以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る更生管の製管方法を示す既設管の縦断面図である。この更生管の製管方法は、帯状体Bを螺旋状に巻き回して接合して製管される更生管Sを、順次既設管K内に回転させつつ挿入する構成において、さらに更生管Sに管軸方向に垂直な堰を複数設ける工程と、その堰により区切られた区間から排水する工程とを備え、更生管Sの内部の水位が更生管Sの外部の水位より低い状態で、更生管Sを既設管K内で延伸させる構成となっている。
次に具体的な構成を説明する。既設管Kにはマンホールが設けられており、この例ではマンホールM1,M2を利用して既設管K内に更生管Sを製管して挿入する。更生管Sの製管は、既設管KのマンホールM1からマンホールM2に向けて行う。すなわち、マンホールM1の下部内に設置された製管機30を使用して、地上から供給される帯状体Bを螺旋状に巻き回し順次接合して更生管Sを製管し、更生管S全体を回転させながら既設管K内に挿入していく。
本実施形態では、更生管Sの先端に更生管堰部材11が設けられているとともに、製管機側に更生管堰部材12が設けられている。更生管堰部材11,12のいずれもが、管軸方向の流水を堰止めるよう構成されている。先端側の更生管堰部材11は、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、常に更生管Sの先端に位置して更生管Sを堰止めるよう配置されているのに対し、製管機側の更生管堰部材12は、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、元の位置に留まるよう保持されている。
更生管堰部材11には、水中ポンプを有する排水装置21が結合されており、排水装置21は、更生管S内の水を、更生管S外でありかつ既設管K内に排水するよう構成されている。一方、更生管堰部材12には、水中ポンプを有する排水装置22が固定されており、排水装置22もまた、更生管S内の水を、更生管S外でありかつ既設管K内に排水するよう構成されている。
次に、更生管堰部材11及び排水装置21について、図2〜4に基づき詳細に説明する。図2は、図1における更生管の先端付近を拡大した拡大縦断面図であり、図3は、図2における矢視A−Aを見た矢視図であり、図4は、図2における断面B−Bを見た断面図である。
更生管堰部材11は、更生管Sの端部を閉塞するように装着されており、更生管S内の水を堰止めている。更生管堰部材11は、管軸方向に垂直に広がる円形の板状の隔壁11aと、隔壁11aの外周に設置され更生管Sの内面と密着するシール11bと、円形の隔壁11aの中心に結合された軸受を構成するフランジ11cとを主な構成要素としている。なお、円形の隔壁11aは、半円形の部品を上下に結合して構成されている。
排水装置21は、更生管堰部材11に結合されており、更生管S内に設けられた吸水口21aから水を吸水し、排水路21cを通じて、更生管S外に設けられた吐水口21bから水を吐水することで、更生管S内から排水するよう構成されている。排水装置21は、ポンプ211と、ポンプ211を支持して更生管堰部材11に繋ぐ支持具212とを主な構成要素としている。
ポンプ211は、支持具212の受台212cに載置され、受台212cは枠体212bに結合されている。ここで、受台212cは枠体212bに位置調整機構212dを介して結合されており、受台212cは枠体212bに対し、上下にスライド可能に構成されている。そして枠体212bは、断面円形の主軸体212aに結合されている。
主軸体212aは、フランジ11cに支持されるとともに、孔11dを通って隔壁11aを貫通し、更生管Sの外に延びている。なお、主軸体212aには径方向に突出する複数の突起部212hが設けられており、主軸体212aは、フランジ11cの内面に突起部212hを当接させながら、フランジ11cに対して回転可能に結合されている。
そして主軸体212aの内部には流路が形成されており、排水装置21の排水路21cの一部を構成するとともに、更生管Sの外側に設けられた吐水口21bに連通している。その一方で、ポンプ211はその底部に吸水口21aを備えており、排水路21cに連通している。すなわち、ポンプ211により吸水口21aから吸水された水は、図2の矢印で示すように、排水路21cを通り吐水口21bから吐出される。
枠体212bの、図2における右端からは脚212fが延出しており、一方、更生管Sの外側において、主軸体212aからは脚212gが延出している。脚212fには、更生管Sの円周方向にのみ回転可能に配向された従動車輪41,41が設けられ、更生管Sの内面に接地している(図4参照)。また、脚212gには、既設管Kの管軸方向にのみ回転可能に配向された従動車輪42,42が設けられ、既設管Kの内面に接地している(図3参照)。
