JP6269080B2 - 磁気軸受装置および真空ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、磁気軸受装置および真空ポンプに関する。
ターボ分子ポンプなどの磁気軸受搭載装置では、回転体、すなわち、ロータをステータと非接触で所定の目標位置に浮上維持すべく、ロータの浮上変位と目標位置との偏差量に基づいてアクチュエータとなる電磁石の磁気吸引力、すなわち、励磁電流をリアルタイムでフィードバック制御している。
ロータ浮上変位の検出では、専用センサにて検出するタイプが主流であった。近年、コンパクト化、低価格化、信頼性向上のために、専用センサを省略して、浮上制御力を発生する電磁石に従来のアクチュエータ機能だけでなく、センシング機能も兼用させたセンサレスタイプ、すなわち、セルフセンシングタイプのものが実用化されつつある。
上述のどちらのタイプであっても、センシング機能としてインダクタンス方式が採用されている。センサレスタイプのものにおいて、インダクタンス方式は、電磁石コイル(以下、単にコイルとも呼ぶ)に高周波搬送波、すなわち、センサキャリアを印加し、浮上ギャップ、すなわち、電磁石コイルとシャフト間のギャップの変化によるインダクタンス変化でセンサキャリアを振幅変調して、それを復調することで浮上ギャップ(変位)信号を得る。復調処理にあたっては、デジタル技術を適用してADコンバータから変調波信号を同期サンプリングして取り込み、遅延が生じることになる平滑処理を不要にしたダイレクト方式が提案されている(例えば、特許文献1)。
一般的にターボ分子ポンプにおいては、5軸ある制御軸、すなわち、上X軸、上Y軸、下X軸、下Y軸、スラストZ軸のそれぞれに、対向する電磁石、すなわち、P側電磁石、M側電磁石が設けられている。それぞれの電磁石のコイルに流れる電流は、機能別で成分を分けると、回転体ユニットRに作用する重力との釣り合い力、浮上力の直線性改善、変位センシングのためのバイアス用として用いられる直流のバイアス電流ibと、回転体を所定位置に浮上させるための制御電流icと、位置検出用のセンサキャリア成分の電流isとから構成されている。
上述した電磁石のコイルに流れる電流成分から変位信号を得るにあたって、2つの誤差が生じることが知られている。一つは、復調処理前の変調波信号に加算的に残留している制御電流成分icが復調の過程で変位信号として混入してしまう誤差(以下、第1誤差と呼ぶ)である。もう一つは、電磁石の鉄心、すなわち、電磁石コアの磁気特性の非線形性から生じる変位信号の誤差(以下、第2誤差と呼ぶ)である。第2誤差は、電磁石コイルに流れる電流が大きくなると顕著になる。なお、以下では、第1誤差を取り除く課題を第1課題と呼び、第2誤差を取り除く課題を第2課題と呼ぶ。また、誤差を有する変位信号から第1誤差および第2誤差を除去した信号を、特に真の推定変位信号と呼ぶ。
特許文献1においては、磁気軸受装置における対向して対となる2つ電磁石の制御電流icの大きさが等しく符号が逆になるようにすることで、第1課題を解決している。しかし、この場合、制御電流icの変化範囲に|ic| < ib程度という狭い制限を設けなければならない。この制限があることで、電磁石のコイルに流れる総電流は小さく設定される。すなわち、特許文献1では電磁石のコイルに大電流が流れることを想定していないので、第2誤差は顕著にならず、第2課題は問題とならない。
真空チェンバへ取り付けられるターボ分子ポンプは、縦向き、すなわち、回転体の回転軸の軸心が鉛直方向に延在して取り付けられることだけでなく、横向き、すなわち、回転体の回転軸の軸心が鉛直方向に直交する方向に延在して取り付けられることもある。横向きの場合、具体的には、対向している電磁石コイルのうち、回転体よりも上方に位置する一方のみに大きな制御電流icを流す必要がある。このように、ターボ分子ポンプの磁気軸受装置は、ターボ分子ポンプの取り付けられる向きに応じた制御をしなければならない。
また、地震など外部から振動が加えられた場合、回転体は過渡的に所定浮上位置から大きく変位するが、それに伴い所定浮上位置へ戻すべく、対向している電磁石コイルのうち、回転体が遠ざかった一方のみに大振幅の制御電流icを流す必要がある。
以上のように、対向している電磁石コイルのうちの一方にのみ大電流を流さなければならない場合においては、特許文献1に記載の発明では、第1課題も第2課題も解決できない。
特開2001−177919号公報
上述した非対称性の電流が印加される場合において、第1課題については、特願2013−021681号に記載の発明で解決できる。しかしながら、第2課題については解決されない。
すなわち、対向している電磁石コイルのうちの一方にのみ大電流を流す場合においても、電磁石コアの磁気特性の非線形性から生じる変位信号の誤差を取り除く必要がある。
(1)本発明の好ましい実施形態による磁気軸受装置は、回転体と、回転体を浮上制御するために複数の制御軸のそれぞれに設けられ、制御軸のそれぞれに回転体を介して対向配置された第1電磁石および第2電磁石と、第1電磁石および第2電磁石のそれぞれに印加される電圧をPWM制御し、回転体の浮上位置を検知するためのセンサキャリア信号が重畳された電磁石電流を供給する第1電磁石および第2電磁石のそれぞれに設けられた励磁アンプと、励磁アンプのそれぞれに設けられ、電磁石電流を検出する電流センサと、電磁石電流に基づいて推定変位信号を取得し、推定変位信号に基づいて励磁アンプをPWM制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の制御軸の各制御軸における推定変位信号を得るにあたり、第1電磁石に流れる電磁石電流の検出信号(以下、第1電流信号)、第2電磁石に流れる電磁石電流の検出信号(以下、第2電流信号)、および、第1電流信号と第2電流信号とを足し合わせて得られる和信号についてそれぞれセンサキャリア信号に同期してADサンプリングを行い、センサキャリア信号に同期してADサンプリングされた和信号により復調変位信号を生成し、第1電磁石の磁気特性の非線形性に起因する復調変位信号への影響を低減するための第1補正信号を、ADサンプリング後の第1電流信号および第1電磁石の磁気特性の非線形性に基づいて演算処理で生成し、第2電磁石の磁気特性の非線形性に起因する復調変位信号への影響を低減するための第2補正信号を、ADサンプリング後の第2電流信号および第2電磁石の磁気特性の非線形性に基づいて演算処理で生成し、第1補正信号および第2補正信号の差分としての第3補正信号を演算処理で生成し、復調変位信号から第3補正信号を減算することで、推定変位信号を得ることを特徴とする。
(2)さらに好ましい実施形態では、前記和信号は、前記センサキャリア信号の周波数をfcとしたときに、fc=(n+1/2)・fs(ただし、nは0以上の整数)を満たすサンプリング周波数fsで、かつ、前記センサキャリア信号の最大ピーク位置近傍となるタイミングおよび最小ピーク位置近傍となるタイミングでADサンプリングされ、前記最大ピーク位置近傍でサンプリングされた和信号のデータ値をd1、前記最小ピーク位置近傍でサンプリングされた和信号のデータ値をd2としたときに、d3=(d1−d2)/2により算出される値d3を前記復調変位信号とする
(3)さらに好ましい実施形態では、回転体は、可動境界を有し、第1補正信号は、第1電流信号からなる関数(以下、第1関数)より成り、第2補正信号は、第2電流信号からなる関数(以下、第2関数)より成り、第1関数に用いられる係数が最適化される調整(以下、第1係数調整)が実施される際は、回転体を第1電磁石側の回転体の可動境界まで移動させ、所定のバイアス電流値で回転体を磁気的に吸引し固定した上で、第1係数調整が実施され、第2関数に用いられる係数が最適化される調整(以下、第2係数調整)が実施される際は、回転体を第2電磁石側の回転体の可動境界まで移動させ、所定のバイアス電流値で回転体を磁気的に吸引し固定した上で、第2係数調整が実施されることを特徴とする。
(4)さらに好ましい実施形態では、第1係数調整は、予め定めた周波数を有する印加信号が少なくとも第1電磁石側の電磁石電流に重畳された上で、予め定めた周波数を有する推定変位信号の振幅が所定レベル以下になるように実施され、第2係数調整は、予め定めた周波数を有する印加信号が少なくとも第2電磁石側の前記電磁石電流に重畳された上で、予め定めた周波数を有する推定変位信号の振幅が所定レベル以下になるように実施されることを特徴とする。
(5)さらに好ましい実施形態では、所定のバイアス電流値は、複数設けられ、第1係数調整および第2係数調整は、複数設けられた所定のバイアス電流値の各々において実施されることを特徴とする。
(6)さらに好ましい実施形態では、第1係数調整及び第2係数調整は、所定のバイアス電流値において複数回実施されることを特徴とする。
(7)さらに好ましい実施形態では、前記第3補正信号は、前記第1補正信号と前記第2補正信号とを所定比率で差分演算することにより生成され、前記所定比率は、前記回転体が時間的に位置変化しないように磁気浮上制御された状態において、第1電磁石に流れる電磁石電流に前記予め定めた周波数を有する印加信号を重畳した場合の磁気吸引力と、第2電磁石に流れる電磁石電流に前記予め定めた周波数を有する印加信号を重畳した場合の磁気吸引力とが相殺されるように設定され
(8)本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、排気機能部が形成されたポンプロータと、ポンプロータを回転駆動するモータと、ポンプロータの回転体を磁気浮上支持する、請求項1〜のいずれか一項に記載の磁気軸受装置と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、対向している電磁石コイルのうちの一方にのみ大電流を流す場合においても、回転体の変位信号に関して良好なS/N比を維持することができる。さらには、ポンプケーシングの振動を低減でき、回転体の浮上制御性能を向上させることができる。
