以下、図面を用いて、本発明に係る車両制御装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両制御装置10を搭載する車両の構成図を示す。また、図2は、本実施例の車両制御装置10の構成図を示す。本実施例の車両制御装置10は、エンジン12と、オルタネータ14と、バッテリ16と、を有する車両18に搭載される制御装置である。
エンジン12は、ガソリンや軽油などの燃料を燃焼させることにより動力を発生させる内燃機関である。エンジン12とオルタネータ14とは、駆動機構20を介して連結されている。エンジン12により発生された動力は、変速機22を介して駆動輪24に伝達されると共に、駆動機構20を介してオルタネータ14に伝達される。オルタネータ14は、エンジン12からの動力により発電する発電機である。
オルタネータ14とバッテリ16とは、電力線26を介して接続されている。オルタネータ14により発電された電力は、電力線26を介してバッテリ16及び補機28に供給される。バッテリ16は、出力電圧が14ボルト程度である直流の鉛畜電池などである。バッテリ16は、オルタネータ14の発電により充電され得る。尚、補機28は、エアコンやライトなどの各種の電気負荷であり、バッテリ16及びオルタネータ14からの電力により作動する。
本実施例において、車両制御装置10を搭載する車両18は、アイドリングストップ制御(すなわち、スタートアンドストップ制御(S&S制御)或いはエコラン制御)を実行することが可能な車両である。アイドリングストップ制御は、所定の開始条件が成立した場合にエンジン12を自動的に停止させると共に、また、その自動停止後、所定の終了条件が成立した場合にエンジン12を自動的に再始動するものである。所定の開始条件は、例えば、アクセルペダルオフ、ブレーキペダルオン、車両18が停車したこと(車速がゼロになったこと)、車速が所定車速以下に低下したこと、エンジン負荷が所定値以下であることなどである。また、所定の終了条件は、例えば、アクセルペダルオン、ブレーキペダルオフ、エンジン負荷が増大したことなどである。
アイドリングストップ制御としては、車両18が停車することを条件として実行開始するもの(以下、停車アイドリングストップ制御と称す。)と、車両減速時から実行開始するもの(以下、減速アイドリングストップ制御と称す。)と、がある。停車アイドリングストップ制御と減速アイドリングストップ制御とは、開始条件を互いに異にする。
具体的には、停車アイドリングストップ制御の開始条件は、少なくとも車両停車を含む。また、減速アイドリングストップ制御の開始条件は、少なくとも所定の車両減速(例えば、車速が10km/hなどの所定速度未満になったこと)を含む。尚、減速アイドリングストップ制御は、車両の走行中に実行開始されるものであるため、その減速アイドリングストップ制御の開始条件は、上記した所定の車両減速の他、停車アイドリングストップ制御の開始条件には含まれない、例えばトランスミッションの油圧条件などの安全走行を確保するための所定条件を含む。このため、安全走行を確保するための所定条件が成立しないときは、停車アイドリングストップ制御が減速アイドリングストップ制御の実行開始に先立って実行開始されることが起こり得る。
本実施例において、車両18は、停車アイドリングストップ制御及び減速アイドリングストップ制御の双方を実行することが可能である。すなわち、車両18は、停車アイドリングストップ制御の開始条件及び減速アイドリングストップ制御の開始条件のうちの何れかの開始条件が成立したときに、その開始条件が成立したアイドリングストップ制御を実行することが可能である。
車両制御装置10は、マイクロコンピュータを主体に構成される電子制御ユニット(以下、ECUと称す。)30を備えている。ECU30は、プログラムを実行するCPUと、プログラムやデータを記憶するROMと、一時的にデータを記憶するRAMと、各種センサやアクチュエータ等に接続される入出力ポートと、を有している。
ECU30には、アイドリングストップ制御の開始条件の成立有無及び終了条件の成立有無を判別するために必要なデータが入力されると共に、バッテリ16の充電を制御するために必要なデータが入力される。ECU30に接続されるセンサとしては、車速センサ32、ブレーキペダルセンサ34、アクセル開度センサ36、バッテリセンサ38、オルタネータセンサ40などである。
車速センサ32は、車両18の車速に応じた信号を出力するセンサである。ブレーキペダルセンサ34は、ブレーキペダルの踏み込みの有無に応じた信号を出力するセンサである。アクセル開度センサ36は、アクセルペダルの踏み込み量や踏み込み開度に応じた信号を出力するセンサである。バッテリセンサ38は、バッテリ16の充放電電流や端子電圧を出力するセンサである。オルタネータセンサ40は、オルタネータ14の出力電流に応じた信号を出力するセンサである。