製管工程において、更生管Sは、回転しながら既設管Kの中に挿入されていく。そのため更生管Sの先端は、回転しながら図2における左方向に移動していく。更生管堰部材11は、シール11bを介して密着しているため、製管工程においては、更生管堰部材11は更生管Sとともに回転する。その一方で、排水装置21の主軸体212aは、更生管堰部材11のフランジ11cに対して回転可能に結合されており、さらに排水装置21に結合された従動車輪41は、更生管Sに接地しつつもその円周方向に回転可能に配向されている。すなわち、排水装置21は、更生管Sに対して円周方向に自由に回転可能に構成されている。
したがって、更生管Sが回転しても、排水装置21は更生管Sの回転に追従することなく、元の位置に留まろうとする。さらに、従動車輪42は、管軸方向にのみ回転可能に配向されており、すなわち円周方向には回転しないため、回転方向にグリップし、排水装置21が元の位置に留まることに寄与する。なお、従動車輪42は管軸方向には回転可能であるため、更生管Sの先端の、図2における左方向への移動には追従して、更生管Sとともに左に移動するよう構成されている。
したがって、排水装置21は、更生管Sの回転に関わらず一定の位置に維持されるため、排水装置21のポンプ211に設けられた吸水口21aの、更生管Sの底部からの高さもまた、更生管Sの回転位置に関わらず一定に維持される。そのため、この排水装置21の構成により、更生管S内の水位が、吸水口21aの位置に応じた水位(L1)となるまで、更生管S内を排水することが可能となる。
なお、排水装置21には受台212cに結合され更生管Sの外まで延びるワイヤ212eが設けられており、ワイヤ212eを操作することによって、受台212cが位置調整機構212dを介して枠体212bに対して相対的に上下にスライドする。すなわち、ワイヤ212eの操作により、吸水口21aの高さを調整することができる。したがって、ワイヤ212eを用いて、排水後の更生管S内の水位を調整することが可能となる。
また、更生管堰部材11は、図2〜4に示すように、更生管Sの断面全てを閉塞するよう構成することも可能であるが、上部を開放して、所定の水位までは堰止められるよう構成することも可能である。すなわち、図2〜4における主軸体212aとフランジ11cとを剛結合するとともに、更生管堰部材11の外周が更生管Sの内面と摺動可能に接するよう構成することにより、更生管堰部材11及び排水装置21が、ともに更生管Sの回転に関わらず一定の位置に維持される。そのように構成すると、更生管堰部材11において、更生管Sの外部の水位L2より上部を開放しても、水は堰止められ逆流することはない。
次に、更生管堰部材12及び排水装置22について、図5,6に基づき詳細に説明する。図5は、図1における更生管の製管機付近を、一部の部材を切断して拡大した拡大縦断面図であり、図6は、図5における矢視C−Cを見た矢視図である。
更生管堰部材12は、更生管Sの製管機30側に配置され、更生管S内の水を堰止めている。更生管堰部材12は、管軸方向に垂直な面上に広がる扇形の板状に形成されている。更生管堰部材12の外周は、更生管Sの内面に対して円周方向に摺動可能に接している。
排水装置22は、更生管堰部材12及び製管機30のフレーム31に結合されており、更生管S内に設けられた吸水口22aから水を吸水し、排水路22cを通じて、更生管S外に設けられた吐水口22bから水を吐水することで、更生管S内から排水するよう構成されている。排水装置22は、ポンプ221と、ポンプ221を支持して更生管堰部材12及び製管機30のフレーム31に繋ぐ支持具222とを主な構成要素としている。
ポンプ221は、支持具222の受台222cに載置され、受台222cは取付板222aに結合されている。ここで、受台222cは取付板222aに位置調整機構222dを介して結合されており、受台222cは取付板222aに対し、上下にスライド可能に構成されている。なお、受台222cに取り付けられた寸切りボルトが、取付板222aに取り付けられた部材を貫通して、ナットが取り付けられており、ナットを締めることにより受台222cの上下方向の位置を決めるよう構成されている。
取付板222aは矩形の板状であり、更生管堰部材12と板厚方向に重ねられてボルト・ナットで結合されている。また、取付板222aからはアーム222b,222bが延出しており、アーム222bは製管機30のフレーム31にボルト・ナットで結合されている(図6参照)。
ポンプ221はその底部に吸水口22aを備えており、またポンプ221には吸水口22aから連通する排水路22cが延出し、更生管Sの外側に設けられた吐水口22bまで延びている。すなわち、ポンプ221により吸水口22aから吸水された水は、図5の矢印で示すように、排水路22cを通り吐水口22bから吐出される。
