JP6229686B2 - 亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プレス成形時の摺動抵抗が小さく優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
亜鉛系めっき鋼板は自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用され、そのような用途では、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、亜鉛系めっき鋼板は冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での亜鉛系めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で亜鉛系めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
上記を受けて、亜鉛系めっき鋼板使用時のプレス成形性を向上させる方法として、高粘度の潤滑油を塗布する方法が広く用いられている。しかし、この方法では、潤滑油が高粘性であるため、塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥が発生する。また、プレス時の油切れにより、プレス性能が不安定になる等の問題がある。このため、亜鉛系めっき鋼板自身のプレス成形性の改善が求められている。
上記の問題を解決する方法として、特許文献1には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、加熱処理のいずれかの処理を施すことにより、亜鉛を主体とする酸化膜を鋼板表面に形成させてプレス加工性を向上させる技術が開示されている。
特許文献2には、鋼板を溶融亜鉛めっき処理後、加熱処理により合金化し、さらに調質圧延を施した後に、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、所定時間保持した後水洗することでめっき表層に酸化物層を形成させ、プレス成形性を向上させる技術が開示されている。
特許文献3には、調質圧延後の溶融亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、鋼板表面に酸性溶液の液膜が形成された状態で所定時間保持した後水洗、乾燥し、めっき表面に酸化物層を形成したプレス成形性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。
特許文献4には、電気亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液もしくは酸性の電気亜鉛めっき浴と接触させ、その後に所定時間保持した後水洗、乾燥し、めっき表面にZn系酸化物を形成したプレス成形性に優れる電気亜鉛めっき鋼板が開示されている。
特許文献5には、亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させ、所定時間保持し、水洗、乾燥を行うことにより表面に酸化物層及び/又は水酸化物層を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、酸性溶液中に酸化物コロイドを含有することにより、優れたプレス成形性を得る技術が開示されている。
特開平2−190483号公報 特許第3807341号公報 特許第4329387号公報 特開2005−248262号公報 特許第5386842号公報
特許文献1〜5に記載の技術では、通常の亜鉛系めっき鋼板と比較すると良好なプレス成形性を得ることができる。しかしながら、近年では自動車車体の軽量化の観点から高強度亜鉛系めっき鋼板が広く用いられるようになり、従来以上のプレス成形性が求められるようになってきている。また、比較的強度の低い亜鉛系めっき鋼板に対しても、より複雑な成形を可能とするため、更なるプレス成形性の向上が必要である。
特許文献1〜5に記載の技術を高強度亜鉛系めっき鋼板に適用した場合には必ずしも十分なプレス成形性を得ることができない。また、比較的強度の低い亜鉛系めっき鋼板に適用した場合にも、複雑な成形を可能とするには十分ではない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、高強度亜鉛系めっき鋼板に対して優れたプレス成形性を有し、比較的強度の低い亜鉛系めっき鋼板に対して複雑な成形を可能とする、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するために、亜鉛系めっき鋼板の表面処理に関して種々の検討を行った。その結果、以下を知見し本発明を完成させた。
亜鉛めっき処理後の鋼板を酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒保持した後に水洗、乾燥することによりめっき鋼板表面に皮膜を形成するにあたり、酸性溶液中に層状を有する粒子を含有することで、層状を有する粒子が分散、付着した亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物層(皮膜)が形成する。