ECU30は、車速センサ32からの信号に基づいて車両18の車速を検出する。ブレーキペダルセンサ34からの信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み有無を判別する。アクセル開度センサ36からの信号に基づいてアクセルペダルの踏み込み量や踏み込み開度を検出する。バッテリセンサ38からの信号に基づいてバッテリ16の充放電電流や端子電圧などを検出する。オルタネータセンサ40からの信号に基づいてオルタネータ14の出力電流を検出する。
ECU30は、各種センサやエンジンコントロールコンピュータからの信号に基づいて、アクチュエータとしてのエンジンスタータ42やオルタネータ14などを制御することによって、エンジン12の自動停止と自動再始動とを行うアイドリングストップ制御を実行すると共に、バッテリ16の充電状態(SOC;state of charge)を制御する。尚、バッテリ16のSOCは、バッテリ16に残存している容量を、バッテリ16の満充電時に蓄えられる容量で除した値として定義される。
ECU30は、アイドリングストップ制御部50と、SOC制御部52と、を備えている。アイドリングストップ制御部50及びSOC制御部52は、ECU30の有するCPUがプログラムを実行することにより実現される機能である。
アイドリングストップ制御部50は、所定の開始条件が成立したか否かを判別する。アイドリングストップ制御部50は、所定の開始条件が成立したか否かの判別として、具体的には、停車アイドリングストップ制御の開始条件が成立したか否かを判別すると共に、減速アイドリングストップ制御の開始条件が成立したか否かを判別する。
例えば、アイドリングストップ制御部50は、車両18が停車して検出車速がゼロとなりかつブレーキペダルがオンされていることが検出され、更に、他の開始条件が成立したときに、停車アイドリングストップ制御の開始条件が成立したと判別する。また、車両18が減速して検出車速が所定車速以下となってかつブレーキペダルがオンされていることが検出され、更に、安全走行確保のための所定条件を含む他の開始条件が成立したときに、減速アイドリングストップ制御の開始条件が成立したと判別する。
アイドリングストップ制御部50は、アイドリングストップ制御の開始条件が成立したと判別すると、そのアイドリングストップ制御の実行を開始して、エンジンコントロールコンピュータに対してエンジン12の自動停止を指令する。この場合、エンジン12は、アイドリングストップ制御部50によるエンジンコントロールコンピュータを介した自動停止指令に従って停止される。
アイドリングストップ制御部50は、また、アイドリングストップ制御の実行中、所定の終了条件が成立したか否かを判別する。例えば、アイドリングストップ制御部50は、アイドリングストップ制御の実行中にブレーキペダルがオフされたことが検出され、更に、他の終了条件が成立したときに、そのアイドリングストップ制御の終了条件が成立したと判別する。
アイドリングストップ制御部50は、アイドリングストップ制御の終了条件が成立したと判別すると、エンジンコントロールコンピュータ及びエンジンスタータ42に対してエンジン12の自動的な再始動を指令する。この場合、エンジン12は、アイドリングストップ制御部50による自動再始動指令に従って再始動される。
SOC制御部52は、目標SOC推定部54と、SOC算出部56と、フィードバック制御部58と、を有する。目標SOC推定部54は、後に詳述する如く、車両走行中、アイドリングストップ制御による実行開始(すなわち、エンジン12の自動停止)から実行終了(すなわち、エンジン12の自動再始動)までの期間(以下、アイドリングストップ期間と称す。)において使用されると予想される電力量を賄ううえでバッテリ16に要求されるSOCを、目標SOC値として推定する。
SOC算出部56は、バッテリセンサ38を用いて検出したバッテリ16の充放電電流に基づいて、バッテリ16の現在のSOC値(以下、現在SOC値と称す。)を算出する。具体的には、例えば充電側をプラス値としかつ放電側をマイナス値として、バッテリ16の充放電電流を積算して、現在SOC値を算出する。尚、SOC算出部56は、バッテリ16の充放電電流に基づいて現在SOC値を算出するものに限らず、その充放電電流に代えて或いはその充放電電流に加えて、バッテリ電解液比重やセル電圧,バッテリ端子電圧などに基づいて現在SOC値を算出するものであってもよい。
