以下、図面に基づいて、実施形態を説明する。
図1は、物体認識装置の一実施形態を示す。図1に示した物体認識装置10は、記録部11と、第1算出部12と、評価部13と、補正部14と、認識部15とを含んでいる。また、物体認識装置10は、投影装置PRから物体TGに投影されたパターンPTからの反射光を受ける測定装置MEに接続されている。なお、図1では、説明を分かりやすくするために、表面が平らな物体TGにパターンPTが投影された場合を示したが、物体TGの形状は、図1に示した形状に限らず、例えば、表面に凹凸があってもよい。
物体認識装置10に含まれる各部の機能及び動作の説明に先立って、測定装置MEと投影装置PRとについて説明する。
投影装置PRは、物体TGを含む領域に、複数の光点を含むパターンPTを投影する。投影装置PRによって投影されるパターンPTは、例えば、投影装置PRから距離D0が離れた平面PLに投影された場合に、所定の間隔で格子状に配列される複数の光点を含んでいる。投影装置PRは、例えば、投影装置PRの内部に含まれる半導体レーザなどの発光素子から射出される光束を、投影装置PRの内部に含まれる回折格子によって回折させることで、複数の光点を格子状に配列させたパターンPTを投影する。なお、図1に示した平面PLは、説明のために図示したものであり、パターンPTが投影される領域に平面PLは含まれない。
測定装置MEは、カメラなどの撮像部CAMと、画像処理部IMPとを含んでいる。撮像部CAMは、例えば、投影装置PRによって物体TGを含む領域に投影されたパターンPTを所定の時間毎に繰り返し撮影することで、物体TGの表面に投影された複数の光点を含む複数の画像IMGを取得する。撮像部CAMは、投影装置PRの内部に含まれる発光素子から射出される光の波長を含む波長帯に対する感度を有する。撮像部CAMによって撮影された画像IMGは、画像処理部IMPに渡される。
測定装置MEに含まれる撮像部CAMは、投影装置PRがパターンPTを投影する方向Drpに対して傾いた方向Drsから、物体TGに投影されたパターンPTを撮影する。このため、撮像部CAMによって撮影された画像IMGにおいて、物体TGの表面に投影されたパターンPTに含まれる各光点の位置は、光源である投影装置PRと各光点との距離に応じて、基準となる位置からずれることになる。ここで、各光点の基準となる位置とは、例えば、平面PLに投影されたパターンPTを撮像部CAMにより撮影した場合に得られる画像IMGにおける各光点の位置である。
測定装置MEに含まれる画像処理部IMPは、物体TGの表面に投影されたパターンPTを撮影した画像IMGにおける各光点の位置と、各光点に対応する基準となる位置との間のずれを検出する。そして、画像処理部IMPは、各光点に対応して検出したずれに基づいて、投影装置PRから物体TGの表面に投影された各光点までの距離を求める。例えば、投影装置PRから物体TGの表面に投影された光点Sp1までの距離D1を求める場合に、画像処理部IMPは、パターンPTが平面PLに投影された場合の光点Sp1に相当する光点Sp0の画像IMGにおける位置を基準の位置として用いる。画像処理部IMPは、画像IMGに含まれる光点Sp1の位置の基準の位置からのずれに基づいて、物体TGの表面に投影された光点Sp1の平面PLからの高さh1を求める。そして、画像処理部IMPは、求めた高さh1と投影装置PRと平面PLとの間の距離D0とから、距離D1を求める。
画像処理部IMPは、撮像部CAMにより撮影された画像IMGを受ける毎に、受けた画像IMGに含まれる各光点と投影装置PRとの間の距離を求め、求めた距離を示す情報を順次に物体認識装置10に渡す。
物体認識装置10に含まれる記録部11は、測定装置MEから受けた情報で示される各光点と投影装置PRとの間の距離を、例えば、各光点に対応して順次に記録する。例えば、測定装置MEの撮像部CAMにより、物体TGに投影されたパターンPTの撮影がn回(nは2以上の整数)行われた場合に、各光点に対応してn個の距離を示す数値が記録部11に記録される。
第1算出部12は、例えば、式(1)を用いて、各光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離を示す数値を用いて、光点毎に所定の時間中に測定装置MEによって得られた距離の分散Vを算出する。ここで、所定の時間とは、測定装置MEに含まれる撮像部CAMにより、n枚の画像が撮影される間に経過した時間である。また、式(1)において、数値jは、n以下の正の整数であって画像IMGの撮影順を示し、変数D(j)は、パターンPTに含まれるある光点について、j番目に撮影された画像IMGから測定装置MEによって得られた距離を示す。また、数値Davは、同じ光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離を示す数値の平均を示す。
なお、第1算出部12により各光点について求められる距離の分散は、式(1)で示される統計的な分散に限らず、各光点に対応して記録部11に記録されたn個の数値のばらつきの大きさを示す値であればよい。例えば、第1算出部12は、物体TGが所定の時間中に移動する場合に、各光点までの距離が変化することを考慮して、画像IMG毎に得られる各光点までの距離の変化量の平均値を、各光点の距離の分散として求めてもよい。
以上に説明した第1算出部12により、光点毎に算出された距離の分散は、評価部13に渡される。
評価部13は、第1算出部12から受けた距離の分散に基づいて、各光点に対応して記録部11に記録された距離の信頼度を評価する。評価部13は、例えば、式(2)などにより、第1算出部12によって算出された分散を示す値Vが小さいほど、信頼度の最大値である数値1に近い値を与える関数F(V)により、信頼度rを算出する。以下では、評価部13によって求められる信頼度が数値0以上数値1以下の実数であり、信頼度が高いほど最大値である数値1に近い値となる場合について説明する。
なお、評価部13において信頼度を求めるために用いる関数は、式(2)に示した関数F(V)に限られず、分散を示す値Vが小さいほど大きな値を持つ信頼度を与える関数であればよい。
補正部14は、評価部13により、信頼度が所定の第1閾値以下であるとされた光点である第1光点に対応して記録部11に記録された距離を、第1光点と所定の位置関係を有する他の光点に対応して記録された距離を用いて補正する。補正部14は、例えば、各光点に対応して評価部13によって得られた信頼度と所定の第1閾値とを比較することで、パターンPTに含まれる複数の光点の中から、信頼度が所定の第1閾値以下である第1光点を検出する。そして、補正部14は、検出した第1光点に対応して記録部11に記録された距離を、パターンPTにおいて当該第1光点に隣接する複数の光点に対応して記録された距離の平均値などで置き換えることで、検出した第1光点に対応する距離を補正する。ここで、補正部14は、測定装置MEによって測定された距離の信頼度が低い第1光点の検出に用いる第1閾値として、例えば、0.02程度の小さい値を設定することが望ましい。なお、補正部14は、評価部13によって各光点について求められた信頼度の平均値を求め、求めた平均値の半分程度の値を、第1閾値として用いてもよい。
認識部15は、補正部14によって補正された第1光点を含む各光点に対応する距離を記録部11から読み出し、読み出した距離に基づいて、パターンPTが投影された物体TGの形状を認識する。例えば、認識部15は、各光点に対応して読み出した距離に基づいて、物体TGの表面に投影された各光点の3次元空間における位置を求め、求めた位置を互いに補間することで、物体TGの表面の形状を示す曲面を求める。また、認識部15は、求めた曲面の時間変化に基づいて、物体TGの移動を検出してもよい。