真空ポンプのポンプユニット1の概略構成を示す図。 コントロールユニットの概略構成を示すブロック図。 磁気軸受に備えられた制御軸1軸分の磁気軸受電磁石45を示す模式図。 各磁気軸受電磁石45に設けられている励磁アンプ43の構成を示す図。 励磁アンプ43による電磁石コイルへの印加電圧および電磁石コイルに流れる電流を示す図。 ポンプユニット1が横向きに配置された時のシャフト5と電磁石45を示した図。 電流リミット回路408p、408mにおける電磁石コイル455に流れる電流の制御信号依存性を示す図。 制御部44における磁気軸受制御の一軸分の機能ブロック図。 (a)電磁石コアの積層珪素鋼板のBHカーブと、(b)比透磁率の逆数量を示した図。 調整時の回転体ユニットRのシャフト5の位置を示した図。 調整時の補正処理演算部415の動作を示した図。 通常制御時の補正処理演算部415の動作を示した図。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本実施の形態の真空ポンプの概略構成を説明する図であり、磁気浮上式ターボ分子ポンプのポンプユニット1の断面の構成を示す。ターボ分子ポンプは、図1に示すポンプユニット1と、ポンプユニット1を駆動するコントロールユニット(不図示)とを備えている。
ポンプユニット1は、回転翼4aと固定翼62とで構成されるターボポンプ部と、円筒部4bとネジステータ64とで構成されるドラッグポンプ部、すなわち、ネジ溝ポンプとを有している。ここではネジステータ64側にネジ溝が形成されているが、円筒部4b側にネジ溝を形成しても構わない。回転側排気機能部である回転翼4aおよび円筒部4bはポンプロータ4に形成されている。ポンプロータ4とシャフト5とロータディスク55は、互いに締結されて回転体ユニットRを構成する。
複数段の固定翼62は、軸方向に対して回転翼4aと交互に配置されている。各固定翼62は、スペーサリング63を介してベース60上に載置される。ポンプケーシング61の固定フランジ61cをボルトによりベース60に固定すると、積層されたスペーサリング63がベース60とポンプケーシング61の係止部61bとの間に挟持され、固定翼62が位置決めされる。
シャフト5は、ベース60に設けられた磁気軸受67,68,69によって非接触支持される。後述するように磁気軸受67,68,69は、センサキャリア成分が重畳された電磁石電流に基づいて浮上位置の変化を推定するセルフセンシングの磁気軸受である。なお、軸方向の磁気軸受69を構成する電磁石は、シャフト5の下端に設けられたロータディスク55を軸方向に挟むように配置されている。シャフト5はモータ42により回転駆動される。
モータ42は同期モータであり、本実施の形態では、DCブラシレスモータが用いられている。モータ42は、ベース60に配置されるモータステータ42aと、シャフト5に設けられるモータロータ42bとを有している。モータロータ42bには、永久磁石が設けられている。磁気軸受が作動していない時には、シャフト5は非常用のタッチダウンベアリング66a,66bによって支持される。
ベース60の排気口60aには排気ポート65が設けられ、この排気ポート65にバックポンプが接続される。回転体ユニットRを磁気浮上させつつモータ42により高速回転駆動することにより、吸気口61a側の気体分子は排気ポート65側へと排気される。
図2は、コントロールユニットの概略構成を示すブロック図である。外部からのAC入力は、コントロールユニットに設けられたDC電源40によって交流から直流に変換される。DC電源40は、インバータ41用の電源、励磁アンプ43用の電源、制御部44用の電源をそれぞれ生成する。
モータ42に電流を供給するインバータ41には、複数のスイッチング素子が備えられている。これらのスイッチング素子のオンオフを制御部44によって制御することにより
、モータ42が駆動される。
図2に示した10個の磁気軸受電磁石45(以下、電磁石45とも呼ぶ)は、各磁気軸受67,68,69に設けられている磁気軸受電磁石を示している。図1に示したターボ分子ポンプに用いられている磁気軸受は5軸制御型磁気軸受であって、径方向の磁気軸受67,68は各々2軸の磁気軸受であって、それぞれ2対、すなわち、4個の磁気軸受電磁石45を備えている。また、軸方向の磁気軸受69は1軸の磁気軸受であって、1対、すなわち、2個の磁気軸受電磁石45を備えている。磁気軸受電磁石45に電流を供給する励磁アンプ43は10個の磁気軸受電磁石45のそれぞれに設けられており、コントロールユニットには合計で10個の励磁アンプ43が備えられている。
モータ42の駆動および磁気軸受の駆動を制御する制御部44は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のデジタル演算器とその周辺回路より構成される。制御部44は、インバータ41に対しては、インバータ41に設けられている複数のスイッチング素子をオンオフ制御するためのPWM制御信号441を出力し、各励磁アンプ43に対しては、各励磁アンプ43に含まれるスイッチング素子をオンオフ制御するためのPWMゲート駆動信号443をそれぞれ出力する。また、制御部44には、後述するようにモータ42に関する相電圧および相電流に関する信号442や、磁気軸受に関する電磁石電流信号444が入力される。
図3は、磁気軸受67,68に備えられた制御軸1軸分の磁気軸受電磁石45を示す模式図である。磁気軸受電磁石45は、電磁石コア450に電磁石コイル455が巻回されることにより構成される。2個の磁気軸受電磁石45が浮上中心軸、すなわち、浮上目標位置Jを挟むように対向配置されている。上述したように、各磁気軸受電磁石45に対して、励磁アンプ43がそれぞれ設けられている。図3では、図示右側のP側の磁気軸受電磁石45に近づくような変位dを正とする。変位が負側の磁気軸受電磁石45をM側の磁気軸受電磁石45と呼ぶことにする。
(電磁石電流Ip,Im、および和信号Ip+Imの説明)
本実施の形態における5軸制御型磁気軸受では、各磁気軸受電磁石45の電磁石電流には、機能別で成分に分けると、バイアス電流ib、浮上制御電流icおよび位置検出用のセンサキャリア成分の電流isが含まれている。P側の磁気軸受電磁石45を流れる電流をIp、M側の磁気軸受電磁石45を流れる電流をImとすると、次式(1)のように表される。ispはP側のセンサキャリア成分で、ismはM側のセンサキャリア成分である。ただし、ispとismとは振幅が逆符号になっている。
Ip=ib+ic+isp
Im=ib−ic+ism …(1)
バイアス電流ibは直流あるいは極めて低い周波数帯であり、回転体ユニットRに作用する重力との釣り合い力、浮上力の直線性改善、変位センシングのためのバイアス用として用いられる。
浮上制御電流icは、シャフト5、すなわち、回転体ユニットRを所定位置に浮上させる制御電流である。浮上制御電流icは浮上位置の変動に応じて変化するので、その周波数帯は直流から1kHz程度となる。
センサキャリア成分isは、シャフト5の浮上位置変位、すなわち、回転体ユニットRの浮上位置変位の検出に用いられる電流成分である。センサキャリア成分isには、浮上制御電流への影響を極力抑えるべく、通常は数kHz〜数十kHz(1kHz≪fc≪100kHz)の周波数帯における周波数が使用される。
一般に、産業用途の磁気軸受では、励磁アンプ43として電圧制御型のPWMアンプが使用される。すなわち、磁気軸受電磁石45の電磁石コイルに印加される電圧を制御することで、電磁石電流の制御を行っている。
電磁石コイルに印加される電圧Vp、Vmの内の、センサキャリア成分vsp,vsmはそれぞれ逆位相で印加されるので、次式(2)のように表される。ただし、ωc=2πfcであって、fcはセンサキャリア周波数である。また、tは時間、vは一定振幅値である。
vsp=−v×sin(ωc×t)
vsm=v×sin(ωc×t) …(2)
ところで、磁気軸受電磁石45とシャフト5との間のギャップ(図3参照)と電磁石コイルのインダクタンスとは反比例するので、P側電磁石コイルおよびM側電磁石コイルのインダクタンスLp,Lmに関して、次式(3)が成り立つ。なお、Dはシャフト5が浮上中心軸、すなわち、浮上目標位置にある場合のギャップで、dは浮上目標位置からの変位である。Aは定数である。
1/Lp=A×(D−d)
1/Lm=A×(D+d) …(3)
なお、本発明では、第2課題を解決するために、後述する式(3a)のように式(3)を修正する。
センサキャリア成分に関して、電磁石コイルに印加される電圧と電磁石コイルを流れる電流との間には次式(4)に示すような関係がある。ただし、コイル抵抗は無視した。
vsp=Lp×d(isp)/dt
vsm=Lm×d(ism)/dt …(4)
上述した式(2),(3),(4)から、電磁石コイルを流れる電流のセンサキャリア成分isp,ismは次式(5)のように表される。なお、B=v×A/ωcである。このように、センサキャリア成分isp,ismは、変位dの時間変化により振幅変調される。一方、バイアス電流ib、浮上制御電流icは周波数が低いため、変位変動の影響は無視できる。
isp=−v×sin(ωc×t−π/2)/(ωc×Lp)
=−B(D−d)×sin(ωc×t−π/2)
ism=v×sin(ωc×t−π/2)/(ωc×Lm)
=B(D+d)×sin(ωc×t−π/2) …(5)
なお、本発明では、第2課題を解決するために、後述する式(5a)のように式(5)を修正する。
以上の結果をまとめると、センサキャリア成分isp,ismを検波すれば、変位dの情報が得られる。P側およびM側の磁気軸受電磁石45を流れるトータルの電流Ip,Imは、次式(6)のように表される。
Ip=ib+ic−B(D−d)×sin(ωc×t−π/2)
Im=ib−ic+B(D+d)×sin(ωc×t−π/2) …(6)
なお、本発明では、第2課題を解決するために、後述する式(6b)のように式(6)を修正する。
(二象限励磁アンプの説明)
図4は、各磁気軸受電磁石45に対応して設けられている励磁アンプ43の構成を示す図である。励磁アンプ43は、直列接続されたスイッチング素子とダイオードとを直列接続したものを、さらに2つ並列接続したものである。磁気軸受電磁石45は、スイッチン
グ素子SW10およびダイオードD10の中間と、スイッチング素子SW11およびダイオードD11の中間との間に接続される。
スイッチング素子SW10,SW11には、制御部44からゲート信号(ゲート駆動電圧)として、バイアス電流ib、浮上制御電流icおよびセンサキャリア成分isを制御するためのPWM制御信号(図2のPWMゲート駆動信号443)が入力される。スイッチング素子SW10,SW11は同時にオンオフされ、両方ともオンの場合には実線矢印で示すように電流(上述した電流Ip,Im)が流れ、両方ともオフの場合には破線矢印で示すように電流(上述した電流Ip,Im)が流れる。オン時の電流値は電流センサ101Aにより計測され、オフ時の電流値は電流センサ101Bにより計測される。電流センサ101A,101Bには例えばシャント抵抗が用いられ、シャント抵抗の電圧を電流検出信号として用いる。電流検出信号は制御部44に入力される。