フィードバック制御部58は、車両走行中、目標SOC推定部54による目標SOC値とSOC算出部56による現在SOC値との差分を求め、その差分値をフィードバックによりゼロに一致させるための電圧指示値を求める。フィードバック制御部58は、その電圧指示値をオルタネータ14の発電指示値としてオルタネータ14に出力する。オルタネータ14は、フィードバック制御部58からの電圧指示値に従って、エンジン12からの動力により発電する。この場合、オルタネータ14を用いたエンジン12の燃料消費を伴う発電(燃料発電)によりバッテリ16のSOC値が目標SOC値に制御される。
SOC制御部52には、バッテリ制御機能と、充電制御機能と、が設けられている。バッテリ16(特に、鉛畜電池の場合)については、長寿命化の要請から、使用可能なSOC範囲が予め定められている。そこで、以下に示すバッテリ制御が行われる。すなわち、バッテリ16の現在SOC値が上記の使用可能なSOC範囲の下限値(例えば60%)を下回る場合に、エンジン12の動力を増大させることでバッテリ16のSOC値を速やかに上記のSOC範囲内へ向けて上昇させる。また、バッテリ16の現在SOC値が上記のSOC範囲の上限値(例えば90%)を上回る場合に、バッテリ16の放電量を増大させることでバッテリ16のSOC値を速やかに上記のSOC範囲内へ向けて下降させる。
尚、アイドリングストップ制御によるエンジン12の自動停止中においても、バッテリ16のSOC値が上記SOC範囲の下限値を下回ると、そのアイドリングストップ制御の終了条件が成立したとして、エンジン12が再始動されて、オルタネータ14を用いたエンジン12の燃料消費を伴う燃料発電によりバッテリ16のSOC値が上記SOC範囲内に制御される。
また、充電制御は、車両18の減速走行中にその減速による回生発電によりバッテリ16への充電を行うことで、減速走行以外の走行中(通常走行中)における燃料発電によるバッテリ16への充電を抑えて燃料消費量を低減させる処理である。充電制御においては、通常走行中におけるフィードバック制御部58によるフィードバック制御を、バッテリ16の現在SOC値が目標SOC値を下回るときに実行し、現在SOC値が目標SOC値を上回るときには所定の発電カット電圧を発電指示値としてオルタネータ14に供給するものとする。
次に、本実施例の目標SOC推定部54について説明する。
ECU30のSOC制御部52の目標SOC推定部54は、自車両状態算出部60と、走行環境算出部62と、SOC配分要求レベル算出部64と、目標SOC算出部66と、を有する。
自車両状態算出部60は、車両18の状態(自車両状態)Vを予測する。この自車両状態Vは、車両18が今後にSOCを消費する程度を表すパラメータであって、例えば、バッテリ16の充放電電流やオルタネータ14の出力電流などである。自車両状態算出部60は、バッテリセンサ38を用いて検出されたバッテリ16の充放電電流と、オルタネータセンサ40を用いて検出されたオルタネータ14の出力電流と、に基づいて、補機28などで消費される電力量を自車両状態Vとして算出する。
尚、自車両状態算出部60は、バッテリ16やオルタネータ14の電流に基づくことに代えて、空調装置の消費電力と対応関係がある空調情報(例えば、目標温度と車内温度との差)、又は、エンジン水温と周囲温度との差などのエンジン12の暖機状況を示す情報などに基づいて、自車両状態Vを求めるものとしてもよい。また、自車両状態算出部60は、上記したパラメータのうち2つ以上を組み合わせて自車両状態Vを求めるものとしてもよい。
走行環境算出部62は、車両18の走行環境を予測する。この走行環境とは、車両18が今後にアイドリングストップ制御を実行すると予想される期間を表すパラメータであって、具体的には、今後所定期間におけるアイドリングストップ制御の実行する期間(エンジン12の自動停止時間)の割合を表すものである。走行環境算出部62は、車両18の走行環境を指数で表した走行環境指数Pを算出する。
走行環境算出部62は、基準算出部70と、次回制御予測部72と、補正部74と、を有する。基準算出部70は、走行環境情報に基づいて、車両18の基準となる走行環境(具体的には、車両停車を引き起こして停車アイドリングストップ制御を実行開始し得る走行環境)を指数で表した基準走行環境指数P0を算出する。具体的には、走行環境情報としての車速センサ32を用いて検出された車速に基づいて、現時点から遡る所定期間(例えば、10分間)における停車時間の比率を算出し、その比率から基準走行環境指数P0を算出する。すなわち、その所定期間において車速がゼロとなる停車時間の合計を求め、その合計値を所定期間の全期間で割り算することで比率を算出し、基準走行環境指数P0を算出する。
上記の比率が高ければ、車両18の停車頻度や停車時間が長いと判断できるので、今後も車両18の停車頻度や停車時間も比較的長いと予測することができる。そこで、基準算出部70は、上記の比率が高いほど基準走行環境指数P0を高い値に設定する。尚、基準走行環境指数P0は、上記の比率に応じてリニアに変化されるものに限らず、その比率に応じて段階的・離散的に変化されるものであってもよい。また、基準算出部70は、車速に基づくことに代えて、車輪速、車輪速の変化率、シフトポジション、又は自動変速機のギヤ比などに基づいて、基準走行環境指数P0を求めるものとしてもよい。