なお、測定装置MEは物体認識装置10に含まれてもよいし、また、物体認識装置10が測定装置MEに含まれてもよい。更に、測定装置MEと投影装置PRと物体認識装置10とは、単一の装置に含まれてもよい。
図2は、図1に示したパターンPTを撮影した画像IMGの例を示す。図2に示した画像IMGは、図1に示した撮像部CAMによって撮影されたn枚の画像IMGのうちの1枚の例である。
図2に示した画像IMGにおいて、矩形の領域TGは、図1に示した物体TGの外形を示す。また、図2において、白色の円形S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9のそれぞれは、物体TGの表面に投影されたパターンPTに含まれる光点を示す。なお、図2の例では、パターンPTに含まれる光点のうち、光点S1〜S9以外の光点の図示は省略されている。また、図2の例において、物体TGの輪郭を示す矩形は、物体TGと光点S1からS9との位置関係を説明するためのものであり、画像IMGには含まれない。
また、図2において、破線で示した矩形の領域R5は、図1に示した画像処理部IMPにおいて、画像IMGから光点S5を検出する範囲を示す。ここで、画像IMGから光点S5を検出するために用いる範囲は、例えば、光点S5が図1に示した平面PLに投影された場合の画像IMGにおける位置を含み、パターンPTにおける光点の間隔W0よりも小さい幅W1を持つ範囲として設定される。図2においては図示を省略したが、図1に示した画像処理部IMPは、パターンPTに含まれる全ての光点に対応して、図2において光点S5に対応付けて示した領域R5と同様の範囲を予め設定し、設定した範囲の内側において対応する光点の検出を行う。なお、図2に示した領域R5を示す矩形は、図1に示した画像処理部IMPにより、光点S5の検出を行う範囲を示すためのものであり、画像IMGには含まれない。
ここで、図2に示した領域R5の内側に、光点S5以外のノイズN5が現れた場合について考える。ノイズN5は、例えば、物体TGの表面の模様や、図1に示した投影装置PR以外の光源からの光が物体TGの表面で反射することなどによって現れる。
例えば、図1に示した画像処理部IMPが、パターンPTに含まれる各光点として、対応して設定された範囲内で所定値以上の輝度を持つ円形を検出する場合に、図2に示した光点S5の代わりにノイズN5が領域R5内の光点として検出される可能性がある。また、n枚の画像間で、光点S5の輝度及びノイズN5の輝度に揺らぎがある場合、図1に示した画像処理部IMPは、n枚の画像IMGのそれぞれにおける領域R5内の光点として、光点S5とノイズN5とのいずれかをランダムに検出してしまう可能性がある。そして、このような場合に、例えば、n枚の画像IMGのそれぞれにおける領域R5から検出された光点の位置に基づいて算出される距離は、図3に示すように、対応する領域内にノイズが含まれない場合に比べて大きくばらつくことになる。
図3は、図1に示した測定装置MEによって得られる距離の例を示す。図3において、横軸tは時間を示し、縦軸Dは、図1に示した投影装置PRから物体TGに投影された光点までの距離を示す。図3の例では、時刻T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9,T10のそれぞれにおいて、図1に示した撮像部CAMによる撮影によって画像IMGが取得された場合について説明する。なお、撮像部CAMによる撮影によって取得される画像IMGの枚数は、図3に示した時刻の数である10に限らず、2以上であれば、10未満でも、10より多くてもよい。
図3において、各時刻T1〜T10に対応して示した白丸は、各時刻に撮影された画像IMGから、図1に示した画像処理部IMPにより、図2に示した領域R5から検出された光点の位置に基づいて算出された距離の例を示す。一方、各時刻T1〜T10に対応して示した黒丸は、例えば、図2に示した光点S4に対応する領域内にノイズN5のようなノイズが含まれていない場合について、各時刻に撮影された画像IMGから検出された光点S4の位置に基づいて算出された距離の例を示す。
図3の例では、白丸で示される距離は、幅Dv5の範囲でばらついているのに対して、黒丸で示される距離のばらつきの範囲は、幅Dv5よりも小さい幅Dvcとなっている。そして、白丸で示される距離のばらつきが黒丸で示される距離のばらつきよりも大きくなる原因は、図2に示した領域R5内の光点として、本来の光点である光点S5とノイズN5とが、例えばランダムに検出されることにある。なお、図3の例は、時刻T1,T3,T4,T7及びT8に撮影された画像IMGの領域R5から、本来の光点である光点S5が検出され、他の時刻に撮影された画像IMGの領域R5から、ノイズN5が光点S5の代わりに検出された場合を示している。
即ち、所定の時間中に撮影されたn枚の画像IMG内のある光点の位置に基づいて算出された距離の分散が大きいほど、各画像IMGから当該光点とノイズとが混在して検出されている可能性が高い。そして、例えば、パターンPTに含まれる光点S5として誤ってノイズN5を検出した場合に、検出したノイズN5の位置に基づいて求められた距離は、物体TGに投影された光点S5までの距離とは異なる。したがって、図2において白丸で示した光点S5について得られた距離の平均値は、物体TGに投影された光点S5と投影装置PRとの間の距離を示さない値となり、距離の測定結果としての信頼度は、ノイズN5がない場合に比べて低くなる。つまり、図1に示した評価部13によって、式(1)などを用いて求められた信頼度は、測定装置MEによる距離の算出に用いられた各光点の位置の中に、図2に示したノイズN5のようなノイズが含まれている可能性の低さを示している。
図4は、図1に示した評価部13により求められた信頼度の例を示す。図4(A)は、図2に示した光点S1〜S9について、図1に示した測定装置MEによって得られた距離と、評価部13によって得られた信頼度との対応関係を示す。また、図4(B)は、図1に示した測定装置MEにより、図2に示した光点S1〜S9について得られた距離に基づいて、パターンPTが投影された物体TGの形状を認識した結果の例を示す。
図4(A)の例において、光点S1に対応して示した値[1500]は、光点S1について、測定装置MEによって得られた距離を示し、同じく光点S1に対応して示した値[0.10]は、評価部13によって求められた信頼度を示す。同様に、図4(A)の表は、光点S2,S3,S4,S5のそれぞれについて、測定装置MEにより、距離[1510],距離[1490],距離[1480],距離[2860]が得られたことを示す。また、図4(A)の表は、光点S6,S7,S8,S9のそれぞれについて、測定装置MEにより、距離[1490],距離[1500],距離[1480],距離[1510]が得られたことを示す。また、図4(A)の表は、光点S2,S3,S4,S5のそれぞれについて、評価部13により、信頼度[0.11],信頼度[0.12],信頼度[0.08],信頼度[0.01]が得られたことを示す。同様に、図4(A)の表は、光点S6,S7,S8,S9のそれぞれについて、評価部13により、信頼度[0.10],信頼度[0.11],信頼度[0.09],信頼度[0.11]が得られたことを示す。