図5は、励磁アンプ43による電磁石コイルへの印加電圧(ラインL1)および電磁石コイルに流れる電流(ラインL2)の一例を示す図である。2つのスイッチング素子SW10,SW11をオンすると、電圧が電磁石コイルに印加されて電流が増加する。また、スイッチング素子SW10,SW11をオフすると、ダイオードD10,D11の導通により電磁石コイルに逆電圧が印加され電流が減少する。そのため、電流ラインL2は、PWMキャリア1周期における電流の増加および減少と、より周期の長い正弦波的な変化との両方を示している。この正弦波的な変化が、センサキャリア成分の変化に相当している。
ここで、以下の理由から、第1課題および第2課題を考える上で、上述した式(6)を後述の式(6a)に変形する。なお、後述するように、式(6)は、第2誤差を除去するための補正信号を導くために、式(6b)にも変形される。図6は、ポンプユニット1が、横向き、すなわち、回転体ユニットRの回転軸が重力方向と直角に配置された時における回転体ユニットRのシャフト5と磁気軸受67の電磁石45を一例として示している。なお、図6では磁気軸受67の電磁石45について説明したが、磁気軸受68の電磁石45についても同様である。ここで、磁気軸受67の電磁石45の符号を付し直す。図示右上のM側の電磁石45を電磁石451mとし、電磁石451mと対向する図示左下のP側の電磁石45を電磁石451pとする。同様に、図示左上のM側の電磁石45を電磁石452mとし、電磁石452mと対向する図示右下のP側の電磁石45を電磁石452pとする。
電磁石451mと電磁石452mは、回転体ユニットRのシャフト5よりも上方に位置する。そのため、シャフト5にかかる重力に対抗するために、すなわち、シャフト5を磁気吸引により支えるために、電磁石451mと電磁石452mの電磁石コイル455には、大電流が流れる。一方、電磁石451pと電磁石452pは、シャフト5よりも下方に位置する。そのため、シャフト5を支える必要はないが、後述するように、電磁石451pと電磁石452pの電磁石コイル455には限界直流電流i_limitと呼ばれる小電流が流れる。
図7は、図8に示す電流リミット回路408p、408mにおける電磁石コイル455に流れる電流の制御信号依存性を示している。図7(a)はP側の電磁石コイル455に流れる電流に関する図で、図7(b)はM側の電磁石コイル455に流れる電流に関する図である。上述の図6に示したように、これらの電流は、ポンプユニット1が横向きに配置された場合、図7の図示右方または図示左方に大きくずれる。図7では、図6に示した場合に合わせた図となっている。図7に示す通り、大電流を流すM側の電磁石コイル455には、バイアス電流ibの数倍という大きな直流制御電流icを含んだ大電流が流れる。一方、対向するP側の電磁石コイル455には、バイアス電流ibよりも小さな直流電流が流
れており、センサキャリアを重畳するために必要な限界直流電流i_limitに到達している状態となる。
これまでポンプユニット1が横向きに配置された場合について述べたが、その他にも対向している電磁石コイル455のうちの一方にのみ大電流を流す場合はある。例えば、地震など外部から振動が加えられた場合である。この場合、回転体は過渡的に所定浮上位置から大きく変位するが、それに伴い所定浮上位置へ戻すべく、対向している電磁石コイル455のうち、回転体が遠ざかった一方のみに大振幅の制御電流icを流す必要がある。地震などの外部からの振動は様々な方向で生じうるため、この場合は、磁気軸受67,68,69のいずれにおいても、対向している電磁石コイル455のうちの一方にのみ大電流を流す可能性がある。
以上より、本発明は、各軸の磁気軸受において、対向している電磁石コイル455のうちの一方にのみ大電流を流すことも想定している。
これにより、以下の2つのことを考慮しなければならなくなる。1つ目として、P側の電磁石コイル455とM側の電磁石コイル455で制御電流icの大きさが異なるものになる。そのため、P側の電磁石コイル455、M側の電磁石コイル455に流れる制御電流を各々icp,icmと表記する必要がある。なお、後述するようにicpとicmがキャンセルされないことが第1誤差の原因である。上述したが、第1誤差を除去する課題を第1課題と呼ぶ。
2つ目として、電磁石コイル455に大電流が流れると、後述するように、電磁石コア450の磁気特性の非線形性が顕著になる。これが主な原因となって、P側、M側の制御電流成分がセンサキャリアに変調された量であるNp(icp)およびNm(icm)が回転体の変位信号に誤差として含まれる。これが第2誤差の原因である。上述したが、第2誤差を除去する課題を第2課題と呼ぶ。
以上より、第1課題および第2課題を考える上で、式(6)を以下の式(6a)に変形する。
Ip = ib + icp - B{(D-d) + Np(icp)}×sin(ωc×t - π/2)
Im = ib - icm + B{(D+d) + Nm(icm)}×sin(ωc×t - π/2) ・・・(6a)
Ip,Imは式(6a)のように表すことができるので、後述する和信号(Ip+Im)は、以下の式(7)で表される。
Ip + Im = 2×ib + △icpm + B{2d - Np(icp) + Nm(icm)}×sin(ωc×t - π/2)
・・・(7)
ここで、△icpm = icp - icm とする。
式(7)において、第1誤差の原因となる△icpmが現れる。また、第2誤差である[- Np(icp) + Nm(icm)]が現れる。式(7)に示される和信号は、復調前にセンサキャリア周波数fcを中心としたBPFなどのフィルタを通過することで△icpmは減衰される。そのため、減衰後の△icpmをR(△icpm)とする。これが第1誤差である。
以上より、復調後の変位信号は、R(△icpm)+ B{2d - Np(icp) + Nm(icm)}となり、真の変位である2Bdに、R(△icpm)+ [- Np(icp) + Nm(icm)]という誤差が含まれる。
本発明の前提として、特願2013−021681号に記載の発明を用いて、まず第1誤差R(△icpm)を除去する。第1誤差の除去については、図8に示すADコンバータ400と信号処理演算部406の説明箇所で簡単に述べる。詳細は、特願2013−021681号に説明されているので、ここでは詳細な説明は省略する。また、本発明である、第2誤差である[- Np(icp) + Nm(icm)]の除去については、後述する。
図8は、制御部44における磁気軸受制御の機能ブロック図であって、制御軸5軸の内の1軸分について示したものである。ここでは、通常制御時の磁気軸受制御について説明する。調整時における磁気軸受制御については、後述する。
上述したように、制御軸1軸分にはP側およびM側の一対の磁気軸受電磁石45が設けられており、各磁気軸受電磁石45に対して励磁アンプ43がそれぞれ設けられている。10個の励磁アンプ43からはそれぞれ電流検出信号が出力される。
制御部44のゲート信号生成部401pは、P側の励磁アンプ43のスイッチング素子を駆動するためのゲート信号を生成する。同様に、ゲート信号生成部401mは、M側の励磁アンプ43のスイッチング素子を駆動するためのゲート信号を生成する。ゲート信号に基づいて各励磁アンプ43のスイッチング素子がオンオフ制御されると、磁気軸受電磁石45の電磁石コイルに電圧が印加され、上述した電流Ip、Imが流れる。P側の励磁アンプ43の電流センサ101A,101Bからは、P側の磁気軸受電磁石45に流れる電流Ipの電流検出信号(電流と同様のIpで示す)が出力される。一方、M側の励磁アンプ43の電流センサ101A,101Bからは、M側の磁気軸受電磁石45に流れる電流Imの電流検出信号(電流と同様のImで示す)が出力される。
電流センサ101A,101Bから出力された電流検出信号Ip,Imは、それぞれローパスフィルタ403,404を介してADコンバータ400に入力される。また、ADコンバータ400には、ローパスフィルタ403,404を通過した電流検出信号Ip,Imの和信号(Ip+Im)が、センサキャリア周波数fcを中心周波数とするバンドパスフィルタ405を介して入力される。なお、これらの信号Ip,Im,(Ip+Im)は、図2の電磁石電流信号444に対応している。
電流検出信号Ip,Imをローパスフィルタ403,404に通すと、高周波数のノイズ成分が除去される。また、和信号(Ip+Im)をバンドパスフィルタ405に通すと、和信号(Ip+Im)に含まれているバイアス成分(2×ib)が除去される。ちなみに、405はバイアス成分を除去する点では、バンドパスフィルタの代わりにハイパスフィルタで構成しても良い。
ADコンバータ400は、電流検出信号Ip,Imおよび和信号(Ip+Im)をサンプリング周波数fsで取り込む。ここで、サンプリング周波数fsと、センサキャリア周波数fcには、
fc = (n + 1/2) × fs ・・・(8)
の関係がある。ただし、nは、0以上の整数である。
以上の式(8)に基づいて、ADコンバータ400は、最大ピーク位置近傍のデータ値d1と最小ピーク位置近傍のデータ値d2をサンプリングして取り込む。ADコンバータ400でサンプリングされた和信号(Ip+Im)は、信号処理演算部406に入力される。信号処理演算部406は、サンプリングデータに基づいてシャフト5の変位情報を演算する。
信号処理演算部406では、ADコンバータ400のサンプリングにより取り込まれた最大ピーク位置近傍のデータ値d1と最小ピーク位置近傍のデータ値d2とに基づいて、復調演算出力として以下の式(9)を演算する。
d3 = (d1 - d2)/2 ・・・(9)
ただし、出力タイミングが最大ピークタイミングの場合は、1サンプリング前の直前のデータ値d1を適用し、最小ピークタイミングの場合は、1サンプリング前の直前のデータ値d2を適用する。以上の式(9)に示す演算で、センサキャリアよりも低い制御電流成分は、P側、M側で大きさが非対称であってもキャンセルされる。これにより第1誤差
であるR(△icpm)を除去できる。これは、特願2013−021681号に記載されているとおりである。
ADコンバータ400でサンプリングされた電流検出信号Ip,Imは、それぞれ対応する信号処理演算部409p,409mに入力される。信号処理演算部409p,409mは、サンプリングデータに基づいてセンサキャリア成分isを除去して、浮上制御力へ寄与する電流成分であるバイアス電流ibと浮上制御電流icに関する情報のみを演算出力する。