次回制御予測部72は、車両18において現時点から将来的直近のタイミングで成立すると予想される開始条件が停車アイドリングストップ制御に係る開始条件であるか或いは減速アイドリングストップ制御に係る開始条件であるかを予測する。すなわち、実行されると予想されるアイドリングストップ制御(次回S&S制御)が停車アイドリングストップ制御であるか或いは減速アイドリングストップ制御であるかを予測する。次回制御予測部72は、第1予測部72aと、第2予測部72bと、第3予測部72cと、を有する。
第1予測部72aは、車両外部から供給される情報(車両外部情報)に基づいて、次回S&S制御を予測する。車両外部情報とは、ナビゲーションシステムや道路情報センタなどからの車両18が今後走行すると予測される走行経路の情報、その走行経路の渋滞有無の情報、その走行経路での最高車速及び平均車速の情報などである。車両外部情報では、停車アイドリングストップ制御が実行される可能性の高いものと減速アイドリングストップ制御が実行される可能性の高いものとが区別されている。第1予測部72aは、この車両外部情報に基づいて、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御及び減速アイドリングストップ制御のうちの何れであるかを予測する。
第2予測部72bは、過去のアイドリングストップ制御の実行履歴に基づいて、次回S&S制御を予測する。例えば、過去実行された複数回のアイドリングストップ制御のうちでの実行割合の多い方を、予測する次回S&S制御として設定する。尚、この予測では、停車アイドリングストップ制御と減速アイドリングストップ制御との単純な回数平均を用いることとしてもよいし、また、両制御の実施時間を加味した加重平均を用いることとしてもよい。尚、第2予測部72bは、過去のアイドリングストップ制御の実行履歴が無い初回時は、次回S&S制御の初期値として、燃費効果を高め易い減速アイドリングストップ制御を設定することとすればよい。
第3予測部72cは、車両18が置かれている状況(自車両状況)に基づいて、次回S&S制御を予測する。自車両状況とは、車両18の水温、油温、その他システムによる減速アイドリングストップ制御を禁止すべき要求などである。自車両状況では、減速アイドリングストップ制御を禁止すべきか否かが区別されている。第3予測部72cは、この自車両状況に基づいて、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御及び減速アイドリングストップ制御のうちの何れであるかを予測する。
補正部74は、基準算出部70により算出された基準走行環境指数P0を、次回制御予測部72で予測した次回S&S制御に従って補正する。補正部74での補正は、次回制御予測部72の各予測部72a,72b,72cでの予測結果を組み合わせて総合して得られる次回S&S制御に従って行われる。尚、この補正に際しては、予測部72a,72b,72cでの予測結果を均等に扱うこととしてもよいし、また、それらの予測結果を重み付けすることとしてもよい。また、補正部74での補正に必要なデータが不足する場合は、燃費効果を高め易い減速アイドリングストップ制御をフェールセーフの次回S&S制御として用いることとしてもよい。
補正部74は、次回制御予測部72で予測した次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であると予測されるときは、基準走行環境指数P0を補正することなく、すなわち、基準走行環境指数P0に補正係数"1"を乗算して、走行環境指数Pを得る。一方、次回制御予測部72で予測した次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であると予測されるときは、基準走行環境指数P0を高くなるように補正して、すなわち、基準走行環境指数P0に"1"を超える補正係数を乗算して、走行環境指数Pを得る。
自車両状態算出部60及び走行環境算出部62は共に、車両18の運転が開始された以後、常に算出を行う。自車両状態算出部60が算出した自車両状態V、及び、走行環境算出部62が算出した走行環境指数Pはそれぞれ、SOC配分要求レベル算出部64に供給される。
SOC配分要求レベル算出部64は、自車両状態算出部60からの自車両状態Vと、走行環境算出部62からの走行環境指数Pと、に基づいて、SOC配分要求レベルLを算出する。SOC配分要求レベル算出部64が算出したSOC配分要求レベルLは、目標SOC算出部66に供給される。目標SOC算出部66は、SOC配分要求レベル算出部64からのSOC配分要求レベルLに基づいて、バッテリ16の目標SOC値を算出する。
