例えばトンネル内を短期の倉庫等として利用する場合には、トンネル内面を比較的簡易な覆工体で被覆したものであってもよい。又、この場合は、トンネル内の内径が比較的小さくてよいものが多い(例えば内幅が5〜5.5m、高さが4〜5m程度でよい場合が多い)。そして、このような簡易なトンネル覆工形態の場合は、比較的軽量なライニング材(薄鋼板製)でトンネル内面を覆工することがある。
このように、比較的簡易なライニング材(薄鋼板製)でトンネル内面を覆工する場合は、従来工法として図16に示すように行っていた。
即ち、図16に示す従来のトンネル内面覆工工法では、まずトンネルT内のライナープレート設置位置付近において、複数枚のセグメント(薄鋼板製)Ra,Ra・・を地上に寝かせた状態でアーチ状(門型状の場合もある)に組付けて一連のライナープレートRを形成する。図示例のライナープレートRは、中央部にアーチ状の天井部Rcを有し該天井部Rcの左右に直線状の各脚部Rb,Rbを一体に連続させたものである。
次に、地上に横倒し姿勢で寝かせているライナープレートRを矢印A(図16)で示すように鉛直姿勢まで立ち起こし、その立ち起こしたライナープレートの位置及び姿勢を調整して所定位置に自立・固定させる(左右の脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ左右の載置台W,W上にボルト締結する)。尚、以下の説明では、自立・固定させたライナープレートを既設側ライナープレートということがある。
そして、既設側ライナープレートR1の近傍位置の地面上において次のライナープレートとなる各セグメントRa,Ra・・をアーチ状に組付けて次順のライナープレートR(次順のライナープレートを組付側ライナープレートという)を形成した後、その組付側ライナープレートRを矢印Aで示すように横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こし、その立ち起こした組付側ライナープレートR′(鎖線図示するもの)の位置及び姿勢を調整して、該組付側ライナープレートR′を既設側ライナープレートR1に対して端面同士が全面接触する状態で接合させる。その後、既設側ライナープレートR1と組付側ライナープレートR′の接合端同士を周方向の複数箇所でそれぞれボルト締結することで両ライナープレートR1,R′を連結固定するとともに、左右の脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ左右の載置台W,W上にボルト締結する。順次同様にして必要個数のライナープレートを連続させて所望長さのトンネル覆工体Sを構築する。
ところで、上記のように、既設のトンネルT内に多数個のライナープレートからなるトンネル覆工体Sを構築するのに、組付側ライナープレートRを寝かせた状態から立ち起こす際、及び該組付側ライナープレートRを既設側ライナープレートR1に位置合わせする際等の作業は、トンネル内では上方に制約がある(天井が近い)のでクレーンを使用することができず、従って従来では複数人の作業員による人力で行っているのが現状である。
ところが、人力によるライナープレートの立ち起こし作業では、ライナープレートを立ち起こすのにかなりの人数(最低でも4〜5人)の作業員が必要であり、重量の関係で1単位のライナープレートの幅が狭くなり(例えば50cm幅程度が限度)、ライナープレート立ち起こし作業に危険を伴うという各種の問題があった。
尚、本件発明者等は、上記のように予めアーチ状(又は門型状)に形成したライナープレートを横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こして既設側ライナープレートに連結して、順次トンネル状の覆工体を構築するようにした覆工体構築工法について、既存の特許文献を検索したところ、特に関連するものは見つからなかった。
ところで、本件出願人は、既設のトンネル内に多数個のライナープレートからなるトンネル覆工体の構築作業を機械的に行えるようにした、ライナープレート組付装置を開発して既に特許出願(特願2012−174077号)している。
この既出願(未公開)のライナープレート組付装置は、図12及び図13に示すように、走行台車1の車台11に、横倒し姿勢のライナープレートRを鉛直姿勢(符号R′)まで立ち起こすことができる立起装置2を備えて構成されている。
立起装置2は、伸縮ブーム21と、該伸縮ブーム21を起伏させる起伏シリンダ22と、ブーム先端部に取付けたライナープレートRの天井部Rcを保持する保持手段3と、該保持手段3に保持されたライナープレートRの姿勢を調整するための姿勢調整手段4とを有している。尚、以下の説明において、ライナープレートRの天井部Rcを単にプレート天井部Rcということがあり、ライナープレートRの左右の脚部Rbを単にプレート脚部Rbということがある。
そして、図12及び図13のライナープレート組付装置は、次のように使用される。まず、トンネル内(図16)においてライナープレートRを横倒し姿勢でアーチ状に組付け、該ライナープレートRの両脚部Rb,Rb間に走行台車1を配置させておく(図12及び図13の状態)。このとき、伸縮ブーム21は、最縮小状態で水平姿勢まで倒伏させている。
次に、伸縮ブーム21を伸長させてブーム先端部の保持手段3を符号3′で示すようにプレート天井部Rcに届くまで突出させて、該保持手段3′でプレート天井部Rcを保持する。
次に、保持手段3′でプレート天井部Rcを保持した状態で、起伏シリンダ22を伸長させて伸縮ブーム21を符号21′(図12)で示すように鉛直姿勢まで立ち起こすと、立起装置2′でライナープレートを符号R′で示す鉛直姿勢で宙吊り状態に保持できる。
