JP6244664B2 - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Description
IV≧0.70dl/g ・・・ (1)
(核磁器共鳴(NMR)スペクトルにて測定したカルボキシル基末端量)≦8eq/t ・・・ (2)
[1段目処理]溶融重合で得られた固体状のポリエステル樹脂を、エチレングリコール存在下で、ポリエステル樹脂の融点以下の温度で加熱処理する処理であって、処理におけるIV変化量が、−0.30〜−0.07dl/gである処理
[2段目処理]N2気下常圧、または減圧で固相重合する処理
|1段目処理によるIV変化量|+|2段目処理によるIV変化量|=0.25〜0.60dl/g ・・・ (3)
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸と、エチレングリコールを主原料としている。主原料とは、原料のジカルボン酸成分の80%以上がテレフタル酸であり、グリコール成分の80%以上がエチレングリコールであることを示す。テレフタル酸の比率は好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、エチレングリコールの比率は好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。
処理に供する溶融重合ポリエステル樹脂のIVとしては、0.55dl/g以上であることが好ましい。0.55dl/g未満である場合、カッティングの際にファインやカケラが発生しやすくなることがある。また、1段目のエチレングリコール処理後のIVが低くなり、1段目、2段目の処理工程中にファインやカケラが発生しやすくなる。処理に供する溶融重合ポリエステル樹脂のIVは、工業的生産の現実的な面から1.0dl/g以下であることが好ましい。
以下に、本願で発明した、エチレングリコール存在化で、ポリエステルの融点以下の温度で加熱処理した後、固相重合する、2段階処理方法に関して詳細に説明する。
溶融重合ポリエステル樹脂は、エチレングリコール処理の前に、予め、予備結晶化しておくことが望ましい。
このような予備結晶化は、溶融重合ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で、1分〜4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、真空状態、および不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性ガス雰囲気下で予備結晶化を行う場合、不活性ガス中の酸素濃度が10ppm以下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気中で予備結晶化を行う場合、酸素濃度が10ppmより大きいと、予備結晶化中に熱酸化劣化が起こるため、好ましくない。
1段目の処理であるエチレングリコール存在化での加熱処理は、溶融重合ポリエステル樹脂に何らかの方法でエチレングリコールを接触させればよい。
また、必要なIVにするために2段目の工程である固相重合に要する時間が非常に長くなるといった問題が生じ、生産性の観点からも好ましくない。
以上のように、エチレングリコール存在下で前処理を行った固体状ポリエステル樹脂を、続いて固相重合する。
IVの上限は、フィルムなどの加工の容易さから1.0dl/g以下、さらには0.9dl/g以下が好ましい。1.0dl/gを超えると成形の時の溶融時に高温を必要としたり、剪断発熱により高温になったりし、かえって成形品のAVが高くなる場合がある。
|1段目処理によるIV変化量|+|2段目処理によるIV変化量|=0.25〜0.60dl/g ・・・ (3)
2段階熱処理により得られたポリエステル樹脂を、135℃で10時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出し機に供給した。押出し機溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂最高温度は290℃、その後のポリマー管では285℃とし、ダイスよりシート状にして押出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度20μm粒子95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が285℃になるようにした。なお、押出し機入り口で抜き出したペレットの水分率を測定した結果、水分率は20ppmであった。押し出した樹脂を静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。
フィルムを1cm×4cm片に切断し、130℃で12時間真空乾燥した後、試料を純水100mlに入れ、密閉系にして130℃に加熱、加圧した条件下に8時間攪拌した。
ペレットのエチレングリコールによる加熱処理において、ペレットに接触させるエチレングリコール添加量の測定は、ガス採集法、および、ガスクロマトグラフィーにて実施した。
IV測定方法は、ポリエステル樹脂を、フェノール/テトラクロロエタン=3/2(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃にて測定した。
ポリエステル樹脂を、試料管に入れ、重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール混合溶液を適量加え、ポリエステル樹脂を溶解させた。更にトリエチルアミン/重クロロホルム混合溶媒を少量添加し、よく混ぜたのち、室温にて1H−NMRを測定した。AVの算出は、カルボン酸末端のピーク(カルボン酸末端に隣接するテレフタル酸のベンゼン環水素のピーク)と、主鎖テレフタル酸のピークの積分値の比率から算出した。
A.試料の調整
試料を粉砕し、70℃で24時間真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量した。そのときの重量をW(g)とした。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したオイルバスに浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解した。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとする。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみを入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとした。
B.滴定
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定した。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求めた。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とした。サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とした。
C.カルボキシ末端量(AV)の算出