このような皮膜をめっき鋼板表面に有することで、プレス成形時の摩擦係数を大幅に低下させ、プレス成形性を向上させることが可能となる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] 亜鉛めっき処理を施した鋼板を、酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒保持した後に水洗、乾燥することによりめっき鋼板表面に皮膜を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、前記酸性溶液は、層状を有する粒子を含有し、前記皮膜は、平均厚さが10nm以上であり、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層から構成され、層状を有する粒子を含有することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[2]前記層状を有する粒子は、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子であることを特徴とする上記[1]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[3]前記酸性溶液は、グラファイト粒子を0.1〜50g/L含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[4]前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ、1リットルの酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液の量で定義するpH上昇度が0.05〜0.5であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[5]前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種を合計で5〜50g/L含有し、かつ、pHが0.5〜6.0、液温が20〜70℃であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[6]前記酸性溶液に接触終了時のめっき鋼板表面の液膜量は30g/m以下であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造されることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
[8]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造され、鋼板表面のC濃度が0.2〜5.0mass%であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
なお、本発明においては、例えば溶融めっき法、電気めっき法、蒸着めっき法、溶射法などの各種の製造方法により鋼板上に亜鉛をめっきした鋼板を総称して亜鉛系めっき鋼板と呼称する。また、合金化処理を施していない溶融亜鉛めっき鋼板、合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき鋼板のいずれも亜鉛系めっき鋼板に含まれる。
本発明によれば、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板が得られる。プレス成形時の摩擦係数が低下するため、割れ危険部位での摺動抵抗が小さく張り出し性が良好となり、高強度亜鉛めっき鋼板をプレス成形する時や、比較的強度の低い亜鉛系めっき鋼板を複雑な形にプレス成形する時において、優れたプレス成形性を有することができる。
摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。
本発明の詳細を以下に説明する。
上述したように、本発明では、亜鉛めっき処理を施した鋼板を酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒保持した後に水洗、乾燥することによりめっき鋼板表面に皮膜を形成する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、酸性溶液は層状を有する粒子を含有することを特徴とする。そして、形成される皮膜は、平均厚さが10nm以上であり、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層から構成され、層状を有する粒子を含有することを特徴とする。このような皮膜をめっき鋼板表面に有する結果、優れたプレス成型性を持つことが出来る。このメカニズムは以下のように考える。
亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させると、鋼板側からは亜鉛の溶解が生じる。この亜鉛の溶解は、同時に水素発生を生じるため、亜鉛の溶解が進行すると、酸性溶液中の水素イオン濃度が減少する。その結果、酸性溶液のpHが上昇する。そして、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層が安定となるpH領域に達すると、亜鉛系めっき鋼板表面に酸化物層及び/又は水酸化物層(皮膜)を形成すると考えられる。この際に、層状を有する粒子を含有する酸性溶液を使用すると、皮膜中又は皮膜表層に層状を有する粒子が分散又は付着する。層状を有する粒子は摺動面で層間のへき開が起こりやすい。ゆえに、このような性質を持つ粒子が亜鉛系酸化物層及び/又は亜鉛系水酸化物層に分散又は付着した皮膜が金型と鋼板の間に存在することで、摩擦係数が著しく低下し、優れたプレス成形性を得ることが可能となる。
また、本発明では、このような層状を有する粒子を含有する皮膜を、層状を有する粒子を含有する酸性溶液に接触させ水洗乾燥することで形成する。この形成方法は、めっき層表面をわずかに溶解させながら進行するものである。そのため、形成される皮膜は密着性(めっき層表面と皮膜との密着性)が良好となる。さらに本発明の形成方法は、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の沈殿反応を利用したものであるため、加熱処理などにより表面を完全被覆することで得られる皮膜と比較すると、厚い皮膜を形成することができる。