続いて、走行台車1を前後移動させたり、姿勢調整手段4による各種調整を行って、立起装置2′で支持している組付側ライナープレートR′を既設側ライナープレートR1(図16)に対して端面同士が全面接触する状態で接合させる。そして、既設側ライナープレートR1と組付側ライナープレートR′の接合端同士をそれぞれボルト締結するとともに、組付側ライナープレートR′の各脚部Rb′,Rb′の下端を既設の載置台W,W上にボルト締結することで、組付側ライナープレートR′の組付けが完了する。その後、保持手段3′(図12)を保持解除し、伸縮ブーム21′を縮小させ、該伸縮ブーム21′を水平姿勢まで倒伏させて、このライナープレート組付装置を次のライナープレート保持位置まで移動させる。
このように、図12及び図13に示す既出願(既開発)のライナープレート組付装置を使用すれば、横倒し姿勢で地上に置いてある組付側ライナープレートを鉛直姿勢まで立ち起こして、既設側ライナープレートに接合させるまでの作業を機械的に行える。
ところで、図12及び図13に示す既出願のライナープレート組付装置を使用してライナープレートを横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こす際に、次のような難点が発見された。
即ち、第1の難点として、図12及び図13に示すライナープレート組付装置では、ライナープレートRの天井部Rcを立起装置2の保持手段3で保持した状態で該立起装置2を立ち起こす際に、特に図14に示す立起初期段階においてライナープレートRの両各脚部Rbが地面(支持台)から離間したときに、ライナープレートの両脚部Rbに自重による垂れ下げ作用(図14の矢印B方向の傾動力)が発生し、ライナープレートRがブーム21に対して僅かではあるが平行度が狂うことがある。そして、ライナープレートRとブーム21との平行度が狂った状態で、該ブーム21が鉛直姿勢まで立起されると(図14の符号21′の状態)、ライナープレートは符号R′で示すように鉛直姿勢を超えた姿勢(プレート天井部Rc′が奥側でプレート脚部Rb′が手前側の姿勢)で立起され、その後、走行台車1を移動させて立起姿勢のライナープレートR′を符号R″で示すように既設のライナープレートR1に接合させるが、そのとき既設側ライナープレートR1の接合面aに対して組付側ライナープレートR″の接合面bが若干の角度をもって対面するようになる(プレート天井部同士が接合した状態でプレート脚部同士間に隙間ができる)。このように、既設側ライナープレートR1の接合面aと組付側ライナープレートR″の接合面bとが角度をもって対面すると、両ライナープレートR1,R″をボルト締結する作業がしにくくなるという問題があった。
又、第2の難点として、上記のように図14に示す立起初期段階において、ライナープレートの両脚部Rbに自重による垂れ下げ作用(図14の矢印B方向の傾動力)が発生すると、ライナープレートの天井部Rcを保持している保持手段3部分に不自然な変形作用(こねる作用)が働くことになる。そして、このようにプレート天井部Rcの保持手段3部分にこねる作用が働くライナープレート組付装置では、該保持手段3部分の耐久性が悪くなるとともに、該保持手段3部分の剛性を強くする必要があるので、ライナープレート組付装置全体が大重量化したりコスト高になるという問題があった。
さらに、第3の難点として、立起装置2の保持手段3でライナープレートRの天井部Rcのみを保持して、該ライナープレートRを鉛直姿勢で宙吊り状態に支持すると、図15に示すように左右の各プレート脚部Rb,Rbが自重でそれぞれ内方に撓むようになり(図15の実線図示状態)、該各プレート脚部Rb,Rbの下端が左右の載置台W,Wの直上位置よりそれぞれ内側に変位するようになる。そして、該各プレート脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ載置台W,W上に固定するには、該各プレート脚部Rb,Rbを鎖線図示(符号Rb′,Rb′)するようにそれぞれ外側に押し広げる必要があるが、その脚部押し広げ作業はかなり面倒であった。つまり、各プレート脚部Rb,Rbをそれぞれ載置台W,W上に固定するには、該プレート脚部Rbを作業員の人力によって符号Rb′のように外側に押し広げて該プレート脚部Rb′の下端を載置台W上の正確な位置に載せて(伸縮ブーム21を縮小させる)、該プレート脚部Rb′の下端を載置台W上にボルト締結するが、該各プレート脚部Rb′,Rb′の下端をそれぞれ載置台W上にボルト締結するまでは作業員が各プレート脚部Rb′,Rb′を正確な位置に押し広げた状態に維持させておく必要があって、そのプレート脚部Rb′の姿勢保持作業が面倒であった。
そこで、本願発明は、例えばトンネル内のように上方が制約された空間でも、アーチ状(又は門型状)に形成したライナープレートを機械的に立ち起こすことができるとともに、ライナープレートを立ち起こす際に該ライナープレートの各脚部が自重で下方に垂れ下がるのを阻止し得るようにしたライナープレート組付装置を提供することを主たる目的としてなされたものである。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、例えばトンネル内のような上方が制約された場所においてアーチ状又は門型状のライナープレートを順次組付けてトンネル状の覆工体を構築する際に使用するライナープレート組付装置を対象にしている。
