(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による撮像素子100の概略構成図である。100はCMOSイメージセンサと呼称される撮像素子であり、受光した被写体像を光電変換し、その電気信号をデジタル信号として出力する。撮像素子100は、画素部10、垂直走査回路15、増幅部20、ランプ信号発生回路(参照信号発生回路)25、比較部30、カウンタ部40、メモリ部50、出力回路60、水平走査回路65及びタイミング発生回路(TG)70を有する。画素部10は、2次元行列状に配置された複数の画素10−1を有する。画素10−1は、光電変換により画素信号を出力する。垂直走査回路15は、駆動パルスX−1,X−2,・・・を画素部10に出力する。増幅部20は、設定されたゲインで画素部10の画素信号を増幅する。ランプ信号発生回路25は、画素信号との比較信号として、時間に対して変化するランプ信号(参照信号)を生成する。比較部30は、増幅部20により増幅された画素信号とランプ信号とを比較する。カウンタ部40は、比較部30が比較結果を出力するまでカウントする。メモリ部50は、カウンタ部40のカウントデータを保持する。水平走査回路65は、水平走査により、メモリ部50からのデータを出力回路60へ転送する。タイミング発生回路70は、上記回路ブロックのそれぞれのタイミングを制御する。
画素部10は複数の画素10−1がエリア上に配置されているが、その構成例は図2を参照しながら後述する。各画素10−1の行は垂直走査回路15からの駆動パルスX−1,X−2により順次駆動され、各画素10−1から出力された信号は垂直信号線V−1〜V−nを経て増幅部20へ導かれる。増幅部20からメモリ部50までは垂直信号線V−1〜V−n毎に各回路が設けられている。各回路は、垂直信号線V−1〜V−nの上下方向に分けて設けてもよい。例えば、偶数列の画素に対しては図中画素部の下方へ、奇数列の画素に対しては図中画素部の上方へ信号が伝達されるように各回路を設けても良い。増幅部20の各増幅回路20−1は画素10−1からの信号を単に増幅する機能のみであっても良いし、相関二重サンプリングによるノイズ低減処理を行うCDS処理機能を有しても良い。比較部30の入力部でCDS処理を行っても良い。
比較部30は、複数の画素列に対応した複数の比較回路30−1を有する。比較回路30−1は、まず、増幅回路20−1からのN信号とランプ信号発生回路25からのランプ信号とを比較する。このN信号とは、増幅回路20−1がCDS機能を有する場合には、増幅回路20−1をリセットしたことに対応する信号であり、増幅回路20−1がCDS機能を持たない場合には、画素10−1をリセットしたことに対応する信号である。カウンタ部40のカウンタ回路40−1は、ランプ信号の傾斜開始から、比較回路30−1でN信号とランプ信号との大小関係が逆転するまでを、ゲイン差を補正したカウント設定でダウンカウントする。その後、比較回路30−1は、増幅回路20−1からのS信号とランプ信号発生回路25からの基準信号とを比較する。このS信号とは、増幅回路20−1がCDS機能を有する場合には、増幅器の非リセット状態に対応する信号であり、増幅回路20−1がCDS機能を持たない場合には、画素10−1による光電変換に基づく信号である。比較回路30−1は、比較結果に応じて、全画素列の増幅回路20−1のゲインを低ゲインかあるいは高ゲインかを決定し、あるいは選択し、そのゲインでのS信号とランプ信号との比較を行う。カウンタ回路40−1は、ゲイン差を補正する機能を有する。この補正方法は低ゲインに対して高ゲインを補正する方法と、高ゲインに対して低ゲインを補正する方法がある。詳細は後述する。ここでは主に前者について説明する。増幅回路20−1のゲインが低ゲインの場合はゲイン差を補正しないでアップカウントを行い、増幅回路20−1のゲインが高ゲインの場合はゲイン差を補正した状態でアップカウントを行う。ゲイン差を補正したカウントとは、カウンタ回路40−1に与えられるクロック信号に対するカウント値の増減を変更してカウントを行うことである。つまり、N信号のAD変換時とのゲイン差を補正しない場合には、N信号の変換時とカウント値の変動幅が同じとなり、ゲイン差を補正する場合には、N信号の変換時とはカウント値の変動幅が異なる。メモリ部50のメモリ回路50−1は、カウンタ回路40−1のカウント値(デジタルデータ)を保持する。メモリ回路50−1に保持されたデジタルデータは、水平走査回路65からの走査パルスにより出力回路60へ転送される。上述のカウンタ部40は、列毎に設けたアップダウンカウンタでカウントする列カウンタ方式の動作を説明した。ただし、複数の比較回路30−1で共通のカウンタを利用する共通カウンタ方式では、比較回路の比較結果によってカウンタ信号をラッチし、N信号のカウントデータとS信号のカウントデータを個別にメモリして、後段でゲイン差を補正してもよい。その後、S信号とN信号のカウントデータの差分処理を行う。
以上述べたように、撮像素子100は、N信号とランプ信号との比較時にゲイン差分を補正してカウントするので、デジタルデータの量子化誤差を小さくする効果がある。また、ゲイン差を補正してカウントする機能を有するカウンタ回路40−1を用いることで、メモリ回路50−1を簡単にでき、メモリ回路50−1から差分処理回路を削減できる効果がある。また、ゲイン補正機能により、少ないビット数のAD変換処理を行って高ビット化しかつ高速化できる。
図2は、画素10−1の構成例を示す回路図である。画素10−1は、フォトダイオード101、転送トランジスタ102、リセットトランジスタ103、増幅トランジスタ104及び選択トランジスタ105を有する。フォトダイオード101は、光電変換により電荷を生成する光電変換素子である。転送トランジスタ102は、制御パルスφTにより、フォトダイオード101に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部FDへ転送する。増幅トランジスタ104は、フローティングディフュージョン部FD上の電荷をソースフォロア読み出しにより増幅する。リセットトランジスタ103は、制御パルスφRにより、フローティングディフュージョン部FD上の電荷を電源電位でリセットする。選択トランジスタ105は、制御パルスφSELにより、増幅トランジスタ104の出力信号を垂直信号線V−1へ出力する。電流源106は、垂直信号線V−1に接続される。画素10−1は、図2の構成例だけでなく、選択トランジスタ105を無くして、フローティングディフュージョン部FDに設定する電位で画素の選択制御を行う構成、複数の光電変換素子101で共通の増幅トランジスタ104を共有する構成等であってもよい。