製管工程において、製管機30により、後続する帯状体Bが内面ローラ33及び外面ローラ34によって更生管Sに順次接合されていき、更生管Sはガイドローラ32に沿って回転しながら既設管Kの中に挿入されていく。これに対して、更生管堰部材12及び排水装置22は、取付板222a及びアーム222bを介して、製管機30のフレーム31に固定されている。したがって、更生管Sが回転しても、更生管堰部材12及び排水装置22は更生管Sの回転に追従することなく、元の位置に留まる。
したがって、排水装置22は、更生管Sの回転に関わらず一定の位置に維持されるため、排水装置22のポンプ221に設けられた吸水口22aの、更生管Sの底部からの高さもまた、更生管Sの回転位置に関わらず一定に維持される。そのため、この排水装置22の構成により、更生管S内の水位が、吸水口22aの位置に応じた水位(L1)となるまで、更生管S内を排水することが可能となる。
なお、更生管堰部材12は、図5,6に示すように、更生管Sの上部を開放して、所定の水位までは堰止められるよう構成することも可能であるが、更生管堰部材11と同様に、断面全てを閉塞して排水路を貫通させるよう構成することも可能である。
したがって、更生管Sには水位L1と水位L2との水位差に対応した浮力が作用し、更生管Sは浮力が作用した状態で延伸することになる。すなわち、浮力が作用していない状態と比べ、重量抵抗及び摩擦抵抗が小さくなり、小さな駆動力でも長距離延伸させることが可能となる。そして、更生管Sの状態に応じて更生管Sに作用する浮力を調整することが可能となる。例えば、更生管Sの全長が長くなるにつれて排水量を増やし、更生管Sの内部の水位L1を低くして浮力を大きくするといった制御が可能となる。このような制御は、上述したように吸水口21a,22aの位置を調整する他、ポンプ211,221の運転/停止を制御することで、実施可能となる。
なお、図1〜6に示した例には、更生管堰部材11,12のいずれにもそれぞれ排水装置21,22を設けているが、一方を省略することも勿論可能である。さらに、更生管堰部材11,12に固定することなく、排水装置21,22を更生管S内に単に置くだけとするよう配置することも可能である。
次に、第1実施形態の変形例について図7に基づき説明する。図7は、本発明の第1実施形態に係る更生管の製管方法の変形例を示す既設管の縦断面図である。図1に図示した例との相違点は、排水装置の構成のみであり、図7に示す変形例では、更生管堰部材11に設置されていた排水装置21,22に代えて、地上に配置された排水装置23を使用している。そして排水装置23からは排水路24が延びており、マンホールM1及び更生管堰部材12の上部を通り、更生管Sの内部に到達しており、排水路24の端部の吸水口24aは、更生管S内に配置されている。なお、吸水口24aの位置は、制御される更生管の内部の水位L1に応じて、適宜設定される。
このように排水装置23を地上に配置することによって、既設管K内及び更生管S内に設置する装置を簡略化することができる。また、装置の大きさの制限が少なくなるため、排水装置23の排水能力を適宜選択することが可能となる。
なお、排水装置23は、ポンプであれば種類は問われないが、図7に図示する排水装置23はバキュームカーで構成されている。また、更生管Sの内部から吸水した水は、排水装置23に貯水することも可能であるが、マンホールM2を通して、更生管Sの外部に排出することも勿論可能である。図7に図示する排水装置は、吸引した水をバキュームカーのタンクに貯水するよう構成されており、これにより、地上配管を減らして地上状況に与える影響を少なくすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る更生管の製管方法を示す既設管の縦断面図である。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態においては、更生管Sを管軸方向に堰止める更生管堰部材11,12に加えて既設管Kを管軸方向に堰止める既設管堰部材13,14が既設管K内に配置されている点と、排水装置ではなく注水装置25が設けられ、注水装置25から注水路26が延び、既設管堰部材13と既設管堰部材14とで区切られた区間に到達している点である。
