(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る電力変換装置1は、図1に示すように、第1入力点11及び第2入力点12と、第1出力点13及び第2出力点14と、N個の電圧制御部21〜2Nと、変換部3と、クランプ部4と、制御部5とを備える。なお、‘N’は1以上の整数である。第1入力点11及び第2入力点12には、主電圧源VSN+1が電気的に接続される。N個の電圧制御部21〜2Nには、それぞれ電源電圧E1〜ENが互いに異なる電圧源VS1〜VSNが電気的に接続される。
電圧制御部2Mは、回生スイッチQ1Mと、入力スイッチQ2Mとを有している。回生スイッチQ1Mは、電圧源VSMの正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。入力スイッチQ2Mは、主電圧源VSN+1の正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。なお、‘M’は1以上N以下の整数である。
変換部3は、4つのスイッチQB1〜QB4を有し、入力される直流電圧の極性を反転させて第1出力点13及び第2出力点14に出力電圧V1を生じさせるフルブリッジ型の回路である。クランプ部4は、保持スイッチQC1,QC2を有し、出力電圧V1を所定の電圧(ここでは、0〔V〕)に保持する。
制御部5は、4つのスイッチQB1〜QB4、保持スイッチQC1,QC2、N個の電圧制御部21〜2Nの各々における回生スイッチQ11〜Q1N及び入力スイッチQ21〜Q2Nを制御する。これにより、制御部5は、‘2N+3’段階に出力電圧V1を切り替える。
以下、本実施形態の電力変換装置1について詳細に説明する。但し、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
先ず、本実施形態の電力変換装置1の基本構成について説明する。本実施形態の電力変換装置1は、図1に示すように、N個の電圧制御部21〜2Nと、変換部3と、クランプ部4と、制御部5とを備えている。電力変換装置1の第1入力点11及び第2入力点12には、主電圧源VSN+1が電気的に接続されている。また、電力変換装置1の第1出力点13及び第2出力点14には、例えば系統電源7(図19参照)や負荷8(図19参照)が電気的に接続される。そして、電力変換装置1は、主電圧源VSN+1、及び後述する電圧源VS1〜VSNの何れかから入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。また、電圧源VS1〜VSN及び主電圧源VSN+1は、それぞれ互いに電源電圧E1〜EN+1が異なっている(E1<…<EN+1)。
電圧制御部21〜2Nは、主電圧源VSN+1と変換部3との間に直列に電気的に接続されている。以下、電圧制御部21〜2Nのうち任意の電圧制御部2Mについて説明する。電圧制御部2Mは、回生スイッチQ1Mと、入力スイッチQ2Mとを備えている。本実施形態の電力変換装置1では、回生スイッチQ1M及び入力スイッチQ2Mは、それぞれIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。また、回生スイッチQ1M及び入力スイッチQ2Mには、それぞれリカバリダイオードが内蔵されている。なお、回生スイッチQ1M及び入力スイッチQ2Mは、それぞれバイポーラトランジスタやMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の他の半導体スイッチ素子で構成されていてもよい。
入力スイッチQ2Mは、コレクタが第1入力点21Mに電気的に接続され、エミッタが出力点22Mに電気的に接続されている。第1入力点21Mは、第1入力点11を介して主電圧源VSN+1の高電位点(正極)に電気的に接続されるか(M=Nの場合)、電圧制御部2M+1の出力点22M+1に電気的に接続される(M≠Nの場合)。
入力スイッチQ2Mは、制御部5によりオン/オフを切り替えられることで、第1入力点11と変換部3の第1入力点31との間の電路の一部を開閉する。つまり、入力スイッチQ2Mは、主電圧源VSN+1の正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。
回生スイッチQ1Mは、エミッタが第2入力点23Mに電気的に接続され、コレクタが出力点22Mに電気的に接続されている。第2入力点23Mは、電圧源VSMの高電位点(正極)に電気的に接続される。
回生スイッチQ1Mは、制御部5によりオン/オフを切り替えられることで、第2入力点23Mと変換部3の第1入力点31との間の電路の一部を開閉する。つまり、回生スイッチQ1Mは、電圧源VSMの正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。
変換部3は、4つのスイッチQB1〜QB4で構成されるフルブリッジ・インバータである。本実施形態の電力変換装置1では、スイッチQB1〜QB4は、それぞれIGBTである。また、スイッチQB1〜QB4には、それぞれリカバリダイオードが内蔵されている。なお、スイッチ素子QB1〜QB4は、それぞれバイポーラトランジスタやMOSFET等の他の半導体スイッチ素子で構成されていてもよい。
変換部3では、第1スイッチQB1及び第2スイッチQB2の直列回路と、第3スイッチ素子QB3及び第4スイッチQB4の直列回路とが並列に電気的に接続されている。スイッチ素子QB1,QB3のコレクタは、変換部3の第1入力点31に電気的に接続されている。変換部3の第1入力点31は、電圧制御部21〜2Nを介して第1入力点11に電気的に接続されている。また、スイッチ素子QB2,QB4のエミッタは、変換部3の第2入力点32に電気的に接続されている。変換部3の第2入力点32は、電圧源VS1〜VSNの各々の低電位(負極)、及び第2入力点12に電気的に接続されている。そして、第1スイッチQB1のエミッタ及び第2スイッチQB2のコレクタの接続点と、第3スイッチQB3のエミッタ及び第4スイッチQB4のコレクタの接続点とが、変換部3の一対の出力点33,34となっている。
クランプ部4は、第1保持スイッチQC1及び第2保持スイッチQC2の直列回路で構成されている。本実施形態の電力変換装置1では、保持スイッチQC1,QC2は、それぞれIGBTである。また、保持スイッチQC1,QC2には、それぞれリカバリダイオードが内蔵されている。なお、保持スイッチQC1,QC2は、それぞれバイポーラトランジスタやMOSFET等の他の半導体スイッチ素子で構成されていてもよい。
第1保持スイッチQC1のコレクタは、変換部3の第1出力点33に電気的に接続され、且つ第1出力点13に電気的に接続されている。第2保持スイッチQC2のコレクタは、変換部3の第2出力点34に電気的に接続され、且つ第2出力点14に電気的に接続されている。また、第1保持スイッチQC1のエミッタと、第2保持スイッチQC2のエミッタとが電気的に接続されている。クランプ部4は、保持スイッチQC1,QC2を有し、出力電圧V1を所定の電圧(ここでは、0〔V〕)に保持する。
制御部5は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成としており、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより各種処理を実行する。プログラムは、電気通信回線を通して提供されてもよく、記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。制御部5は、電圧制御部21〜2Nの回生スイッチQ11〜Q1N、及び入力スイッチQ21〜Q2Nの各々に駆動信号を与え、オン/オフを切り替えることで電圧制御部21〜2Nを制御する。また、制御部5は、変換部3のスイッチQB1〜QB4の各々に駆動信号を与え、オン/オフを切り替えることで変換部3を制御する。更に、制御部5は、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2の各々に駆動信号を与え、オン/オフを切り替えることでクランプ部4を制御する。これらの駆動信号は、何れもPWM(Pulse Width Modulation)信号である。なお、駆動信号はPWM信号に限定されず、例えばPFM(Pulse Frequency Modulation)信号やPAM(Pulse Amplitude Modulation)信号であってもよい。
ここで、本実施形態の電力変換装置1の基本構成において、図1に示す構成では、電圧制御部21〜2Nは、それぞれ電圧源VS1〜VSNの正極に電気的に接続されているが、他の構成であってもよい。すなわち、図2に示すように、電圧制御部21〜2Nは、それぞれ電圧源VS1〜VSNの負極に電気的に接続されていてもよい。また、図3Aに示すように、回生スイッチQ1Mが電圧源VSMの負極に電気的に接続され、入力スイッチQ2Mが主電圧源VSN+1の正極に電気的に接続される構成であってもよい。更に、図3Bに示すように、回生スイッチQ1Mが電圧源VSMの正極に電気的に接続され、入力スイッチQ2Mが主電圧源VSN+1の負極に電気的に接続される構成であってもよい。なお、図3A,図3Bに示す例は、5段階(すなわち、N=1,M=1)に出力電圧V1を切り替えるマルチレベルインバータ(以下では、「5レベルインバータ」と称する)で構成した電力変換装置1を表している。