図3は、画素信号に含まれるノイズと、その信号レベルと基準電圧との比較方法についての説明図である。図3の横軸は画素10−1への入射光量、縦軸はAD変換に供される信号レベルを表示している。図3の実線で示したG1及びG8は増幅回路のゲインが異なる画素信号を示す。点線301は回路系ノイズ(電源、グランド、増幅回路、AD変換などに起因するノイズ)である。破線302−1はCDS後の増幅回路の入力での画素ノイズ(画素ノイズ<増幅器の入力換算ノイズ<回路系ノイズ)である。回路系ノイズ301は画素ノイズ302−1よりも大きく、仮に回路系ノイズ301を0.2mVとすれば、信号レベル1Vと画素ノイズ0.2mVの比であるSN比は74dBとなる。このSN比をカバーしてAD変換するためには、量子化ビット誤差を考慮すると14ビット程度の分解能が必要となる。高分解能になればなるほどカウント期間が増すために、AD変換時間が長くなり、撮像素子100としては信号読み出しが低速となり、結局、高速撮影ができなくなる。
そこで、本実施形態では、AD変換のビット数を少なくして高速読み出しを達成する。画素信号が大きい時は、光ショットノイズが回路系ノイズより大きいので、回路系ノイズはSN比への影響は小さい。そこで、例えば増幅回路20−1のゲインを1倍とする(G1の特性)。画素信号が小さい時は、G1の入射光−出力特性では回路系ノイズが画素ノイズより大きいためにSN比の支配的要因になる。従って、増幅回路20−1のゲインを8倍とする(G8の特性)ことで回路系ノイズ301より画素ノイズ302−2が大きくなり、画素ノイズ302−2がSN比の支配的要因となる。G1の特性を利用すれば、出力が飽和するまでの光量範囲が広い信号を得ることが出来、G8の特性を利用すれば、G1の特性よりもSN比が良い信号を得ることが出来る。上述のように、入射光量、すなわち、信号レベルによって、G1の特性とG8の特性とのいずれかを選択する。これにより、撮像装置から得られる信号は、小信号の出力を行う画素についてはSN比が良く、大信号の出力を行う画素については、小信号の出力を行う画素よりもダイナミックレンジを広くできる。
信号レベルの判定は、特性G1を利用する方法と、特性G8を利用する方法がある。図3(A)は実線で示す特性G1と一点鎖線401で示す基準電圧VREF1との比較により信号レベルを判定する場合を示している。一方、図3(B)は実線で示す特性G8と一点鎖線402で示す基準電圧VREF2との比較により信号レベルを判定する場合を示す。
図3(A)、(B)において、光量L2に相当する信号レベルを、基準電圧VREF1又はVREF2として設定している。基準電圧よりゲイン信号が大きい場合は特性G1を利用し、基準電圧よりゲイン信号が小さいときは特性G8を利用する。
基準電圧VREF2は、G8の特性に直線性がある、飽和信号より小さい値に設定することが望ましく、基準電圧VREF1は基準電圧VREF2を、G8の特性とG1の特性との間のゲイン比で割った値に設定することが望ましい。しかし、厳密な設定値である必要はない。何故ならば、大きい信号は光ショットノイズが大きいため、基準電圧が多少異なって信号が判定されても、SN比の支配的要因は変わらないからである。
入射光量がL1である場合を説明する。入射光量がL1である場合、図3(A)のように、G1の特性の信号と基準電圧VREF1とを用いて信号レベルの判定を行う場合を考える。G1の特性では、入射光量がL1である場合の信号レベルはV2であり、基準電圧VREF1より小さい。従って、G8の特性の信号を選択する。図3(B)のように、G8の特性の信号と基準電圧VREF2とを用いて信号レベルの判定を行う場合を考える。G8の特性では、入射光量がL1の場合の信号レベルはV1であり、基準電圧VREF2より小さい。従って、特性G8を選択する。
入射光量L1のときに得られる信号を8倍に増幅したG8の特性の画素信号V1をAD変換し、変換後にゲイン補正(元の信号振幅に戻す)を行い、画素信号V2のデジタルデータを得る。この結果、回路系ノイズが計算上は1/8になり、高SN比が得られる効果がある。また、画素信号レベルは特に光量L1の時に限定されるのではなく、光量L2の基準電圧より小さい範囲で同様の効果が得られる。
上述のように、ゲイン差分をゲイン補正、即ち、デジタルデータをビットシフト(ビット補正、上記例では3ビット)することで、理想的には10ビットAD変換器で13ビット精度のAD変換データが得られることになる。しかし、N信号のデジタルデータをS信号のデジタルデータから差分処理することを考えると、ゲインが1倍の画素信号G1のデジタルデータの最下位ビットは、S信号とN信号との差分処理により量子化誤差が大きくなっているので、10ビットの精度はない。この量子化誤差を小さくするために、N信号のデジタルデータはゲイン差分を補正して、即ち、3ビット分ビットシフトすることで、S信号とN信号との差分処理による量子化誤差を小さくする。
上述のように、画素信号が小さい場合には、8倍の高ゲインで増幅した画素信号G8のデジタルデータを元のゲイン1倍にデータを補正して、結果的にSN比を改善する方法を説明した。画素信号が大きい場合、画素信号のダイナミックレンジの拡大を優先するために、大信号を1倍の低ゲインで増幅した特性G1のデジタルデータをG8の特性のデジタルデータに対して上位ビットとしてゲイン差分のビットシフトを行うことを説明した。
図4は、本実施形態の比較回路30−1の入出力回路との接続を説明するAD変換部のブロック図であり、図1の実施形態と同じ機能のブロックは同一符号とし、説明は省略する。AD変換部は、光電変換されたアナログ信号を高速にデジタル信号に変換することができる。比較回路30−1は、画素信号VaのN信号とランプ信号VRAMPの入力信号を、タイミング発生器70からのパルスφcでリセットする。
図5は、図4のAD変換部のタイミング図である。以下、図4と図5を参照し、AD変換動作を説明する。図5において、期間Tadは画素10−1から読み出された信号VaのN信号及びS信号のAD変換を行う期間である。期間Tdataは、デジタルデータの転送期間である。期間Tadの中で、期間TdがN信号のAD変換期間で、そのための比較信号がランプ信号N−RAMPである。期間TjがS信号の信号レベル判定期間であり、そのための比較信号が基準信号VREFである。また、期間TuがS信号のAD変換期間で、そのための比較信号がランプ信号S−RAMPである。
増幅回路20−1は、図5に示す動作の初期時は1倍の第1のゲイン(図3の信号G1)に設定されており、増幅回路20−1は出力信号Vaとして、N信号とS信号を順次出力し、容量Ciを通して比較回路30−2の入力端子へ導かれる。比較回路30−2のもう一方の入力端子には別の容量Ciを通して信号VRAMPが入力される。ランプ発生回路25は、タイミング発生回路70のパルスCNT1に制御されて、信号VRAMPを生成する。信号VRAMPは、ランプ信号N−RAMP、S−RAMP及び基準信号VREFを含む。また、増幅回路20−1は、タイミング発生回路70の信号CNT2により制御される。