既設管堰部材13,14は管軸方向の流水を堰止めるよう構成されており、上部が開放されており、所定の水位までは水密に堰止められるよう構成されている。そして、既設管堰部材13と既設管堰部材14とで、更生管S及び製管機30を挟むよう配置されており、既設管Kに対して固定設置されている。一方、更生管堰部材11及び更生管堰部材12は第1実施形態と同様に構成され、既設管堰部材13,14と同様の水位まで堰止められるよう構成されている。既設管堰部材13,14は板状に形成することも可能であるが、土嚢を積み上げて構成することも可能である。なお、既設管堰部材13は、更生管Sが製管により延伸しても当たらない位置に設置される。
地上に配置された注水装置25は、マンホールM1,M2を経て、あるいは、マンホールM1,M2間において、地上の排水桝と既設管Kとを接続する取付管(図示せず)を経て、注水路26を介して、既設管堰部材13と既設管堰部材14とに挟まれ、かつ更生管Sの外側の区間Iに注水するよう構成されている。すなわち注水装置25は、水密に構成されている区間Iに注水することで、区間Iの水位L2を更生管Sの内部の水位L1より高く維持する。なお、注水装置25の注水量(すなわち区間Iの水位L2)は、製管機30により製管されて更生管Sが延伸するのと同時に、連続的に制御される。なお、図8に図示する注水装置25は、バキュームカーで構成されているが、注水可能に構成されていれば種類は問われない。
したがって、第1実施形態と同様に、更生管Sには水位L1と水位L2との水位差に対応した浮力が作用し、更生管Sは浮力が作用した状態で延伸することになる。すなわち、浮力が作用していない状態と比べ、重量抵抗及び摩擦抵抗が小さくなり、小さな駆動力でも長距離延伸させることが可能となる。そして、更生管Sの状態に応じて更生管Sに作用する浮力を調整することが可能となることも、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、既設管堰部材13,14が設けられているため、既設管Kの流水の水位が低い場合でも、更生管Sの内部の水位L1と更生管Sの外部の水位L2との間に水位差を設けることができ、更生管Sに浮力を与えることが可能となる。また、区間Iを狭く設定することで、少ない注水量で大きな水位差を設けることができ、したがって、少ない注水量で大きな浮力を更生管Sに作用させることができる。
なお、更生管S内を、排水装置を用いて排水しながら、区間Iに注水することも勿論可能である。これにより、所望の浮力を得るために必要な時間を短縮することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る更生管の製管方法を示す既設管の縦断面図である。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態においては、更生管堰部材11,12に代えて、既設管Kと更生管Sとの隙間を管軸方向に堰止める隙間堰部材15,16が配置されている点と、排水装置ではなく注水装置27が既設管K内に設けられ、注水装置27から注水路28が延び、既設管Kと更生管Sと隙間堰部材15,16とで区切られた区間に到達している点である。
隙間堰部材15は更生管Sの先端側に配置され、隙間堰部材16は製管機30側に配置される。隙間堰部材15,16の構成について、図10に基づき説明する。図10は、第3実施形態に係る更生管の製管方法における隙間堰部材のうち、製管機側に配置される隙間堰部材16を示す正面図及び側面図である。隙間堰部材16は円板状に構成されており、既設管Kの内面に外接する外周16aと、更生管Sを収容する開口16bと、外周16aと開口16bとの間に広がる隔壁16cを有する。
開口16bの縁にはシール16dが設けられており、シール16dが更生管Sの外面に水密に当接するよう構成されている。外周16aは、既設管Kの内面に水密に当接するよう構成されている。
隔壁16cは、既設管K及び更生管Sの管軸方向に垂直な面で広がり、既設管Kと更生管Sとの隙間を堰止める。また、隔壁16cには孔16eが設けられており、注水バルブ28aが孔16eを貫通して設けられている。注水バルブ28aは注水路28の一部を構成しており、注水バルブ28aにより注水路28を通る注水量が制御されるよう構成されている。
なお、隙間堰部材16は、更生管Sが延伸しても管軸方向に移動することなく、また更生管Sの回転にも追従しないよう、既設管Kに対して相対的に固定されており、例えば図9,10に示すように、製管機30のフレーム31に、隔壁16cから延びるアーム16fを結合したり、マンホールM1の壁面を利用して適宜に固定される。
次に、更生管Sの先端側に配置される隙間堰部材15について、図11に基づき説明する。図11は、第3実施形態に係る更生管の製管方法における先端側の隙間堰部材を示す正面図及び断面図である。
隙間堰部材15は円板状に構成されており、既設管Kの内面に外接する外周15aと、開口15bと、外周15aと開口15bとの間に広がる隔壁15cを有する。