層状を有する粒子を効率よく皮膜中に含有させるためには、層状を有する粒子として、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子を用いることが好ましい。グラファイト粒子は酸に対して非常に安定であるため、酸性溶液中に含有した場合、結晶構造が壊れたりせずに分散液となる。グラファイト粒子が酸性溶液中で凝集する場合は、界面活性剤を用いることで分散することができる。平均粒子径が0.1μm未満では摩擦係数を低減する効果は見込まれるが、粒子の作製が困難であり、液中で凝集を起こしやすくなり、処理液の管理が困難となる場合がある。平均粒子径が20μmを超えると、皮膜中に取り込まれ難くなり、また密着性が劣る傾向がある。さらに好ましい平均粒子径は、0.1〜5μmである。なお、層状を有する粒子とは平面方向に強固な力で結合した層同士が比較的弱い力で結合した構造を有する粒子である。たとえばグラファイトの場合は、平面方向には炭素同士が共有結合で強固に結合し、層間は弱い分子間力で結合している。また、平均粒子径はレーザー回折法で測定することができる。
グラファイトは酸性溶液中に0.1〜50g/Lの範囲で含有することが好ましい。含有量が0.1g/L未満では、亜鉛系めっき鋼板表面に付着するグラファイト量が少ないため、十分な摩擦係数の低下効果が得られない場合がある。一方、50g/Lを超えると、十分な摺動特性は得られるが、亜鉛系めっき鋼板表面に付着するグラファイト量が飽和し、グラファイトのコストが増加する。
使用する酸性溶液は、pH=0.5〜6.0の領域においてpH緩衝作用を有するものが好ましい。これは、前記pH範囲でpH緩衝作用を有する酸性溶液を使用すると、めっき鋼板を酸性溶液に接触させた後所定時間保持することで、酸性溶液とめっき層の反応によりZnの溶解とZn系酸化物の形成反応が十分に生じ、鋼板表面に亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層を安定して得ることができるためである。このようなpH緩衝作用の指標として、1リットルの酸性溶液のpHを2.0〜5.0まで上昇させるのに要する1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液の量で定義するpH上昇度を用いることができる。このpH上昇度の値が0.05〜0.5の範囲にあるとよい。pH上昇度が0.05未満であると、pHの上昇が速やかに起こって亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の形成に十分な亜鉛の溶解が得られないため、十分な亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の形成が生じない場合がある。一方、pH上昇度が0.5を超えると、Znの溶解が促進され、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の形成に長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられる。ここで、pHが2.0を超える酸性溶液のpH上昇度は、酸性溶液に硫酸などのpH=2.0〜5.0の範囲でほとんど緩衝性を有しない無機酸を添加してpHを一旦2.0に低下させて評価することとする。
このようなpH緩衝作用を有する酸性溶液としては、酢酸ナトリウム(CH3COONa)などの酢酸塩、フタル酸水素カリウム((KOOC)2C6H4)などのフタル酸塩、クエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7)やクエン酸二水素カリウム(KH2C6H5O7)などのクエン酸塩、コハク酸ナトリウム(Na2C4H4O4)などのコハク酸塩、乳酸ナトリウム(NaCH3CHOHCO2)などの乳酸塩、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)などの酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を、合計で5〜50g/Lの範囲で含有する水溶液を使用することができる。5g/L未満であると、Znの溶解とともに溶液のpH上昇が比較的すばやく生じるため、摺動性の向上に十分な亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層を形成することができない場合がある。一方、50g/Lを超えると、Znの溶解が促進され、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の形成に長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられる。
これらを使用する酸性溶液のpHは0.5〜6.0の範囲にあることが望ましい。pHが6.0を超えると、溶液中でZnの溶解が十分に生じないため、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の形成が十分でなくなる場合がある。一方、pHが低すぎると、亜鉛の溶解が促進され、めっき付着量の減少だけでなく、めっき皮膜に亀裂が生じ加工時に剥離が生じやすくなる場合がある。
酸性溶液の温度は、20〜70℃の範囲であることが好ましい。20℃未満であると、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の生成反応に長時間を有し、生産性の低下を招く場合がある。一方、温度が高い場合には、反応は比較的すばやく進行するが、逆に鋼板表面に処理ムラを発生しやすくなる。
亜鉛系めっき鋼板を酸性溶液に接触させる方法には特に制限はなく、めっき鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液をめっき鋼板に塗布する方法等があるが、最終的に薄い液膜状で鋼板表面に存在することが望ましい。
