。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
上記ヘイズ(H2)及び上記ヘイズ(H3)は、下記測定条件下で下記装置を用いて、厚さ方向の光透過性を測定することにより測定した。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC−HIIIDPK
試料サイズ:幅3mm×長さ30mm、厚さ0.05mm
測定条件:JIS−K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
上記測定の結果、圧電フィルムの内部ヘイズ(H1)は、0.0%であった。
(規格化分子配向MORc)
圧電フィルムの規格化分子配向MORcを、王子計測機器株式会社製マイクロ波方式分子配向計MOA−6000により測定した。ここで、基準厚さtcは50μmに設定した。
その結果、圧電フィルムの規格化分子配向MORcは、4.73であった。
(MORcと結晶化度との積)
上記MORcと上記結晶化度との積は188であった。
(変位法による圧電定数d14
前述した測定方法(変位法)により、圧電フィルムの圧電定数d14を測定した。
その結果、圧電フィルムの変位法による圧電定数d14は、6.2pm/Vであった。
<圧電ユニットの作製>
上記圧電フィルムから、延伸方向に対して45°なす方向の寸法が175mmであり、かつ、この45°なす方向に直交する方向の寸法が85mmである、175mm×85mmの矩形の圧電フィルムを切り出した。
切り出した圧電フィルムの両面に、スパッタリングにより、厚さ100nmのITO層をそれぞれ形成した。
以上により、圧電フィルムの両面に、電極層としてのITO層が設けられた構成の圧電ユニットを得た。
<積層圧電素子の作製>
上記の圧電ユニットを3枚準備した。
この3枚の圧電ユニットが、積層圧電素子100における、圧電ユニット110A、圧電ユニット110B、及び圧電ユニット110Cに対応する。
次に、この3枚の圧電ユニットの各ITO層にそれぞれ、電圧印加用の配線を取り付けた。
次に、この3枚の圧電ユニットを、3枚の圧電フィルム間での分子配向(延伸方向)が平行となるようにして(即ち、3つの分子配向のなす角が0°となるようにして)、接着剤(三井化学(株)製のUV硬化型液晶用シール材「UVストラクトボンド」)によって貼りあわせ、次いで、紫外線(UV)を照射することにより接着剤をUV硬化させて積層圧電素子(湾曲させる前の積層圧電素子)を得た。
なお、下記表1中では、積層圧電素子の上記の構造を、「圧電フィルムを3枚積層」と表記している。
ここで、上記接着剤が硬化して得られた硬化層が、積層圧電素子100における絶縁層112に対応する。
硬化層の厚さは、15μmであった。
硬化層の比誘電率(1MHz)を、CUSTOM社製LCRメータ「ELC−131D」を用いて測定したところ、3.0であった。
上記で得られた積層圧電素子(以下、「積層圧電素子200A」とする)を、図4A及び図4Bに示す実験装置に取り付けた。
図4Aに示すように、この実験装置は、積層圧電素子200Aの両端を支持するための一対の支持部材(支持部材202及び支持部材204)と、一対の支持部材間に電圧を印加するための電圧印加用電源220と、支持部材202の一端及び支持部材204の一端を支持する支柱210と、支柱210の一端が固定された支持台212と、を備えている。
支持部材202及び支持部材204は、それぞれ、支柱210に沿って移動できるように設けられており、これにより両者の距離を変化できるようになっている。また、支持部材202及び支持部材204は、各々が対向する側に、圧電ユニットの端部を挟み持つ機構を備えている。
まず、図4Aに示すように、積層圧電素子200Aの幅方向両端部(即ち、長辺側)を、それぞれ、上記実験装置の支持部材202及び支持部材204によって支持した。
更に、積層圧電素子200Aの各電極層に接続された各配線を、電圧印加用電源220に接続した。
なお、図4A中では図示は省略したが、積層圧電素子200Aの各電極層と電圧印加用電源220との接続方法(電圧印加方法)は、前述の積層圧電素子100における接続方法(図3)と同様とした。即ち、電圧印加用電源220から供給された電圧が各圧電フィルムに印加され、かつ、各圧電フィルム中に同じ方向の電界が生じるようにした。
次に、支持部材202及び支持部材204を、互いの距離が近づくように移動させることにより、積層圧電素子200Aに対して力Fを加えて積層圧電素子200Aを湾曲(変形)させた。ここでは、積層圧電素子の短辺方向に平行な方向に力Fを加えた。即ち、積層圧電素子の長辺同士が平行である状態を保ちながら、この積層圧電素子を湾曲(変形)させた。
これにより、図4Bに示す、湾曲部を有する積層圧電素子200Bを得た。
この積層圧電素子200Bでは、圧電フィルムの分子配向が湾曲形状に追従している。そして前述の角度θが45°となっている。
なお、図4Bでは、形状の特徴を見やすくするため、積層圧電素子200Bの湾曲形状を実際よりも誇張して図示している。
この積層圧電素子200Bの湾曲形状は、湾曲部を曲率が最大となる方向に切断したときの断面において、下記式で表される比率Cが19/20となる形状とした。
比率C = 湾曲部の一端から他端までの直線距離/湾曲部の湾曲に沿った長さ
また、積層圧電素子200Bでは、湾曲部の湾曲に沿った長さを、75mmとした。
≪積層圧電素子の評価≫
上記積層圧電素子200B中の各圧電フィルムに対し、周波数発信機の出力信号を増幅した電圧印加用電源220から100V〜400Vの電圧を印加し、このときの音圧を(株)小野測器製の高機能型騒音計「LA−5560」を用い、周波数特性重視のC特性音圧モードのLcで測定した。