隔壁15cは、既設管K及び更生管Sの管軸方向に垂直な面で広がり、既設管Kと更生管Sとの隙間を堰止める。また、隔壁15cには孔15eが設けられており、注水バルブ29aが孔15eを貫通して設けられている。注水バルブ29aは注水路29の一部を構成しており、注水バルブ29aにより、注水路29を通る注水量が制御されるよう構成されている。なお、製管機側に配置された隙間堰部材16を介して区間Jに注水されるよう構成されている場合は、孔15e及び注水バルブ29aは省略可能である。
開口15bの縁にはベアリング15dが設けられており、ベアリング15dは隔壁15cに対して水密でありつつも、少ない摩擦抵抗で回転可能に構成されている。ベアリング15dには固定爪15f,・・・,15fが設けられている。固定爪15fは更生管Sの内面に係合するよう構成されており、隙間堰部材15は固定爪15fを介して更生管Sに固定される。また、更生管Sの先端の縁はベアリング15dに水密に当接する。
製管時、更生管Sは回転しながら延伸するが、更生管Sの回転はベアリング15dにより吸収されるため、隔壁15cは更生管Sの回転には追従しない。また、外周15aが既設管Kの内面に当接しながら管軸方向に移動することによって、隙間堰部材15は水密を維持しつつ更生管Sの延伸に追従して移動する。
なお、摩擦抵抗を考慮する必要がない場合は、ベアリング15dを使用することなく、開口15bを更生管Sの外面に摺動可能に接するよう構成することも可能である。また、区間Jの水密を維持するため、隙間堰部材15と更生管S及び既設管Kとが当接する箇所には、適宜シールが設けられる。しかし、シールが無くても水密性が確保される場合にはシールは必要としない。
隙間堰部材15,16が図9に示すように配置された場合、既設管K及び更生管Sと、隙間堰部材15,16とが水密に当接しているため、既設管Kの内面、更生管Sの外面及び隙間堰部材15,16で区切られた、水密な区間Jが形成される。そして注水装置27は、注水路28を介して区間Jに注水するよう構成されている。すなわち注水装置27は、水密に構成されている区間Jに注水することで、区間Jの水位L2を更生管Sの内部の水位L1より高く維持する。なお、注水装置27の注水量(すなわち区間Jの水位L2)は、製管機30により製管されて更生管Sが延伸するのと同時に、連続的に制御される。
したがって、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、更生管Sには水位L1と水位L2との水位差に対応した浮力が作用し、更生管Sは浮力が作用した状態で延伸することになる。すなわち、浮力が作用していない状態と比べ、重量抵抗及び摩擦抵抗が小さくなり、小さな駆動力でも長距離延伸させることが可能となる。そして、更生管Sの状態に応じて更生管Sに作用する浮力を調整することが可能となることも、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
本実施形態では、隙間堰部材15,16が設けられているため、既設管Kの流水の水位が低い場合でも、更生管Sの内部の水位L1と更生管Sの外部の水位L2との間に水位差を設けることができ、更生管Sに浮力を与えることが可能となる。また、区間Jは、既設管Kの内面、更生管Sの外面及び隙間堰部材15,16で囲まれた、容積の小さい区間であるため、少ない注水量で大きな水位差を設けることができ、したがって、少ない注水量で大きな浮力を更生管Sに作用させることができる。
なお、図9に示す注水装置27は、既設管K内に配置されたポンプを用いて既設管K内の流水を区間Jに移送するように構成されているが、適宜変更可能であり、例えば地上に設けることも勿論可能である。
次に、本実施形態で用いられる隙間堰部材の他の例について、図12に基づき説明する。図12は、第3実施形態に係る更生管の製管方法における先端側の隙間堰部材の他の例を示す正面図及び断面図である。図12に図示した隙間堰部材17は、更生管Sの先端側に配置される隙間堰部材であって、隙間堰部材15に代えて使用することが可能に構成されている。
隙間堰部材17は略円弧板状に構成されており、既設管Kの内面に部分的に外接する外周17aと、内周17bと、外周17aと内周17bとの間に広がる隔壁17cを有する。なお、隔壁17cは、既設管K及び更生管Sの管軸方向に垂直な面で広がるものの、前述の隙間堰部材15,16とは異なり、上部が開放しているため、既設管Kと更生管Sとの隙間を、下部についてのみ部分的に堰止める。また、隔壁17cには注水路29の一部を構成する注水バルブ29b,29bが設けられており、注水路29を通る注水量が制御されるよう構成されている。なお、製管機側に配置された隙間堰部材16を介して区間Jに注水されるよう構成されている場合は、注水バルブ29bは省略可能である。