信号処理演算部409pの演算結果は、アンプ制御器410pを通した後に、差分器420pにて電流リミット回路408pからの出力に対して減算処理される。さらに差分器421pにてこの減算処理結果に対してセンサキャリア生成回路411からのセンサキャリア成分(v×sin(ωc×t))が減算され、その減算結果に基づいてPWM制御信号がPWM演算部412pにおいて生成される。ゲート信号生成部401pは、PWM演算部412pで生成されたPWM制御信号に基づいてゲート駆動電圧、すなわち、ゲート信号を生成する。なお、差分器421pとPWM演算部412pとの間には加算器422pが設けられているが、後述する加振器417pによる加振を行うとき以外は信号を素通りさせる働きしか持たない。
また、信号処理演算部409mの演算結果は、アンプ制御器410mを通した後に、差分器420mにて電流リミット回路408mからの出力に対して減算処理される。さらに加算器421mにて、この減算処理結果に対してセンサキャリア生成回路411からのセンサキャリア成分(v×sin(ωc×t))が加算され、その加算結果に基づいてPWM制御信号がPWM演算部412mにおいて生成される。ゲート信号生成部401mは、PWM演算部412mで生成されたPWM制御信号に基づいてゲート駆動電圧を生成する。なお、加算器421mとPWM演算部412mとの間には加算器422mが設けられているが、後述する加振器417mによる加振を行うとき以外は信号を素通りさせる働きしか持たない。
信号処理演算部406、409p、および、409mの演算結果は、それぞれ補正処理演算部415に入力される。補正処理演算部415では、信号Ip、信号Imを用いて、第2誤差を除去するための補正信号を生成する。さらに、補正処理演算部415では、信号Ip+Imから得られる変位信号から、上述の第2誤差を除去するための補正信号を減算する演算を行う。これによって、信号Ip+Imから得られる変位信号に含まれる第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]を除去し、真の推定変位信号を出力することができる。なお、補正処理演算部415が行う演算に関しては、後述する第2誤差の除去の説明箇所で詳細に述べる。
浮上制御器407では、補正処理演算部415が出力した真の推定変位信号に基づいて比例制御、積分制御および微分制御等により浮上制御電流設定を生成する。P側の制御に関しては、差分器419pにてバイアス電流設定量から浮上制御電流設定を減算したものが用いられ、M側の制御に関しては、差分器419mにてバイアス電流設定量に浮上制御電流設定を加算したものが用いられる。
スイッチ418p、スイッチ418mは、図に示すように通常はオンの状態になっている。しかし、後述する調整のうち粗調の時には、浮上制御を遮断するためにオフにする。
さらに、ポンプユニット1が横向きに配置された場合やポンプに過大な外乱等が加わってシャフト5が大きく変位した場合などに、対向する磁気軸受電磁石45の一方、例えばP側の励磁電流が大きくなり、他方であるM側の励磁電流がゼロになって、センサキャリア成分電圧が片側だけ印加されるようなことが生じないように、電流リミット回路408p,408mがそれぞれ設けられている。電流リミット回路408p,408mを設けた
ことにより、磁気軸受電磁石45には常にセンサキャリア電圧が印加されることになる。
(第2誤差の除去)
ここでは、以下の順番で第2誤差の除去について説明する。
・第2誤差の原因
・調整
・補正信号による第2誤差の除去
<第2誤差の原因>
図9(a)は、電磁石コア450を構成する積層珪素鋼板のBHカーブであり、このBHカーブの接線の傾きが透磁率μである。ここで、μ=μr×μ0 である。μrは比透磁率を表す。μ0は真空の透磁率で一定値である。積層珪素鋼板のBHカーブは、磁界Hが小さい領域では直線で近似でき、かつ、傾きが大きい。しかし、磁界Hが大きくなるとその傾きが小さくなる。
図9(b)は、比透磁率μrの逆数量である1/μrに関する電磁石コイル450に流れる励磁電流Iの依存性を示したものである。なお、磁界Hは励磁電流Iにおおよそ比例するので、1/μrと磁界Hの関係も図9(b)と同様な振る舞いとなる。図9(b)には、励磁電流Iが小さい領域に平坦部が見られる。これは、図9(a)に示したBHカーブの磁界Hが小さい領域に対応する。図9(b)において、励磁電流Iが大きくなると、1/μrが上昇する。以上をまとめると、励磁電流Iが小さい領域のみを考慮する場合では1/μrは定数とみなせるが、励磁電流Iが大きい領域まで考慮すると1/μrは定数とみなせなくなる。これが、第2誤差の原因である。
<調整>
ところで、電磁石コイル455のインダクタンスの逆数量1/Lp、1/Lmは、電磁石コイル455の電流Iが大きい領域までを扱う場合には、上述した式(3)を以下の式(3a)のように修正して、積層珪素鋼板の比透磁率の非線形磁気特性を考慮しなければならない。
1/Lp = A×{(D-d) + lp/μrp}
1/Lm = A×{(D+d) + lm/μrm} ・・・(3a)
ここで、lp,lmは、それぞれP側、M側の電磁石コイルに関する距離の次元を有する定数である。μrp,μrmは、それぞれP側、M側の電磁石コアの比透磁率である。
ここで、第2誤差と、第2誤差を除去するための補正信号を以下に示すように関係づける。上述したように、第2誤差を除去するための補正信号を生成するために、上述の式(3)を上述の式(3a)のように修正した。
その結果、式(5)、(6)も以下の式(5a)、(6b)のように修正される。
isp = -v×sin(ωc×t-π/2)/(ωc×Lp)
= - B{(D-d) + lp/μrp}×sin(ωc×t-π/2)
ism = v×sin(ωc×t-π/2)/(ωc×Lm)
= B{(D+d) + lm/μrm}×sin(ωc×t-π/2) ・・・(5a)
Ip = ib + ic - B{(D-d) + lp/μrp}×sin(ωc×t-π/2)
Im = ib - ic + B{(D+d) + lm/μrm}×sin(ωc×t-π/2) ・・・(6b)
よって、式(6b)から、以下の式(10)を導くことができる。
Ip + Im = 2×ib + △icpm + B{2d - lp/μrp + lm/μrm }×sin(ωc×t - π/2)
・・・(10)
式(7)と式(10)を比較すると、
[- Np(icp) + Nm(icm)] = (- lp/μrp + lm/μrm) ・・・(11)
となる。すなわち、第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]が、(- lp/μrp + lm/μrm)に起因することが理解される。
第2誤差を除去するためには、図9(b)に示す1/μrと電流の関係をより正確にとらえる必要がある。すなわち、1/μrと電流の関係を近似する必要がある。
ここで、図9(b)に示す1/μrと電流の関係を近似するために、1/μrを電流でべき級数展開する。具体的には、以下の式(12)のように、lp/μrp、lm/μrmを電流Ip,Imでべき級数展開する。
lp/μrp = a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2 + a3p×Ip3+ …
lm/μrm = a0m + a1m×Im + a2m×Im2 + a3m×Im3 + … ・・・(12)
lp やlmも含めて展開したので、係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…は距離の次元を有している。調整では、主に、これらの係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…の最適化を行う。
図8と図10と図11を用いて調整方法について詳細に説明をする。図8については通常制御時と同様の箇所は説明を省略する。調整は、出荷検査時にメーカで行ったり、真空ポンプ納品後にユーザが定期的に行ったりする。調整時の真空ポンプの配置は、通常制御時の配置、すなわち、真空ポンプを使用する時の配置に合わせてもよい。
調整は、粗調と後述する微調に分かれる。粗調を行った後、微調を行う。粗調では、上述の係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…の最適化、および、後述する係数Qの最適化を行う。微調では、後述する信号Ipから得られる補正信号、すなわち、P側補正信号と、後述する信号Imから得られる補正信号、すなわち、M側補正信号のゲインバランスを司る後述の全体ゲイン比rを最適化する。
―粗調―
図10は、調整時における回転体ユニットRのシャフト5の位置を示している。ここでは、一例として、磁気軸受67の対向する電磁石451p、451mの軸について調整するときの様子が描かれている。図10(a)、(b)は、粗調の様子を示し、図10(c)は後述する微調の様子を示す。図10(a)〜(c)に描かれている可動境界600は、タッチダウンベアリング66a、66bによって決定されるものであり、シャフト5の可動境界となっている。すなわち、シャフト5は、可動境界600内を動くことができる。
ここでは、まずP側の粗調について説明する。粗調では、図8に示すスイッチ418p、418mを開放して浮上制御を遮断する。その上で、図10(a)に示すように、タッチダウンベアリング66a、66bにシャフト5を吸引接触させることで、調整する側の電磁石であるP側の電磁石451p側の可動境界600までシャフト5を移動させる。この時、この吸引接触状態を維持するために、図8に示すバイアス電流設定部423からの指令により、吸引側の電磁石であるP側の電磁石451pの電磁石コイル455には直流の大電流が流れる。一方、対向側であるM側の電磁石451mの電流値は、図8に示すバイアス電流設定部423によってi_limit値に設定されている。ちなみに、図7に、浮上制御時の電流リミット回路408p、408mにおける電磁石コイル455に流れる電流の制御信号依存性を示したが、非浮上制御状態である粗調時は、上述の通り、P側、M側でバイアス電流値が異なるため、図7とは異なる。すなわち、粗調時には、バイアス電流設定部423からP側、M側、各々へ出力される異なる値の信号が素通しされるように、電流リミット回路408p、408mは作動する。