図4(A)において、各光点S1〜S9に対応して示した距離及び信頼度を互いに比較すれば、光点S5以外の各光点に対応して得られた距離及び信頼度がほぼ同等の値を示していることが分かる。これに対して、光点S5に対応して示された距離[2860]は、他の光点に対応する距離の平均値の2倍に近い値である。一方、光点S5に対応して示された信頼度[0.01]は、他の光点に対応する信頼度の平均値(図4(A)の例では0.09)の半分未満の値である。即ち、図2に示した光点S5は、図1に示した評価部13により、信頼度が、例えば隣接する各光点について得られた信頼度の平均値の半分程度に設定された第1閾値以下であるとされた第1光点の一例である。
そして、図4(A)に示した光点S5に対応する距離のように、信頼度が第1閾値よりも低い距離を、他の光点について得られた距離と区別せずに物体TGの形状の認識に用いると、物体TGの形状を実際とは異なる形状として認識してしまう場合がある。
例えば、図4(B)は、光点S5について、他の光点に対応して得られた距離の2倍近い距離が得られたことから、図1に示した認識部15により、物体TGの形状が、中央部に凹みを有する形状Rbとして認識された例を示している。なお、図4(B)において、中央部の凹みは、白抜きで示されている。
図5は、図1に示した補正部14により補正された距離の例を示す。図5(A)は、図1に示した補正部14により、図2に示した光点S5について測定装置MEで得られた距離を、光点S5に隣接する光点S1〜S4及び光点S6〜S9について得られた距離に基づいて補正した例を示す。また、図5(B)は、図5(A)に示した補正後の距離を用いて、図1に示した認識部15により、パターンPTが投影された物体TGの形状を認識した結果の例を示す。
図5(A)に示した表において、光点S5以外の各光点に対応して示された距離は、図4(A)に示した距離と同等である。そして、図5(A)の表において、光点S5に対応して示された距離[1495]は、図1に示した補正部14により、光点S5に隣接する各光点に対応して得られた距離から算出された補正後の距離を示す。ここで、光点S5に隣接する光点とは、図2に示した光点S1〜S4及び光点S6〜S9であり、図5(A)の例は、補正部14により、光点S5の補正後の距離として、これらの光点に対応する距離の平均値を求めた場合を示す。
以上に説明した補正部14により求められる光点S5に対応する補正後の距離は、信頼度を考慮せずに光点S1〜S9について得られた距離を平均することで得られる値に比べて、確からしい値となる。なぜなら、補正部14により求められる光点S5に対応する補正後の距離は、光点S5に対応して得られた信頼度の低い距離の影響を受けないからである。つまり、図1に示した補正部14による補正を行うことにより、認識部15は、信頼度を考慮せずに単なる平滑化を行った場合に比べて、パターンPTに含まれる各光点について確からしい距離の測定結果に基づいて物体を認識することができる。
なお、信頼度が所定の閾値以下と評価された光点について得られた距離の補正に用いる情報は、図4の例に限らず、図1に示したパターンPTにおいて、低い信頼度が得られた光点に他の光点よりも近接して配置された光点から得られる情報であればよい。例えば、補正部14は、光点S5に隣接する光点S2,S4,S6,S8について得られた距離を用いて、光点S5に対応して得られた距離を置き換えるための補正値を算出してもよい。また、より好ましくは、補正部14は、低い信頼度が得られた光点に近接して配列された光点の中で、所定の閾値以上の信頼度が得られた光点に対応して得られた距離を選択的に用いて、信頼度が低いとされた光点に対応する補正後の距離を求めることが望ましい。
図5(A)に示したように補正された光点S5に対応する距離は、他の光点について得られた距離とともに、図1に示した認識部15による物体TGの形状の認識に用いられる。この場合に、認識部15は、図5(B)に示すように、中央部に凹みを持たない形状として、物体TGの形状を認識することが可能となる。
図6は、図1に示した物体認識装置10の動作を示す。図6に示したステップS301〜ステップS304の処理は、図1に示した物体認識装置10の動作を示すとともに、物体認識方法および物体認識プログラムの例を示す。例えば、図6に示す処理は、物体認識装置10に搭載されたプロセッサが物体認識プログラムを実行することで実現される。なお、図6に示す処理は、物体認識装置10に搭載されるハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS301において、図1に示した記録部11は、パターンPTに含まれる各光点について、測定装置MEにより所定の時間中に複数回測定された距離のそれぞれを記録する。
ステップS302において、図1に示した第1算出部12は、パターンPTに含まれる光点毎に、所定の時間中に各光点に対応して記録部11に記録された複数の距離の分散を算出する。
ステップS303において、図1に示した評価部13は、第1算出部12で算出された分散に基づいて、各光点に対応して記録部11に記録された距離の信頼度を評価する。
ステップS304において、図1に示した補正部14は、評価部13により、信頼度が第1閾値以下であるとされた第1光点に対応して記録部11に記録された距離を、第1光点に隣接する他の光点に対応して記録部11に記録された距離を用いて補正する。
そして、ステップS304の処理の終了後に、図1に示した認識部15は、記録部11に各光点に対応して記録された補正後の距離に基づいて、パターンPTが投影された領域内の物体TGの形状を認識する処理を行う。
以上に説明したように、図1に示した物体認識装置10は、物体TGの表面に投影された各光点について測定装置MEによる複数回の測定で得られた距離の分散から、各光点に対応して測定された距離の信頼度を評価する。そして、物体認識装置10は、信頼度が第1閾値以下であるとされた第1光点に対応して記録された距離を、第1光点に隣接する他の光点に対応して記録された距離を用いて補正する。これにより、認識部15は、物体TGの表面に投影された各光点までの距離として確からしい値を用いて、物体TGの形状を認識することができるので、物体TGの形状が誤って認識される可能性は、測定された距離の信頼度を考慮しない場合に比べて低減される。
図7は、物体認識装置の別実施形態を示す。なお、図7に示す構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものは、同一の符号で示すとともに構成要素の説明を省略する場合がある。
図7に示した物体認識装置10aは、図1に示した記録部11と補正部14と認識部15とともに、第1算出部12aと、評価部13aとを含み、更に、図1に示した測定装置MEを含んでいる。第1算出部12aは、図1に示した第1算出部12に相当する構成要素であり、分散算出部121と、平均算出部122と、差分算出部123とを含んでいる。また、評価部13aは、図1に示した評価部13に相当する構成要素であり、信頼度算出部131と検出部132と調整部133とを含んでいる。
第1算出部12aに含まれる分散算出部121は、パターンPTに含まれる各光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離の分散Vの算出に、式(1)に代えて、例えば、式(3)などを用いる。これにより、分散算出部121は、各光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離のそれぞれと、一つ前の測定で得られた距離との差分の絶対値の総和を、各光点に対応して記録された距離の分散Vとして求める。なお、式(3)において、数値jは、n以下の正の整数であってn回の測定の中での測定順を示し、変数D(j)は、パターンPTに含まれるある光点について、j番目の測定で得られた距離を示す。