尚、本願の以下の説明において、横倒し姿勢とは水平面から上下に若干角度(例えば±5°程度)ずれた範囲を含むものであり、鉛直姿勢とは鉛直面から前後に若干角度(例えば±5°程度)ずれた範囲を含むものである。又、本願の説明においても、ライナープレートの天井部を単にプレート天井部ということがあり、ライナープレートの左右の脚部を単にプレート脚部ということがある。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明のライナープレート組付装置は、アーチ状又は門型状のライナープレートを横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こして、その立ち起こしたライナープレートを既設側ライナープレートに接合させるためのものであって、基台にライナープレートを横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こすことができる立起装置を装備したものである。
上記立起装置は、基台に対して起伏自在に取付けた伸縮式のブームと、該ブームを起伏させる起伏手段と、上記ブームの先端部に設けていて上記ライナープレートの天井部を保持し得る保持手段とを有している。尚、ブームは、基側ブームに対して少なくとも1本の先側ブームを伸縮自在に取付けたものであり、該先側ブームはブームに内蔵された伸縮シリンダで伸縮せしめられる。
上記ブーム(基側ブーム)の基端寄り位置には、該ブームと上記ライナープレートが共に横倒し姿勢にある状態で該ブームから横倒し姿勢のライナープレートの左右両脚部のそれぞれ内面に達する長さを有した左右の各脚部支持サポートを固定している。
上記各脚部支持サポートは、上記ブームの基端寄り位置から左右外方に延出するフレーム材と、該フレーム材の先端部にピンで枢支して揺動自在に継ぎ足された揺動リンクとを有している。
上記各脚部支持サポートにおける各揺動リンクは、上記フレーム材の先端部に対して上記ブームを水平姿勢まで倒伏させた姿勢において下方に変位することなしに水平面内でのみ揺動し得る状態で取付けられている。
上記各揺動リンクのそれぞれ外端には、ライナープレートの各脚部の内面を係脱自在に保持し得る脚部保持部を設けている。
そして、上記各脚部支持サポートは、横倒し姿勢のライナープレートの天井部を上記立起装置の保持手段で保持し且つライナープレートの各脚部を各揺動リンクの上記脚部保持部で保持して該ライナープレートを地上から浮上させた支持状態で、上記各脚部の自重で該各脚部が上記天井部に対して下方に変形しないように支持できる剛性を有したものである。
この請求項1のライナープレート組付装置は、次のように使用される。尚、このライナープレート組付装置は、例えばトンネル内のような上方が制約された場所での使用に適したものであるが、トンネル以外の場所にトンネル状覆工体を構築する場合にも使用可能である。
まず、ライナープレートの設置位置(立ち起こし姿勢での設置位置)の近傍位置において、複数個のセグメントを横倒し姿勢でアーチ状(又は門型状)に組付けて一連のライナープレートを組立てる。この場合、横倒し姿勢で組立てたライナープレートをその場で立ち起こしたときに、その立ち起こしたライナープレートがほぼ正規の設置位置で立設されるような位置で組立てることが望ましい(後の位置合わせ作業が容易となる)。
その後、ブームを最縮小させた状態で基台を所定位置まで移動させるが、そのときブームの軸線は平面視においてトンネル幅の中心線(構築すべき覆工体の幅中心線)に重合するように位置させておく。そして、その状態から、ブームを若干伸長させてブーム先端部の保持手段で横倒し姿勢のライナープレートの天井部(プレート天井部)の中央部を保持させる一方、それと併行して左右の脚部支持サポートの各揺動リンクの外端に設けた各脚部保持部でライナープレートの各脚部(プレート脚部)の内面をそれぞれ保持させる。
次に、上記のように保持手段でプレート天井部を保持し且つ各脚部保持部で各プレート脚部を保持した状態で、ブームを起伏手段で横倒し姿勢から鉛直姿勢まで立ち起こすと、ライナープレートをブームとともに鉛直姿勢まで立ち起こすことができる。
ところで、ライナープレートの立ち起こし初期段階において、プレート天井部を弧回動式に持ち上げていくと、ライナープレートが横倒し姿勢に近い状態で両プレート脚部が地面から離間(地切り)するが、そのとき両プレート脚部が自由状態(非支持状態)であると、該各プレート脚部が自重によりプレート天井部(保持手段で保持されている)に対して下方に垂れ下がるような作用が発生する。そして、このように各プレート脚部に垂れ下げ作用が発生すると、ブームに対するライナープレートの平行度が狂うことがある(それによってライナープレート同士をボルト締結する作業が面倒になる)とともに、プレート天井部を保持している保持手段部分に不自然な変形作用(こねる作用)が働くので、好ましくない。
そこで、本願請求項1のライナープレート組付装置では、ブームの基端寄り位置から左右に延出させている各脚部支持サポートで左右の各プレート脚部をそれぞれ支持できるので、立起装置の保持手段でプレート天井部を保持してライナープレートを立ち起こす際に、各プレート脚部も各脚部支持サポートで支持した状態で行うと、該各プレート脚部がプレート天井部(保持手段部分)に対して垂れ下がることがない。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1のライナープレート組付装置において、上記フレーム材と上記揺動リンクとの間に、該揺動リンクの揺動位置を調整可能に固定できるリンク揺動位置調整手段を設けていることを特徴としている。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2において、ライナープレートとして、各プレート脚部の内面にそれぞれ内向きに突出する内向き突出部を設けたものを使用し、上記脚部保持部にブームを水平姿勢まで倒伏させた姿勢おいて上記内向き突出部に下方から係合する引っ掛け部を設けていることを特徴としている。