ここで、基準信号VREFについて説明する。基準信号VRERFは、ランプ信号発生回路25で発生させる例を示したが、別の電源回路から発生させても良い。ランプ信号発生回路25でランプ信号が時間に対して傾斜して変化している途中で充電電流を停止することで、基準信号VREFを生成することができるので、回路構成を簡略化できる利点がある。基準信号VREFは、ランプ信号S−RAMPに対して短い期間で発生させることができる。この期間をさらに短縮するには充電電流を大きくすれば良い。また、基準信号VREFは、ランプ信号N−RAMPでAD変換できる最大値より大きくする必要がある。これは、大きくすることで、小信号が必ずランプ信号N−RAMPより大きい信号レベルの範囲内で比較処理が行われるようにするためである。具体的な数字を挙げると、図3に示した例では、N−RAMPでAD変換できる最大値を60mVとして、基準信号VREFを(60+V11)mV程度に設定することが考えられる。
N信号のAD変換期間Tdにおいて、増幅回路20−1は、出力信号VaとしてN信号を出力する。ランプ信号発生回路25は、出力信号VRAMPとしてランプ信号N−RAMPを出力する。N信号の分解能を高めるためにランプ信号N−RAMPの傾きは、ランプ信号S−RAMPの傾きの1/8に設定している。N信号とランプ信号N−RAMPは
比較回路30−1で比較され、期間Tr経過後に両者の大小関係が逆転する。カウンタ回路40−1は、その期間Trの間にダウンカウントを行う。すなわち、カウンタ回路40−1は、ランプ信号N−RAMPの傾斜が開始するとダウンカウントを開始し、上記の両者の大小関係が逆転するとダウンカウントを終了する。カウントされたダウンカウント値(第1のカウント値)がカウンタ回路40−1にセットされる。
次に、信号レベル判定期間Tjにおいて、増幅回路20−1は、出力信号VaとしてS信号を出力する。ランプ信号発生回路25は、出力信号VRAMPとして基準信号VREFを出力する。比較回路30−1は、S信号と基準信号VREFを比較する。本例では、S信号が基準信号VREFより大きいので、比較回路30−1は、ローレベルのゲイン切り替え信号HOを増幅回路20−1に出力する。その結果、増幅回路20−1のゲインは1倍の第1のゲインを維持し、増幅回路20−1は、1倍に増幅されたS信号(図3の信号G1)を出力信号Vaとして出力する。仮に、S信号が基準信号VREFより小さい場合には、比較回路30−1は、ハイレベルのゲイン切り替え信号HOを増幅回路20−1に出力する。その結果、増幅回路20−1のゲインは8倍の第2のゲインに切り替えられ、増幅回路20−1は、8倍に増幅されたS信号(図3の信号G8)を出力信号Vaとして出力する。第2のゲイン(高ゲイン:8倍)は、第1のゲイン(低ゲイン:1倍)より大きい。
上記のゲイン設定後、S信号のAD変換期間Tuにおいて、増幅回路20−1は、引き続き出力信号VaとしてS信号を出力する。ランプ信号発生回路25は、出力信号VRAMPとしてランプ信号S−RAMPを出力する。S信号とランプ信号S−RAMPは比較回路30−1で比較され、期間Ts経過後に両者の大小関係が逆転する。期間Tdでセットされた第1のカウント値を維持したカウンタ回路40−1は、上記のダウンカウント値に対して、その期間Tsの間にアップカウントを行う。すなわち、カウンタ回路40−1は、ランプ信号S−RAMPの傾斜が開始するとアップカウントを開始し、上記の両者の大小関係が逆転するとアップカウントを終了する。カウントされたアップカウント値(第2のカウント値)がカウンタ回路40−1にセットされる。この値は、この結果、第1のカウント値(第1のデジタル値)と第2のカウント値(第2のデジタル値)との差分を示すため、S信号からN信号を減算したことに等しいカウント値となる。カウンタ回路40−1のダウンカウントモードとアップカウントモード機能は、図6を参照しながら後述する。
なお、図4の増幅回路20−1で設定される低ゲインを1倍、高ゲインを8倍とする。しかし、後述の図12で説明する撮像システムには、撮影環境に適した感度設定を行うために、増幅回路20−1の低ゲインあるいは高ゲインを変える。増幅回路20−1のゲインを変更しても、低ゲイン(第1のゲイン)の倍率と高ゲイン(第2のゲイン)の倍率とのゲイン比を、異なる撮影感度間で一定にすると、補正量を合わせることができる。このゲイン比は2の乗数倍に設定すると、デジタル信号の補正が容易になる。また、画像信号の同一フレーム内で低ゲイン(第1のゲイン)と高ゲイン(第2のゲイン)とのゲイン比は一定である。また、画像信号の同一水平画素行内で低ゲイン(第1のゲイン)と高ゲイン(第2のゲイン)とのゲイン比は一定である。また、ランプ信号の傾斜を変えることで感度設定を行っても良い。具体的には、ランプ信号の傾斜を小さくすることにより高分解能でAD変換し、結果的に高感度にすることができる。
図6(A)〜(C)は、カウンタ回路(補正部)40−1の構成例を示す図である。カウンタ回路40−1は、N信号とランプ信号N−RAMPとの比較、S信号とランプ信号S−RAMPとの比較における比較回路30−1の出力が逆転するまでをカウントする。比較回路30−1がN信号の比較を行うときにはカウンタ回路40−1はダウンカウントする。これに対し、比較回路30−1がS信号の比較を行うときにはカウンタ回路40−1はアップカウントする。そして、メモリ部50は、分解能比を補正したカウントデータを保持する。
図6(A)は、カウンタ回路40−1の構成例を示す図である。図6(B)及び(C)は、カウンタ回路40−1の補正処理を含むカウント処理を説明するための図である。図6(B)は、N信号とランプ信号N−RAMPとを比較した後、S信号が基準信号VREFより大きい場合であり、S信号とランプ信号S−RAMPとを比較した時のカウントデータを示す図である。図6(C)は、N信号とランプ信号N−RAMPとを比較した後、S信号が基準信号VREFより小さい場合であり、S信号とランプ信号S−RAMPとを比較した時のカウントデータを示す図である。
カウンタ回路40−1は、インバータ601、3ビットアップ/ダウンカウンタ602、10ビットアップ/ダウンカウンタ603及びスイッチSW1,SW2を有する。本構成例に示したアップ/ダウンカウンタは非同期カウンタである。カウントクロック信号CLKは、スイッチSW1及びSW2に入力される。インバータ601は、ゲイン切り替え信号HOの論理反転信号を出力する。スイッチSW1は、インバータ601の出力信号により制御される。スイッチSW2は、ゲイン切り替え信号HOにより制御される。カウンタクロック信号CLKは、ゲイン切り替え信号HOに応じて、3ビットアップ/ダウンカウンタ602又は10ビットアップ/ダウンカウンタ603のクロック端子のいずれかに入力される。
