JP6279403B2 - ボンデッドピストンシールの製造方法 - Google Patents
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Description
ボンデッドピストンシールは、金属環と、金属環の外周面の一部に設けられたリップ部とから構成される。リップ部は、ゴム等の弾性材料から形成される。ボンデッドピストンシールがハウジング内部に配置された状態において、リップ部の先端部がハウジングの内壁に接触することにより、油圧室が密閉される。
図6は、従来例に係るボンデッドピストンシールの一例(ボンデッドピストンシール101)を示し、(a)は一部断面図であり、(b)は(a)における一点鎖線で囲んだ部分AR0の拡大図である。
金属環111は、筒状の周壁Sと環状の底部Tとから構成されている。周壁Sは、円筒状の第1筒状部121と、第1筒状部よりも大径の円筒状の第2筒状部122と、第1筒状部121及び第2筒状部122に連続する円環部123とを備えている。この金属環111は、円環状の金属板を片面側から押し出すようにプレス加工を施すことにより形成される。この場合、第2筒状部122と円環部123との境目部1222の外周には、凸曲面部125が形成される。
リップ部112は、基端部が凸曲面部125の一部を覆うように設けられており、基端部から先端部に向かって漸次拡径している。
この工程では、まず、金属環111と、リップ部112の基となるゴム基材132とが、内周に環状の突条部151aを有する金型151の内側に配置される。このとき、突条部151aの先端部が凸曲面部125に当接した状態となり、金属環111の外周面と金型151の内周面との間の空間S0にゴム基材132が充満する。
次に、金型151の温度を上昇させることにより、ゴム基材132に熱を加えるとともに、金型151を金属環111に向かって押圧することにより、ゴム基材132に圧力を加える。この状態を維持したまま所定時間だけ経過すると、空間S0内に充満したゴム基材132が化学反応により形成される。
所定時間経過後、金型151を金属環111から取り外すと、金属環111の外周面の一部にリップ部112が設けられたボンデッドピストンシール101が完成する。
金属環111には、その製造ばらつきにより、例えば、曲率半径R11の凸曲面部125Aを有する金属環111Aや、曲率半径がR11よりも大きいR12の凸曲面部125Bを有する金属環111Bが存在しうる。このため、金型151の突条部151aが、例えば、金属環111Aに適合する内径を有するものである場合、金属環111Bを金型151の内側に配置した状態で、凸曲面部125Bと突条部151aの先端部との間に隙間Gが生じてしまう。
この第2筒状部122の外周は、ハウジングの内壁に対向する部分であるので、ボンデッドピストンシール101がハウジング内部を移動する際、リップ部112における第2筒状部122の外周側に張り出した部分が、ハウジングの内壁に接触してボンデッドピストンシール101の移動を妨げる虞がある。
本構成によれば、金型の中心軸と、金属環の中心軸とを一致させやすい、即ち、調心性がよいという利点がある。
<1>構成
図1は、この発明に係る製造方法を適用して得られたボンデットピストンシール1を用いた密封装置71の一部破断した側面図である。
密封装置71は、ハウジング72と、ボンデッドピストンシール1とを備える。なお、図1において、密封装置71における、ハウジング72及びボンデッドピストンシール1以外の構成については図示を省略している。
ハウジング72は、中心軸J2に対して回転対称な形状を有し、第1部位72aと、第2部位72bと、第3部位72cとを備える。第1部位72aは、略有底円筒状に形成され、底壁72aaの一部に作動油を内側に導入するための導入孔(図示せず)が貫設されている。第2部位72bは、略円錐筒状であり、第1部位72aの開口側の端部に連続し、第3部位72cに向かって漸次拡径している。第3部位72cは、略円筒状であり、第2部位72bのうちの第1部位72a側とは反対側の端部に連続している。
このようにして、ハウジング72の底壁72aa及び側壁72abと、ボンデッドピストンシール1との間に、油圧室S10が形成されている。この油圧室S10の内圧と上記スプリングの付勢力とのバランスを調整することにより、ボンデッドピストンシール1の位置を調節することができる。
ボンデッドピストンシール1は、図1(a)の断面形状を中心軸J1周りに回転させたときに得られる形状を有する。
第1筒状部21は、略円筒状である。
第2筒状部22は、略円筒状であり、その外径が第1筒状部21の外径よりも大きい。この第2筒状部22の内周は、第1筒状部21の外周よりも径方向外方に位置する。また、第2筒状部22の外径は、ハウジング72の第1部位72aの内径よりも小さい。ボンデッドピストンシール1がハウジング72の内側において最も底壁72aa側に配置された状態では、第2筒状部22の大部分がハウジング72の第1部位72aの内側に位置し、第2筒状部22の外周面が第1部位72aの内周面に対向する。
第1円環部23は、略円環状であり、第1筒状部21と第2筒状部22との間に位置し、その内縁部が第1筒状部21の筒軸方向における下端部に連続し且つ外縁部が第2筒状部22の筒軸方向における上端部に連続している。
第4筒状部25は、略円筒状であり、中心軸J1に沿った方向において、第3筒状部24の第2筒状部22側とは反対側の端部に連続している。
フランジ部26は、中心軸J1に沿った方向における第4筒状部25の第3筒状部24側とは反対側の端部から、中心軸J1から離れる方向に延出している。
第2円環部28は、略円環状であり、外縁部全体が第1筒状部21における第1円環部23側とは反対側の端部全体に連続している。また、第2円環部28は、内縁部全体が第5筒状部27の端部全体に連続している。更に、第2円環部28の一部には、スプリング(図示せず)の一端を嵌合するための窪み部28aが形成されている。