隔壁17cからは、更生管Sの外面の形状に沿って形成された受け板17dが、管軸方向に突出している。受け板17dは更生管Sの外面に水密に当接する。また、隙間堰部材17と更生管S及び既設管Kとが当接する箇所には、水密を維持するために適宜シールが設けられる。
製管時、更生管Sは回転しながら延伸するが、更生管Sの回転は受け板17dの摺動により吸収され、隔壁17cは更生管Sの回転には追従しない。また、外周17aが既設管Kの内面に当接しながら管軸方向に移動することによって、隙間堰部材17は水密を維持しつつ更生管Sの延伸に追従して移動する。
なお、隙間堰部材17は、前述の隙間堰部材15,16とは異なり、既設管Kと更生管Sとの隙間の全体を閉塞しておらず、上部は開放している。したがって、既設管Kの内面、更生管Sの外面及び隙間堰部材で区切られた水密な区間Jに貯水される水位の限界は、隔壁17cの高さによって規定される。その一方で、隙間堰部材17は、周の一部についてのみ受け板17dを介して更生管Sに設置されるため、設置及び撤去が容易となる。
なお、上述した全ての実施形態において、既設管K及び更生管Sの少なくともいずれか一方の内部に、堰を二か所に設けて一つの水密な区間を設定し、その区間の水位を制御する方法を示した。しかし、既設管K及び更生管Sの少なくともいずれか一方の内部に、堰を三か所以上設けることにより複数の水密な区間を設定し、それぞれの区間の水位を制御することも可能である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る更生管の製管方法を示す既設管の縦断面図である。本実施形態は、排水装置を用いることなく更生管Sの内外に水位差を発生させ、更生管Sの長距離製管を可能とするものである。すなわち、本実施形態は、既設管K内を流下する水量が排水装置の能力を越えている場合には実施することができない第1実施形態に対応して発明されたものであり、排水装置を用いない点で第1実施形態と相違している。
本実施形態では、更生管Sの先端に既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を堰止める隙間堰部材18が設けられているとともに、更生管Sの製管機側の内部に更生管堰部材19が設けられている。隙間堰部材18は、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、常に更生管Sの先端に位置して既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を堰止めるよう配置されているのに対し、更生管堰部材19は、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、元の位置に留まるよう保持されている。
隙間堰部材18について、図14乃至16に基づき説明する。図14は、第4実施形態に係る更生管の製管方法における隙間堰部材18を示す正面図であり、図15及び図16は、それぞれ図14におけるG−G線断面図及びH−H線断面図である。
隙間堰部材18は、更生管Sの先端に固定された固定リング18aと、固定リング18
aに連結された固定プレート18bと、固定プレート18bに対して周方向に沿って回転自在に支持された仕切りプレート18cと、可撓性を有して、仕切りプレート18cに押さえプレート18dを介して固定された仕切りゴムプレート18eとから構成され、仕切りゴムプレート18eは略半周帯板状に形成され、外周縁が既設管Kの内周面略下半部に接触して既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を覆うように設定されている。
固定リング18aは、更生管Sの内径よりも小径の2本のリング181,181にナットを備えた複数個の連結板182を周方向に設定間隔をおいて溶着して一体に連結するとともに、先端をとがり先に形成した固定ボルト183を連結板182に設けたナットにねじ込んで構成され、更生管Sの先端に固定ボルト183を内周面側からねじ込むことにより、更生管Sに一体に固定されている。
固定プレート18bは、更生管Sの外径とほぼ同一の外径の筒状に形成され、その基端縁に設けた取付片が固定リング18aの各固定ボルト183に連結された連結ボルト184にナットを介して固定され、また、先端側が更生管Sの先端を越えた位置で断面コ字状に折り返され、その内面がガイドレールに形成されている。
仕切りプレート18cは、略半周帯板状に形成されるとともに、一対のボルト185を設けた複数個の台座186が周方向に設定間隔をおいてナットを介して固定され、各台座186には、ベアリング187が半径方向軸線回りに回転自在に支持されている。そして、仕切りプレート18cは、固定プレート18bの先端側折り返し部における下半部側に台座186を介して載置されるとともに、固定プレート18bの先端側を折り返して形成されたガイドレールに沿ってベアリング187が転動するように支持されている。