図6(B)では、S信号が基準信号VREFより大きい場合であり、増幅回路20−1のゲインは1倍に設定される。期間Trでは、ゲイン切り替え信号HOがローレベルになり、N信号の比較処理を行う。すると、スイッチSW1により、カウンタクロック信号CLKは、3ビットアップ/ダウンカウンタ602のクロック端子に入力される。スイッチSW2により、3ビットアップ/ダウンカウンタ602の桁上げ出力(キャリーアウト)coは、10ビットアップ/ダウンカウンタ603のクロック端子に出力される。3ビットアップ/ダウンカウンタ602は、カウンタクロック信号CLKに同期してダウンカウントを行い、データD0〜D2を出力する。10ビットアップ/ダウンカウンタ603は、3ビットアップ/ダウンカウンタ602の桁上げ出力coに同期してダウンカウントを行い、データD3〜D6を出力する。N信号のダウンカウント値(第1のカウント値)は、データD0〜D6になる。次に、期間Tjでは、S信号が基準信号VREFより大きいため、ゲイン切り替え信号HOがローレベルになり、増幅回路20−1のゲインは1倍に設定され、増幅回路20−1は1倍の低ゲイン信号G1を出力する。次に、期間Tsでは、ゲイン切り替え信号HOがローレベルであり、スイッチSW1により、カウンタクロック信号CLKは、3ビットアップ/ダウンカウンタ602のクロック端子に入力されなくなる。スイッチSW2により、カウンタクロック信号CLKは、10ビットアップ/ダウンカウンタ603のクロック端子に出力される。10ビットアップ/ダウンカウンタ603は、カウンタクロック信号CLKに同期して第1のカウント値までアップカウントし、そのアップカウント値(第2のカウント値)をメモリ部50に出力する。メモリ部50は、そのアップカウント値を3ビットシフトし、3ビットシフトした10ビットデータD3〜D12をデータDa3〜Da12として保持する。また、メモリ部50は、3ビットアップ/ダウンカウンタ602の出力3ビットデータD0〜D2をデータDa0〜Da2として保持する。結果的に、3ビットアップ/ダウンカウンタ602及び10ビットアップ/ダウンカウンタ603においてS信号とN信号との差分が行われたデータがDa0〜Da12になる。13ビットデータDa0〜Da12は、それぞれデータD0〜D12に対応し、メモリ回路50−1に保持される。このように、低ゲインのS信号のAD変換データD3〜D12は、低ゲインのN信号のデータD0〜D6に対して、3ビットシフトされて差分処理される。これにより、高精度の13ビットAD変換データDa0〜Da12が得られる。
図6(C)では、S信号が基準信号VREFより小さい場合であり、増幅回路20−1のゲインは8倍に設定される。期間Trでは、図6(B)と同様に、N信号のダウンカウントが行われる。ダウンカウント値(第1のカウント値)は、データD0〜D6になる。次に、期間Tjでは、S信号が基準信号VREFより小さいため、ゲイン切り替え信号HOがハイレベルになり、増幅回路20−1のゲインは8倍に設定され、増幅回路20−1は8倍の高ゲイン信号G8を出力する。次に、期間Tsでは、ゲイン切り替え信号HOがハイレベルであるため、スイッチSW1により、カウンタクロック信号CLKは、3ビットアップ/ダウンカウンタ602のクロック端子に入力される。スイッチSW2により、3ビットアップ/ダウンカウンタ602の桁上げ出力(キャリーアウト)coは、10ビットアップ/ダウンカウンタ603のクロック端子に出力される。3ビットアップ/ダウンカウンタ602は、カウンタクロック信号CLKに同期してアップカウントを行う。10ビットアップ/ダウンカウンタ603は、3ビットアップ/ダウンカウンタ602の桁上げ出力coに同期してアップカウントを行い、10ビットデータD0〜D9をメモリ部50に出力する。ダミーデータD10〜D12は、「0」である。データD0〜D9はそれぞれデータDa0〜Da9として、ダミーデータD10〜D12はデータDa10〜Da12として、13ビットデータDa0〜Da12がメモリ部50に保持される。結果的に、3ビットアップ/ダウンカウンタ602及び10ビットアップ/ダウンカウンタ603においてS信号とN信号との差分が行われたデータがDa0〜Da9になる。ダミーデータD10〜D12は、データDa10〜Da12として追加される。13ビットデータDa0〜Da12は、メモリ回路50−1に保持される。ダミーデータD10〜D12は、小振幅データ(高ゲインデータ)であるので上位ビットがゼロであることを意味している。
本実施形態では、以上のように、S信号のゲインにかかわらず、N信号は結果的に低ゲインの高分解能で比較処理したカウントデータを利用している。このため、低ゲイン信号の量子化ノイズの影響を小さくした高精度のデジタルデータを得ることができる。また、AD変換された10ビットのカウントデータを3ビットシフトさせることにより、13ビットのデジタルデータを取得できることになる。さらに、カウンタ回路40−1でS信号とN信号との差分処理及びゲイン補正を行うので、回路が簡単になる効果がある。上述のビットシフトは、ダウンカウントモードとアップカウントモードのカウント機能を有するカウンタ回路40−1を用いたが、カウンタ回路40−1は先に述べたように共通カウンタ方式でも良い。
比較回路30−1は、期間Tdで、N信号とランプ信号N−RAMPとを比較し、カウンタ回路40−1は、N信号とランプ信号N−RAMPとの大小関係が逆転するまでの期間Trに第1のカウント値のカウントを行う。その後、比較回路30−1は、期間Tjで、S信号と基準信号VREFとを比較する。そして、比較回路30−1は、S信号が基準信号より大きいときには増幅回路20−1のゲインを第1のゲイン(1倍)に設定し、S信号が基準信号より小さいときには増幅回路20−1のゲインを第2のゲイン(8倍)に設定する。その後、比較回路30−1は、期間Tuで、S信号とランプ信号S−RAMPとを比較し、S信号とランプ信号S−RAMPとの大小関係が逆転するまでの期間Tsに第2のカウント値のカウントを行う。カウンタ回路40−1及びメモリ部50の補正部は、N信号及びS信号のゲインの違いに対応する第1のカウント値及び第2のカウント値の分解能の違いを補正する。そして、メモリ部(補正部)50は、補正した第1のカウント値及び第2のカウント値の差分データDa0〜Da12を出力する。
上記では、期間Trで第1のカウント値をダウンカウントし、期間Tsで第2のカウント値をアップカウントする例を説明したが、その逆でもよい。カウンタ回路40−1は、期間Trで第1のカウント値をアップカウントし、期間Tsで第2のカウント値をダウンカウントすることにより、第1のカウント値及び第2のカウント値の差分データDa0〜Da12を出力するようにしてもよい。すなわち、カウンタ回路40−1は、第1のカウント値をダウンカウント又はアップカウントし、第1のカウント値のアップダウン方向と逆方向になるように第2のカウント値をカウントする。これにより、メモリ部50は、補正した第1のカウント値及び第2のカウント値の差分データDa0〜Da12を保持することができる。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態による撮像素子内の増幅回路20−1の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。増幅回路20−1は、ゲイン切り替え時のオフセット変動を低減することができる回路を用いた構成例である。増幅回路20−1の出力信号Vaを比較回路30−1に入力される。パルスφcにより比較回路30−1の入力信号である信号Va及びVRAMを初期リセット後、ゲインを切り替えてもオフセット電位の変動が小さいので、AD変換データの変化は小さい。また、ゲインの切り替えを低ゲインから高ゲインに切り替えれば、高ゲインのAD変換データはゲイン補正を行うので、その時、オフセット電位の変化分がさらに小さくなる効果がある。