また、平均算出部122は、パターンPTに含まれる光点毎に、各光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離の平均値Avを算出する。例えば、平均算出部122は、図2に示した光点S1〜S9のそれぞれに対応して記録部11に記録されたn個の距離から、光点S1〜S9のそれぞれに対応する距離の平均値Avを算出する。
そして、差分算出部123は、パターンPTに含まれる光点から順次に選択した光点について算出された距離の平均値Avと、選択した光点に隣接する他の光点について算出された距離の平均値Avを更に平均化することで得られた値との差分dを算出する。例えば、差分算出部123は、図2に示した光点S5について算出された距離の平均値Avと、光点S5に隣接する8個の光点についてそれぞれ算出された8個の距離の平均値Avを更に平均化することで得られた値との差分dを算出する。
即ち、平均算出部122および差分算出部123は、各光点に対応して記録部11に記録された距離の平均値と、当該光点に隣接する複数の光点に対応して記録された距離の平均値との差分dを求める第2算出部の一例である。
分散算出部121により各光点に対応して算出された距離の分散Vは、評価部13aの信頼度算出部131に渡される。一方、差分算出部123により各光点に対応して算出された差分dは、評価部13aの検出部132に渡される。なお、分散算出部121によって算出される距離の分散Vと、平均算出部122により算出される距離の平均値Avと、分散算出部121により算出される差分dとの例については、図8を用いて後述する。
評価部13aに含まれる信頼度算出部131は、各光点までの距離の分散Vを分散算出部121から受け、受けた距離の分散Vに基づいて、各光点に対応して記録部11に記録された距離の信頼度rを算出する。信頼度算出部131は、例えば、式(4)に示す距離の分散Vの関数F(V)を用いて、各光点に対応して記録された距離の信頼度rを算出する。
なお、信頼度算出部131において信頼度rの算出に用いる関数F(V)は、式(4)に示した関数F(V)限られない。信頼度算出部131は、関数F(V)として、分散算出部121で得られた距離の分散Vが大きいほど小さい値を持つ信頼度rを与える関数であればどのような関数を用いてもよく、例えば、式(2)に示した関数を用いてもよい。信頼度算出部131によって各光点に対応して算出された信頼度rは、調整部133に渡される。
一方、評価部13aに含まれる検出部132は、差分算出部123により各光点に対応して算出された差分dを受け、受けた差分dが第2閾値以上となる光点を、周囲の光点に対応して記録された距離と異なる距離が得られた第2光点として検出する。ここで、検出部132において、ある光点が第2光点であるか否かを判定するための第2閾値は、例えば、当該光点に隣接する複数の光点について平均算出部122で算出された距離の平均値Avの20パーセント程度の値に設定されることが望ましい。
図7に示した調整部133は、検出部132によって検出された第2光点を示す情報と、信頼度算出部131により、各光点について算出された信頼度rとを受ける。そして、調整部133は、各光点について信頼度算出部131から受けた信頼度rのうち、第2光点として検出された光点に対応する信頼度rに、例えば、1より小さい所定の係数を乗じることにより、第2光点について得られた信頼度rを調整する。つまり、調整部133は、第2光点について得られた信頼度rを小さくする方向に変化させる調整を行うことで、第2光点として検出された光点の信頼度rを、他の光点に対応する信頼度rに比べて低い値とする。そして、調整部133によって調整された信頼度rは、補正部14に渡され、補正部14による各光点の距離の補正に用いられる。
図8は、図7に示した測定装置MEによって得られる距離の例を示す。なお、図8に示す要素のうち、図3に示した要素と同等のものは、同一の符号で示すとともに要素の説明を省略する場合がある。図8は、図7に示した物体TGが投影装置PRから遠ざかる方向に移動する場合に、時刻T1から時刻T10までの各時刻において、測定装置MEにより、図7に示した各光点についての測定を行うことで得られた距離を示す。
図8において、各時刻T1〜T10に対応して示した白丸は、図7に示した光点S5の検出に用いる領域に図2に示したノイズN5と同様のノイズが含まれる場合に、各時刻における測定装置MEの測定で得られる距離の例を示す。一方、図8において各時刻T1〜T10に対応して示した黒丸は、ノイズが含まれない領域から検出された光点の位置に基づいて、測定装置MEによって測定された距離の例を示す。例えば、図7に示したパターンPTに含まれる光点S5以外の各光点に対応する領域にノイズが含まれない場合に、各領域から検出された光点について得られた距離は、いずれも図8に黒丸で示した分布と同様の分布を示す。
図8に示した黒丸の分布から分かるように、ノイズが含まれない領域から検出された光点の位置に基づいて得られた距離は、物体TGの移動による距離の変化を示す直線Lcに沿って分布する。一方、図8に示した白丸の分布から分かるように、光点S5について測定によって得られた距離は、光点S5の検出に用いられる領域内のノイズと光点S5とのどちらかがランダムに検出されるために、折れ線L5のように不規則に変化する。
このため、図8に白丸で示した各距離に基づいて、図7に示した分散算出部121により、式(3)を用いて算出される距離の分散Vの値は、図8に黒丸で示した各距離に基づいて、分散算出部121で算出される距離の分散Vの値に比べて大きくなる。したがって、図8に白丸で示した各距離について、図7に示した信頼度算出部131により式(4)を用いて算出される信頼度rの値は、図8に黒丸で示した各距離について算出される信頼度rに比べて小さくなる。
即ち、分散算出部121により、例えば、式(3)を用いて距離の分散Vを算出し、算出された距離の分散Vを用いて、信頼度算出部131により信頼度rを算出することで、図1に示した物体TGの移動を考慮した信頼度rを算出することができる。
ところで、図1に示した物体TGの表面が平面又はなめらかな曲面である場合に、物体TGの表面に投影されたパターンPTに含まれる各光点について測定される距離は、ほぼ同等あるいは各光点の画像IMGにおける位置に応じて連続的に変化する。したがって、図2に示した各光点について、図7に示した測定装置MEによって得られた距離のそれぞれが確からしい場合には、各光点に対応して得られた距離の平均値Avは互いに近似しているか、あるいは画像IMGにおける位置に応じて滑らかな変化を示す。そして、この場合に、ある光点について平均算出部122で得られた距離の平均値Avは、当該光点の周囲の光点について得られた距離の平均値Avとほぼ同等の値となる。逆に言えば、ある光点について得た距離の平均値Avが、隣接する複数の光点について得た距離の平均値Avに近似しない場合、即ち、図7に示した差分算出部123で得た差分dが大きい場合、当該光点について得た距離の信頼度rは隣接する光点に比べて低い。ここで、図7に示した差分算出部123で各光点について得られる差分dは、ある光点について得られた距離の平均値Avが周囲の光点について得られた距離の平均値Avから隔たっている度合い、即ち、ある光点について得られた距離の空間的な分散を示す。したがって、検出部132において第2光点の検出に用いる第2閾値は、例えば、隣接する光点の位置との連続性があると判断できる限界を示す値に設定されることが望ましい。この場合に、検出部132は、差分算出部123で得られた差分dが第2閾値以上である光点を、測定装置MEによって測定された距離の信頼度が他の光点よりも低い第2光点として検出できる。