以下、電圧制御部21〜2Nのうち任意の電圧制御部2Mについて図2を用いて説明する。
入力スイッチQ2Mは、コレクタが出力点22Mに電気的に接続され、エミッタが第1入力点21Mに電気的に接続されている。第1入力点21Mは、第2入力点12を介して主電圧源VSN+1の低電位点(負極)に電気的に接続されるか(M=Nの場合)、電圧制御部2M+1の出力点22M+1に電気的に接続される(M≠Nの場合)。
入力スイッチQ2Mは、制御部5によりオン/オフを切り替えられることで、第2入力点12と変換部3の第2入力点32との間の電路の一部を開閉する。つまり、入力スイッチQ2Mは、主電圧源VSN+1の正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。
回生スイッチQ1Mは、エミッタが出力点22Mに電気的に接続され、コレクタが第2入力点23Mに電気的に接続されている。第2入力点23Mは、電圧源VSMの低電位点(負極)に電気的に接続される。
回生スイッチQ1Mは、制御部5によりオン/オフを切り替えられることで、第2入力点23Mと変換部3の第2入力点32との間の電路の一部を開閉する。つまり、回生スイッチQ1Mは、電圧源VSMの正極又は負極の何れか一方の電極(ここでは、正極)と変換部3とを繋ぐ電路を開閉する。
以下、本実施形態の電力変換装置1の基本構成の動作について説明する。この基本構成は、制御部5が以下の表1に示す条件に従って、N個の電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。つまり、制御部5は、4つのスイッチQB1〜QB4、保持スイッチQC1,QC2、N個の電圧制御部21〜2Nの各々における回生スイッチQ11〜Q1N及び入力スイッチQ21〜Q2Nを制御する。これにより、この基本構成は、‘2N+3’段階に出力電圧V1を切り替えるマルチレベルインバータとして動作する。すなわち、電圧源VS1〜VSNの電源電圧をそれぞれE1〜EN〔V〕、主電圧源VSN+1の電源電圧をEN+1とすると、この基本構成は、0〔V〕,±E1〔V〕,…,±EN+1〔V〕の何れかの出力電圧V1を発生する。そして、この基本構成は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
例えば、EM〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、電圧制御部2Mの回生スイッチQ1Mをオンに切り替え、その他の電圧制御部21〜2M−1,2M+1〜2Nの回生スイッチをオフに切り替える。また、制御部5は、電圧制御部21〜2M−1の入力スイッチQ21〜Q2M−1をオンに切り替え、その他の電圧制御部2M〜2Nの入力スイッチをオフに切り替える。そして、制御部5は、変換部3のスイッチQB1,QB4をオン、スイッチQB2,QB3をオフに切り替え、且つクランプ部4の保持スイッチQC1,QC2をオフに切り替える。
また、−EM〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合は、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替えればよい。また、出力電圧V1を0〔V〕とする場合は、制御部5は、電圧制御部21〜2N及び変換部3の全てのスイッチをオフに切り替え、且つクランプ部4の保持スイッチQC1,QC2をオンに切り替えればよい。
以下、一例として、5レベルインバータで構成した電力変換装置1について説明する。この電力変換装置1は、図4に示すように、1個の電圧制御部21を備えている。電圧制御部21の第2入力点231には、電圧源VS1の正極が電気的に接続されている。また、第1入力点11及び第2入力点12には、主電圧源VS2が電気的に接続されている。ここでは、電圧源VS1の電源電圧を1〔V〕、主電圧源VS2の電源電圧を2〔V〕と仮定する。
この電力変換装置1は、制御部5が以下の表2に示す条件に従って電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御することで、±2〔V〕,±1〔V〕,0〔V〕の5段階の出力電圧V1を発生する。
以下、図5A〜図5Cを用いて具体的に説明する。なお、図5A〜図5Cにおいて、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。例えば、2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、図5Aに示すように、電圧制御部21の入力スイッチQ21と、変換部3のスイッチQB1,QB4とをオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替える。
1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、図5Bに示すように、電圧制御部21の回生スイッチQ11と、変換部3のスイッチQB1,QB4とをオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替える。
また、出力電圧V1を0〔V〕とする場合、制御部5は、図5Cに示すように、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。そして、この電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、図6に示すように、0〔V〕を中心に−2〔V〕〜2〔V〕の間で変化する交流電圧(同図の太い実線参照)を出力する。
勿論、本実施形態の電力変換装置1は、上記の5レベルインバータに限定されず、更に多段階に出力電圧V1を切り替えるマルチレベルインバータで構成することも可能である。例えば、本実施形態の電力変換装置1は、7段階(すなわち、N=2)に出力電圧V1を切り替えるマルチレベルインバータ(以下では、「7レベルインバータ」と称する)で構成されていてもよい。
7レベルインバータで構成される電力変換装置1は、図7に示すように、2個の電圧制御部21,22を備えている。電圧制御部21の第2入力点231には、電圧源VS1の負極が電気的に接続されている。電圧制御部22の第2入力点232には、電圧源VS2の負極が電気的に接続されている。また、第1入力点11及び第2入力点12には、主電圧源VS3が電気的に接続されている。ここでは、電圧源VS1の電源電圧を1〔V〕、電圧源VS2の電源電圧を2〔V〕、主電圧源VS3の電源電圧を3〔V〕と仮定する。
この電力変換装置1は、制御部5が以下の表3に示す条件に従って電圧制御部21,22、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御することで、±3〔V〕,±2〔V〕,±1〔V〕,0〔V〕の7段階の出力電圧V1を発生する。
以下、図8A,図8B,図9A,図9Bを用いて具体的に説明する。なお、図8A,図8B,図9A,図9Bにおいて、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。例えば、3〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、図8Aに示すように、電圧制御部21,22の入力スイッチQ21,Q22と、変換部3のスイッチQB1,QB4とをオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−3〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替える。
2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、図8Bに示すように、電圧制御部22の回生スイッチQ12と、電圧制御部21の入力スイッチQ21とをオンに切り替える。また、制御部5は、変換部3のスイッチQB1,QB4をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替える。
1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、図9Aに示すように、電圧制御部21の回生スイッチQ11と、変換部3のスイッチQB1,QB4とをオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部5は、上記の状態において変換部3のスイッチQB1,QB4をオフ、スイッチQB2,QB3をオンに切り替える。
また、出力電圧V1を0〔V〕とする場合、制御部5は、図9Bに示すように、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。そして、この電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−3〔V〕〜3〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