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項3のライナープレート組付装置において、引っ掛け部にライナープレートの内向き突出部を摺動させるスライドプレートを設けていることを特徴としている。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明のライナープレート組付装置は、トンネル内における既設側のライナープレートの近傍位置において横倒し姿勢で配置させたライナープレートを立起装置で鉛直姿勢まで立ち起こすことができるようにしたものである。
従って、この請求項1のライナープレート組付装置では、組付側のライナープレートを既設側のライナープレートに接合させる作業を少人数で能率よくしかも安全に行えるという効果がある。
又、この請求項1のライナープレート組付装置では、立起装置によってライナープレートを立ち起こすことができるので、組付けるべきライナープレートとして重量の重いものでも立ち起こし可能となる。従って、一度の立ち起こし作業で実施し得るライナープレートとして幅広(重量が重くなる)のものを採用でき、ライナープレートによるトンネル状覆工体の構築効率(スピード)が良好となるという効果もある。
さらに、この請求項1のライナープレート組付装置では、ライナープレートをその下面側空所(両プレート脚部間の空所)から立ち起こすことができるので、例えばトンネル内のような上方に制約があるような覆工体構築現場であっても、機械的なライナープレートの組付作業が行えるという効果がある。
又、この請求項1のライナープレート組付装置では、プレート天井部を保持してライナープレートを横倒し姿勢から鉛直姿勢に立ち起こす際に、ライナープレート横倒し姿勢で両プレート脚部をそれぞれ脚部支持サポートで支持した状態でライナープレート立ち起こし操作を行えるので、両プレート脚部がプレート天井部に対して垂れ下がる(こねる)作用は発生しない。
従って、ライナープレートはブームに対して平行状態を維持したまま立起させることができるので、ブームを鉛直姿勢まで立起させたときにはライナープレートも鉛直姿勢となり、その組付側ライナープレートの接合面を既設側ライナープレートの接合面に対して高度な平行度を維持した状態で接触させることができる(後のボルト締結作業が容易となる)という効果がある。
さらに、ライナープレートを立ち起こす際に、上記のように両プレート脚部がプレート天井部に対して垂れ下がる(こねる)作用が発生しないので、立起装置におけるプレート天井部の保持手段部分に過度な負担がかからないとともに、該保持手段部分の剛性をさほど強くする必要がないので、軽量化とコストダウンを図れるという効果がある。
又、立起装置によりライナープレートを鉛直姿勢に立ち起こした姿勢では、各プレート脚部の自重により該各プレート脚部が内方に撓んで、各脚部支持サポートが内方側に圧縮される作用が発生するが、各プレート脚部に対して各脚部支持サポートによる突っ張り作用があるので、ライナープレートを鉛直姿勢に立ち起こした姿勢でも、各プレート脚部が自重で内方に撓むのを防止できる。このことは、ライナープレートの各脚部を既設の各載置台(左右一対ある)上に位置決めする際の位置合わせ作業が容易になるという効果がある。
又、各脚部支持サポートは、フレーム材の先端部に揺動リンクを揺動自在に継ぎ足したものであるから、揺動リンクを揺動させることによって、ブームとプレート脚部間の間隔に対応させて各脚部支持サポートの全体長さを調整できるので、単一機種でサイズ(両プレート脚部間の間隔)の異なる各種のライナープレートに適用できるという効果がある。
さらに、立起装置によりライナープレートを鉛直姿勢に立ち起こした姿勢では、上記のように各プレート脚部の自重による該各プレート脚部の内方撓み作用により各脚部支持サポートが内方側に圧縮される作用が発生するが、各プレート脚部に対して各脚部支持サポートによる支持を解除する際には、揺動リンクを出幅縮小側に揺動させることで、簡単に支持解除できるという効果がある。
又、上記揺動リンクは、フレーム材の先端部に対してブームを水平姿勢まで倒伏させた姿勢において下方に変位することなしに水平面内でのみ揺動し得る状態で取付けているので、脚部支持サポートとしてフレーム材の先端部に揺動リンクを継ぎ足したものであっても、各プレート脚部を支障なく支持できるという効果もある。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1のライナープレート組付装置において、揺動リンクの揺動位置を調整可能に固定できるリンク揺動位置調整手段を設けているので、上記請求項1の効果に加えて、左右の各プレート脚部間の間隔に応じて各脚部支持サポートの全体長さを簡単に調整できるとともに、支持解除操作(揺動リンクを出幅縮小側に揺動させる操作)も簡単に行えるという効果がある。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2のライナープレート組付装置において、脚部保持部に、横倒し姿勢のライナープレートの内向き突出部(脚部内面にある)に下方から係合する引っ掛け部を設けているので、請求項1〜2の効果に加えて、脚部保持部による脚部内面の保持が確実に行えるという効果がある。
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項3のライナープレート組付装置において、引っ掛け部にライナープレートの内向き突出部を摺動させるスライドプレートを設けているので、上記請求項3の効果に加えて、立起装置によりライナープレートを鉛直姿勢で宙吊りに支持した状態からブームを縮小して該ライナープレートを降下させたときに、上記内向き突出部を引っ掛け部に対してスムーズにスライドさせることができるという効果がある。