次に、増幅回路20−1の動作を説明する。増幅回路20−1は、オペアンプ20−2を有し、入力信号である画素10−1のN信号をクランプ容量Coでクランプし、ゲイン設定(例えば1倍)に従い、増幅した信号Vaを比較回路30−1へ出力する。オペアンプ20−2は、反転入力端子及び非反転入力端子及び出力端子を有する。クランプ容量(第2の容量)Coは、オペアンプ20−2の反転入力端子と画素10−1との間に接続される。帰還回路は、クランプ容量Coを基準電圧VrにクランプするスイッチSW1と、クランプ容量Coと共に入力信号を増幅する容量C1と容量C8及びそれらを入出力端子に接続を制御するスイッチSW2,SW3からなる。第1の容量C1及び第1のスイッチSW2の直列接続回路と、第1の容量C8及び第1のスイッチSW3の直列接続回路とは、オペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に並列に接続される。また、帰還回路は、ゲインを切り替える時に容量の電荷を、切り替えた容量へ完全に転送し、オフセット補償を行っている。また、ゲイン切り替え時のゲイン補償のためのスイッチSW4、SW5が基準電圧Vrに接続されている。第2のスイッチSW4は、第1の容量C1及び第1のスイッチSW2の相互接続点とオペアンプ20−2の非反転入力端子との間に接続される。第2のスイッチSW5は、第1の容量C8及び第1のスイッチSW3の相互接続点とオペアンプ20−2の非反転入力端子との間に接続される。本実施形態では、容量C1、C8とCoの容量値は、ゲインがCo/C1=1、Co/C8=8になるように設定される。この場合、寄生容量は説明を簡単にするために省略している。各スイッチSW1〜SW5は図面上に示した等価回路の構成である。
図7の増幅回路20−1の駆動方法に関して、図8のタイミング図を参照しながら説明する。図5のタイミング図と同様に、期間TadがN信号及びS信号のAD変換期間、期間TdがN信号のAD変換期間、期間TjがS信号の信号レベル判定期間、期間TuがS信号のAD変換期間である。上記AD変換動作を行う前に、画素部10からのN信号読み出し中に、増幅回路20−1及び比較回路30−1の初期設定を行う期間がTcである。期間Tcでは、画素10−1のパルスφSELとφRのハイレベルにより増幅トランジスタ104を動作させる。それとともに、スイッチSW1、SW2、SW3のオンにより増幅回路20−1を初期状態にリセットし、パルスφcのハイレベルにより比較回路30−1を初期状態にリセットする。パルスφRをローレベルにしてリセットトランジスタ103をオフにすることで、フローティングディフュージョン部FDはフローティング状態となる。増幅回路20−1を初期ゲイン(例えばゲイン1倍)に設定するためにスイッチSW2はオン状態を保ち、スイッチSW1及びSW3をオフとすることで、増幅回路20−1の出力信号Vaは画素のN信号をクランプ後の、ゲイン1倍におけるオフセット電圧となる。
次に、比較回路30−1のリセットパルスφcをローレベルに制御することで、比較回路30−1は画素信号のN信号をクランプした電位となる。次に、期間Tdにおいて、上記のように、ランプ信号N−RAMPを用いて、N信号のAD変換を行う。AD変換の期間Tdが終了すると、パルスφTのハイレベルにより、転送トランジスタ102がオンし、フォトダイオード101の電荷がフローティングディフュージョン部FDへ転送される。増幅回路20−1はゲイン1倍で増幅されたN信号を信号Vaとして比較回路30−1へ出力する。パルスφTのローレベルにより転送トランジスタ102はオフする。次に、期間Tjにおいて、上記のように、基準信号VREFを用いて、S信号の信号レベル判定を行う。S信号が基準信号VREFより小さいときには、ゲイン切り替え信号HOがハイレベル信号として増幅回路20−1に入力される。その結果、スイッチSW2がオフ、スイッチSW3とSW4がオンになり、増幅回路20−1のゲインが8倍に切り替えられ、8倍に増幅されたS信号が信号Vaとして出力される。なお、S信号が基準信号VREFより大きいときには、ゲイン切り替え信号HOがローレベルのままであり、スイッチSW1〜SW5は変化せず、増幅回路20−1のゲインは1倍のまま変わらない。この動作により、増幅回路20−1のオフセットを低減することができる。次に、期間Tuにおいて、上記のように、ランプ信号S−RAMPを用いて、S信号のAD変換を行う。以上により、増幅回路20−1のオフセット電圧の変化が低減したAD変換データを得ることができる。
以上の説明は低ゲイン信号を初期ゲインとしたが、高ゲイン信号を初期ゲインとして、ゲイン切り替え信号によって低ゲインに切り替えても良い。また、図8のタイミング図では、ランプ信号N−RAMPとS−RAMPの傾きは同じである。この場合はN信号とSの分解能は変わらないので、この時のカウント処理は図12で説明する。低ゲイン信号の量子化ノイズは低減出来ないが、高ビット化は出来ている。
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態による撮像素子内の増幅回路20−1及び比較回路30−1の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1及び第2の実施形態と異なる点を説明する。本実施形態は、2系統の増幅回路A及びBを有する増幅回路20−1を設けてゲイン切り替えを行う。本実施形態では、2系統の増幅回路A及びBの回路構成は、それぞれ図7の増幅回路20−1と同じである。第1の増幅回路Aは、第1のオペアンプ20−2、容量Co、C8、C16及びスイッチSW10〜SW14を有する。第1のオペアンプ20−2は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。第1の容量C1及び第1のスイッチSW12の直列接続回路は、第1のオペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に接続される。第2の容量C16及び第2のスイッチSW13の直列接続回路は、第1のオペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に接続される。第3のスイッチSW10及び第3の容量Coは、第1のオペアンプ20−2の反転入力端子及び画素10−1との間に接続される。第4のスイッチSW11は第1のオペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に接続される。第5のスイッチSW5は第1のオペアンプ20−2の出力端子に接続されている。