ここで、NPC(Neutral-Point-Clamped)型の5レベルインバータである電力変換装置100を本実施形態の電力変換装置1の比較例として説明する。この電力変換装置100は、図10に示すように、第1入力点101と第2入力点102との間に、2つの電圧源105,106が直列に電気的に接続されている。ここでは、電圧源105,106の電源電圧は、何れも1〔V〕と仮定する。また、電圧源105の低電位点(負極)と、電圧源106の高電位点(正極)との接続点は、共通電位点107である。
第1入力点101と第1出力点103との間には、スイッチS1,S5の直列回路が電気的に接続されている。また、第2入力点102と第1出力点103との間には、スイッチS2,S6の直列回路が電気的に接続されている。また、第1入力点101と第2出力点104との間には、スイッチS3,S7の直列回路が電気的に接続されている。更に、第2入力点102と第2出力点104との間には、スイッチS4,S8の直列回路が電気的に接続されている。スイッチS1〜S8は、何れもIGBTであり、それぞれリカバリダイオードが内蔵されている。
スイッチS1,S3のコレクタは第1入力点101に電気的に接続されており、スイッチS2,S4のエミッタは第2入力点102に電気的に接続されている。また、スイッチS5のエミッタ及びスイッチS6のコレクタは第1出力点103に電気的に接続されており、スイッチS7のエミッタ及びスイッチS8のコレクタは第2出力点104に電気的に接続されている。
スイッチS1のエミッタ及びスイッチS5のコレクタの接続点と、スイッチS2のコレクタ及びスイッチS6のエミッタの接続点との間には、ダイオードD1,D2の直列回路が電気的に接続されている。また、ダイオードD1のアノード及びダイオードD2のカソードの接続点は、共通電位点107に電気的に接続されている。スイッチS3のエミッタ及びスイッチS7のコレクタの接続点と、スイッチS4のコレクタ及びスイッチS8のエミッタの接続点との間には、ダイオードD3,D4の直列回路が電気的に接続されている。また、ダイオードD3のアノード及びダイオードD4のカソードの接続点は、共通電位点107に電気的に接続されている。
スイッチS1〜S8は、制御部200からPWM信号である駆動信号を与えられることで、オン/オフが切り替えられる。そして、この電力変換装置100は、制御部200が以下の表4に示す条件に従ってスイッチS1〜S8を制御することで、±2〔V〕,±1〔V〕,0〔V〕の5段階の出力電圧V1を発生する。
以下、図11A〜図11Cを用いて具体的に説明する。なお、図11A〜図11Cにおいて、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。例えば、2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部200は、図11Aに示すように、スイッチS1,S4,S5,S8をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部200は、スイッチS2,S3,S6,S7をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。
1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部200は、図11Bに示すように、スイッチS1,S5,S8をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。また、−1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合、制御部200は、スイッチS2,S6,S7をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。
また、出力電圧V1を0〔V〕とする場合、制御部200は、図11Cに示すように、スイッチS5,S8をオンに切り替え、その他のスイッチをオフに切り替える。そして、この電力変換装置100は、制御部200により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−2〔V〕〜2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
ここで、比較例の電力変換装置100では、所望の出力レベル数を実現するために必要な回路の構成要素(スイッチ、ダイオード、電圧源)の数が多くなってしまうという問題がある。そこで、本実施形態の電力変換装置1では、N個の電圧制御部21〜2Nの各々の回生スイッチQ11〜Q1N、及び入力スイッチQ21〜Q2Nを制御部5が制御することで、変換部3に入力する直流電圧を変化させている。また、本実施形態の電力変換装置1では、変換部3のスイッチQB1〜QB4を制御部5が制御することで、出力電圧V1の極性を反転させている。更に、本実施形態の電力変換装置1では、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2を制御部5が制御することで、出力電圧V1を所定の電圧(ここでは、0〔V〕)に保持している。
本実施形態の電力変換装置1の構成要素(スイッチ、ダイオード(リカバリダイオードを含む)、電圧源)の数と、比較例の電力変換装置100の構成要素の数とを比較した結果を以下の表5に示す。このように、本実施形態の電力変換装置1は、比較例の電力変換装置100と比較して、所望の出力レベル数を実現するために必要な回路の構成要素の数を低減することができる。したがって、本実施形態の電力変換装置1は、構成要素の数が少なくて済むので、コストの低減を図ることができる。特に、本実施形態の電力変換装置1は、構成要素のうちスイッチの数が少なくて済むので、スイッチを制御する制御部5の簡略化を図ることができ、更にコストの低減を図ることができる。また、本実施形態の電力変換装置1は、電流の流れる構成要素の数も少なくて済むので、構成要素に電流が流れることによる損失の低減も図ることができる。
ところで、制御部5は、以下の表6に示す条件に従って電圧制御部21〜2Nの回生スイッチQ11〜Q1Nのオン/オフを制御してもよい。具体的には、制御部5は、出力電圧V1が、任意の電圧制御部2Mに電気的に接続される電圧源VSMの電源電圧EMである場合に、任意の電圧制御部2Mの回生スイッチQ1Mをオン状態に維持してもよい。また、制御部5は、出力電圧V1が、当該電源電圧EMより一段階低い電源電圧EM−1である場合に、任意の電圧制御部2Mの回生スイッチQ1Mをオン状態に維持してもよい。
一例として、本実施形態の電力変換装置1を図4に示すような5レベルインバータで構成した場合について説明する。この場合、制御部5は、1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合のみならず、図12に示すように、出力電圧V1を0〔V〕とする場合にも電圧制御部21の回生スイッチQ11をオン状態に維持する。なお、図12において、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。
この構成では、電圧制御部21〜2Nの回生スイッチQ11〜Q1Nのオン/オフを短期間で切り替える必要が無い。したがって、この構成では、回生スイッチQ11〜Q1Nとして低速動作の素子を用いることができるため、コストを低減することが可能である。
また、制御部5は、以下の表7に示す条件に従ってクランプ部4の保持スイッチQC1,QC2のオン/オフを制御してもよい。具体的には、クランプ部4は、変換部3の一対の出力点33,34の間に電気的に接続される一対の保持スイッチQC1,QC2の直列回路で構成されている。そして、制御部5は、出力電圧V1が所定の電圧(ここでは、0〔V〕)より大きい場合に、一対の保持スイッチQC1,QC2のうちの第2保持スイッチQC2をオン状態に維持するように制御してもよい。また、制御部5は、出力電圧が所定の電圧より小さい場合に、一対の保持スイッチQC1,QC2のうちの第1保持スイッチQC1をオン状態に維持するように制御してもよい。
一例として、本実施形態の電力変換装置1を図4に示すような5レベルインバータで構成した場合について説明する。この場合、制御部5は、図13Aに示すように2〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合と、図13Bに示すように1〔V〕の出力電圧V1を発生させる場合との何れにおいても、クランプ部4の第2保持スイッチQC2をオンに切り替える。なお、図13A,図13Bにおいて、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。
この構成では、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2のオン/オフを短期間で切り替える必要が無い。したがって、この構成では、保持スイッチQC1,QC2として低速動作の素子を用いることができるため、コストを低減することが可能である。