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求めた。同様にXa、Xb、Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求めた。次いで、次式に従いカルボキシ末端量を求めた。
カルボキシ末端量(eq/t)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
上記で一例を示した溶融重合ポリエステル樹脂の製造方法により得られた、IVが0.62dl/g、AVが19eq/tであるポリエステル樹脂を、140℃の温度で真空状態にて4時間予備結晶化した。予備結晶化後のポリエステル樹脂のIVは0.62dl/g、AVは19eq/tであり、予備結晶化によるポリエステル樹脂の品質変化は確認されなかった。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し5400ppmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.54dl/g、AVが9eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが6eq/tであった。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し10000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.52dl/g、AVが8eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが5eq/tであった。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し35000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.44dl/g、AVが7eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが3eq/tであった。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル樹脂重量に対し5400ppmのエチレングリコール濃度となるよう、流速2L/minのN2ガスにエチレングリコールを含有させ、ポリエステル樹脂に36時間ほど気流させたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.53dl/g、AVが8eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが5eq/tであった。1段目のエチレングリコール処理において、エチレングリコール濃度が小さい場合であっても、処理時間を長く取ることでエチレングリコール添加の総量を稼ぐことができ、結果として、1段目のエチレングリコール処理におけるポリエステル樹脂の品質変化を、好ましい状態に仕上げることが可能となる。またその結果として、2段目の固相重合後のポリエステル樹脂品質を、目標のAVを満たすものへと仕上げることが可能となる。
実施例1にて得られた予備結晶化後のポリエステルを使用し、熱処理を実施した。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し1000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.61dl/g、AVが13eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが11eq/tであった。なお、従来の滴定法により測定したAVは0eq/tであった。
2段階熱処理のうち、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し70000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.36dl/g、AVが7eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが3eq/tであった。1段目のエチレングリコール処理における、エチレングリコール濃度を高くし、1段目のIV低下を大きくした場合でも、2段目の固相重合におけるAV低減量は頭打ちとなり、これ以上AV低減が困難となる。よって、1段目のエチレングリコール処理工程において、必要以上にエチレングリコールを添加しても、原料コストが必要以上にかかってしまう、あるいは2段目の固相重合工程に要する時間を必要以上に要する、といった問題点がある。
2段階熱処理のうち、回転型乾燥機へのポリエステル樹脂の仕込み量を8kg、1段目のエチレングリコール処理でのエチレングリコール濃度を、1時間あたりポリエステル重量に対し5530000ppm、N2ガスの流速を10L/minとしたこと以外は、実施例1と同様の条件にて2段階熱処理を実施した。1段目のエチレングリコール処理終了後のポリエステル樹脂品質は、IVが0.59dl/g、AVが14eq/tであった。また2段目の固相重合後の最終的に得られたポリエステル樹脂品質は、IVが0.73dl/g、AVが12eq/tであった。1段目のエチレングリコール処理工程において、上記の実施例に対しN2ガスの流速が必要以上に大きい場合、エチレングリコールがポリエステル樹脂の分解反応に寄与する前に、N2ガスにより系外へ排出される割合が大きくなり、1段目のIV低下が効率よく成されない状況となる。また、ポリエステル樹脂の仕込み量が少ないことで、ポリエステル樹脂とエチレングリコールの接触機会が少なくなり、エチレングリコールがポリエステル樹脂の分解反応に寄与する前に、系外へ排出されるエチレングリコールの割合が大きくなる。
Claims (3)
- 以下の1段目処理、2段目処理の処理方法を経ることを特徴とする、
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分からなるポリエステル樹脂において、以下の(1)、(2)を同時に満足するポリエステル樹脂の製造方法。
IV≧0.70dl/g ・・・ (1)
(核磁器共鳴(NMR)スペクトルにて測定したカルボキシル基末端量)≦8eq/t ・・・ (2)
[1段目処理]溶融重合で得られた固体状のポリエステル樹脂を、エチレングリコール存在下で、ポリエステル樹脂の融点以下の温度で加熱処理する処理であって、処理におけるIV変化量が、−0.30〜−0.07dl/gである処理
[2段目処理]N2気下常圧、または減圧で固相重合する処理 - 1段目処理前のIVが、0.55dl/g以上である、請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
- 1段目処理によるIV変化量、及び2段目処理によるIV変化量が、以下の(3)を満足する請求項1または2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
|1段目処理によるIV変化量|+|2段目処理によるIV変化量|=0.25〜0.60dl/g ・・・ (3)
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