以下、図3〜図5を参照して、目標SOC推定部54における、SOC配分要求レベル算出部64での自車両状態V及び走行環境指数Pの取得から目標SOC算出部66での目標SOC値の算出及び出力について説明する。
図3は、本実施例の車両制御装置10においてECU30の目標SOC推定部54がバッテリ16の目標SOC値を推定すべく実行するメインルーチンの一例のフローチャートを示す。図4は、本実施例の車両制御装置10において用いられる一例のSOC配分要求レベル算出用マップを表した図を示す。図5は、本実施例の車両制御装置10において用いられる一例の目標SOC値算出用テーブルを表した図を示す。
本実施例において、ECU30の目標SOC推定部54は、図3に示すルーチンを、車両走行中に所定時間(例えば、10秒や1分など)ごとに繰り返し実行する。
目標SOC推定部54のSOC配分要求レベル算出部64は、自車両状態算出部60にて求められた自車両状態Vを取得すると共に(ステップ100)、走行環境算出部62にて求められた走行環境指数Pを取得する(ステップ110)。そして、SOC配分要求レベル算出部64は、図4に示す如きSOC配分要求レベル算出用マップを用いて、それらの取得した自車両状態V及び走行環境指数Pに基づいて、SOC配分要求レベルLを算出する(ステップ120)。
バッテリ16には、使用可能なSOC範囲が予め定められている。この使用可能なSOC範囲は、アイドリングストップ制御に必要な容量と充電制御に必要な容量とに配分されたものとなっており、上記のSOC配分要求レベルLは、このアイドリングストップ制御用容量と充電制御用容量との配分のレベルを指定するパラメータである。上記したSOC配分要求レベル算出用マップは、図4に示す如く、自車両状態Vと走行環境指数Pとの関係に対応するSOC配分要求レベルLをマッピングしたマップデータである。具体的には、自車両状態Vが高いほどSOC配分要求レベルLを高い値とすると共に、走行環境指数Pが高いほどSOC配分要求レベルLを高い値とするものである。尚、このSOC配分要求レベル算出用マップは、予め実験的に或いはシミュレーションに基づいて定められている。
上記ステップ120では、まず、上記のSOC配分要求レベル算出用マップをROMから読み出し、そのマップを参照して、自車両状態算出部60からの自車両状態Vと走行環境算出部62からの走行環境指数Pとに対応するSOC配分要求レベルLを算出する。このSOC配分要求レベル算出部64にて算出されたSOC配分要求レベルLは、目標SOC算出部66に供給される。
目標SOC算出部66は、SOC配分要求レベル算出部64にて求められたSOC配分要求レベルLを取得した後、図5に示す如き目標SOC値算出用テーブルを用いて、その取得したSOC配分要求レベルLに基づいて、バッテリ16の目標SOC値を算出する(ステップ130)。
上記した目標SOC値算出用テーブルは、図5に示す如く、SOC配分要求レベルLと目標SOC値との関係を表したものであって、SOC配分要求レベルLに応じて目標SOC値がリニアに変化するものである。尚、この目標SOC値算出用テーブルは、予め実験的に或いはシミュレーションに基づいて定められている。上記ステップ130では、この目標SOC値算出用テーブルを読み出し、そのテーブルを参照して、SOC配分要求レベル算出部64からのSOC配分要求レベルLに対応する目標SOC値を算出する。
図5に示す如く、直線Zで示される目標SOC値は、バッテリ16の使用可能なSOC範囲内に設定される値であり、その使用可能なSOC範囲をアイドリングストップ制御用容量と充電制御用容量とに配分したときの配分率を示す。すなわち、バッテリ16の使用可能なSOC範囲に対して、直線Zで示される目標SOC値を境界として、下側領域がアイドリングストップ制御用容量の領域に、かつ、上側領域が充電制御用容量の領域に、それぞれ設定される。目標SOC値は、使用可能なSOC範囲の下限値に対してアイドリングストップ制御用容量を加えた値に設定される。
充電制御用容量は、充電制御による燃料発電の抑制によって必要となる容量である。また、アイドリングストップ制御用容量は、今後のアイドリングストップ期間において使用されると予想される容量である。アイドリングストップ制御用容量は、予想される最大の大きさに定められている。アイドリングストップ制御用容量は、SOC配分要求レベルLが高いほど大きな値となる。
バッテリ16のSOCが直線Zで示される目標SOC値よりも上側に制御されたときは、そのSOCに対応する使用可能なSOC範囲内の残存容量がアイドリングストップ制御用容量を上回るので、アイドリングストップ制御を適切に実施できるが、その上回る分だけ余剰な容量が生じる。このため、上記した直線Zで示される目標SOC値は、今後アイドリングストップ制御を適切に実施でき、かつ、バッテリ16におけるSOC貯蔵のための燃料発電の発電量を最小にできるSOCを示していることとなる。