図8の例では、図2に示した光点S5につき得られた距離の平均値Da5と、図2にて光点S5に隣接する各光点について得られた距離の平均値Dacとの差分dは、平均値Dacの20パーセント程度に設定された第2閾値Th2よりも大きくなっている。この場合に、検出部132は、光点S5を第2光点の一つとして検出したことを示す情報を、図7に示した調整部133に渡す。そして、調整部133は、光点S5について信頼度算出部131で得られた信頼度rに、1より小さい所定の係数を乗じることにより、元の信頼度rよりも小さい値に調整された信頼度rを求める。
即ち、検出部132と調整部133とを有する評価部13aは、パターンPTにおいて周囲に分布する他の光点から得られた距離との連続性を満たさない第2光点の信頼度を、他の光点の信頼度よりも低く評価することができる。これにより、評価部13aは、例えば、測定装置MEによるn回の測定の全てでノイズが光点S5として誤って検出された場合にも、光点S5について得られた距離の信頼度rを、周囲の光点の距離の信頼度rよりも低く評価できる。
以上に説明したように、図7に示した物体認識装置10aの第1算出部12aは、図1に示した物体TGの移動する場合にも、パターンPTに属する各光点としてノイズが検出されている可能性の高さを示す距離の分散を求めることができる。また、検出部132と調整部133とを有する評価部13aは、パターンPTに含まれる各光点の距離が周囲の光点から得られた距離との連続性を満たさない場合に、当該光点の距離の信頼性を低く評価する。したがって、物体認識装置10aは、物体TGの移動とともに、各光点について得られる距離の空間的な連続性を考慮して、各光点に対応して記録された距離の信頼度を求めることができる。そして、物体認識装置10aは、求めた信頼度に応じて補正部14により補正された各光点までの距離に基づいて、認識部15により、物体TGの形状を認識する。これにより、物体認識装置10aは、物体TGの移動や各光点についての測定で得られる距離の空間的な連続性を考慮しない場合に比べて、高い精度で物体TGの形状を認識することができる。
次に、図1に示した評価部13や図7に示した評価部13aにより、各光点に対応して得られた信頼度rを、物体TGの形状の認識に用いる方法について説明する。
図9は、物体認識装置の別実施形態を示す。なお、図9に示す構成要素のうち、図1または図7に示した構成要素と同等のものは、同一の符号で示すとともに構成要素の説明を省略する場合がある。
図9に示した物体認識装置10bは、図1に示した記録部11と第1算出部12と評価部13と補正部14とともに、認識部15bを含んでいる。図9に示した認識部15bは、図1に示した認識部15に相当する構成要素であり、設定部151と形状算出部152とを有する。
図9に示した設定部151は、評価部13により各光点に対応して得られた信頼度rを受け、受けた信頼度rに基づいて、各光点に対応して記録部11に記録された距離に、信頼度が低いほど小さい重みを設定する。設定部151は、例えば、各光点に対応して評価部13から受けた信頼度rを、各光点に対応して記録部11に記録された距離の重みとして設定する。
また、形状算出部152は、設定部151により各光点に対応して設定された重みを用いて、各光点に対応して記録部11に記録された距離から物体TGの形状を求める。例えば、形状算出部152は、各光点についての測定で得られた距離に、設定部151で設定された重みをつけた回帰分析などにより、物体TGの表面の形状を表す平面あるいは曲面を求める。
これにより、形状算出部152は、評価部13により信頼度rが低いとされた光点について得られた距離よりも、信頼度rが高いとされた光点について得られた距離を忠実に反映する形状を、物体TGの形状として求めることができる。
また、形状算出部152は、物体TGの形状を示す情報の一つとして、例えば、パターンPTが投影された物体TGの表面を示す図形の重心を、各光点について設定部151により設定された重みを考慮して求めてもよい。形状算出部152は、物体TGの表面を示す図形の重心までの距離cの算出に、例えば、式(5)を用いる。式(5)において、ベクトルX(k)は、例えば、図1に示した平面PLにパターンPTが投影された場合に、パターンPTに含まれるk番目の光点が投影される位置を示す位置ベクトルである。また、式(5)において、符号h(k)は、k番目の光点についての測定で得られた距離を示し、符号w(k)は、k番目の光点について設定部151で設定された重み(例えば、信頼度r)を示す。ここで、数値kは、パターンPTに含まれる光点の数N以下の正の整数である。
以上に説明した認識部15bは、各光点に対応して求められた信頼度rに基づいて設定された重みを用いて、パターンPTが投影された物体TGの表面の形状を求めることができる。これにより、認識部15bは、補正部14によって補正された距離を反映しつつ、評価部13により、信頼度が高いとされた距離を重視して、物体TGの形状を認識することができる。したがって、認識部15bは、物体TGの形状の認識において、各光点について得られた距離の信頼度を考慮しない場合に比べて、物体TGの形状を誤って認識する可能性を低減することができる。
次に、図1に示した評価部13や図7に示した評価部13aにより、各光点に対応して得られた信頼度rを、物体TGの認識に用いる特徴量として用いる方法について説明する。
図10は、物体認識装置の別実施形態を示す。なお、図10に示す構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものは、同一の符号で示すとともに構成要素の説明を省略する場合がある。
図10に示した物体認識装置10cは、図1に示した記録部11と第1算出部12と評価部13と補正部14とともに、認識部15cを含んでいる。図10に示した認識部15cは、図1に示した認識部15に相当する構成要素であり、抽出部153と保持部154と特定部155とを有する。
抽出部153は、物体TGに投影されたパターンPTに含まれる複数の光点に対応して評価部13で得られる信頼度から、物体TGの特徴を抽出する。抽出部153は、例えば、物体TGに投影された各光点について評価部13で得られた信頼度を、信頼度の範囲を分割した複数の階級毎に集計することで、物体TGに投影された光点に対応して得られた信頼度の度数分布を、物体TGの特徴の一つとして求める。また、抽出部153は、各光点に対応して記録部11に記録された距離の度数分布を、距離の範囲を分割した複数の階級毎に集計することで、物体TGに投影された光点までの距離の度数分布を、物体TGの特徴の別の一つとして求める。なお、抽出部153により、物体TGの特徴として求められる距離の度数分布及び信頼度の度数分布については、図11及び図12を用いて後述する。