第2の増幅回路Bは、第2のオペアンプ20−2、容量Co、C1、C2及びスイッチSW21〜SW24を有する。第2のオペアンプ20−2は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を有する。第5の容量C1及び第5のスイッチSW22、第6の容量C2及び第6のスイッチSW23の直列接続回路は、第2のオペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に接続される。第7のスイッチSW21は第2のオペアンプ20−2の反転入力端子及び出力端子間に接続される。第4の容量Coは、第2のオペアンプ20−2の反転入力端子及び画素10−1との間に接続される。第8のスイッチSW24は第2のオペアンプ20−2の出力端子に接続されている。
画素のリセット信号読み出し時に、2系統の増幅回路A及びBと比較回路30−1を同時に初期リセット後、ゲイン設定を行う。ゲイン設定は撮像システムの感度設定の考え方により異なるが、本実施形態の図9の回路では増幅回路Aは撮像装置の撮影感度を考慮した高ゲインを選択し、増幅回路Bは低ゲインである。増幅回路20−1の基本動作は図7と同じなのでその説明は省略する。第1の増幅回路Aが高ゲインの増幅回路、第2の増幅回路Bが低ゲインの増幅回路であり、入力容量Coと帰還容量Cnでゲインが決まる。第1の増幅回路Aは、容量C8を利用することでゲイン8倍、容量C16を利用することでゲイン16倍に設定可能である。同様に、第2の増幅回路Bは、容量C1を利用することでゲイン1倍に、容量C2を利用することでゲイン2倍に設定可能である。説明を簡単にするために、2つのゲインを切り替える場合を例に挙げているが、3以上のゲインを切り替えられるように構成しても良い。第1の増幅回路Aのゲインを8倍とする動作と、第2の増幅回路Bのゲインを1倍とする動作を例に説明するが、ゲイン設定を変えても、同様な動作である。一般的には、撮像システムで設定される感度設定に応じて1フレームの画像信号のゲインを決定する。本実施形態では、画素行毎に、信号レベルによりどちらかのゲインが選択されAD変換されるので、上述のAD変換データからの分解能の補正処理であるビットシフトを同一回路あるいは同一データ処理で簡便に出来る効果がある。まず、第1の増幅回路Aをゲイン8倍として、比較回路30−1でS8信号レベルの判断を行う。S信号が基準信号VREFより小さい時は、高ゲインの信号を比較処理する。S信号が基準信号VREFより大きい時は増幅回路Bの低ゲインの信号を選択し比較処理を行う。ゲイン比を8倍にする。高ゲインの信号を基準信号VREFと比較し信号レベルを判断する理由を以下述べる。
例えばゲイン比が16倍の時、もし、低ゲイン信号から信号レベルを判断すると、信号レベル判断レベルは飽和信号を1Vとすると、そのゲイン分の1は約62mVとなる。比較器のN信号振幅(リセット信号のバラツキ)は約60mVを想定しており、N信号の振幅範囲が大きくて、S信号の信号レベル判断が正確に出来なくなる。高ゲインの信号であればN信号より十分大きい信号で信号レベルの判断を行うのでN信号の影響を小さくすることが出来る。また、例えばゲイン比が4倍であれば、信号レベル判断レベルは250mVであり、N信号振幅の影響は少ない。従って、この様なゲイン比が小さい場合は低ゲイン信号で信号レベルを判断しても良い。
増幅回路20−1は低ゲインと高ゲインの2系統の信号が出力できる回路であれば良い。また、他方式の増幅回路、例えばソース接地型の増幅回路でも良い。ソース接地型の増幅回路は回路面積を縮小化出来る効果がある。低ゲインと高ゲインの信号は、同時に得ても良いし、まず一方のゲイン信号から信号レベルを判断し、その後他方のゲインを得ても良い。
図9の回路で、低ゲインと高ゲインの信号を同時に得て、ゲインを選択する駆動方法に関して、図10のタイミング図を参照しながら説明する。図8のタイミング図と同様に、期間TadがN信号及びS信号のAD変換期間、期間TdがN信号のAD変換期間、期間TjがS信号の信号レベル判定期間、期間TuがS信号のAD変換期間である。上記AD変換動作を行う前に、画素部10からのN信号読み出し中に、増幅回路20−1及び比較回路30−1の初期設定を行う期間がTcである。期間Tcでは、画素10−1のパルスφSELとφRのハイレベルにより増幅トランジスタ104を動作させる。スイッチSW10、SW14、SW24をオンとし、スイッチSW11、SW12、SW13、SW21、SW22、SW23の制御により増幅回路A及びBを初期状態にリセットし、パルスφcのハイレベルにより比較回路30−1を初期状態にリセットする。パルスφRをローレベルにすることで、フローティングディフュージョン部FDはフローティング状態となり、増幅回路A及びBにはN信号が入力される。増幅回路Aをゲイン8倍に設定するためにスイッチSW12はオン状態を保ち、スイッチSW11及びSW13をオフとすることで、増幅回路Aの出力信号Va−LはN信号をクランプ後のゲイン8倍におけるオフセット電圧となる。増幅回路Bも同様に、ゲイン1倍に設定するためにスイッチSW22はオン状態を保ち、スイッチSW21、SW23をオフとすることで、増幅回路Bの出力信号Va−HはN信号をクランプ後のゲイン1倍におけるオフセット電圧となる。次に、比較回路30−1のリセットパルスφcをローレベルに制御することで、比較回路30−2の入力はN信号をクランプした電圧となる。
次に、スイッチSW10、SW14、SW24はオン状態を保って、期間Tdにおいて、上記のように、ランプ信号N−RAMPを用いて、N信号のAD変換を行う。N信号のAD変換期間Tdが終了すると、スイッチSW24はオフに制御され、増幅回路Bは比較回路30−1から電気的に切り離される。すなわち、増幅回路Aの出力信号Va−Lのみが容量Ciを通して、比較回路30−2に入力される。ここでは、期間Tdが終了してからスイッチSW24をオフにする例を説明したが、スイッチSW24は、期間Tcの終了から期間Tjの開始までの期間のうち、期間Tdを除く期間であればいつオフに切り替えても良い。