ところで、本実施形態の電力変換装置1では、表1に示すように、変換部3の第1スイッチQB1と第4スイッチQB4とは、互いに同じタイミングでオン/オフを切り替えられる。同様に、変換部3の第2スイッチQB2と第3スイッチQB3とは、互いに同じタイミングでオン/オフを切り替えられる。
そこで、本実施形態の電力変換装置1では、制御部5は、変換部3のスイッチQB1〜QB4を以下のように制御してもよい。すなわち、制御部5は、変換部3の一対のレグ(leg)のうちの第1レグのハイサイドのスイッチQB1と、第2レグのローサイドのスイッチQB4とを一の駆動信号により駆動させてもよい。ここでは、第1レグは、スイッチQB1,QB2の直列回路であり、第2レグは、スイッチQB3,QB4の直列回路であるが、第1レグと第2レグとが逆であってもよい。この構成では、駆動信号用の信号線の数を低減することができる。また、この構成では、一の駆動信号により駆動される一対のスイッチにおいて、オン/オフのタイミングがずれるのを防止することができる。
ところで、本実施形態の電力変換装置1では、制御部5は、以下の表8に示すように、出力電圧V1を遷移させる際にデッドタイムDT1〜DT4を設けるように制御してもよい。デッドタイムDT1〜DT4において、制御部5は、全てのスイッチをオフに切り替える。このように制御することで、出力電圧V1を遷移させる際に第1入力点11と第2入力点12との間が短絡するのを防止することができる。
しかしながら、上記のデッドタイムDT1〜DT4では、図14に示すように、スイッチQB3,Q21,QB2のリカバリダイオード、及び主電圧源VS2を通る経路で電流I1が流れる。このため、デッドタイムDT1〜DT4において、第1入力点11及び第2入力点12の間に、主電圧源VSN+1の電源電圧EN+1〔V〕(ここでは、2〔V〕)が印加される。したがって、この場合、電圧制御部21〜2Nを構成する各スイッチには、最大で主電圧源VSN+1の電源電圧EN+1〔V〕が印加される可能性があるため、必要とする耐圧が主電圧源VSN+1の電源電圧EN+1により決定される。このため、電圧制御部21〜2Nを構成する各スイッチに高耐圧の素子を用いなければならず、コストが増大する虞がある。
そこで、本実施形態の電力変換装置1では、制御部5は以下のように制御するのが好ましい。すなわち、制御部5は、出力電圧V1を遷移させる際にデッドタイムDT1〜DT4を設けるようにN個の電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。そして、制御部5は、デッドタイムDT1〜DT4において、出力電圧V1の遷移の前後の何れにおいてもオン状態であるスイッチをオン状態で維持し、その他のスイッチをオフに切り替えるように制御する。
一例として、本実施形態の電力変換装置1を図4に示すような5レベルインバータで構成した場合について説明する。説明するに当たり、2〔V〕の出力電圧V1を発生させる状態、1〔V〕の出力電圧V1を発生させる状態、出力電圧V1を0〔V〕とする状態の各々における電流I1の経路を図15A〜図15Cに示す。また、デッドタイムDT1,DT2の各々における電流I1の経路を図16A,図16Bに示す。なお、図15A〜図15C、及び図16A,図16Bにおいて、丸印で囲っているスイッチはオン状態を示し、丸印で囲っていないスイッチはオフ状態を示す。
この場合、制御部5は、以下の表9に示す条件に従って電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。例えば、制御部5は、デッドタイムDT1において、出力電圧V1の遷移の前後の何れにおいてもオン状態であるスイッチQB1,QB4,QC2をオン状態で維持し、その他のスイッチをオフに切り替える。すると、図16Aに示すように、第1入力点11及び第2入力点12に主電圧源VS2の電源電圧E2〔V〕が印加される代わりに、変換部3の第1入力点31及び第2入力点32に電圧源VS1の電源電圧E1〔V〕が印加される。
また、例えば制御部5は、デッドタイムDT2において、出力電圧V1の遷移の前後の何れにおいてもオン状態であるスイッチQ11,QC2をオン状態で維持し、その他のスイッチをオフに切り替える。すると、図16Bに示すように、第1入力点11及び第2入力点12に主電圧源VS2の電源電圧E2〔V〕が印加される代わりに、第1出力点13及び第2出力点14の間の電圧が0〔V〕となる。
すなわち、この構成では、任意の電圧制御部2Mにおける回生スイッチQ1M、及び入力スイッチQ2Mの各々が最低限必要な耐圧は、以下の表10に示すように‘EM+1−EM’〔V〕となる。例えば、主電圧源VSN+1と電圧源VSNとの電圧差、及び任意の電圧源VSMとその次段の電圧源VSM+1との電圧差が何れもE1〔V〕であると仮定する。この場合、任意の電圧制御部2Mにおける回生スイッチQ1M、及び入力スイッチQ2Mの各々が最低限必要な耐圧はE1〔V〕となる。
上述のように、この構成では、電圧制御部21〜2Nを構成する各スイッチが最低限必要とする耐圧を下げることができるので、高耐圧の素子を用いなくてもよく、コストを低減することができる。また、この構成では、電圧制御部21〜2Nの回生スイッチQ11〜Q1N、変換部3のスイッチQB1〜QB4、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2の各々のオン/オフを切り替える頻度が少なくて済む。このため、この構成では、スイッチング損失を低減することができる。
また、上記の構成において、制御部5は、出力電圧V1を一段階ずつ遷移させるように電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御するのが好ましい。すなわち、制御部5は、出力電圧V1が最小値から順に大きくなるように、或いは最大値から順に小さくなるように、N個の電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御するのが好ましい。一例として、本実施形態の電力変換装置1を図4に示すような5レベルインバータで構成した場合について説明する。この場合、出力電圧V1が1〔V〕の状態を介さずに、出力電圧V1を2〔V〕から0〔V〕に遷移させると、デッドタイムにおいて第1入力点11及び第2入力点12に主電圧源VS2の電源電圧E2〔V〕が印加されてしまう。したがって、変換部3のスイッチQB1〜QB4の最低限必要な耐圧は、主電圧源VS2の電源電圧E2〔V〕により決定されてしまう。
一方、出力電圧V1を2〔V〕、1〔V〕、0〔V〕と一段階ずつ遷移させるように制御部5が制御すれば、変換部3のスイッチQB1〜QB4の最低限必要な耐圧は、電圧源VS1の電源電圧E1〔V〕で済む。このため、この構成では、変換部3のスイッチQB1〜QB4に高耐圧の素子を用いなくてもよく、コストを低減することができる。
ところで、図18Aに示すように、変換部3のスイッチQB1,QB3に与えられる駆動信号を駆動信号GB1,GB3とし、クランプ部4のスイッチQC,QC2に与えられる駆動信号を駆動信号GC1,GC2とする。駆動信号GB1,GB3は、それぞれドライブ回路61,62でバッファ(buffer)してから変換部3のスイッチQB1,QB3に与えられる。また、駆動信号GC1,GC2は、それぞれドライブ回路63,64でバッファしてからクランプ部4の保持スイッチQC1,QC2に与えられる。そして、スイッチ素子QB1,QB3及び保持スイッチQC1,QC2を駆動するには、各々のゲート−エミッタ間に電圧を印加する必要がある。このため、ドライブ回路61〜64は、スイッチ素子QB1,QB3及び保持スイッチQC1,QC2のエミッタ電位を基準電位とする駆動電源が必要となる。
本実施形態の電力変換装置1を図4に示す5レベルインバータで構成した場合、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2のエミッタ電位は同じである。しかしながら、このエミッタ電位と、変換部3のスイッチQB1,QB3の各々のエミッタ電位とは互いに異なる電位である。したがって、図18Aに示すように、これらのエミッタ電位をそれぞれ基準電位とする3つの駆動電源PS1〜PS3を用意しなければドライブ回路61〜64を駆動することができない。
そこで、本実施形態の電力変換装置1では、変換部3のスイッチQB1〜QB4の何れかのエミッタは、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2の何れかのエミッタに電気的に接続されていてもよい。以下、本実施形態の電力変換装置1を5レベルインバータで構成した場合について図17を用いて説明する。この構成では、図17に示すように、変換部3の第1スイッチQB1のエミッタは、クランプ部4の第1保持スイッチQC1のエミッタに電気的に接続されている。また、変換部3の第3スイッチQB3のエミッタは、クランプ部4の第2保持スイッチQC2のエミッタに電気的に接続されている。