酸性溶液に接触終了時のめっき鋼板表面の液膜量は30g/m以下が好ましい。鋼板表面に存在する酸性溶液の量が多いと、亜鉛の溶解が生じても溶液のpHが上昇せず、次々と亜鉛の溶解が生じるのみであり、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層を形成するまでに長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられるためである。一方、液膜の乾燥を防ぐ目的で、1g/m以上の液膜量が好ましい。溶液膜量の調整は、絞りロール、エアワイピング等で行うことができる。なお、接触終了時とは、酸性溶液に浸漬する方法の場合は「浸漬終了」、めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法の場合は「スプレー終了」、塗布ロールを介して酸性溶液を塗布する方法の場合は「塗布終了」を意味する。
また、酸性溶液に接触終了後、水洗までの時間(水洗までの保持時間)は、1〜60秒間必要である。水洗までの時間が1秒未満であると、溶液のpHが上昇し亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層が形成される前に酸性溶液が洗い流されるため、摺動性の向上効果が得られない。また、60秒を超えても、酸化物層の量に変化が見られない。
なお、本発明では、使用する酸性溶液中に層状を有する粒子を含有していれば摺動性に優れた酸化物層を安定して形成できるため、酸性溶液中にその他の金属イオンや無機化合物などを不純物として、あるいは故意に含有していても本発明の効果が損なわれるものではない。
本発明における亜鉛系酸化物、亜鉛系水酸化物とは、金属成分として亜鉛を主体とする酸化物、水酸化物であり、鉄、Al等の金属成分を合計量として亜鉛よりも少なく含有する場合や、硫酸、硝酸、塩素等のアニオンを合計量として酸素と水酸基のモル数よりも少なく含有する場合も本発明の亜鉛系酸化物に含まれる。
以上によりめっき鋼板の表面に形成される皮膜は、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層から構成され、Znおよび層状を有する粒子を必須成分として含み、平均厚さが10nm以上である。平均厚さが10nm未満であると摺動抵抗を低下させる効果が不十分となる。一方、平均厚さが200nmを超えると、プレス加工中に皮膜が破壊し摺動抵抗が上昇し、また溶接性が低下する傾向にあるため、200nm以下が好ましい。
また、表面C濃度は0.2〜5.0mass%の範囲にあることが好ましい。0.2mass%未満では十分な摺動特性が得られない場合がある。一方、5.0mass%を超えても摺動性は特に向上が見られず、効果が飽和するうえ、化成処理性を劣化させる可能性がある。なお、表面C濃度は蛍光X線分析により算出することができる。
本発明を実施例により更に詳細に説明する。
板厚0.8mmの電気亜鉛めっき鋼板(EG)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)および溶融亜鉛めっき鋼板(GI)に、酸化物層形成処理を行った。酸化物層形成処理は、表1〜表3に示すように、グラファイト粒子を各濃度で添加し、pHを硫酸で調整した各種の酸性溶液に3秒浸漬した。その後、ロール絞りを行い、液量を調整した後、1〜60秒間大気中室温にて放置し、十分水洗を行った後、乾燥を実施した。
次に、以上により得られた鋼板に対して、プレス成形性を簡易的に評価する手法として摩擦係数を測定し、めっき表層の亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層(皮膜)の平均厚さ(皮膜厚)を測定した。さらに、グラファイトがめっき表層の亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層に含まれていることを確認するため、C強度および表面C濃度を測定した。
なお、摩擦係数の測定方法、めっき表層の亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層の膜厚測定方法、C強度および表面C濃度測定方法は以下の通りである。
摺動性評価試験(摩擦係数の測定)
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。図1は摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押し上げることによりビード6による摩擦係数測定用試料1への押し付け荷重Nを測定するための第1ロードセル7がスライドテーブル支持台5に取り付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するために第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取り付けられている。なお、潤滑油としてスギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油(プレトンR352L(登録商標))を摩擦係数測定用試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2、3は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ4mm、摺動方向両端の下部は曲率0.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有する。
摩擦係数測定試験は下に示す2条件で行った。
[条件1]
図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。
[条件2]
図3に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとした。
供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層(皮膜)の平均厚さ(皮膜厚)の測定