[実施例]
以下、図1〜図11(及び図16)を参照して本願実施例のライナープレート組付装置を説明する。
この実施例のライナープレート組付装置で取り扱うライナープレートRは、図10及び図11に示すような広幅状態に組付けたものを使用するが、このライナープレートRは、複数枚の矩形の板状体を1列状態でアーチ状に組付けてなる2列の板材部P,P間に、複数本のH型鋼を1列状態でアーチ状に組付けてなる補強部Qを介在させたものである。
このライナープレートRは、例えば図16に示すように、トンネル状覆工体Sを構築すべき場所(この実施例ではトンネルT内)の地面上において、板材部Pを構成する各板状体と補強部Qを構成する各H型鋼とをそれぞれボルト止めにて一体に組付けたものであるが、このライナープレートRは次のようにして組付けられる。即ち、板材部Pを構成する各板状体の外周4面には、それぞれボルト穴U,U・・が形成されている一方、補強部Qを構成する各H型鋼にもボルト穴が形成されていて、板材部Pとなる各板状体と補強部Qとなる各H型鋼とを、図10及び図11に示すようにそれぞれボルトV(図11)で連結して、2列の板材部P,P間に1列の補強部Qを介設した広幅のライナープレートRに組付けている。
そして、図10のライナープレートRは、アーチ状の天井部Rcの左右各側にそれぞれ直線状の脚部Rb,Rbを連続させて構成したものである。尚、以下の実施例の説明においても、ライナープレートRの天井部Rcを単にプレート天井部Rcということがあり、該ライナープレートRの左右の各脚部Rbを単にプレート脚部Rbということがある。
この実施例で使用されるライナープレートR(図10のもの)の大きさとしては、特に限定するものではないが、左右の両プレート脚部Rb,Rb間の間隔Dが450〜550cm、プレート天井部Rcまでの高さEが400〜500cm、奥行き方向の幅Fが80〜100cm程度のものを使用できる。
又、このライナープレートRでは、図11に示すように、補強部(H型鋼)Qの内外厚さが板材部Pの内外厚さより大きくなっており、該補強部Qの内面側(図11の左側面側)を板材部Pの内面より若干幅だけ内方に突出させて内向き突出部Qaとしている。尚、この内向き突出部Qaは、本願請求項3における内向き突出部となるものである。
この実施例のライナープレート組付装置は、図1〜図2に示すように、自走式の走行台車1と、該走行台車1の車台11に取付けられていて横倒し姿勢のライナープレートRを鉛直姿勢まで立ち起こす立起装置2とを備えて構成されている。尚、この実施例においても、横倒し姿勢とは水平面から上下に若干角度(例えば±5°程度)ずれた範囲を含むものであり、鉛直姿勢とは鉛直面から前後に若干角度(例えば±5°程度)ずれた範囲を含むものである。
上記走行台車1は、特許請求の範囲中の基台に相当するもので、この実施例では基台として自走式の走行台車1を使用している。そして、この走行台車1は、車台11の前部及び後部の下面にそれぞれ左右の車輪(前輪13,13と後輪12,12)を設けているとともに、左右の各前輪13,13をそれぞれ油圧モータ14,14を使用した駆動装置で駆動することによって、この走行台車1を前進及び後退させ得るようにしている。
尚、走行台車1の車台11上には、図示しない油圧ユニットや配電盤等の機器が搭載されている。
上記立起装置2は、走行台車1の車台11上に取付けた伸縮式のブーム21と、該ブーム21を起伏させる起伏シリンダ22,22と、ブーム先端部に取付けられたライナープレート保持用の保持手段3と、該保持手段3に保持されたライナープレートRの姿勢を調整するための姿勢調整手段4とを有している。尚、以下の説明では、特許請求の範囲中の伸縮式のブームを伸縮ブーム21といい、同じく特許請求の範囲中の起伏手段を起伏シリンダ22という。
この実施例で使用している伸縮ブーム21は、基側ブーム21aと先側ブーム21bの2本のブームで構成したものであるが、3本以上のブームを使用したものでもよい。尚、先側ブーム21bは、基側ブーム21aに対して図示しないブーム内蔵式の油圧シリンダで伸縮せしめられる。
この伸縮ブーム21は、基側ブーム21aの基端部を車台11の前端部に取付けた左右の取付台23,23に軸24で枢支して、該伸縮ブーム21の先端側が車台11の前方側に倒伏し得るように取付けている。ブームの起伏シリンダ22,22は、基側ブーム21aの左右に一対設置されている。
そして、この伸縮ブーム21は、起伏シリンダ22,22の縮小状態では図1及び図2に示すようにブーム先端側が後側に向く略水平姿勢まで倒伏している一方、起伏シリンダ22,22の伸長状態では図1に鎖線図示(符号21′)する略鉛直姿勢まで立ち起こされるようになっている。尚、車台11の後部は、幅方向中間部を切り欠いた二股状になっており、伸縮ブーム21を最大倒伏させたときでも、該伸縮ブーム21が車台11に衝突しないようになっている。
ライナープレートRを保持するための保持手段3は、ブーム先端部に姿勢調整手段4(水平旋回手段42及び左右移動手段41)を介して取付けたものである。そして、この実施例で使用されている保持手段3は、図3及び図4に拡大図示するように、左右にかなりの長さ(例えば100〜110cm程度)を有した細長形状の保持台31の上面(図3及び図4では右側面)に保持台長さ方向とは直交方向(図4の上下方向)に所定間隔(例えば15〜20cm間隔)をもって2枚のガイド板32,32を立設したものである。この両ガイド板32,32は、それぞれ保持台31の全長と同長さを有し、さらに該両ガイド板32,32間の間隔は、ライナープレートRの補強部Qとして使用されているH型鋼の底面幅(例えば10cm程度)よりやや広い程度に設定されている。