この場合、変換部3の第1スイッチQB1及びクランプ部4の第1保持スイッチQC1の各々のエミッタ電位は、共通する第1エミッタ電位EP1となる。また、変換部3の第3スイッチQB3及びクランプ部4の第2保持スイッチQC2の各々のエミッタ電位は、共通する第2エミッタ電位EP2となる。したがって、この構成では、図18Bに示すように、第1エミッタ電位EP1を基準電位とする第1駆動電源PS1により、第1ドライバ回路61及び第3ドライバ回路63を駆動することができる。また、この構成では、第2エミッタ電位EP2を基準電位とする第2駆動電源PS2により、第2ドライバ回路62及び第4ドライバ回路64を駆動することができる。
上述のように、この構成では、駆動電源の数を低減して回路の小型化を図ることができる。また、この構成では、駆動電源の数を低減できることから、コストの低減も図ることができる。
また、本実施形態の電力変換装置1では、図2に示す構成であれば、変換部3のスイッチQB2,QB4のエミッタと、電圧制御部21の回生スイッチQ11のエミッタとが電気的に接続される。なお、電圧制御部21は、変換部3に直接電気的に接続されている。同様に、任意の電圧制御部2M−1の入力スイッチQ2M−1のエミッタと、次段の電圧制御部2Mの回生スイッチQ1Mのエミッタとが電気的に接続される。したがって、変換部3のスイッチQB2,QB3と、電圧制御部21の回生スイッチQ11とはエミッタ電位が共通であるので、共通する1つの駆動電源で駆動することが可能である。同様に、任意の電圧制御部2M−1の入力スイッチQ2M−1と、次段の電圧制御部2Mの回生スイッチQ1Mとはエミッタ電位が共通であるので、共通する1つの駆動電源で駆動することが可能である。
以下、本実施形態の電力変換装置1を図7に示す7レベルインバータで構成した場合について説明する。例えば、図19Aに示すように、変換部3のスイッチQB2に与えられる駆動信号を駆動信号GB2とし、電圧制御部21の入力スイッチQ21及び回生スイッチQ11に与えられる駆動信号をそれぞれ駆動信号G21,G11とする。また、電圧制御部22の回生スイッチQ12に与えられる駆動信号をG12とする。駆動信号GB2,G21は、それぞれドライブ回路65,66でバッファしてからスイッチQB2,Q21に与えられる。また、駆動信号G11,G12は、それぞれドライブ回路67,68でバッファしてからスイッチQ11,Q12に与えられる。
図19Aに示す構成では、スイッチQB2,Q21,Q11,Q12を駆動するために個別に駆動電源PS4〜PS7を設けている。一方、図19Bに示す構成では、スイッチQB2のエミッタと回生スイッチQ11のエミッタとが同電位であるため、スイッチQB2,Q11を1つの駆動電源PS4で駆動している。同様に、入力スイッチQ21のエミッタと回生スイッチQ12のエミッタとが同電位であるため、スイッチQ21,Q12を1つの駆動電源PS5で駆動している。つまり、図19Bに示す構成は、図19Aに示す構成と比較して駆動電源の数を低減することができる。
上述のように、この構成では、駆動電源の数を低減して回路の小型化を図ることができる。具体的には、本実施形態の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備える構成であれば、各スイッチに個別に駆動電源を設ける場合と比較して、駆動電源をN個減らすことが可能である。また、この構成では、駆動電源の数を低減できることから、コストの低減も図ることができる。なお、当該構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態の電力変換装置1では、任意の電圧制御部2Mに電気的に接続される電圧源VSMは、その電源電圧EMが主電圧源VSN+1の電源電圧EN+1の‘M/(N+1)’であるのが好ましい。言い換えれば、変換部3に直接電気的に接続される電圧制御部21から数えてM番目の電圧制御部2Mには、電源電圧EMが主電圧源VSN+1の電源電圧EN+1の‘M/(N+1)’である電圧源VSMが電気的に接続されるのが好ましい。
例えば、本実施形態の電力変換装置1を7レベルインバータ(すなわち、N=2)で構成したと仮定する。この場合、電圧制御部21(すなわち、M=1)に電気的に接続される電圧源VS1は、その電源電圧E1が主電圧源VS3の出力電圧E3の1/3であることが好ましい。同様に、電圧制御部22(すなわち、M=2)に電気的に接続される電圧源VS2は、その電源電圧E2が主電圧源VS3の出力電圧E3の2/3であることが好ましい。
この構成では、主電圧源VSN+1と電圧源VSNとの電圧差、及び任意の電圧源VSMとその次段の電圧源VSM+1との電圧差は、それぞれ‘EN+1/(N+1)’〔V〕となる。したがって、以下の表11に示すように、各スイッチの最低限必要な耐圧を下げることができる。例えば、本実施形態の電力変換装置1を図7に示すような7レベルインバータ(すなわち、N=2)で構成した場合、各スイッチの最低限必要な耐圧は、E3/3=E1〔V〕で済む。このため、この構成では、各スイッチが必要とする耐圧を下げることができるので、高耐圧の素子を用いる必要が無く、コストを低減することができる。また、この構成では、各スイッチを基板に実装する際に考慮すべき絶縁距離の制限が緩和される。更に、この構成では、各スイッチに同種類の素子を使用することができるので、よりコストを低減することができる。
以下、本実施形態の電力変換装置1をパワーコンディショナに用いた使用例について説明する。この使用例は、図20に示すように、本実施形態の電力変換装置1と、解列器9とを備えている。解列器9は、第1出力点13及び第2出力点14と、系統電源7との間に電気的に接続されている。具体的には、電力変換装置1の第1出力点13及び第2出力点14は、解列器9を介して分電盤に設けられた連系ブレーカに電気的に接続されることにより、系統電源7に電気的に接続される。また、解列器9と系統電源7との間には、負荷8が電気的に接続されている。
解列器9は、第1出力点13と系統電源7との間に電気的に接続された第1接点部91と、第2出力点14と系統電源7との間に電気的に接続された第2接点部92とを有している。但し、解列器9は、第1出力点13及び第2出力点14の少なくとも一方と系統電源7との間に電気的に接続されていればよく、第1接点部91及び第2接点部92の何れかは省略されていてもよい。
この使用例は、定常時、系統連系運転を行い、主電圧源VSN+1及び電圧源VS1〜VSNから入力される直流電力を電力変換装置1で交流電力に変換し、系統電源7及び負荷8に出力する。
この使用例において、制御部5は、出力する交流電圧の位相が、系統電源7の電源電圧の位相に対して逆位相となるように電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御してもよい。この構成では、主電圧源VSN+1及び電圧源VS1〜VSNの充電及び放電の双方が可能である双方向インバータとして、本実施形態の電力変換装置1を使用することができる。
また、この使用例において、制御部5は、系統電源7の電源周波数を測定する機能を有していてもよい。そして、制御部5は、出力する交流電圧の位相が、系統電源7の電源電圧の位相とずれるように電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御してもよい。
この構成では、上記のように制御することで系統電源7に無効電力を注入することができる。そして、系統電源7に停電などの異常が発生している場合には、無効電力の注入により系統電源7の電源周波数が変動する。したがって、制御部5は、この系統電源7の電源周波数を測定することで、系統電源7に停電などの異常が発生しているか否かを判定することができ、結果として電力変換装置1が単独運転しているか否かを判定することができる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る電力変換装置1について図21を用いて説明する。本実施形態の電力変換装置1は、回路構成自体は実施形態1の電力変換装置1と共通であり、制御部5の動作が実施形態1の電力変換装置1と相違する。なお、本実施形態の電力変換装置1において、実施形態1の電力変換装置1と共通する構成要素については適宜説明を省略する。以下では、本実施形態の電力変換装置1を図4に示すような5レベルインバータで構成した場合について説明する。また、電圧源VS1の電源電圧をE1〔V〕、主電圧源VS2の電源電圧をE2〔V〕と仮定する。勿論、本実施形態の電力変換装置1を5レベルインバータに限定する趣旨ではない。
本実施形態の電力変換装置1では、制御部5は、4個の搬送波CW1〜CW4と目標信号OS1との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。
第1搬送波CW1は、最小電圧値が0〔V〕、最大電圧値がE1/L〔V〕の三角波である。第2搬送波CW2は、最小電圧値がE1/L〔V〕、最大電圧値がE2/L〔V〕の三角波である。第3搬送波CW3は、最小電圧値が−E1/L〔V〕、最大電圧値が0〔V〕の三角波である。第4搬送波CW4は、最小電圧値が−E2/L〔V〕、最大電圧値が−E1/L〔V〕の三角波である。搬送波CW1〜CW4は、それぞれ同期している。なお、‘L’は1以上の整数である。