このように、吸引状態を維持することにより、回転体ユニットRを静止させておくことができる。すなわち、真の変位dを、時間的に変化させないようにすることができる。なお、この吸引状態は、後述する加振を施しても維持される。
上述の吸引接触状態で、図8に示す加振器417pは、調整する側のP側の電磁石451pに予め定めた周波数の信号を加算器422pにおいて加算印加して電流変動、すなわち、加振を施す。他方、M側の励磁アンプに作用する加振器417mは作動させずに、加算器422mは信号を素通しする。
励磁アンプ43から出力された信号Ip、Imは、通常制御時と同様に、ADコンバータ400、信号処理演算部409p、409mを通過して、補正処理演算部415に入力される。
一方、和信号Ip+Imも、通常制御時と同様に、バンドパスフィルタ405、ADコンバータ400、信号処理演算部406を通過して、補正処理演算部415に入力される。以下に詳述する。
和信号Ip+Imは、式(7)、すなわち、
Ip + Im = 2×ib + △icpm + B{2d - Np(icp) + Nm(icm)}×sin(ωc×t - π/2)
・・・(7)
で表される。
和信号Ip+Imがバンドパスフィルタ405を通過すると、信号は、R(△icpm)+ B{2d - Np(icp) + Nm(icm)}となる。
さらに、ADコンバータ400と信号処理演算部406を通過することによって、第1誤差R(△icpm)が除去され、B{2d - Np(icp) + Nm(icm)} となる。すなわち、真の推定変位信号2Bdに第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]が付加された信号となっている。
この信号が補正処理演算部415に入力される。
以下、補正処理演算部415における最適化について以下に示す。
上述のように、和信号Ip+Imに起因する信号は、補正処理演算部415に入力される際には、真の推定変位信号2Bdに第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]が付加された信号となっている。真の推定変位dは上述のように時間的に変化しないので、真の推定変位信号2Bdは直流成分しか持たない。よって、和信号Ip+Imに起因する信号のうち、交流成分は第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]のみに起因するものであることが分かる。調整時の補正処理演算部415は、直流成分となる真の推定変位信号2Bdを除去し、交流成分である第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]を抽出する。
調整では、補正処理演算部415で、和信号Ip+Imから得られる第2誤差と、信号Ip,Imによって生成された補正信号とを比較して最適化を行う。和信号Ip+Imは、補正処理演算部415に入力されるまでにバンドパスフィルタ405を通過することで減衰の影響を受ける。一方、信号Ip,Imは、その影響を受けない。よって、補正処理演算部415で、第2誤差と補正信号を比較するために、式(11)を以下の式(13)のように修正する。
[-Np(icp)+Nm(icm)] = Q(-lp/μrp+ lm/μrm) ・・・(13)
ここで、
Q = b/(1+Ts) ・・・(14)
である。
関数Qは、バンドパスフィルタ405を通過したときの減衰の影響を補正するためのローパスフィルタの伝達関数である。bは全体ゲインと呼ばれ、粗調の時には変数であるが、後述する微調の時や通常制御時は粗調によって定められた値の定数である。Tは、ロー
パスフィルタの時定数で、粗調の時には変数であるが、微調の時や通常制御時は粗調によって定められた値の定数である。また、sはラプラス変換の複素変数であり、jを虚数、印加する信号の周波数をfとするとき、s=jx2πxfである。また、伝達関数Qは通常デジタルフィルタとして組み込まれるため、式(14)の構成で陽に表現されることはないが、係数を求める調整時のみに陽に表現される。
式(13)に、式(14)を代入すると、以下の式(15)となる。
[-Np(icp)+Nm(icm)] = {b/(1+Ts)}×(-lp/μrp+ lm/μrm) ・・・(15)
一方、信号Ip,Imは、式(12)、すなわち、
lp/μrp = a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2 + a3p×Ip3+ …
lm/μrm = a0m + a1m×Im + a2m×Im2 + a3m×Im3 + … ・・・(12)
に示すように、lp/μrpやlm/μrmと関係がある。
式(15)に式(12)を代入すると、以下の式(16)となる。
[-Np(icp) + Nm(icm)] = {b/(1+Ts)}×{-( a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2 + a3p×Ip3 + …)+( a0m + a1m×Im + a2m×Im2 + a3m×Im3 + …)} ・・・(16)
図11は、調整時の補正処理演算部415の動作を示している。以下では、まず、図11を用いて、P側の粗調時の補正処理演算部415の動作について説明する。図11に示すように、補正処理演算部415は、信号変換部801、802と、ゲイン調節部803、804と、差分器805と、補正部806と、ハイパスフィルタ演算器807と、差分器808と、演算部809とを備えている。
信号Ipは信号変換部801に入力され、信号変換部801に記憶されている上述の式(12)またはその簡易式によって信号Ipが信号lp/μrpに変換されて出力される。信号lp/μrpはゲイン調節部803に入力されるが、粗調の時にはゲイン調節部803は作動せず、信号lp/μrpがそのまま出力される。後述するが、これは全体ゲイン比rがゼロに設定されていることを意味する。なお、本明細書では、信号lp/μrpのことをP側補正信号とも呼ぶ。
信号Imは信号変換部802に入力され、信号変換部802に記憶されている上述の式(12)またはその簡易式によって信号ImがM側補正信号lm/μrmに変換されて出力される。信号lm/μrmはゲイン調節部804に入力されるが、粗調の時にはゲイン調節部804は作動せず、信号lm/μrmがそのまま出力される。後述するが、これは全体ゲイン比rがゼロに設定されていることを意味する。なお、本明細書では、信号lm/μrmのことをM側補正信号とも呼ぶ。
信号lp/μrpと信号lm/μrmはそれぞれ差分器805に入力され、差分器805において信号lm/μrmから信号lp/μrpが減算され、その結果である信号(-lp/μrp + lm/μrm)が出力される。
信号(-lp/μrp + lm/μrm)は補正部806に入力され、補正部806に記憶されているローパスフィルタ伝達関数Q、すなわち、伝達関数{b/(1+Ts)}に相当するデジタルフィルタ演算にて補正され、その結果である補正信号Q(-lp/μrp + lm/μrm)が出力される。さらに、補正信号Q(-lp/μrp + lm/μrm)のうち、直流あるいはきわめて低い周波数(例えば10Hz以下)成分をハイパスフィルタ演算器807に通過させることで除去して、差分器808に入力される。
一方、和信号Ip+Imに起因する信号は演算部809に入力され、演算部809において
直流成分である真の推定変位信号2Bdが取り除かれ、上述した式(15)の左辺に示す第2誤差である[- Np(icp) + Nm(icm)]のみが出力される。第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]は、差分器808に入力される。
差分器808において、式(13)に示す左辺から右辺が減算される。すなわち、左辺の第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]から、右辺の補正信号Q(-lp/μrp + lm/μrm)が減算される。
上述したように、ここでは、P側の粗調、すなわち、P側の係数である係数a0p, a1p, a2p, a3p,…の調整、すなわち、P側係数調整を行う。P側の粗調の場合、Ipがibの数倍もの大電流である一方、Imはi_limitであり小電流であるため、式(16)に示す( a0m +
a1m×Im + a2m×Im2 + …)の影響は小さい。そのため、係数 a0m, a1m, a2m, a3m,…には初期値として、例えば、ゼロを入れ固定しておき、先に係数a0p, a1p, a2p, a3p,…に対する最適化計算、すなわち、例えば、最小二乗法による最適化処理を行うことができる。
具体的には、吸引状態が維持可能な範囲で図8のバイアス電流設定部423からいろいろな大きさのバイアス電流ibを設定する。さらに、図8の加振器417pからいろいろな大きさに変化させながら加振信号を印加して図11のIpへ入力し、図11に示す信号変換部801に記憶されている式(12)の係数a0p, a1p, a2p, a3p,…を最小二乗法で演算、算出する。上述の図11に示す演算を繰り返して、上述の減算結果が予め定めた所定の許容レベルまで低減する最適な係数a0p, a1p, a2p, a3p,…を求める。最適化された係数a0p, a1p, a2p, a3p,…は信号変換部801に記憶される。
P側の粗調が終了したら、図10(b)に示すように、対向側であるM側の電磁石451mが回転体ユニットRのシャフト5を吸引することで、シャフト5を電磁石451m側の可動境界600まで移動させる。そして、図8に示す加振器417mを作動させて加振させる。その際、加振器417pは作動させない。その上でM側の粗調、すなわち、M側の係数である係数a0m, a1m, a2m, a3m,…の調整、すなわち、M側係数調整を行う。
M側での粗調でも同様に、吸引状態が維持可能な範囲で図8のバイアス電流設定部423からいろいろな大きさのバイアス電流ibを設定する。さらに、図8の加振器417mからいろいろな大きさに変化させながら加振信号を印加して図11のImへ入力し、図11に示す信号変換部802に記憶されている式(12)の係数 a0m, a1m, a2m, a3m,…を最小二乗法で演算、算出する。上述の図11に示す演算を繰り返して、差分器808の減算結果が予め定めた所定の許容レベルまで低減する最適な係数 a0m, a1m, a2m, a3m,…を求める。最適化された係数 a0m, a1m, a2m, a3m,…は信号変換部802に記憶される。なお、言うまでもないが、M側の粗調の時、信号演算部801にはP側の粗調で最適化された係数a0p, a1p, a2p, a3p,…が記憶されている。