なお、仕切りゴムプレート18eは、周方向に間隔をおいて複数個のボルト188を押さえプレート18dを通して仕切りプレート18cにねじ込むことにより固定されている。
これにより、製管機30が更生管Sを製管すると、更生管Sは回転しながら先方に向けて延伸される。更生管Sが回転しながら管軸方向に延伸するとき、更生管Sの先端に一体に固定された固定リング18a及び該固定リング18aに連結された固定プレート18bが同調して回転する。一方、仕切りプレート18cは、固定プレート18bに対して載置されるとともに、ベアリング187を介して支持されていることから、固定プレート18bが更生管Sとともに回転するとき、ベアリング187が固定プレート18bの先端を折り返して形成されたガイドレールに沿って転動することにより、仕切りプレート18cは、更生管Sの回転に追従することなく保持される。したがって、仕切りプレート18cに固定された仕切りゴムプレート18eも、更生管Sの先端において、外周縁を既設管Kの略下半部側内周面に接触させた状態で回転することなく保持されている。
このため、隙間堰部材18は、既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を閉鎖して既設管Kを流下する水を堰止めることができる。この際、仕切りゴムプレート18eは可撓性を有することから、作業者が仕切りゴムプレート18eを撓曲させて水を流下させることにより、隙間堰部材18によって堰止められた水の水位を調整することができる。また、後述するように、更生管Sの内外の水位差による浮力に基づいて更生管Sが浮上すると、既設管Kの内周面と仕切りゴムプレート18eの外周縁との間に隙間が発生し、当該隙間を通して水が流下することから、隙間堰部材18によって堰止められた水の水位を調整することができる。
次に、更生管堰部材19について、図17に基づいて説明する。図17は、図13における矢視I−Iを見た矢視図である。
更生管堰部材19は、更生管Sの内径に対応する外径の略半円板状に形成され、更生管Sの製管機30側において、略管軸方向に垂直に配置されて更生管S内への水を堰止めている。更生管堰部材19は、製管機30のフレーム31に固定具191を介して連結されており、製管機30によって製管された更生管Sが回転しながら延伸されるとき、回転することなく保持される。すなわち、更生管堰部材19は、その外周面が更生管Sの内周面に対して円周方向に移動可能に配置されており、更生管堰部材19によって堰止められた水の一部は、更生管堰部材19の外周面と更生管Sの内周面との隙間を通して更生管S内へ流出している。
なお、更生管堰部材19は、左右の堰部材19a,19aと、これらの堰部材19a,19aに対して管軸方向と直交する方向に移動自在に設けられた中央の堰部材19bとに3分割されている。そして、左右の堰部材19a,19aに設けられたナットに対して調整ボルト192を回転操作することにより、中央の堰部材19bを昇降させることができ(図17鎖線状態参照)、更生管堰部材19によって堰止めた水の水位を調整することができる。
一方、固定具191は、詳細には図示しないが、製管機30のフレーム31の幅に対応して固定幅を調整可能である他、長さを調整可能であり、外径の異なる製管機30及び該製管機30によって製管された更生管Sの内径に対応する外径の更生管堰部材19にわたって連結することができる。この場合、更生管堰部材19の左右の堰部材19a,19aに固定された取付板193に固定具191を長さを調整しつつボルト・ナットを介して結合されている。
本実施形態においては、製管機30により更生管Sが回転しながら既設管Kの中に挿入され、延伸される製管工程において、更生管堰部材19は、更生管Sの回転に追従することなく更生管Sの略下半部を閉鎖する位置に留まって既設管Kを流下する水が更生管S内に入らないように堰止めている。また、隙間堰部材18の仕切りゴムプレート18eは、更生管Sの回転に追従することなく既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を閉鎖する位置に留まって、更生管堰部材19によって堰止められて更生管Sの外方に回り込んだ流水を堰止めるとともに、堰止めた水位を越える分溢水させて下流側に流出させている。
これにより、更生管Sには、更生管S内部を流下する水位L1と、更生管S外部を流下する水位L2との水位差に対応した浮力が作用し、更生管Sは浮力が作用した状態で延伸されることになる。すなわち、浮力が作用していない状態と比べ、重量抵抗及び摩擦抵抗が小さくなり、小さな駆動力でも長距離延伸させることが可能となる。