保持部154は、複数種類の物体のそれぞれの特徴を示す情報として、複数の種類の物体の各々に投影された複数の光点のそれぞれについて予め求められた距離の信頼度を示す情報を保持する。保持部154は、例えば、複数種類の物体のそれぞれにパターンPTが投影された場合に、パターンPTに含まれる複数の光点の位置に基づく測定で得られる距離の度数分布と、測定で得られる距離の信頼度の度数分布とを示す情報を、物体の種類毎に予め保持する。なお、保持部154に予め保持される距離の度数分布及び信頼度の度数分布については、抽出部153で物体TGの特徴として求められる距離の度数分布及び信頼度の度数分布と合わせて、図11及び図12を用いて後述する。
特定部155は、抽出部153で求められた距離の度数分布及び信頼度の度数分布を、物体TGの特徴を示す情報として受ける。そして、特定部155は、保持部154に保持された複数種類の物体のそれぞれの特徴を示す情報の中で、他の種類の物体の特徴よりも抽出部153で抽出された物体TGの特徴に類似する特徴を持つ種類の物体を、物体TGの種類として特定する。そして、特定部155は、特定した物体の種類を示す情報を、物体認識装置10cによる認識結果として出力する。
ここで、パターンPTが投影される領域内にある物体TGの特徴と、図10に示した測定装置MEで得られる距離の信頼度との関係について説明する。
図11は、物体の種類毎の特徴の例を示す。図11(A),(B)のそれぞれは、眼鏡をかけていない人物QAと眼鏡を掛けた人物QBとのそれぞれにパターンPTを投影した場合に、図10に示した測定装置MEによる測定の過程で得られるn枚の画像IMGのうちの1枚の例を示す。また、図11(C),(D)のそれぞれは、図11(A),(B)のそれぞれに示した画像IMGに含まれる光点の位置から求められた距離につき、図10に示した評価部13により求められた信頼度の例を示す。
図11(A),(B)において、パターンPTは、4行5列で配列された20個の光点S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12,S13,S14,S15,S16,S17,S18,S19,S20を含んでいる。なお、パターンPTに含まれる光点の数及び光点の配列の仕方は、図11(A),(B)に示したように20個の光点を4行5列に配列する場合に限られず、N(Nは2以上の整数)個の光点を2次元で分布させる配列であればよい。例えば、パターンPTは、N個の光点を同心円状に配列させたパターンでもよい。また、図11(A),(B)のそれぞれにおいて破線で示した人物QA,QBの輪郭は、人物QA,QBとパターンPTに含まれる各光点との位置関係の説明のために示したものであり、実際の画像IMGには含まれない。
図11(A),(B)において、黒丸で示した光点S2,S3,S4,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12,S13,S14,S15,S17,S18,S19のそれぞれは、人物QA,QBのそれぞれに投影された光点を示す。即ち、図11(A),(B)において、黒丸で示した光点S2〜S4,S6〜S15,S17〜S19のそれぞれは、画像IMGに含まれる光点である。一方、図11(A),(B)において白丸で示した光点S1,S5,S16,S20は、人物QA,QBの後方の空間に投影された光点を示す。このため、図11(A),(B)に示した光点S1,S5,S16,S20のそれぞれは、実際の画像IMGには含まれない。
人間の頭部の形状は、ほぼ同等である。したがって、図11(A)に黒丸で示した各光点の位置に基づいて、図10に示した測定装置MEで得られる距離と、図11(B)に黒丸で示した各光点について測定装置MEで得られる距離とは、互いに近似した値となる。
ここで、図11(B)に示した光点S6,S7,S9,S10は、人物QBが装着している眼鏡の表面に投影されている。このため、図11(B)に示した画像IMGに含まれる光点S6,S7,S9,S10に対応して得られた距離について、図10に示した評価部13によって得られる信頼度は、他の光点に対応して得られる信頼度に比べて低くなる場合がある。なぜなら、眼鏡の表面は、人物QBの顔の表面に比べて反射率が高いために、眼鏡の表面に投影された光点S6,S7,S9,S10の画像IMGにおける輝度が小さくなり、光点S6,S7,S9,S10の検出が困難となるからである。この場合に、外光の反射などによって現れたノイズが、誤って光点S6,S7,S9,S10のそれぞれとして検出される可能性が他の光点に比べて高くなる。このために、光点S6,S7,S9,S10のそれぞれに対応して得られる信頼度は、他の光点に対応する信頼度に比べて低くなる。
図11(C),(D)に示した矩形の領域のそれぞれは、図11(A),(B)のそれぞれに示した光点S1〜S20のそれぞれに対応する。なお、図11(C),(D)において、光点S1,S5,S16,S20に対応する領域に示したバツ印は、図10に示した測定装置MEによる距離の測定ができなかったことを示している。
図11(C),(D)の例では、信頼度の値の範囲を4つの階級に分割し、光点S1〜S20のそれぞれに対応する信頼度が属する階級を、対応する領域に付す網掛けの種類を変えて示している。図11(C),(D)の例では、信頼度の値の範囲を分割した4つの階級のそれぞれに、大きい値を含む階級から順に、濃い網掛けを付して示している。
つまり、図11(C)の例では、光点S12,S14について得られた信頼度は、最も大きい値を含む階級に属し、光点S2〜S4,S7〜S9,S13,S18について得られた信頼度は、次に大きい値を含む階級に属することが示される。そして、図11(C)の例では、光点S6,S10,S11,S15,S17,S19について得られた信頼度は、3番目に大きい値を含む階級に属することが示される。
一方、図11(D)の例では、光点S12,S14について得られた信頼度は、最も大きい値を含む階級に属し、光点S2〜S4,S8,S13,S18について得られた信頼度は、次に大きい値を含む階級に属することが示される。そして、図11(D)の例では、光点S11,S15,S17,S19について得られた信頼度は、3番目に大きい値を含む階級に属し、光点S6,S7,S9,S10について得られた信頼度は、最も小さい値を含む階級に属することが示される。
図11(C)と、図11(D)との比較から分かるように、眼鏡を掛けている人物QBに投影された各光点について得られた信頼度の分布は、眼鏡を掛けていない人物QAに投影された各光点について得られた信頼度の分布とは異なる特徴を示す。例えば、図11(D)に示した人物QBに対応する信頼度の分布は、最も小さい値に対応する階級に属する信頼度が、光点S6,S7,S9,S10に対応して分布していることを示す。
図11を用いて説明した信頼度の分布の特徴は、例えば、パターンPTに含まれる各光点に対応して得られた信頼度を、信頼度の値の範囲を分割した複数の階級毎に集計することで得られる度数分布によって表すことができる。ここで、図11を用いて説明したように、信頼度について求めた度数分布は、パターンPTが投影された物体の特徴を反映している。したがって、複数種類の物体について、予め信頼度の度数分布を求めておき、求めた信頼度の度数分布を、図10に示した保持部154に保持させれば、パターンPTが投影された領域に含まれる物体TGの特定に用いることが可能である。
図12は、図10に示した保持部154の一例を示す。図12に示した保持部154は、物体の種類毎に、距離の度数分布と信頼度の度数分布とを含む特徴ベクトルを保持している。なお、図12では、様々な種類の物体に対応する特徴ベクトルの例として、人物QAに対応する特徴ベクトルと人物QBに対応する特徴ベクトルとを示し、他の物体について保持部154に保持された特徴ベクトルの図示は省略している。