尚、目標SOC値は、上記の如く、SOC配分要求レベルLの上昇に従ってリニアに増大するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、目標SOC値は、SOC配分要求レベルLが所定値以下であるときはSOC配分要求レベルLの上昇に従ってリニアに増大し、SOC配分要求レベルLが所定値を上回るときは一定値を維持するように、定められていてもよい。この構成は、バッテリ16の使用可能なSOC範囲が比較的小さいときに有効である。また例えば、目標SOC値は、SOC配分要求レベルLの上昇に従って曲線的に増大するものであってもよい。
目標SOC推定部54の目標SOC算出部66は、上記の如く算出した目標SOC値を、フィードバック制御部58へ出力する(ステップ140)。すなわち、目標SOC算出部66で算出された目標SOC値は、フィードバック制御部58に供給される。フィードバック制御部58は、目標SOC推定部54からの目標SOC値とSOC算出部56からの現在SOC値との差分に基づいてバッテリ16のSOC値が目標SOC値に一致するように、オルタネータ14への電圧指示値を求め、オルタネータ14へ出力する。これにより、バッテリ16のSOC値は、目標SOC値に制御される。
現在SOC値は、バッテリ16の残存容量を示すものであるが、上記のSOCの制御により、現在SOC値が上記の使用可能なSOC範囲内の充電制御用容量の領域にあるとき、すなわち、バッテリ16の残存容量が上記の使用可能なSOC範囲内のアイドリングストップ制御用容量を上回るときは、充電制御が実施されて、燃料発電によるバッテリ16への充電は抑えられる。また、バッテリ16の残存容量が低下してアイドリングストップ制御用容量を下回ろうとするときは、燃料発電によってSOC値が目標SOC値に制御されるので、バッテリ16のSOCがアイドリングストップ制御用容量を大きく下回ることは回避される。
本実施例の車両制御装置10を搭載する車両18が発進後、少なくとも減速し始めるまでは、バッテリ16のSOC値は徐々に低下する。そして、車両18が減速し始めると、充電制御によってその減速による回生発電がなされるので、バッテリ16のSOC値は徐々に上昇する。また、アイドリングストップ制御の実行開始から実行終了までの期間(アイドリングストップ期間)は、エンジン12が停止されるので、補機28による電力消費によってバッテリ16のSOC値は徐々に低下する。仮にアイドリングストップ制御の実行期間中に現在SOC値が使用可能なSOC範囲の下限値を下回ると、アイドリングストップ制御の終了条件が成立したとして、エンジン12が再始動され、エンジン12の動力によりオルタネータ14が発電してその燃料発電によりバッテリ16のSOC値は上昇するが、この場合は燃料消費量が増大してしまう。
これに対して、本実施例の車両制御装置10においては、バッテリ16の残存容量が低下してアイドリングストップ制御用容量を下回った時点で、燃料発電によりバッテリ16のSOC値が増大される。このSOC値の増大は、今後のアイドリングストップ期間において使用されると予想される最大の電力量を考慮したものである。このため、アイドリングストップ期間においてバッテリ16のSOC値が低下したとしても、その現在SOC値が上記の使用可能なSOC範囲の下限値を下回ることは回避され、その結果として、アイドリングストップ期間の途中においてエンジン12が再始動されることは抑制される。
アイドリングストップ期間の途中においてSOC不足に起因してエンジン12が再始動される場合は、エンジン12の運転中に動力増大によってSOC増大が図られる場合に比べて、必要な燃料量が多くなる。すなわち、エンジン運転中における単位SOC(例えば、SOC1%)当たりの燃費効果は、エンジン再始動によるものに比べて優れている。従って、本実施例によれば、燃費を向上させることが可能である。
以下、図6及び図7を参照して、目標SOC推定部54における、走行環境算出部62での走行環境指数Pの算出について説明する。
図6は、本実施例の車両制御装置10においてECU30が目標SOC値を算出するのに必要な走行環境指数Pを算出すべく実行するサブルーチンの一例のフローチャートを示す。また、図7は、停車アイドリングストップ制御時と減速アイドリングストップ制御時とのエンジン停止タイミングの違いを表した図を示す。
本実施例のECU30の目標SOC推定部54(具体的には、走行環境算出部62)は、図6に示すルーチンを、車両走行中、特にアイドリングストップ制御(停車アイドリングストップ制御及び減速アイドリングストップ制御の何れも)が実行されていないタイミングで、所定時間(例えば、10秒や1分など)ごとに繰り返し実行する。