保持台31の両ガイド板32,32間には、保持台長さ方向の両端寄り位置にそれぞれ転動自在なローラ43a,43aが取付けられている。
両ガイド板32,32のうちのブーム倒伏状態(図4)で下側となるガイド板32の内面側には、図3に示すようにガイド板32の長さ方向両端寄り位置で且つ上記ローラ43aの外周面から外側(図3及び図4の右側)に所定小間隔(例えば15〜20mm程度の間隔)を隔てた位置に、内側に向けて小長さの突出ピン33,33を取付けている。
この突出ピン33の先端から対向する側にあるガイド板32の内面までの間隔は、ライナープレートRの補強部QとなるH型鋼の底面幅(例えば10cm程度)よりやや大きくなるように設定されている。又、該突出ピン33の外面とローラ43aの外面との間隔は、上記補強部Qの底面部(突出片Qa)の厚さよりやや大きい程度に設定されていて、補強部Qの底部突出片Qaを突出ピン33とローラ43aとの間に出し入れし得るようになっている。尚、補強部Qの底部突出片Qaを突出ピン33とローラ43aとの間に保持させるには、図4の状態で伸縮ブーム21を立ち起こす側(図4の矢印C)に作動させることで行える。
そして、この各突出ピン33,33は、ライナープレートRの補強部Qを保持手段3で保持したときに(補強部Qの底部突出片Qaが突出ピン33とローラ43aとの間に挿入された状態で)、補強部Qの底部突出片Qaの外側をガードすることができ、それによってライナープレートRが保持手段3から不用意に脱落するのを防止できる機能がある。
上記姿勢調整手段4は、図3及び図4に示すように、ブーム先端部(先側ブーム21bの先端部)の保持手段3で保持したライナープレートRをブーム先端部に対して、左右に傾動させ得る左右傾動手段43と左右に移動させ得る左右移動手段41と水平面内で旋回させ得る水平旋回手段42とを備えている。尚、この姿勢調整手段4(左右傾動手段43と左右移動手段41と水平旋回手段42)については、本願発明の主要構成に含まれないので、その詳細な説明を省略する。
この実施例のライナープレート組付装置には、ライナープレートRの立ち起こし動作時に、プレート脚部Rbが自重でプレート天井部Rcに対して下方に垂れ下がるのを防止するための脚部支持サポート5,5が付設されている。この脚部支持サポート5,5は、図1〜図2及び図5〜図9に示すように、伸縮ブーム21の基側ブーム21aの基端寄り位置から水平方向の左右各外側に延出する状態で設置されている。
この各脚部支持サポート5,5は、本願請求項1に対応する構成として、図2に示すように、伸縮ブーム21とライナープレートRが共に横倒し姿勢にある状態、即ち該伸縮ブーム21を横倒し姿勢のライナープレートRの左右両脚部Rb,Rb間の中央に倒伏姿勢で位置させた状態で、基側ブーム21aの基端寄り位置から左右(図2では上下)の各プレート脚部Rb,Rbの内面に達する長さを有している。そして、各脚部支持サポート5,5のそれぞれ先端部には、左右の各プレート脚部Rb,Rbの内面を係脱自在に保持する脚部保持部6,6を設けている。尚、脚部保持部6の構造については、後で詳述する。
又、この実施例では、各脚部支持サポート5,5は、図2及び図5(拡大図示)に示すように、基側ブーム21aの基端寄り位置からそれぞれ左右外側に延出するフレーム材51と、該フレーム材51の先端部において揺動自在に枢支された揺動リンク52とを有している。尚、この場合、上記脚部保持部6は、揺動リンク52における外方側端部52aに設けられる。
各フレーム材51,51は、その各基端部が基側ブーム21aの基端寄り位置に固定された保持体50に固定的に取付けられている。尚、この実施例のように、各フレーム材51,51として連続する1本の長尺材を使用し、その長尺材の中間位置を保持体50に固定して該長尺材の左右延出部をそれぞれフレーム材51,51とすると、該両フレーム材51,51の取付剛性を強くできる。
各揺動リンク52,52は、その長さ方向中間位置をフレーム材51の先端部51aにピン53で枢支されている。又、この各揺動リンク52,52を枢支するピン53,53は、伸縮ブーム21を水平姿勢まで倒伏させた姿勢(図1〜図2)において、各揺動リンク52がフレーム材51に対して下方に変位することなしに水平面内でのみ揺動し得る状態で取付けられている。即ち、伸縮ブーム21を水平姿勢まで倒伏させた姿勢において、図5に示すようにピン53を上下に向く姿勢で使用することにより、揺動リンク52を水平面内でのみ揺動し得るようにしている。
又、この実施例では、本願請求項2に対応する構成として、各脚部支持サポート5,5には、フレーム材51と揺動リンク52との間に、該揺動リンク52の揺動位置を調整可能に固定できるリンク揺動位置調整手段7を有している。
このリンク揺動位置調整手段7としては、この実施例ではフレーム材51と揺動リンク52の内方側端部52bとの間を伸縮シリンダ71で連結したものが採用されている。
そして、このリンク揺動位置調整手段7は、伸縮シリンダ71を縮小させると図2及び図8に示すように揺動リンク52の外方側端部に設けた脚部保持部6の外方突出幅を大きくし得る一方、該伸縮シリンダ71を伸長させると図9に示すように揺動リンク52の外方側端部に設けた脚部保持部6の外方突出幅を小さくし得るようになっている。
この実施例では、リンク揺動位置調整手段7の伸縮シリンダ71は、図6に示すブーム21の立起姿勢においてフレーム材51の上面側に設置しているが、この伸縮シリンダ71はフレーム材51の下面側に設置して、該伸縮シリンダ71で揺動リンク52の外方側端部52a(図2参照)側を押し引きするようにしてもよい。その場合は、伸縮シリンダ71を伸長させると上記脚部保持部6の外方突出幅を大きくし得る一方、伸縮シリンダ71を縮小させると上記脚部保持部6の外方突出幅を小さくし得る。