P側およびM側の粗調によって、係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…が最適化されたら、差分器808の減算結果がさらに小さくなるように、補正部806に記憶されているローパスフィルタの伝達関数Q、すなわち、全体ゲインb、および、ローパスフィルタの時定数Tを最適化し、その値を新たに記憶し直す。このとき、ゲイン調節部803、804にも、最適化された全体ゲインbが記憶される。
以上に示した粗調は、P側の電磁石451pから行ったが、M側の電磁石451mから行ってもよい。同様の操作を複数回繰り返す過程で許容レベルを下げることで、さらなる調整をすることが可能となる。また、図9(b)に示すように、励磁電流Iによって比透磁率の逆数量は変化する。そのため、粗調する際のバイアス電流はより多く設けたほうが
良い。様々なバイアス電流設定値にて最適化された係数を補正処理演算部415の各部に記憶させておくことで、通常制御時に印加する様々なバイアス電流に対処しやすくなり、第2誤差が低減されやすくなる。
磁気軸受67の対向する電磁石451p、電磁石451mの粗調が終了したら、同様に磁気軸受67の対向する電磁石452p、452mや、他の磁気軸受68、69の電磁石45でも粗調を行う。ただし、磁気軸受69に関しては、シャフト5の代わりにロータディスク55を移動させて同様に調整する。
―微調―
以下では、粗調の後に行う微調について説明する。各係数が上述の粗調で得られた後に、図8で示すスイッチ418p、418mをオンにして浮上制御へ切り替えて、図10(c)に示すように、シャフト5を含む回転体ユニットRを所定位置へ浮上させた状態で、図8に示す加振器417p、417mを用いて、P側およびM側へ同符号の予め定めた周波数の信号を加算重畳する。この場合、P側に引き付けようとする吸引力とM側に引き付けようとする吸引力とが等しく釣り合うので、加算重畳した調整用の信号成分は小さい。
しかし、P側、M側のゲインバランスをさらに調整するために、後述する全体ゲイン比rを微調によって最適化する。なお、全体ゲイン比rは微調の時には変数であるが、粗調の時にはゼロに設定されており、通常制御時は微調によって定められた値の定数に設定されている。
図11を用いて、微調について具体的に説明する。粗調と同様の箇所は説明を省略する。微調時には、信号ゲイン調節部803において信号lp/μrpに係数(1+r/b)が乗算され、信号ゲイン調節部804において信号lm/μrmに係数(1-r/b)が乗算されることが大きな違いである。厳密には、粗調でも上述の係数は乗算されていたが、全体ゲイン比rがゼロに設定されていたため、素通しとなっていた。その結果、差分器808に入力される補正信号は、Q{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}の交流成分となる。なお、ゲイン調節部803、804には全体ゲイン比rだけでなく全体ゲインbも記憶されているが、上述のように粗調によって最適化された全体ゲインbが記憶されている。
そのため、上述したように、式(16)を以下に示す式(17)に修正して用いる。
[-Np(icp) + Nm(icm)] = {b/(1+Ts)}×{-(1+r/b)×( a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2 + a3p×Ip3 + …)+ (1-r/b)×( a0m + a1m×Im + a2m×Im2 + a3m×Im3 + …)} ・・・(17)
差分器808では、以上の式(17)に示す左辺から右辺が減算される。すなわち、左辺の第2誤差[- Np(icp) + Nm(icm)]から、右辺の補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}の交流成分が減算される。その減算結果が予め定めた所定の許容レベルまで低減するように、すなわち、加振のために印加した信号の周波数成分の振幅値が所定レベル以下になるように、ゲイン調節部803、804に記憶された全体ゲイン比rのみを変化させて、差分器808の減算結果が許容レベル以下になるような最適な全体ゲイン比rを求める。
すなわち、粗調の時は、信号変換部801に記憶されている係数a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2+ …、信号変換部802に記憶されている係数a0m + a1m×Im + a2m×Im2 + …、補正部806に記憶されているローパスフィルタの伝達関数Qの係数(全体ゲインb、時定数T)を変化させることでそれらの係数を最適化したが、微調の時は、ゲイン調節部803、804に記憶されている全体ゲイン比rを変化させることで調整を行う。
微調での最適化を行う際、全体ゲイン比rは、全体ゲイン±bの範囲内で変化させる。全体ゲイン比rが最適化されたら、その最適値がゲイン調節部803、804にそれぞれ記憶される。
磁気軸受67の対向する電磁石451p、451mの微調が終了した後は、磁気軸受67の対向する電磁石452p、452mや、磁気軸受68、69の電磁石45においても同様に微調を行う。また、粗調の時と同様に、全体ゲイン比rの精度向上のために複数回行うことが好ましい。さらに、様々なバイアス電流で微調を行ったほうが、通常制御時の様々なバイアス電流下における第2誤差の除去に的確に対処できる。
上述のように、補正処理演算部415は、各軸において最適化された係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…、ローパスフィルタの伝達関数Qの係数(全体ゲインb、時定数T)、全体ゲイン比rの値を記憶する。そして、後述するように、補正処理演算部415は、記憶した各軸の係数a0p, a1p, a2p, a3p,…, a0m, a1m, a2m, a3m,…、ローパスフィルタの伝達関数Qの係数(全体ゲインb、時定数T)、全体ゲイン比rを用いて、通常制御時に第2誤差が除去された真の推定変位信号2Bdを生成し、出力する(図12参照)。
―調整の具体例―
以上のとおり、調整について述べたが、以下では、調整時の具体的な一例を示す。
式(12)の簡単な例として、以下の式(12a)を用いる。
lp/μrp = a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2
lm/μrm = a0m + a1m×Im + a2m×Im2 ・・・(12a)
さらに、
Q = b/(1+Ts) ・・・(14)
を用いる。
すると、式(16)より、
補正信号 = {b/(1+Ts)}×{- ( a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2)+ ( a0m + a1m×Im + a2m×Im2)} ・・・(18)
となる。この式(18)に示されたa0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2m, b, T に適当な初期値を与えて、調整を開始する。
図8に示すスイッチ418p、418mをオフにすることで浮上制御を遮断する。さらに、P側にバイアス電流の例えば4倍の直流電流を流して、図10(a)に示すように、P側に回転体ユニットRのシャフト5を吸引する。図8に示す加振器417pを用いて、初期の加振信号である100Hzの加振信号をP側の電磁石45へ印加する。この時、M側の電磁石コイルに流れる電流はi_limitである。この状態で、復調信号から調整時に直流成分のみとなる真の推定変位信号2Bdを除いて抽出された第2誤差から、以上の式(18)で演算される補正信号をハイパスフィルタ演算器807を通過させて抽出した交流成分を減算したデータ、すなわち、第2誤差と補正信号の差のまとまりで最小二乗法などを適用して、a0p, a1p, a2pを算出する。
同様に、図10(b)に示すように、M側へ回転体ユニットRのシャフト5を移動し吸引させて、a0m, a1m, a2mを算出する。個別の磁気軸受装置によるが、必要な場合は、a0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2mの精度を向上させるために、吸引状態が維持可能な範囲でいろいろなバイアス電流値に設定した上で、様々な振幅値の加振信号に変えながら上記調整操作を複数回繰り返す。
次に、加振信号の周波数を増やして、例えば200Hzで、上記調整を繰り返す。これ
を1000Hzまで順次周波数を増やした条件で係数a0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2mを求める。それぞれの加振周波数において係数a0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2mが得られるが、これらが極力一致するように、様々な全体ゲインbおよび時定数Tで上記の最適化計算を行う。すなわち、これによって全体ゲインbおよび時定数Tの最適化計算も行っていることになる。最適化計算後、係数a0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2m、および、全体ゲインbおよび時定数Tを固定する。
粗調で最適化した係数a0p, a1p, a2p, a0m, a1m, a2mを与えたうえで、微調を行う。図8に示すスイッチ418p、418mをオンにして回転体ユニットRを浮上させて、さらに、回転体ユニットRを静止浮上状態にして、P側、M側の両方に位相を合わせた加振信号を加振器417p、417mを用いて印加する。以下の式(19)に示す補正信号によって減算された後の信号に含まれる加振信号周波数成分が許容レベル以下になるように、式(19)に示す補正信号の全体ゲイン値比rを最適化する。
補正信号 = {b/(1+Ts)}×{-(1+r/b)×(a0p + a1p×Ip + a2p×Ip2) + (1-r/b)×(a0m + a1m×Im + a2m×Im2)} ・・・(19)
例えば、全体ゲインbの±20%の範囲で全体ゲイン値比rを調節する。
<補正信号による第2誤差の除去>