第6筒状部29は、円筒状であり、その外径が第5筒状部27の内径よりも小さく、中心軸J1に沿った方向から見たときに、第5筒状部27の内側に位置している。
第3円環部30は、平坦な円環状であり、外縁部全体が第5筒状部27における第2円環部28側とは反対側の端部全体に連続している。また、第3円環部30は、内縁部全体が第6筒状部29の端部全体に連続している。
次に、本実施形態に係るボンデッドピストンシール1の製造方法について図2(b)及び図3を参照しながら説明する。このボンデッドピストンシール1の製造方法は、金属環形成工程と、リップ部形成工程とを含む。
金属環形成工程では、円環状の金属板(図示せず)を片面側から押し出すようにプレス加工(絞り加工)を施すことにより、中間素材(図3(a)の31A,31B)を形成する。ここにおいて、第1筒状部21と第1円環部23との境目部212の外周には、凹曲面部211が形成される。また、第2筒状部22と第1円環部23との境目部222の外周には、凸曲面部231が形成される。この中間素材は、金属環11の基となる部材であり、第2筒状部22と第1円環部23との境目部222の外周にテーパ部221がない点のみが金属環11と相違する部材である。つまり、中間素材は、従来の金属環と同じ形状のものである。
図3(a)に示すように、例えば、中間素材には、曲率半径R1の凸曲面部45Aを有する中間素材31Aや、曲率半径がR1よりも大きいR2の凸曲面部45Bを有する中間素材31Bが存在しうる。
図4は、本実施形態に係るリップ部形成工程を示す概略断面図である。
この工程では、リップ部形成用の金型51として、内周面の一部に第2テーパ部51aを有するものを用いる。
第2テーパ部51aは、金属環11における第2筒状部22の外周面及び第1テーパ部221に対向する。第2テーパ部51aの金属環11の中心軸J1に対する傾斜角θ2は、金属環11の第1テーパ部221の傾斜角θ1よりも小さくなるように設定されている。この傾斜角θ2は、例えば5°程度に設定される。
このことからも、本実施形態に係る製造方法は、従来の製造方法に比べて、リップ部12の形状の製造ばらつきを抑制できていることが判る。
(1)実施形態では、金型51が第2テーパ部51aを備える例について説明したが、金型51の形状はこれに限定されるものではなく、例えば図5に示すように、金型が、金属環11の第1テーパ部221に対向する部位に環状の突条部251aを有するものであってもよい。
この突条部251aは、金属環11の第1テーパ部221に接触するコーナ部が直角断面に形成されている。
例えば、金属板11に対してプレス加工を施すことにより中間素材31A(31B)を形成すると同時に第1テーパ部221を形成するようにしてもよい。
Claims (3)
- 金属環に加硫ゴムからなるリップ部が設けられてなるボンデッドピストンシールの製造方法であって、
金属板にプレス加工を施すことにより、第1筒状部と、前記第1筒状部の筒軸方向における一端側外方に位置する第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部との間に位置し、内縁部が前記第1筒状部の端部に連続し且つ外縁部が第2筒状部の端部に連続する円環部と、前記円環部と前記第2筒状部との境目部の外周に設けられ、前記第1筒状部に向かって漸次縮径する環状の第1テーパ部とを備える前記金属環を形成する金属環形成工程と、
金型の内側に前記金属環と前記リップ部の基となるゴム基材とを配置した状態で、前記ゴム基材への加熱及び加圧を行うことにより前記金属環に前記リップ部を設けるリップ部形成工程とを含み、
前記リップ部形成工程では、内周面の一部に前記第1テーパ部に対向する部分を有する金型を用い、当該金型の前記第1テーパ部に対向する部分を前記金属環の前記第1テーパ部における前記第2筒状部側の端縁に接触させることにより、前記金属環の第1テーパ部と、当該第1テーパ部に対向する前記金型の内周面との間に断面楔状の環状空間を形成し、当該環状空間に、前記ゴム基材を充満させる
ボンデッドピストンシールの製造方法。 - 前記リップ部形成工程に用いる金型として、前記第1テーパ部に対向する部分が円錐筒状の第2テーパ部からなるものを用いる
請求項1記載のボンデッドピストンシールの製造方法。 - 金属環に加硫ゴムからなるリップ部が設けられてなるボンデッドピストンシールの製造方法であって、
金属板にプレス加工を施すことにより、第1筒状部と、前記第1筒状部の筒軸方向における一端側外方に位置する第2筒状部と、前記第1筒状部と前記第2筒状部との間に位置し、内縁部が前記第1筒状部の端部に連続し且つ外縁部が第2筒状部の端部に連続する円環部とを備えた中間素材を形成し、その後、前記中間素材における前記円環部と前記第2筒状部との境目部の外周に、前記第1筒状部に向かって漸次縮径する環状の第1テーパ部を形成することにより、前記金属環を形成する金属環形成工程と、
金型の内側に前記金属環と前記リップ部の基となるゴム基材とを配置した状態で、前記ゴム基材への加熱及び加圧を行うことにより前記金属環に前記リップ部を設けるリップ部形成工程とを含み、
前記リップ部形成工程では、内周面の一部に前記第1テーパ部に対向する部分を有する金型を用い、当該金型の前記第1テーパ部に対向する部分を前記金属環の前記第1テーパ部における前記第2筒状部側の端縁に接触させることにより、前記金属環の第1テーパ部と、当該第1テーパ部に対向する前記金型の内周面との間に断面楔状の環状空間を形成し、当該環状空間に、前記ゴム基材を充満させる
ボンデッドピストンシールの製造方法。
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