尚、他の実施例では、上記リンク揺動位置調整手段7として、伸縮シリンダ71に代えて、レバーブロックで揺動リンク52の内方側端部52bを引き寄せ得るようにしたものや、ネジ式(例えばターンバックル)のもので揺動リンク52の内方側端部52bを押し引きし得るもの、等を採用してもよい。
又、この実施例では、本願請求項3に対応する構成として、ライナープレートRの各脚部Rb,Rbの内面にそれぞれ内向きに突出する内向き突出部を設ける一方、上記脚部保持部6に伸縮ブーム21を水平姿勢まで倒伏させた姿勢において上記内向き突出部に下方から係合する引っ掛け部61を設けている。
即ち、この実施例では、図5に拡大図示するように、ライナープレートRの脚部Rbに設けた内向き突出部として、ライナープレートの幅中央部にある補強部Qの内面側突出片Qaを採用している一方、脚部保持部6に設けた引っ掛け部61として、該内向き突出部(補強部Qの内面側の下側の突出片Qa)を下方から受ける上向き開口の凹部を採用している。
他方、脚部保持部6は、図5に示すように、揺動リンク52の外方側端部52aにボルト64で吊持されているとともに、該脚部保持部6の吊持高さを該ボルト64に螺合されているナット65の螺合量を調整することにより、実線図示位置(符号6)と鎖線図示位置(符号6′)との間で上下動させ得るようになっている。そして、脚部保持部6を鎖線図示位置(符号6′)まで降下させると、引っ掛け部61′がライナープレートR側の内向き突出部(下側の突出片)Qaの下端より低位置(係合解除位置)に位置していて、揺動リンク52を水平面内で揺動させ得るようになっているとともに、該引っ掛け部61′が上記内向き突出部Qaの直下近傍に位置した状態から、ナット65によるボルト繰り上げ操作で脚部保持部を実線図示位置(符号6)まで上動させると、引っ掛け部61を内向き突出部Qaに下方から係合させ得るようになっている。
そして、脚部保持部6の引っ掛け部61がライナープレートR側の内向き突出部Qaに係合した状態(図5の実線図示状態)では、図2に示すように、横倒し姿勢のライナープレートRの左右各脚部Rb,Rbを左右の各脚部支持サポート5,5でそれぞれ下方から支持している。
又、この実施例では、本願請求項4に対応する構成として、図5及び図7に示すように、脚部保持部6の引っ掛け部61に、プレート脚部Rbの内向き突出部Qaを摺動させるスライドプレート62、63を設けている。
このスライドプレート62,63は、次のような機能をするものである。即ち、ライナープレート設置過程において、図6に示すようにライナープレートRを立ち起こして宙吊りに支持している状態から、伸縮ブーム21を縮小してライナープレートRの両脚部Rb,Rbを図8に示すように載置台W上に載せるまで降下させるが、その際に基側ブーム21aは不動であるので各脚部支持サポート5,5も不動状態を維持しているのに対して左右の各プレート脚部Rb,Rbが下動するので、脚部保持部6(引っ掛け部61)に対してプレート脚部Rbの内向き突出部Qaが摺動し、その摺接部分に摩擦抵抗が発生するようになる。
そこで、この実施例のように、脚部保持部6の引っ掛け部61に内向き突出部Qaを摺動させるスライドプレート62,63を設けておくと、プレート脚部Rbの内向き突出部Qaを脚部保持部6に対してスムーズに摺動させることができる。
次に、この実施例のライナープレート組付装置の使用方法を説明すると、この実施例のライナープレート組付装置も、図16に示すようにトンネルT内で多数のライナープレートRを順次横倒し姿勢から立ち起こして、その組付側ライナープレートR′を既設側ライナープレートR1に接合させるのに使用される。
そして、まず図1及び図2に示すように、横倒し姿勢で組付けたライナープレートRの内側に、伸縮ブーム21を最縮小させ且つ水平姿勢まで倒伏させた状態で走行台車1を配置するが、このときブーム先端部の保持手段3をライナープレートRの天井部Rcの中央部近傍に位置させておく。尚、横倒し姿勢のライナープレートRは、自然状態の姿勢であるが、そのままの姿勢で鉛直姿勢まで立ち起こされると、左右の両プレート脚部Rb,Rb間の間隔は、既設の両載置台W,W間の間隔とほぼ一致するので、ライナープレート立ち起こし姿勢で両プレート脚部Rb,Rbの各下端を左右の載置台W,W上に位置合わせする際のプレート脚部位置の調整が不要又は軽微でよくなるという背景がある。
次に、図1及び図2の実線図示状態から、伸縮ブーム21を伸長させてブーム先端部の保持手段3′でプレート天井部Rcの内向き突出部Qaを保持させる一方(図3及び図4の状態)、左右の脚部支持サポート5,5の先端部(揺動リンク52の先端部)に設けた各脚部保持部6,6で左右のプレート脚部Rb,Rbの内向き突出部Qaを保持させる。このとき、各リンク揺動位置調整手段(伸縮シリンダ)7,7で各脚部保持部6,6が各プレート脚部Rb,Rbの内面に達するように各揺動リンク52,52の揺動位置を調整して固定するとともに、図5に示すように脚部保持部6の引っ掛け部61をプレート脚部Rb内面の内向き突出部Qaに係合させておく。
ところで、左右の脚部支持サポート5,5で左右のプレート脚部Rb,Rbを支持した状態では、各脚部支持サポート5,5の揺動リンク52,52が各リンク揺動位置調整手段(伸縮シリンダ)7,7で揺動不能に位置保持されているので、後述(図6)のように立起装置2でライナープレートRを宙吊り状態で立ち起こした状態でも、両プレート脚部Rb,Rbが自重で内方に撓むことがない。