膜厚が96nmの熱酸化SiO膜が形成されたSiウエハを参照物質として用い、蛍光X線分析装置でO−Kα線を測定することで、SiO換算の酸化物層及び/又は水酸化物層の平均厚さを求めた。測定時の管球の電圧および電流は30kVおよび100mAとし、分光結晶はTAPに設定してO−Kα線を検出した。ピーク位置およびバックグラウンド位置での積分時間は、それぞれ20秒とした。分析面積は35mmφである。
C強度、表面C濃度の測定
蛍光X線分析装置でC−Kα線を測定することでC強度を求めた。また、表面C濃度については、表面元素の強度比からC濃度を半定量し、皮膜形成処理後の値から皮膜形成していない基板の値を減じて算出し、0を下回るものは0mass%とした。分析面積は35mmφである。
以上により得られた試験結果を条件と併せて表1〜3に示す。
Figure 0006229686
Figure 0006229686
Figure 0006229686
表1〜3に示す試験結果から下記事項が明らかとなった。
表1は電気亜鉛めっき(EG)に適用した例である。No.1は酸性溶液による処理を行っていない比較例である。条件1・条件2において摩擦係数が高い。No.2〜6は層状を有する粒子を含まない酸性溶液で処理をした比較例であり、No.1と比較すると摩擦係数が低いが依然として高い。
No.7〜18、20〜38、40〜42はグラファイトを含有する酸性溶液で処理を行った発明例であり、いずれの条件でもグラファイトを含まない比較例No.2〜6と皮膜厚が同程度のもの同士を比較して摩擦係数が低下している。
No.19、39では皮膜の形成がほとんど見られず、皮膜厚が適用範囲外の比較例であり、摩擦係数の低下がほとんど認められない。
表2は合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、表3は溶融亜鉛めっき鋼板(GI)に対する実施例である。いずれの発明例においても摩擦係数の低下が認められ、めっき種によらず、層状を有する粒子を含有する酸性溶液で処理することにより摩擦係数が低下することが確認された。
摩擦係数が低下することで、プレス成形時の金型とビードの摺動抵抗を低下させることが可能となるためプレス成形性が向上する。例えば、引張強度が590MPa以上の高強度鋼板は比較的強度の低い鋼板よりも材料の伸びの値が劣るため、同じ成形をした場合に、より大きな張力がかかり材料が破断する場合がある。摩擦係数低下により摺動抵抗が小さくなることでプレス成形時の材料流入が容易になるため、プレス成形性が向上する。また、比較的強度の低い鋼板に対しても、摩擦係数低下によるプレス成形時の材料流入の易化により、従来の鋼板では破断が起こるような複雑な成形が可能となる。
本発明の亜鉛系めっき鋼板はプレス成形性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力

Claims (7)

  1. 亜鉛めっき処理を施した鋼板を、酸性溶液に接触させ、接触終了後1〜60秒保持した後に水洗、乾燥することによりめっき鋼板表面に皮膜を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法において、
    前記酸性溶液は、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子を含有し、
    前記皮膜は、平均厚さが10nm以上であり、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層から構成され、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子を含有することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記酸性溶液は、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子を0.1〜50g/L含有することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記酸性溶液は、pH緩衝作用を有し、かつ、1リットルの酸性溶液のpHを2.0から5.0まで上昇させるのに必要な1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液の量で定義するpH上昇度が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記酸性溶液は、酢酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうち少なくとも1種を合計で5〜50g/L含有し、かつ、pHが0.5〜6.0、液温が20〜70℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  5. 前記酸性溶液に接触終了時のめっき鋼板表面の液膜量は30g/m以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  6. 亜鉛めっきされた鋼板表面に皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記皮膜は、平均厚さが10nm以上であり、亜鉛系酸化物及び/又は亜鉛系水酸化物を含む層から構成され、かつ、平均粒子径が0.1〜20μmであるグラファイト粒子を含有することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
  7. 鋼板表面のC濃度が0.2〜5.0mass%であることを特徴とする請求項6に記載の亜鉛系めっき鋼板。
JP2015061946A 2015-03-25 2015-03-25 亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 Active JP6229686B2 (ja)

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