この場合、更生管Sに作用する浮力によって更生管Sが浮上すれば、仕切りゴムプレート18eの外周縁が既設管Kの内周面から離脱し、その隙間を通して隙間堰部材18によって堰止めた流水の一部が流出し、更生管S外部の水位L2を低下させる。したがって、更生管S内外の水位差、すなわち、浮力が減少し、更生管Sの重量と均衡させることができる。また、更生管Sの製管に対応して重量が浮力よりも大きくなれば、更生管Sは沈下し、仕切りゴムプレート18eの外周縁が既設管Kの内周面に接触し、隙間堰部材18によって堰止めた流水の一部の流出を阻止することから、更生管S外部の水位L2が上昇し、浮力を回復させることができる。したがって、更生管Sの状態に応じて更生管Sに作用する浮力を調整することが可能である。また、必要に応じて、隙間堰部材18の仕切りゴムプレート18eを撓曲させ、隙間堰部材18によって堰止めた流水の一部を流出させて更生管S外部の水位L2を低下させ、浮力を調整することもできる。
なお、当日の製管作業終了時等、既設管Kの流水を堰止める必要がない場合には、更生管堰部材19の中央の堰部材19bを上昇させて流水を更生管S内へ流出させ、固形物等が滞留しないようにすればよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図18は、本発明の第5実施形態に係る更生管の製管方法を示す既設管の縦断面図である。本実施形態は、第4実施形態と同様に、排水装置を用いることなく更生管Sの内外に水位差を発生させ、更生管Sの長距離製管を可能とするものであって、流水方向上流側に向かって更生管を製管する点で第4実施形態と相違している。
本実施形態では、更生管Sの先端の内部に更生管堰部材19Aが設けられているとともに、更生管Sの製管機側の外部に既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を堰止める隙間堰部材18Aが設けられている。
更生管堰部材19Aは、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、常に更生管Sの先端に位置して更生管Sを堰止めるよう配置され、隙間堰部材18Aは、製管工程によって更生管SがマンホールM2に向けて回転しつつ延伸しても、常に更生管Sの製管機側に位置して既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を堰止めるよう配置されている。
更生管堰部材19Aは、更生管Sの端部を閉塞するように装着されており、詳細には図示しないが、先に第1実施形態において説明した更生管堰部材11と同様に、円板状の隔壁と、隔壁の外周に設置され更生管Sの内面と密着するシールとを備え、回転する更生管S内への水を堰止めている。
隙間堰部材18Aについて、図19に基づき説明する。図19は、図18における断面J−Jを見た断面図である。
隙間堰部材18Aは、内周縁及び外周縁にシール部材18sが設けられた略半周帯板状に形成され、更生管Sの外径に対応する内径と、既設管Kの内径に対応する外径とを有し、製管機30のフレーム31に固定具189を介して連結されている。したがって、製管機30によって製管された更生管Sが回転しながら延伸されるとき、回転することなく保持され、その際、外周縁が既設管Kの内周面略下半部に接触し、内周縁が回転する更生管Sの外周面に接触し、既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を覆うように設定されている。すなわち、隙間堰部材18Aは、既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を閉鎖して既設管Kを流下する水を堰止めることができる。
本実施形態においては、製管機30により更生管Sが回転しながら既設管Kの中に挿入され、延伸される製管工程において、更生管堰部材19Aは、更生管Sの回転に追従して回転しつつ更生管Sを閉鎖する位置に留まって既設管Kを流下する水が更生管S内に入らないように堰止めている。また、隙間堰部材18Aは、更生管Sの回転に追従することなく既設管Kと更生管Sとの隙間の略下半部を閉鎖する位置に留まって、更生管堰部材19Aによって堰止められて更生管Sの外方に回り込んだ流水を堰止めるとともに、堰止めた水位を越える分溢水させて下流側に流出させている。
これにより、更生管Sには、更生管S内部を流下する水位L1と、更生管S外部を流下する水位L2との水位差に対応した浮力が作用し、更生管Sは浮力が作用した状態で延伸されることになる。すなわち、浮力が作用していない状態と比べ、重量抵抗及び摩擦抵抗が小さくなり、小さな駆動力でも長距離延伸させることが可能となる。