走行環境算出部62は、基準算出部70にて、所定期間中における車両18の停車時間の比率を表す基準走行環境指数P0を算出する(ステップ200)と共に、次回制御予測部72にて、次回、停車アイドリングストップ制御の開始条件及び減速アイドリングストップ制御の開始条件のうち何れの開始条件が成立するか否か、すなわち、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であるか或いは減速アイドリングストップ制御であるかを予測する(ステップ210)。
停車アイドリングストップ制御は、車両停車を開始条件の一つとする一方、減速アイドリングストップ制御は、所定の車両減速(例えば、車速が10km/hなどの所定速度未満になったこと)を開始条件の一つとする。このため、車速のみに着目し、他の開始条件がすべて成立する場合は、図7に示す如く、停車アイドリングストップ制御によるアイドリングストップ期間(エンジン停止時間)T1に比べて、減速アイドリングストップ制御によるアイドリングストップ期間(エンジン停止時間)T2は、所定期間ΔTだけ長くなる。アイドリングストップ期間が長くなれば、その長くなった分だけ、アイドリングストップ期間において使用されると予想される最大の電力量も増大する。
かかる事態が生じるにもかかわらず、目標SOC推定部54にて算出されるバッテリ16の目標SOC値が次回S&S制御に関係なく一律に設定されると、減速アイドリングストップ制御の実行期間の途中でバッテリ16が残存容量不足に至り易くなり、或いは、車両走行中にオルタネータ14が過剰に発電して停車アイドリングストップ制御の実行開始時にバッテリ16の残存容量が過剰に大きくなるおそれがある。例えば、走行環境算出部62にて算出される走行環境指数Pが、常に、基準算出部70にて算出される停車アイドリングストップ制御によって車両停車を引き起こす走行環境に基づく基準走行環境指数P0であると、減速アイドリングストップ制御の実行期間の途中でバッテリ16が残存容量不足に至り易くなる。
これに対して、本実施例において、走行環境算出部62は、基準算出部70にて、所定期間中における車両18の停車時間の比率を表す基準走行環境指数P0を算出し、かつ、次回制御予測部72にて、次回、停車アイドリングストップ制御の開始条件及び減速アイドリングストップ制御の開始条件のうち何れの条件が成立するか否かを予測した後、その成立すると予測される条件に応じて基準走行環境指数P0の補正を実施して、走行環境指数Pを算出する(ステップ220)。
具体的には、次回に停車アイドリングストップ制御の開始条件が成立すると予測したときは、基準走行環境指数P0を補正することなく、その基準走行環境指数P0に補正係数"1"を乗算して、走行環境指数Pを得る。一方、次回に減速アイドリングストップ制御の開始条件が成立すると予測したときは、基準走行環境指数P0に"1"を超える補正係数を乗算して、基準走行環境指数P0を高くなるように補正することで、走行環境指数Pを得る。
このように、本実施例においては、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であると予測されるときは、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であると予測されるときに比べて、走行環境指数Pを高くすることができる。SOC配分要求レベルLは、走行環境指数Pが高いほど高い値となる。また、目標SOC値は、SOC配分要求レベルLが高いほど大きな値となる。
従って、本実施例によれば、目標SOC推定部54の目標SOC算出部66にて算出されるバッテリ16の目標SOC値が、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であるときは停車アイドリングストップ制御であるときに比べて大きくなるように、走行環境指数Pの補正を行うことができる。このため、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であるときは、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であるときに比べて、目標SOC推定部54の目標SOC算出部66にて算出されるバッテリ16の目標SOC値を大きくすることができる。
かかる構成によれば、減速アイドリングストップ制御が実行開始された後、その実行期間の途中でバッテリ16がSOC不足に至り易くなるのを予防することができる。また、車両走行中にオルタネータ14が過剰に発電して停車アイドリングストップ制御の実行開始時にバッテリ16のSOCが過剰に大きくなるのを回避することができるので、オルタネータ14による燃料発電に伴う燃料消費量の無駄な増大を抑えることができる。従って、本実施例の車両制御装置10によれば、停車アイドリングストップ制御の実行開始時及び減速アイドリングストップ制御の実行開始時の双方でバッテリ16を過不足なく充電させておくことができる。