ここで、距離の度数分布とは、図10に示したパターンPTに含まれる各光点に対応して得られた距離を、距離として得られる値の範囲を分割した複数の階級毎に集計することで得られる度数分布である。
図12の例では、図10に示した測定装置MEによる測定結果として得られる距離の範囲を分割した4つの階級Cd1,Cd2,Cd3,Cd4毎に、パターンPTに含まれる各光点について得られた距離を集計することで、距離の度数分布を得る場合を示す。
また、図12の例では、図10に示した評価部13によって得られる信頼度の範囲を分割した4つの階級Cr1,Cr2,Cr3,Cr4毎に、パターンPTに含まれる各光点について得られた信頼度を集計することで、信頼度の度数分布を得る場合を示す。ここで、図12に示した4つの階級Cr1,Cr2,Cr3,Cr4のそれぞれは、図11(C),(D)において、網掛けの種類を変えて示した4つの階級のそれぞれに対応する。例えば、図12に示した階級Cr1は、図11(D)において白色で示した階級であり、最も小さい値を含む階級を示し、図12に示した階級Cr4は、図11(D)において最も濃い網掛けで示した階級であり、最も大きい値を含む階級を示す。また、図12に示した階級Cr3は、図11(D)において、階級Cr4の次に濃い網掛けで示した階級であり、2番目に大きい値を含む階級を示す。そして、図12に示した階級Cr2は、図11(D)において階級Cr3の次に濃い網掛けで示した階級であり、3番目に大きい値を含む階級を示す。
図12に示した保持部154に、人物QAに対応して保持された特徴ベクトルは、階級Cr1〜Cr4毎に、図11(C)に各光点に対応して示した信頼度を集計することで得られた信頼度の度数分布[0,6,8,2]を含んでいる。また、人物QAに対応する特徴ベクトルは、階級Cd1〜Cd4毎に、図11(A)に示した各光点の位置に基づく測定で得られた距離を集計することで得られた距離の度数分布[2,7,5,2]を含んでいる。
また、図12に示した保持部154に、人物QBに対応して保持された特徴ベクトルは、階級Cr1〜Cr4毎に、図11(D)に各光点に対応して示した信頼度を集計することで得られた信頼度の度数分布[4,4,6,2]を含んでいる。また、人物QBに対応する特徴ベクトルは、階級Cd1〜Cd4毎に、図11(B)に示した各光点の位置に基づく測定で得られた距離を集計することで得られた距離の度数分布[3,8,4,1]を含んでいる。
図12に示した人物QA,QBのそれぞれに対応する特徴ベクトルに含まれる距離の度数分布は、人物QA,QBのそれぞれの形状の特徴を示す。一方、図12に示した人物QA,QBのそれぞれに対応する信頼度の度数分布は、例えば、眼鏡のように反射率の高い部分が人物QA,QBの表面に含まれる度合いなどで示される表面の特徴を示す。
図11で説明したように、人間の頭部の形状は互いに類似していることから、図12に人物QAに対応して示した距離の度数分布に含まれる各要素と、人物QBに対応して示した距離の度数分布に含まれる各要素とは互いに近似している。
一方、図12に人物QAに対応して示した信頼度の度数分布に含まれる階級Cr1の度数と、人物QBに対応して示した信頼度の度数分布に含まれる階級Cr1の度数とは、他の階級の度数に比べて大きく異なっている。したがって、信頼度の度数分布を含む特徴ベクトルを比較すれば、例えば、人物QAと人物QBとの間の形状の類似性にかかわらず、パターンPTが投影された物体TGが人物QAであるか人物QBであるかを判別することが可能である。
図10で説明したように、抽出部153は、物体TGの特徴を示す情報として、物体TGに投影された各光点について記録部11に記録された距離の度数分布と、各光点について得られた距離の信頼度の度数分布とを求める。そして、抽出部153は、求めた距離の度数分布と信頼度の度数分布とを含む特徴ベクトルを特定部155に渡す。
特定部155は、例えば、抽出部153から受けた特徴ベクトルと、保持部154に物体の種類毎に保持された特徴ベクトルのそれぞれとを照合する。そして、特定部155は、抽出部153から受けた特徴ベクトルに、他の種類に対応する特徴ベクトルよりも類似する特徴ベクトルを見つけ、見つけた特徴ベクトルに対応する物体の種類を特定する。特定部155は、特徴ベクトルの照合に基づいて特定した物体の種類を、パターンPTが投影された領域内にある物体TGについての認識結果として出力する。
以上に説明したように、図10に示した認識部15cは、物体TGに投影された各光点について測定装置MEによって得られた距離の度数分布とともに、各光点について得られた距離の信頼度の度数分布を物体TGの特徴として、物体TGの認識に用いる。これにより、図10に示した認識部15cを有する物体認識装置10cは、例えば、人物QAと人物QBのように形状が類似する物体を、特徴ベクトルに含まれる信頼度の情報に基づいて判別することができる。
なお、図10に示した抽出部153により抽出される物体TGの特徴は、信頼度の度数分布に限らず、各光点に対応して得られる信頼度から抽出可能な情報であればよい。例えば、抽出部153は、図1から図4で説明した第1光点が物体TGに投影されたパターンPTにおいてどのように分布しているかを示す情報を、パターンPTが投影された物体TGの特徴の一つとして抽出してもよい。この場合に、例えば、図11(C),(D)に示したような信頼度の分布を示す情報が、複数種類の物体のそれぞれにパターンPTを投影した場合について予め求められ、求められた信頼度の分布を示す情報が、図10に示した保持部154に保持される。なお、複数種類の物体のそれぞれに対応して保持部154に保持される信頼度の分布を示す情報は、例えば、図10に示した物体認識装置10cの記録部11、第1算出部12、評価部13および抽出部153の機能を利用して、予め求めることが可能である。
以上に説明した本件開示の物体認識装置10は、コンピュータ装置を用いて実現することができる。
図13は、図10に示した物体認識装置10cのハードウェア構成例を示す。なお、図13に示した構成要素のうち、図10に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
図13に示したコンピュータ装置COMは、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ装置23と、汎用インタフェース24と、表示装置25と、光学ドライブ装置26と、ネットワークインタフェース28とを含んでいる。図13に示したプロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ装置23と、汎用インタフェース24と、表示装置25と、光学ドライブ装置26と、ネットワークインタフェース28とは、バスを介して互いに接続されている。また、汎用インタフェース24には、図1に示した投影装置PRと同等の機能を有する投影装置PR1と、図1に示した撮像部CAMと同等の機能を有するカメラCAM1とが接続されている。
図13に示したプロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ装置23と、汎用インタフェース24とは、物体認識装置10cに含まれる。また、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ装置23と、汎用インタフェース24と、カメラCAM1とは、測定装置MEに含まれる。