図12は、通常制御時の補正処理演算部415の動作を示している。図12を用いて、図8に示した補正処理演算部415の通常制御時の動作について説明する。補正処理演算部415の通常制御時の動作は、上述の調整によって最適化された各パラメータと信号Ip,Imを用いて第2誤差を除去するための補正信号を生成し、信号Ip+Imから得られる変位信号からその補正信号を減算することで第2誤差を除去し、真の推定変位信号2Bdを出力することである。以下、詳述する。
補正処理演算部415は、図12に示すように、信号変換部801、802と、ゲイン調節部803、804と、差分器805と、補正部806と、ハイパスフィルタ演算器807と、差分器808と、演算部809が備えられている。ただし、演算部809は通常制御時は作動しないため、図示していない。
信号Ipは信号変換部801に入力され、信号変換部801に記憶されている上述の式(12)またはその簡易式によって信号Ipが信号lp/μrpに変換されて出力される。信号lp/μrpはゲイン調節部803に入力され、ゲイン調節部803に記憶されている係数(1+r/b)が乗算されて出力され、信号(1+r/b)×lp/μrpが出力される。
信号Imは信号変換部802に入力され、信号変換部802に記憶されている上述の式(12)またはその簡易式によって信号Imが信号lm/μrmに変換されて出力される。信号lm/μrmはゲイン調節部804に入力され、ゲイン調節部804に記憶されている係数(1-r/b)が乗算されて出力され、信号(1-r/b)×lm/μrmが出力される。
信号(1+r/b)×lp/μrpと信号(1-r/b)×lm/μrmはそれぞれ差分器805に入力され、差分器805において信号(1-r/b)×lm/μrmから信号(1+r/b)×lp/μrpが減算され、その結果である信号{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}が出力される。
信号{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}は補正部806に入力され、補正部806記憶されているローパスフィルタの伝達関数Q、すなわち、伝達関数{b/(1+Ts)}に相当するデジタルフィルタ演算にて補正され、その結果である補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}が出力される。補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}は、ハイパスフィルタ演算器807を通過して交流成分が抽出されて差分器808に入力される。
上述した調整によって各種パラメータが最適化されることにより、第2誤差[-Np(icp) + Nm(icm)]と補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}には、以下の式(20)に示す関係が成り立つ。
[-Np(icp) + Nm(icm)] = Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm} ・・・(20)
なお、これは、式(12)と式(14)を参照すれば分かるとおり、式(17)と等しいものである。
一方、和信号Ip+Imから得られる信号は、差分器808に入力される。なお、信号Ip+Imから得られる信号が補正処理演算部415に入力されるときには、すでに第1誤差R(△icpm)は除去されており、和信号Ip+Imから得られる信号には、真の推定変位信号2Bdに第2誤差[-Np(icp) + Nm(icm)]が付加された信号となっている。
差分器808において、和信号Ip+Imから得られる信号から、補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp + (1-r/b)×lm/μrm}が減算され、すなわち、第2誤差が除去され、真の推定変位信号2Bdが出力される。
上述した調整が完了した後に、接触位置の移動距離、浮上中心位置に相当する信号のゲイン、オフセットを調整してもよい(機能ブロックは省略)。また、吸引過程で、復調信号の直流レベルからゲインオフセット調整を行うことができる。
上述した調整において、補正信号の近似および精度向上と、調整時間はトレードオフの関係にある。調整時間の縛りが緩い場合は、精度向上のために高次の近似を適用してもよい(式(12)、式(12a)を参照)。
以上の実施形態では、本発明は主に第2誤差を除去することに用いたが、本発明で第2誤差を除去する際に、同時に第1誤差を除去することも可能である。なぜならば、本実施形態では、第2誤差のみが真の推定変位信号2Bdに含まれている状態で補正信号を最適化計算で求めたが、それを第1誤差および第2誤差が真の推定変位信号2Bdに含まれている状態で補正信号を最適化計算で求めるようにすればよいからである。よって、特願2013−021681号に記載の発明を用いずとも本発明だけで第1誤差および第2誤差を除去できる。しかし、以上の実施形態で示したように、特願2013−021681号に記載の発明を用いて第1誤差を除去した後に、本発明を用いて第2誤差を除去することが精度を向上させるうえで好ましいのは言うまでもない。例えば、特願2013−021681号に記載の発明を用いたが、何らかの理由で、結果的に第1誤差が十分に除去できていない場合でも、本発明を実施することで、第2誤差だけでなく、その十分に除去できなかった第1誤差も除去できる。このように、第1誤差を2つの発明で除去することができ、精度をより向上させることができる。
本発明における調整は、出荷検査時に半自動、半手動で実施してもよい。また、出荷後の使用時の合間に、定期的かつ自動で調整を行ってもよい。
さらに、場合によっては、粗調だけ行って微調を省略することもできる。
以上説明したように、本発明によるコントロールユニットの磁気軸受装置および当該磁気軸受装置を備えるターボ分子ポンプによれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本発明のコントロールユニットの磁気軸受装置は、回転体ユニットRと、回転体ユニットRを浮上制御するために複数の制御軸のそれぞれに設けられ、制御軸のそれぞれに回転体を介して対向配置されたP側の電磁石45およびM側の電磁石45と、P側の電磁石45およびM側の電磁石45のそれぞれに印加される電圧をPWM制御し、回転体ユニ
ットRの浮上位置を検知するためのセンサキャリア信号が重畳された電磁石電流Ip,Imを供給するP側の電磁石45およびM側の電磁石45のそれぞれに設けられた励磁アンプ43と、励磁アンプ43のそれぞれに設けられ、電磁石電流Ip,Imを検出する電流センサ101A、101Bと、電磁石電流Ip,Imに基づいて真の推定変位信号2Bdを取得し、真の推定変位信号2Bdに基づいて励磁アンプ43をPWM制御する制御部44と、を備える。
制御部44のADコンバータ400は、P側の電磁石45に流れる電磁石電流Ipの検出信号Ip、M側の電磁石45に流れる電磁石電流Imの検出信号Im、および、電流信号Ipと電流信号Imとを足し合わせて得られる和信号Ip+ImについてADサンプリングを行う。その際、ADコンバータ400は、和信号Ip+Imから最大ピーク値近傍のデータ値d1と最小ピーク値近傍のデータ値d2をADサンプリングする。
制御部44の信号処理演算部406は、データ値d1,d2を用いてd3=(d1-d2)/2という演算処理を行うことでデータ値d3を得ることで第1誤差を除去する。さらに、信号処理演算部40は、でデータ値d3に基づいて復調変位信号2Bd+[-Np(icp) + Nm(icm)]を生成する。
制御部44の補正処理演算部415において、信号変換部801は、ADサンプリング後の信号Ipから、補正信号lp/μrpを演算処理で生成する。信号変換部802は、ADサンプリング後の信号Imから、補正信号lm/μrmを演算処理で生成する。ゲイン調節部803は、補正信号lp/μrpに(1+r/b)を乗算して、信号(1+r/b)×lp/μrpを生成する。ゲイン調節部804は、補正信号lm/μrmに(1-r/b)を乗算して、信号(1-r/b)×lm/μrmを生成する。差分器805は、信号(1-r/b)×lm/μrmから信号(1+r/b)×lp/μrpを減算して信号{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}を生成する。補正部806は、信号{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}をローパスフィルタの伝達関数Qを通過演算して補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}を生成する。さらに、ハイパスフィルタ演算器807を通過して交流成分が抽出され、差分器808にて、復調変位信号2Bd+[-Np(icp) + Nm(icm)]から補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}を減算することで、第2誤差[-Np(icp) + Nm(icm)]を除去して、真の推定変位信号2Bdを得る。
以上のように、ADコンバータ400と信号処理演算部406が第1誤差を除去し、補正処理演算部415が第2誤差を除去することにより、対向している電磁石コイルのうちの一方にのみ大電流を流す場合においても第1誤差および第2誤差を的確に除去し、回転体の変位信号に関して良好なS/N比を維持することができる。
(2)回転体ユニットRは、可動境界600を有する。補正信号lp/μrpは、信号Ipからなる関数(例えば、式(12)の第1式)から成る。補正信号lm/μrmは、信号Imからなる関数(例えば、式(12)の第2式)から成る。信号Ipからなる関数に用いられる係数が最適化されるP側の粗調が実施される際は、回転体ユニットRをP側の電磁石45側の可動境界600まで移動させ、所定のバイアス電流値ibで回転体ユニットRを磁気的に吸引し固定した上で、P側の粗調が実施される。信号Imからなる関数に用いられる係数が最適化されるM側の粗調が実施される際は、回転体ユニットRをM側の電磁石45側の可動境界600まで移動させ、所定のバイアス電流値ibで回転体ユニットRを磁気的に吸引し固定した上で、M側の粗調が実施される。
このP側の粗調、M側の粗調を実施することで、所定のバイアス電流ibを用いた通常制御時において生じる第2誤差を適切に除去することができる。
(3)P側の粗調は、予め定めた周波数を有する印加信号がP側の電磁石45側の電磁石電流Ipに重畳された上で、その印加した周波数成分となる真の推定変位信号2Bdの振幅値が許容レベル以下になるように実施される。M側の粗調は、予め定めた周波数を有する印加信号がM側の電磁石45側の電磁石電流Imに重畳された上で、その印加した周波数成分となる真の推定変位信号2Bdの振幅値が許容レベル以下になるように実施される。