次に、起伏シリンダ22,22を伸長させて伸縮ブーム21を立ち起こしていくと、ライナープレートRが地上から離間し、ライナープレートRの全重量をブーム先端部の保持手段3と左右の脚部支持サポート5,5とで分散支持した状態で該ライナープレートRを順次立ち起こしていくが、左右の各プレート脚部Rb,Rbはそれぞれ脚部支持サポート5,5で支持しているので、該各プレート脚部Rb,Rbが自重で垂れ下がることがない。従って、ブーム21を立ち起こす際に、ライナープレートRをブーム21に対して平行姿勢を維持したまま鉛直姿勢まで立ち起こすことができ、該ブーム21を鉛直姿勢まで立ち起こしたときにはライナープレートRも正確に鉛直姿勢となる。
又、ライナープレートRをブーム21で立ち起こす際には、両脚部支持サポート5,5で各プレート脚部Rb,Rbを支持している分だけ保持手段3部分での荷重支持力を軽減できる。従って、該各プレート脚部Rb,Rbの自重によるプレート天井部Rcへの変形作用は働かず、且つ保持手段3部分での荷重支持力が小さくてよいので、該プレート天井部Rcを保持している保持手段3部分に過度な負担がかからない。
又、図6に示すように、立起装置2でライナープレートRを宙吊り状態で支持している状態では、通常は図15に実線図示するように両プレート脚部Rb,Rbの自重によって該両プレート脚部Rb,Rbが内方に撓むようになるが、ライナープレートRの宙吊り状態(図6)では、各脚部支持サポート5,5のそれぞれリンク揺動位置調整手段(伸縮シリンダ)7,7によって各揺動リンク52,52を当初のままで姿勢保持している(突っ張り力がある)ので、両プレート脚部Rb,Rbに内方撓み力が働いていても該両プレート脚部Rb,Rbを当初の姿勢(間隔)に維持させておくことができる。
次に、図6のライナープレート宙吊り状態で、伸縮ブーム21を縮小させながら、図16に示すように組付側ライナープレートRを既設側ライナープレートR1に接合させるとともに、図8に示すように両プレート脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ左右の載置台W,W上に着座させる。このとき、両プレート脚部Rb,Rbの間隔は、両載置台W,Wの間隔とほぼ一致したままであるので、各プレート脚部Rb,Rbの下端位置調整はほとんど不要である。
又、ブーム21によりライナープレートRを立起させた状態では、その組付側ライナープレートRの接合面が既設側ライナープレートR1(図16)の接合面に対して高度な平行度を維持しているので、図8に示すように両プレート脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ左右の載置台W,W上に着座させたときに、組付側ライナープレートRの接合面が既設側ライナープレートR1(図16)の接合面に対して全面接触するようになる。
そして、図8の状態で、図16に示すように組付側ライナープレートRを既設側ライナープレートR1にボルト締結するとともに、左右のプレート脚部Rb,Rbの下端をそれぞれ左右の載置台W,W上にボルト締結するが、そのとき組付側ライナープレートRの接合面が既設側ライナープレートR1の接合面に対して全面接触していると、両ライナープレートR,R1のボルト締結作業が容易に行える。
その後、図8の状態で、左右の脚部保持部6,6の各引っ掛け部61(図5)を内向き突出部Qaから係合解除して各リンク揺動位置調整手段(伸縮シリンダ)7,7により各揺動リンク52,52を反突っ張り側に揺動させる一方、立起装置2上部の保持手段3をプレート天井部Rcに対して保持解除して伸縮ブーム21を縮小させると、図9に示すように、ライナープレート組付装置全体をフリー状態にでき、走行台車1を移動させてこのライナープレート組付装置を次のライナープレートの組付作業位置まで移動できる。
この実施例のライナープレート組付装置では、上記の各脚部支持サポート5,5による機能のほかに、次のような各種の機能を有している。
(1) このライナープレート組付装置を使用すると、組付側ライナープレートRを既設側ライナープレートR1に接合させる作業を少人数で能率よくしかも安全に行うことができる。
(2) 立起装置2によってライナープレートRを立ち起こすことができるので、組付けるべきライナープレートとして重量の重いものでも立ち起こし可能となり、一度の立ち起こし作業で実施し得るライナープレートとして幅広(重量が重くなる)のものを採用できるので、ライナープレートによるトンネル覆工体の構築効率(スピード)が良好となる。
(3) ライナープレートRをその下面側空所(両プレート脚部間の空所)から立ち起こすことができるので、例えばトンネルT内のような上方に制約があるような覆工体構築現場であっても、機械的なライナープレートの組付作業が行える。
(4) 姿勢調整手段4(左右傾動手段43と左右移動手段41と水平旋回手段42)を有しているので、組付側ライナープレートRを鉛直姿勢に立ち起こした状態で既設側ライナープレートR1に対して、左右の傾き度合い、左右位置合わせ(重合)度合い、及び対面部分の接合度合い、等を簡単に調整できる。
(5) 基台として自走可能な走行台車1を採用しているので、このライナープレート組付装置を自身で移動させ得るとともに、組付側ライナープレートを既設側ライナープレートに位置合わせする際の前後位置調整にも利用できる。
(6) ブームとして伸縮自在な伸縮ブーム21を採用しているので、1台のライナープレート組付装置で高さの異なる複数のライナープレートに適用できるとともに、ライナープレート位置合わせ時の高さ調節にも利用できる。
尚、他の実施例では、上記各構成に加えて、車台11上に作業員搭乗用の足場台を昇降自在に設置してもよく、さらにこのライナープレート組付装置全体を自力でトラック荷台に積み降ろしできるジャッキを装備してもよい。