尚、上記の実施例においては、停車アイドリングストップ制御の少なくとも車両停車を含む開始条件が特許請求の範囲に記載した「第1開始条件」に、減速アイドリングストップ制御の少なくとも所定の車両減速を含む開始条件が特許請求の範囲に記載した「第2開始条件」に、目標SOC値が特許請求の範囲に記載した「目標充電状態」に、ECU30のSOC制御部52の目標SOC推定部54の目標SOC算出部66が特許請求の範囲に記載した「目標値算出部」に、SOC制御部52のフィードバック制御部58が特許請求の範囲に記載した「発電制御部」に、次回制御予測部72(具体的には、第1予測部72a、第2予測部72b、及び第3予測部72c)が特許請求の範囲に記載した「次回制御予測部」に、補正部74が特許請求の範囲に記載した「補正部」に、それぞれ相当している。
ところで、上記の実施例においては、次回制御予測部72にて、次回、停車アイドリングストップ制御の開始条件及び減速アイドリングストップ制御の開始条件のうち何れの条件が成立するかを予測するために、第1予測部72aによる車両外部情報と、第2予測部72bによる過去のアイドリングストップ制御の実行履歴と、第3予測部72cによる自車両状態と、を用いることとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも何れか一を用いることとすればよい。
また、上記の実施例においては、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であると予測されるとき、基準走行環境指数P0に"1"を超える補正係数を乗算して、走行環境指数Pを得ることとしている。この際、補正係数は、"1"を超える常に一定の値であってもよく、この一定の値は、停車アイドリングストップ制御の開始条件と減速アイドリングストップ制御の開始条件との違いを考慮して定められていればよく、減速アイドリングストップ制御の開始条件(例えば、車速に関する開始条件としての所定速度の大きさ)に応じて定められていてもよい。
また、上記の補正係数は、"1"を超える範囲で所定期間当たりの減速アイドリングストップの実行割合(例えば実施時間)に応じて増減されるものとしてもよく、例えば、その実施時間が長いほど大きな値としてもよい。また、上記の補正係数は、"1"を超える範囲で、減速アイドリングストップ制御の開始条件が成立する可能性(確率)に応じて可変されることとしてもよい。具体的には、減速アイドリングストップ制御の開始条件が成立する可能性が高いほど、"1"に対して大きくされることとしてもよい。
また、上記の実施例においては、車両停車を引き起こして停車アイドリングストップ制御を実行開始し得る走行環境を指数で表した基準走行環境指数P0を算出したうえで、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であると予測される場合は、その基準走行環境指数P0を補正することなくそのまま走行環境指数Pとして設定する一方、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であると予測される場合に、その基準走行環境指数P0を高くなるように補正した値を走行環境指数Pとして設定することとしている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、逆に、車両減速を引き起こして減速アイドリングストップ制御を実行開始し得る走行環境を指数で表した基準走行環境指数P0を算出したうえで、次回S&S制御が減速アイドリングストップ制御であると予測される場合は、その基準走行環境指数P0を補正することなくそのまま走行環境指数Pとして設定する一方、次回S&S制御が停車アイドリングストップ制御であると予測される場合に、その基準走行環境指数P0を低くなるように補正した値を走行環境指数Pとして設定することとしてもよい。
また、上記の実施例においては、車両停車を引き起こして停車アイドリングストップ制御を実行開始し得る走行環境を指数で表した基準走行環境指数P0を、次回S&S制御に応じて補正して走行環境指数Pを得るものとし、その走行環境指数Pに基づいてSOC配分要求レベルLを算出して目標SOC値を算出することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、上記の基準走行環境指数P0に基づいてSOC配分要求レベルLの基準値ひいては目標SOC値の基準値を算出したうえで、そのSOC配分要求レベルLの基準値又は目標SOC値の基準値を次回S&S制御に応じて補正して、最終的な目標SOC値を算出することとしてもよい。