図13に示した投影装置PR1は、例えば、人物Q1とベッドBDとを含む所定の領域に、図10及び図11で説明したパターンPTと同様の、複数の光点を含むパターンPT1を投影する。また、図13に示したカメラCAM1は、投影装置PR1によってパターンPT1が投影された領域を例えば所定の時間間隔で撮影し、撮影によって得られた複数枚の画像IMGのそれぞれを、汎用インタフェース24を介してプロセッサ21に渡す。
また、図13に示した光学ドライブ装置26は、光ディスクなどのリムーバブルディスク27を装着可能であり、装着したリムーバブルディスク27に記録された情報の読出および記録を行う。
また、コンピュータ装置CAMは、ネットワークインタフェース28を介して、インターネットなどのネットワークNWに接続されており、ネットワークNWに接続されたサーバ装置SVとの間で情報の授受が可能である。
図13に示したメモリ22は、コンピュータ装置COMのオペレーティングシステムとともに、図10〜図12を用いて説明した物体認識処理及び図1で説明した距離の測定処理をプロセッサ21が実行するためのアプリケーションプログラムを格納している。なお、物体認識処理及び距離の測定処理を実行するためのアプリケーションプログラムは、例えば、光ディスクなどのリムーバブルディスク27に記録して頒布することができる。そして、リムーバブルディスク27を光学ドライブ装置26に装着して読み込み処理を行うことにより、プロセッサ21は、読み込んだアプリケーションプログラムを、メモリ22およびストレージ装置23に格納させてもよい。また、物体認識処理及び距離の測定処理を実行するためのアプリケーションプログラムは、ネットワークインタフェース28およびネットワークNWを介して、例えば、サーバ装置SVからダウンロードされてもよい。そして、ダウンロードされたアプリケーションプログラムは、メモリ22およびストレージ装置23に読み込まれることで、プロセッサ21による実行が可能なアプリケーションプログラムとなる。
プロセッサ21は、メモリ22等に格納された物体認識処理のためのアプリケーションプログラムを実行することにより、図10に示した第1算出部12と、評価部13と、補正部14と、認識部15に含まれる抽出部153及び特定部155の機能を果たす。また、プロセッサ21は、メモリ22等に格納された距離の測定処理のためのアプリケーションプログラムを実行することで、カメラCAM1で撮影された画像IMGに含まれる各光点の位置から、ベッドBDおよび人物Q1に投影された各光点までの距離を求める。即ち、プロセッサ21は、メモリ22等に格納された距離の測定処理のためのアプリケーションプログラムを実行することで、図1に示した画像処理部IMPの機能を果たす。プロセッサ21は、距離の測定処理のためのアプリケーションプログラムを実行することで求めた各光点までの距離を、例えば、メモリ22あるいはストレージ装置23の記憶領域内に設けられた記録部12に記録する。
また、物体認識処理のためのアプリケーションプログラムは、複数種類の物体のそれぞれの特徴を示す情報として、複数種類の物体のそれぞれについて予め求められた特徴ベクトルを含んでいてもよい。この場合に、複数種類の物体のそれぞれについて予め求められた特徴ベクトルは、例えば、ストレージ装置23の記憶領域の一部に格納されている。即ち、図10に示した保持部154は、ストレージ装置23の記憶領域の一部を用いて実現されている。
以上に説明したように、図10に示した物体認識装置10cは、例えば、図13に示したコンピュータ装置COMに含まれるプロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ装置23と、汎用インタフェース24との協働によって実現することができる。
図14は、図13に示した物体認識装置10cの動作を示す。図14に示したステップS300〜ステップS304及びステップS311〜ステップS313の各処理は、物体認識処理のためのアプリケーションプログラムに含まれる処理の一例である。また、ステップS300〜ステップS304及びステップS311〜ステップS313の各処理は、図13に示したプロセッサ21によって実行される。なお、図14に示したステップS301〜ステップS304の処理は、図6に示したステップS301〜ステップS304の処理と同等の処理である。
プロセッサ21は、例えば、図13に示したカメラCAM1からn枚の画像IMGを受けるごとに、図14に示したステップS300〜ステップS304及びステップS311〜ステップS313の各処理を実行する。
ステップS300において、プロセッサ21は、距離の測定処理のためのアプリケーションプログラムを実行することで、カメラCAM1から受けたn枚の画像IMGのそれぞれに含まれる光点の位置に基づいて、各光点までの距離を測定する。
ステップS301において、プロセッサ21は、ステップS300の処理により、n枚の画像IMGのそれぞれを用いて測定された距離を、各光点に対応してメモリ22又はストレージ装置23に設けられた記録部11に記録する。
ステップS302において、プロセッサ21は、各光点に対応して記録部11に記録されたn個の距離の分散を算出する。
ステップS303において、プロセッサ21は、ステップS302の処理で各光点に対応して算出された分散に基づいて、各光点に対応して記録部11に記録された距離の信頼度を評価する。
ステップS304において、プロセッサ21は、ステップS303の処理で、所定の第1閾値よりも信頼度が低いとされた第1光点に対応して記録された距離を、第1光点に隣接する他の光点に対応して記録された距離を用いて補正する。
ステップS311において、プロセッサ21は、記録部11に各光点に対応して記録された距離と各光点の画像IMGにおける位置とに基づいて、例えば、パターンPT1に含まれる光点を投影された物体ごとのグループに分ける。例えば、プロセッサ21は、各光点に対応する距離と各光点の画像IMGにおける位置とを用いたクラスタリングにより、パターンPT1に含まれる光点を、人物Q1に投影された光点を含むグループとベッドBDに投影された光点を含むグループとに分類する。
ステップS312において、プロセッサ21は、ステップS311の処理で得られたグループ毎に、図11、図12で説明した特徴ベクトルを求める。
ステップS312において、プロセッサ21は、ステップS312の処理で光点のグループ毎に求めた特徴ベクトルに他の特徴ベクトルよりも類似した特徴ベクトルに対応付けられた物体の種類を、各グループに対応する物体の種類として特定する。
ここで、ストレージ装置23に設けられた保持部154には、ベッドBDとともに、人物Q1が様々な姿勢をとっている状態に対応する特徴ベクトルと、互いに異なる種類の物体の特徴を示す特徴ベクトルとして予め保持させておくことが可能である。この場合に、プロセッサ21は、ステップS313の処理で特定した物体の種類に基づいて、人物Q1とベッドBDとの位置関係や、人物Q1の姿勢などを判別することが可能である。
即ち、図13に示した物体認識装置10cは、例えば、室内の人物を見守るサービスなどの分野で利用することができる。
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点及び利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で、前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更を容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。