目標信号OS1は、電力変換装置1の出力する所望の交流電圧の指令値に応じた信号である。本実施形態の電力変換装置1では、目標信号OS1は指令値と同じ電圧値であり、最小電圧値が−E2/L〔V〕、最大電圧値がE2/L〔V〕の正弦波になる。なお、‘L’は1以上の整数である。
制御部5は、搬送波CW1〜CW4と目標信号OS1とを比較し、以下の表12に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1〜CW4の何れかと等しい場合(例えば、OS1=CW1など)は、表12に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第3搬送波CW3と第4搬送波CW4との間にある場合、制御部5は、クランプ部4の第1保持スイッチQC1、変換部3のスイッチQB2,QB3、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替える。また、制御部5は、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、−E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本実施形態の電力変換装置1では、制御部5は、4個の同期した搬送波CW1〜CW4と、目標信号OS1との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本実施形態の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は、‘N×2+2’個の同期した搬送波と、目標信号OS1との比較結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
したがって、本実施形態の電力変換装置1は、所望の交流電圧を出力するために出力電圧V1を遷移させる回数が少ないので、各スイッチのオン/オフを切り替える回数が少なく、スイッチング損失を低減することができる。
ところで、本実施形態の電力変換装置1では、図22に示すように、第1搬送波CW1及び第4搬送波CW1の位相を反転させてもよい。この場合も、制御部5は、搬送波CW1〜CW4と目標信号OS1とを比較し、表12に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。
つまり、制御部5は、‘N+1’個の搬送波、及び当該‘N+1’個の搬送波とは位相が反転した‘N+1’個の搬送波と、目標信号OS1との比較結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御してもよい。この構成では、所望の交流電圧を出力するために出力電圧V1を遷移させる回数が一定であるので、歪みの少ない交流電圧を出力することが可能である。
(構成例1)
以下、本実施形態の構成例1に係る電力変換装置1について図23を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、2個の搬送波CW1,CW2と目標信号OS1との比較結果、及び指令値の正負の判定結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。
図23において、第1判定信号DS1は、指令値の正負の判定を示す信号である。第1判定信号DS1は、指令値が正であれば‘L’、指令値が負であれば‘H’となる。なお、指令値が零のときの判定信号DS1は、適宜定義されてよい。また、目標信号OS1は、指令値の正負の判定結果に基づいて、複数の搬送波(搬送波CW1,CW2)の最小値と最大値との間に収まるように調整された信号である。本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1は、指令値が負の期間において、所定の電圧値が加算された信号である。ここで、所定の電圧値は、第1搬送波CW1の最小値と、第2搬送波CW2の最大値との差分である。すなわち、図23に示すように、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘L’を示す間は指令値と同じ電圧値を示し、第1判定信号DS1が‘H’になると、指令値に‘E2/L’〔V〕を加算した電圧値を示す。
制御部5は、搬送波CW1,CW2と目標信号OS1との比較結果と、第1判定信号DS1とに応じて、以下の表13に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1,CW2の何れかと等しい場合(例えば、OS1=CW1など)は、表13に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第1搬送波CW1と第2搬送波CW2との間にある場合について説明する。この場合、第1判定信号DS1が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。また、第1判定信号DS1が‘H’であれば、制御部5は、クランプ部4の第1保持スイッチQC1、変換部3のスイッチQB2,QB3、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、−E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、2個の同期した搬送波CW1,CW2と目標信号OS1との比較結果、及び指令値の正負の判定結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本構成例の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本構成例の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は以下の制御を実行する。すなわち、制御部5は、‘N+1’個の同期した搬送波と目標信号OS1との比較結果、及び指令値の正負の判定結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
したがって、本構成例の電力変換装置1は、必要となる搬送波の数が少なくて済むことから、搬送波を生成するために必要なソフトウェアやハードウェアを簡略化でき、コストを低減することができる。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値に対する加算処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた加算器により加算処理を実行してもよい。
(構成例2)
以下、本実施形態の構成例2に係る電力変換装置1について図24を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、構成例1の電力変換装置1とは異なり、第1搬送波CW1の位相を反転させている。また、目標信号OS1は、指令値の正負の判定結果に基づいて、複数の搬送波(搬送波CW1,CW2)の最小値と最大値との間に収まるように調整された信号である。本構成例の電力変換装置1では、構成例1の電力変換装置1とは異なり、目標信号OS1は、指令値が負の期間において、指令値の正負を反転させた信号である。すなわち、図24に示すように、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘L’を示す間は指令値と同じ電圧値を示し、第1判定信号DS1が‘H’になると、指令値の正負を反転した電圧値を示す。
制御部5は、搬送波CW1,CW2と目標信号OS1との比較結果と、第1判定信号DS1とに応じて、以下の表14に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1,CW2の何れかと等しい場合(例えば、OS1=CW1など)は、表14に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第2搬送波CW2よりも大きい場合について説明する。この場合、第1判定信号DS1が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。また、第1判定信号DS1が‘H’であれば、制御部5は、クランプ部4の第1保持スイッチQC1、変換部3のスイッチQB2,QB3、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、−E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、第2搬送波CW2及び位相を反転した第1搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果、及び指令値の正負の判定結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本構成例の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本構成例の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は以下の制御を実行する。すなわち、制御部5は、複数の搬送波と目標信号OS1との比較結果、及び指令値の正負の判定結果とに応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。複数の搬送波は、‘[(N+1)/2]’個の搬送波、及び当該‘[(N+1)/2]’個の搬送波とは位相が反転した‘[(N+1)/2]’個の搬送波である。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