このように、その交流成分を用いて信号Ipからなる関数に用いられる係数や信号Imからなる関数に用いられる係数などを容易に最適化できる。
(4)粗調および微調は、より多くの複数のバイアス電流値ibで実施されるほうが好ましい。これにより、電磁石コアの磁気特性の非線形性をより正確にとらえることができ、通常制御時における様々なバイアス電流値ibにおいて、より的確に第2誤差を除去することができる。なお、その実施されるバイアス電流値ibの設定数は多ければ多いほど、上述した電磁石コアの磁気特性の非線形性をより正確にとらえることができる。
(5)粗調および微調は、所定のバイアス電流値ibにおいて複数回、すなわち、繰り返し実施されるようにしてもよい。これによって、そのバイアス電流値ibでの最適化をより精度よく行うことができ、通常制御時における第2誤差をより的確に除去することができる。
(6)本発明のコントロールユニットの磁気軸受装置は、P側の粗調およびM側の粗調が終了した後に、回転体ユニットRを時間的に位置変化しないように磁気浮上制御する。さらに、予め定めた周波数を有する印加信号を、P側の電磁石45およびM側の電磁石45に流れる電磁石電流Ip,Imのそれぞれに重畳する。その際、電流Ipに重畳された上述の印加信号に起因する回転体ユニットRにかかるP側への磁気吸引力と、電流Imに重畳された上述の印加信号に起因する回転体ユニットRにかかるM側への磁気吸引力が、互いに相殺するように設定しており、その結果、やはり回転体ユニットRを時間的に位置変化しないように磁気浮上制御する。その上で、補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}内の、補正信号lp/μrpと補正信号lm/μrmのゲインバランスを司る全体ゲイン比rを調整する微調を実施する。
この微調によって、補正信号Q{-(1+r/b)×lp/μrp+ (1-r/b)×lm/μrm}が第2誤差を除去するのに最適なものとなり、通常制御時における第2誤差をより的確に除去することができる。
(7)ターボ分子ポンプが本発明のコントロールユニットの磁気軸受装置を備えることで、対向している電磁石コイルのうちの一方にのみ大電流を流す場合においても第1誤差および第2誤差を的確に除去し、回転体の変位信号に関して良好なS/N比を維持することができる。さらには、ポンプケーシングの振動を低減でき、回転体の浮上制御性能を向上させるという作用効果を奏することができる。
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態ではターボポンプ部とドラッグポンプ部とを有するターボ分子ポンプを例に説明したが、回転体を磁気軸受装置で支持する構成の装置であれば、同様に適用することができる。
1:ポンプユニット、 4:ポンプロータ、 4a:回転翼、 4b:円筒部、
5:シャフト、 40:DC電源、 41:インバータ、 42:モータ、
42a:モータステータ、 42b:モータロータ、 43:励磁アンプ、
44:制御部、 45:磁気軸受電磁石、 55:ロータディスク、 60:ベース、
60a:排気口、 61:ポンプケーシング、 61a:吸気口、 61b:係止部、
61c:固定フランジ、 62:固定翼、 63:スペーサリング、
64:ネジステータ、 65:排気ポート、
66a、66b:タッチダウンベアリング、 67、68、69:磁気軸受、
101A、101B:電流センサ、 400:ADコンバータ、
401p、401m:ゲート信号生成部、 403、404:ローパスフィルタ、
405:バンドパスフィルタ、 406:信号処理演算部、 407:浮上制御器、
408p、408m:電流リミット回路、 409p、409m:信号処理演算部、
410p、410m:アンプ制御器、 415:補正処理演算部、
417p、417m:加振器、 418p、418m:スイッチ、
420p、420m、421p:差分器、
421m、422p、422m:加算器、 423:バイアス電流設定部、
441:PWM制御信号、 442:信号、 PWMゲート駆動信号443、
444:電磁石電流信号、 450:電磁石コア、
451p、451m、452p、452m:磁気軸受電磁石、 455:電磁石コイル、600:可動境界、 801、802:信号変換部、 803、804:ゲイン調節部、805:差分器、 806:補正部、 807:ハイパスフィルタ演算器、
808:差分器、 809:演算部、
d:変位、 D10、D11:ダイオード、 J:浮上中心軸(浮上目標位置)、
L1、L2:ライン、 R:回転体ユニット、 SW10、SW11:スイッチング素子

Claims (8)

  1. 回転体と、
    前記回転体を浮上制御するために複数の制御軸のそれぞれに設けられ、前記制御軸のそれぞれに前記回転体を介して対向配置された第1電磁石および第2電磁石と、
    前記第1電磁石および前記第2電磁石のそれぞれに印加される電圧をPWM制御し、前記回転体の浮上位置を検知するためのセンサキャリア信号が重畳された電磁石電流を供給する前記第1電磁石および第2電磁石のそれぞれに設けられた励磁アンプと、
    前記励磁アンプのそれぞれに設けられ、前記電磁石電流を検出する電流センサと、
    前記電磁石電流に基づいて推定変位信号を取得し、前記推定変位信号に基づいて前記励磁アンプをPWM制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記複数の制御軸の各制御軸における前記推定変位信号を得るにあたり、
    前記第1電磁石に流れる前記電磁石電流の検出信号(以下、第1電流信号)、前記第2電磁石に流れる前記電磁石電流の検出信号(以下、第2電流信号)、および、前記第1電流信号と前記第2電流信号とを足し合わせて得られる和信号についてそれぞれ前記センサキャリア信号に同期してADサンプリングを行い、
    前記センサキャリア信号に同期してADサンプリングされた和信号により復調変位信号を生成し、
    前記第1電磁石の磁気特性の非線形性に起因する前記復調変位信号への影響を低減するための第1補正信号を、前記ADサンプリング後の前記第1電流信号および前記第1電磁石の磁気特性の非線形性に基づいて演算処理で生成し、
    前記第2電磁石の磁気特性の非線形性に起因する前記復調変位信号への影響を低減するための第2補正信号を、前記ADサンプリング後の前記第2電流信号および前記第2電磁石の磁気特性の非線形性に基づいて演算処理で生成し、
    前記第1補正信号および前記第2補正信号の差分としての第3補正信号を演算処理で生成し、
    前記復調変位信号から前記第3補正信号を減算することで前記推定変位信号を得る磁気軸受装置。
  2. 請求項1に記載の磁気軸受装置において、
    前記和信号は、前記センサキャリア信号の周波数をfcとしたときに、fc=(n+1/2)・fs(ただし、nは0以上の整数)を満たすサンプリング周波数fsで、かつ、前記センサキャリア信号の最大ピーク位置近傍となるタイミングおよび最小ピーク位置近傍となるタイミングでADサンプリングされ、
    前記最大ピーク位置近傍でサンプリングされた和信号のデータ値をd1、前記最小ピーク位置近傍でサンプリングされた和信号のデータ値をd2としたときに、d3=(d1−d2)/2により算出される値d3を前記復調変位信号とする、磁気軸受装置。
  3. 請求項1または2に記載の磁気軸受装置において、
    前記回転体は、可動境界を有し、
    前記第1補正信号は、前記第1電流信号からなる関数(以下、第1関数)より成り、
    前記第2補正信号は、前記第2電流信号からなる関数(以下、第2関数)より成り、
    前記第1関数に用いられる係数が最適化される調整(以下、第1係数調整)が実施される際は、前記回転体を前記第1電磁石側の前記回転体の前記可動境界まで移動させ、所定のバイアス電流値で前記回転体を磁気的に吸引し固定した上で、前記第1係数調整が実施され、
    前記第2関数に用いられる係数が最適化される調整(以下、第2係数調整)が実施される際は、前記回転体を前記第2電磁石側の前記回転体の前記可動境界まで移動させ、前記所定のバイアス電流値で前記回転体を磁気的に吸引し固定した上で、前記第2係数調整が実施される磁気軸受装置。
  4. 請求項3に記載の磁気軸受装置において、
    前記第1係数調整は、予め定めた周波数を有する印加信号が少なくとも第1電磁石側の前記電磁石電流に重畳された上で、前記予め定めた周波数を有する前記推定変位信号の振幅が所定レベル以下になるように実施され、
    前記第2係数調整は、前記予め定めた周波数を有する印加信号が少なくとも第2電磁石側の前記電磁石電流に重畳された上で、前記予め定めた周波数を有する前記推定変位信号の振幅が所定レベル以下になるように実施される磁気軸受装置。
  5. 請求項4に記載の磁気軸受装置において、
    前記所定のバイアス電流値は、複数設けられ、
    前記第1係数調整および前記第2係数調整は、前記複数設けられた所定のバイアス電流値の各々において実施される磁気軸受装置。
  6. 請求項4または5に記載の磁気軸受装置において、
    前記第1係数調整及び前記第2係数調整は、前記所定のバイアス電流値において複数回実施される磁気軸受装置。
  7. 請求項〜6のいずれか一項に記載の磁気軸受装置において、
    前記第3補正信号は、前記第1補正信号と前記第2補正信号とを所定比率で差分演算することにより生成され、
    前記所定比率は、前記回転体が時間的に位置変化しないように磁気浮上制御された状態において、前記第1電磁石に流れる電磁石電流に前記予め定めた周波数を有する印加信号を重畳した場合の磁気吸引力と、前記第2電磁石に流れる電磁石電流に前記予め定めた周波数を有する印加信号を重畳した場合の磁気吸引力とが相殺されるように設定される、磁気軸受装置。
  8. 排気機能部が形成されたポンプロータと、
    前記ポンプロータを回転駆動するモータと、
    前記ポンプロータの回転体を磁気浮上支持する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気軸受装置と、を備える真空ポンプ。
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