そして、パルスφTのハイレベルにより転送トランジスタ102がオンし、フォトダイオード101の電荷がフローティングディフュージョン部FDへ転送され、増幅回路Aはゲイン8倍のS信号を比較回路30−1へ出力する。パルスφTのローレベルにより転送トランジスタ102をオフにして、期間Tjにおいて、上記のように、基準信号VREFを用いて、S信号の信号レベル判定を行う。S信号が基準信号VREFより大きいときには、ゲイン切り替え信号HOがハイレベル信号として増幅回路20−1に入力される。すると、スイッチSW10がオフに、スイッチSW11がオンに制御され、増幅回路Aの出力信号Va−Lは増幅回路のオフセット信号になる。即ち増幅回路A及び比較器の入力容量Ciは初期リセット電位に復帰する。次にスイッチSW24がオンに制御されることで増幅回路Aのゲイン1倍の信号が比較器に入力され、期間Tuにおいて、ランプ信号S−RAMPを用いて、S信号のAD変換が行われる。この増幅回路AのS信号が基準信号VREFより大きい時のスイッチの切り替えが図示の破線で示したタイミングである。
また、増幅回路AのS信号が基準信号VREFより小さい時は、増幅回路Aの信号が期間Tuにおいて、ランプ信号S−RAMPを用いて、S信号のAD変換が行われる。図10のランプ信号VRAMPで、N−RAMPとS−RAMPの時間に対する傾きを小さくすると、低振幅信号のAD変換処理になるので、撮影感度としては高感度撮影に対応する。この時は比較基準信号VREFもRAMP信号の傾きに比例して小さくする必要がある(図の破線)。この場合、N信号のバラツキは変わらないのでランプ信号N−RAMPの振幅は変えない。ランプ信号N−RAMPは、振幅が同じで傾きが異なる複数種類のランプ信号に変更可能である。このように、増幅回路20−1の高ゲインとランプ信号の傾きを小さくすることで、高感度なAD変換処理が可能になる。
以上のように、スイッチSW14、SW24の制御により、2系統の増幅回路A及びBの出力信号を選択し、設定したゲインで増幅した信号を比較回路30−1へ出力する。増幅回路20−1は、第1のゲイン(高ゲイン)が設定されると、第1の増幅回路Aの出力信号Va−Lのみを比較回路30−1に出力する。また、増幅回路20−1は、第2のゲイン(低ゲイン)が設定されると、第2の増幅回路Bの出力信号Va−Hを比較回路30−1に出力する。2系統の増幅回路A及びBの出力と比較回路30−1を接続した状態で、増幅回路20−1及び比較回路30−1を初期状態にリセットする。あるいは、2系統の増幅回路A及びBは個別に比較回路30−1に接続して増幅回路20−1及び比較回路30−1を初期状態にリセットしても良い。これにより、ゲイン切り替えを行っても、初期リセット信号であるN信号のAD変換は1回で済み、また、N信号のAD変換データもゲインによらず同じデータを使うことができるメリットがある。また、スイッチSW14及びSW24をオンすることにより、第1の増幅回路Aの出力信号Va−L及び第2の増幅回路Bの出力信号Va−Hを加算した信号を比較回路30−2に出力することができる。
低照度環境では信号レベルが小さいため、増幅回路でゲインを上げて信号レベルを大きくする、あるいは、ランプ信号の傾きを小さくする。一方、高照度環境では、光ショットノイズが大きいために回路系ノイズの影響は非常に小さくなる。従って、本実施形態では、低ゲイン設定で得られるデータを補正することで信号のダイナミックレンジを拡大する。
図11を参照しながら、高ゲイン及びランプ信号の傾きを小さくした高ISO感度での場合の画素信号とランプ信号の関係を説明する。例えば、図13で説明する撮影感度が高ISO1600では、増幅回路の飽和信号を1Vとして、信号は、低ゲインは2倍(G2)、高ゲインは16倍(G16)、ランプ信号の傾きを1/2にした事例である。S信号のランプ信号振幅501はVLであり、このレベルより小さい信号がAD変換される。図11の実施形態において、AD変換される光量は、特性G2の信号は光量L6まで、特性G16の信号は光量L4までの信号である。
光量L3における信号を考える。特性G16の信号V3は一点鎖線403の基準電圧VREF3以下であるので、AD変換して利用する。特性G16の信号が基準電圧VREF3より大きい場合は、低ゲインの特性G2を利用する。光量L4から光量L6までのデジタルデータが特性G16の光量L4以上に相当するようにデジタルデータをレベルシフトして利用する。この結果、従来利用出来なかった光量L4から光量L6までの信号が利用出来るようになり、ダイナミックレンジが拡大されている。以上の説明では、低ゲインの信号を補正するとしたが、高ゲインの信号を補正して、後段の撮像システム内の映像信号処理部で3ビット分のゲインアップを行っても良い。
(第4の実施形態)
図12(A)〜(B)は、本発明の第4の実施形態によるカウンタ回路(補正部)のカウント処理を説明するための図である。図6の実施形態では低ゲイン時に、N信号は高分解能で、S信号は低分解能でカウント処理を行ったが、本実施形態ではN信号とS信号を低分解能でカウント処理する実施形態である。また、カウンタは低ゲイン時及び高ゲイン時のカウント処理時10ビットのカウンタを利用してS−N処理を行う。メモリは13ビット構成であり、カウンタからメモリにデータを保持する時に10ビットデータのビットシフトと3ビットのダミーデータを付加している。あるいは、他の実施形態としてメモリは11ビット構成で、付加された1ビットはゲイン情報として、メモリから水平転送線へデータ転送する時、あるいは、撮像装置の外部でビットシフトを行っても良い。この様に、カウンタをビットシフトを付加した13ビットではなく10ビットにすることにより、回路規模を小さく出来る効果がある。
図13は、撮像システムの撮影感度とアンプゲイン及びランプ信号RAMPの傾きの組み合わせを示す表である。従来の撮像システムでは、撮影感度であるISO感度に合わせて信号ゲインを上げている。例えば、ISO100ではゲイン1倍、ISO200ではゲイン2倍、ISO400ではゲイン4倍とする。この様に、撮像システムの感度に応じて一律にゲインを上げる方法は、増幅回路で信号が飽和しやすくなるので、ISO感度が高くなるに従って利用出来る光量範囲が狭くなってダイナミックレンジが低下する。
本実施形態では、撮影感度によって、低ゲインと高ゲイン及びランプ信号の傾きを変えている。低ゲインと高ゲインのゲイン比がビット数の拡張、又は、SN比向上、ダイナミックレンジの拡大に関係する。ランプ信号の傾きは、AD変換する信号振幅を制限するが、傾きを小さくすることで高感度と同様の機能を有する。
図13に示す表において、撮影感度ISO400までは、低ゲイン1倍、高ゲイン8倍、ランプ信号の傾き1倍とする。ISO800からISO3200までは低ゲイン2倍、高ゲイン16倍、ISO6400からISO12800までは低ゲイン4倍、高ゲイン16倍とする。ランプ信号の傾きは、ISO1600で1/2、ISO3200及びISO6400で1/4、ISO12800で1/8である。ISO100からISOO3200までは3ビット分高ビット化され、ISO6400以上では2ビット分高ビット化される。
図13において、高ゲイン信号の補正後のノイズ及びダイナミックレンジ(DR)は例示的なものである。例えば撮影感度100において、回路系ノイズを1/8としているが