なお、‘[(N+1)/2]’の‘[]’はガウス記号である。例えば、Xを実数とすると、[X]は整数であり、‘X−1≦[X]<X’の関係を満たす。したがって、‘[(N+1)/2]’は、‘(N+1)/2’を超えない最大の整数を表している。
したがって、本構成例の電力変換装置1は、必要となる搬送波の数が少なくて済むことから、搬送波を生成するために必要なソフトウェアやハードウェアを簡略化でき、コストを低減することができる。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値の正負を反転させる処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた乗算器により、指令値の正負を反転させる処理を実行してもよい。
(構成例3)
以下、本実施形態の構成例3に係る電力変換装置1について図25を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、2個の搬送波CW1,CW3と目標信号OS1との比較結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。ここでは、閾値として、第1搬送波CW1の最大値である‘E1/L’〔V〕を第1閾値、第3搬送波CW3の最小値である‘−E1/L’〔V〕を第2閾値としている。
図25において、第2判定信号DS2は、指令値と閾値との比較結果を示す信号である。第2判定信号DS2は、指令値が第1閾値(‘E1/L’〔V〕)を上回れば‘H1’、第2閾値(‘−E1/L’〔V〕)を下回れば‘H2’、それ以外であれば‘L’となる。また、目標信号OS1は、指令値と閾値との比較結果に基づいて、複数の搬送波(搬送波CW1,CW3)の最小値と最大値との間に収まるように調整された信号である。本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1は、指令値が第1閾値を上回る期間において指令値から第1閾値が減算され、且つ指令値が第2閾値を下回る期間において指令値から第2閾値が減算された信号である。すなわち、図25に示すように、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は指令値と同じ電圧値を示し、第2判定信号DS2が‘H1’になると、指令値から‘E1/L’〔V〕を減算した電圧値を示す。また、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H2’になると、指令値から‘−E1/L’〔V〕を減算した電圧値を示す。
制御部5は、搬送波CW1,CW3と目標信号OS1との比較結果と、第2判定信号DS2とに応じて、以下の表15に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1,CW3の何れかと等しい場合(例えば、OS1=CW1など)は、表15に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第1搬送波CW1と第3搬送波CW3との間にある場合について説明する。この場合、第2判定信号DS2が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、出力電圧V1を0〔V〕とする。また、第2判定信号DS2が‘H1’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。また、第2判定信号DS2が‘H2’であれば、制御部5は、クランプ部4の第1保持スイッチQC1、変換部3のスイッチQB2,QB3、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、−E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、2個の同期した搬送波CW1,CW3と目標信号OS1との比較結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本構成例の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本構成例の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は以下の制御を実行する。すなわち、制御部5は、‘N+1’個の同期した搬送波と目標信号OS1との比較結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
したがって、本構成例の電力変換装置1は、必要となる搬送波の数が少なくて済むことから、搬送波を生成するために必要なソフトウェアやハードウェアを簡略化でき、コストを低減することができる。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値に対する減算処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた減算器により減算処理を実行してもよい。
(構成例4)
以下、本実施形態の構成例4に係る電力変換装置1について図26を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、構成例3の電力変換装置1とは異なり、第3搬送波CW3の位相を反転させている。また、目標信号OS1は、指令値と閾値との比較結果に基づいて、複数の搬送波(搬送波CW1,CW3)の最小値と最大値との間に収まるように調整された信号である。本構成例の電力変換装置1では、構成例3の電力変換装置1とは異なり、目標信号OS1は、指令値が第1閾値を上回る期間において、指令値と第1閾値との差分が第1閾値から減算された信号である。且つ、目標信号OS1は、指令値が第2閾値を下回る期間において、指令値と第2閾値との差分が第2閾値から減算された信号である。すなわち、図26に示すように、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は指令値と同じ電圧値を示し、第2判定信号DS2が‘H1’になると、指令値と‘E1/L’〔V〕との差分を‘E1/L’〔V〕から減算した電圧値を示す。また、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H2’になると、指令値と‘−E1/L’〔V〕との差分を‘−E1/L’〔V〕から減算した電圧値を示す。
制御部5は、搬送波CW1,CW3と目標信号OS1との比較結果と、第2判定信号DS2とに応じて、以下の表16に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1,CW3の何れかと等しい場合(例えば、OS1=CW1など)は、表16に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第1搬送波CW1と第3搬送波CW3との間にある場合について説明する。この場合、第2判定信号DS2が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、出力電圧V1を0〔V〕とする。また、第2判定信号DS2が‘H1’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。また、第2判定信号DS2が‘H2’であれば、制御部5は、クランプ部4の第1保持スイッチQC1、変換部3のスイッチQB2,QB3、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、−E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、2個の搬送波CW1,CW3と目標信号OS1との比較結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本構成例の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本構成例の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は以下の制御を実行する。すなわち、制御部5は、複数の搬送波と目標信号OS1との比較結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。複数の搬送波は、‘[(N+1)/2]’個の搬送波、及び当該‘[(N+1)/2]’個の搬送波とは位相が反転した‘[(N+1)/2]’個の搬送波である。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