この音圧の測定は、詳細には、無響箱中に上記積層圧電素子200B及び上記LA−5560を入れ、積層圧電素子200Bと騒音計との間隔(最近接距離)を100mmに調整した状態で行った。
また、この音圧の測定は、周波数1500Hz〜9500Hzの範囲について行った。
測定結果に基づき、周波数1500Hz〜9500Hzの範囲における、最大音圧、及び、最大音圧と最小音圧との差(音圧差=最大音圧−最小音圧)をそれぞれ求めた。
結果を下記表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1において、中央の圧電フィルム(図3中の圧電フィルム101Bに対応する圧電フィルム)の分子配向と他の2つの圧電フィルムの分子配向とが直交するように(分子配向同士のなす角が90°となるように)して3枚の圧電ユニットを貼りあわせたこと以外は実施例1と同様の評価を行った。
結果を下記表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、積層圧電素子を湾曲させなかったこと(即ち、比率Cが1/1となるようにしたこと)以外は実施例1と同様の評価を行った。
結果を下記表1に示す。
表1に示すように、3枚の圧電フィルムの分子配向が平行であり、かつ、湾曲部を有する実施例1の積層圧電素子では、最大音圧が高く、かつ、音圧差が低減されていた。即ち、実施例1では音圧の周波数依存性が低減されていた。
これに対し、分子配向を直交させた比較例1では、音圧差が大きく、音圧の周波数依存性が大きかった。
また、圧電素子を湾曲させなかった比較例2では、音圧が得られなかった。
〔実施例2〜4〕
実施例1において、積層圧電素子に加える力を変化させることにより、比率Cを、9/10(実施例2)、6/7(実施例3)、及び3/4(実施例4)にそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の評価を行った。
図5は、実施例1〜4における、比率Cと最大音圧(dB)との関係を示すグラフである。
図5に示すように、比率Cが19/20〜6/7の範囲で、特に高い最大音圧が得られることが確認された。
また、実施例2〜4では、実施例1と同様に、3枚の圧電フィルムの分子配向が平行となっていることから、実施例1と同様に、音圧の周波数依存性を低減させる効果が期待できる。
10、20、100、200A、200B 積層圧電素子
22 湾曲部
24、26 平面部
101A、101B、101C 圧電フィルム
102A、102B、102C 第1電極層
104A、104B、104C 第2電極層
110A、110B、110C 圧電ユニット
112 絶縁層
a 湾曲部の一端から他端までの直線距離
b 湾曲部の湾曲に沿った長さ

Claims (7)

  1. 分子配向を有する圧電フィルムを複数備え、前記複数の圧電フィルムの分子配向が略平行であるとともに、湾曲部を有し、
    前記圧電フィルムの一方の面に第1電極層を他方の面に第2電極層をそれぞれ備えた圧電ユニットを複数備え、前記複数の圧電ユニットは、互いの第1電極層と第2電極層とが対向する配置で絶縁層を介して積層されており、
    複数の第1電極層に同電位が付与され、かつ、複数の第2電極層に別の同電位が付与されることにより、前記複数の圧電フィルムに同電圧が印加され、
    前記複数の圧電フィルムが同一のキラリティを有し、電圧の印加により、前記複数の圧電フィルムが同じ向きに変位し、かつキラリティが異なる2種の圧電フィルムを交互に積層させた構造を有さず、
    前記湾曲部を曲率が最大となる方向に切断したときの断面において、下記比率Cが、19/20〜6/7である、積層圧電素子。
    比率C = 湾曲部の一端から他端までの直線距離/湾曲部の湾曲に沿った長さ
  2. 前記圧電フィルムの厚さが、20μm〜80μmである、請求項1に記載の積層圧電素子。
  3. 前記複数の圧電フィルムが、L体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有するか、又は、D体の量が95質量%以上である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含有する、請求項1又は請求項2に記載の積層圧電素子。
  4. 前記圧電フィルムは、可視光線に対する内部ヘイズが50%以下であり、且つ、25℃において変位法で測定した圧電定数d14が1pm/V以上である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
  5. 前記圧電フィルムは、重量平均分子量が5万〜100万である光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含み、DSC法で得られる結晶化度が20%〜80%であり、かつ、マイクロ波透過型分子配向計で測定される基準厚さを50μmとしたときの規格化分子配向MORcと前記結晶化度との積が25〜700である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
  6. 前記ヘリカルキラル高分子が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である、請求項又は請求項に記載の積層圧電素子。
  7. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層圧電素子を備える、音響機器。
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