、これは高ゲイン信号をAD変換後に1/8にするので、回路系ノイズが計算上は1/8となることを意味している。回路系ノイズを低減することで、信号のSN比は改善される。この回路系ノイズの低減によるSN比改善分がダイナミックレンジの拡大と同じ意味を持つ。ここでは、撮影感度800の場合を1としたときに、ダイナミックレンジが8倍になることを、DR値8として示した。ISO200からISO800までは従来方式のゲイン設定よりも高ゲインである。最終的なISO感度としては、従来方式に対してゲインが高くなった分を調整する。ISO200を説明すると、従来の感度設定ではゲインが2倍に対して、本実施形態では高ゲイン8倍であるのでその分を考慮し、高ゲインデータを1/4にゲイン補正を行い、低ゲインデータを2倍して感度調整を行う。結果的に、SN比が改善されている。ISO400、ISO800でも同様な考え方でゲイン補正を行う。ISO800ではDR値を1とした。これは高ゲインのゲイン補正により回路系ノイズが1/2であるとしてダイナミックレンジが2倍拡大するが、低ゲインが2倍になっているので信号の飽和によりダイナミックレンジが1/2になり、結果的にDR値は1となる。ただ、従来方式のゲインを上げる方法ではDR値は1/8なので、本実施形態では、ダイナミックレンジが8倍拡大している。
ISO1600では高ゲインが16倍であるので、従来の感度設定と同じゲインである。図11で説明したように、低ゲインのデジタルデータをゲイン比である8倍して信号のダイナミックレンジを拡大する。しかし、ランプ信号の傾きが1/2になっているので、DR値1/16に対して実質的なダイナミックレンジの拡大は4倍である。ISO3200からISO12800も同様に考えることが出来る。本実施形態よりもダイナミックレンジを大きくする場合はゲイン比を大きくすれば良い。以上の様に、本実施形態では、低感度撮影では高ゲインのデジタルデータをゲイン補正することで回路系のノイズを実質的に小さくして、信号のSN比を改善出来た。また、高感度撮影では低ゲインのデジタルデータをゲイン補正することで信号を利用出来る光量範囲を広くすることで利用する信号のダイナミックレンジを拡大出来る。
撮影感度が高くなることは、被写体像が暗くなることで、受光量が少なくなり、光ショットノイズが信号のSN比を支配的に決める。従って、本実施形態では、ISO3200以降では従来のように感度アップに対して高ゲインとはしていない。これは、増幅器のゲイン効果が少ないからであり、さらに高ゲインにするかどうかは撮像システムをどうのように構築するかで決めて良い。高ゲインにすると、増幅器の入力容量を大きくする必要があり、これは撮像装置が大きくなり、また、消費電流が大きくなる課題がある。ISO1600以上の高感度では、増幅回路20−1の高ゲインは変わらず、ランプ信号の傾きを変えている。本実施形態では、ランプ信号の傾きを小さくすることで高感度を達成している。
図14(A)は低ISO感度の時の低ゲインと高ゲインの比が8倍で、10ビットのAD変換データにビットシフトの3ビットを合成したカウンタ処理の説明図である。図14(B)は高ISO感度の時の低ゲインと高ゲインの比が4倍で、9ビットのAD変換データにビットシフトの2ビットを合成したカウンタ処理の説明図である。高ISO感度では光ショットノイズが非常に大きいので、カウンタのビット数を9ビットと少なくするとともに、高分解能データ1ビットあるいは2ビットを利用しないでデータ数を少なくするとさらに高速撮影が可能となる。図13に示したランプ信号の傾きは、異なる撮影感度間でAD変換期間の長さを均一にすると、ランプ信号の取り得る振幅の関係と等しくなる。
(第5の実施形態)
図15は、本発明の第5の実施形態による撮像システムの構成例を示す図である。撮像システム800は、例えば、光学部810、撮像素子100、映像信号処理回路部830、記録・通信部840、タイミング制御回路部850、システムコントロール回路部860、及び再生・表示部870を含む。撮像装置820は、撮像素子100及び映像信号処理回路部830を有する。撮像素子100は、上述の各実施形態で説明した撮像素子100が用いられる。
レンズ等の光学系である光学部810は、被写体からの光を、撮像素子100の複数の画素が2次元状に配列された画素部10(図1)に結像(集光)させ、被写体の像を形成する。撮像素子100は、タイミング制御回路部850からの信号に基づくタイミングで、画素部10に結像された光に応じた信号を出力する。撮像素子100から出力された信号は、映像信号処理部である映像信号処理回路部830に入力され、映像信号処理回路部830が、プログラム等によって定められた方法に従って、入力された信号に対して信号処理を行う。映像信号処理回路部830での処理によって得られた信号は画像データとして記録・通信部840に送られる。記録・通信部840は、画像を形成するための信号を再生・表示部870に送り、再生・表示部870に動画や静止画像を再生・表示させる。記録・通信部840は、また、映像信号処理回路部830からの信号を受けて、システムコントロール回路部860と通信を行うほか、不図示の記録媒体に、画像を形成するための信号を記録する動作も行う。
システムコントロール回路部860は、撮像システムの動作を統括的に制御するものであり、光学部810、タイミング制御回路部850、記録・通信部840、及び再生・表示部870の駆動を制御する。また、システムコントロール回路部860は、例えば記録媒体である不図示の記憶装置を備え、ここに撮像システムの動作を制御するのに必要なプログラム等が記録される。また、システムコントロール回路部860は、例えばユーザの操作に応じて駆動モードを切り替える信号を撮像システム内に供給する。具体的な例としては、読み出す行やリセットする行の変更、電子ズームに伴う画角の変更や、電子防振に伴う画角のずらし等である。タイミング制御回路部850は、制御部であるシステムコントロール回路部860による制御に基づいて撮像素子100及び映像信号処理回路部830の駆動タイミングを制御する。
第1〜第5の実施形態によれば、高分解能で低ゲインのN信号と適切なゲインのS信号との差分処理を行うことにより、画像ノイズを低減することができる。また、同一のカウンタ回路40−1でS信号とN信号との差分処理及びゲイン補正を行うことにより、回路規模を小さくすることができる。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、参照信号として、ランプ信号は時間に対してレベルが直線的に変化するものを説明したが、階段状に変化するものを用いても良い。また、上述の各実施形態では、各比較回路につきカウンタ回路が設けられた構成を示したが、複数の比較回路に対して共通のカウンタ回路を設け、各比較回路に対応したメモリを設ける構成でも良い。各メモリは、対応する比較回路の出力によって、共通のカウンタ回路のカウント値を保持することで、上述の第1及び第2のカウント値を得るようにしてもよい。