したがって、本構成例の電力変換装置1は、必要となる搬送波の数が少なくて済むことから、搬送波を生成するために必要なソフトウェアやハードウェアを簡略化でき、コストを低減することができる。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値に対する減算処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた減算器により減算処理を実行してもよい。
(構成例5)
以下、本実施形態の構成例5に係る電力変換装置1について図27を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、第1搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果、指令値の正負の判定結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。
本構成例の電力変換装置1では、第2判定信号DS2は、第1判定信号DS1が‘L’の場合に指令値が第1閾値を上回れば‘H1’、第1判定信号DS1が‘H’の場合に指令値が第2閾値を下回れば‘H2’、それ以外であれば‘L’となる。
また、目標信号OS1は、指令値の正負の判定結果と、指令値と閾値との比較結果とに基づいて、1個の搬送波(第1搬送波CW1)の最小値と最大値との間に収まるように調整された信号である。本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1は、指令値が正であり且つ第1閾値を上回る期間において、指令値から第1閾値が減算された信号である。且つ、目標信号OS1は、指令値が負である期間において、指令値に第1閾値が加算された信号である。更に、目標信号OS1は、指令値が負であり且つ第2閾値を下回る期間において、加算後の指令値に更に第1閾値が加算された信号である。
すなわち、図27に示すように、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘L’、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は、指令値と同じ電圧値を示す。そして、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H1’になると、指令値から‘E1/L’〔V〕を減算した電圧値を示す。また、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘H’、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は、指令値に‘E1/L’〔V〕を加算した電圧値を示す。そして、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H2’になると、‘E1/L’〔V〕が加算された指令値に更に‘E1/L’〔V〕を加算した電圧値を示す。
制御部5は、第1搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果と、第1判定信号DS1と、第2判定信号DS2とに応じて、以下の表17に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1と等しい場合は、表17に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第1搬送波CW1よりも大きく、且つ第1判定信号DS1が‘L’の場合について説明する。この場合、第2判定信号DS2が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E1〔V〕の出力電圧V1を発生する。また、第2判定信号DS2が‘H1’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。
上述のように、本構成例の電力変換装置1では、制御部5は、1個の搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果、指令値の正負の判定結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本構成例の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−E2〔V〕〜E2〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
また、本構成例の電力変換装置1がN個の電圧制御部21〜2Nを備えている場合、制御部5は以下の制御を実行する。すなわち、制御部5は、1個の搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果、指令値の正負の判定結果、及び指令値と閾値との比較結果に応じて、電圧制御部21〜2N、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。これにより、本実施形態の電力変換装置1は、制御部5により出力電圧V1を適宜切り替えることで、0〔V〕を中心に−EN+1〔V〕〜EN+1〔V〕の間で変化する交流電圧を出力する。
したがって、本構成例の電力変換装置1は、必要となる搬送波の数が1個で済むことから、搬送波を生成するために必要なソフトウェアやハードウェアを簡略化でき、コストを低減することができる。また、本構成例の電力変換装置1は、1個の搬送波を用いるため、複数の搬送波の同期をとる必要がない。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値に対する加算処理及び減算処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた加算器により加算処理を実行し、且つ制御部5とは別に設けられた減算器により減算処理を実行してもよい。
(構成例6)
以下、本実施形態の構成例6に係る電力変換装置1について図28を用いて説明する。本構成例の電力変換装置1では、構成例5の電力変換装置1とは異なり、目標信号OS1は、指令値が正であり且つ第1閾値を上回る期間において、指令値と第1閾値との差分が第1閾値から減算された信号である。且つ、目標信号OS1は、指令値が負である期間において、指令値の正負を反転させた信号である。更に、目標信号OS1は、指令値が負であり且つ第2閾値を下回る期間において、反転後の指令値と第1閾値との差分が第1閾値から減算された信号である。
すなわち、図28に示すように、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘L’、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は、指令値と同じ電圧値を示す。そして、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H1’になると、指令値と‘E1/L’〔V〕との差分を‘E1/L’〔V〕から減算した電圧値を示す。また、目標信号OS1は、第1判定信号DS1が‘H’、第2判定信号DS2が‘L’を示す間は、指令値の正負を反転した電圧値を示す。そして、目標信号OS1は、第2判定信号DS2が‘H2’になると、反転した指令値と‘E1/L’〔V〕との差分を‘E1/L’〔V〕から減算した電圧値を示す。
制御部5は、第1搬送波CW1と目標信号OS1との比較結果と、第1判定信号DS1と、第2判定信号DS2とに応じて、以下の表18に示す条件に従った出力電圧V1を発生させるように、電圧制御部21、変換部3、クランプ部4の各スイッチを制御する。なお、目標信号OS1が搬送波CW1と等しい場合は、表18に示す条件に限定されず、適宜定義されてもよい。
例えば、目標信号OS1の電圧値が第1搬送波CW1よりも小さく、且つ第1判定信号DS1が‘L’の場合について説明する。この場合、第2判定信号DS2が‘L’であれば、制御部5は、クランプ部4の保持スイッチQC1,QC2、電圧制御部21の回生スイッチQ11をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、出力電圧V1を0〔V〕とする。また、第2判定信号DS2が‘H1’であれば、制御部5は、クランプ部4の第2保持スイッチQC2、変換部3のスイッチQB1,QB4、電圧制御部21の入力スイッチQ21をオンに切り替え、残りのスイッチをオフに切り替える。これにより、本構成例の電力変換装置1は、E2〔V〕の出力電圧V1を発生する。
本構成例の電力変換装置1は、構成例5の電力変換装置1と同様の効果を奏することができる。なお、本構成例の電力変換装置1では、目標信号OS1において、指令値の正負を反転させる処理、及び指令値に対する減算処理を制御部5が実行しているが、他の構成であってもよい。すなわち、制御部5とは別に設けられた乗算器により指令値の正負を反転させる処理を実行し、且つ制御部5とは別に設けられた減算器により減算処理を実行してもよい。